(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の締結方法では、加熱された両締結金型の熱によって軸体を加熱するため、軸体を塑性変形可能な軟化状態にするに当たって、両締結金型を高温にする必要がある。このため、両締結金型による加圧で軸体に第1、2頭部及び軸部が形成された後も、両締結金型は長期間に亘って高熱を維持することになる。この結果、この締結方法では、締結具が冷却されるまでに長い時間を要することになる。これにより、この締結方法では、締結具による複数のワークの締結作業を素早く行うことができない。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能な締結方法及び締結装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の締結方法は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結方法であって、
第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部とからなる繊維強化樹脂製の中間具を準備する準備工程と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で、前記軸部のみを加熱する軸部加熱工程と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させた状態で、加熱された前記軸部を加圧することにより、前記第1頭部と対面する第2頭部を締結金型によって形成して、前記中間具を前記締結具として前記各ワークを締結する締結工程とを備え、
前記繊維強化樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であり、
前記軸部加熱工程は、誘導加熱可能な高周波誘導コイルによって行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の締結方法では、軸部加熱工程を誘導加熱可能な高周波誘導コイルによって行う。ここで、準備工程で準備する中間具は、加熱によって軟化する熱可塑性樹脂を採用しているとともに、導電性を有し、伝熱性にも優れた炭素繊維を採用した炭素繊維強化熱可塑性樹脂製である。これにより、軸部加熱工程において、高周波誘導コイルによる誘導加熱で中間具の軸部を非接触で直接加熱し、軟化させることができる。この際、軟化した樹脂が熱源に付着し難い。このため、この締結方法では、軸部を加熱するために締結金型を加熱する必要がない。これにより、軸部が加熱された中間具に比べ、締結金型は低温となる。このため、締結工程では、中間具から得られた締結具の熱を締結金型に吸熱させることができる。この結果、この締結方法によれば、締結金型を加熱して締結具を得る場合に比べ、得られた締結具を素早く冷却することができる。
【0009】
したがって、本発明の第1の締結方法によれば、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能である。
【0010】
本発明の第2の締結方法は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結方法であって、
軸方向に延びる繊維強化樹脂製の軸体を準備する準備工程と、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させずに非接触の状態で、前記軸体を加熱する軸体加熱工程と、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させない状態で、加熱された前記軸体の一端側を加圧することにより、第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部とからなる中間具を中間金型によって形成する中間成形工程と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で、前記軸部のみを加熱する軸部加熱工程と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させた状態で、加熱された前記軸部を加圧することにより、前記第1頭部と対面する第2頭部を締結金型によって形成して、前記中間具を前記締結具として前記各ワークを締結する締結工程とを備え、
前記繊維強化樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であり、
前記軸体加熱工程及び前記軸部加熱工程を誘導加熱可能な高周波誘導コイルによって行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第3の締結方法は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結方法であって、
軸方向に延びる繊維強化樹脂製の軸体を準備する準備工程と、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で、前記軸体のみを加熱する軸体加熱工程と、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させた状態で、加熱された前記軸体の一端側を加圧することにより、第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部とからなる中間具を中間金型によって形成する中間成形工程と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で、前記軸部のみを加熱する軸部加熱工程と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させた状態で、加熱された前記軸部を加圧することにより、前記第1頭部と対面する第2頭部を締結金型によって形成して、前記中間具を前記締結具として前記各ワークを締結する締結工程とを備え、
前記繊維強化樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であり、
前記軸体加熱工程及び前記軸部加熱工程を誘導加熱可能な高周波誘導コイルによって行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の締結方法及び第3の締結方法では、軸体加熱工程において、高周波誘導コイルによる誘導加熱で軸体を非接触で直接加熱し、軟化させる。この際、軟化した樹脂が熱源に付着し難い。これにより、中間成形工程では、軸体から得られた中間具の熱を中間金型に吸熱させることができる。また、締結工程では、中間具から得られた締結具の熱を締結金型に吸熱させることができる。この結果、第2、3の締結方法では、中間具を素早く冷却することができるとともに、締結具を素早く冷却することができる。
【0013】
したがって、本発明の第2の締結方法及び第3の締結方法によれば、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能である。
【0014】
