(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
本発明は、より良いBcr−Ablキナーゼ阻害活性(特にT315I変異に対する)、より低い副作用および/またはより良い薬力学/薬物動態性能を有し、Bcr−Ablキナーゼによって媒介される疾患の治療に用いられる、新規(ヘテロ)アリールアミド系化合物、前記化合物を含む組成物、およびその使用を提供する。
【0006】
これに対して、本発明が採用する技術構成は以下の通りである。
【0007】
本発明の第一の局面では、式(I)で表される(ヘテロ)アリールアミド系化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物を提供する。
【化2】
但し、
Y
1は、CR
aまたはNから選択され;
Yは、独立してCR
aまたはNから選択され;
R
1は、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基からなる群から選択され、ここで、前記C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基は、R
1a基で置換されていてもよく;
R
2は、水素、C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基からなる群から選択され、ここで、前記C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基は、R
2a基で置換されていてもよく;
Zは、化学結合、O、S(O)
0−2、またはNR
bであり、或いは、
−Z−R
2は、全体として−SF
5を表し;
Arは、
【化3】
であり;
ここで、X
1〜X
8は、独立してCRまたはNから選択され、且つX
1、X
2、X
3およびX
4の少なくとも1つはNであるか、またはX
5、X
6、X
7およびX
8の少なくとも1つはNであり、
ここで、それぞれのP
1およびQ
1は、独立してO、S、NR
bまたはC(R)
2からなる群から選択され、それぞれのP
2およびQ
2は、独立してCRまたはNから選択され;
Hetは
【化4】
であり;
ここで、X
9は、O、S、NR
bまたはC(R)
2からなる群から選択され;
mは、0、1または2であり;
nは、0、1、2、3、4、5または6であり;
Raは、独立して水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、−N(C
1−6アルキル)
2、C
1−6アルキル基、C
1−6ハロゲン化アルキル基、またはC
1−6アルコキシル基からなる群から選択され;
R
bは、独立して水素、C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基からなる群から選択され;
R
1a、R
2aおよびRは、独立して水素、ハロゲン、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、−N(C
1−6アルキル)
2、C
1−6アルキル基、C
1−6ハロゲン化アルキル基、C
1−6アルコキシル基、C
3−7シクロアルキル基、C
3−7ヘテロシクロアルキル基、C
6−10アリール基、またはC
5−10ヘテロアリール基からなる群から選択され、或いは、
同一原子または隣接した原子上の2つのR基は、一緒にC
3−7シクロアルキル基、C
3−7ヘテロシクロアルキル基、C
6−10アリール基またはC
5−10ヘテロアリール基を形成してもよい。
【0008】
また、別の局面では、本発明は、本発明の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。具体的な実施形態において、本発明の化合物は、有効量で前記医薬組成物に提供される。具体的な実施形態において、本発明の化合物は治療有効量で提供される。具体的な実施形態において、本発明の化合物は予防有効量で提供される。
【0009】
また、別の局面では、本発明は、本発明の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
また、別の局面では、本発明は、本発明の化合物、他の治療薬および薬学的に許容される担体、アジュバントまたは媒介物を含むキットを提供する。
【0011】
また、別の局面では、本発明は、Bcr−Ablによる疾患を治療及び/又は予防するための薬物の調製への、本発明の化合物の使用を提供する。
【0012】
また、別の局面では、本発明は、本発明の化合物または本発明の組成物を被験者に投与することで、前記被験者のBcr−Ablによる疾患を治療および/または予防することを提供する。
【0013】
また、別の局面では、本発明は、Bcr−Ablによる疾病の治療および/または予防のための本発明の化合物または本発明の組成物を提供する。
【0014】
具体的な実施形態において、前記疾患は、充実性腫瘍、肉腫、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍、甲状腺癌、胃癌、直腸癌、多発性骨髄腫、腫瘍形成(neoplasia)およびその他の増生性または増殖性疾患からなる群から選択される。
【0015】
具体的な実施形態において、前記Bcr−Ablによる疾病は、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍、急性骨髄球白血病、甲状腺癌、転移浸潤性癌またはそれらの組み合わせである。
【0016】
また、別の局面では、本発明の化合物は、例えばCNS疾患、特に神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病)、運動ニューロン病(筋萎縮性側索硬化症)、筋ジストロフィー、自己免疫疾患および炎症性疾患(糖尿病および肺線維症)、ウイルス感染、プリオン病のような非悪性疾患または障害を含む、野生型Ablの異常活性化によるキナーゼ活性と関連する疾患または障害を治療および/または予防することに用いられる。
【0017】
具体的な実施形態において、経口、皮下、静脈内または筋肉内投与にて、前記化合物を給与する。具体的な実施形態において、前記化合物を長期投与する。
【0018】
本発明の他の目的および利点は、以下の具体的な実施形態、実施例および特許請求の範囲から、当業者に明らかである。
【0019】
定義
化学定義
以下、具体的な官能基と化学用語の定義についてより詳細に説明する。
【0020】
数値範囲が挙げられる場合、その範囲内の各値および部分範囲を含む。例えば、「C
1−6アルキル基」は、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
1−6、C
1−5、C
1−4、C
1−3、C
1−2、C
2−6、C
2−5、C
2−4、C
2−3、C
3−6、C
3−5、C
3−4、C
4−6、C
4−5、C
5−6アルキル基を含む。
【0021】
本明細書中に記載される場合、以下に定義される部分のいずれかは、種々の置換基で置換されていてもよいこと、およびそれぞれの定義は、以下に記載されるようなそれらの範囲内の置換された部分を含むことが、理解されるべきである。特に記載されない限り、用語「置換」は、以下に記載されるように定義される。
【0022】
「C
1−6アルキル基」は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を指し、本明細書では「低級アルキル」とも呼ばれる。一部の実施形態において、C
1−4アルキル基は特に好ましい。前記アルキル基の例として、メチル(C
1)、エチル(C
2)、n−プロピル(C
3)、イソプロピル(C
3)、n−ブチル(C
4)、tert−ブチル(C
4)、sec−ブチル(C
4)、イソブチル(C
4)、n−ペンチル(C
5)、3−ペンチル(C
5)、ペンチル(C
5)、ネオペンチル(C
5)、3−メチル−2−ブチル(C
5)、第3級アミル(C
5)、n−ヘキシル(C
6)が挙げられるが、それらに限定されない。特に説明されない限り、アルキル基のそれぞれは、独立に任意に置換されていても良く、即ち、置換されていない(「非置換アルキル基」)か、または、例えば1〜5個の置換基、1〜3個の置換基もしくは1個の置換基のような1個以上の置換基で置換されている(「置換アルキル基」)。一部の実施形態において、アルキル基は、非置換C
1−6アルキル基(例えば−CH
3)である。一部の実施形態において、アルキル基は、置換C
1−6アルキル基である。
【0023】
「C
1−C
6アルコキシ」とは、−OR基を指し、ここで、Rは、置換もしくは非置換C
1−C
6アルキル基である。一部の実施形態において、C
1−C
4アルコキシル基は特に好ましい。具体的に、前記のアルコキシル基として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、および1,2−ジメチルブトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)を指す。一部の実施形態において、ハロゲン基はF、Cl或はBrである。一部の実施形態において、ハロゲン基はClである。一部の実施形態において、ハロゲン基はFである。一部の実施形態において、ハロゲン基はBrである。
【0025】
したがって、「C
1−6ハロゲン化アルキル」は、1個以上のハロゲン基に置換されている前記の「C
1−6アルキル」を指す。一部の実施形態において、C
1−4ハロゲン化アルキルが特に好ましく、C
1−2ハロゲン化アルキル基が更に好ましい。例示的な前記ハロゲンアルキルとして、−CF
3、−CH
2F、−CHF
2、−CClF
2、−CHFCH
2F、−CH
2CHF
2、−CF
2CF
3、−CF
2CClF
2、−CF
2CH
3、−CCl
3、−CH
2Cl、−CHCl
2、2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチルなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
「C
3−7シクロアルキル基」とは、3〜7個の環炭素原子および0個のヘテロ原子を持つ非芳香族環式炭化水素基を指す。一部の実施形態において、C
3−6シクロアルキル基は特に好ましく、C
5−6シクロアルキル基が更に好ましい。シクロアルキル基には、さらに、前記シクロアルキル環が1個以上のアリール基或はヘテロアリール基と縮合した環系を含み、ここで、連結点はシクロアルキル環に位置し、また、このような場合、炭素の数は依然としてシクロアルキル系中の炭素の数を示す。例示的な前記シクロアルキル基として、シクロプロピル(C
3)、シクロプロペニル(C
3)、シクロブチル(C
4)、シクロブテニル(C
4)、シクロペンチル(C
5)、シクロペンテニル(C
5)、シクロヘキシル(C
6)、シクロヘキセニル(C
6)、シクロヘキサジエニル(C
6)、シクロヘプチル(C
7)、シクロヘプテニル(C
7)、シクロヘプタジエニル(C
7)、シクロヘプタトリエニル(C
7)などが挙げられるが、それらに限定されない。特に明記しない限り、シクロアルキル基は、それぞれ独立して、任意に置換されていてもよく、即ち、置換されていない(「非置換シクロアルキル基」)か、または1個以上の置換基に置換されている(「置換シクロアルキル基」)。一部の実施形態において、シクロアルキル基は非置換C
3−7シクロアルキル基である。一部の実施形態において、炭素環基は置換C
3−7シクロアルキル基である。
【0027】
「C
3−7ヘテロシクロアルキル基」は、環炭素原子と1〜4個の環ヘテロ原子を有する3〜7員非芳香環系の基であり、ここで、各ヘテロ原子は独立に窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リンとケイ素から選択される。1個以上の窒素原子を含むヘテロシクロアルキル基の中で、結合価が許容される限り、連結点は炭素または窒素原子であってもよい。一部の実施形態において、環炭素原子と1〜3個の環ヘテロ原子を有する3〜6員非芳香環系であるC
3−6ヘテロシクロアルキル基は特に好ましく;環炭素原子と1〜3個の環ヘテロ原子を有する5〜6員非芳香環系であるC
5−6ヘテロシクロアルキル基は更に好ましい。別段の説明がなければ、ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立に任意に置換されていても良く、即ち、置換されていない(「非置換ヘテロシクロアルキル基」)か、または1個以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロシクロアルキル基」)。一部の実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は非置換のC
3−7ヘテロシクロアルキル基である。一部の実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は置換されたC
3−7ヘテロシクロアルキル基である。ヘテロシクロアルキル基は、さらに、前記ヘテロシクロアルキル環が一つ或は複数のシクロアルキル基と縮合した環系を含み、ここで、連結点はシクロアルキル環上に位置する;或は、前記ヘテロシクロアルキル環が一つ或は複数のアリール基或はヘテロアリール基と縮合した環系を含み、その中、連結点はヘテロシクロアルキル環上に位置する。且つ、このような情況で、環員数は、依然としてヘテロシクロアルキル基の環の員数を示す。1個のヘテロ原子を含む例示的な3員ヘテロシクロアルキルの例として、アジリジニル、オキシラニル、チオレニル(thiorenyl)が挙げられるが、それらに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な4員ヘテロシクロアルキル基の例として、アゼチジニル、オキセタニル、およびチエタニルが挙げられるが、これらに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロシクロアルキル基の例として、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ジヒドロピロリル、およびピロリル−2,5−ジオンが挙げられるが、それに限定されない。2個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロシクロアルキルの例として、ジオキソラニル、オキサスルフラニル(oxasulfuranyl)、ジスルフラニル(disulfuranyl)、オキサゾリジン−2−オンが挙げられるが、これらには限定されない。3個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロシクロアルキル基の例として、トリアゾリニル、オキサジアゾリニル、およびチアジアゾリニルが挙げられるが、これらに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロシクロアルキル基の例として、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピリジニル、およびチアニル(thianyl)が挙げられるが、それらに限定されない。2個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロシクロアルキル基の例として、ピペラジニル、モルホリニル、ジチアニル、ジオキサニルが挙げられるが、それらに限定されない。3個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロシクロアルキルの例として、トリアジナニル(triazinanyl)が挙げられるが、それに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な7員ヘテロシクロアルキル基の例として、アゼパニル、オキセパニル、チエパニルが挙げられるが、これらに限定されない。C
