特許第6840430号(P6840430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社京都製作所の特許一覧

<>
  • 特許6840430-振分け装置 図000002
  • 特許6840430-振分け装置 図000003
  • 特許6840430-振分け装置 図000004
  • 特許6840430-振分け装置 図000005
  • 特許6840430-振分け装置 図000006
  • 特許6840430-振分け装置 図000007
  • 特許6840430-振分け装置 図000008
  • 特許6840430-振分け装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840430
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】振分け装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/28 20060101AFI20210301BHJP
   B65G 47/14 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   B65G47/28 L
   B65G47/14 101C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-214810(P2016-214810)
(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公開番号】特開2018-70359(P2018-70359A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141886
【氏名又は名称】株式会社京都製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】梶川 将由
(72)【発明者】
【氏名】岩間 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】北野 正章
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−013711(JP,A)
【文献】 特開平07−061563(JP,A)
【文献】 特開平10−139141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/22−47/32
B65G 47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を所定の搬送方向に沿って搬送しながら複数列に振り分けるための振分け装置であって、
各物品を搬送するための搬送溝が搬送方向に延びる態様で複数列設けられ、
前記搬送溝は、搬送方向に直交する幅方向に対して一方側に上方に傾斜する第1の溝底面と、幅方向に対して一方側または他方側に上方に傾斜する第2の溝底面とを備える谷形状に形成され、
前記第2の溝底面は、
幅方向に対する幅方向他方側からの傾斜角度が第1の溝底面の幅方向に対する幅方向一方側からの傾斜角度よりも大きく形成されるとともに
少なくとも搬送方向の一部において、上方から見て搬送方向に対して前記第1の溝底面側に交差する方向に傾斜しながら延びる態様で形成されていることを特徴とする振分け装置。
【請求項2】
前記第2の溝底面は、上方から見て搬送方向に対して傾斜角度が1度〜60度に形成されている請求項1に記載の振分け装置。
【請求項3】
前記第2の溝底面は、幅方向に対して幅方向他方側からの傾斜角度が45度〜135度に形成されている請求項1または請求項2に記載の振分け装置。
【請求項4】
前記第2の溝底面は、上方から見て搬送方向に対して前記第1の溝底面側に交差する方向に傾斜しながら延びる部分の搬送方向下流側の端部から、上方から見て搬送方向に対して前記第1の溝底面と反対側に交差する方向に傾斜しながら延びる態様で形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の振分け装置。
【請求項5】