本発明の第4の締結方法は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結方法であって、
軸方向に延びる繊維強化樹脂製の軸体を準備する準備工程と、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で、前記軸体のみを加熱する軸体加熱工程と、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させた状態で、加熱された前記軸体の両端側を加圧することにより、第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部と、前記第1頭部と対面する第2頭部とを締結金型によって形成して、前記軸体を前記締結具として前記各ワークを締結する締結工程とを備え、
前記繊維強化樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であり、
前記軸体加熱工程を誘導加熱可能な高周波誘導コイルによって行うことを特徴とする。
【0015】
第4の締結方法では、軸体に対して第1頭部と第2頭部と軸部を同時に形成することで、中間具を経ることなく、締結工程において軸体から締結具を直接得ることができる。
【0016】
したがって、本発明の第4の締結方法によれば、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能である。
【0017】
本発明の第1の締結装置は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結装置であって、
第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部とからなる繊維強化樹脂製の中間具を用い、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で、前記軸部のみを加熱可能な軸部加熱器具と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させた状態で、加熱された前記軸部を加圧する軸部加圧器具と、
加熱された前記軸部から、前記第1頭部と対面する第2頭部を形成し、前記中間具を前記締結具とする締結金型とを備え、
前記繊維強化樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であり、
前記軸部加熱器具は、誘導加熱可能な高周波誘導コイルであることを特徴とする。
【0018】
本発明の第1の締結装置によれば、上記の第1の締結方法を実現することができる。
【0019】
本発明の第2の締結装置は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結装置であって、
軸方向に延びる繊維強化樹脂製の軸体を用い、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させずに非接触の状態で、前記軸体を加熱可能な軸体加熱器具と、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させない状態で、加熱された前記軸体の一端側を加圧する軸体加圧器具と、
加熱された前記軸体から、第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして前記軸方向に延びる軸部とからなる中間具を形成する中間金型と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で、前記軸部のみを加熱可能な軸部加熱器具と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させた状態で、加熱された前記軸部を加圧する軸部加圧器具と、
加熱された前記軸部から、前記第1頭部と対面する第2頭部を形成し、前記中間具を前記締結具とする締結金型とを備え、
前記繊維強化樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であり、
前記軸体加熱器具及び前記軸部加熱器具は、誘導加熱可能な高周波誘導コイルであることを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の締結装置によれば、上記の第2の締結方法を実現することができる。
【0021】
本発明の第3の締結装置は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結装置であって、
軸方向に延びる繊維強化樹脂製の軸体を用い、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で、前記軸体のみを加熱可能な軸体加熱器具と、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させた状態で、加熱された前記軸体の一端側を加圧する軸体加圧器具と、
加熱された前記軸体から、第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして前記軸方向に延びる軸部とからなる中間具を形成する中間金型と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で、前記軸部のみを加熱可能な軸部加熱器具と、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させた状態で、加熱された前記軸部を加圧する軸部加圧器具と、
加熱された前記軸部から、前記第1頭部と対面する第2頭部を形成し、前記中間具を前記締結具とする締結金型とを備え、
前記繊維強化樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であり、
前記軸体加熱器具及び前記軸部加熱器具は、誘導加熱可能な高周波誘導コイルであることを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の締結装置によれば、上記の第3の締結方法を実現することができる。
【0023】
したがって、本発明の第1の締結装置、第2の締結装置及び第3の締結装置によれば、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能である。
【0024】
本発明の各締結方法及び各締結装置において、締結具が第1頭部から軸部を経て第2頭部まで延びる炭素繊維を含んでいれば、第1、2頭部及び軸部を炭素繊維によって好適に補強することができる。このため、複数のワークを締結具で強固に締結することができる。また、中間具や軸体が互いに交差する炭素繊維を含んでいれば、誘導加熱によって軸部や軸体に渦電流を好適に生じさせることができる。このため、誘導加熱によって軸部や軸体を好適に塑性変形可能な軟化状態とすることが可能となる。
【0025】