6アリール環に縮合された例示的な5員ヘテロシクロアルキル基(本明細書では、5,6−二環式ヘテロシクロアルキルとも称される)として、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリノニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。C
6アリール環に縮合された例示的な6員ヘテロシクロアルキル基(本明細書では、6,6−二環式ヘテロシクロアルキル基とも称される)として、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルなどが挙げられるが、これらには限定されない。
【0028】
「C
6−10アリール基」は、6〜10個の環炭素原子および0個のヘテロ原子を有する単環式または多環式(例えば、二環式)の4n+2芳香環系(例えば、環状の配列で共有する6または10個のπ電子を有する)の基を指す。一部の実施形態において、アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「C
6アリール」;例えば、フェニル基)。一部の実施形態において、アリール基は、10個の環炭素原子を有する(「C
10アリール」;例えば、1−ナフチル、2−ナフチルなどのナフチル)。アリール基は、更に前記アリール環が1個以上のシクロアルキル基或はヘテロシクロアルキル基と縮合した環系を含み、且つ、連結点は前記アリール環に位置し、この場合、炭素原子の数は依然として前記アリール環系内の炭素原子の数を示す。別段の説明がない限り、アリール基はそれぞれ独立に置換されていてもよく、すなわち置換されていない(「非置換アリール基」)か、または1個以上の置換基で置換されている(「置換アリール基」)。一部の実施形態において、アリール基は非置換C
6−10アリール基である。一部の実施形態において、アリールは置換C
6−10アリール基である。
【0029】
「C
5−10ヘテロアリール基」は、環炭素原子および1〜4個の環ヘテロ原子を有する5〜10員の単環式または二環式の4n+2芳香環系(例えば、環状の配列で共有された6または10個のπ電子を有する)を有する基であり、ここで、各ヘテロ原子は独立に窒素、酸素および硫黄から選択される。1個以上の窒素原子を含むヘテロアリール基において、結合価が許容される限り、連結点は炭素または窒素原子であり得る。ヘテロアリール二環式環系は、一方または両方の環に1個以上のヘテロ原子を含み得る。ヘテロアリール基は、さらに前記ヘテロアリール環が一つ或は複数のシクロアルキル基或はヘテロシクロアルキル基と縮合した環システムを含み、且つ連結点は前記ヘテロアリール環に位置し、その場合、炭素原子の数は依然として前記ヘテロアリール環系中の炭素原子数を示す。一部の実施形態において、環炭素原子と1−4の環ヘテロ原子を有する5−6員単環式或は双環の4n+2芳香環系であるC
5−6ヘテロアリール基は特に好ましい。別段の説明がなければ、ヘテロアリール基はそれぞれ独立に任意に置換されてもよく、すなわち置換されていない(「非置換ヘテロアリール基」)か、または一つ以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロアリール基」)。一部の実施形態において、ヘテロアリール基は非置換5〜10員ヘテロアリール基である。一部の実施形態において、ヘテロアリール基は置換5〜10員ヘテロアリール基である。1個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基として、ピロリル、フラニル、およびチオフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。2個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基として、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、およびイソチアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。3個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基として、トリアゾリル、オキサジアゾリル、およびチアジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。4個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基として、テトラゾリルが挙げられるが、これに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基として、ピリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。2個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基として、ピリダジニル、ピリミジニル、およびピラジニルが挙げられるが、これらに限定されない。3または4個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基として、それぞれトリアジニルおよびテトラジニルが挙げられるが、これらに限定されない。1個のヘテロ原子を含む例示的な7員ヘテロアリール基として、アゼピニル、オキセピニル、およびチエピニルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な5,6−二環式ヘテロアリール基として、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズチアジアゾリル、インドリジニル、およびプリニルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な6,6−二環式ヘテロアリール基として、ナフチリジニル、プテリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、およびキナゾリニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
他の定義
用語「薬学的に許容される塩」とは、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、およびアレルギー応答などなしで、ヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用するために適切であり、そして合理的な利益/危険比に釣り合う、塩のことを指す。薬学的に許容される塩は、当該分野において周知である。例えば、Bergeらは、薬学的に許容される塩を、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19において詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩としては、適切な無機酸、無機塩基、有機酸、および有機塩基から誘導される塩が挙げられる。
【0033】
投与される「被験者」としては、ヒト(すなわち、任意の年齢群、例えば、小児被験者(例えば、乳児、小児、青年)または成人被験者(例えば、若年成人、中年成人または高齢成人)の男性または女性)および/または非ヒト動物、例えば、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類、ネコおよび/またはイヌ)が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、被験者は、ヒトである。一部の実施形態において、被験者は、非ヒト動物である。なお、本明細書において、「ヒト」、「患者」、および「被験者」という用語は、交換可能に使用される。
【0034】
「疾患」、「障害」および「病状」は、本明細書では交換可能に使用される。
他に特定されない限り、本明細書中で使用される用語「治療」は、被験者が特定の疾患、障害または病状を罹患している間に行われ、その疾患、障害または病状の重篤度を低下させるか、あるいは疾患、障害または病状の進行を遅延させるかまたは遅くする行為(「治療性治療」)を想定し、そしてまた、被験者が特定の疾患、障害または病状を罹患し始める前に行われる行為(「予防性治療」)を想定する。
【0035】
一般に、化合物の「有効量」とは、所望の生物学的応答を惹起するために充分な量のことを指す。当業者によって理解されるように、本発明の化合物の有効量は、所望の生物学的目標、化合物の薬物動態学、治療される疾患、投与様式、ならびに被験者の年齢、健康状態、および病状などの要因に依存して、変わり得る。有効量とは、治療有効量および予防有効量を含む。
【0036】
他に特定されない限り、本明細書中で使用される化合物の「治療有効量」とは、疾患、障害または病状の治療において治療上の利点を提供するか、あるいはその疾患、障害または病状に関連する1つまたは1つより多くの症状を遅延させるかまたは最小にするために充分な量である。化合物の治療有効量とは、その疾患、障害または病状の治療において治療上の利点を提供する、単独でまたは他の治療法と組み合わせての、治療剤の量を意味する。用語「治療有効量」は、治療全体を改善させる量、疾患または病状の症状または原因を減少するかまたは回避する量、あるいは別の治療剤の治療効力を増強する量を包含し得る。
【0037】
他に特定されない限り、本明細書中で使用される化合物の「予防有効量」とは、疾患、障害もしくは病状、またはその疾患、障害もしくは病状に関連する1種もしくは複数の症状を予防するため、あるいはその再発を予防するために充分な量である。化合物の予防有効量とは、その疾患、障害または病状の予防において予防上の利点を提供する、単独でかまたは他の薬剤と組み合わせての、治療剤の量を意味する。用語「予防有効量」は、予防全体を改善させる量、または別の予防剤の予防効果を増強する量を包含し得る。
【0038】
「Bcr−Abl1」とは、切断点クラスター領域(BCR)遺伝子のN末端エキソンおよびAbelson(Abl1)遺伝子の主要なC末端部分(エクソン2−11)からなる融合タンパク質である。最も一般的な融合転写産物が、210−kDaタンパク質(p210Bcr−Abl1)をコードし、一方、より稀な転写産物が190−kDaタンパク質(p190Bcr−Abl1)と230−kDaタンパク質(p230Bcr−Abl1)をコードする。これらのタンパク質のAbl1配列は、野生型タンパク質おいて厳密に調節されているが、Bcr−Abl1融合タンパク質において恒常的に活性化されたAbl1チロシンキナーゼドメインを含む。前記の失調されたチロシンキナーゼは、細胞の形質転換および増殖失調を招く複数の細胞シグナル伝達経路と相互作用する。
【0039】
「Bcr−Abl1変異体」とは、Bcr−Abl1における多数の単点突然変異を指し、Glu255→Lys、Glu255→Val、Thr315→Ile、Met244→Val、Phe317→Leu、Leu248→Val、Met343→Thr、Gly250→Ala、Met351→Thr、Gly250→Glu、Glu355→Gly、Gln252→His、Phe358→Ala、Gln252→Arg、Phe359→Val、Tyr253→His、Val379→Ile、Tyr253→Phe、Phe382→Leu、Glu255→Lys、Leu387→Met、Glu255→Val、His396→Pro、Phe311→Ile、His396→Arg、Phe311→Leu、Ser417→Tyr、Thr315→Ile、Glu459→Lys及びPhe486→Serが挙げられる。
【0040】
「c−Abl」とは、非突然変異野生型Abl1の全長遺伝子生成物である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
化合物
本明細書において、「本発明の化合物」とは、以下の式(I)、式(Ia)および式(Ib)で表れる化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物、または水和物を指す。
【0043】
一実施態様では、本発明は、式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化5】
但し、
Y
1は、CR
aまたはNから選択され;
Yは、独立してCR
aまたはNから選択され;
R
1は、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基からなる群から選択され、ここで、前記C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基は、R
1a基で置換されていてもよく;
R
2は、水素、C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基からなる群から選択され、ここで、前記C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基は、R
2a基で置換されていてもよく;
Zは、化学結合、O、S(O)
0−2、またはNR
bであり、或いは、
−Z−R
2は、全体として−SF
5を表し;
Arは、
【化6】
であり;
ここで、X
1〜X
8は、独立してCRまたはNから選択され、且つX
1、X
2、X
3およびX
4の少なくとも1つはNであるか、またはX
5、X
6、X
7およびX
8の少なくとも1つはNであり、
ここで、それぞれのP
1およびQ
1は、独立してO、S、NR
bまたはC(R)
2からなる群から選択され、それぞれのP
2およびQ
2は、独立してCRまたはNから選択され;
Hetは
【化7】
であり;
ここで、X
9は、O、S、NR
bまたはC(R)
2からなる群から選択され;
mは、0、1または2であり;
nは、0、1、2、3、4、5または6であり;
R
aは、独立して水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、−N(C
1−6アルキル)
2、C
1−6アルキル基、C
1−6ハロゲン化アルキル基、またはC
1−6アルコキシル基からなる群から選択され;
R
bは、独立して水素、C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基からなる群から選択され;
R
1a、R
2aおよびRは、独立して水素、ハロゲン、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、−N(C
1−6アルキル)
2、C
1−6アルキル基、C
1−6ハロゲン化アルキル基、C
