【実施例1】
【0016】
最初に、
図1〜
図4を参照しながら本発明の実施例1を説明する。
図1(A)は本実施例の電磁誘導加熱装置のアプリケータ及び外部電源の外観斜視図,
図1(B)は前記アプリケータの断面図,
図1(C)は使用時の状態を示す図である。
図2は、本実施例の電磁誘導加熱装置の回路構成を示す図,
図3及び
図4は、本実施例の変形例を示す図である。本発明の電磁誘導加熱装置は、加熱による接着,変形などの各種の加熱加工に適用可能であるが、本実施例では、装飾パネルや化粧パネル等、家具・建具・間仕切り・天井・床等の各種建材として用いられる積層パネルの接着に適用した例である。
【0017】
図1(A)に示すように、本実施例の電磁誘導加熱装置100は、外部電源10と、該外部電源10に対して着脱可能であって、誘導コイルが設けられた複数のアプリケータ20A,20B,20C,20D,20Eにより構成される。前記外部電源10は、前記アプリケータ20A〜20Eに高周波電流を供給するためのものであって、これら複数のアプリケータに設けられた誘導コイルのうち、もっとも消費電力の高い誘導コイルに適した電流を供給することができる。また、前記外部電源10は、前記アプリケータ20A〜20Eと接続するための電源用ケーブル12と、該電源用ケーブル12の端部に設けられたコネクタ部14を有している。図示の例では、前記コネクタ部14は、内側に図示しない一対のオス型の端子を備えたプラグである。また、前記電源用ケーブル12は、通常、一対の電源ケーブルを1本にまとめてカバー等により被覆されている。
【0018】
次に、アプリケータ20A〜20Eについて説明する。基本的な構造は、同様のため、アプリケータ20Aを例に挙げて説明すると、アプリケータ20Aは、ケース22の一方の主面22Aに操作用の取手24が設けられており、他方の主面22Bには加熱ヘッド26が設けられている。該加熱ヘッド26は、ケース28が、例えば耐熱性樹脂により形成されており、その内側に、誘導コイル40Aが設けられている。
図1(A)の例では、前記誘導コイル40Aは、平面渦巻き状であって、前記ケース28の表面30側であって、加熱対象に接触させる範囲内において形成されている。前記誘導コイル40Aの一方の端部42は、
図1(B)に示すようにリード線46に接続され、他方の端部44は、リード線48に接続されている。
【0019】
そして、これらリード線46,48は、前記アプリケータ20Aのケース22内に設けられた共振コンデンサ50Aに接続されている。該共振コンデンサ50Aは、前記外部電源10から供給される高周波電流を、前記加熱ヘッド26内の誘導コイル40Aの消費電力に合わせて調節するためのものである。該共振コンデンサ50Aは、配線52,54によって、前記ケース22に設けられたアプリケータ側のコネクタ部56に接続されている。図示の例では、前記コネクタ部56は、内側に図示しない一対の(メス型)のピンを備えたソケットである。前記外部電源10側のコネクタ部14を、前記アプリケータ20Aのコネクタ部56に差し込むことにより、外部電源10とアプリケータ20Aが電気的及び機械的に接続される。なお、図示の例では、外部電源10側のコネクタ部14をオス型とし、アプリケータ20A〜20E側のコネクタ部56をメス型としたが、オス型とメス型を逆にしてもよい(図示せず)。
【0020】
上述したように、本実施例では、前記外部電源12と接続して使用するアプリケータ20A〜20Eが複数用意されている。これら複数のアプリケータ20A〜20Eは、用途や加工対象物の種類等に応じて適宜使い分けできるように、それぞれが、消費電力の異なる誘導コイル40A〜40Eを備えている(
図2参照)。具体的には、
図2に示すように、アプリケータ20Aには誘導コイル40Aが、アプリケータ20Bには誘導コイル40Bが、アプリケータ20Cには誘導コイル40Cが設けられるという具合である(他のアプリケータ20D,20Eについても同様)。
【0021】
また、本発明では、前記外部電源10側の電源ケーブル12は、前記複数のアプリケータ20A〜20Eの誘導コイル40A〜40Eのうち、消費電力が最大の誘導コイルに足りる電力を供給可能であって、いずれのアプリケータ20A〜20Eを使用する場合でも、外部電源10と電源用ケーブル12は共通に用いることができる。そのために、本発明では、