第2の締結装置及び第3の締結装置において、軸体加熱器具及び軸部加熱器具は単一の高周波誘導コイルであることが好ましい。この場合には、締結装置の構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1〜4の締結方法によれば、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能である。また、本発明の第1〜3の締結装置によれば、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例1、2及び変形例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の締結装置は、プレスユニット1と、高周波誘導加熱機3と、制御コンピュータ5とによって構成されている。この締結装置では、
図16に示すように、締結具11によって、金属製の第1ワークW1と金属製の第2ワークW2との締結作業を行う。なお、第1ワークW1及び第2ワークW1の材質は適宜変更可能である。
【0030】
本実施例では、
図1の紙面の上方を締結装置の上方とし、
図1の紙面の下方を締結装置の下方として、締結装置の上下方向を規定している。また、
図1の紙面の右方を締結装置の右方とし、
図1の紙面の左方を締結装置の左方として、締結装置の左右方向を規定している。また、
図6、7、9〜15、17〜20は、
図1における領域Xを拡大した断面図である。そして、
図6等では、
図1に対応させて上下方向及び左右方向を規定している。なお、これらの上下方向及び左右方向は一例であり、適宜変更可能である。
【0031】
図1に示すように、プレスユニット1は、支持部材7とサーボプレス機9とを有している。支持部材7は、上側に位置する上端部7aと、下側に位置する下端部7bと、上端部7aと下端部7bとに接続する把持部7cとを有しており、略コ字形状をなしている。また、支持部材7において、上端部7aと下端部7bとの間は、作業空間7dが形成されている。上端部7aには、サーボプレス機9を取り付けるための第1台座71が設けられている。第1台座71には、作業空間7dに向かって上下方向に延びる貫通孔73が形成されている。下端部7bには、作業空間7d内に位置するように第2台座75が設けられている。第2台座75には、後述する第1保持金型151や第2保持金型171を取付可能となっている。作業空間7dは左方が開放されており、高周波誘導加熱機3の高周波誘導コイル3bが進入可能となっている。把持部7cは、作業空間7dよりも右方で上下方向に延びている。
【0032】
サーボプレス機9は、プレス機本体9aとプレスヘッド9bとを有している。サーボプレス機9は、本発明における「軸体加圧器具」及び「軸部加圧器具」の一例である。図示を省略するものの、プレス機本体9a内には、サーボモータやサーボモータの作動制御を行うプレスコントローラ等が設けられている。プレスヘッド9bはプレス機本体9aに取り付けられている。プレスヘッド9bは、サーボモータによって速度や圧力を適宜変更しつつ、プレス機本体9aから伸縮可能となっている。プレスヘッド9bには、後述する頭部成形金型151が取り付けられるようになっている。
【0033】
プレスユニット1では、貫通孔73にプレスヘッド9bを挿通させた状態で、プレス機本体9aが複数のボルト13によって第1台座71に固定されている。こうして、プレスユニット1では、支持部材7とサーボプレス機9とが一体とされており、プレスヘッド9bは、プレス機本体9aから伸縮し、作業空間7d内を自己の軸方向に移動することで、
図1に示す初期位置と、
図6及び
図7等に示す待機位置と、
図10等に示すプレス位置とに変位可能となっている。初期位置とは、
図1に示すように、作業空間7d内において、プレスヘッド9bが第2台座75から最も遠ざかる位置である。待機位置は、
図6及び
図7等に示すように、作業空間7d内において、プレスヘッド9bが初期位置よりも第2台座75に近づいた位置である。プレス位置は、
図10、15、20に示すように、作業空間7d内において、プレスヘッド9bが第2台座75に最も近づいた位置である。
【0034】
また、
図1に示すように、この締結装置では、プレスユニット1は第1作業用アーム101によって保持されている。具体的には、第1作業用アーム101は支持部材7の把持部7cを把持することにより、プレスユニット1を保持している。詳細な図示を省略するものの、第1作業用アーム101は把持部7cを把持した状態で回動及び伸縮可能に構成されている。これにより、第1作業用アーム101は、制御コンピュータ5によって制御されることにより、任意の角度でプレスユニット1を保持することが可能となっている。
【0035】
図1及び
図7に示すように、高周波誘導加熱機3は、本体部3aと、第1高周波誘導コイル3bと、通電コントローラ3cと、図示しない温度センサとを有している。第1高周波誘導コイル3bは、本発明における「高周波誘導コイル」の一例である。本体部3aは、第2作業用アーム102によって保持されている。高周波誘導コイル3bは、本体部3aに固定されており、本体部3a側から支持部材7の作業空間7d側に向かって延びている。
図8に示すように、高周波誘導コイル3bにおける作業空間7d側には、1つの先端部31が設けられている。この先端部31には、後述する軸体110や軸部11bを囲包可能な凹部31aが形成されている。
図1及び
図7に示す通電コントローラ3cは、本体部3aに固定されている。通電コントローラ3cは、制御コンピュータ5によって制御されることにより、第1高周波誘導コイル3bに電力を供給する。温度センサは、軸体110や軸部11bの温度を検出する。
【0036】
第2作業用アーム102は、本体部3aを把持した状態で回動及び伸縮可能に構成されている。これにより、第2作業用アーム102は、制御コンピュータ5によって制御されることにより、任意の角度で高周波誘導加熱機3を保持することが可能となっている。また、第2作業用アーム102は、制御コンピュータ5によって制御されることにより、本体部3aを移動させて、第1高周波誘導コイル3bを
図1に示す退避位置と、
図7及び
図13等に示す加熱位置とに変位させることが可能となっている。退避位置は、
図1に示すように、第1高周波誘導コイル3bが作業空間7d内から脱した位置である。加熱位置は、
図7及び
図13等に示すように、第1高周波誘導コイル3bが作業空間7d内に進入した位置である。
【0037】
図1に示す制御コンピュータ5は、コンピュータ本体5aと、ディスプレイ5bと、キーボード5cとを有している。キーボード5cは、図示しない作業者が軸体110や中間具111の寸法の他、第1、2ワークW1、W2の形状や材質等の作業用データを入力可能である。図示を省略するものの、コンピュータ本体5a内には、ROM、RAM及びCPU等が収容されている。ROMには、サーボプレス機9、通電コントローラ3c、第1作業用アーム101、第2作業用アーム102及び後述する第3作業用アーム103等の制御を行うための各種の制御プログラムが記憶されている。RAMには、キーボード5cを通じて入力された作業用データが記憶される。CPUは、ROMに記憶された制御プログラム及びRAMに記憶された作業用データに基づき各種の演算を行う。こうして、制御コンピュータ5は、サーボプレス機9、通電コントローラ3c、第1〜3作業用アーム101〜103に制御信号を発信することで、これらの制御を実行する。ディスプレイ5bには、作業者が入力した作業用データの他、締結装置の作動状態等が表示される。
【0038】
以上のように構成された締結装置では、