1−6アルコキシル基、C
3−7シクロアルキル基、C
3−7ヘテロシクロアルキル基、C
6−10アリール基、またはC
5−10ヘテロアリール基からなる群から選択され、或いは、
同一原子または隣接した原子上の2つのR基は、一緒にC
3−7シクロアルキル基、C
3−7ヘテロシクロアルキル基、C
6−10アリール基またはC
5−10ヘテロアリール基を形成してもよい。
【0044】
一実施態様では、本発明は、前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
但し、
Arは、
【化8】
であり;
ここで、X
1は、CRであり、X
2〜X
4は、独立してCRまたはNから選択され、且つX
2、X
3およびX
4の少なくとも1つはNである。
【0045】
一実施態様では、本発明は、式(Ia)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化9】
但し、ArおよびHetは、本明細書のように定義される。
【0046】
一実施態様では、本発明は、前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
但し、
Arは、
【化10】
であり、ここで、X
1〜X
4は本明細書のように定義され;或いは、
Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化11】
ここで、Rは本明細書のように定義される。
【0047】
一実施態様では、本発明は、前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
但し、
Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化12】
【0048】
一実施態様では、本発明は、前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
但し、
Arは、
【化13】
であり、ここで、X
5〜X
8は、本明細書のように定義され;或いは、
Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化14】
ここで、Rは本明細書のように定義される。
【0049】
一実施態様では、本発明は、前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
但し、
Arは、
【化15】
であり、ここで、P
1、P
2、Q
1およびQ
2は本明細書のように定義される。
【0050】
一実施態様では、本発明は、前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
但し、
Hetは、
【化16】
であり、ここで、X
9はC(R)
2であり、m、nおよびRは本明細書のように定義され;或いは、
Hetは、1、2、3個またはのRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化17】
ここで、Rは本明細書のように定義され;或いは、
Hetは、以下の基から選択される:
【化18】
【0051】
一実施態様では、本発明は、前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
但し、
Hetは、
【化19】
であり、ここで、1つのX
9は、O、SまたはNR
bから選択され、他のX
9はC(R)
2であってもよく、m、n、RおよびR
bは本明細書のように定義され;或いは、
Hetは、以下の基から選択される:
【化20】
【0052】
一実施態様では、本発明は、式(Ib)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化21】
但し、
Arは、
【化22】
であり、ここで、X
1〜X
4は本明細書のように定義され;或いは、
Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化23】
Rは、水素、ハロゲン、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、−N(C
1−6アルキル)
2からなる群から選択される。
【0053】
一実施態様では、本発明は、式(Ib)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化24】
但し、
Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化25】
Rは、水素、ハロゲン、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、または−N(C
1−6アルキル)
2からなる群から選択される。
【0054】
一実施態様では、本発明は、式(Ib)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化26】
但し、
Arは、以下の基から選択される:
【化27】
Rは、水素、ハロゲン、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、または−N(C
1−6アルキル)
2からなる群から選択される。
【0055】
一実施態様では、本発明は、式(Ib)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化28】
但し、
Arは、以下の基から選択される:
【化29】
Rは、水素、ハロゲン、または水酸基からなる群から選択される。
【0056】
一実施態様では、本発明は、式(Ib)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化30】
但し、
Arは、
【化31】
であり、ここで、X
5〜X
8は、本明細書のように定義され;或いは、
Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化32】
Rは、水素、ハロゲン、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、−N(C
1−6アルキル)
2からなる群から選択される。
【0057】
一実施態様では、本発明は、式(Ic)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化33】
但し、
Arは、以下の基から選択される:
【化34】
【0058】
一実施態様では、本発明は、式(Ic)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化35】
但し、
Arは、以下の基から選択される:
【化36】
【0059】
一実施態様では、本発明は、式(Ic)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化37】
但し、
Arは、以下の基から選択される:
【化38】
【0060】
一実施態様では、本発明は、式(Ic)で表される前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【化39】
但し、
Arは、以下の基から選択される:
【化40】
【0061】
Y
1およびYについて
一実施形態では、Y
1はNであり;別の実施形態では、Y
1はCR
aであり;別の実施形態では、Y
1はCHである。
【0062】
一実施形態では、YはCR
aであり;別の実施形態では、YはNであり;別の実施形態では、YはCHである。
【0063】
R1について
一実施形態では、R
1は水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C
1−6アルキル基、またはC
1−6ハロゲン化アルキル基から選択される。別の実施形態では、R
1は水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、またはC
1−6アルキル基から選択される。別の実施形態では、R
1は水素、またはハロゲンから選択される。別の実施形態では、R
1は水素である。別の実施形態では、R
1はハロゲン(F、Cl、BrまたはI)である。別の実施形態では、R
1はニトリル基である。別の実施形態では、R
1はニトロ基である。別の実施形態では、R
1はC
1−6アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなど)である。別の実施形態では、R
1はC
1−6ハロゲン化アルキル基(−CF
3、−CH
2F、−CHF
2、−CClF
2、−CHFCH
2F、−CH
2CHF
2、−CF
2CF
3、−CF
2CClF
2、−CF
2CH
3、−CCl
3、−CH
2Cl、−CHCl
2、2,2,2-トリフルオロ-1,1-ジメチル-エチルなど)である。
【0064】
R
2およびZについて
一実施形態では、R
2は水素、C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基から選択される。別の実施形態では、R
2はC
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基から選択される。別の実施形態では、R
2は水素である。別の実施形態では、R
2はC
1−6アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなど)である。別の実施形態では、R
2はC
1−6ハロゲン化アルキル基(−CF
3、−CH
2F、−CHF
2、−CClF
2、−CHFCH
2F、−CH
2CHF
2、−CF
2CF
3、−CF
2CClF
2、−CF
2CH
3、−CCl
3、−CH
2Cl、−CHCl
2、2,2,2-トリフルオロ-1,1-ジメチル-エチルなど)である。
【0065】
一実施形態では、Zは化学結合である。別の実施形態では、ZはOである。別の実施形態では、ZはS(O)
0−2である。別の実施形態では、ZはNR
bである。別の実施形態では、ZはNHである。
【0066】
一実施形態では、−Z−R
2は全体として−SF
5を示す。
【0067】
Ar、X
1〜X
8、P
1、P
2、Q
1およびQ
2について
一実施形態では、Arは
【化41】
であり、ここで、X
1〜X
4は、独立してCRまたはNであり、X
1、X
2、X
3およびX
4の少なくとも1つはNである。別の実施形態では、Arは
【化42】
であり、ここで、X
5〜X
8は、独立してCRまたはNであり、X
5、X
6、X
7およびX
8の少なくとも1つはNである。
【0068】
前記のArについての実施形態では、X
1はCRであり;別の実施形態では、X
1はCHであり;別の実施形態では、X
1はNである。前記のArについての実施形態では、X
2はCRであり;別の実施形態では、X
2はCHであり;別の実施形態では、X
2はNである。前記のArについての実施形態では、X
3はCRであり;別の実施形態では、X
3はCHであり;別の実施形態では、X
3はNである。前記のArについての実施形態では、X
4はCRであり;別の実施形態では、X
4はCHであり;別の実施形態では、X
4はNである。前記のArについての実施形態では、X
5はCRであり;別の実施形態では、X
5はCHであり;別の実施形態では、X
5はNである。前記のArについての実施形態では、X
6はCRであり;別の実施形態では、X
6はCHであり;別の実施形態では、X
6はNである。前記のArについての実施形態では、X
7はCRであり;別の実施形態では、X
7はCHであり;別の実施形態では、X
7はNである。前記のArについての実施形態では、X
8はCRであり;別の実施形態では、X
8はCHであり;別の実施形態では、X
8はNである。
【0069】
一実施形態では、Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化43】
ここで、Rは請求項1のように定義される。
【0070】
一実施形態では、Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化44】
ここで、Rは請求項1のように定義される。
【0071】
一実施形態では、Arは、
【化45】
である。別の実施形態では、Arは
【化46】
である。別の実施形態では、Arは
【化47】
である。別の実施形態では、Arは
【化48】
である。別の実施形態では、Arは
【化49】
である。
【0072】
前記のArについての実施形態では、P
1はOであり;別の実施形態では、P
1はSであり;別の実施形態では、P
1はNR
bであり;別の実施形態では、P
1はNHであり;別の実施形態では、P
1はC(R)
2であり;別の実施形態では、P
1はCH
2である。前記のArについての実施形態では、Q
1はOであり;別の実施形態では、Q
1はSであり;別の実施形態では、Q
1はNR
bであり;別の実施形態では、Q
1はNHであり;別の実施形態では、Q
1はC(R)
2であり;別の実施形態では、Q
1はCH
2である。前記のArについての実施形態では、P
2はCRであり;別の実施形態では、P
2はCHであり;別の実施形態では、P
2はNである。前記のArについての実施形態では、Q
2はCRであり;別の実施形態では、Q
2はCHであり;別の実施形態では、Q
2はNである。
【0073】
一実施形態では、前記の
【化50】
部分は、以下の基から選択される:
【化51】
【0074】
一実施形態では、前記の
【化52】
部分は、以下の基から選択される:
【化53】
【0075】
一実施形態では、前記の
【化54】
部分は、以下の基から選択される:
【化55】
【0076】
一実施形態では、前記の
【化56】
部分は、以下の基から選択される:
【化57】
【0077】
一実施形態では、前記の
【化58】
部分は、以下の基から選択される:
【化59】
【0078】
一実施形態では、Arは、R
bまたはRによって置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
ここで、R
bおよびRは、本明細書のように定義される。
【0079】
Het、X
9、mおよびnについて
一実施形態では、Hetは
【化64】
である。
前記のHetについての実施形態では、X
9はOであり;別の実施形態では、X
9はSであり;別の実施形態では、X
9はNR
bであり;別の実施形態では、X
9はC(R)
2である。前記のHetについての実施形態では、mは0であり;別の実施形態では、mは1であり;別の実施形態では、mは2である。前記のHetについての実施形態では、nは0であり;別の実施形態では、nは1であり;別の実施形態では、nは2であり;別の実施形態では、nは3であり;別の実施形態では、nは4であり;別の実施形態では、nは5であり;別の実施形態では、nは6である。
【0080】
一実施形態では、Hetは
【化65】
であり、ここで、X
9はC(R)
2である。一実施形態では、Hetは、1、2、3個またはそれ以上のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
【化66】
【0081】
一実施形態では、Hetは、以下の基から選択される:
【化67】
【0082】
一実施形態では、Hetは
【化68】
