特許第6840468号(P6840468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840468
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/10 20060101AFI20210301BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20210301BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20210301BHJP
   F23R 3/32 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   F23R3/10
   F02C7/18 C
   F02C7/18 Z
   F23R3/28 D
   F23R3/32
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-65392(P2016-65392)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-180906(P2017-180906A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮本 健司
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 智志
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 圭司郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】赤松 真児
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−190196(JP,A)
【文献】 特開2014−181886(JP,A)
【文献】 特開2010−197039(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/128739(WO,A1)
【文献】 特開2007−147125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00−3/60
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器内筒内に複数配置され、燃料と燃焼用空気とが予め混合された予混合気に旋回流を付与するスワラ筒と、
前記複数のスワラ筒と前記燃焼器内筒との間で当該燃焼器内筒に対し隙間を有して配置され、前記隙間から当該燃焼器内筒に接続された燃焼器尾筒に向け噴射してフィルム状の空気を当該燃焼器尾筒内に生成する外側リングと
を備え、
前記外側リングは、前記外側リングの下流端に上流側から下流側に向けて厚さが漸減するように形成されたテーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記外側リングの内周面側に形成され、
前記外側リングの内周面側のテーパ面は、前記外側リングの外周面側に向けて突出する曲面形状をなしていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
燃焼器内筒内に複数配置され、燃料と燃焼用空気とが予め混合された予混合気に旋回流を付与するスワラ筒と、
前記複数のスワラ筒と前記燃焼器内筒との間で当該燃焼器内筒に対し隙間を有して配置され、前記隙間から当該燃焼器内筒に接続された燃焼器尾筒に向け噴射してフィルム状の空気を当該燃焼器尾筒内に生成する外側リングと
を備え、
前記外側リングは、前記外側リングの下流端に上流側から下流側に向けて厚さが漸減するように形成されたテーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記外側リングの外周面側に形成され、
前記外側リングの外周面側のテーパ面は、前記外側リングの内周面側に向けて突出する曲面形状をなしていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスタービン用の燃焼器においては、NOxの低減等を図ることを目的として、予混合燃焼方式を採用したものが多くなっている。このような、予混合燃焼方式を採用したガスタービン燃焼器では、予混合燃焼を行うメインバーナ(予混合バーナ)に加えて、拡散燃焼を行うパイロットバーナを備えている。これにより、メインバーナが予混合炎を生成するための種火としてパイロットバーナによって生成された拡散炎を使用することができるため、この拡散炎を用いてそのメインバーナによって生成された予混合気を燃焼させることにより、予混合燃焼を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−92286号公報