図2に示す流れ図に沿って締結方法を実行することで、締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を行う。以下、具体的に説明する。まず始めに、準備工程として軸体110を準備する(ステップS1)。
図5に示すように、軸体110は、ナイロン等の熱可塑性樹脂TPと、複数の炭素繊維CFとで構成されている。つまり、軸体110は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)製である。軸体110は、軸方向に延びる円柱状をなしている。軸体110の寸法は、締結を行う第1、2ワークW1、W2の形状に応じて規定されている。また、各炭素繊維CFは、軸体110の軸方向の一端側から他端側まで延びている。これにより、軸体110の軸方向の長さと、各炭素繊維CFの長さとは、ほぼ等しくなっている。なお、
図5及び
図16では、説明を容易にするため、炭素繊維CFの数を簡略化しているとともに、炭素繊維CFの形状を誇張して図示している。
【0039】
次に、作業者は、キーボード5cを通じて必要な作業用データを入力する(
図2のステップS2)。そして、作業者は、制御コンピュータ5によって、第1、2作業用アーム101、102の制御信号を送信し、第1、2作業用アーム101、102の制御を開始する。これにより、第1作業用アーム101は、
図1に示すように、サーボプレス機9が上下方向に起立する状態でプレスユニット1を保持する。また、第2作業用アーム102は、プレスユニット1の左方に高周波誘導加熱機3を位置させる。
【0040】
次に、作業者は、プレスユニット1に中間金型15を取り付ける(
図2のステップS3)。
図6に示すように、中間金型15は、第1保持金型151と頭部成形金型152とで構成されている。第1保持金型151には、軸体110を保持可能な第1凹部151aが円柱状に凹設されている。ここで、第1凹部151aの長さ、すなわち、第1凹部151aの深さは、軸体110の軸長に比べて短くされている。第1保持金型151は、第1凹部151aをプレスヘッド9b側に向けた状態で支持部材7の第2台座75に取り付けられている。一方、頭部成形金型152には、半球状の第2凹部152aが形成されている。第2凹部152aは、第1凹部151aよりも大径に形成されている。頭部成形金型152は、第2凹部152aを第1保持金型151側に向けた状態でプレスヘッド9bに取り付けられている。これにより、第2凹部152aは、第1保持金型151との間に第1キャビティC1を形成する。
【0041】
次に、軸体加熱工程を行う(
図2のステップS4)。この軸体加熱工程は、
図3に示す制御フローに基づいて行われる。この軸体加熱工程では、軸体110を第1、2ワークW1、W2の各挿通孔W10、W20に挿通させずに非接触の状態で、軸体110を加熱する。軸体加熱工程を行うに当たっては、まず始めに、作業者は、軸体110を第1保持金型151に保持させる(ステップS401)。具体的には、
図6に示すように、作業者は、軸体110を第1凹部151a内に挿入することで、軸体110を第1保持金型151に保持させる。上記のように、第1凹部151aの長さは軸体110の軸長に比べて短いため、第1保持金型151に保持された軸体110は、軸方向の一端側を第1凹部151aから露出させつつ、軸方向に起立した状態となる。なお、軸体110を第1凹部151a内に挿入するに当たっては、制御コンピュータ5で
図12等に示す第3作業用アーム103を制御して行う。
【0042】
軸体110を第1保持金型151に保持させた後、作業者は、制御コンピュータ5によって、サーボプレス機9の制御信号を送信する(
図3のステップS402)。これにより、プレスユニット1では、サーボプレス機9がプレスヘッド9bを作動させる。このため、プレスヘッド9bが
図1に示す初期位置から第2台座75、ひいては、第1保持金型151に向かって下降を開始する(
図3のステップS403)。プレスヘッド9bの下降は、プレスヘッド9bが待機位置に到達するまで継続する(ステップS404:NO)。そして、
図6、7に示すように、作業空間7d内において、プレスヘッド9bが待機位置に到達すれば、サーボプレス機9は、プレスヘッド9bの下降を停止する(ステップS404:YES)。
【0043】
このように、プレスヘッド9bが待機位置に到達すれば、制御コンピュータ5は、第2作業用アーム102に制御信号を送信する。これにより、
図7の黒色矢印で示すように、第2作業用アーム102は、高周波誘導加熱機3をプレスユニット1に向けて移動させる。これにより、第1高周波誘導コイル3bは、
図1に示す退避位置から
図7に示す加熱位置に向けて移動を開始する(
図3のステップS405)。ここで、第1高周波誘導コイル3bが加熱位置に到達していなければ、第2作業用アーム102は高周波誘導加熱機3の移動を継続する(ステップS406:NO)。そして、第1高周波誘導コイル3bが加熱位置に到達すれば、第2作業用アーム102は高周波誘導加熱機3の移動を停止する(ステップS406:YES)。
【0044】
第1高周波誘導コイル3bが加熱位置に到達することにより、
図8に示すように、第1高周波誘導コイル3bの先端部31は、作業空間7d内で軸体110に接近する。そして、先端部31に形成された凹部31a内に、軸体110の一端側が収容される。なお、第1高周波誘導コイル3bが加熱位置に到達しても、凹部31aを含め、第1高周波誘導コイル3bと軸体110とは接触しない。
【0045】
このように、第1高周波誘導コイル3bが加熱位置にある状態で、制御コンピュータ5は通電コントローラ3cに制御信号を送信する。これにより、通電コントローラ3cは、第1高周波誘導コイル3bに向けて通電を開始する。このため、第1高周波誘導コイル3bは磁力線を発生させる。ここで、軸体110は、複数の炭素繊維CFを含んだCFRTP製であることから、炭素繊維CFが導電性及び優れた伝熱性を発揮する。このため、凹部31a内に収容された軸体110は、磁力線の影響によって内部に渦電流が発生する。これにより、軸体110は、渦電流に基づくジュール熱で発熱する。こうして、軸体110に対して、第1高周波誘導コイル3bによる誘導加熱が開始される(
図3のステップS407)。また、温度センサは、軸体110の温度を検出する。
【0046】
この軸体110に対する誘導加熱は、軸体110の一端側が制御プログラムによって予め設定された設定温度に達した後、予め設定された設定時間が経過するまで継続される(ステップS408:NO)。そして、軸体110の一端側の温度が設定温度に達し、設定時間が経過すれば(ステップS408:YES)、制御コンピュータ5は、通電コントローラ3cから誘導コイル3への通電を終了させる。こうして、軸体110に対する誘導加熱が終了する(ステップS409)。この誘導加熱を経ることにより、軸体110の一端側は、発熱によって塑性変形可能な軟化状態となる。
【0047】
軸体110に対する誘導加熱が終了すれば、制御コンピュータ5は、第2作業用アーム102を再び制御し、高周波誘導加熱機3をプレスユニット1から遠ざける。これにより、第1高周波誘導コイル3bは、
図7に示す加熱位置から
図1に示す退避位置に向けて移動を開始する(