図2に示すように、前記各アプリケータ20A〜20Dには、前記誘導コイル40A〜40Dの消費電力に応じて、前記電源用ケーブル12から供給された高周波電流を調節し、各誘導コイル40A〜40Dに供給するための共振コンデンサ50A〜50Dが設けられている。前記共振コンデンサ50A〜50Dを各アプリケータ20A〜20Dに設けることで、これらアプリケータ20A〜20Dがそれぞれ消費電力の異なる誘導コイル40A〜40Dを備えている場合であっても、外部電源10及び電源用ケーブル12は共通にすることができる。
【0022】
また、誘導コイルの消費電力によっては、共振コンデンサを含まない構成としてもよい。本実施例では、
図2に示すように、アプリケータ20Eは、誘導コイル40Eのみであり、共振コンデンサは接続されていない。なお、図示の例では、5つのアプリケータのうち、一つのアプリケータ20Eのみが共振コイルを含まない構成としたが、複数のアプリケータのうち、少なくとも一つのアプリケータが共振コイルを含むものであればよい。以上の構成とすることにより、前記コネクタ部14,56の着脱により、容易にアプリケータを交換でき、かつ、ケーブル回りの構造をシンプルにすることができる。
【0023】
次に、
図1(C)も参照して、本実施例の作用を説明する。なお、アプリケータ20A〜20Eのうち、使用するアプリケータ(
図1(C)の例では、アプリケータ20A)のコネクタ部56に、外部電源側のコネクタ部14を差し込み、外部電源10とアプリケータ20Aを電気的・機械的に接続しておく。
図1(C)に示す例は、金属板60と樹脂板62を接着剤64によって接着する例である。前記外部電源10からアプリケータ20Aの誘導コイル40Aに高周波電流を流すと強力な磁場が発生するので、その近くに配置された金属は、電磁誘導により渦電流が発生し、抵抗により金属が発熱する。この原理は、電磁誘導加熱として公知である。
【0024】
本実施例では、前記誘導コイル40Aに電流を流した状態で、加熱ヘッド26の表面26Aが
図1(C)に示すように、金属板60に接触させることにより、電磁誘導によって金属板60が発熱する。すると、発熱した金属板60により、接着剤64が加熱されるため、前記金属板60と樹脂板62が接着される。アプリケータ20Aを他のアプリケータ20B〜20Eと交換するときには、アプリケータ側のコネクタ部56から、電源用ケーブル12のコネクタ部14を抜き、付け替えるアプリケータに接続すればよい。なお、図示の例は、金属板60が加熱ヘッド26側に配置されている場合であるが、樹脂板62の厚みによっては、樹脂板62と金属板60の配置が逆であっても、同様の効果を得ることができる。
【0025】
このように、実施例1によれば、複数のアプリケータ20A〜20Eが、それぞれ消費電力の異なる誘導コイル40A〜40Eと、共振コンデンサ50A〜50Dを備えており、前記アプリケータ20A〜20Eは、コネクタ部56によって、外部電源10の電源用ケーブル12の端部に設けられたコネクタ部14と電気的及び機械的に接続される。そして、前記外部電源10の電源用ケーブル12は、前記複数のアプリケータ20A〜20Eの誘導コイル40A〜40Eのうち、消費電力が最大の誘導コイルの容量に足りる電力を供給可能であって、前記複数のアプリケータ20A〜20Dの各共振コンデンサ50A〜50Dは、前記電源用ケーブル12から供給された高周波電流を、各誘導コイル40A〜40Dの消費電力に応じて調整して、前記誘導コイル40A〜40Dに供給することとした。このため、複数のアプリケータ20A〜20Eを使い分ける場合でも、これらと接続する外部電源10及び電源用ケーブル12は共通でよいため、ケーブル回りをシンプルにし、用途や加熱対象に応じて複数のアプリケータ20A〜20Eを柔軟に使い分けることができる。また、作業時の引き回しもよいという効果がある。
【0026】
<変形例>・・・次に、本実施例の変形例を説明する。前記実施例では、
図1に示すように、アプリケータのケース22に対して加熱ヘッド26が別構成となっていたが、これも一例であり、
図3(A)に示すアプリケータ70のように、ケース72内に誘導コイル74と共振コンデンサ76を設け、前記ケース72自体を耐熱性樹脂製とするようにしてもよい。また、
図1及び
図2の例では、加熱ヘッド26の表面26Aの全体が平面形状であったが、これも一例であり、例えば、
図3(B-1)に示す加熱ヘッド80のように、ケース82の底面84から側面88にかけてテーパ86を設けた形状としてもよい。あるいは、
