【実施例】
【0125】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0126】
基本手順
以下の全調製は、標準的なシュレンク技術を使用し、保護ガス下で行われた。使用前に溶媒を好適な脱水剤で乾燥させた(Purification of Laboratory Chemicals, W.L.F.Armarego(著者),Christina Chai(著者),Butterworth Heinemann(エルゼビア),第6編,オックスフォード 2009)。
使用前に(アルドリッチ社製)三塩化リンをアルゴン下で蒸留した。全ての予備工程をbaked−out vesselsで行った。NMRスペクトル法を用いて製品の特徴を示した。ppmで化学シフト(δ)を報告する。
31P NMRシグナル を以下:SR
31P=SR
1H×(BF
31P/BF
1H)=SR
1H×0.4048(Robin K. Harris, Edwin D. Becker, Sonia M. Cabral de Menezez, Robin Goodfellow, and Pierre Granger, Pure Appl. Chem., 2001, 73, 1795〜1818;Robin K. Harris, Edwin D. Becker, Sonia M. Cabral de Menezez, Pierre Granger, Roy E. Hoffman and Kurt W. Zilm, Pure Appl. Chem., 2008, 80, 59〜84)のように参照した。
Bruker Avance 300又はBruker Avance 400を用いて核磁気共鳴スペクトルの記録を、Agilent GC 7890Aを用いてガスクロマトグラフィー分析を、Leco TruSpec CHNSを用いて元素分析を、かつThermo Electron Finnigan MAT 95−XPとAgilent 6890 N/5973器具を用いてESI−TOF質量分析法を行った。
【0127】
前駆体Eの調製
クロロ−2−ピリジル−tert−ブチルホスフィンの調製
イソプロピルマグネシウムクロライドを用いて、ノッシェル法により、クロロ−2−ピリジル−t−ブチルホスフィンの合成のためのグリニャールを調製する(Angew. Chem. 2004, 43,2222〜2226)。Budzelaar法に従い、ワークアップを行う(Organometallics 1990, 9, 1222〜1227)。
【化7】
【0128】
アルゴン下で、マグネチックスターラーとセプタムを用いて、1.3Mイソプロピルマグネシウムクロライド溶液8.07ml(ノッシェル試剤)を50ml丸底フラスコに導入し、−15℃まで冷却する。その後、2−ブロモピリジン953.5μl(10mmol)を素早く滴下する。該溶液はすぐに黄色に変わる。−10℃まで温めてよい。反応の転化率は以下の通り測定される。
:溶液100μlをとり、飽和アンモニウムクロライド溶液1mlへ導入する。溶液が泡立つ場合、グリニャールがまだ十分に形成されていない。水溶液をエーテル用のピペットを用いて抽出し、有機相をNa
2SO
4で乾燥させる。エーテル溶液のGCを記録した。2−ブロモピリジンと比較し、大量のピリジンが形成された場合、転化率は高い。−10℃では転化率は低い。該反応溶液を常温まで温め、1〜2時間攪拌すると、該反応溶液は黄褐色になる。GC試験は、完全な転化を示す。シリンジポンプを用いて、事前に−15℃まで冷却しておいたTHF10ml中で、グリニャール溶液を、ジシクロ−tert−ブチルホスフィン溶液1.748g(11mmol)にゆっくりと滴下してよい。ジシクロ−tert−ブチルホスフィン溶液を冷却する点が重要である。常温では、相当量のジシクロ−tert−ブチルホスフィンが得られる。最初に透明で黄色い溶液が形成され、その後、濁った溶液になる。該混合物を常温まで温め、一晩攪拌する。高真空下で該溶媒を除去し、所々褐色の白色固体を得る。ヘプタン20mlを用いて、該固体を懸濁させ、超音波洗浄機で粉砕する。白色固体を沈殿させた後、該溶液をデカントする。毎回10〜20mlのヘプタンを用いて、この操作を2回繰り返す。高真空下でヘプタン溶液を濃縮した後、減圧下で蒸発させる。該製品を、4.6ミリバール、オイルバス120℃及び蒸発温度98℃で蒸発し得る。無色油1.08gが得られる(50%)。
【0129】
分析データ
1H NMR(300MHz,C
6D
6):δ8.36(m,1H,Py),7.67(m,1H,Py),7.03−6.93(m,1H,Py),6.55−6.46(m,1H,Py),1.07(d,J=13.3Hz,9H,t−Bu)
13C NMR(75MHz,C
6D
6):δ162.9,162.6,148.8,135.5,125.8,125.7,122.8,35.3,34.8,25.9及び25.8。
31P NMR(121MHz,C
6D
6)δ97.9。
MS(EI)m:z(相対強度)201(M
+,2),147(32),145(100),109(17),78(8),57.1(17)。
【0130】
化合物8の調製
1,1’−ビス(tert−ブチル−2−ピリジルホスフィノ)フェロセンの調製
【化8】
【0131】
バリアントA
マグネチックスターラーとセプタムを用いて、昇華させたフェロセン474.4mg(2.55mmol)を50ml容量の丸底フラスコに計り入れ、該フラスコをパージした。ヘプタン15mlを添加した後、フェロセンを完全に溶解させた。その後、テトラメチルエチレンジアミン841μl(1.1=5.61mmol)全てを速やかに添加し、ブチルリチウム2.04ml(ヘキサン中、2.5M、2.0=5.1mmol)を滴下する。2〜3時間後、オレンジ色の固体が沈殿する。該混合物を一晩攪拌し、ヘプタン溶液をデカントし、ヘプタンを用いてオレンジ色の固体を2回洗浄する。その後、別のヘプタン10mlを添加し、該懸濁液を−70℃まで冷却する。ヘプタン7ml中で、クロロ−2−ピリジル−tert−ブチルホスフィン1.08g(2.1=5.36mmol)を溶解させる。該溶液が濁るため、セライトに透過して濾過する必要がある。少量の不溶解性白色固体が形成された。この溶液をジリチオフェロセン溶液に滴下する。常温で温める間に、オレンジ色の懸濁液の色が明るくなる。完全に反応させるため、反応溶液を還流下で約1時間加熱する。透明でオレンジ色の固体と白色の沈殿物が形成された。
アルゴン飽和水7mlを該懸濁液に添加する。該白色沈殿物を溶解させる。水溶液相を除去した後、該操作を2回繰り返す。これにより、ヘプタン相が濁る。高真空下で有機溶媒を完全に除去すると、オレンジ色の油性残留物が残る。これをエーテル10mlに溶解し、Na
2SO
4で乾燥させる(粗収量913mg)。−28℃では、一晩中エーテルの沈殿物も結晶も形成されない。ジエチルエーテルとヘプタンの混合物も−28℃では結晶化しない。溶液の
31P NMRは、製品ピーク、すなわち7.39ppm、40.4ppmのシグナルを再び示す。該製品は、カラムクロマトグラフィーによって精製することができる。エーテル溶液を、アルゴン下でジエチルエーテルを用いて溶離される短カラムに適用する。オレンジ色の該製品フロントを全面に流すと、容易に採取し得る。エーテルを除去した後、約95%の精製度において、オレンジ色の粘性油241mg(16%)が得られる。
【0132】
バリアントB
バッチサイズ:(昇華させた)フェロセン650.17mg(3.495mmol)、2.5Mブチルリチウム(n−ブチルリチウム)2.8ml(2=6.99mmol)、テトラメチルエチレンジアミン1.1ml(2.1=7.3mmol)、クロロ−2−ピリジル−tert−ブチルホスフィン1.48g(2.1=7.34mmol)。
【0133】
ヘプタン15ml中で、フェロセンのジリチウム塩を再度調製する。クロロホスフィンはTHF中でより溶解しやすいので、シクロ−2−ピリジル−tert−ブチルホスフィンはヘプタン10mlよりもTHF10ml中で溶解する。ワークアップを同様に最適化した。
:還流下で沸騰させた後、該反応混合物をH
2O1mlでクエンチし、高真空下で溶媒(ヘプタン及びTHF)を完全に除去する。暗い黄色/オレンジ色の繊維質固体をH
2O8ml及びジメチルエーテル15ml中に溶解させ、1分間攪拌する。分離段階の後、シリンジによって水溶液相を除去し、H
2Oで該有機相を3回洗浄する。該有機相をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過する。溶液がほとんど無色になるまで、毎回ジエチルエーテル10mlを用いて、該製品をNa
2SO
4から3回洗い出す。暗いオレンジ色の溶液を10mlに濃縮し、アルゴン下でシリカゲル60を含有するカラムを通して送る。使用される溶離剤は、再びジエチルエーテルである。濾過液は、非常に明るいオレンジ色である。固体を除去した後、繊維質でオレンジ色の固体1.16gが得られる(64%)。
【0134】
化合物10(比較化合物)の調製
1,1’−(フェロセネジル)フェニルホスフィンから生じ、歪んだホスフィン環はPhLiによって開かれ、中間生成物はクロロホスフィンによってクエンチされる。
【化9】
【0135】
【化10】
【0136】
初めに、マグネチックの攪拌子と窒素連結を備えた50ml容量の丸底フラスコに、フェニルリチウム(PhLi)1.13mmol(565μl)を充填し、ヘプタン20ml中の環状ホスフィン溶液1.03mmol(300mg)をシリンジポンプによってゆっくり滴下する。リチウム塩をヘプタンで2回洗浄し、ヘプタン6mlと混合する。ヘプタン7ml中の、0.8当量のClPiPr