図3のステップS410)。第2作業用アーム102による高周波誘導加熱機3の移動は、第1高周波誘導コイル3bが退避位置に到達するまで継続する(ステップS411:NO)。そして、第1高周波誘導コイル3bが退避位置に到達すれば、第2作業用アーム102は高周波誘導加熱機3の移動を停止する(ステップS411:YES)。こうして、軸体加熱工程が終了する。
【0048】
次に、中間成形工程を行う(
図2のステップS5)。この中間成形工程は、
図4に示す制御フローに基づいて行われる。中間成形工程では、制御コンピュータ5がサーボプレス機9を制御する。これにより、サーボプレス機9は、
図9の白色矢印で示すように、待機位置にあるプレスヘッド9bをプレス位置に向けて下降させる(
図4のステップS501)。上記のように、サーボプレス機9において、プレスヘッド9bは、サーボモータによって速度や圧力を適宜変更しつつ、プレス機本体9aから伸縮可能となっている。このため、制御コンピュータ5は、待機位置からプレス位置に向けてプレスヘッド9bを下降させるに当たっては、まず第1速度でプレスヘッド9bを下降させる。また、この際、制御コンピュータ5は、プレスヘッド9bの圧力を第1圧力に設定する。
【0049】
こうして、プレスヘッド9bがプレス位置に向けて下降し、第1保持金型151と頭部成形金型152とが接近することで、
図9に示すように、第1保持金型151に保持された軸体110が頭部成形金型152の第2凹部152a内に進入する。そして、軸体110が第2凹部152aの内周面と当接することにより、サーボプレス機9は、頭部成形金型152が軸体110に当接したことを検知し、第1当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。制御コンピュータ5は、第1当接検知信号の受信の有無により、頭部成形金型152と軸体110との当接の有無を判断する。このため、制御コンピュータ5は、第1当接検知信号を受信するまでは(
図4のステップS502:NO)、第1速度かつ第1圧力でプレスヘッド9bを下降させる。一方、制御コンピュータ5は、第1当接検知信号を受信すれば(ステップS502:YES)、第1速度よりも徐々に速度を低下させつつ、プレス位置に向けてプレスヘッド9bを下降させる。同時に、制御コンピュータ5は、第1圧力から徐々に圧力を増大させる。
【0050】
これにより、プレスヘッド9bは、頭部成形金型152によって軸体110の一端側を塑性変形させつつ、プレス位置に向けてさらに下降する。そして、中間成形工程では、プレスヘッド9bがプレス位置に到達することにより、第1保持金型151と頭部成形金型152とが当接する。また、サーボプレス機9は、第1保持金型151と頭部成形金型152との当接を検知することで、第2当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。制御コンピュータ5は、第2当接検知信号の受信の有無により、第1保持金型151と頭部成形金型152との当接の有無を判断する。このため、制御コンピュータ5は、第2当接検知信号を受信するまでは(ステップS503:NO)、引き続きプレスヘッド9bを下降させる。一方、制御コンピュータ5は、第2当接検知信号を受信すれば(ステップS503:YES)、第1保持金型151と頭部成形金型152とによって、軸体110を所定の保持圧力で保持する(ステップS504)。なお、この保持圧力は、制御プログラムによって予め設定されている。
【0051】
これにより、
図10に示すように、軸体110の一端側には、第1キャビティC1によって第1頭部11aが形成される。また、軸体110において、第1凹部151a内に収容された部分によって、軸部11bが形成される。こうして、軸体110から、第1頭部11a及び軸部11bが形成された中間具111が得られる。第1頭部11aは軸部11bよりも大径をなしている。また、軸部11bは、第1頭部11aと一体をなしており、軸方向に延びている。
【0052】
この第1保持金型151と頭部成形金型152とによる軸体110の保持は、制御プログラムによって予め設定された保持時間が経過するまで継続される(
図4のステップS505:NO)。このため、中間成形工程では、上記の軸体加熱工程において加熱された軸体110、ひいては、軸体110から得られた中間具111の熱が中間金型15である第1保持金型151及び頭部成形金型152に吸熱される。そして、保持時間が経過すれば(ステップS505:YES)、制御コンピュータ5は、サーボプレス機9を制御し、
図11の白色矢印で示すように、プレスヘッド9bを初期位置に向けて変位させる(
図4のステップS506)。これにより、
図11に示すように、中間具111を中間金型15から取り出す。こうして、中間成形工程が終了する。なお、図示を省略するものの、中間金型15からの中間具111の取り出しは、第3作業用アーム103によって行う。
【0053】
次に、作業者は、中間金型15に換えて、締結金型17をプレスユニット1に取り付ける(
図2のステップS6)。
図12に示すように、締結金型17は、第2保持金型171と頭部成形金型152とで構成されている。つまり、本実施例では、頭部成形金型152が中間金型15の一部と締結金型17の一部とを兼ねている。このため、本実施例では、中間金型15から締結金型17への交換は、第1保持金型151と第2保持金型171とを交換するだけで足りる。第2保持金型171には、中間具111の第1頭部11aを保持可能な半球状の第3凹部171aが凹設されている。第2保持金型171は、第3凹部171aをプレスヘッド9b側に向けた状態で支持部材7の第2台座75に取り付けられている。これにより、第3凹部171aと第2凹部152aとが対面している。また、締結金型17では、第2凹部152aは、第2ワークW2との間に第2キャビティC2を形成する。なお、第2凹部152aの形状は半球状に限らず、適宜設計することができる。また、第3凹部171aは、第2凹部152aの形状に応じて適宜設計することができる。さらに、プレスユニット1に対する中間金型15や締結金型17の取り付けは、第3作業用アーム103や他の作業用アーム等を用いて行っても良い。
【0054】
次に、軸部加熱工程を行う(
図2のステップS7)。この軸部加熱工程では、軸部11bを第1、2ワークW1、W2の各挿通孔W10、W20に挿通させつつ非接触の状態で、軸部11bを加熱する。軸部加熱工程を行うに当たっては、
図12に示すように、作業者は、中間成形工程で得られた中間具111を準備するとともに、締結を行う第1ワークW1及び第2ワークW2を準備する。これらの第1、2ワークW1、W2には、それぞれ軸部11bを挿通可能な挿通孔W10、W20が貫設されている。第1頭部11aは、各挿通孔W10、W20よりも大径である。そして、制御コンピュータ5が第3作業用アーム103に制御信号を送信する。これにより、第3作業用アーム103は、中間具111を第2保持金型171まで運搬し、第1頭部11aを第3凹部171aに載置する。こうして、第1頭部11aが第3凹部171aに保持される。これにより、中間具111では、軸部11bにおける第1頭部11aの反対側、つまり、軸部11bの他端側が頭部成形金型152の第2凹部152aに向かって延びる状態となる。また、第3作業用アーム103は、第1ワークW1を中間具111まで運搬し、挿通孔W10に軸部11bを挿通させる。これにより、第1ワークW1は第2保持金型171に載置される。さらに、第3作業用アーム103は、第2ワークW2を中間具111まで運搬し、挿通孔W10と挿通孔W20とを整合させつつ、挿通孔W20に軸部11bを挿通させる。こうして、第1ワークW1と第2ワークW2と中間具111とが第1組付体A1を構成する。なお、第3作業用アーム103は、挿通孔W20に軸部11bを挿通させた後も第2ワークW2を保持することで、第1組付体A1を保持し続ける。また、