【特許文献2】特開2005−315457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メインバーナの出口付近においては、予混合気がその内周面に沿うように流れるため、境界層の発達により流速が低下した部分が生じてしまい、この流速が低下した部分に、予混合気による燃料高濃度領域が発生する場合がある。このように、メインバーナの出口付近に、低速で、且つ、燃料高濃度の領域が発生すると、このような領域に対して、その下流側に生成された火炎が燃え移るという、所謂、フラッシュバック(逆火)が発生するおそれがある。
【0005】
そのため、フラッシュバックの発生を抑制することができるガスタービン燃焼器が種々検討されている(特許文献1,2参照)。例えば、図4に示すように、ガスタービン燃焼器100では、パイロットコーン121の径方向外側に複数設けられ、予混合気Fpに旋回流を付与するスワラ筒131と、複数のスワラ筒131の径方向外側に配置され、燃焼器内筒111との間に隙間141を有して配置される外側リング115とを備え、取り込んだ圧縮空気を隙間141内から噴射してフィルム状の空気Afが燃焼器尾筒(または出口外側リング)112の内周面に沿って流れるようになっている。これにより、境界層内の低流速域である燃焼器尾筒112の内周面に沿って遡上する(壁面)フラッシュバックfbを防止している。
【0006】
しかしながら、上述のガスタービン燃焼器100では、図5に示すように、外側リング115の下流側端部115aが段差になっており、前記圧縮空気および予混合気Fpが外側リング115の外周面115cおよび内周面115bに沿って下流側へ流れていくと、圧縮空気の流れが外側リング115の外周面115cから剥離してよどみS1が生じる一方、予混合気Fpの流れが外側リング115の内周面115bから剥離してよどみが生じており、この箇所に低流速域が発生する。そのため、よどみが生じた領域が保炎部となり、フラッシュバックが発生してしまう可能性があった。
【0007】
以上のことから、本発明は、上述したような課題を解決するために為されたものであって、簡単な構成にて、外側リングの下流側端部でのフラッシュバックの発生を抑制することができるガスタービン燃焼器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する第1の発明に係るガスタービン燃焼器は、
燃焼器内筒内に複数配置され、燃料と燃焼用空気とが予め混合された予混合気に旋回流を付与するスワラ筒と、
前記複数のスワラ筒と前記燃焼器内筒との間で当該燃焼器内筒に対し隙間を有して配置され、前記隙間から当該燃焼器内筒に接続された燃焼器尾筒に向け噴射してフィルム状の空気を当該燃焼器尾筒内に生成する外側リングと
を備え、
前記外側リングは、前記外側リングの下流端に上流側から下流側に向けて厚さが漸減するように形成されたテーパ面を有する
ことを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決する第2の発明に係るガスタービン燃焼器は、前述した第1の発明に係るガスタービン燃焼器であって、
前記テーパ面は、前記外側リングの内周面側に形成される
ことを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第3の発明に係るガスタービン燃焼器は、前述した第1の発明に係るガスタービン燃焼器であって、
前記テーパ面は、前記外側リングの内周面側および外周面側の両方に形成される
ことを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する第4の発明に係るガスタービン燃焼器は、前述した第1の発明に係るガスタービン燃焼器であって、
前記テーパ面は、前記外側リングの外周面側に形成される
ことを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第5の発明に係るガスタービン燃焼器は、前述した第1から第4の何れか一つの発明に係るガスタービン燃焼器であって、
前記テーパ面は、前記外側リングの中心軸に沿って切断した断面にて曲線形状をなしている
ことを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決する第6の発明に係るガスタービン燃焼器は、前述した第1から第4の何れか一つの発明に係るガスタービン燃焼器であって、
