(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トンネルの切羽と前記第1の運搬手段との間に、前記掘削物を破砕して前記第1の運搬手段に運ぶ自走式の破砕手段を配置したことを特徴とする請求項1記載のトンネルの掘削工事により生じた掘削物の運搬装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
まず、本実施の形態に係る運搬装置の構成例について
図1および
図2を参照して説明する。
図1は本実施の形態に係る運搬装置の平面図、
図2は
図1の運搬装置の側面図である。
【0016】
本実施の形態の運搬装置1は、例えば、トンネルTの切羽Kを発破により掘削した場合に生じたズリ(掘削物)をトンネルTの抗口へ運ぶズリ運搬装置であり、クラッシャ(破砕手段)2と、伸縮ベルトコンベア(コンベア)3とを有している。
【0017】
この運搬装置1は、
図1に示すように、トンネルTの幅方向の一方の片側に寄せられた状態で、切羽Kから坑口に向かって順に縦列配置されており、トンネルTの幅方向の他方の片側は、発破装薬用重機、積載用重機および支保吹付用重機等のような各種の重機の通路として使用可能になっている。
【0018】
クラッシャ2は、発破により生じたズリを伸縮ベルトコンベア3で運ぶことが可能な大きさに破砕する破砕機であり、一次クラッシャ2aと、二次クラッシャ2bとを有している。この一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bは、例えば、自走式のクラッシャで構成されており、切羽Kから伸縮ベルトコンベア3に向かって順に縦列配置されている。
【0019】
一次クラッシャ2aの処理能力は、例えば、400t/h(267m
3/h)である。排出隙間(オフセット、以下、OSSという)は、例えば、190mmである。破砕後のズリの直径は、例えば、300mm以下とする。破砕能力は、例えば、280t/h、破砕不要分は、例えば、120t/hである。
【0020】
二次クラッシャ2bの処理能力、破砕能力および破砕不要分は、例えば、上記した一次クラッシャ2aと同じである。また、二次クラッシャ2bのOSSは、一次クラッシャ2aと同様に、例えば、190mmに設定されているが、二次クラッシャ2bには一次クラッシャ2aで破砕されたズリが運ばれること等により、破砕後のズリの直径を、例えば、250mm以下にすることができる。ただし、二次クラッシャ2bから排出されるズリの直径が250mm以下になるように二次クラッシャ2bのオフセットを調整(190mmよりも小さく)する場合もある。
【0021】
伸縮ベルトコンベア3は、二次クラッシャ2bから排出されたズリを坑口に向かって運ぶ運搬手段であり、例えば、一次ベルトコンベア3aと、二次ベルトコンベア3bとを有している。この一次ベルトコンベア3aおよび二次ベルトコンベア3bは、相互に独立して移動(自走)可能な搬送装置であり、例えば、トンネルTの長手方向に沿って伸縮(移動)可能な状態で二次クラッシャ2bの後方から坑口に向かって順に縦列配置されている。なお、相互とは、通常、両者間の関係を表現する文言であるが、ここでは伸縮ベルトコンベア3が3台以上ある場合にも適用される。
【0022】
伸縮ベルトコンベア3のベルト幅は、例えば、750mmまたは900mm程度であり、比較的小型の伸縮ベルトコンベア3を使用することができる。このため、伸縮ベルトコンベア3のコストを低減することができる。また、ズリの運搬速度を向上させることができるので、ズリの運搬効率を向上させることができる。伸縮ベルトコンベア3のズリの運搬能力は、例えば、600t/hである。
【0023】
また、発破の際には、クラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3が発破の際に切羽Kから飛散するズリが届かない位置に移動する。すなわち、一次ベルトコンベア3aが二次ベルトコンベア3bの上方に重なる位置まで移動し、その分、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bも切羽Kから離れた位置に移動する。これにより、発破の際に切羽Kから飛散したズリに起因してクラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3が破損するのを防止することができる。
【0024】
一方、発破後のズリの運搬の際には、クラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3が切羽Kに近づく。すなわち、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bが切羽Kに近づくとともに、一次ベルトコンベア3aが切羽Kに向かって移動する。これにより、切羽Kの近傍のズリの集合位置からクラッシャ2までの距離を短くすることができるので、切羽Kの近傍からクラッシャ2までズリを運搬する際の運搬時間を短くすることができる。
【0025】
次に、上記したクラッシャ2の構成例について
図3〜
図9を参照して説明する。
図3は
図1の運搬装置を構成するクラッシャの斜視図、
図4は
図3の破線で囲んだ領域Aの拡大斜視図、
図5は
図3のクラッシャの概略構成図、
図6(a)は
図3の二次クラッシャのズリ投入部およびズリ破砕部の平面図、
図6(b)は
図6(a)の二次クラッシャのズリ投入部およびズリ破砕部を側面側から見た概略構成図、
図7(a)は
図6(b)のズリ破砕部の要部拡大構成図、
図7(b)は
図7(a)のズリ破砕部の破砕室の平面図である。