図3(B-2)に示す加熱ヘッド90のように、ケース92の底面94から側面98にかけて緩やかな曲面96を設けるようにしてもよい。また、加熱ヘッド90のように、加熱対象に接触させる部分を肉厚に形成するようにしてもよい。そして、これらの各種形態のアプリケータや加熱ヘッドを、前記
図1及び
図2で示した形態のアプリケータと付け替えるようにしてもよい。
【0027】
次に、
図4(A)に示す変形例について説明する。
図1に示した例では、前記加熱ヘッド26の表面26A側を直に加熱対象である金属板60に接触させることとしたが、接触時間が長くなる場合には、加熱ヘッド26のケース28自体も加熱によって変形するおそれがある。そこで、
図4(A)に示すように、ケース表面26Aに適宜間隔でスペーサ32を設け、加熱ヘッド26の表面26Aが直に金属板60に接触しないようにする。あるいは、必要に応じて、前記スペーサ32の先端に、耐熱性樹脂からなる樹脂板34を設けるようにしてもよい。
【0028】
次に、
図4(B)〜(D)に示す変形例について説明する。上述した
図1(C)及び
図4(A)に示す例では、加熱対象側に設けられた金属板を誘導加熱により発熱させることで、他の部材(樹脂板62)との接着を可能としたが、
図4(B)〜(D)に示す構造とすることによって、加熱対象側に金属板がなくても、樹脂板同士や、樹脂板とベニヤ板等の接着が可能となる。まず、
図4(B)に示す例は、加熱ヘッド26の表面26A側に、スペーサ32を介して金属板66を設けた例である。誘導コイル40Aに電流を流すと、前記金属板66が発熱するため、該金属板66を樹脂板68に接触させることにより、樹脂板68を介して接着剤65が加熱され、樹脂板68,62が接着される。また、加熱ヘッド26側では、金属板66が発熱するが、加熱ヘッド表面26Aとの間にスペーサ32が設けられているため、加熱ヘッド26自体が加熱によって変形することを防止できる。なお、前記樹脂板62,68は一例であって、ベニヤ板同士や、樹脂板とベニヤ板,あるいは、石膏ボードと他の建材等を接着する場合にも適用可能である。
【0029】
図4(C)に示す例は、前記
図4(B)に示す例の応用例であって、前記金属板66を上面に有するキャップ36を、加熱ヘッド26に対して着脱可能としたものである。前記キャップ36の側面36Aの内側には、前記加熱ヘッド26のケース側面に設けた凹部29に嵌る凸部38が設けられている。このとき、金属板66の裏面に、前記スペーサ32を設けるようにしてもよい。
図4(D)に示す例も、前記
図4(B)に示す例の応用例である。
図4(D)に示す加熱ヘッドは、金属板66´の表面に凹凸66Aを設けた例である。このように、凹凸66Aを設けた金属板66´を加熱によって変形可能な素材に接触させることにより、前記凹凸66Aを加熱対象に転写することができる。
【実施例2】
【0030】
次に、
図5〜
図7を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。
図5は、本実施例の電磁誘導加熱装置の全体構成を示すブロック図である。
図6は、本実施例の電源側コネクタとアプリケータ側コネクタの端子配置の一例を示す図である。
図7は、アプリケータの具体例を示す図であり、(A)は側面図,(B)磁界発生ロール断面図,(C)は前記磁界発生ロールの側面図である。上述した実施例1は、消費電力が異なる複数の誘導コイルを使い分けるためのものであって、複数のアプリケータは、それぞれ一つずつの誘導コイルを有する構成としたが、本実施例は、それに加え、前記アプリケータに所望のセンサ手段や撮影手段を設けた例である。
【0031】
図5に示すように、本実施例の電磁誘導加熱システム200は、電磁誘導加熱装置202と、オペレータ250側の端末252により構成されている。前記電磁誘導加熱装置202は、外部電源210と、複数のアプリケータ220A〜220Dとによって構成されている。前記外部電源210は、例えば、インターネット260等によって前記端末252と通信することが可能となっている。前記端末252には、制御部254,表示部256,入力部258等が設けられている。
【0032】
前記外部電源210は、前記複数のアプリケータ220A〜220Dに設けられた誘導コイル228A〜228Dに高周波電流を供給するもので、電源用ケーブル212の先端にはコネクタ部216が設けられている。前記電源用ケーブル212は、本実施例では、2本の電源ケーブルca,ca´と、4本の信号線cb,cd,cd,ceを1本に束ねた複合ケーブルであって、表面は被膜214等によってカバーされている。前記外部電源210は、前記複数のアプリケータ220A〜220Dに設けられた誘導コイル228A〜228Dのうち、もっとも消費電力の高い誘導コイルに足りる高周波電流を供給することができる。