図12〜
図16では、説明を容易にするため、挿通孔W10、W20の形状を誇張して図示しているものの、挿通孔W10、W20と軸部11bとは、ほぼ同径に形成されている。
【0055】
次に、軸体加熱工程と同様、制御コンピュータ5がサーボプレス機9を制御することにより、プレスヘッド9bを初期位置から待機位置に変位させる(
図12及び
図13参照)。プレスヘッド9bが待機位置に到達すれば、制御コンピュータ5は、第2作業用アーム102に制御信号を送信し、
図13に示すように、第1高周波誘導コイル3bを加熱位置まで移動させる。第1高周波誘導コイル3bが加熱位置に到達することにより、第1高周波誘導コイル3bの先端部31に形成された凹部31a内に、軸部11bの他端側が収容される。なお、この場合も、第1高周波誘導コイル3bと軸部11bとは接触しない。
【0056】
そして、制御コンピュータ5が通電コントローラ3cに制御信号を送信し、通電コントローラ3cが第1高周波誘導コイル3bに向けて通電を開始することにより、第1高周波誘導コイル3bによる軸部11bに対する誘導加熱が開始される。また、温度センサは軸部11bの温度を検出する。そして、軸体加熱工程と同様、軸部11bの他端側の温度が設定温度に達した後、設定時間が経過することにより、軸部11bに対する誘導加熱が終了する。こうして、軸部11bの他端側は、発熱によって塑性変形可能な軟化状態となる。
【0057】
また、軸部11bに対する誘導加熱が終了すれば、軸体加熱工程と同様に、第1高周波誘導コイル3bを退避位置に移動させる。こうして、第1高周波誘導コイル3bによる軸部加熱工程が終了する。
【0058】
次に、締結工程を行う(
図2のステップS8)。締結工程を行うに当たっては、中間成形工程と同様、制御コンピュータ5がサーボプレス機9を制御し、
図14の白色矢印で示すように、待機位置にあるプレスヘッド9bをプレス位置に向けて下降させる。この際も、制御コンピュータ5は、まずは第1速度でプレスヘッド9bを下降させるとともに、プレスヘッド9bの圧力を第1圧力に設定する。
【0059】
こうして、プレスヘッド9bがプレス位置に向けて下降することで、軸部11bの他端側が頭部成形金型152の第2凹部152a内に進入する。これにより、サーボプレス機9は、頭部成形金型152が軸体11bに当接したことを検知し、第3当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。制御コンピュータ5は、第3当接検知信号を受信することにより、中間成形工程と同様、第1速度よりも徐々に速度を低下させつつ、プレス位置に向けてプレスヘッド9bを下降させる。同時に、制御コンピュータ5は、第1圧力から徐々に圧力を増大させる。
【0060】
これにより、プレスヘッド9bは、頭部成形金型152によって軸部11bの他端側を塑性変形させつつ、プレス位置に向けてさらに下降する。そして、
図15に示すように、締結工程では、プレスヘッド9bがプレス位置に到達することにより、第2ワークW2と頭部成形金型152とが当接する。また、サーボプレス機9は、第2ワークW2と頭部成形金型152とが当接を検知することで、第4当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。制御コンピュータ5は、第2当接検知信号を受信することにより、第2保持金型171と頭部成形金型152とによって、第1組付体A1を所定の保持圧力で所定の保持時間が経過するまで保持する。なお、この際の保持圧力及び保持時間は中間成形工程と同様である。なお、中間成形工程と締結工程とで、保持圧力及び保持時間が異なるように設定しても良い。
【0061】
こうして、軸部11bの他端側には、第2キャビティC2によって第2頭部11cが形成される。これにより、中間具111から締結具11が得られる。上記のように、中間具111を形成する軸体110がCFRTP製であることから、締結具11もCFRTP製である。締結具11において、第2頭部11cは、軸部11bを挟んで第1頭部11aと対向している。また、第1頭部11aと同様、第2頭部11cは軸部11bよりも大径をなしており、第1、2ワークW1、W2の挿通孔W10、W20よりも大径となっている。これにより、
図16に示すように、挿通孔W10、W20に挿通された軸部11bは、第1頭部11a及び第2頭部11cによって両側から抜け止めされる。こうして、第1、2ワークW1、W2が締結具11によって締結される。
【0062】
また、保持時間が経過するまで第2保持金型171と頭部成形金型152とによって、締結具11及び第1、2ワークW1、W2が保持されることにより、軸部加熱工程において、加熱された中間具111の熱、ひいては締結具11の熱についても、締結金型17である第2保持金型171及び頭部成形金型152に吸熱される。そして、保持時間が経過すれば、制御コンピュータ5は、サーボプレス機9を制御してプレスヘッド9bを初期位置に向けて変位させる。これにより、第3作業用アーム103は、締結具11によって締結された第1、2ワークW1、W2を締結金型17から取り出す(
図2のステップS9)。こうして、締結工程が終了し、第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業が完了する。
【0063】
このように、この締結装置では、軸体加熱工程及び軸部加熱工程を誘導加熱可能な第1高周波誘導コイル3bによって行う。このため、軸体加熱工程では、第1高周波誘導コイル3bによる誘導加熱で軸体110の一端側を非接触で直接かつ局所的に加熱することができる。の際、軟化した樹脂が熱源に付着し難い。このため、この締結装置では、軸体110を加熱するに当たって、中間金型15を加熱する必要がない。これにより、加熱された軸体110に比べ、中間金型15を低温とし、中間成形工程において、軸体110から得られた中間具111の熱を中間金型15に吸熱させることができる。このため、中間具111を素早く冷却することができる。また、軸部加熱工程では、第1高周波誘導コイル3bによる誘導加熱で軸部11bの他端側を非接触で直接かつ局所的に加熱することができる。この際、軟化した樹脂が熱源に付着し難い。このため、この締結装置では、軸体11bを加熱するに当たっても、締結金型17を加熱する必要がない。これにより、軸部11bが加熱された中間具111に比べ、締結金型17についても低温とし、締結工程において、中間具111から得られた締結具11の熱を締結金型17に吸熱させることができる。この結果、この締結装置では、中間具111や締結具11を素早く冷却することができる。つまり、この締結装置によれば、軸部加熱工程から、中間成形工程及び軸体加熱工程を経て締結工程まで、各工程を迅速に行うことができる。