【0026】
なお、ズリZaは発破により生じたズリを示し、ズリZbは一次クラッシャ2aから排出されたズリを示し,ズリZcは二次クラッシャ2bから排出されたズリを示している。また、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bのズリ投入部およびズリ破砕部の構成は同じなので、代表して二次クラッシャ2bのズリ投入部を
図6に示している。
【0027】
図3および
図5に示すように、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bは、それぞれ走行部4a,4bと、ズリ投入部5a,5bと、ズリ破砕部6a,6bと、ベルトコンベア部7a,7bとを一体的に備えている。
【0028】
一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bの走行部4a,4bは、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bを自走可能とするための機構部であり、例えば、無限軌道によって構成されている。無限軌道は、複数枚の鋼製の履板を鎖のように無端環状に接続することで構成された履帯を、複数の回転ローラの周囲に取り付けることにより構成されている。ただし、走行部4a,4bは、無限軌道で構成することに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、タイヤ車輪で走行する構成としても良い。
【0029】
一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bのズリ投入部5a,5bは、ズリ投入部5a,5bに投入されたズリをズリ破砕部6a,6bに運ぶ運搬手段であり、
図4〜
図6に示すように、フィーダ10と、その上方の枠体に一体的に装着されたホッパ11とを備えている。
【0030】
フィーダ10は、例えば、グリズリーフィーダによって構成されており、トラフ10aと、その下流のグリズリーデッキ10bとを一体的に備えている。トラフ10aは、ズリ投入部5a,5bのホッパ11を介して投入されたズリを受け入れるプレートであり、水平または前傾(グリズリーデッキ10bに向かって低くなるように傾斜)した状態で設置されている。このトラフ10aに対して上下運動が加わった振動を機械的に与えることにより、トラフ10a上のズリを前方のグリズリーデッキ10b上に送るようになっている。グリズリーデッキ10bは、トラフ10aから送られたズリのうち、破砕の必要のない大きさのズリを、複数本のグリズリーバーによって、ふるいにかけることで、グリズリーデッキ10bの下方に設置されたベルトコンベア(図示せず)等に載せる機構部である。
【0031】
一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bのズリ破砕部6a,6bは、ズリを予め決められた大きさ(直径)に破砕するための機構部であり、例えば、シングルトッグル型ジョークラッシャにより構成されている。ただし、ズリ破砕部6a,6bは、シングルトッグル型ジョークラッシャに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、ダブルトッグル型ジョークラッシャまたはローヘッド型ジョークラッシャを用いても良い。
【0032】
ズリ破砕部6a,6bは、
図5、
図6(b)および
図7に示すように、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bの枠体に装着された固定歯板13aと、動力により揺動運動するスイングジョー14に装着された動歯板13bと、これらの歯が所定の角度を持って対向することで略V型に形成された破砕室15とを備えている。
【0033】
ズリ破砕部6a,6bのスイングジョー14は、その支持軸14a(
図6(b)参照)が偏心軸と一致するように設置されている。破砕処理時には、ズリ破砕部6a,6bの一枚のトッグルプレート16(
図6(b)および
図7参照)と偏心軸とでスイングジョー14を揺動運動させる。この際、スイングジョー14の動きが上部で円運動、下部に近づくにつれて細長い楕円運動から円弧状運動となる。この状態でズリ破砕部6a,6bの破砕室15に供給されたズリは、重力によって落下しながら動歯板13bの揺動運動による圧縮作用や破砕物同士の衝突等により破砕される。そして、ズリ破砕部6a,6bの破砕室15で破砕されたズリは、破砕室15の下方のベルトコンベア部7a,7b上に載せられるようになっている。
図7(b)に示すように、固定歯板13aの谷と動歯板13bの山との最小間隙Dをセットといい、この最小間隙Dが最大の時を開き側セット、最小の時を閉じ側セットという。上記したOSSは、開き側セット時の間隔である。
【0034】
一次クラッシャ2aのベルトコンベア部7aは、一次クラッシャ2aのズリ破砕部6aから排出されたズリZbを、トンネルTの長手方向の後段の二次クラッシャ2bのズリ投入部5bまで運ぶ運搬手段である。ズリの運搬時において、一次クラッシャ2aは、そのベルトコンベア部7aの先端部が、後段の二次クラッシャ2bのズリ投入部5bの一部に係るように配置される。ベルトコンベア部7aのズリ運搬能力は、例えば、600t/hである。
【0035】
二次クラッシャ2bのベルトコンベア部7bは、二次クラッシャ2bのズリ破砕部6bから排出されたズリZcを伸縮ベルトコンベア3の一次ベルトコンベア3aまで運ぶ運搬手段である。ズリの運搬時において、二次クラッシャ2bは、そのベルトコンベア部7bの先端部が、後段の一次ベルトコンベア3aの一部に係るように配置される。ベルトコンベア部7bのズリ運搬能力は、例えば、600t/hである。