前記テーパ面は、径方向に対して30度〜60度の角度を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外側リングが、前記外側リングの下流端に上流側から下流側に向けて厚さが漸減するように形成されたテーパ面を有することにより、予混合気または圧縮空気が外側リングの内周面または外周面に沿って下流側へ滑らかに流れ、外側リングの下流側端部での予混合気または圧縮空気の流れの剥離が無くなり、ガス流れの剥離に起因して生じるよどみ領域が小さくなる。これにより、簡易な構成にて、外側リングの下流側端部でのフラッシュバックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の実施形態に係るガスタービン燃焼器の内部構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の第二の実施形態に係るガスタービン燃焼器の内部構成を概略的に示す図である。
図3】本発明の第三の実施形態に係るガスタービン燃焼器の内部構成を概略的に示す図である。
図4】従来のガスタービン燃焼器の一例を示す概略図である。
図5図4における囲み線Vの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るガスタービン燃焼器の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態に係るガスタービン燃焼器について、図1を用いて説明する。なお、図1において、符号C1は、燃焼器内筒の中心軸を示している。
【0018】
図1に示すように、ガスタービン燃焼器1は、予混合燃焼方式を採用したものであって、燃料Fと燃焼用の圧縮空気Aとを混合させる燃焼器内筒11と、この燃焼器内筒11の下流側端部(後端部)に接続された、燃焼室としての燃焼器尾筒12とを備えている。さらに、燃焼器内筒11の上流側端部(前端部)には、パイロットバーナ13と複数のメインバーナ(予混合バーナ)14とが収納されている。
【0019】
パイロットバーナ13は、燃焼器内筒11と同軸上に配置されており、パイロットコーン21、パイロットノズル22、パイロットスワラ23から構成されている。パイロットコーン21内には、パイロットノズル22が、そのパイロットコーン21と同軸になるように挿入されている。パイロットコーン21の内周面とパイロットノズル22の外周面との間には、パイロットスワラ23が介在されている。
【0020】
メインバーナ14は、パイロットバーナ13の径方向外側において、燃焼器内筒11の周方向に等角度間隔で設けられており、スワラ筒31、メインノズル(予混合ノズル)33、メインスワラ34から構成されている。スワラ筒31内には、メインノズル33が、そのスワラ筒31と同軸となるように挿入されている。そして、スワラ筒31の内周面とメインノズル33の外周面との間には、メインスワラ34が介在されている。スワラ筒31は、基板35を介して、燃焼器内筒11の内周面に支持されている。
【0021】
上述したガスタービン燃焼器1は、複数のスワラ筒31と燃焼器内筒11との間で燃焼器内筒11に対し隙間41を有して燃焼器内筒11と同軸上に配置される外側リング15をさらに有する。外側リング15は、溶接等の固定具を介して、複数のメインバーナ14のそれぞれに設けられるスワラ筒31の外周面に支持されている。外側リング15は、その下流側にて、内周面(内径部)15b側に設けられ、上流側から下流側に向けて厚みが漸減する内周面側テーパ面15baを有する。すなわち、外側リング15は、外側リング15の下流端15dに内周面側テーパ面15baを有する。内周面側テーパ面15baの下流側は、外側リング15の下流側端部15aと接続している。これにより、外側リング15の内周面15bに沿って下流側に案内される予混合気Fpは、内周面側テーパ面15baにより下流側へ滑らかに高流速で流れることになる。
【0022】
次に、ガスタービン燃焼器1の運転時における各動作について説明する。
【0023】
ガスタービン燃焼器1の運転時においては、高温・高圧の圧縮空気Aが、燃焼器内筒11の上流側端部に流れ込んだ後、パイロットバーナ13内およびメインバーナ14内に供給されると共に、燃料Fがそれらのパイロットノズル22内およびメインノズル33内に供給される。
【0024】
ここで、パイロットバーナ13内では、先ず、供給された圧縮空気Aが、パイロットスワラ23によって旋回されることにより、パイロットノズル22から噴射された燃料Fと混合される。次いで、このように混合された燃料混合気に対して着火を行うことにより、パイロットコーン21の内部および下流側(燃焼器尾筒12の内部)において拡散燃焼が行われる。そして、その拡散燃焼によって発生した燃焼ガスは、燃焼器尾筒12の内部において、タービン側に供給される。