前記第2の溝底面は、第1の溝底面よりも摩擦係数が大きくなるように形成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の振分け装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の振分け装置が設けられていることを特徴とする錠剤印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤印刷装置等において、供給される多数の錠剤等の物品を所定の搬送方向に沿って搬送しながら複数列に振り分けるための振分け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において、薬剤師による調剤ミスや患者による誤服用などの医療事故を防止するために、インクジェットプリンタにより錠剤の表面にインクを噴射して印刷を行う錠剤印刷装置が知られている。
【0003】
一般に、この錠剤印刷装置は、錠剤が供給される錠剤供給部と、錠剤を搬送する錠剤搬送部と、錠剤の表面に印刷を行う錠剤印刷部と、錠剤の印刷、割れあるいは欠け等の状態を検査する錠剤検査部と、錠剤が排出される錠剤排出部とから構成される。これによると、錠剤に対して非接触で印刷処理を行うことができる。
【0004】
そして、このような錠剤印刷装置では、錠剤供給部と錠剤搬送部の間に振分け装置が配置される場合が多い。この振分け装置は、各物品を搬送するための搬送溝が搬送方向に延びる態様で複数列設けられたトラフを備え、トラフを搬送方向に振動させることにより、錠剤を所定の搬送方向に沿って搬送しながら複数列に振り分ける(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−179466号公報
【特許文献2】特開2012−254864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、錠剤は各搬送溝において一列で搬送されるが、中には各搬送溝において装置の幅方向に2列に並んで搬送されるものがあり、そのような状態で錠剤を錠剤搬送部に受け渡してしまうと、錠剤印刷部により錠剤の表面に印刷を行うことが困難になり、錠剤印刷装置における錠剤印刷の良品率が低下するという問題があった。特に最近では、平面視が円形の錠剤のみならず、平面視が長円形、楕円形、菱形、涙形などのように外形の一辺が直線状の部分を有する異形錠と呼ばれる錠剤が増えてきており、このような異形錠は平面視が円形の錠剤に比べて、幅方向に2列に並んで搬送される場合が多かった。なお、このような問題は、錠剤のみに限られるものではなく、その他の物品にも生じるものであった。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、物品を各搬送溝において一列に簡単かつ確実に振り分けることができる振分け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、物品を所定の搬送方向に沿って搬送しながら複数列に振り分けるための振分け装置であって、各物品を搬送するための搬送溝が搬送方向に延びる態様で複数列設けられ、前記搬送溝は、搬送方向に直交する幅方向に対して一方側に上方に傾斜する第1の溝底面と、幅方向に対して一方側または他方側に上方に傾斜する第2の溝底面とを備える谷形状に形成され、前記第2の溝底面は、幅方向に対する幅方向他方側からの傾斜角度が第1の溝底面の幅方向に対する幅方向一方側からの傾斜角度よりも大きく形成されるとともに、少なくとも搬送方向の一部において、上方から見て搬送方向に対して前記第1の溝底面側に交差する方向に傾斜しながら延びる態様で形成されていることを特徴とする。なお、第1の溝底面および第2の溝底面について、上方に傾斜する状態には直立状態(傾斜角度90度)も含まれる。
【0009】
これによれば、物品が搬送溝で幅方向に2列に並んで搬送された場合、第2の溝底面側の物品は、第2の溝底面との間において大きな摩擦が生じるため、搬送速度が低下する一方、第1の溝底面側の物品は、幅方向に隣接する第2の溝底面側の物品との間において小さな摩擦しか生じないため、搬送速度がほとんど低下しないことから、第2の溝底面側の物品が第1の溝底面側の錠剤よりも搬送速度が相対的に遅くなる。よって、搬送速度が相対的に速い第1の溝底面側の物品が、搬送速度が相対的に遅い第2の溝底面側の物品よりも搬送方向前方に出る状態となって、物品が当該搬送溝において一列に並びながら搬送されるため、物品を各搬送溝において一列に簡単かつ確実に振り分けることができる。
【0010】