【0036】
次に、
図8は二次クラッシャのズリ投入部でのズリ投入の可否を知らせる検出装置の概略構成図である。なお、一次クラッシャ2aにも検出装置は設置されているが、一次クラッシャ2aの検出装置と二次クラッシャ2bの検出装置とは同じなので、代表して二次クラッシャ2bの検出装置を
図8に示している。
【0037】
検出装置20は、ホッパ11内のズリの天端位置を検出することでホッパ11内へのズリの投入の可否を知らせる装置であり、複数個のセンサ20aと、プログラムリレー回路20bと、回転灯20cとを備えている。ただし、センサ20aは、複数個に限定されるものではなく1個でも良い。
【0038】
各センサ20aは、ホッパ11内のズリの天端位置を検出する装置であり、ホッパ11よりも上方の枠体上に装着されている。各センサ20aは、例えば、レーザダイオードまたはLED(Ligt Emitting Diode)等を光源とする光学方式の距離センサまたは超音波方式の距離センサによって構成されており、配線を通じてプログラムリレー回路20bと電気的に接続されている。
【0039】
プログラムリレー回路20bは、各センサ20aからの検出信号に基づいて回転灯20cのオン(点滅または点灯)またはオフ(消灯)を制御する回路であり、配線を通じて回転灯20cと電気的に接続されている。プログラムリレー回路20bは、全てのセンサ20aで警報オンの場合(すなわち、検出箇所のズリの天端位置が予め決められた高さを越えている場合)、回転灯20cをオン(点滅または点灯)してズリの投入が不可であることを知らせるようになっている。ただし、ここでは複数のセンサ20cの全てがオンの場合に回転灯20cをオンする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数のセンサ20aのうちの選択された少なくとも1つがオンの場合に回転灯20cをオンにするようにしても良い。
【0040】
回転灯20cは、プログラムリレー回路20bからの制御信号に基づいてオン(点滅または点灯)またはオフ(消灯)することにより、ホッパ11内へのズリの投入可否を知らせる表示手段であり、ホッパ11よりも上方の枠体上の見易い位置に装着されている。一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bのズリ投入部5a,5bへのズリの投入の可否は、例えば、発破により生じたズリをクラッシャ2に運搬する作業者が、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bの各々に配置された回転灯20cのオンオフ状態を確認することで判断する。
【0041】
次に、
図9は二次クラッシャのズリ投入部でのズリの状況を監視するための監視装置の概略構成図である。なお、一次クラッシャ2aにも監視装置は設置されているが、一次クラッシャ2aの監視装置と二次クラッシャ2bの監視装置とは同じなので、代表して二次クラッシャ2bの監視装置を示している。
【0042】
監視装置21は、ホッパ11内のズリの状態を監視する装置であり、複数個のウェブカメラ21aと、レコーダ21bと、ハブ21cと、パーソナルコンピュータ21dと、モニタ21eとを備えている。
【0043】
ウェブカメラ21aは、ホッパ11内のズリの状況を撮影する装置であり、ホッパ11よりも上方の枠体上に装着されている。ただし、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bに直接設置すると振動等で画像が不鮮明になる場合もあるので、その場合は、ウェブカメラ用の足場を一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bから離れた位置に別途用意しても良い。ウェブカメラ21aは、配線を通じてレコーダ21bと電気的に接続されている。
【0044】
レコーダ21bは、ウェブカメラ21aで撮影した動画や静止画を記憶する装置であり、ハブ21cを介してパーソナルコンピュータ21dと電気的に接続されている。パーソナルコンピュータ21dは、ウェブカメラ21aから送られた信号を画像に変換してモニタ21eに表示するようになっている。作業者は、モニタ21eを通じてホッパ11内のズリの状況をリアルタイムで監視することができるようになっている。
【0045】
次に、本実施の形態のトンネルの掘削方法および掘削により生じたズリの運搬方法の一例を
図10〜
図18を参照して説明する。なお、掘削工法は、特に限定されるものではないが、例えば、NATM(New Austrian Tunneling Method)である。岩種は、特に限定されるものではないが、例えば、砂岩である。
【0046】
まず、
図10はトンネル掘削作業における発破工程時のトンネル内の運搬装置の側面図、
図11は
図10に続くトンネル掘削作業における発破工程後のトンネル内の運搬装置の側面図である。
【0047】
ここでは、
図10に示すように、例えば、油圧ジャンボ等のような自走式の装薬用重機によってトンネルTの切羽K1にダイナマイトを仕掛けた後、そのダイナマイトを爆破(発破)することにより、
図11に示すように、トンネルTの切羽K1を掘削する。なお、
図11の切羽K2は、発破による掘削後の切羽を示している。
【0048】