【0064】
したがって、実施例1の締結装置によれば、CFRTP製の締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を迅速に行うことが可能である。
【0065】
特に、
図5に示すように、軸体110では、軸方向の一端側から他端側まで各炭素繊維CFが延びている。このため、中間成形工程及び締結工程を経ることにより、締結具11では、
図16に示すように、各炭素繊維CFが第1頭部11aから軸部11bを経て第2頭部11cまで延びることとなる。このため、第1、2頭部11a、11c及び軸部11bを炭素繊維CFによって好適に補強することが可能となっている。このため、たとえ第1ワークW1や第2ワークW2に大きな荷重が作用した場合であっても、第1ワークW1や第2ワークW2によって第1、2頭部11a、11cが変形し難く、第1ワークW1と第2ワークW2との締結が解除され難くなっている。これにより、この締結装置によれば、第1ワークW1と第2ワークW2とをCFRTP製の締結具11で強固に締結することができる。
【0066】
また、軸部加熱工程において、第1高周波誘導コイル3bによる誘導加熱で軸部11bの他端側を局所的に加熱することにより、中間成形工程で既に形成されている第1頭部11aは、軸部11bの熱の影響を受け難くなっている。このため、軸部11bを誘導加熱しても、それによって第1頭部11aは熱変形し難くなっており、第1ワークW1と第2ワークW2とを締結した際の締結具11の品質を高くすることが可能となっている。また、第1高周波誘導コイル3bによる誘導加熱で軸部11bの他端側を局所的に加熱することにより、第1ワークW1や第2ワークW2は、軸部11bの誘導加熱時の影響を受け難くなっている。
【0067】
さらに、この締結装置では、軸体加熱工程で軸体110を誘導加熱する場合も、軸部加熱工程で軸部11bを誘導加熱する場合も、単一の第1高周波誘導コイル3bで行っている。これにより、軸体加熱工程と軸部加熱工程とで、別々の高周波誘導コイルを用いる場合に比べて、締結装置の構成を簡素化することが可能となっている。
【0068】
実施例1の締結装置では、以下の変形例1、2に示す方法によっても、締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を行うことが可能である。
【0069】
(変形例1)
変形例1では、軸体加熱工程において、第1ワークW1及び第2ワークW2が挿通された状態にある軸体110に対して、非接触の状態で第1高周波誘導コイル3bによる誘導加熱を行う。他の工程は、変形例1と同様である。この場合も、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0070】
(変形例2)
変形例2では、準備工程において、予め形成された中間具111を準備する。これにより、変形例2では、プレスユニット1に対して中間成形金型15を取り付けることが不要となる。また、変形例2では、実施例1における軸体加熱工程及び中間成形工程を省略することができる。そして、変形例2では、軸部加熱工程において、中間具111の軸部11bを第1、2ワークW1、W2の各挿通孔W10、W20に挿通させつつ非接触の状態で、軸部11bを加熱する。これにより、変形例2では、締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業をより迅速に行うことが可能となる。
【0071】
(実施例2)
実施例2の締結装置は、高周波誘導加熱機3が第1高周波誘導コイル3bに換えて、
図18に示す第2高周波誘導コイル3dを有している。第2高周波誘導コイル3dも本発明における「高周波誘導コイル」の一例である。第2高周波誘導コイル3dには、先端部32と先端部33とが形成されている。先端部32は、実施例1における先端部31と同様の形状をなしている。先端部33は、先端部32と対称の形状となっている。つまり、先端部32には凹部32aが形成されており、先端部33には凹部33aが形成されている。これらの凹部32a及び凹部33aは、軸体110を囲包可能となっている。先端部32と先端部33とは、双方の間に第1ワークW1及び第2ワークW2を収容可能な間隔を設けつつ、軸体110、ひいては、締結具11の軸方向に整列して配置されている。また、この締結装置では、通電コントローラ3c(
図1参照)は、第2高周波誘導コイル3dに電力を供給可能となっている。この締結装置における他の構成は実施例1の締結装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0072】
この締結装置では、以下の締結方法によって、締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を行う。まず始めに、作業者は、実施例1の締結装置と同様、キーボード5cを通じて必要な作業用データを入力する。そして、作業者は、制御コンピュータ5によって、第1、2作業用アーム101、102の制御信号を送信し、第1、2作業用アーム101、102の制御を開始する。この際、第1作業用アーム101は、
図1に示す状態から右方向にプレスユニット1を90°回転させてプレスユニット1を保持する。つまり、プレスユニット1では、サーボプレス機9が左右方向に水平な状態となっている。また、第2作業用アーム102は、高周波誘導加熱機3を保持しつつ、プレスユニット1の上方に高周波誘導加熱機3を位置させる。
【0073】
次に、
図17に示すように、作業者は、プレスユニット1に締結金型17を取り付ける。つまり、作業者は、プレスヘッド9bに対して、頭部成形金型152を取り付ける。この際、頭部成形金型152は、第2凹部152aを支持部材7の第2台座75側に向けた状態とする。また、作業者は、第2台座75に対して、第2保持金型171を取り付ける。この際、第2保持金型171は、第3凹部171aを頭部成形金型152側に向けた状態とする。第2凹部152aは、第1ワークW1との間で第3キャビティC3を形成する。また、第3凹部171aは、第2ワークW2との間で第4キャビティC4を形成する。
【0074】
次に、軸体110と、第1ワークW1と、第2ワークW2とを準備する。そして、制御コンピュータ5によって第3作業用アーム103を制御し、第1ワークW1の挿通孔W10と、第2ワークW2の挿通孔W20とに軸体110を挿通させる。これにより、第1ワークW1と、第2ワークW2と、軸体110とにより、第2組付体A2が構成される。次に、第3作業用アーム103は、第1ワークW1を保持しつつ、第2組付体A2を作業空間7d内で頭部成形金型152と第2保持金型171との間に配置する。この際、第3作業用アーム103は、第2組付体A2において軸体110が上下方向に直交する状態、つまり、軸体110が第2凹部152a及び第3凹部171aに対向する状態で、頭部成形金型152と第2保持金型171との間に第2組付体A2を配置する。なお、
図17〜
図20においても、説明を容易にするため、挿通孔W10、W20の形状を誇張して図示しているものの、軸体110、ひいては軸部11bと、挿通孔W10、W20とは、ほぼ同径に形成されている。このため、頭部成形金型152と第2保持金型171との間に第2組付体A2を配置した際に、挿通孔W10、W20から軸体110が抜け落ちることが確実性高く防止されている。