であり、ここで、1つのX
9はO、SまたはNR
bから選択され、他のX
9はC(R)
2であってもよく;一実施形態では、Het以下の基から選択される:
【化69】
【0083】
R
a、R
b、R
1a、R
2aおよびRについて
一実施形態では、R
aは、独立して水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、−N(C
1−6アルキル)
2、C
1−6アルキル基、C
1−6ハロゲン化アルキル基、またはC
1−6アルコキシル基から選択される。別の実施形態では、R
aは水素である。別の実施形態では、R
aはハロゲンである。別の実施形態では、R
aはニトリル基である。別の実施形態では、R
aはニトロ基である。別の実施形態では、R
aは水酸基である。別の実施形態では、R
aは−NH
2である。別の実施形態では、R
aは−NHC
1−6アルキル基である。別の実施形態では、R
aは−N(C
1−6アルキル)
2である。別の実施形態では、R
aはC
1−6アルキル基である。別の実施形態では、R
aはC
1−6ハロゲン化アルキル基である。別の実施形態では、R
aはC
1−6アルコキシル基である。
【0084】
一実施形態では、R
bは、独立して水素、C
1−6アルキル基またはC
1−6ハロゲン化アルキル基から選択される。別の実施形態では、R
bは水素である。別の実施形態では、R
bはC
1−6アルキル基である。別の実施形態では、R
bはC
1−6ハロゲン化アルキル基である。
【0085】
一実施形態では、R
1a、R
2aおよびRは、独立して水素、ハロゲン、水酸基、−NH
2、−NHC
1−6アルキル基、−N(C
1−6アルキル)
2、C
1−6アルキル基、C
1−6ハロゲン化アルキル基、C
1−6アルコキシル基、C
3−7シクロアルキル基、C
3−7ヘテロシクロアルキル基、C
6−10アリール基、またはC
5−10ヘテロアリール基から選択される。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRは、水素である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRはハロゲンである。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRは水酸基である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRは−NH
2である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRは−NHC
1−6アルキル基である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRは−N(C
1−6アルキル)
2である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRはC
1−6アルキル基である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRはC
1−6ハロゲン化アルキル基である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRはC
1−6アルコキシル基である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRはC
3−7シクロアルキル基である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRはC
3−7ヘテロシクロアルキル基である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRはC
6−10アリール基である。別の実施形態では、R
1a、R
2aおよびRはC
5−10ヘテロアリール基である。
【0086】
一実施形態では、同一の原子または隣接の原子上の2個のR基は、一緒にC
3−7シクロアルキル基またはC
3−7ヘテロシクロアルキル基を形成していてもよい。別の実施形態では、同一の原子または隣接の原子上の2個のR基は、一緒にC
3−7シクロアルキル基を形成していてもよい。別の実施形態では、同一の原子または隣接の原子上の2個のR基は、一緒にC
3−7ヘテロシクロアルキル基を形成していてもよい。
【0087】
上記の実施形態におけるいずれかの技術構成またはそれらの任意の組合せは、他の実施形態におけるいずれかの技術構成またはそれらの任意の組合せと組み合わせることができる。例えば、Y
1のいずれかの技術構成またはそれらの任意の組合せは、Y、R
1、R
2、Z、Ar、X
1〜X
8、P
1、P
2、Q
1、Q
2、Het、m、n、R
a、R
b、R
1a、R
2aおよびRのいずれかの技術構成またはそれらの任意の組合せと組み合わせることができる。本発明は、これらの技術構成のすべての組合せを含むが、ここでは挙げない。
【0088】
一部の実施例では、本発明の化合物は、以下の化合物から選択される:
【化70】
【0089】
本明細書に記載される化合物は、1つ以上の不斉中心を含み得るので、様々な異性体、例えば、エナンチオマーおよび/またはジアステレオマーとして存在し得る。例えば、本明細書中に記載される化合物は、個々のエナンチオマー、ジアステレオマーもしくは幾何異性体(例えば、シスおよびトランス異性体)の形態であり得るか、または立体異性体の混合物(ラセミ混合物、および1つ以上の立体異性体を多く含む混合物を含む)の形態であり得る。異性体は、当業者に公知の方法(キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ならびにキラル塩の形成および結晶化を含む)によって混合物から単離され得るか;または好ましい異性体が、不斉合成によって調製され得る。
【0090】
当業者は、多くの有機化合物が、溶媒中で反応するか、または溶媒から沈殿あるいは結晶化して、当該溶媒と複合体を形成し得ることを理解できる。これらの複合体は「溶媒和物」と呼ばれる。溶媒が水である場合、複合体は「水和物」と呼ばれる。本発明は、本発明の化合物のすべての溶媒和物を含む。
【0091】
薬理および効果
本発明の化合物は、特にBcr−Abl1の活性に依存する疾患または障害に治療効果を示す。特に、本発明の化合物は、Bcr−Abl1のATP結合部位を阻害する(野生型Bcr−Abl1および/またはその変異を含む(T315I変異を含む))。
【0092】
癌細胞は、腫瘍の浸潤と転移の期間に侵襲仮足(invapodia)を利用して細胞外マトリクスを分解する。Ablキナーゼ活性は、Src−誘導の侵襲仮足の形成に必要なものであり、それは仮足の組み立ての異なる段階と機能を調節する。したがって、Abl阻害剤である本化合物は、転移する浸潤性癌の治療法に応用する可能性がある。
【0093】
c−Ablキナーゼの阻害剤は、最も一般的な侵襲性強い悪性原発性脳腫瘍のグリア芽細胞腫を含む脳癌の治療に適用でき、その中、一名のサブクラスの患者においては、免疫組織化学法によりc−Ablの発現を検出した。したがって、高い脳曝露を有する新たなc−Abl阻害剤は、神経膠芽腫やその他の脳癌に対する固体治療を代表する。
【0094】
本発明の化合物は、ウィルスの治療に適用できる。例えば、ウイルス感染は、例えばポックスウイルス類とエボラウイルスのように、Abl1キナーゼ活性によって媒介される。イマチニブとニロチニブは、エボラウイルス粒子の感染細胞からの放出を停止することが示された。したがって、c−Ablキナーゼを阻害できる本発明の化合物は、病原体の複製能力を低下させるために適用できる。
【0095】
パーキンソン病は、2番目の普遍な慢性神経変性疾患であり、最も一般的なE3ユビキチンリガーゼ(Parkinタンパク質)上の突然変異による家族性常染色体劣性形式を有する。最新研究では、散発性パーキンソン病患者の線条体に活性化c−ABLが発見された。また、Parkin蛋白はチロシンリン酸化されたものであり、Parkin蛋白基質の蓄積に示されているように、ユビキチン蛋白のリガーゼや細胞保護活性の損失を引き起こす。
【0096】
本発明の化合物または組成物は、また、Bcr−Ablキナーゼによって媒介される、呼吸器疾患、アレルギー、リウマチ性関節炎、骨関節炎、リウマチ性疾患、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、敗血症性ショック、増殖性疾患、アテローム性動脈硬化、移植後の同種移植片拒絶反応、糖尿病、卒中、肥満症又は再狭窄、白血病、間質瘤、甲状腺癌、全身性肥満細胞症、好酸球増多症、線維症、多発性関節炎、硬皮症、エリテマトーデス、移植片対宿主病、神経線維腫症、肺高血圧症、アルツハイマー病、精上皮腫、未分化胚細胞腫、肥満細胞腫、肺癌、気管支癌、未分化胚細胞腫、精巣上皮内腫瘍、黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫、乳頭状/濾胞型副甲状腺過形成/腺腫、結腸がん、結腸直腸腺腫、卵巣がん、前立腺癌、神経膠芽腫、脳腫瘍、悪性神経膠腫、すい臓がん、悪性胸膜中皮腫、血管芽細胞腫、血管腫、腎臓がん、肝臓がん、副腎腫、膀胱がん、胃がん、直腸がん、膣がん、子宮頚癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、頚部と頭部腫瘤、腫瘍形成及びその他の増生性或いは増殖性疾病、あるいはそれらの組み合わせなどの疾患、障害または病態を治療することに用いられる。
【0097】
医薬組成物、製剤およびキット
他の様態では、本発明は、本発明の化合物(「活性成分」とも呼ばれる)および医薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、前記の医薬組成物は、有効量の本発明化合物を含む。一部の実施形態において、前記の医薬組成物は、治療有効量の本発明化合物を含む。一部の実施形態において、前記の医薬組成物は、予防有効量の本発明化合物を含む。
【0098】
本発明の薬学的に許容される賦形剤とは、配合される化合物の薬理学的活性を無効にしない非毒性担体、アジュバントまたは媒体を指す。本発明の組成物で使用できる薬学的に許容される担体、アジュバントまたは媒体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
本発明は、更に、キット(例えば、医薬パック)を含む。提供されるキットは、本発明の化合物、他の治療剤、ならびに本発明の化合物、他の治療剤を含有する第1および第2容器(例えば、バイアル、アンプル、ボトル、シリンジ、および/または分散パッケージ、あるいは他の適切な容器)を含む。一部の実施形態において、提供されるキットは、また、本発明の化合物および/または他の治療薬を希釈または懸濁するための薬学的に許容される賦形剤を含む第3の容器も有しても良い。一部の実施形態において、第1容器および第2の容器内の本発明の化合物を他の治療薬と組み合わせて単位製剤を形成して提供する。
【0100】
以下の製剤の実施例は、本発明に従って調製され得る代表的な医薬組成物を説明する。しかしながら、本発明は、以下の医薬組成物に限定されない。
【0101】
例示的な製剤1−錠剤:本発明の化合物を、乾燥粉末として乾燥ゼラチン結合剤とおおよそ1:2重量比で混合し得る。微量のステアリン酸マグネシウムを滑剤として加える。その混合物を、打錠機で0.3〜30mgの錠剤(錠剤1つあたり0.1〜10mgの活性な化合物を含む)に形成する。
【0102】
例示的な製剤2−錠剤:本発明の化合物を、乾燥粉末として乾燥ゼラチン結合剤とおおよそ1:2重量比で混合し得る。微量のステアリン酸マグネシウムを滑剤として加える。その混合物を、打錠機で30〜90mgの錠剤(錠剤1つあたり10〜30mgの活性な化合物を含む)に形成する。
【0103】
例示的な製剤3−錠剤:本発明の化合物を、乾燥粉末として乾燥ゼラチン結合剤とおおよそ1:2重量比で混合し得る。微量のステアリン酸マグネシウムを滑剤として加える。その混合物を、打錠機で90〜150mgの錠剤(錠剤1つあたり30〜50mgの活性な化合物を含む)に形成する。
【0104】
例示的な製剤4−錠剤:本発明の化合物を、乾燥粉末として乾燥ゼラチン結合剤とおおよそ1:2重量比で混合し得る。微量のステアリン酸マグネシウムを滑剤として加える。その混合物を、打錠機で150〜240mgの錠剤(錠剤1つあたり50〜80mgの活性な化合物を含む)に形成する。
【0105】
例示的な製剤5−錠剤:本発明の化合物を、乾燥粉末として乾燥ゼラチン結合剤とおおよそ1:2重量比で混合し得る。微量のステアリン酸マグネシウムを滑剤として加える。その混合物を、打錠機で240〜270mgの錠剤(錠剤1つあたり80〜90mgの活性な化合物を含む)に形成する。
【0106】
例示的な製剤6−錠剤:本発明の化合物を、乾燥粉末として乾燥ゼラチン結合剤とおおよそ1:2重量比で混合し得る。微量のステアリン酸マグネシウムを滑剤として加える。その混合物を、打錠機で270〜450mgの錠剤(錠剤1つあたり90〜150mgの活性な化合物を含む)に形成する。
【0107】
例示的な製剤7−錠剤:本発明の化合物を、乾燥粉末として乾燥ゼラチン結合剤とおおよそ1:2重量比で混合し得る。微量のステアリン酸マグネシウムを滑剤として加える。その混合物を、打錠機で450〜900mgの錠剤(錠剤1つあたり150〜300mgの活性な化合物を含む)に形成する。
【0108】
例示的な製剤8−カプセル:本発明の化合物を、乾燥粉末としてデンプン希釈剤とおおよそ1:1重量比で混合し得る。その混合物を250mgのカプセル(カプセル1つあたり125mgの活性な化合物を含む)に充填する。
【0109】
例示的な製剤9−液体:本発明の化合物(125mg)を、スクロース(1.75g)およびキサンタンガム(4mg)と混合し、得られた混合物を混ぜて、No.10メッシュU.S.シーブに通し、次いで、予め調製された微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム(11:89,50mg)の水溶液と混合する。安息香酸ナトリウム(10mg)、香料および着色料を水で希釈し、撹拌しながら加える。次いで、充分な水を加えることにより、総体積を5mLにする。
【0110】
例示的な製剤10−注射剤:本発明の化合物を、滅菌された緩衝食塩水の注射可能な水性媒質に、おおよそ5mg/mLの濃度に溶解または懸濁する。
【0111】
投与
本発明によって提供される医薬組成物は、経口投与、非経口投与、吸入投与、局所投与、直腸内投与、鼻腔投与、口腔投与、膣内投与、インプラントによる投与または他の投与方法などの様々な方式によって投与することができるが、これらに限定されない。例えば、本発明で用いた非経口投与には、皮下投与、皮内投与、静脈内投与、筋肉内投与、関節内投与、動脈内投与、滑膜腔内投与、胸骨内投与、脳脊髄膜内投与、病巣内投与、頭蓋内の注射や輸液技術がある。
【0112】
通常、有効量で本発明によって提供する化合物を投与する。治療される病状、選択される投与方式、実際に投与される化合物、患者の年齢、体重および反応、患者の症状の重篤度などを含む状況に応じて、実際に投与される化合物の量は医師によって決定される。
【0113】