また、前記第2の溝底面は、上方から見て搬送方向に対して傾斜角度が1度〜60度に形成されているのが好ましい。これによれば、第2の溝底面側の物品は、第2の溝底面との間において適度に大きな摩擦が生じることにより搬送速度が適度に低下するため、物品が当該搬送溝において一列に並びながら搬送され易くなる。
【0011】
また、前記第2の溝底面は、幅方向に対して幅方向他方側からの傾斜角度が45度〜135度に形成されているのが好ましい。これによれば、第2の溝底面との間において確実に大きな摩擦が生じることにより搬送速度が確実に低下するため、物品が当該搬送溝において一列に並びながら搬送され易くなる。
【0012】
また、前記第2の溝底面は、上方から見て搬送方向に対して前記第1の溝底面側に交差する方向に傾斜しながら延びる部分の搬送方向下流側の端部から、上方から見て搬送方向に対して前記第1の溝底面と反対側に交差する方向に傾斜しながら延びる態様で形成されていてもよい。これによれば、第2の溝底面側の物品が、第2の溝底面との間の摩擦から解放されて早い速度で搬送されるため、搬送方向に隣り合う第2の溝底面側の物品の間に大きな隙間が生じる。このため、第1の溝底面側の物品が、第2の溝底面側の物品の間に生じた当該隙間に入りんだ状態となって、物品が当該搬送溝において一列に並びながら搬送されるため、物品を各搬送溝において一列により一層確実に振り分けることができる。
また、前記第2の溝底面は、第1の溝底面よりも摩擦係数が大きくなるように形成されてもよい。これによれば、第2の溝底面の物品は、第2の溝底面との間においてより大きな摩擦が生じるため、物品が当該搬送溝310において一列に並びながら搬送され易くなる。
【0013】
また、本発明は、上記振分け装置が設けられていることを特徴とする錠剤印刷装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、物品が搬送溝で幅方向に2列に並んで搬送された場合、第2の溝底面側の物品は、第2の溝底面との間において大きな摩擦が生じるため、搬送速度が低下する一方、第1の溝底面側の物品は、幅方向に隣接する第2の溝底面側の物品との間において小さな摩擦しか生じないため、搬送速度がほとんど低下しないことから、第2の溝底面側の物品が第1の溝底面側の錠剤よりも搬送速度が相対的に遅くなる。よって、搬送速度が相対的に速い第1の溝底面側の物品が、搬送速度が相対的に遅い第2の溝底面側の物品よりも搬送方向前方に出る状態となって、物品が当該搬送溝において一列に並びながら搬送されるため、物品を各搬送溝において一列に簡単かつ確実に振り分けることができる。
【0015】
このため、例えば本装置を錠剤印刷装置に適用した場合、錠剤供給部に供給された錠剤を錠剤搬送部に対して一列で順次受け渡すため、錠剤印刷部により錠剤の表面に所定の印刷を確実に行うことができ、ひいては錠剤印刷の良品率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る錠剤印刷装置の上流側部分を示す図である。
図2図1の振分けトラフの平面図である。
図3図1の振分けトラフの側面図である。
図4】振分けトラフにおいて横倒状態で供給された錠剤を搬送する過程を示す図である。
図5】振分けトラフのC部〜D部の拡大平面図である。
図6】振分けトラフのD部〜F部における拡大平面図である。
図7】振分けトラフのC部における拡大断面図である。
図8】錠剤を示す(a)平面図、(b)側面図、(c)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る振分け装置3を錠剤印刷装置1に適用した実施形態について図1図8を参照しつつ説明する。
【0018】
なお、本実施形態では、装置の長さ方向(図2の左右方向)を搬送方向Xとし、該搬送方向Xに直交する方向(図2の上下方向)を装置の幅方向として説明する。また、物品として、図8に示すように、一対の表面T1と周面T2を有する平面視が長円形の錠剤Tを対象として説明する。
【0019】
この錠剤印刷装置1は、多数の錠剤Tを貯留するホッパー2と、ホッパー2からフィーダ20を介して供給される多数の錠剤Tを複数列に振り分ける振分け装置3と、振分け装置3により複数列に振り分けられた錠剤Tを搬送する搬送コンベア4とを備える。
【0020】