この発破工程時においては、一次ベルトコンベア3aと二次ベルトコンベア3bとが重なって配置されており、一次クラッシャ2a、二次クラッシャ2b、一次ベルトコンベア3aおよび二次ベルトコンベア3bは、発破により飛散した破砕物が届かない位置に待機している。これにより、発破により飛散した破砕物が一次クラッシャ2a、二次クラッシャ2b、一次ベルトコンベア3aおよび二次ベルトコンベア3bに当たるのを防止することができるので、破砕物の衝突に起因する一次クラッシャ2a、二次クラッシャ2b、一次ベルトコンベア3aおよび二次ベルトコンベア3bの損傷や破壊を防止することができる。
【0049】
続いて、
図12は
図11に続くトンネル掘削作業における発破工程後のトンネル内の運搬装置の平面図、
図13は
図12の運搬装置の側面図である。
【0050】
ここでは、トンネルT内の空気を換気した後、
図12に示すように、一次クラッシャ2a、二次クラッシャ2b、一次ベルトコンベア3aを切羽K2に向かって移動させる。また、発破により生じたズリZaをクラッシャ2に積載するためのサイドダンプシャベル等のような自走式の積載用重機30をトンネルTの切羽K2に移動させる。なお、移動停止後の一次クラッシャ2aの切羽側先端部と切羽K2との間には、ズリZaの運搬作業や支保工作業等の各種作業を行えるだけの空間(距離)が確保されている。また、使用する積載用重機30は1台に限定されるものではなく、例えば、2台でも良い。
【0051】
次いで、
図14は
図12に続くトンネル掘削作業におけるズリ運搬工程時のトンネル内の運搬装置の平面図、
図15は
図14の運搬装置の側面図である。
【0052】
ここでは、一次クラッシャ2a、二次クラッシャ2b、一次ベルトコンベア3aおよび二次ベルトコンベア3bの駆動を開始した後、
図14および
図15に示すように、発破により生じたズリZaを、積載用重機30によって一次クラッシャ2aのズリ投入部5aにホッパ11を通じて投入する。
【0053】
一次クラッシャ2aに投入されたズリZaは、一次クラッシャ2aのズリ破砕部6aで予め決められた直径のズリZbに破砕された後、一次クラッシャ2aのベルトコンベア部7aに載せられて二次クラッシャ2bのズリ投入部5bにホッパ11を通じて投入される。ズリZbの直径は、例えば、300mm以下である。
【0054】
二次クラッシャ2bに投入されたズリZbは、二次クラッシャ2bのズリ破砕部6bで、伸縮ベルトコンベア3に積載可能な予め決められた直径のズリZcに破砕された後、二次クラッシャ2bのベルトコンベア部7bに載せられて一次ベルトコンベア3a上に積載され、さらに二次ベルトコンベア3bに受け渡されてトンネルTの抗口に運ばれる。ズリZcの直径は、例えば、250mm以下である。
【0055】
ところで、このまま一次クラッシャ2aのみにズリZaを投入し続けると、一次クラッシャ2aの処理能力によってズリの運搬量が決められてしまうため、ズリの運搬作業効率が低下してしまう場合がある。そこで、本実施の形態においては、発破により生じたズリZaを二次クラッシャ2bに直接投入する。
図16はトンネル掘削作業において発破により生じたズリを二次クラッシャに直接投入している工程時のトンネル内の運搬装置の平面図、
図17は
図16の運搬装置の側面図である。この場合、一次クラッシャ2aでは処理に余裕が無くズリZaを投入できないときでも、二次クラッシャ2bでは処理に余裕がある場合があるので、処理に余裕のある二次クラッシャ2bに発破で生じたズリZaを直接投入することにより、ズリの運搬処理効率を向上させることができる。
【0056】
しかし、発破で生じたズリZaを二次クラッシャ2bに直接投入することでズリの運搬効率を向上させることができたとしても、発破で生じたズリを単純に二次クラッシャ2bに投入してしまうと、二次クラッシャ2bから排出されるズリの直径が目標値よりも大きくなってしまう場合がある。その場合、二次クラッシャ2bの後段の伸縮ベルトコンベア3の大型化を招くのでコスト高となってしまう。
【0057】
そこで、本実施の形態においては、一次クラッシャ2aから二次クラッシャ2bに送られたズリZbが二次クラッシャ2bで破砕されている状態で、発破で生じたズリZaを二次クラッシャ2bのズリ投入部5bに直接投入する。すなわち、二次クラッシャ2bのズリ破砕部6bの破砕室15内に、一次クラッシャ2aで破砕された後の300mm以下のズリZbと、発破で生じたズリZaとが同時に投入される。これにより、二次クラッシャ2bのズリ破砕部6bの破砕室15内が圧密状態になるため、二次クラッシャ2bのOSSが一次クラッシャ2aのOSSと同じ190mmであっても二次クラッシャ2bから直径が250mm以下のズリZbを排出することができた。このため、二次クラッシャ2bや伸縮ベルトコンベア3の大型化を招くこともないのでコスト高を招くこともない。したがって、本実施の形態によれば、発破方式を用いたトンネルTの掘削時に生じたズリを予め決められた直径以下にした状態で伸縮ベルトコンベア3に載せて運ぶ場合においてズリの運搬作業効率を向上させることができる。ただし、二次クラッシャ2bから排出されるズリの直径が250mm以下になるように二次クラッシャ2bのOSSを調整する(190mmよりも小さくする)場合もある。
【0058】
次に、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bへのズリの投入方法の一例について
図18を参照して説明する。
図18は運搬装置の一次クラッシャおよび二次クラッシャに対するズリの投入可否を表示する回転灯の信号表示とその対応とを示している。なお、青は投入可能、赤は投入不可を示している。
【0059】