2ヘプタン溶液(0.824mmol、131μl)を常温で該懸濁液に滴下する。赤褐色の懸濁液はわずかに色味が変化する。懸濁液を20分攪拌した後、還流下で1.5時間加熱する。該固形物質は、やや明るい色味に変化する。溶媒を完全に除去し、赤褐色の残留物をH
2O及びエーテルに溶解させる。有機相をH
2Oで2回洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させる。エーテル相のA
31Pスペクトルを記録させる。該スペクトルは二重項を示す。クロロホスフィンは、完全に消化されていた。エーテル相を乾燥させ、65℃のウォーターバスで、MeOHに溶解する黄褐色油300mg(収率:61%)を得る。該溶液を一晩フリーザー(−78℃)に充填する。黄褐色油76mgが沈殿し、それをNMRスペクトル法によって分析する。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ7.46−7.23(m,10H,Ph),4.36(m,2H,Cp),4.21(m,2H,Cp),34.24(m,4H,Cp),1.88(m,2H,iPr),1.15−0.96(m,12H,iPr)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ139.9(J=9.8Hz,Ph),133.4(J=19.2Hz,Ph),128.4,128.1,128.0(Ph),77.1,76.8,76.2,76.1(Cp),73.5(J=14.5Hz,Cp),72.8(J=2.9Hz,Cp),71.9(J=10.5Hz,Cp),72.1(Cp),23.3(J=11.0Hz,iPr),20.1,20.0,19.9,19.8(iPr)。
31P NMR(121MHz,C
6D
6)δ=0.88及び−16.62
【0137】
化合物14の調製
ビス(2−ピリジル−n−ブチルホスフィノ)フェロセンの調製
【化11】
【0138】
マグネチックスターラーとタップを備えた25ml容量の丸底フラスコ内で、1.6MのBuLi1.45ml(2.33mmol)を−78℃まで冷却する(ドライアイス/EtOH)。これを、エーテル2ml中に溶解した2−ブロモピリジン208μl(2.18mmol)に滴下する。反応溶液は黄色に変わり、その後オレンジ色に変化するが、透明のままである。サンプル(100μl)を15分間攪拌した後、取り出してNH
4Cl/H
2Oでクエンチする。GCによると、ピリジンだけでなく、多数の他の化合物も形成される。その後、この温度で、エーテル2ml中に溶解した1,1’−ビス(ジクロロホスフォン)フェロセンを滴下し、反応混合物を一晩温める。ペールオレンジ色の懸濁液が形成され、それをフリット(G4)で濾過する。透明なオレンジ色のエーテル溶液が得られる。減圧下で溶媒を除去した後、オレンジ色の固形物質173mgが得られ、これをアルゴン下でクロマトグラフする。まず、純ジエチルエーテルを用いて、この混合物をカラムにかけ(カラムパラメータ:直径4cm、シリカゲル60)、繊維質の黄色の固形物質を得る。該固形物質を、ヘプタン:ジエチルエーテル=2:1で再度カラムし、ビス(2−ピリジル−n−ブチルホスフィノ)フェロセン(18%)31mgを得る。
1H NMR(300MHz,C
6D
6):δ8.54(d,J=4.6Hz,2H,py),7.43−7.32(m,2H,py),6.94−6.88(m,2H,py),6.58−6.49(m,2H,py),4.47(m,1H,フェロセニル),4.37(m,1H,フェロセニル),4.33(m,1H,フェロセニル),4.23−4.14(m,5H,フェロセニル),2.56−2.44(m,2H,CH
2),2.23(m,2H,CH
2),1.80−1.65(m,4H,CH
2),1.57−1.39(m,4H,CH
2),0.93−0.85(m,6H,CH
3)。
13C NMR(75MHz,C
6D
6):δ166.5,166.2,166.1,150.1,134.8及び122.1(py),78.7,78.6,78.5,74.9,74.7,74.3,74.1,72.8,72.6,72.1 及び71.7(フェロセニル),29.7,29.6,29.5,29.4,28.2,28.1,27.9,27.8,24.8,24.7,24.6及び14.1(CH
2),14.1(CH
3)。
31P NMR(121MHz,C
6D
6)δ−24.7及び−24.9。
C
28H
34FeN
2P
2(M+H)
+517.161197に関するHRMS(ESI)m/z
+;実測値:517.16238。
【0139】
化合物15の調製
ビス(2−ピリジル−n−ブチルホスフィノ)フェロセンの調製
【化12】
【0140】
マグネチックスターラーを備えた25ml容量の丸底フラスコ内で、1.3Mのイソプロピルマグネシウムクロライド溶液(ノッシェル試剤)5.3ml(1.1当量)を−20℃まで冷却し、2−ブロモピリジン603μl(6.32mmol)に一斉に添加する。該混合物を完全に転化させるため、−20℃で1時間、その後常温で2時間攪拌する。50m容量の第2丸底フラスコ内で、1,1’−ビス(ジクロロホスフィノ)フェロセン490.7mg(1.26mmol)をグローブボックスで量り、エアロックを通して取り出した後、THF10ml中に溶解させる。−20℃まで冷却した後、事前に調製したグリニャール化合物をシリンジポンプによってオレンジがかった黄色の溶液へ滴下する。滴下後、該溶液を0℃まで温めると、茶色/黒色の溶液が形成された。反応を完全にするため、該混合物を還流下で20分間加熱する。翌日、水0.5mlを黒色の反応溶液に添加すると該溶液の色味が明るくなり、暗赤色/茶色の懸濁液となる。高真空下で溶媒を除去し、残留物をエーテル15ml及びH
2O10ml中に入れる。懸濁液をセライトで濾過し、オレンジ色の有機相と緑色の水相を得る。有機相をNa
2SO
4で乾燥させ、エーテルを除去すると、緑色/黒色の固形物質410mgが得られる。純ジエチルエーテルを用いて、黒色に近い暗緑色の固形物質をカラムにかける。エーテルを除去した後、黄色の製品15が112mg得られる。
1H NMR(300MHz,C
6D
6):δ8.56(m,1H,py),8.48−8.38(m,2H,py),7.58(m,1H,py),7.39−7.27(m,2H,py),7.00−6.84(m,3H,py),6.65−6.56(m,1H,py),6.55−6.44(m,2H,py),4.50−4.39(m,3H,フェロセニル),4.26−4.18(m,2H,フェロセニル),4.18−4.12(m,1H,フェロセニル),4.12−4.04(m,2H,フェロセニル),2.69(oct,J=7.0Hz,1Hipr),1.14−0.94(m,6H,ipr)。
13C NMR(75MHz,C
6D
6):δ165.4,163.7,150.2,150.0,149.9,134.9,134.8,134.7,131.1,130.6,129.1,128.8,128.6,122.7,122.2,及び122.0(py),77.5,77.3,76.9,76.5,75.4,75.2,74.8,74.6,74.4,72.8,72.7,72.5,72.0及び71.9(フェロセニル),32.2,28.3,28.2,23.0,20.6,20.3,19.7,19.5及び14.3(ipr)。
31P NMR(121MHz,C
6D
6)δ−6.2及び−12.9。
C
28H
27FeN
3P
2(M+H)
+524.11027に関するHRMS(ESI)m/z
+;実測値:524.11022。
【0141】
化合物19(比較化合物)の調製
【化13】
【0142】
温度計、マグネチックスターラー及び還流冷却器を備えた100ml容量の三つ口フラスコ内で、フェロセン0.93を純ヘプタン50mlに溶解させる。シリンジによって、TMEDA1.3g(1.6ml)及び1.6Mのn−BuLi/ヘキサン7.5mlを常温で添加する。該溶液を5時間放置する。脱リチウムされたフェロセンのオレンジ色/茶色の結晶が沈殿する。シリンジによって上澄み液を除去する。そして、純ヘプタン20mlを添加する。その後、ヘプタン10ml中に溶解したクロロホスフィンを滴下する。該混合物を還流下で1時間加熱する。冷却後、該混合物を毎回脱気水10mlで3回洗浄する。該混合物を濃縮して乾燥させ、ジエチルエーテル10mlを添加する。溶媒としてのジエチルエーテルを用いて、アルゴン下で、該溶液を10cmのシリカゲル60で濾過し、濃縮して乾燥させ、目的の製品について約50%の収率を得るためわずかに温かいメタノールから結晶化した。
【0143】
分析
31P(121MHz,CDCl
3),−7.8s,−8.15s,
13C(75MHz,CDCl
3);137.77,(d,J=12Hz),137.4(d,J=11.3Hz),134.2(d,J=20.3Hz),129.1 s,128.1(d,J=7.5Hz),77.4(d,J=11.3Hz),75.0(d,J=26.2Hz),74.0(d,J=22.3Hz),72.1 bs,71.9−71.5 m,71.1s,69.0s,27.6(d,J= 10Hz),27.55 8d,J=10Hz),20.3−19.9m
1H(300MHz,CDCl