前記フィーダ20は、バイブレータ20aを有しており、バイブレータ20aが搬送方向Xに振動することにより錠剤Tを振分け装置3側に搬送する。また、前記振分け装置3は、斜め下方に傾斜して配設され、同様にバイブレータ33を有しており、バイブレータ33が搬送方向Xに振動することにより錠剤Tを搬送コンベア4側に搬送する。また、前記搬送コンベア4は、上流側がタイミングプーリ40に巻き掛けられるとともに、下流側も図示略のタイミングプーリに巻き掛けられ、所定の方向に回転することにより錠剤Tを搬送する。
【0021】
前記振分け装置3は、図1に示すように、搬送方向Xの上流側に配設された振分けトラフ31と、搬送方向Xの下流側に配設された整列トラフ32とを備える。
【0022】
前記振分けトラフ31は、図2に示すように、錠剤Tを搬送するための搬送溝310が搬送方向Xに延びる態様で設けられている。これら搬送溝310は、幅方向に7列設けられており、幅方向の左側(図2の上側)の3列の各搬送溝310(310L)と、幅方向の右側(図2の下側)の4列の各搬送溝310(310R)から構成される。なお、振分けトラフ31は、上流側に平坦面311が形成されており、該平坦面311が前記搬送溝310の上流側端部に連続して接続されている。
【0023】
前記左側の各搬送溝310(310L)は、図4に示すように、幅方向の右側に上方に傾斜する第1の溝底面310aと、幅方向の左側に上方に傾斜する第2の溝底面310bとを備える谷形状に形成されている。一方、右側の各搬送溝310(310R)は、図4に示すように、幅方向の左側に上方に傾斜する第1の溝底面310aと、幅方向の右側に上方に傾斜する第2の溝底面310bとを備える谷形状に形成されている。
【0024】
これら各搬送溝310の第1の溝底面310aと第2の溝底面310bにおける搬送方向Xの形態について、振分けトラフ31の搬送方向Xの各B部〜G部に分けて具体的に説明する。なお、錠剤Tは、長円状に形成されているため、図5に示すように、搬送時において錠剤Tの長辺方向(図8(b)の左右方向)が搬送方向Xに沿うように搬送されることを前提として説明する。また、図4は、説明の都合上、錠剤Tを実際の大きさよりも大きく図示するものとする。
【0025】
まず、振分けトラフ31の上流側のB部では、図4(B)に示すように、第1の溝底面310aは幅方向に対して傾斜角度10度で形成されるとともに、第2の溝底面310bは幅方向に対して傾斜角度90度で形成されている。つまり、平坦面311と搬送溝310の接続部分A部からB部までの間、第1の溝底面310aは幅方向に対して傾斜角度が0度から10度にかけて次第に大きくなるように形成される一方、第2の溝底面310bは幅方向に対して傾斜角度が90度に形成されている。また、第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bは、図3に示すように、溝底面の上端部から下端部までの高さが次第に高くなっている。また、第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bは、図2に示すように、いずれも搬送方向Xに平行に延びる態様に形成されている。
【0026】
また、振分けトラフ31の中央部のC部では、図4(C)に示すように、第1の溝底面310aは幅方向に対して傾斜角度30度で形成されるとともに、第2の溝底面310bは幅方向に対して傾斜角度90度で形成されている。つまり、振分けトラフ31のB部からC部の間、第1の溝底面310aは幅方向に対して傾斜角度が10度から30度にかけて次第に大きくなるように形成される一方、第2の溝底面310bは幅方向に対して傾斜角度90度を維持するように形成されている。また、第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bは、図3に示すように、溝底面の上端部から下端部までの高さが次第に高くなっている。また、第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bは、その高さが振分けトラフ31のA部からB部の間の第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bの高さよりも搬送方向Xに大きな勾配に形成されている。また、第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bは、図2に示すように、いずれも搬送方向Xに平行に延びる態様に形成されている。
【0027】