【0025】
一方、メインバーナ14内では、先ず、供給された圧縮空気Aが、メインスワラ34によって旋回されることにより、メインノズル33から噴射された燃料Fと混合され、予混合気Fpが生成される。次いで、旋回した予混合気Fpは、外側リング15とパイロットコーン21とで下流側へ案内され燃焼器尾筒12内に向けて供給される。このとき、外側リング15の内周面15bに沿って下流側に案内される予混合気Fpは、内周面側テーパ面15baにより下流側へ滑らかに流れることになる。その後、燃焼器尾筒12内に供給された予混合気Fpは、パイロットバーナ13により生成された拡散炎によって燃焼され、予混合燃焼が行われる。
【0026】
このとき、上述したような、ガスタービン燃焼器1の運転時においては、メインバーナ14の周囲にも、圧縮空気Aが供給されているため、常に、その圧縮空気Aは、燃焼器内筒11の内周面11aと外側リング15の外周面15cとの間の隙間(空気通路)41を介して燃焼器尾筒12内に取り込まれている。すなわち、圧縮空気Aが隙間41を通って燃焼器尾筒12内に噴射されることにより、フィルム状の空気(以下、フィルム空気という)Afとなり、このフィルム空気Afが、燃焼器尾筒12の内周面に沿ってその下流側へ向けて流れることになる。
【0027】
したがって、本実施形態に係るガスタービン燃焼器1によれば、複数のスワラ筒31と燃焼器内筒11との間で、燃焼器内筒11に対し隙間41を有して配置され、隙間41から燃焼器内筒11に接続された燃焼器尾筒12に向け噴射してフィルム空気Afを燃焼器尾筒12内に生成する外側リング15を備え、外側リング15が、当該外側リング15の下流端15dに上流側から下流側に向けて厚さが漸減するように内周面15b側に形成された内周面側テーパ面15baを有することにより、外側リング15の内周面15bに沿って下流側に案内される予混合気Fpが内周面側テーパ面15baにより上流側から下流側へ向けて滑らかに高流速で流れることになり、外側リング15の下流側端部15aでの予混合気Fpの流れの剥離が無くなり、ガス流れの剥離に起因して生じるよどみ領域が小さくなる。これにより、簡単な構成にて、外側リング15の下流側端部15aでのフラッシュバックの発生が抑制される。また、予混合気Fpがフィルム空気Afにより混合促進されるので、低NOx化が期待できる。よって、燃焼が安定し、燃焼効率の低下が抑制される。
【0028】
また、内周面側テーパ面15baは、径方向に対して30度〜60度の範囲の角度θ1を有することが好ましい。これは、外側リング15の内周面15bに沿って下流側に案内される予混合気Fpがより滑らかに下流側へ流れるからである。
【0029】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態に係るガスタービン燃焼器について、図2を用いて説明する。
なお、本実施形態は、外側リングのみを変更したもので、それ以外は、上述の第一の実施形態に係るガスタービン燃焼器と同じ部材を具備する。本実施形態では、上述の第一の実施形態に係るガスタービン燃焼器と同じ部材については同一符号を付記しその説明を適宜省略する。図2では、ガスタービン燃焼器の上半分の内部構造のみを示している。
【0030】
本実施形態に係るガスタービン燃焼器1Aは、図2に示すように、上述した第一の実施形態に係るガスタービン燃焼器1と同様、燃焼器内筒11内に収容されるパイロットバーナ13およびメインバーナ14と、燃焼器内筒11に接続された燃焼器尾筒12とを備えると共に、メインバーナ14の複数のスワラ筒31と燃焼器内筒11との間で燃焼器内筒11の内周面11aに対し隙間41を有して燃焼器内筒11と同軸上に配置される外側リング15Aを備える。なお、外側リング15Aは、外側リング15と同様、溶接等の固定具を介して、複数のメインバーナ14のそれぞれに設けられるスワラ筒31の外周面に支持されている。
【0031】