3):7.52−7.44(m,4H),7.33−7.23(m,6H),4.23(sept,J=1.2Hz,1H),4.1−4.0(m,4H),3.93−3.9(m,1H),3.87−3.84(m,1H),3.58−3.54(m,1H),
2.1−1.9(m,2H),0.99(d,J=7Hz,3H),0.94(d,J=7Hz,3H),0.83−0.7(m,6H)
【0144】
パラジウム錯体の調製
実施例52:錯体K4の調製
[Pd(Cp
2Fe)1,1’−(P(2−ピリジル)(t−ブチル))
2]η
2−N−メチルマレイミド]K4の調製
【化14】
【0145】
パラジウム前駆体(スキーム9を参照)172.9mg(0.816mmol)と昇華させたN−メチルマレイミド(実施例51を参照)90.64mg(0.816mmolを、グローブボックス内で、50ml容量のシュレンク環にそれぞれ量り分ける。粘性のオレンジ色のフェロセンリガンド(8)446.6mg(0.866mmol)をヘプタン15mlに溶解させ、N−メチルメレイミドに添加する。全て溶解するまで、ウォーターバスで該溶液を60℃まで加熱する。透明なオレンジ色の溶液を得るため、該溶液をセライトで濾過する。同様に、パラジウム前駆体をヘプタン10mlに溶解させ、セライトで濾過する。透明のオレンジ色のリガンド/N−メチルマレイミド溶液を、常温で紅色のパラジウム前駆体に滴下する。暗赤色の溶液は色味が明るくなり、淡黄色の固形物質が沈殿する。該混合物を一晩攪拌し、該固形物質が沈殿した後、上澄み液をデカントする。ヘプタンで2回洗浄した後、高真空下で該固形物質を乾燥させて、541mg(86%)の製品を得る。
C
33H
39FeN
3O
2P
2Pd;C:54.01、H:5.36、N:5.73、P:8.44に関する元素分析:実測値;C:53.44、H:5.48、N:5.72、P:8.48。
【0146】
高圧実験
供給原料:
メタノール(MeOH)
エテン(エチレンとしても表される)
【0147】
クラック−C4は、エチレンを製造するための、所謂水蒸気分解工程からの副生成物流に関係し、かつ様々な分岐鎖状及び直鎖状の炭化水素混合物の95%超から成り、その際該炭化水素は、4個の炭素原子を有し、かつ飽和、一価不飽和又は多価不飽和であってよい。クラック−C4流の主な成分は、n−ブタン、イソブタン、イソブテン、n−ブテン、ブタジエンである。
【0148】
ラフィネート1は、ブタジエンの除去(一般的には抽出除去)後のクラック−C4から得られる。ラフィネート1は、およそイソブタン42%、1−ブテン26%、cis−及びtrans−2−ブテン17%、及び1,3−ブタジエン0.3%、n−ブタン及びイソブタン15%から成る。正確な組成物は、原料ソースや季節的要因によって様々である。従って、報告される値は代表的なものにすぎず、非限定例である。
【0149】
ラフィネートIIは、ラフィネート1からのイソブテンを除去した後、ナフタ分解にて生じ、本質的に異性体n−ブテン、イソブタン及びn−ブタンから成るC
4フラクションの一部である。
【0150】
ラフィネートIIIは、ナフタ分解にて生じ、本質的に異性体n−ブテン及びn−ブタンから成るC
4フラクションの一部である。
【0151】
2−ブテン99+%、cis及びtransの混合物、Sigma Aldrich社、カタログ番号36,335−9、LOT番号14205MS。
【0152】
使用されるイソブテンは、最小99.9%の純度を有する(m/m)。該製品は、エボニックインダストリーズアーゲーパフォーマンスマテリアルズ社製である。
【0153】
ジ−n−ブテンは以下のようにも表される。ジブテン:DNB又はDnB。
ジ−n−ブテンは、1−ブテン、cis−2−ブテン及びtrans−2−ブテンの混合物の二量化から生じる、C8オレフィンの異性体混合物である。産業上、ラフィネートII又はラフィネートIII流は、一般的に触媒的オリゴマー化の対象であり、その際存在しているブタン類(n/iso)は変化せずに出てきて、存在するオレフィン類は全部又は一部が転化される。二量体ジ−n−ブテンと同様に、高オリゴマー(トリブテンC12、テトラブテンC16)が形成され、それは反応後に蒸留によって除去される必要がある。
【0154】
C4オレフィンのオリゴマー化に産業上頻用されている工程は、“OCTOL工程”と呼ばれる。
特許文献、例えば、DE102008007081A1には、OCTOL工程に基づくオリゴマー化が記載されている。EP1029839A1は、OCTOL工程で形成されるC8オレフィンの分画に関係する。
工業的なジ−n−ブテンは、通常、5%〜30%のn−オクテン、45%〜75%の3−メチルヘプタン、及び10%〜35%の3,4−ジメチルヘキサンから成る。好適流は、10%〜20%のn−オクテン、55%〜65%の3−メチルヘプタン、及び15%〜25%の3,4−ジメチルヘキサンから成る。
【0155】
p−トルエンスルホン酸を以下のように略した:pTSA、PTSA又はp−TSA。
【0156】
高圧実験を実施するための一般的方法
バッチ法モードでの反応のための一般的な実験の説明
適切な量の基質、パラジウム塩、酸及びアルコールを、50mlのシュレンク管内で、アルゴン下で、マグネチックスターラーで攪拌しながら混合する。
Parr社製の100容量スチールオートクレーブは、吸ガス弁及び排ガス弁、デジタル圧力変換器、温度センサ、ボール弁、及びサンプリング用に取り付けられたキャピラリーであり、3回の真空及びアルゴンパージングによって酸素を放出させるキャピラリーを備える。次に、シュレンク管からの反応溶液を、キャピラリーを用いて、アルゴン対向流下でボール弁を通してオートクレーブに導入する。次に、適切な量のCOを常温で充填し、その後オートクレーブを反応温度まで加熱するか(ここで、該反応は定圧下では起こらない)、又はオートクレーブを最初に反応温度まで加熱し、その後、減圧弁を有するオートクレーブに接続されるビュレットを用いて、COを充填する。反応の間、このビュレットに100バールまでCOを充填し、定圧で所望のCOを供給する。このビュレットは、デッドボリュームが約30mlであり、デジタル圧力変換器を備える。攪拌中、所望時間の間、所望温度で反応させる。この間、ソフトウェア(SpecView Corporation社製スペックビュー)及びParr社製プロセス制御装置4870とパワー制御装置4875を用いて、オートクレーブとガス中の圧変化に係るデータを記録する。経時的なガス消費率及び転化率を示すダイアグラムを作成するために後の段階において使用される、エクセル表を作成するために、これらのデータを使用する。必要があれば、キャピラリーによって、GCサンプルを採取し分析する。この目的のため、内部標準として好適且つ正確な量(2〜10ml)のイソオクタンもシュレンク管へ添加する。これらも反応の経過に係る情報を提供する。反応の最後に、オートクレーブを常温まで冷却し、慎重に圧力を解放し、内部標準として必要であればイソオクタンを添加し、GC分析を、新たな製品の場合にはGC−MS分析を同様に行う。
【0157】
ガラスバイアルでのオートクレーブ実験のための一般的実験方法:
300ml容量のParr社製リアクターを使用する。当社内で製造され、かつHeidolph社製のような従来のマグネチックスターラーを用いる加熱に好適な、対応する寸法を有するアルミニウムブロックがこれに適合する。オートクレーブの内側用に、ガラスバイアルの外径に対応する6つの穴を有する、約1.5cmの円形金属プレートを製造した。それらは、ガラスバイアルに合う、小さなマグネチックスターラーを備える。ガラスバイアルは、ねじぶたと好適なセプタムとを備えており、ガラス吹き工によって製造される特別な器具を用いて、アルゴン下で、適切な反応剤、溶媒、触媒及び添加剤を充填する。本目的のために、6つの容器を同時に充填する;これにより、1つの実験において、同じ温度と圧力で6つの反応を行うことができる。その後、ガラスバイアルをねじぶたとセプタムで封じ、各セプタムを穿刺するために好適なサイズの小さなシリンジカニューレを使用する。これにより、反応中のガス交換が可能となる。その後、これらのバイアルを金属プレートに設置し、アルゴン下でオートクレーブに導入する。オートクレーブをCOでパージし、常温及び予定のCO圧にする。その後、マグネチックスターラーを使用し、マグネチックの攪拌下で、オートクレーブを反応温度まで加熱し、適切な期間反応を行う。次に、オートクレーブを常温まで冷却し、圧力をゆっくりと解放する。次に、オートクレーブを窒素でパージする。バイアルをオートクレーブから取り出し、好適標準の規定量を添加する。分析を実施し、その結果を収率及び選択率の測定に使用する。
【0158】
12−バイアルオートクレーブ(Parr社製600ml容量オートクレーブ)での一般的実験方法:
初めに、ベークアウトされた各ガラスバイアルにジ−n−ブテン(DNB)とメタノールを充填し、H
2SO
4(溶液:MeOH50ml中のH
2SO
41ml)のように、Pd(acac)
2(0.5mg,0.0016mmol)の溶液とメタノール0.2ml中のリガンド(0.0064mmol)を添加する。オートクレーブにおいて、混合物をCO10バールで2回パージし、COを所望の圧力で充填し、混合物を20時間、所望温度で攪拌する。反応終了後、イソオクタン(内部標準)とEtOAc1mlをそれぞれ添加する。有機相をGCにより分析する。GC(内部標準としてのイソオクタン)を用いて、反応収率を測定する。
【0159】
分析:
エテンから製造される製品の分析:GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。メチルプロピオネートの保持時間:6.158分