また、振分けトラフ31の下流側のD部では、図4(D)に示すように、第1の溝底面310aは幅方向に対して傾斜角度30度で形成されるとともに、第2の溝底面310bは幅方向に対して傾斜角度90度で形成されている。つまり、振分けトラフ31のC部からD部の間、第1の溝底面310aは幅方向に対して傾斜角度30度を維持するように形成されるとともに、第2の溝底面310bは幅方向に対して傾斜角度90度を維持するように形成されている。また、第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bは、図3に示すように、溝底面の上端部から下端部までの高さが一定である。
【0028】
また、振分けトラフ31のC部からD部の間、図2および図5に示すように、幅方向の左側の1列目から3列目の搬送溝310Lにおける第2の溝底面310bは、上方から見て搬送方向Xに対して第1の溝底面310a側(幅方向の右側)に交差する方向に傾斜角度α(本実施形態では3度)で傾斜しながら延びる態様で形成されている。一方、幅方向の右側の1列目から4列目の搬送溝310Rにおける第2の溝底面310bは、上方から見て搬送方向Xに対して第1の溝底面310a側(幅方向の左側)に交差する方向に傾斜角度α(本実施形態では3度)で傾斜しながら延びる態様で形成されている。
【0029】
このように前記第2の溝底面310bは、上方から見て搬送方向に対して第1の溝底面310a側に交差する方向に傾斜しながら延びる態様で形成されるため、図7に示すように、錠剤Tが搬送溝310で幅方向に2列に並んで搬送された場合、図5に示すように、第2の溝底面310b側の錠剤Tは、第2の溝底面310bとの間において大きな摩擦が生じるため、搬送速度が低下する一方、第1の溝底面310a側の錠剤は、幅方向に隣接する第2の溝底面310b側の錠剤Tとの間において小さな摩擦しか生じないため、搬送速度が低下しないことから、第2の溝底面310b側の錠剤Tが第1の溝底面310a側の錠剤Tよりも搬送速度が相対的に遅くなる。よって、搬送速度が相対的に速い第1の溝底面310a側の錠剤Tが、搬送速度が相対的に遅い第2の溝底面310b側の錠剤Tよりも搬送方向前方に出る状態となり、錠剤Tが当該搬送溝310において一列に並びながら搬送される。
【0030】
また、振分けトラフ31の下流側のE部では、図4(E)に示すように、第1の溝底面310aは幅方向に対して傾斜角度30度で形成されるとともに、第2の溝底面310bは幅方向に対して傾斜角度60度で形成されている。つまり、振分けトラフ31のD部からE部の間、第1の溝底面310aは幅方向に対して傾斜角度30度を維持するように形成される一方、第2の溝底面310bは幅方向に対して傾斜角度が90度から60度にかけて次第に小さくなるように形成されている。また、第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bは、図3に示すように、溝底面の上端部から下端部までの高さが次第に低くなっている。
【0031】
また、振分けトラフ31のD部からE部の間、幅方向の左側の1列目から3列目の搬送溝310Lにおける第2の溝底面310bは、上方から見て搬送方向Xに対して第1の溝底面310aと反対側(幅方向の左側)に交差する方向に傾斜角度25度で傾斜しながら延びる態様で形成されている。一方、幅方向の右側の1列目から4列目の搬送溝310Rにおける第2の溝底面310bは、上方から見て搬送方向Xに対して第1の溝底面310aと反対側(幅方向の右側)に交差する方向に傾斜角度25度で傾斜しながら延びる態様で形成されている。
【0032】
また、振分けトラフ31の下流側のF部では、図4(F)に示すように、第1の溝底面310aは傾斜角度30度で形成されるとともに、第2の溝底面310bは傾斜角度30度で形成されている。つまり、振分けトラフ31のE部からF部の間、第1の溝底面310aは傾斜角度30度を維持するように形成される一方、第2の溝底面310bは傾斜角度が60度から30度にかけて次第に小さくなるように形成されている。また、第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bは、図3に示すように、溝底面の上端部から下端部までの高さが次第に低くなっている。
【0033】