【0075】
次に、軸体加熱工程を行う。この軸体加熱工程では、軸体110を第1、2ワークW1、W2の各挿通孔W10、W20に挿通させつつ非接触の状態で、軸体110を加熱する。制御コンピュータ5がサーボプレス機9を制御することにより、プレスヘッド9bを初期位置から待機位置に変位させる。また、制御コンピュータ5は、第2作業用アーム102に制御信号を送信し、高周波誘導加熱機3を下降させて、
図18に示すように、第2高周波誘導コイル3dを加熱位置に移動させる。これにより、第2高周波誘導コイル3dでは、先端部32に形成された凹部32a内に軸体110の一端側が収容され、先端部33に形成された凹部33a内に軸体110の他端側が収容される。なお、この場合も、第2高周波誘導コイル3dと軸体110とは接触しない。
【0076】
そして、制御コンピュータ5が通電コントローラ3cに制御信号を送信し、通電コントローラ3cが第2高周波誘導コイル3dに向けて通電を開始することにより、第2高周波誘導コイル3dによる軸体110に対する誘導加熱が開始される。こうして、第2高周波誘導コイル3dにより、軸体110の一端側と他端側とが同時に加熱される。このため、軸体110は、両端が発熱によって塑性変形可能な軟化状態となる。そして、実施例1の締結装置と同様、軸体110の一端側及び他端側の温度が設定温度に達した後、設定時間が経過することで、軸体110に対する誘導加熱が終了する。これにより、第2作業用アーム102は、第2高周波誘導コイル3dを退避位置に移動させる。こうして、軸体加熱工程が終了する。
【0077】
次に、制御コンピュータ5がサーボプレス機9を制御し、
図19の白色矢印で示すように、待機位置にあるプレスヘッド9bをプレス位置に向けて移動させる。この際も、制御コンピュータ5は、まずは第1速度でプレスヘッド9bを移動させるとともに、プレスヘッド9bの圧力を第1圧力に設定する。また、同図の黒色矢印で示すように、プレスヘッド9bがプレス位置に移動することに合わせて、第3作業用アーム103は、第2組付体A2を第2保持金型171に徐々に近づける。
【0078】
こうして、プレスヘッド9bがプレス位置に向けて移動することで、軸部110の一端側が頭部成形金型152の第2凹部152a内に進入するとともに、軸部110の他端側が第2保持金型171の第3凹部171a内に進入する。そして、頭部成形金型152が軸部110の一端側に当接すると同時に、第2保持金型171が軸部110の他端側に当接する。これにより、実施例1の締結装置と同様、サーボプレス機9は、頭部成形金型152が軸部110に当接したことを検知し、第1当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。そして、制御コンピュータ5は、第1当接検知信号を受信すれば、実施例1の締結装置と同様にサーボプレス機9を制御して、第1速度よりも徐々に速度を低下させつつ、プレス位置に向けてプレスヘッド9bを移動させる。同時に、制御コンピュータ5は、第1圧力から徐々に圧力を増大させる。
【0079】
これにより、プレスヘッド9bは、頭部成形金型152によって軸体110の一端側を塑性変形させつつ、プレス位置に向けてさらに移動する。また、第2保持金型171によって軸体110の他端側も同様に塑性変形する。そして、
図20に示すように、プレスヘッド9bがプレス位置に到達することにより、この締結装置では、第1ワークW1と頭部成形金型152とが当接するとともに、第2ワークW2と第2保持金型171とが当接する。また、サーボプレス機9は、第1ワークW1と頭部成形金型152とが当接を検知することで、第5当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。制御コンピュータ5は、第5当接検知信号を受信すれば、サーボプレス機9を制御して、第2保持金型171と頭部成形金型152とによって、第2組付体A2を所定の保持圧力で所定の保持時間が経過するまで保持する。なお、この際の保持圧力及び保持時間は実施例1の締結装置と同様である。
【0080】
こうして、軸体110の一端側には、第3キャビティC3によって第1頭部11aが形成され、軸体110の他端側には、第4キャビティC4によって第2頭部11cが形成される。また、第1頭部11aと第2頭部11cとの間には、軸部11bが形成される。こうして、軸体110から締結具11が得られる。これにより、この締結装置でも、第1、2ワークW1、W2が締結具11によって締結され、第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業が完了する。また、この締結装置でも、締結具11の熱は、締結金型17である第2保持金型171及び頭部成形金型152に吸熱される。
【0081】
このように、この締結装置では、プレスユニット1に中間金型15を取り付ける必要がなく、締結工程では、中間具111を経ることなく、軸体110から締結具11を直接得ることができる。このため、この締結装置では、実施例1の締結装置に比べて、締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業をより迅速に行うことが可能となっている。
【0082】
また、この締結装置では、軸体加熱工程において、単一の第1高周波誘導コイル3bによって、軸体110の一端側と他端側とを同時に誘導加熱することが可能となっている。このため、軸体110の一端側のみを誘導加熱する高周波誘導コイルと、軸体110の他端側のみを誘導加熱する高周波誘導コイルとを用いる場合に比べて、締結装置の構成を簡素化することが可能となっている。この締結装置における他の作用は、実施例1の締結装置と同様である。
【0083】
以上において、本発明を実施例1、2及び変形例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2及び変形例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0084】
例えば、実施例1の締結装置において、軸部加熱工程を行う前に中間成形工程を繰り返し実行することにより、中間具111のみを予め量産しても良い。
【0085】
また、実施例1の締結装置において、軸体110の一端側が設定温度に達するか否かを問わず、設定時間が経過することのみによって軸体110に対する誘導加熱を終了させても良い。また、軸部11bの他端側の温度が設定温度に達するか否かを問わず、設定時間が経過することのみによって軸部11bに対する誘導加熱を終了させても良い。実施例2の締結装置においても同様である。
【0086】
さらに、実施例2の締結装置において、高周波誘導加熱機3は、軸体110の一端側のみを誘導加熱する高周波誘導コイルと、軸体110の他端側のみを誘導加熱する高周波誘導コイルとを有していても良い。
【0087】
また、実施例1、2の締結装置について、中間金型15や締結金型17を冷却液によって冷却可能に構成しても良い。
【0088】
さらに、軸体110及び中間具111、ひいては締結具11は、交差する複数の炭素繊維CFを含んでいても良い。