ズリの投入の可否は、発破により生じた切羽周辺のズリを一次クラッシャ2aまたは二次クラッシャ2bまで運ぶ作業者が、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bの各々に配置された回転灯2cのオンオフの表示状態を確認することによって判断する(すなわち、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bの各々のセンサ20aで検出されたホッパ11内のズリの天端位置の状態で判断する)。
【0060】
このとき、ズリの投入は、一次クラッシャ2aへの投入を優先させる。すなわち、一次クラッシャ2aの回転灯20cの信号表示が投入可能(青)で、二次クラッシャ2bの回転灯20cの信号表示も投入可能(青)の場合は、一次クラッシャ2aにズリZaを投入する。次に、一次クラッシャ2aの回転灯20cの信号表示が投入可能(青)で、二次クラッシャ2bの回転灯20cの信号表示が投入不可(赤)の場合は、一次クラッシャ2aにズリZaを投入する。次に、一次クラッシャ2aの回転灯20cの信号表示が投入不可(赤)で、二次クラッシャ2bの回転灯20cの信号表示が投入可能(青)の場合は、二次クラッシャ2bにズリZaを投入する。次に、一次クラッシャ2aの回転灯20cの信号表示が投入不可(赤)で、二次クラッシャ2bの回転灯20cの信号表示も投入不可(赤)の場合は、待機とする。このように、一次クラッシャ2aに対するズリの投入を優先させることにより、発破により生じたズリZaを二次クラッシャ2bに直接投入する際には常に一次クラッシャ2aから排出されたズリZbが二次クラッシャ2bで破砕されている状態にすることができるので、二次クラッシャ2bから予め決められた直径以下のズリZcを排出することができる。
【0061】
また、ズリの破砕処理に際しては、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bの各々のホッパ11内のズリの状況をウェブカメラ21aで連続撮影し、リアルタイムで確認する。これにより、回転灯2cがオンまたはオフのときのホッパ11内のズリの状況を確認したり、ホッパ11内で何か問題が生じていないか等を確認したりすることができる。
【0062】
ここで、一次クラッシャ2aには、例えば、40秒に1回の投入で400t/h、二次クラッシャ2bには、例えば、145秒に1回の投入で110t/hを実現する。このためには、一次クラッシャ2aには40秒に1回、二次クラッシャ2bには146秒に1回投入する必要があり、処理時間10分に換算すると、一次クラッシャ2aには15回、二次クラッシャ2bには4回の投入となる。1台の積載用重機30によってクラッシャ2にズリを投入する場合、10分間の投入方法は、例えば、一次クラッシャ2aをF、二次クラッシャ2bをSとすると、FFFSFFFSFFFSFFFSFFFの順に投入する。このとき、4.5t/回(=3m
3/回)×19回=85.5t/10分(ほぼ57m
3/10分)=513t/h(ほぼ目標値)となる。発明者の実験によれば、本実施の形態の一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bよりも処理能力の高いクラッシャ(NT−500)を1台(排出されるズリの直径が250mm以下)だけ配置して同じ処理をした場合に比べて、ズリの運搬作業効率を27.5%向上させることができた。
【0063】
次いで、トンネルTの切羽K2の周辺のズリをクラッシャ2に運搬する作業が終了したら、自走式の2台の吹付用重機によってトンネルTの掘削箇所の内壁面にコンクリート等からなる被覆材を吹き付けた後、トンネルTの内壁面に対して交差する方向に金属製の複数のロックボルトを設置してトンネルTの掘削箇所の内壁面を補強する(支保工作業)。
【0064】
続いて、トンネルT内の支保工作業の終了後、伸縮ベルトコンベア3上にズリが無いことを確認してから一次ベルトコンベア3aをトンネルTの抗口に向かって移動(スライド)して二次ベルトコンベア3bの上方に重なるように配置し、一次クラッシャ2aおよび二次クラッシャ2bを抗口側に移動する。
【0065】
その後、次の掘削サイクルの発破作業に移行し、上記と同様の作業を進める。そして、上記のような発破による掘削作業およびズリの運搬作業を複数回繰り返すことにより、地山にトンネルTを形成する。
【0067】
まず、第2の実施の形態に係る運搬装置の構成例について
図19を参照して説明する。
図19(a)は第2の実施の形態に係る運搬装置の平面図、
図19(b)は
図19(a)の運搬装置の側面図である。
【0068】
本実施の形態の運搬装置1においては、上記した伸縮ベルトコンベア(第1の運搬手段)3の二次ベルトコンベア3bの後段に、テールピース台車35を介して延伸ベルトコンベア(第2の運搬手段)40が縦列配置されている。なお、これ以外の構成は、前記第1の実施の形態と同じである。
【0069】
テールピース台車35は、伸縮ベルトコンベア3(二次ベルトコンベア3b)から運ばれたズリを延伸ベルトコンベア40に搬送する中継運搬装置であり、伸縮ベルトコンベア3(二次ベルトコンベア3b)と延伸ベルトコンベア40との間に設置されている。このテールピース台車35は、ズリを運搬するベルトコンベアを備える他、無限軌道式の移動装置を備えており、トンネルTの延在方向に沿って前後に自走可能な構造になっている。
【0070】
また、テールピース台車35は、延伸ベルトコンベア40の先端部の走行可能な支持台と索条(ワイヤロープ)等によって連結されており、トンネルTの掘削に合わせてテールピース台車35を切羽Kに向かって前進させると、それに伴い延伸ベルトコンベア40の先端部も切羽Kに向かって延伸させることが可能な構成になっている。
【0071】