また、振分けトラフ31のE部からF部の間、幅方向の左側の1列目から3列目の搬送溝310における第2の溝底面310bは、上方から見て搬送方向Xに対して第1の溝底面310aと反対側(幅方向の左側)に交差する方向に傾斜角度25度で傾斜しながら延びる態様で形成されている。一方、幅方向の右側の1列目から4列目の搬送溝310における第2の溝底面310bは、上方から見て搬送方向Xに対して第1の溝底面310aと反対側(幅方向の右側)に交差する方向に傾斜角度25度で傾斜しながら延びる態様で形成されている。
【0034】
このように、振分けトラフ31のD〜F部において、前記第2の溝底面310bは、傾斜角度が搬送方向Xの上流側において第1の溝底面310aの傾斜角度よりも大きく形成され、搬送方向Xの下流側に向かうにつれて次第に小さくなるように形成されている。このため、仮に錠剤Tが起立状態で供給された場合でも、振分けトラフ31のD〜F部において、第1の溝底面310aから第2の溝底面310bに向けて起立状態から横倒状態に次第に移行しながら搬送される。
【0035】
また、前記第2の溝底面310bは、上方から見て搬送方向に対して前記第1の溝底面310a側に交差する方向に傾斜しながら延びる部分(C部〜D部)の搬送方向下流側の端部(C部)から、上方から見て搬送方向に対して前記第1の溝底面310aと反対側に交差する方向に傾斜しながら延びる態様で形成されている。このため、錠剤Tが搬送溝310で幅方向に2列に並んで搬送され、振分けトラフ31のC部〜D部においても2列に並んだ状態が解消されなかった錠剤Tが少数ながら存在していた場合、図6に示すように、第2の溝底面側の物品Ta、Tbが、第2の溝底面310bとの間の摩擦から解放されて早い速度で搬送されるため、搬送方向に隣り合う第2の溝底面310b側の錠剤Ta、Tbの間に大きな隙間が生じる。このため、第1の溝底面310a側の錠剤Tcが、第2の溝底面310b側の錠剤Ta、Tbの間に生じた当該隙間に入りんだ状態となって、状態Ta、Tb、Tcが当該搬送溝310において一列に並びながら搬送されるため、錠剤Tを各搬送溝310において一列により一層確実に振り分けることができる。
【0036】
また、振分けトラフ31の最下流側のF部〜G部(F部を除く)の間では、図4(G)に示すように、第1の溝底面310aは幅方向に対して傾斜角度30度の一定角度で形成されるとともに、第2の溝底面310bは幅方向に対して傾斜角度30度の一定角度で形成され、両側に直立状態の壁部310cが形成されている。また、振分けトラフ31のF部からG部の間における第1の溝底面310aおよび第2の溝底面310bは、図3に示すように、溝底面の上端部から下端部までの高さは一定であるが、壁部310cは、高さが次第に高くなっている。
【0037】
また、幅方向の左側の1列目から3列目の搬送溝310における壁部310cは、上方から見て搬送方向Xに対して幅方向の右側に交差する方向に傾斜しながら延びる態様で形成されている。一方、幅方向の右側の1列目から4列目の搬送溝310における壁部310cは、上方から見て搬送方向Xに対して幅方向の左側に交差する方向に傾斜しながら延びる態様で形成されている。これにより錠剤Tは次第に幅方向中央部に向けて互いの距離を縮めながら搬送されていき、整列トラフ32の搬送溝に受け渡される。
【0038】
次に、錠剤Tの搬送される過程について説明する。なお、実際には多数の錠剤Tが搬送されるが、説明の便宜上、一の錠剤Tが幅方向の左側の2列目の搬送溝310に搬送される場合について説明する。
【0039】
まず、錠剤Tが水平な横倒状態で供給された場合、図4(A)に示すように、錠剤Tは、振分けトラフ31の平坦面311において水平な横倒状態で搬送されたあと、図4(B)に示すように、振分けトラフ31のA部〜B部の間において、一方の表面T1が第1の溝底面310aに支承され、かつ周面T2が第2の溝底面310bに支承された傾斜角度0度〜10度の横倒状態で搬送される。
【0040】
そして、振分けトラフ31のB部〜C部において、図4(B)〜図4(C)に示すように、錠剤Tは、一方の表面T1が第1の溝底面310aに支承され、かつ錠剤Tの周面T2が第2の溝底面310bに支承された傾斜角度10度〜30度の横倒状態で搬送される。
【0041】
そして、振分けトラフ31のC部〜D部において、図4(C)〜図4(D)に示すように、錠剤Tは、一方の表面T1が第1の溝底面310aに支承され、かつ錠剤Tの周面T2が第2の溝底面310bに支承された傾斜角度30度の横倒状態で搬送される。
【0042】