【0160】
2−ブテンから製造される製品の分析:
GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
iso−C5エステルの保持時間:12.118分
n−C5エステルの保持時間:13.807分
【0161】
ラフィネートから製造される製品のGC分析:GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
MTBEの保持時間:5.067分
iso−C5エステルの保持時間:12.118分
n−C5エステルの保持時間:13.807分
【0162】
クラック−C4から製造される製品のGC分析:30mHP5カラムを有するAgilent7890Aクロマトグラフ、温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
吉草酸メチルの保持時間:13.842分
3−ペンテ酸メチルの保持時間:14.344分、14.533分
アジピン酸ジメチルの保持時間:21.404分
【0163】
イソブテンから製造される製品のGC分析:
30mHP5カラムを有するAgilent7890Aクロマトグラフ、温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃保持し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
MTBEの保持時間:5.045分
C5エステルの保持時間:12.105分
【0164】
テトラメチルエチレンから製造される製品のGC分析:GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
テトラメチルエチレン及び製品の保持時間:7.436分
エーテルの保持時間:11.391分
3,4−ジメチル吉草酸メチルの保持時間:17.269分
【0165】
C−5混合物と製品のGC分析:GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
C5オレフィンの保持時間:4.498、4.437、4.533、4.533、4.465、5.793分;
C6メチルエステル及びそれらの異性体の保持時間:14.547〜16.362分(主ピーク:16.362分)
【0166】
ジ−n−ブテンのGC分析:GC分析に、30mHP5カラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
ジ−n−ブテン及び製品の保持時間:10.784〜13.502分
ジ−n−ブテンから形成されるエステルは、以下でMINO(イソノナン酸メチル)として表される。
異性体分布が不明なエーテル製品の保持時間:15.312、17.042、17.244、17.417分
iso−C9エステルの保持時間:19.502〜20.439分(主ピーク:19.990分)
n−C9エステルの保持時間:20.669、20.730、20.884、21.226分。
【0167】
1,3−ブタジエンから製造される製品のGC分析:GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。3−ペンテン酸メチルの保持時間:14.430分、アジピン酸メチルの保持時間:21.404分。
【0168】
メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)及び製品のGC分析:30mHP5カラムを有するAgilent7890Aクロマトグラフ、温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
3−メチル酪酸メチルの保持時間:12.070分
MTBEの保持時間:5.067分
【0169】
芳香族アルコール及び製品のGC分析:30mHP5カラムを有するAgilent7890Aクロマトグラフ、温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
【0170】
保持時間:21.197分
【化15】
【0171】
保持時間:21.988分
【化16】
【0172】
第2級アルコール及び製品のGC分析:30mHP5カラムを有するAgilent7890Aクロマトグラフ、温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
3,3−ジメチルブタン−2−オールの保持時間:10.975分
2,3,3−トリメチル酪酸メチルの保持時間:15.312分
4,4−ジメチル吉草酸メチルの保持時間:17.482分
【0173】
tert−ブタノール及び製品のGC分析:30mHP5カラムを有するAgilent7890Aクロマトグラフ、温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
tert−ブタノールの保持時間:4.631分
3−メチル酪酸メチルの保持時間:12.063分
【0174】
オレイン酸メチル及び製品のGC分析:
GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:50℃で0分、次いで毎分8℃で260℃まで昇温し、次いで15分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。オレイン酸メチルの保持時間:23.823分、1,19−ノナデカンジカルボン酸ジメチルの保持時間:28.807分、1,X−ノナデカンジカルボン酸ジメチルの保持時間:27.058分、主ピーク、27.058分、27.206分、27.906分、28.831分(第二ピーク)。ポジションXについては、分析的に測定しない。
【0175】
メタノール分析
溶媒乾燥システムにおいて、メタノールを事前処理した:Innovative Technology Inc.(One Industrial Way, Amesbury MA 01013)社製PureSolv MD Solvent Purification System。
水分値:
カール・フィッシャー適定により測定:Radiometer Analytical SAS社製TitraLab 580−TIM580(カール・フィッシャー適定)、含水率:測定範囲、0.1〜100%w/w、測定含水率:0.13889%
使用したもの:
Applichem社製工業グレードメタノール:番号A2954,5000、バッチ番号:LOT:3L005446、最大含水率1%
(モレキュラーシーブを用いて)Acros Organics社製メタノール:含水率0.005%、コード番号:364390010、バッチ番号:LOT1370321
【0176】
TON:触媒金属モルごとの製品モル数として規定される触媒のターンオーバー数
TOF:特定の転化が成される単位時間ごとのTONとして規定される触媒回転頻度、例:50%
【0177】
n/isoの割合は、内部でエステルに転化されるオレフィンに対する、末端でエステルに転化されるオレフィンの割合を示す。
【0178】
以下で報告されるn選択率は、メトキシカルボニル化製品の全収率に基づく末端メトキシカルボニル化の割合に関係する。
【0179】
80℃、40バールにおける、リガンド3及びリガンド8を用いる、エテンのメトキシカルボニル化
80℃、40バールCOにおいて、DTBPMBリガンド3と対比して、リガンド8を試験した。結果を
図1(
図1:80℃、40バールCOにおける、リガンド3及びリガンド8を用いる、エテンのメトキシカルボニル化)に示す。
【化17】
【0180】
図1より、80℃において、リガンド8を含有する触媒が、DTBPMB(リガンド3)を含有する触媒よりも活性が約5〜6倍であることが明確に分かる。リガンド8を含有するシステムがたった10分で完了するのに対し、リガンド3は約60〜70分必要である。両者は、メチルプロピオネートに対し、可能な限り高い選択率(100%)を成す。従って、本発明に係るリガンドは、先行技術に係るシステムに対し明らかな向上を示す。
【0181】
従って、リガンド8を含有するシステムをより詳細に研究し、60℃、20バールCO(重要な産業用圧力レベル)定圧で反応を行った。
【0182】
60℃、20バールにおける、リガンド3及びリガンド8を用いる、エテンのメトキシカルボニル化:
リガンド3(比較例):アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](6.53mg、0.04mol%)、適切なリガンド3(33mg、0.16mol%)、及びp−トルエンスルホン酸(PTSA,61mg、0.6mol%)を充填する。次に、MeOH(20ml)と純度3.0のエテン(1.5g、53mmol)を添加する。オートクレーブを60℃まで加熱し、最大総圧20バールまでCOを充填する。加圧貯槽からCOを計測することによって、この圧力を20バールで一定に保つ。1時間反応を行い、加圧貯槽内のガス消費率を測定する。次に、オートクレーブを冷却し、圧力をゆっくりと解放する。オートクレーブの中身をシュレンク管へ導入し、イソオクタン5mlを内部標準として添加する。GC分析により収率を測定する(収率100%)。収率50%でのTOFは、758h
−1である。
【0183】