延伸ベルトコンベア40は、伸縮ベルトコンベア3(二次ベルトコンベア3b)からテールピース台車35を介して運ばれたズリをトンネルTの坑口に向かって運ぶ運搬装置であり、テールピース台車35の後端部からトンネルTの坑口側まで連続して延在した状態で設置されている。
【0072】
この延伸ベルトコンベア40の後端部には、余長ベルト(延伸用ベルト)を収納するカセット40aが設置されており、トンネルTの掘削に合わせてテールピース台車35を切羽Kに向かって前進させると、それに伴いカセット40aから余長ベルトが引き出されて延伸ベルトコンベア40の先端部の搬送部分を切羽Kに向かって延伸することが可能な構成になっている。
【0073】
ここでは、伸縮ベルトコンベア3(二次ベルトコンベア3b)と延伸ベルトコンベア40との間にテールピース台車35を設ける場合について説明したが、テールピース台車35を設けずに伸縮ベルトコンベア3(二次ベルトコンベア3b)のズリを延伸ベルトコンベア40に直接運ぶ構成にすることもできる。この場合、延伸ベルトコンベア40の先端部を切羽Kに向かって延伸(移動)させるために、例えば、延伸ベルトコンベア40の先端部にベルトコンベアを持たない自走式の台車を連結しても良いし、延伸ベルトコンベア40の先端部に自走式の移動装置を組み込んでも良い。
【0074】
次に、本実施の形態のトンネルの掘削方法および掘削により生じたズリの運搬方法の一例を
図20〜
図24を参照して説明する。なお、特に限定されるものではないが、掘削工法や岩種は、例えば、前記第1の実施の形態と同じである。
【0075】
まず、
図20(a)はトンネル掘削作業における発破工程時のトンネル内の運搬装置の側面図、
図20(b)は
図20(a)に続くトンネル掘削作業における発破工程後のトンネル内の運搬装置の側面図である。
【0076】
ここでは、前記第1の実施の形態と同様、
図20(a)に示すように、伸縮ベルトコンベア3を縮ませることでクラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3を切羽K1から離れた位置に待避させた状態で、トンネルTの切羽K1に発破孔を重機等により形成し、その発破孔内にダイナマイト等のような爆薬を仕掛けた後、そのダイナマイトを爆破(発破)することにより、
図20(b)に示すように、切羽K1を掘削する。
【0077】
図20(a)の符号Lsは、発破に際して、トンネルTの切羽K1とクラッシャ2の一次クラッシャ2aの先端部(運搬装置の先端部)との間に必要な待避長を示しており、特に限定されるものではないが、例えば、40mである。この待避長Lsを確保することにより、前記第1の実施の形態と同様に、クラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3は、発破により飛散した破砕物が届かないので、破砕物の衝突を回避することができる。したがって、破砕物の衝突に起因するクラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3の損傷や破壊を防止することができる。なお、運搬装置1自体にクラッシャ2が無い場合は、延伸ベルトコンベア3の先端部を運搬装置の先端部として待避長Lsを確保する。
【0078】
また、
図20(b)の符号Meは発破により掘削された掘削長を示している。この掘削長Meは、例えば、1.5〜3m程度であり、地山の地質や発破の状態等に応じて、同じトンネルT内でも発破毎に長さが変動することがある。また、符号K2は、発破により新たに形成された切羽を示している。
【0079】
続いて、
図21(a)は
図20(b)に続くズリ運搬作業の準備段階におけるトンネル内の運搬装置の側面図である。
【0080】
ここでは、前記第1の実施の形態と同様に、トンネルT内の空気を換気した後、ズリ積載用の自走式の積載用重機30(
図12等参照)をトンネルTの切羽K2に移動させるとともに、運搬装置1の伸縮ベルトコンベア3を切羽K2に向かって伸ばす。すなわち、クラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3の一次ベルトコンベア3aを切羽K2に向かって移動させる。この際、本実施の形態においては、発破の前後においてクラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3の一次ベルトコンベア3aが前進した前進長Maを、待避長Ls−作業空間長Lw+掘削長Meとしている。これについては後述する。
【0081】
なお、作業空間長Lwは、ズリZaの運搬作業等の各種作業を行うのに必要な長さで、特に限定されるものではないが、例えば、20mである。また、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aの前進時は、伸縮ベルトコンベア3の二次ベルトコンベア3b、テールピース台車35および延伸ベルトコンベア40は停止したままである。
【0082】
続いて、
図21(b)は
図21(a)に続くズリ運搬作業におけるトンネル内の運搬装置の側面図である。
【0083】
ここでは、前記第1の実施の形態と同様に、運搬装置1(クラッシャ2、伸縮ベルトコンベア3、テールピース台車35および延伸ベルトコンベア40)を駆動(破砕動作および運搬動作を開始)した後、切羽K2の周辺のズリZaを積載用重機30によってクラッシャ2に投入する。これにより、クラッシャ2によって破砕されたズリZcは、伸縮ベルトコンベア3およびテールピース台車35を順に介して延伸ベルトコンベア40に運ばれ、延伸ベルトコンベア40によってトンネルTの抗口に運ばれる。ズリZaをクラッシャ2で破砕することにより、伸縮ベルトコンベア3、テールピース台車35および延伸ベルトコンベア40の小型化を図れるとともに、ズリの運搬効率を向上させることができる。