このとき、図7に示すように、錠剤Tが搬送溝310で幅方向に2列に並んで搬送された場合、図5に示すように、第2の溝底面310b側の錠剤Tが第1の溝底面310a側の錠剤Tよりも搬送速度が相対的に遅くなるため、搬送速度が相対的に速い第1の溝底面310a側の錠剤Tが、搬送速度が相対的に遅い第2の溝底面310b側の錠剤Tよりも搬送方向前方に出る状態となり、錠剤Tが当該搬送溝310において一列に並びながら搬送される。
【0043】
そして、振分けトラフ31のD部〜F部において、図4(D)〜図4(F)に示すように、錠剤Tは、一方の表面T1が第1の溝底面310aに支承され、かつ錠剤Tの周面T2が第2の溝底面310bに支承された傾斜角度30度の横倒状態で搬送される。
【0044】
このとき、錠剤Tが搬送溝310で幅方向に2列に並んで搬送され、振分けトラフ31のC部〜D部においても2列に並んだ状態が解消されなかった錠剤Tが少数ながら存在していた場合、図6に示すように、第1の溝底面310a側の錠剤Tcが、第2の溝底面310b側の錠剤Ta、Tbの間に生じた隙間に入りんだ状態となって、状態Ta、Tb、Tcが当該搬送溝310において一列に並びながら搬送される。
【0045】
そして、振分けトラフ31のF部〜G部の間(F部を除く)において、図4(G)に示すように、錠剤Tは、一方の表面T1が第1の溝底面310aと第2の溝底面310bに支承されたほぼ水平の横倒状態で搬送されていき、整列トラフ32の搬送溝310に受け渡される。
【0046】
なお、本実施形態では、錠剤Tとして平面視が長円形のものを搬送したが、一対の表面T1と周面T2を有する平面視が円形、楕円形、菱形、涙形など、その他の形状のものを搬送してもよい。要は、錠剤Tの形状が起立状態と横倒状態の両状態が可能なものであれば、どのような形状の錠剤Tを搬送してもよい。
【0047】
また、振分けトラフ31のC部〜D部の間において、第2の溝底面310bの搬送方向Xに対する傾斜角度が3度に形成されるものとしたが、その他の傾斜角度であってもよい。ただ、2列に並んで搬送された錠剤Tを確実に1列に移行させるため、第2の溝底面310bの搬送方向Xに対する傾斜角度は1度〜60度に形成されるのが好ましい。このように第2の溝底面310bの搬送方向Xに対する傾斜角度を1度以上としたのは、第2の溝底面310bにより錠剤Tに対して摩擦を生じさせるためである。また、第2の溝底面310bの搬送方向Xに対する傾斜角度を60度以下としたのは、第2の溝底面310bが錠剤Tの搬送の障害となることを防止するためである。
【0048】
また、振分けトラフ31のC部〜D部の間において、第2の溝底面310bの幅方向に対する傾斜角度を90度としたが、その他の傾斜角度であってもよい。ただ、2列に並んで搬送された錠剤Tを確実に1列に移行させるため、第2の溝底面310bの幅方向に対する傾斜角度は45度〜135度(すなわち幅方向一方側に5度以上、幅方向他方側に5度以上)に形成されるのが好ましい。このように第2の溝底面310bの幅方向に対する傾斜角度を45度〜135度としたのは、第2の溝底面310bにより錠剤Tに対して摩擦を確実に生じさせるためである。
【0049】
また、振分けトラフ31のC部〜D部の間において、前記第2の溝底面310bは、第1の溝底面310aよりも摩擦係数が大きくなるように形成されてもよい。例えば、第2の溝底面310aの表面にゴム素材などの摩擦係数が大きい部材を展着したり、第2の溝底面310aの表面に細かい凹凸を形成することにより表面を粗くすることが挙げられる。これによれば、第2の溝底面310b側の錠剤Tは、第2の溝底面310bとの間においてより大きな摩擦が生じるため、錠剤Tが当該搬送溝310において一列に並びながら搬送され易くなる。
【0050】
また、搬送トラフ31のD部〜F部の間において、第2の溝底面310bの搬送方向Xに対する傾斜角度を25度としたが、その他の傾斜角度であってもよい。
【0051】
また、本発明に係る振分け装置3を錠剤を搬送する機能を有する錠剤印刷装置1に適用した場合について説明したが、その他の物品を搬送する機能を有する装置に適用してもよい。
【0052】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…錠剤印刷装置
2…ホッパー
3…振分け装置
31…振分けトラフ
310…搬送溝
310a…第1の溝底面
310b…第2の溝底面
310c…壁部
311…平坦面
32…整列トラフ
4…搬送コンベア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8