リガンド8:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](6.53mg、0.04mol%)、適切なリガンド8(44mg、0.16mol%)、及びp−トルエンスルホン酸(PTSA,61mg、0.6mol%)を充填する。次に、MeOH(20ml)と純度3.0のエテン(1.5g、53mmol)を添加する。オートクレーブを60℃まで加熱し、最大総圧20バールまでCOを充填する。加圧貯槽からCOを計測することによって、この圧力を20バールで一定に保つ。1時間反応を行い、加圧貯槽内のガス消費率を測定する。次に、オートクレーブを冷却し、圧力をゆっくりと解放する。オートクレーブの中身をシュレンク管へ導入し、イソオクタン5mlを内部標準として添加する。GC分析により収率を測定する(収率100%)。収率50%でのTOFは、3213h
−1である。
【0184】
図2は、加圧貯槽からのガス消費率を示す。60℃でCOを充填することにより反応を開始する(
図2:60℃、20バールCO(定圧)における、リガンド3及びリガンド8を用いる、エテンのメトキシカルボニル化)。
ここにおいても、リガンド8がプレフォーム段階なしで、極めて早く反応を行うことが分かる。従って、これは、先行技術(リガンド3)を越える明らかな利点を有する、非常に高速かつ高選択率の触媒システムである。
【0185】
アルコキシカルボニル化(比較例)
【化18】
【0186】
【化19】
【0187】
リガンド59:
リガンド59、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセンが商業上有用である。
【0188】
アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド59(47.9mg、0.16mol%)、PTSA(61.1mg、0.6mol%)、及びメタノールを充填する。次に、エチレン(Linde AG社製3.5)1.5g(53.6mmol)をオートクレーブに導入する。(オートクレーブの質量を観察する)。オートクレーブを反応温度80℃(圧力約10バール)まで加熱した後、CO(30バール)をこの温度で充填する。この温度で反応を20時間行う。その後、オートクレーブを常温まで冷却し、減圧する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、イソオクタン(内部標準、5ml)を添加する。GC分析により収率と選択率を測定した(収率:54%)。
【0189】
様々なアルコールを用いるエテンのアルコキシカルボニル化
一般的手法:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、適切なアルコール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。
GC分析:GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
【化20】
【0190】
メタノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、メタノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。オートクレーブ内の圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それはメチルプロピオネート100%である。保持時間:6.148分
【0191】
エタノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、エタノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それはエチルプロピオネート100%である。保持時間:8.896分
【0192】
1−プロパノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、1−プロパノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それは1−プロピルプロピオネート100%である。保持時間:13.342分
【0193】
1−ブタノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、1−ブタノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それは1−ブチルプロピオネート100%である。保持時間:16.043分
【0194】
1−ペンタノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、1−ペンタノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それは1−ペンチルプロピオネート100%である。保持時間:17.949分
【0195】
1−ヘキサノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、1−ヘキサノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それは1−ヘキシルプロピオネート100%である。保持時間:19.486分
【0196】
2−プロパノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、2−プロパノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それは1−プロピルプロピオネート100%である。保持時間:11.212分
【0197】
t−ブタノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、1−ブタノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それはt−ブチルプロピオネート47%である。保持時間:12.625分
【0198】
3−ペンタノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、3−ペンタノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それは3−ペンチルプロピオネート100%である。保持時間:16.648分
【0199】
シクロヘキサノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、シクロヘキサノール20mlを添加する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それはシクロヘキシルプロピオネート100%である。保持時間:19.938分
【0200】
フェノール:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(6.52mg、0.04mol%)、リガンド8(44.3mg、0.16mol%)、及びPTSA(61.1mg、0.6mol%)を充填する。アルゴン下で、フェノール20mlを添加する。フェノールを溶媒なしで固形物質に添加する。フェノールの融解点は40.5℃である。従って、全成分は80℃で溶解する。その後、エテン(53.6mmol)1.5gをオートクレーブに導入する(質量を観察する)。オートクレーブを80℃(圧力は約10バール)まで加熱する。この温度で、COを30バールまで充填し、攪拌しながら反応を20時間行う。圧力変換器とParr Instruments社製のスペックビューソフトウェアを用いてガス消費率を測定し、時間に対する収率の図表を比較する。オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてのイソオクタン5mlを添加し、GC分析により収率を測定する。反応終了時、それはフェニルプロピオネート46%である。保持時間:20.260分
【0201】
結果を
図3に示す。
図3:80℃、30バールCO圧における、リガンド8を用いる、エテンのメトキシカルボニル化におけるアルコールのバリエーション
明らかに分かるように、アルコキシ化には、メタノールだけでなく、多数の他のアルコールも同様に利用することができる。良好な収率から非常に良好な収率で対応する製品を(場合によっては定量的に)得ることができる。
【0202】
リガンド8を用いるプロペンの転化
【化21】
【0203】
アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(17.5mg、0.04mol%)、リガンド8(119mg、0.16mol%)、MeOH(15ml)、及び[98%H
2SO
4](38μl、0.5mol%)を充填する。次に、オートクレーブをドライアイスで冷却する。プロペン(6.06g、144mmol)を別のシリンダ(75ml、質量を観察する)に入れた。次に、この規定量をオートクレーブに入れた。次に、常温で、COを40バールまでオートクレーブに充填する。反応を100℃で30分行う。反応後、オートクレーブを常温まで冷却し、圧力を解放する。内部標準として、イソオクタン8.5mlを溶液に添加する。GC分析により収率と選択率を測定する。(収率:>99%、n/iso:77:23)。
【0204】
リガンド8を用いる1−ブテンの転化
【化22】
【0205】
アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(17.5mg、0.04mol%)、リガンド8(119mg、0.16mol%)、MeOH(15ml)、及び[98%H
2SO