本明細書に記載した病状を予防するために使用される場合、本発明によって提供される化合物は、前記の病状を発症するリスクのある被験者に投与され、典型的には、医師の推奨に基づいて上記の用量レベルで投与される。特定の病状を発症するリスクのある被験者には、典型的に、前記の病状の家族の歴史を有する被験者、または遺伝子検査もしくはスクリーニングによって前記の病状を発症しやすい被験者が含まれる。
【0114】
本発明によって提供される医薬組成物(「長期投与」)は長期的に投与することもできる。長期投与とは、例えば3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年、5年などの長期間にわたって化合物またはその医薬組成物を投与できるか、または、例えば被験者の余生において無期限に連続的に投与できることを指す。たとえば、一部の実施形態において、長期投与は、例えば治療ウィンドウ内で、長期間にわたって血液中に一定レベルの前記の化合物を提供することを意図している。
【0115】
本発明の医薬組成物は、様々な投与方式を用いてさらに送達することができる。例えば、一部の実施形態において、医薬組成物は、例えば、血液中の化合物の濃度を有効レベルまで増加させるために、ボーラス注射によって投与することができる。ボーラス用量の配置は、身体全体で望まれる活性成分の全身レベルに依存し、例えば、筋肉内または皮下のボーラス用量は、活性成分のゆっくりとした放出を可能にし、一方で、静脈に直接送達されるボーラス(例えば、IV滴注による)は、より速い送達を可能にし、これは、血液中の活性成分の濃度を有効レベルまで迅速に上昇させる。他の実施形態において、この薬学的組成物は、連続注入として、例えば、IV滴注によって投与されて、被験者の身体内での、活性成分の定常状態濃度の維持を提供し得る。
【0116】
経口投与用の組成物は、バルクの液体の溶液もしくは懸濁液またはバルクの粉末の形態をとり得る。しかしながら、一般的に、組成物を、精確な投薬量で投与できるために、単位投与量で提供される。用語「単位製剤」とは、ヒト被験者および他の哺乳動物に対する単位投与量として好適な物理的に不連続の単位のことを指し、各単位は、好適な薬学的賦形剤とともに所望の治療効果をもたらすと計算される所定量の活性な材料を含む。典型的な単位製剤としては、液体組成物の予め測定され予め充填されたアンプルもしくは注射器、または固体組成物の場合は丸剤、錠剤、カプセルなどが挙げられる。そのような組成物では、化合物は、通常、少量の成分(約0.1〜約50重量%または好ましくは約1〜約40重量%)であり、残りは、所望の投薬形態を形成するのに役立つ様々な担体または賦形剤および加工助剤である。
【0117】
経口投与の場合、1日あたり1〜5回、特に2〜4回、典型的には3回の経口投与量が、代表的なレジメンである。これらの投薬パターンを使用するとき、各用量は、約0.01〜約20mg/kgの本発明の化合物を提供し、好ましい用量は、それぞれ約0.1〜約10mg/kg、特に、約1〜約5mg/kgを提供する。
【0118】
経皮用量は一般に、注射用量を使用して達成されるレベルと類似であるかまたはより低い血液中レベルを提供するように選択され、一般に、約0.01重量%〜約20重量%、好ましくは、約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは、約0.1重量%〜約10重量%、そしてより好ましくは、約0.5重量%〜約15重量%の範囲の量である。
【0119】
注射剤の用量レベルは、約0.1mg/kg/時間〜少なくとも10mg/kg/時間の範囲であり、すべて約1〜約120時間、特に、24〜96時間にわたる。約0.1mg/kg〜約10mg/kgまたはそれ以上の前負荷ボーラス(preloading bolus)も、適切な定常状態レベルを達成するために投与されてもよい。最大総用量は、40〜80kgのヒト患者にとって約2g/日を超えない。
【0120】
経口投与に適した液体の形態は、緩衝剤、懸濁剤および予製剤(dispensing agents)、着色剤、香料などを含む好適な水性または非水性のビヒクルを含み得る。固体の形態は、例えば、以下の成分または同様の性質の化合物のいずれかを含み得る:結合剤(例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース);崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogelまたはトウモロコシデンプン);滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);滑剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);または香味料(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー)。
【0121】
注射可能な組成物は、典型的には、注射可能な滅菌された食塩水もしくはリン酸緩衝食塩水または当該分野で公知の他の注射可能な賦形剤に基づくものである。従来どおり、そのような組成物における活性な化合物は、典型的には、しばしば約0.05〜10重量%である微量の成分であり、残りは、注射可能な賦形剤などである。
【0122】
経皮の組成物は、典型的には、活性成分(単数または複数)を含む局所用軟膏またはクリームとして製剤化される。軟膏として製剤化されるとき、活性成分は、典型的には、パラフィン軟膏基剤または水混合性軟膏基剤と混合される。あるいは、活性成分は、例えば、水中油型クリーム基剤を含む、クリームとして製剤化され得る。そのような経皮的製剤は、当該分野で周知であり、一般に、活性成分または製剤の皮膚浸透力または安定性を高めるさらなる成分を含む。そのような公知の経皮の製剤および成分のすべてが、本発明に提供される範囲内に含まれる。
【0123】
本発明の化合物は、経皮的デバイスによっても投与され得る。従って、経皮的投与は、レザバータイプもしくは多孔質膜タイプまたは固体マトリックス種類のパッチを用いて達成され得る。
【0124】
経口的に投与可能な、注射可能な、または局所的に投与可能な組成物について上に記載された構成要素は、単に代表的なものである。他の材料ならびに加工手法などは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,1985,Mack Publishing Company,Easton,PennsylvaniaのPart8(参照により本明細書中に援用される)に示されている。
【0125】
本発明の化合物は、更に、徐放形態でまたは徐放薬物送達系から投与され得る。代表的な徐放材料の説明は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに見出すことができる。
【0126】
本発明は、本発明の化合物の薬学的に許容される製剤にも関する。1つの実施形態において、その製剤は、水を含む。別の実施形態において、その製剤は、シクロデキストリン誘導体を含む。最も一般的なシクロデキストリンは、連結される糖部分上に必要に応じて1つ以上の置換基(それらとしては、メチル化、ヒドロキシアルキル化、アシル化およびスルホアルキルエーテル置換が挙げられるが、これらに限定されない)を含む、それぞれ6、7および8個のα−1,4−結合グルコース単位からなるα−、β−およびγ−シクロデキストリンである。ある特定の実施形態において、シクロデキストリンは、スルホアルキルエーテルβ−シクロデキストリン、例えば、Captisolとしても知られるスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである。例えば、米国特許第5,376,645号を参照する。一部の実施形態において、上記製剤は、ヘキサプロピル−β−シクロデキストリン(例えば、水において10〜50%)を含む。
【0127】
治療
本発明の化合物は、また、Bcr−Ablキナーゼによって媒介される、呼吸器疾患、アレルギ反応、リウマチ性関節炎、骨関節炎、リウマチ性疾患、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、敗血症性ショック、増殖性疾患、粥状動脈硬化、移植後の同種移植片拒絶反応、糖尿病、卒中、肥満、または再狭窄、白血病、間質瘤、甲状腺癌、全身性肥満細胞症、好酸球増多症、線維症、多発性関節炎、硬皮症、エリテマトーデス、移植片対宿主病、神経線維腫症、肺高圧、アルツハイマー病、精上皮腫、未分化胚細胞腫、肥満細胞腫、肺癌、気管支癌、未分化胚細胞腫、精巣上皮内腫瘍、黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫、乳頭状/濾胞型副甲状腺過形成/腺腫、結腸がん、結腸直腸腺腫、卵巣がん、前立腺癌、神経膠芽腫、脳腫瘍、悪性神経膠腫、すい臓がん、悪性胸膜中皮腫、血管芽細胞腫、血管腫、腎臓がん、肝臓がん、副腎腫、膀胱がん、胃がん、直腸がん、膣がん、子宮頚癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、頚部と頭部腫瘤、腫瘍形成及びその他の増生性或いは増殖性疾病、あるいはその組み合わせなどの疾病、障害または病態の治療に用いられる。
【0128】
本発明は、治療中、特に不適切なBcr−Abl活性によって仲介される疾病と病態を治療するために使用する本発明の化合物を提供する。
【0129】
本明細書で言及した不適切なBcr−Abl活性は、特定の哺乳類対象において、予期される正常Bcr−Abl活性から外れた任意のBcr−Abl活性である。不適切なBcr−Abl活性は、例えば、活性異常の増加、あるいはBcr−Abl活性のタイミングや制御の異常などの形を含む。当該不適切な活性は、例えば不適切または制御不能な活性化を招くプロテインキナーゼの過剰発現または突然変異によって引き起こされる。
【0130】
他の実施形態では、本発明は、失調または不適切なBcr−Abl活性と関連する病態を予防および/または治療するために、Bcr−Ablを調節、制御または阻害する方法に関する。
【0131】
他の実施形態では、前記Bcr−Abl活性により介される病態は呼吸器疾患である。他の実施形態では、前記病態は増殖性疾患である。他の実施形態では、前記病態は癌である。他の実施形態では、前記病態は白血病である。
【0132】
他の実施形態では、本発明の化合物は、また神経変性の治療に用いられる。
【0133】
健康な成人の脳の中に、天然c−ABLチロシンキナーゼは相対的に静止しているが、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(AD)、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)(FTD)、ピック病、C型ニーマン・ピック病(NPC)及び他の変性疾患、炎症性疾患及び自己免疫性疾患、並びに老化を含むCNS疾患患者の脳の中で、活性化される。
【0134】
本発明の化合物の有効量は、通常、1日あたり0.01mg〜50mg化合物/kg患者の体重、好ましいは0.1mg〜25mgの化合物/kg患者の体重で、1回または複数回投与する。通常、本発明の化合物は、この治療を必要とする患者に、患者1人当たり約1mg〜約3500mgの範囲の1日投与量で、好ましいは10mg〜1000mgの範囲の1日投与量で投与することができる。例えば、患者あたりの1日投与量は10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900または1000mgであってもよい。毎日、毎週(または数日間隔)、または間歇スケジュールで、1回または複数回投与することができる。例えば、毎週(例えば毎週の月曜日)に加え、1日に1回または複数回、不定期または数週間で、例えば、4〜10循環で、前記の化合物を投与することができる。数日間(例えば、2〜10日間)毎日投与した後に、数日間(例えば、1〜30日間)化合物を投与せず、そして、このサイクルを任意に繰り返すか、または所定の回数、例えば4〜10回で繰り返す。例えば、本発明の化合物は、5日間毎日連続的に投与し、次いで9日間中断し、さらに5日間毎日連続的に投与し、次いで9日間中断するようなサイクルを任意に繰り返すか、または計4〜10回で繰り返すことができる。
【実施例】
【0135】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することではなく、本発明を例示することを目的として本発明の請求項で保護する方法と化合物を実施、製造、評価する完全な開示および説明を当業者に提供するために、提供される。
【0136】
合成方法
本発明の化合物は、本分野における通常の方法で、適宜な試薬、原料を用いて、当業者に既知された精製方法により調製された。
【0137】
以下、本発明の式(I)で表れる構造の化合物の調製方法をより具体的に説明するが、これらの具体的な方法は、本発明を何ら限定するものではない。本発明の化合物は、本明細書に記載する合成方法、または当業者に知られている各種の合成方法を任意に組み合わせて容易に製造することもできる。このような組み合わせは、当業者が容易に行うことができる。
【0138】
通常、調製において、各反応は一般的に不活性溶媒中に室温〜還流温度(例えば0℃〜100℃、好ましくは0℃〜80℃)で行う。通常、反応時間は0.1〜60時間であり、好ましくは0.5〜24時間である。
【0139】
実施例1 (R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−(ピラジン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物6)の調製
【化71】
工程1:6−クロロ−5−ブロモ−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物3)の合成。
反応フラスコに、6−クロロ−5−ブロモニコチン酸(1.17g,4.97mmol)、4−(クロロジフルオロメトキシ)アニリン(0.8g,4.15mmol)を加え、20mLの無水DMFで溶解させ、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU,2.1g,5.39mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,534mg,4.15mmol)を添加し、窒素ガス保護下、室温で攪拌し18時間反応させ、過剰量の水で希釈し、酢酸エチルで3〜4回抽出し、有機相を合わせて、飽和食塩水で洗浄し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥して、生成物1.18gを得た。収率:69.5%。
【0140】
工程2:(R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−ブロモ−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物4)の合成。
反応フラスコに、化合物3(0.92g,2.0mmol)および(R)−3−ヒドロキシピロリジン(209.1mg,2.4mmol)を加え、2mLのイソプロパノールを加え、DIPEA(568.7mg,4.4mmol)を添加し、140℃に加熱し、攪拌して2時間反応させた。室温に冷却し、濃縮して溶剤を除き、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物813mgを得た。収率:88.2%。