【0084】
続いて、
図22(a)は
図21(b)に続く発破準備工程直前におけるトンネル内の運搬装置の側面図、
図22(b)は
図22(a)に続く発破準備工程におけるクラッシャおよび伸縮ベルトコンベアの移動途中のトンネル内の運搬装置の側面図、
図23(a)は
図22(b)に続く発破準備工程におけるクラッシャおよび伸縮ベルトコンベアの移動完了後のトンネル内の運搬装置の側面図、
図23(b)は
図23(a)に続く発破準備工程における延伸ベルトコンベアの移動完了後のトンネル内の運搬装置の側面図である。なお、
図22(a)および
図23(a)の符号P1は移動前の二次ベルトコンベア3bの先端部の位置を示し、
図23(b)の符号P2は移動前の延伸ベルトコンベア40の先端部の位置を示している。
【0085】
ここでは、
図22(a)に示すように、伸縮ベルトコンベア3の二次ベルトコンベア3b上にズリZcが無くなった時点で、
図22(b)に示すように、次の発破に備えてクラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3の一次ベルトコンベア(第1のベルトコンベア)3aを切羽K2から離間する方向に移動(後退)させる。
【0086】
ここで、上記した特許文献2においては、発破工程の前の運搬装置の配置準備について充分な考慮がなされておらず、全体的なトンネルの掘削作業効率の向上が阻害されている、という課題がある。これに対して、本実施の形態においては、
図23(a)に示すように、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aの後退長Mbを、待避長Ls−作業空間長Lwとしている。これにより、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aは、
図21(a)で説明したクラッシャ2等の前進長Ma(待避長Ls-作業空間長Lw+掘削長Me)よりも掘削長Me分だけ短い位置まで後退することができるとともに、クラッシャ2の一次クラッシャ2aの先端部が切羽K2から待避長Lsだけ離れた位置まで後退することができる。すなわち、待避長Lsおよび作業空間長Lwに実際の掘削長Meを加味した状態でクラッシャ2および一次ベルトコンベア3aを後退させることにより、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aをより適切な位置(大きな過不足が生じない位置)まで後退させることができる。したがって、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aを効率的に移動させることができるので、運搬装置1の各装置の配置準備時間を短縮させることができ、トンネルの掘削作業効率を向上させることができる。
【0087】
また、本実施の形態においては、
図22(b)に示すように、上記したクラッシャ2および一次ベルトコンベア3aの後退動作と同時に、伸縮ベルトコンベア3の二次ベルトコンベア(第2のベルトコンベア)3bを切羽K2に接近する方向に移動させて、
図23(a)に示すように、二次ベルトコンベア3bを掘削長Meだけ前進させる。
【0088】
また、
図23(b)に示すように、延伸ベルトコンベア40上にズリZcが無くなった段階で、テールピース台車35を前進させるとともに、テールピース台車35の前進により延伸ベルトコンベア40の後端部のカセット40aから余長ベルトを繰り出して延伸ベルトコンベア40の先端部を掘削長Meだけ切羽K2に向かって延伸させる。
【0089】
なお、ここでは伸縮ベルトコンベア3の二次ベルトコンベア3bを前進させた後に、テールピース台車35の前進による延伸ベルトコンベア40の延伸動作を実施する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、延伸ベルトコンベア40上にズリZcが無くなった段階であれば、二次ベルトコンベア3bの前進と同時にテールピース台車35を前進させて延伸ベルトコンベア40の延伸動作を実施することもできる。
【0090】
ここで、上記した特許文献2においては、次の発破の準備に際して、クラッシャおよびベルコン台車を切羽から後退させてコンベアベルトをバックアップデッキのベルトストレージに戻しきった後でなければ、クラッシャおよびベルコン台車を前の発破による掘削分だけ前進させることができないし、その前進動作が終わらなければ、その後段の延伸式ベルトコンベアも延伸動作を開始することができない。すなわち、クラッシャおよびベルコン台車を延伸前の位置まで戻さなければならない上、そのベルコン台車およびバックアップデッキの動作によって延伸ベルトコンベアの延伸動作が規制される結果、トンネルの掘削作業効率の向上が阻害されている、という問題がある。
【0091】
これに対して本実施の形態においては、伸縮ベルトコンベア3が相互に独立して自走可能な一次ベルトコンベア3aと二次ベルトコンベア3bとに分かれているので、伸縮ベルトコンベア3を境として切羽側(運搬上流側)と抗口側(運搬下流側)とで独立して運搬装置1を動作させることができる。
【0092】