4](38μl、0.5mol%)を充填する。次に、オートクレーブをドライアイスで冷却する。1−ブテン(8.04g、144mmol)を別のシリンダ(75ml、質量を観察する)に入れた。次に、この規定量をオートクレーブに入れた。次に、常温で、COを40バールまでオートクレーブに充填する。反応を100℃で60分行う。反応後、オートクレーブを常温まで冷却し、圧力を解放する。内部標準として、イソオクタン8.5mlを溶液に添加する。GC分析により収率と選択率を測定する。(収率:>99%、n/iso:80:20)。
【0206】
リガンド8を用いる2−ブテンの転化
【化23】
【0207】
アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(17.5mg、0.04mol%)、リガンド8(119mg、0.16mol%)、MeOH(15ml)、及び[98%H
2SO
4](38μl、0.5mol%)を充填する。次に、オートクレーブをドライアイスで冷却する。2−ブテン(8.04g、144mmol)を別のシリンダ(75ml、質量を観察する)に入れた。次に、この規定量をオートクレーブに入れた。次に、常温で、COを40バールまでオートクレーブに充填する。反応を100℃で60分行う。反応後、オートクレーブを常温まで冷却し、圧力を解放する。内部標準として、イソオクタン8.5mlを溶液に添加する。GC分析により収率と選択率を測定する。(収率:>99%、n/iso:75:25)。
【0208】
結果を
図4に示す。この図は、ガス消費曲線からの転化率によって算出される、上記反応の収率プロファイルを示す。該曲線は、反応終了時にガスクロマトグラフによって測定された収率を使用するのに好適であった。
【0209】
図4:100℃、40バールにおける、リガンド8を用いる、プロペン、1−ブテン及び2−ブテンのメトキシカルボニル化実験
【0210】
図4から推測できるように、オレフィンの転化率は鎖長の長さと一致する。末端オレフィンの転化率は、内部二重結合オレフィンの転化率よりも高い。プロペンは10分以内に完全に転化されるが、完全な転化(収率100%)のために、1−ブテンは約40分、2−ブテンは約60分が必要である。
【0211】
化合物8を用いるラフィネート1の転化
所謂ラフィネート1を含む技術的混合物も試験した。ラフィネート1は、イソブテン42%、1−ブテン26%、cis−及びtrans−2−ブテン17%、1,3−ブタジエン0.3%、n−ブタン及びイソブタン15%から成る。
【0212】
方法:アルゴン雰囲気下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](17.4mg)、リガンド8(118.9mg)、及びH
2SO
4(70.6mg)を充填した。Ar雰囲気下で、メタノール(15ml)を添加した。オートクレーブをドライアイスで冷却した。次に、8.2gのラフィネート1を別のシリンダ(75ml、質量を観察する)に入れ、この規定量の基質を、冷却されたオートクレーブに入れた。次に、常温かつ60バールCOでオートクレーブを加圧した。反応を100℃で20時間行った。次に、中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてイソオクタンを添加した。GC分析により、収率と選択率を測定した。
【0213】
結果:C5−エステル:9.7g、n/iso 37/63、MTBE:2.0g。
【化24】
【0214】
【化25】
【0215】
結果を
図5に示す。
図5:100℃、圧力60バールにおける、リガンド8を用いる、ラフィネート1のメトキシカルボニル化
【0216】
従って、本発明に係るリガンド8を用いることより、ラフィネート1のような産業的関連性のある物質の混合物の転化が可能となることが示された。
【0217】
ラフィネート1とサンプリング
更に、リガンド8を用いてラフィネート1を転化させる。
【化26】
【0218】
一般的手法:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](17.4mg)、リガンド8(118.9mg)、及びH
2SO
4(70.6mg)を充填する。次に、MeOH15mlと内部標準としてのイソオクテンを添加する。次に、オートクレーブを−78℃までドライアイスで冷却する。ラフィネート1(8.1g)を75ml容量の別の圧力シリンダ(質量を観察する)に入れる。次に、この規定量をオートクレーブに入れる。オートクレーブに、常温で50バールCOを充填する。オートクレーブを100℃まで加熱し、この温度で20時間攪拌する。この間、HPLC値と内部キャピラリーを用いて、オートクレーブから16個のサンプルを取り出す。GC分析により収率と選択率を測定する。
GC分析:GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃、10分;毎分10℃〜260℃、16.5分;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
MTBEの保持時間:5.067分
iso−C5エステルの保持時間:12.118分
n−C5エステルの保持時間:13.807分
【0219】
結果を
図6に示す。
図6:100℃、50バールにおける、リガンド8を用いる、ラフィネート1のメトキシカルボニル化。反応終了時、使用されたオレフィン量に対し、C5エステル80%及びメチルtert−ブチルエーテル20%が存在する。
【0220】
従って、リガンド8は、産業的関連性のある供給材料(ラフィネート1)の転化に非常に好適である。
【0221】
図5は、サンプリングすることなく20時間実施され、n/iso比率37/63、TMBE含有量2.0gのC5エステル9.7gを製造する実験に係るガス吸収曲線を示す。
図6で実施される実験は、n−C5エステル32%及びiso−C5エステル48%を製造する。これは、n/iso比率33/67に対応する。メチルtert−ブチルエーテルの質量割合は20%である。
図5は、質量割合17%を示す。2つの実験は、類似した結果を示す。
図5より、反応の大部分は1時間で終了することが明らかである。これも
図6におけるサンプリングを伴う実験と一致する。
【0222】
リガンド3及びリガンド8を用いるイソブテンのメトキシカルボニル化
【化27】
【0223】
【化28】
【0224】
リガンド3(比較例):アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(4.9mg)、DTBPMB(25.3mg)、PTSA(45.6mg)、及びMeOH(20ml)を充填する。次に、オートクレーブをドライアイスで冷却する。イソブテン2.5g(質量を観察する)を別の圧力容器に入れる。この規定量をオートクレーブに入れる。次に、常温で、オートクレーブにCOを40バールまで充填する。反応を120℃で20時間行う。次に、オートクレーブを常温まで冷却し、減圧し、中身を50ml容量のジュレンク管に導入し、イソオクタン(内部標準として5ml)を添加する。GC分析を行う。(GC分析(3−メチル酪酸メチルの収率:50%、MTBEの収率:37%))
【0225】
リガンド8:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブにPd(acac)
2(4.9mg)、リガンド8(33.1mg)、PTSA(45.6mg)、及びMeOH(20ml)を充填する。次に、オートクレーブをドライアイスで冷却する。イソブテン2.5g(質量を観察する)を別の圧力容器に入れる。この規定量をオートクレーブに入れる。次に、常温で、オートクレーブにCOを40バールまで充填する。反応を120℃で20時間行う。次に、オートクレーブを常温まで冷却し、減圧し、中身を50ml容量のジュレンク管に導入し、イソオクタン(内部標準として5ml)を添加する。GC分析を行う。(3−メチル酪酸メチルの収率:99%)
【0226】
プロペン、1−ブテン、及び2−ブテンの混合物の試験
更に、反応剤混合物、すなわち別の不飽和化合物から成る混合物も試験した。
【0227】
方法:アルゴン雰囲気下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](17.4mg)、リガンド8(118.9mg)、及びH
2SO
4(70.6mg)を充填した。Ar雰囲気下で、メタノール(15ml)を添加した。オートクレーブをドライアイスで冷却した。その後、2.83g、2−ブテン4.85mg、及びプロペン(2.2g)を別々のシリンダ(75ml、質量を観察する)3本に入れ、規定量のガス基質をオートクレーブに入れた。その後、常温で、オートクレーブに60バールCOを加圧した。反応を100℃で20時間行った。その後、中身を50ml容量のシュレンク管に導入し、内部標準としてイソオクタンを添加した。GC分析によって収率と選択率を測定した。(収率:100%、C4エステル:n/iso=79:21,C5エステル:n/iso=75:25)
【化29】
【0228】
【化30】
【0229】
結果を
図7に示す。
図7:100℃、60バールにおける、リガンド8を用いる、プロパン、1−ブテン、及び2−ブテンの混合物のメトキシカルボニル化
【0230】
図7から推測されるように、1時間の反応時間経過後、メトキシカルボニル化製品について、100%に近い収率が達成される。
【0231】
様々な温度での、様々なリガンドを用いるテトラメチルエチレンの転化
【化31】