【0141】
工程3:(R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物5)の合成。
反応フラスコに、化合物4(322.7mg,0.7mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(711.03mg,2.8mmol)、酢酸パラジウム(4.71mg,0.021mmol)、Xphos(25.0mg,0.053mmol)およびリン酸カリウム(445.8mg,2.1mmol)を加え、10mLの無水ジオキサンを添加して溶解させ、マイクロ波で60℃に加熱して4時間反応させ、出発原料が完全に消費されていないことをTLCで検出した。そして、ビス(ピナコラト)ジボロン(356mg,1.4mmol)を追加した後、60℃で一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、262mgの生成物を得た。収率:73.5%。
【0142】
工程4:(R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−(ピラジン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物6)の合成。
反応フラスコに、化合物5(200mg,0.392mmol)、2−ブロモピラジン(92.9mg,0.588mmol)、Pd(dppf)Cl
2(32mg,0.02mmol)および炭酸ナトリウム(126mg,1.18mmol)を加え、2mLのグリコールジメチルエーテルおよび0.4mLの水を添加し、窒素ガスで10分間バブリングし、マイクロ波で120℃に加熱し、0.5時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、83mgの生成物を得た。収率:46%。LC−MS(APCI):m/z=462.1(M+1)
+;
1H NMR(400MHz,DMSO)δ10.23(s,1H),8.87-8.79(m,2H),8.76-8.70(m,1H),8.63(d,J=2.5Hz,1H),8.21(d,J=2.3Hz,1H),7.87(d,J=9.1Hz,2H),7.34(d,J=8.9Hz,2H),4.87(d,J=3.3Hz,1H),4.21(s,1H),3.41(dd,J=17.1,10.5Hz,1H),3.21(dd,J=11.3,4.5Hz,2H),2.85(d,J=11.6Hz,1H),1.86(dd,J=8.7,4.1Hz,1H),1.75(s,1H)。
【0143】
実施例2 (R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−(ピリダジン−3−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物7)の調製
【化72】
反応フラスコに、化合物5(200mg,0.392mmol)、3−ブロモピリダジン(92.9mg,0.588mmol)、Pd(dppf)Cl
2(32mg,0.02mmol)および炭酸ナトリウム(126mg,1.18mmol)を加え、2mLのグリコールジメチルエーテルおよび0.4mLの水を添加し、窒素ガスで10分間バブリングし、マイクロ波で120℃に加熱し、0.5時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、57mgの生成物を得た。収率:31.7%。LC−MS(APCI):m/z=462.1(M+1)
+;
1H NMR(400MHz,DMSO)δ10.26(s,1H),9.24(d,J=3.4Hz,1H),8.84(d,J=2.2Hz,1H),8.20(d,J=2.2Hz,1H),7.87(t,J=7.7Hz,3H),7.80(dd,J=8.4,4.9Hz,1H),7.33(d,J=8.8Hz,2H),4.87(d,J=3.3Hz,1H),4.20(s,1H),3.44-3.36(m,1H),3.17(d,J=5.3Hz,2H),2.82(d,J=11.2Hz,1H),1.85(dd,J=8.6,4.3Hz,1H),1.74(s,1H)。
【0144】
実施例3 (R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−(ピリダジン−4−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物8)の調製
【化73】
反応フラスコに、化合物5(200mg,0.392mmol)、4−ブロモピリダジン(92.9mg,0.588mmol)、Pd(dppf)Cl
2(32mg,0.02mmol)および炭酸ナトリウム(126mg,1.18mmol)を加え、2mLのグリコールジメチルエーテルおよび0.4mLの水を添加し、窒素ガスで10分間バブリングし、マイクロ波で120℃に加熱し、0.5時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、96mgの生成物を得た。収率:53.1%。LC−MS(APCI):m/z=462.1(M+1)
+;
1H NMR(400MHz,DMSO)δ10.24(s,1H),9.35(s,1H),9.29(d,J=5.2Hz,1H),8.81(d,J=2.3Hz,1H),8.18(d,J=2.3Hz,1H),7.96-7.79(m,2H),7.71(dd,J=5.3,2.3Hz,1H),7.35(d,J=9.1Hz,2H),4.91(d,J=3.5Hz,1H),4.22(s,1H),3.43(dd,J=17.2,9.9Hz,1H),3.23(dd,J=11.1,3.9Hz,2H),2.83(d,J=11.5Hz,1H),1.92-1.83(m,1H),1.78(d,J=3.9Hz,1H)。
【0145】
実施例4 (R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−(3−アミノ−1,2,4−トリアジン−6−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物11)の調製
【化74】
工程1:3−アミノ−6−ブロモ−1,2,4−トリアジン(化合物10)の合成。
反応フラスコに、3−アミノ−1,2,4−トリアジン(500mg,5.2mmol)を加え、5mLのアセトニトリルおよび7.8mLの水を添加し溶解させ、氷浴中で0℃に冷却し、N−ブロモスクシンイミド(NBS,971mg,5.46mmol)を加え、攪拌して40分間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、酢酸エチルで3〜4回抽出し、有機相を合わせて、飽和炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物312mgを得た。収率:34.4%。
【0146】
工程2:(R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−(3−アミノ−1,2,4−トリアジン−6−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(11)の合成。
反応フラスコに、化合物5(200mg,0.392mmol)、化合物10(102.3mg,0.588mmol)、Pd(dppf)Cl
2(32mg,0.02mmol)および炭酸ナトリウム(126mg,1.18mmol)を加え、2mLのグリコールジメチルエーテルおよび0.4mLの水を添加し、窒素ガスで10分間バブリングし、マイクロ波で120℃に加熱し、0.5時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、105mgの生成物を得た。収率:56.1%。LC−MS(APCI):m/z=478.2(M+1)
+;
1H NMR(400MHz,DMSO)δ10.25(s,1H),8.80(d,J=2.2Hz,1H),8.42(s,1H),8.14(d,J=2.1Hz,1H),7.88(d,J=9.0Hz,2H),7.33(d,J=9.0Hz,3H),4.90(d,J=3.2Hz,1H),4.23(s,1H),3.45-3.38(m,1H),3.26(d,J=10.8Hz,2H),2.94(d,J=11.1Hz,1H),1.86(dd,J=8.2,5.3Hz,1H),1.80-1.70(m,1H)。
【0147】
実施例5 (R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−(1,2,4−トリアジン−6−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物12)の調製
【化75】
反応フラスコに、化合物11(100mg,0.214mmol)および亜硝酸イソアミル(75mg,0.64mmol)を加え、10mLの無水テトラヒドロフランで溶解させ、窒素ガス保護下、65℃に加熱し、3時間反応させ、出発原料が完全に消費されていないことをTLCで検出した。そして、亜硝酸イソアミル(75mg,0.64mmol)を追加し、75℃に昇温し、18時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、溶剤を除き、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、22mgの生成物を得た。収率:22.2%。LC−MS(APCI):m/z=463.3(M+1)
+;
1H NMR(400MHz,DMSO)δ10.32(s,1H),9.78(s,1H),9.11(s,1H),8.89(d,J=2.3Hz,1H),8.35(d,J=2.2Hz,1H),7.90(s,2H),7.34(d,J=8.8Hz,2H),4.92(d,J=3.1Hz,1H),4.23(s,1H),3.51(s,1H),3.22(dd,J=11.5,4.3Hz,2H),2.86(d,J=11.4Hz,1H),1.87(s,1H),1.78(s,1H)。
【0148】
実施例6 (R)−6−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)−5−(1,2,4−トリアジン−3−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物13)の調製
【化76】
反応フラスコに、化合物5(200mg,0.392mmol)、3−メチルチオ−1,2,4−トリアジン(149.3mg,1.176mmol)、Pd(PPh
3)
4(23.1mg,0.02mmol)およびヨウ化第一銅(7.6mg,0.04mmol)を加え、3mLのテトラヒドロフランを添加し、窒素ガスで10分間バブリングし、マイクロ波で120℃に加熱し、1時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、32mgの生成物を得た。収率:17.6%。LC−MS(APCI):m/z=463.3(M+1)
+;
1H NMR(400MHz,DMSO)δ10.34(s,1H),9.41(d,J=2.3Hz,1H),8.97(d,J=2.3Hz,1H),8.89(d,J=2.2Hz,1H),8.46(d,J=2.2Hz,1H),7.89(d,J=9.1Hz,2H),7.34(d,J=8.8Hz,2H),4.92(d,J=3.1Hz,1H),4.23(s,1H),3.51(s,1H),3.22(dd,J=11.5,4.3Hz,2H),2.86(d,J=11.4Hz,1H),1.87(s,1H),1.78(s,1H)。
【0149】
実施例7 (R)−6−(3−フルオロピロリジン−1−イル)−5−(ピラジン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物17)の調製
【化77】
工程1:(R)−6−(3−フルオロピロリジン−1−イル)−5−ブロモ−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物15)の合成。
反応フラスコに、
化合物3(0.90g,2.19mmol)および(R)−3−フルオロピロリジン塩酸塩(330mg,2.63mmol)を加え、15mLのイソプロパノールを加え、DIPEA(621mg,4.82mmol)を添加し、140℃に加熱し、攪拌して2時間反応させ、室温に冷却し、濃縮し、溶剤を除き、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物841mgを得た。収率:83%。
【0150】
工程2:(R)−6−(3−フルオロピロリジン−1−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物16)の合成。
反応フラスコに、化合物15(628mg,1.35mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.03g,4.06mmol)、酢酸パラジウム(10mg,0.041mmol)、Xphos(50mg,0.101mmol)およびリン酸カリウム(861mg,4.06mmol)を加え、20mLの無水ジオキサンで溶解させ、マイクロ波で60℃に加熱し、4時間反応させ、出発原料が完全には消費されていないことをTLCで検出した。そして、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.03g,4.06mmol)を追加した後、60℃で一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、514.3mgの生成物を得た。収率:75%。
【0151】
工程3:(R)−6−(3−フルオロピロリジン−1−イル)−5−(ピラジン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物17)の合成。
反応フラスコに、化合物16(200mg,0.372mmol)、2−ブロモピラジン(50mg,0.27mmol)、Pd(dppf)Cl
2(10mg,0.01mmol)および炭酸ナトリウム(60mg,0.558mmol)を加え、5mLのグリコールジメチルエーテルおよび0.9mLの水を添加し、窒素ガスで10分間バブリングし、マイクロ波で100℃に加熱し、0.5時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、35mgの生成物を得た。収率:20.3%。LC−MS(APCI):m/z=464.5(M+1)
+。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ8.78(d,J=2.0Hz,1H),8.73(s,1H),8.64(s,1H),8.54(d,J=2.1Hz,1H),8.11(d,J=2.0Hz,1H),7.95(s,1H),7.67(d,J=8.9Hz,2H),7.23(d,J=8.6Hz,2H),5.28(s,1H),5.14(s,1H),3.70-3.57(m,1H),3.52(d,J=10.8Hz,1H),3.42(t,J=11.6Hz,1H),3.30(t,J=9.5Hz,1H),2.26-2.17(m,1H),2.02(dd,J=9.5,3.8Hz,1H).