このため、例えば、上記したように、発破準備のためのクラッシャ2および一次ベルトコンベア3aの後退長Mbを、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aの前進長Maよりも短くすることができるので、その分、次の発破のための準備時間を短縮することができる。また、例えば、上記したように、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aを待避動作させるのと同時に、二次ベルトコンベア3bを前進させることができる。そして、延伸ベルトコンベア40のベルトコンベア上にズリZcが無ければ、伸縮ベルトコンベア3の一次ベルトコンベア3aの待避完了を待たずに、延伸ベルトコンベア40の延伸動作を開始することができる。これらの結果、発破毎の運搬装置の配置準備時間を短縮することができるので、トンネルTの掘削作業効率を向上させることができる。したがって、トンネルTの掘削工期を短縮することができ、工事費用を低減することができる。
【0093】
続いて、
図22(b)に示すように、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aを後退させるのと同時に、支保工作業用の自走式の吹付用重機等を切羽K2前に向かわせ、
図23(a)に示すように、クラッシャ2の一次クラッシャ2aの先端部を切羽K2から待避長Lsだけ待避させた状態で、トンネルTの掘削箇所の内壁面にコンクリート等からなる被覆材を吹付用重機等によって吹き付けた後、トンネルTの内壁面に対して交差する方向に金属製の複数のロックボルトを設置してトンネルTの掘削箇所の内壁面を補強する(支保工作業)。この支保工作業は、
図22(a)の作業空間長Lwが確保されている時点(クラッシャ2等の後退の前であって、切羽K2の周辺にズリZaが無くなった時点)で実施することもできるが、
図23(a)に示すように、トンネルTの切羽K2とクラッシャ2の一次クラッシャ2aとの間に、支保工作業を実施するのに充分な距離(待避長Ls)が確保された状態で作業を実施することにより、支保工の作業性を向上させることができる。
【0094】
続いて、
図24(a)は
図23(b)に続くトンネル掘削作業における発破工程時のトンネル内の運搬装置の側面図、
図24(b)は
図24(a)に続くズリ運搬作業の準備段階におけるトンネル内の運搬装置の側面図である。
【0095】
ここでは、上記と同様に、伸縮ベルトコンベア3を縮ませることでクラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3を切羽K2から離れた位置に待避させた状態で、トンネルTの切羽K2を発破により掘削する。
【0096】
続いて、上記と同様に、
図24(b)に示すように、トンネルT内の空気を換気した後、ズリ積載用の自走式の積載用重機30(
図12等参照)をトンネルTの切羽K3に移動させるとともに、運搬装置1のクラッシャ2および伸縮ベルトコンベア3の一次ベルトコンベア3aを前進長Maだけ切羽K2に向かって前進させる。
【0097】
ここで、上記したように、特許文献2においては、発破工程の後の運搬装置の配置準備について充分な考慮がなされておらず、全体的なトンネルの掘削作業効率の向上が阻害されている、という課題がある。これに対して、本実施の形態においては、上記したように、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aの前進長Maを、待避長Ls−作業空間長Lw+掘削長Meとしている。これにより、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aは、
図23(a)で説明したクラッシャ2等の後退長Mb(待避長Ls−作業空間長Lw)よりも掘削長Meだけ長い位置まで前進することができるとともに、クラッシャ2の一次クラッシャ2aの先端部が切羽K3から作業空間長Lwだけ離れた位置で停止することができる。すなわち、待避長Lsおよび作業空間長Lwに実際の掘削長Meを加味した状態でクラッシャ2および一次ベルトコンベア3aを前進させることにより、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aをより適切な位置(大きな過不足が生じない位置)まで前進させることができる。したがって、クラッシャ2および一次ベルトコンベア3aを効率的に移動させることができるので、運搬装置1の各装置の配置準備時間を短縮させることができ、トンネルの掘削作業効率を向上させることができる。
【0098】
以上のような発破工程、伸縮(運搬装置移動)工程、支保工工程およびズリ運搬工程の一連の工程を複数回繰り返すことにより地山にトンネルTを形成する。
【0099】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0100】
例えば、伸縮ベルトコンベアに代えて、トンネル内の地面にレールを敷設し、そのレールに沿ってコンベアを移動させる構成にしても良い。
【0101】
また、例えば、二次クラッシャと伸縮ベルトコンベアとの間に台車を介在させても良い。この台車は、二次クラッシャで砕いたズリを伸縮ベルトコンベアまで運ぶ自走式の中継運搬手段である。
【0102】
また、上記の説明においては、トンネル掘削方式として発破方式を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、機械掘削方式を用いる場合でも適用することができる。
【0103】
また、クラッシャは3次(台)以上のクラッシャを備えていても良い。この場合も3次(台)以上のクラッシャがそれぞれ独立して自走(移動)可能になっている。また、伸縮ベルトコンベアも3次(台)以上のベルトコンベアを備えていても良い。この場合も3次(台)以上のベルトコンベアがそれぞれ独立して自走(移動)可能になっている。