【0232】
【化32】
【0233】
a)反応時間:100℃
リガンド3(比較例):25ml容量のシュレンク管に[Pd(acac)
2](4.87mg、0.1mol%)、p−トルエンスルホン酸(PTSA)(24.32mg、0.8mol%)、及びMeOH(8ml)を充填した。4ml容量のバイアルにリガンド3(6.3mg、0.4mol%)を充填し、マグネチックの撹拌子を入れた。次に、透明な黄色の溶液2mlとテトラメチルエチレン(478μl、4mmol)をシリンジで添加した。バイアルをサンプルホルダーに置き、アルゴン雰囲気下で順番に300ml容量のParr社製オートクレーブに導入した。窒素でオートクレーブを3回パージした後、CO圧を40バールに調節した。100℃で20時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを常温まで冷却し、慎重に減圧した。内部GC標準として、イソオクタン(200μl)を添加した。GC分析により、収率と選択率を測定した。(転化率:40%、エステル製品の収率なし;エーテル製品の収率:38%)
【0234】
リガンド8:25ml容量のシュレンク管に[Pd(acac)
2](4.87mg、0.1mol%)、p−トルエンスルホン酸(PTSA)(24.32mg、0.8mol%)、及びMeOH(8ml)を充填した。4ml容量のバイアルにリガンド8(8.3mg、0.4mol%)を充填し、マグネチックの撹拌子を入れた。次に、透明な黄色の溶液2mlとテトラメチルエチレン(478μl、4mmol)をシリンジで添加した。バイアルをサンプルホルダーに置き、アルゴン雰囲気下で順番に300ml容量のParr社製オートクレーブに導入した。窒素でオートクレーブを3回パージした後、CO圧を40バールに調節した。100℃で20時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを常温まで冷却し、慎重に減圧した。内部GC標準として、イソオクタン(200μl)を添加した。GC分析により、収率と選択率を測定した。(転化率:65%、エステル製品の収率:37%、エーテル製品の収率:27%)
【0235】
b)反応温度:120℃
リガンド3(比較例):25ml容量のシュレンク管に[Pd(acac)
2](4.87mg、0.1mol%)、p−トルエンスルホン酸(PTSA)(24.32mg、0.8mol%)、及びMeOH(8ml)を充填した。4ml容量のバイアルにリガンド3(6.3mg、0.4mol%)を充填し、マグネチックの撹拌子を入れた。次に、透明な黄色の溶液2mlとテトラメチルエチレン(478μl、4mmol)をシリンジで添加した。バイアルをサンプルホルダーに置き、アルゴン雰囲気下で順番に300ml容量のParr社製オートクレーブに導入した。窒素でオートクレーブを3回パージした後、CO圧を40バールに調節した。120℃で20時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを常温まで冷却し、慎重に減圧した。内部GC標準として、イソオクタン(200μl)を添加した。GC分析により、収率と選択率を測定した。(転化率:54%、エステル製品の収率なし;エーテル製品の収率:52%)
【0236】
リガンド8:25ml容量のシュレンク管に[Pd(acac)
2](4.87mg、0.1mol%)、p−トルエンスルホン酸(PTSA)(24.32mg、0.8mol%)、及びMeOH(8ml)を充填した。4ml容量のバイアルにリガンド8(8.3mg、0.4mol%)を充填し、マグネチックの撹拌子を入れた。次に、透明な黄色の溶液2mlとテトラメチルエチレン(478μl、4mmol)をシリンジで添加した。バイアルをサンプルホルダーに置き、アルゴン雰囲気下で順番に300ml容量のParr社製オートクレーブに導入した。窒素でオートクレーブを3回パージした後、CO圧を40バールに調節した。120℃で20時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを常温まで冷却し、慎重に減圧した。内部GC標準として、イソオクタン(200μl)を添加した。GC分析により、収率と選択率を測定した。(転化率:90%、エステル製品の収率:60%、エーテル製品の収率:28%)
【0237】
C5オレフィンのメトキシカルボニル化
方法:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](10.95mg、0.04mol%)、リガンド8(74.31mg、0.16mol%)、及びH
2SO
4(44.1mg、0.5mol%)を充填する。次に、MeOH10ml、1−ペンテン(0.5g)、2−ペンテン(2.21g)、2−メチル−1−ブテン(1.27g)、及び2−メチル−2−ブテン(1.3g)をアルゴン下で添加した。次に、ドライアイスでオートクレーブを−78℃まで冷却する。3−メチル−1−ブテン(1.1g)1.1gを別の減圧容器(質量を観察する)に入れ、この規定量をオートクレーブに入れる。次に、常温でオートクレーブにCOを50バールまで充填する。攪拌しながら、100℃で20時間反応を行う。次に、オートクレーブを常温まで冷却し、残圧をゆっくりと解放する。中身を50ml容量のシュレンク管へ導入し、内部標準としてイソオクタン5mlを添加する。GC分析によって収率を測定する。反応終了時、C6メチルエステルの収率の76%である。
GC分析:GC分析に、30mHPカラムを有するAgilent7890Aガスクロマトグラフを使用する。温度プロファイル:35℃で10分保持し、次いで毎分10℃で200℃まで昇温し、次いで16.5分保持;注入量は50:1のスプリットで1μlである。
C6メチルエステル及びそれらの異性体の反応時間:14.547〜16.362分(主ピーク:16.362分)
【化33】
【0238】
結果を
図8に示す。
図8:100℃、50バールにおける、リガンド8を用いる、C5オレフィン混合物のメトキシカルボニル化
明らかに分かるように、良好な収率の混合物として、対応するC6オレフィンエステルが得られる(>50%)。
【0239】
リガンド8を用いるジ−n−ブテンの転化
【化34】
【0240】
更に、定圧かつリガンド8を用いる、総圧20バールでのガス消費率測定を用いて、実験を行った。
【0241】
実施例:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](5.85mg、0.04mol%)、適切なリガンド8(39.61mg、0.16mol%)、及びp−トルエンスルホン酸(PTSA、54.7mg、0.6mol%)を充填する。次に、MeOH(30ml)及びジ−n−ブテン(7.54ml、48mmol)を添加する。オートクレーブを120℃まで加熱し、COを総圧が20バールになるまで充填する。圧力変換器でCOを測定することにより、この圧力を20時間一定に保つ。反応を20時間行い、圧力変換器中のガス消費率を測定する。次に、オートクレーブを冷却し、圧力をゆっくりと解放する。オートクレーブの中身をシュレンク管へ導入し、内部標準としてイソオクタン5mlを添加する。GC分析によって収率を測定した(収率:86%、n:iso=75:25)。
【0242】
結果を
図9に示す。
図9:120℃、20バールCO定圧における、リガンド8を用いる、ジ−n−ブテンのメトキシカルボニル化
【0243】
リガンド8を用いる場合、5時間経過後、イソノナン酸メチルの収率は80%超である;20時間経過後の収率とn:isoの比率は、様々なCO圧(上記を参照)下での120℃、40バールにおける、リガンド8を用いる実験に関係した。収率及び選択率を下げることなく、反応中、CO圧20バールより低い圧力を用いることができる。
【0244】
リガンド3及びリガンド8を用いるジ−n−ブテンのメトキシカルボニル化
ジ−n−ブテンのメトキシカルボニル化において、リガンドと比較するために、ガス消費率測定を用いる実験を行った。
【化35】
【0245】
リガンド3(比較例):アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](5.85mg、0.04mol%)及びリガンド3(30.3mg、0.16mol%)を充填する。次に、MeOH(30ml)、ジ−n−ブテン(7.54ml、48mmol)、及びPTSA(54.7mg、0.6mol%)を添加する。常温でオートクレーブに純度4.7のCOを40バールまで充填し、120℃で20時間反応を行う。次に、オートクレーブを冷却し、圧力をゆっくりと解放する。オートクレーブの中身をシュレンク管へ導入する。内部標準としてイソオクタン5mlを添加し、GC分析によって収率及び選択率を測定する(MINOの収率:60%、n/iso:93/7)。
【0246】
リガンド8:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](5.85mg、0.04mol%)及びリガンド8(39.6mg、0.16mol%)を充填する。次に、MeOH(30ml)、ジ−n−ブテン(7.54ml、48mmol)、及びPTSA(54.7mg、0.6mol%)を添加する。常温でオートクレーブに純度4.7のCOを40バールまで充填し、120℃で20時間反応を行う。次に、オートクレーブを冷却し、圧力をゆっくりと解放する。オートクレーブの中身をシュレンク管へ導入する。内部標準としてイソオクタン5mlを添加し、GC分析によって収率及び選択率を測定する(MINOの収率:86%、n/iso:75/25)。