外側リング15Aは、その下流側にて、上流側から下流側に向けて厚さが漸減するように形成された内周面側テーパ面15Abaおよび外周面側テーパ面15Acaを有する。すなわち、外側リング15Aは、外側リング15Aの下流端15Adに内周面側テーパ面15Abaおよび外周面側テーパ面15Acaを有する。内周面側テーパ面15Abaは、外側リング15Aの内周面(内径部)15Ab側に形成される。外周面側テーパ面15Acaは、外側リング15Aの外周面(外径部)15Ac側に形成される。内周面側テーパ面15Abaは、外周面15Ac側に向けて突出する曲面形状をなしている。外周面側テーパ面15Acaは、内周面15Ab側に向けて突出する曲面形状をなしている。すなわち、内周面側テーパ面15Abaおよび外周面側テーパ面15Acaは、外側リング15Aの中心軸に沿って切断した断面にて曲線形状をなしている。また、内周面側テーパ面15Abaおよび外周面側テーパ面15Acaの下流側は、外側リング15Aの下流側端部15Aaと接続している。これにより、外側リング15Aの内周面15Abに沿って下流側に案内される予混合気Fpは、内周面側テーパ面15Abaにより下流側へ滑らかに高流速で流れることになる。外側リング15Aの外周面15Acに沿って下流側に案内される圧縮空気Aは、外周面側テーパ面15Acaにより下流側へ滑らかに高流速で流れることになる。
【0032】
したがって、本実施形態に係るガスタービン燃焼器1Aによれば、複数のスワラ筒31と燃焼器内筒11との間で、燃焼器内筒11に対し隙間41を有して配置され、隙間41から燃焼器内筒11に接続された燃焼器尾筒12に向けて噴射してフィルム空気Afを燃焼器尾筒12内に生成する外側リング15Aを備え、外側リング15Aが、当該外側リング15Aの下流端15Adに上流側から下流側に向けて厚さが漸減するように内周面15Ab側および外周面15Ac側のそれぞれに形成された内周面側テーパ面15Abaおよび外周面側テーパ面15Acaを有することにより、外側リング15Aの内周面15Abに沿って下流側に案内される予混合気Fpが内周面側テーパ面15Abaにより上流側から下流側へ向けて滑らかに高流速で流れることになる一方、外側リング15Aの外周面15Acに沿って下流側に案内される圧縮空気Aが外周面側テーパ面15Acaにより上流側から下流側へ向けて滑らかに高流速で流れることになる。これにより、外側リング15Aの下流側端部15Aaでの予混合気Fpの流れの剥離と圧縮空気Aの流れの剥離が無くなり、ガス流れの剥離に起因して生じるよどみ領域が小さくなる。その結果、簡単な構成にて、外側リング15Aの下流側端部15Aaでのフラッシュバックの発生が抑制される。予混合気Fpがフィルム空気Afにより混合促進されるので、低NOx化が期待できる。さらに、予混合気Fpの外向きの流れがないため、燃焼器尾筒12の内壁に予混合器Fpが流れにくく、壁面境界層にて発生するフラッシュバックの抑制も期待できる。よって、燃焼が安定し、燃焼効率の低下が抑制される。
【0033】
また、内周面側テーパ面15Abaおよび外周面側テーパ面15Acaが外側リング15Aの中心軸に沿って切断した断面にて曲線形状をなしていることから、これら箇所が外側リング15Aの中心軸に沿って切断した断面にて直線である場合と比べて、予混合気Fpおよび圧縮空気Aがより滑らかに流れることになる。これにより、ガス流れの剥離に起因して外側リング15Aの下流側端部15Aaに生じるよどみ領域が、テーパ面が外側リング15Aの中心軸に沿って切断した断面にて直線である場合と比べてより小さくなる。その結果、簡単な構成にて、外側リング15Aの下流側端部15Aaでのフラッシュバックの発生がより抑制される。よって、燃焼がより安定し、燃焼効率の低下がより抑制される。
【0034】
[第三の実施形態]
本発明の第三の実施形態に係るガスタービン燃焼器について、図3を用いて説明する。
なお、本実施形態は、外側リングのみを変更したもので、それ以外は、上述の第一の実施形態に係るガスタービン燃焼器と同じ部材を具備する。本実施形態では、上述の第一の実施形態に係るガスタービン燃焼器と同じ部材については同一符号を付記しその説明を適宜省略する。図3では、ガスタービン燃焼器の上半分の内部構造のみを示している。
【0035】
本実施形態に係るガスタービン燃焼器1Bは、図3に示すように、上述した第一の実施形態に係るガスタービン燃焼器1と同様、燃焼器内筒11内に収容されるパイロットバーナ13およびメインバーナ14と、燃焼器内筒11に接続された燃焼器尾筒12とを備えると共に、メインバーナ14の複数のスワラ筒31と燃焼器内筒11との間で燃焼器内筒11の内周面11aに対し隙間41を有して燃焼器内筒11と同軸上に配置される外側リング15Bを備える。なお、外側リング15Bは、外側リング15と同様、溶接等の固定具を介して、複数のメインバーナ14のそれぞれに設けられるスワラ筒31の外周面に支持されている。
【0036】