【0152】
実施例8 (R)−6−(3−フルオロピロリジン−1−イル)−5−(ピリダジン−3−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物18)の調製
【化78】
具体的な合成工程は、実施例7の工程3を参照して、最終的に目的生成物である化合物18を得た。LC−MS(APCI):m/z=464.8(M+1)
+。
【0153】
実施例9 (R)−6−(3−ジメチルアミノピロリジン−1−イル)−5−(ピラジン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物22)の調製
【化79】
工程1:(R)−6−(3−ジメチルアミノピロリジン−1−イル)−5−ブロモ−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物20)の合成。
反応フラスコに、化合物19(0.90g,2.19mmol)および(R)−3−ジメチルアミノピロリジン塩酸塩(300mg,2.63mmol)を加え、15mLのイソプロパノールを添加し、DIPEA(621mg,4.82mmol)を加え、140℃に加熱し攪拌して2時間反応させ、室温に冷却し、濃縮して溶剤を除き、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物1.06gを得た。収率:99%。
【0154】
工程2:(R)−6−(3−ジメチルアミノピロリジン−1−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物21)の合成。
反応フラスコに、化合物20(633mg,1.3mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.98g,3.89mmol)、酢酸パラジウム(25mg,0.039mmol)、Xphos(50mg,0.1mmol)およびリン酸カリウム(826mg,3.9mmol)を加え、20mLの無水ジオキサンで溶解させ、マイクロ波で60℃に加熱し、4時間反応させ、出発原料が完全に消費されていないことをTLCで検出した。そして、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.98g,3.89mmol)を追加した後、60℃で一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、564mgの生成物を得た。収率:81%。
【0155】
工程3:(R)−6−(3−ジメチルアミノピロリジン−1−イル)−5−(ピラジン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物22)の合成。
反応フラスコに、化合物21(100mg,0.186mmol)、2−ブロモピラジン(50mg,0.279mmol)、Pd(dppf)Cl
2(5mg,0.006mmol)および炭酸ナトリウム(60mg,0.558mmol)を加え、5mLのグリコールジメチルエーテルおよび0.9mLの水を添加し、窒素ガスで10分間バブリングし、マイクロ波で100℃に加熱し、0.5時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、72mgの生成物を得た。収率:79.1%。LC−MS(APCI):m/z=489.7(M+1)
+。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ8.77(d,J=2.2Hz,1H),8.71(s,1H),8.63(s,1H),8.52(d,J=2.4Hz,1H),8.09(d,J=2.3Hz,1H),8.00(s,1H),7.69(d,J=9.0Hz,2H),7.23(d,J=8.8Hz,2H),3.45-3.36(m,1H),3.27(dt,J=20.1,8.5Hz,3H),2.75-2.66(m,1H),2.23(s,6H),2.06(dd,J=11.1,5.1Hz,1H),1.85-1.74(m,1H).
【0156】
実施例10 (R)−6−(3−ジメチルアミノピロリジン−1−イル)−5−(ピリダジン−3−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物23)の調製
【化80】
具体的な合成工程は、実施例9の工程3を参照して、最終的に目的生成物である化合物23を得た。LC−MS(APCI):m/z=489.9(M+1)
+。
【0157】
実施例11 6−(3−ヒドロキシ−4−フルオロピロリジン−1−イル)−5−(ピラジン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物29)の調製
【化81】
工程1:3−ヒドロキシ−4−フルオロ−N−tert−ブトキシカルボニルピロリジン(化合物25)の合成。
反応フラスコに、3−tert−ブトキシカルボニル−6−オキサ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(1.11g,6.0mmol)およびトリエチルアミンフッ化水素酸塩(967.3mg,7.2mmol)を加え、100℃に加熱し、攪拌して一晩反応させ、室温に冷却し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物881mgを得た。収率:71.6%。
【0158】
工程2:3−ヒドロキシ−4−フルオロピロリジン(化合物26)の合成。
反応フラスコに、化合物25(881mg,4.29mmol)および4Mの塩化水素のジオキサン溶液(27mL,107.4mmol)を加え、室温で攪拌して3〜4時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮して溶剤を除き、精製せずにそのまま次の工程に供した。
【0159】
工程3:6−(3−ヒドロキシ−4−フルオロピロリジン−1−イル)−5−ブロモ−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物27)の合成。
反応フラスコに、化合物3(883mg,2.15mmol)および化合物26(276.1mg,2.63mmol)を加え、15mLのイソプロパノールを添加し、DIPEA(610mg,4.73mmol)を加え、140℃に加熱し攪拌して2時間反応させ、室温に冷却し、濃縮して溶剤を除き、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物896mgを得た。収率:87%。
【0160】
工程4:6−(3−ヒドロキシ−4−フルオロピロリジン−1−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物28)の合成。
反応フラスコに、化合物27(650mg,1.35mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.03g,4.06mmol)、酢酸パラジウム(10mg,0.045mmol)、Xphos(50mg,0.1mmol)およびリン酸カリウム(861mg,4.06mmol)を加え、20mLの無水ジオキサンで溶解させ、マイクロ波で60℃に加熱し、4時間反応させ、出発原料が完全に消費されていないことをTLCで検出した。そして、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.03g,4.06mmol)を追加した後、60℃で一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、664mgの生成物を得た。収率:93.4%。
【0161】
工程5:6−(3−ヒドロキシ−4−フルオロピロリジン−1−イル)−5−(ピラジン−2−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物29)の合成。
反応フラスコに、化合物28(100mg,0.189mmol)、2−ブロモピラジン(50mg,0.27mmol)、Pd(dppf)Cl
2(5mg,0.006mmol)および炭酸ナトリウム(60mg,0.558mmol)を加え、5mLのグリコールジメチルエーテルおよび0.9mLの水を添加し、窒素ガスで10分間バブリングし、マイクロ波で100℃に加熱し、0.5時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、41mgの生成物を得た。収率:45.3%。LC−MS(APCI):m/z=480.3(M+1)
+。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ8.68(s,2H),8.58(s,1H),8.52(s,1H),8.30(s,1H),8.03(s,1H),7.68(d,J=8.9Hz,2H),7.22(d,J=8.5Hz,2H),4.91(d,J=50.6Hz,1H),4.35(s,1H),3.68(dd,J=36.4,23.2Hz,2H),3.37-3.28(m,1H),3.15(d,J=12.4Hz,1H).
【0162】
実施例12 6−(3−ヒドロキシ−4−フルオロピロリジン−1−イル)−5−(ピリダジン−3−イル)−N−(4−(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)ニコチンアミド(化合物30)の調製
【化82】
具体的な合成工程は、実施例11の工程5を参照して、最終的に目的生成物である化合物30を得た。LC−MS(APCI):m/z=480.4(M+1)
+。
【0163】
生物活性試験
実施例13:細胞毒性実験
Ba/F
3親細胞、Ba/F
3Bcr−Abl
T315I細胞の活性に対する実施例の化合物の阻害効果を測定した。
材料及び試薬:RPMI−1640培地(GIBCO、Cat.No.A10491−01)、ウシ胎児血清(GIBCO、Cat.No.10099141)、抗生物質(ペニシリン−ストレプトマイシン)、IL−3(PeproTech)、ピューロマイシン;細胞系:Ba/F
3親細胞、Ba/F
3Bcr−Abl
T315I(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ATCC)、生細胞アッセイキットCellTiter−Glo4(Promega、Cat.No.G7572)、96ウェル黒壁透明フラット細胞培養プレート(Corning,Cat.No.3340)。
【0164】
実験方法:
1.細胞プレートの調製:Ba/F
3親細胞、Ba/F
3Bcr−Abl
T315I細胞を、それぞれ96ウェルプレートに播種し、Ba/F
3親細胞に8ng/mlのIL−3を加え、細胞プレートを二酸化炭素インキュベーターで一晩インキュベートする。
2.試験化合物の調製:DMSOで試験化合物を溶解し、3.16倍の勾配で希釈し、9個の化合物濃度を設定し、三重実験を行い、化合物の初期濃度は10μMである。
3.細胞の化合物処理:各濃度の化合物を細胞プレートに移した。細胞板は、二酸化炭素インキュベーターで3日間インキュベートした。
4.検出:細胞プレートにCellTiter−Glo4試薬を加え、室温で30分間インキュベートして、発光シグナルを安定させた。PerkinElmer Envision multi−label analyzerを用いてデータを読み取った。
【0165】
実施例における細胞のインビトロ増殖の阻害作用の結果を以下の表1に示し、ここで、AはIC
50≦100nM、Bは100nM<IC
50≦500nM、Cは500nM<IC
50≦1000nM、DはIC
50>1000nMをそれぞれ表す。
【0166】
【表1】
【0167】
実験結果から、本発明の化合物は、薬物の副作用に関連するBa/F
3細胞に対して比較的低い阻害活性(IC
50が1000nMより大きい)を示し、Ba/F
3Bcr−Abl
T315I変異体の細胞に対して優れた阻害活性(最適なIC
50≦100nM)を示した。従って、本発明の化合物は、Bcr−Ablの阻害剤として、従来のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の薬剤耐性或いは抵抗性の腫瘍患者、例えば慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期、急性期、加速期患者及びフィラデルフィア染色体陽性(Ph
+)の慢性顆粒球白血病と急性リンパ細胞白血病患者に対して良好な未来がある。
【0168】
さらに、本発明の化合物は、極めて良い治療係数(Ba/F
3親細胞のIC
50をBa/F
3Bcr−Abl
T315IのIC
50で割ることにより獲得する)を有し、例えば、実施例1および7の化合物は、200より高い治療係数を有する。
【0169】
実施例14:ラットにおける薬物動態実験
9匹のSprague−Dawleyラット(オス、7〜8週齢、体重210g)を、1群あたり3匹で3つの群に分け、静脈内(2mg/kg)または経口(20mg/kg)で単回投与量の化合物を投与し、その薬物動態学の差異を比較した。
標準飼料でラットを飼育し、水を与えた。試験の16時間前から絶食させた。薬物をPEG400およびジメチルスルホキシドで溶解した。投与した後の0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間および24時間の時点で眼窩採血を行った。