【0247】
図10は、試験されるシステムに係るガス消費曲線(又は時間対収率のプロファイル)を示す。
図10:120℃、40バールCOにおける、リガンド3及びリガンド8を用いる、ジ−n−ブテンのメトキシカルボニル化
【0248】
ガス消費曲線と実施例より、リガンド8のガス消費がリガンド3よりも早いことが明らかである。75%におけるn選択率は、リガンド3を用いる反応よりも低いが、産業的実施可能性と空時収率の高さの観点からリガンド8が好ましい。
【0249】
更に、定圧かつリガンド8を用いる、総圧20バールでのガス消費率測定を用いて、実験を行った。
【0250】
実施例:アルゴン下で、100ml容量のスチールオートクレーブに[Pd(acac)
2](5.85mg、0.04mol%)、適切なリガンド8(39.61mg、0.16mol%)、及びp−トルエンスルホン酸(PTSA、54.7mg、0.6mol%)を充填する。次に、MeOH(30ml)及びジ−n−ブテン(7.54ml、48mmol)を添加する。オートクレーブを120℃まで加熱し、COを総圧が20バールになるまで充填する。圧力変換器でCOを測定することにより、この圧力を20時間一定に保つ。反応を1時間行い、圧力変換器中のガス消費率を測定する。次に、オートクレーブを冷却し、圧力をゆっくりと解放する。オートクレーブの中身をシュレンク管へ導入し、内部標準としてイソオクタン5mlを添加する。GC分析によって収率を測定した(収率:86%、n:iso=75:25)。
【0251】
結果を
図11に示す。
図11:120℃、総定圧20バールにおける、リガンド8を用いる、ジ−n−ブテンのメトキシカルボニル化に係る収率曲線
【0252】
40バール非定圧における実験と等しい結果が得られる。これは、リガンド8を用いるジ−n−ブテンのメトキシカルボニル化が、ある一定のCO圧範囲を超えるCO圧とは無関係であり、20バール未満の産業上好ましい低圧で達成されることを意味する。
【0253】
更なるリガンドを用いるジ−n−ブテンの転化(12−ウェルオートクレーブでの比較例)
様々なリガンドを用いるジ−n−ブテンの転化を以下の方法により行った:
方法:50ml容量のシュレンク管に[Pd(acac)
2](3.9mg、0.04mol%)、MeSO
3H(メタンスルホン酸)(13μl、0.6mol%)、及びMeOH(20ml)を充填した。4ml容量のバイアルにリガンドX(0.16mol%)を充填し、マグネチックの撹拌子を入れた。次に、透明な黄色の保存溶液1.25ml及びジ−n−ブテン(315μl、2mmol)をシリンジで添加した。バイアルをサンプルホルダーに置き、アルゴン雰囲気下で順番に600ml容量のParr社製オートクレーブに導入した。窒素でオートクレーブを3回パージした後、CO圧を40バールに調節した。120℃で20時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを常温まで冷却し、慎重に減圧した。内部GC標準としてイソオクタンを添加した。GCにより、収率と位置選択率を測定した。
【0254】
結果を以下のスキーム22において要約する。
【化36】
【0255】
空時収率STYの測定
空時収率(STY)は、立法メートル及び単位時間ごとの製品t(メートルトン)、又はリットル及び秒ごとのkg等の、単位空間及び単位時間ごとの、反応容器(反応剤)からの特定製品のアウトプット(反応剤によって形成される製品)を意味するとして理解される。
【0256】
方法:まず、ベークアウトしたシュレンク管にPTSA1.6mol%(180mg)、Pd(acac)
20.04mol%(7.5mg)、及びリガンド(3)又はリガンド(8)0.16mol%をそれぞれ充填する。次に、メタノール(工業グレード)6.26ml(150mmol)及びジ−n−ブテン9.39ml(60mmol)を添加し、該混合物を100ml容量のオートクレーブに導入する。次に、オートクレーブを100バールCOで2回パージし、6バールまでCOを充填し、100℃まで加熱する。次に、ガスビュレットを用いて、オートクレーブに12バールまでCOを充填し、CO定圧下(12バール)で100℃で20時間攪拌する。反応終了後、イソオクタン(内部標準)及びEtOAc10mlを添加する。GC分析法によって有機相を分析した。
【化37】
【0257】
結果を
図12に示す。
図12:リガンド3及びリガンド8を用いる反応のガス消費曲線
【0258】
C−18オレフィン
オレイン酸メチル(Alfa Aesar社製、H311358、LOT:10164632)
【0259】
リガンド3及びリガンド8を用いるオレイン酸メチルの転化
【化38】
【0260】
リガンド3(比較例):25ml容量のシュレンク管に[Pd(acac)
2](4.57mg、0.05mol%)、H
2SO
4(22.05mg、7.5mol%)、及びMeOH(6ml)を充填した。4ml容量のバイアルにリガンド3(7.9mg、2.0mol%)を充填し、マグネチックの撹拌子を入れた。次に、透明な黄色の溶液2ml及びオレイン酸メチル(339μl、1mmol)をシリンジで添加した。バイアルをサンプルホルダーに置き、アルゴン雰囲気下で順番に300ml容量のParr社製オートクレーブに導入した。窒素でオートクレーブを3回パージした後、CO圧を40バールに調節した。100℃で20時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを常温まで冷却し、慎重に減圧した。内部GC標準としてイソオクタン(100μl)を添加した。GCにより、収率と位置選択率を測定した。直鎖状エステルの収率:54%、非分岐鎖状エステル。
【0261】
リガンド8:25ml容量のシュレンク管に[Pd(acac)
2](4.57mg、0.05mol%)、H
2SO
4(22.05mg、7.5mol%)、及びMeOH(6ml)を充填した。4ml容量のバイアルにリガンド8(10.3mg、2.0mol%)を充填し、マグネチックの撹拌子を入れた。次に、透明な黄色の溶液2ml及びオレイン酸メチル(339μl、1mmol)をシリンジで添加した。バイアルをサンプルホルダーに置き、アルゴン雰囲気下で順番に300ml容量のParr社製オートクレーブに導入した。窒素でオートクレーブを3回パージした後、CO圧を40バールに調節した。100℃で20時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを常温まで冷却し、慎重に減圧した。内部GC標準としてイソオクタン(100μl)を添加した。GCにより、収率と位置選択率を測定した。直鎖状エステルの収率:98%、非分岐鎖状エステル。
【0262】
結果より、本発明に係るリガンド8が、先行技術に係るリガンド3よりもオレイン酸メチルの転化に好適であることが明らかである。
【0263】
最適条件化での様々なオレフィンの転化
ジ−n−ブテンのメトキシカルボニル化に係る条件を以下のように最適化した。
【化39】
【0264】
最適条件をアルケンの連鎖に適用する(表1)。
【化40】
【0265】
方法:まず、ベークアウトしたガラスバイアルにPd(acac)
21mg(0.04mol%)、リガンド(8)7.2mg(0.16mol%)、メタノール(工業グレード)812μl(20mmol)、アルケン8mmolをそれぞれ添加した。次に、2μl(0.5mol%)のH
2SO
4(98%)(メタノールに溶解させたスルホン酸溶液100μlは、スルホン酸2μlを含有する)を添加した。オートクレーブ内の反応物を10バールCOで2回パージし、15バールまでCOを充填し、100℃で20時間攪拌する。反応終了後、イソオクタン(内部標準)及びEtOAc1mlをそれぞれ添加した。GCによって有機相を分析した。
【0266】
結果を表1にまとめる。
【表1】
【0267】
表1中のn選択率は、メトキシカルボニル化製品の全収率に対する末端メトキシカルボニル化の割合として規定される。
【0268】
1−オクテン、1−デセン、1−ヘキセン、及び2−オクテン等の直鎖状末端オレフィンは定量的なエステル収率を提供することが分かる。3−ペンテン酸メチル、オレイン酸メチル、及びウンデセン酸メチルも同様に良好な収率を提供する。ビニルシクロヘキセンの場合、52%のモノメトキシカルボニル化と35%の内部二重結合の部分的メトキシカルボニル化が生じる。オクタジエンは、55%まで1ヵ所がメトキシカルボニル化し、26%まで2ヵ所がメトキシカルボニル化する。
【0269】
実験は、本発明に係る化合物が、多数のエチレン性不飽和化合物のアルコキシカルボニル化のための触媒リガンドとして好適であることを示す。特に、本発明に係る化合物を用いると、1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン(DTBPMB、リガンド3)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(リガンド59)、1−(ジフェニルホスフィノ)−1’−(ジイソプロピルホスフィノ)フェロセン(リガンド10)、及び1,1’−ビス(イソプロピルフェニルホスフィノ)フェロセン(リガンド19)等の先行技術に係るリガンドを用いる場合よりも良好な収率が成される。更に、本発明に係る化合物は、ジ−n−ブテン及び2−オクテン等の産業上重要な長鎖オレフィン、並びにラフィネート1等のオレフィン混合物のアルコキシカルボニル化も可能にする。