外側リング15Bは、その下流側にて、上流側から下流側に向けて厚さが漸減するように形成された外周面側テーパ面15Bcaを有する。すなわち、外側リング15Bは、外側リング15Bの下流端15Bdに外周側テーパ面15Bcaを有する。外周面側テーパ面15Bcaは、外側リング15Bの外周面(外径部)15Bc側に形成される。また、外周面側テーパ面15Bcaの下流側は、外側リング15Bの下流側端部15Baと接続している。これにより、外側リング15Bの外周面15Bcに沿って下流側に案内される圧縮空気Aは、外周面側テーパ面15Bcaにより下流側へ滑らかに高流速で流れることになる。なお、外側リング15Bの内周面15Bbに沿って下流側に案内される予混合気Fpは、そのまま燃焼器尾筒12内に供給されることになる。
【0037】
したがって、本実施形態に係るガスタービン燃焼器1Bによれば、複数のスワラ筒31と燃焼器内筒11との間で、燃焼器内筒11に対し隙間41を有して配置され、隙間41から燃焼器内筒11に接続された燃焼器尾筒12に向けて噴射してフィルム空気Afを燃焼器尾筒12内に生成する外側リング15Bを備え、外側リング15Bが、当該外側リング15Bの下流端15Bdに上流側から下流側に向けて厚さが漸減するように外周面15Bc側に形成された外周面側テーパ面15Bcaを有することにより、外側リング15Bの外周面15Bcに沿って下流側に案内される圧縮空気Aが外周面側テーパ面15Bcaにより上流側から下流側へ向けて滑らかに高流速で流れることになる。これにより、外側リング15Bの下流側端部15Baでの圧縮空気Aの流れの剥離が無くなり、ガス流れの剥離に起因して生じるよどみ領域が小さくなる。その結果、簡単な構成にて、外側リング15Bの下流側端部15Baでのフラッシュバックの発生が抑制される。予混合気Fpの外向きの流れがなく、燃焼器尾筒12の内壁には燃料の混合が少ないフィルム空気Afが流れているため、壁面境界層にて発生するフラッシュバックの抑制も期待できる。よって、燃焼が安定し、燃焼効率の低下が抑制される。
【0038】
また、外周面側テーパ面15Bcaは、径方向に対して30度〜60度の範囲の角度θ3を有することが好ましい。これは、外側リング15Bの外周面15Bcに沿って下流側に案内される圧縮空気Aがより滑らかに下流側へ流れるからである。
【0039】
[他の実施形態]
上述のガスタービン燃焼器1Aを上述の第一,第三の実施形態に係るガスタービン燃焼器1,1Bに適用して内周面側テーパ面または外周面側テーパ面またはこれら両方を曲面形状としたガスタービン燃焼器とすることも可能である。このようなガスタービン燃焼器であっても、上述のガスタービン燃焼器1Aと同様な作用効果を奏する。
【0040】
上述のガスタービン燃焼器1,1Bを組み合せて、内周面側テーパ面および外周面側テーパ面が内周面および外周面のそれぞれ形成された外側リングを備えるガスタービン燃焼器とすることも可能である。このようなガスタービン燃焼器であっても、上述のガスタービン燃焼器1,1Bと同様な作用効果を奏する。
【0041】
上述のガスタービン燃焼器1,1A,1Bを、パイロットコーンの下流側端部よりもガスの流通方向下流側へ下流側端部が延在した形状なす外側リングを備えるガスタービン燃焼器に適用することも可能である。このようなガスタービン燃焼器であっても、上述のガスタービン燃焼器1,1A,1Bと同様な作用効果を奏する。
【0042】
上述のガスタービン燃焼器1,1A,1Bを、複数のメインバーナ14のスワラ筒31のそれぞれに延長管が設けられたガスタービン燃焼器や外側リングと燃焼器内筒(燃焼器尾筒)との間に出口外側リングが配置されたガスタービン燃焼器に適用することも可能である。このようなガスタービン燃焼器であっても、上述のガスタービン燃焼器1,1A,1Bと同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るガスタービン燃焼器は、簡単な構成にて、外側リングの下流側端部でのフラッシュバックの発生を抑制することができるので、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1,1A,1B ガスタービン燃焼器
11 燃焼器内筒
12 燃焼器尾筒
13 パイロットバーナ
14 メインバーナ
15,15A,15B 外側リング
15a,15Aa,15Ba 下流側端部
15b,15Ab,15Bb 内周面
15ba,15Aba 内周面側テーパ面
15c,15Ac,15Bc 外周面
15Aca,15Bca 外周面側テーパ面
15d,15Ad,15Bd 下流端
21 パイロットコーン
22 パイロットノズル
23 パイロットスワラ
31 スワラ筒
33 メインノズル
34 メインスワラ
35 基板
41 隙間(空気流通路)
A 圧縮空気
Af フィルム空気
C1 燃焼器内筒の中心軸
C2 燃焼器内筒の中心軸
F 燃料
Fp 予混合気
θ1 内周面側テーパ面の角度
θ3 外周面側テーパ面の角度
図1
図2
図3
図4
図5