ラットにエーテルを吸入させて一時麻酔を行い、眼窩から300μLの血液サンプルを採取して試験管に入れた。試験管には1%のヘパリン塩溶液30μLがある。使用前に、試験管を60℃で一晩乾燥させた。最後の時点の血液サンプルの採取が完了した後、エーテルで麻酔した後にラットを殺処分した。
血液サンプルを採取した直後に、穏やかに試験管を少なくとも5回転倒させ、十分に混合し、氷上に置いた。血液サンプルを4℃、5000rpmで5分間遠心分離して、赤血球と血漿を分離した。100μLの血漿をピペットで清潔なプラスチック遠心管に入れ、化合物の名称と時点を表記した。分析まで血漿を−80℃で保存した。血漿中の本発明の化合物濃度をLC−MS/MSにより測定した。薬物動態パラメーターは、異なる時点における各動物の血中濃度に基づいて計算した。
本実験において、陽性対照として、ABL−001を用いた。実験結果を以下の表2に示す。
【0170】
【表2】
【0171】
この実験結果は、本発明の化合物がより良い薬物動態特性を有することを示す。例えば、実施例1および実施例7の化合物をABL−001と同時に、ラットに経口投与した後、実施例1および実施例7の化合物はより良い代謝パラメーターである最大血漿中曝露濃度(Cmax)、血漿中曝露量(AUClast)および経口利用率(F%)を有する。
【0172】
実施例15:BA/F
3(BCR−ABL
T315I)皮下腫瘍モデルにおける薬力学評価
実験動物:NOD/SCIDマウス、メス、7〜8週(腫瘍細胞接種時のマウス週齢)、平均体重21.8g、32匹、Beijing Huafukang Bioscience社から購入し、動物合格証番号:11401300068166である。飼育環境:SPF級。
【0173】
実験動物飼育室の環境条件:実験動物は、いずれも恒温恒湿の独立換気ケース内で飼育し、飼育室の温度は22.3〜24.5℃、湿度は51〜58%、換気は10〜20回/時間、昼夜の交替時間は12h/12hであり;コバルト60放射線で滅菌されたマウスの全価ペレット飼料を持続的に供給し、制限なく自由に摂取可能であり、水道水(高圧蒸気滅菌)を持続的に供給し、自由に摂取可能である。飼育ケースは、ポリスルホンマウスケースであり、加圧滅菌後に使用し、規格は325mm×210mm×180mmとし;敷料は、加圧滅菌コーンコブであり、1箱4匹で、IACUC承認番号、実験番号、実験開始時間、課題担当者、実験者、動物由来、群、および動物番号などが記載された。実験動物に耳標を付け、標記した。
【0174】
方法:各NOD/SCIDマウスの右側背部に5×10
6BA/F
3(BCR−ABL
T315I)細胞を皮下接種し、PBS(0.1ml/匹)に再懸濁し、皮下腫瘍モデルを確立した。実験は、溶媒対照群、15mg/kg陽性対照ABL001の群、15mg/kg実施例7の化合物の群に、1群あたり6匹で分け、1日2回投与し、溶剤対照群は15日間投与し、15mg/kg陽性対照ABL001の群は19日間投与し、15mg/kg実施例7の化合物の群は21日投与した。治療効果の評価は、相対的腫瘍抑制率(TGI)に従って行った。安全性の評価は、動物の体重変動および死亡状況に従って行った。
本実験において、動物実験のプロトコルは、いずれもCrownBio IACUC委員会による審査を経て承認された。実験において、動物実験の操作は、すべてAAALACの要件に従って実施した。腫瘍を接種した後に、実験動物の活動性、食と水の摂取、体重の増減、目、毛及び他の異常などの具体的な内容を含む腫瘍の増殖及び治療が正常な動物の行動に及ぼす影響、を日常的にモニタリングした。実験中に観察された異常な臨床症状は、すべて生データとして記録された。実験において、1週間に3回で、マウスの体重と腫瘍の大きさを測定し、記録した。毎回の投与前に、マウスの体重を秤量し、マウスの体重に応じて投与した。
【0175】
相対的腫瘍抑制率TGI(%):TGI%=(1−T/C)×100%。T/C%は、相対的腫瘍増殖率、即ち、ある時点における治療群と対照群の相対的な腫瘍体積または腫瘍重量の百分率である。TおよびCは、それぞれ、ある特定時点における治療群と対照群の相対的な腫瘍体積(RTV)または腫瘍重量(TW)である。
【0176】
統計分析:すべての実験結果は、平均値±標準誤差
【数1】
として表し、対照群と各治療群との間には、一元配置分散分析(one−way ANOVA)で群分け後12日目に、腫瘍体積の有意差があるかどうかについて比較した。その後、Games−Howell(heterogeneity of variance)により対照群と各治療群との間、または各治療群間の腫瘍体積の有意差を比較した。p<0.05の場合は、有意差があると評価した。
【0177】
実験結果:
1.BA/F
3(BCR−ABL
T315I)皮下腫瘍モデルにおける抗腫瘍作用の研究結果
群分け後15日目に、溶媒対照群のマウスの平均腫瘍体積は2492mm
3であった。陽性薬物ABL−001の用量は15mg/kgの場合、溶媒対照群と比べて有意な抗腫瘍効果(p値0.007)を示し、平均腫瘍体積は1545mm
3であり、相対的腫瘍抑制率TGIは36.5%であった。実施例7の試験薬物の用量は15mg/kgの場合、非常に有意な抗腫瘍効果(p値<0.001)を示し、平均腫瘍体積は1145mm
3であり、相対腫瘍抑制率TGIは53.1%であった。15mg/kg陽性薬物ABL−001の群と比べて、15mg/kg実施例7の試験薬物の群は有意により効果であった。
各治療群および対照群の腫瘍増殖の情況を表3、表4および
図1に示す。
【0178】
【表3】
【0179】
【表4】
【0180】
2.BA/F
3(BCR−ABL
T315I)皮下腫瘍モデルにおける安全性試験の結果
実験において、15mg/kgABL−001の群のマウスのいくつかは体重の減少を示したが、15mg/kg実施例7の群のマウスは体重の減少を示さなかった。群分け後15日目に、15mg/kgABL−001の群のマウスの平均体重は0.5%減少したが、群分け後22日目に、15mg/kg実施例7の群のマウスの平均体重は1.3%増加した。具体的には、各治療群および対照群における投与後の体重変化を
図2に示す。実験中のマウスの体重変化から、実施例7の安全性はABL−001より高いと結論付けられる。
【0181】
これらの実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。実施例における具体的な条件を記載しない実験方法は、通常、慣用の条件または製造業者の推奨条件に従う。特に説明のない限り、部および百分率は重量部および重量百分率である。
【0182】
上記の内容は、特定の好ましい実施形態を参照して本発明に対するさらなる詳細な説明であるが、本発明の実施形態がこれらの記載に限定されない。当業者にとって明らかであるように、本発明の精神から逸脱することなく様々な変更や修正を行うことができることは、すべてが本発明の保護範囲内にあるとみなされるべきである。
〔項1〕
式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物。
〔化1〕
但し、
Y1は、CRaまたはNから選択され;
Yは、独立してCRaまたはNから選択され;
R1は、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C1−6アルキル基またはC1−6ハロゲン化アルキル基からなる群から選択され、ここで、前記C1−6アルキル基またはC1−6ハロゲン化アルキル基は、R1a基で置換されていてもよく;
R2は、水素、C1−6アルキル基またはC1−6ハロゲン化アルキル基からなる群から選択され、ここで、前記C1−6アルキル基またはC1−6ハロゲン化アルキル基は、R2a基で置換されていてもよく;
Zは、化学結合、O、S(O)0−2、またはNRbであり、或いは、
−Z−R2は、全体として−SF5を表し;
Arは
〔化2〕
であり;
ここで、X1は、CRであり、X2〜X4は、独立してCRまたはNから選択され、且つX2、X3およびX4の少なくとも1つはNであり;
Hetは
〔化3〕
であり;
ここで、X9は、O、S、NRbまたはC(R)2からなる群から選択され;
mは、0、1または2であり;
nは、0、1、2、3、4、5または6であり;
Raは、独立して水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、水酸基、−NH2、−NHC1−6アルキル基、−N(C1−6アルキル)2、C1−6アルキル基、C1−6ハロゲン化アルキル基、またはC1−6アルコキシル基からなる群から選択され;
Rbは、独立して水素、C1−6アルキル基またはC1−6ハロゲン化アルキル基からなる群から選択され;
R1a、R2aおよびRは、独立して水素、ハロゲン、水酸基、−NH2、−NHC1−6アルキル基、−N(C1−6アルキル)2、C1−6アルキル基、C1−6ハロゲン化アルキル基、C1−6アルコキシル基、C3−7シクロアルキル基、C3−7ヘテロシクロアルキル基、C6−10アリール基、またはC5−10ヘテロアリール基からなる群から選択され、或いは、
同一原子または隣接した原子上の2つのR基は、一緒にC3−7シクロアルキル基、C3−7ヘテロシクロアルキル基、C6−10アリール基またはC5−10ヘテロアリール基を形成してもよい。
〔項2〕
式(Ia)で表される化合物であることを特徴とする、項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物。
〔化4〕
但し、ArおよびHetは、項1における定義と同じである。
〔項3〕
Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択されることを特徴とする、項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物。
〔化5〕
但し、Rは、項1における定義と同じである。
〔項4〕
Hetは
〔化6〕
であり;ここで、X9はC(R)2であり、且つm、nおよびRは項1における定義と同じであり;或いは、
Hetは、1、2、3個またはそれ以上のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
〔化7〕
ここで、Rは項1における定義と同じであり;或いは、
Hetは、以下の基から選択されることを特徴とする、項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物。
〔化8〕
〔項5〕
式(Ib)で表される化合物であることを特徴とする、項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物。
〔化9〕
但し、
Arは、1、2または3個のRで置換されていてもよい以下の基から選択される:
〔化10〕
Rは、水素、ハロゲン、水酸基、−NH2、−NHC1−6アルキル基、または−N(C1−6アルキル)2からなる群から選択される。
〔項6〕
式(Ib)で表される化合物であることを特徴とする、項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物。
〔化11〕
但し、
Arは、以下の基から選択される:
〔化12〕
Rは、水素、ハロゲン、または水酸基からなる群から選択される。
〔項7〕
下記の式で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物。
〔化13〕
〔項8〕
項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
〔項9〕
項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物を含む第1容器;
備えても良い、他の治療剤を含む第2容器;および
備えても良い、前記の化合物および/または他の治療剤を希釈または懸濁するための薬学的に許容される賦形剤を含む第3容器
を含む、キット。
〔項10〕
Bcr−Ablによる疾患を治療及び/又は予防するための薬物の調製への、項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物の使用。
〔項11〕
被験者に、項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物、或いは項8に記載の医薬組成物を投与することを特徴とする、被験者におけるBcr−Ablによる疾患を治療及び/又は予防する方法。
〔項12〕
Bcr−Ablによる疾患を治療及び/又は予防するための、項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくは水和物、或いは項8に記載の医薬組成物。
〔項13〕
前記のBcr−Ablによる疾患は、充実性腫瘍、肉腫、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍、甲状腺癌、胃癌、直腸癌、多発性骨髄腫、腫瘍形成(neoplasia)およびその他の増生性または増殖性疾患であり;あるいは、前記のBcr−Ablによる疾患は、転移浸潤性癌、ウイルス感染、またはCNS障害であることを特徴とする、項10に記載の使用、項11に記載の方法、又は項12に記載の使用。