【0033】
前記コネクタ部216は、図示の例では、内側に6つのオス型端子を備えたプラグである。前記コネクタ部216を
図5に矢印F5aで示す方向に見ると、
図6に示すように、6つの端子のうちの中央の二つは、前記電源ケーブルca,ca´と接続する電源用端子ta,ta´、他の4つは、前記信号用ケーブルcb〜ceと接続する信号用端子tb〜tdである。
【0034】
次に、アプリケータ220A〜220Dについて説明する。基本的な構造は同様のため、アプリケータ220Aを例に挙げて説明する。また、アプリケータの具体的な形態については後述する。前記アプリケータ220Aは、ケース222に、電源ボタン224,メモリ226,誘導コイル228A,共振コンデンサ230A,対象物センサ232,コネクタ部240Aを備えている。前記共振コンデンサ230Aによって、前記誘導コイル228Aの消費電力に応じて調整されたうえで、前記誘導コイル228Aに電力が供給される。
【0035】
前記電源ボタン224は、前記共振コンデンサ240A及び誘導コイル228Aへの通電のON/OFFをアプリケータ側で切り替えるためのものである。前記対象物センサ232は、例えば、加熱対象物の有無を検知するものである。該対象物センサ232の検出結果は、前記メモリ226に格納してもよいし、前記外部電源210やオペレータ250側の端末252に送るようにしてもよい。
【0036】
前記コネクタ部240Aは、図示の例では、内側の6つのメス型端子を備えたソケットである。前記コネクタ部240Aを、
図5に矢印F5bで示す方向に見ると、
図6に示すように、電源用端子Ta,Ta´は、中央に配置されており、コネクタ部240Aの右端に、信号用端子Tcが配置されている。一方、前記電源側のコネクタ部216においては、
図6に示すように、一対の電源用の端子ta,ta´は中央に配置されており、対象物センサ用の信号線ccと接続する信号用端子tcは、右端に配置されている。このため、前記アプリケータ220Aのコネクタ部240Aに、外部電源210のコネクタ部216を差し込むだけで、電源ケーブルca,ca´と対象物センサ232用の信号用ケーブルccを、アプリケータ220Aと接続することができる。
【0037】
他のアプリケータ220B〜220Dについても、基本的に同様の構成となっており、アプリケータ220Bでは温度センサ234を搭載し、アプリケータ220Cではカメラ236を搭載し、アプリケータ224Dでは、センサやカメラを搭載していないという点と、これらの搭載の有無に応じてコネクタ部240B〜240D内の端子の配置が異なる点のみが異なる。ただし、本発明では、いずれのアプリケータのコネクタ部240A〜240Dに、前記外部電源210のコネクタ部216を接続しても、電力の供給及び信号の伝達が可能となるように、アプリケータ側の端子配置と、外部電極側の端子配置が設定されている。
【0038】
例えば、
図6に示す例では、外部電源210のコネクタ部216の端子配列は、中央の一対が電源用端子ta,tb、左端の端子が前記対象物センサ232用の信号用端子tc,左側から2番目の端子が、温度センサ234用の信号用端子tb,右端の端子が前記カメラ236用の信号用端子te,右から2番目の端子が、図示しない他のセンサ用の信号用端子tdである。そして、前記アプリケータ220Bには、搭載した温度センサ234用の端子Tbが、
図6に示すように、右から2番目の位置に配置され、前記コネクタ部240Bに前記外部電源210のコネクタ部216を接続することで、電源用端子と温度センサ用の信号用端子が同時に接続される。
【0039】
同様に、前記カメラ236を搭載したアプリケータ230Cのコネクタ部240Cには、
図6に示すように、左端にカメラ用の信号用端子Teが配置されており、前記コネクタ部240Cと前記外部電源210側のコネクタ部216の接続により、電源用端子とカメラ用端子が接続される。前記アプリケータ220Dは、センサやカメラは搭載していないため、
図6に示すように、コネクタ部240Dには、中央に電源用端子Ta,Ta´が配置されているのみであり、前記外部電源側のコネクタ部216との接続により電力の供給が可能となる。
【0040】
<具体例>・・・
図7には、前記アプリケータ220A〜220Dとして利用可能なアプリケータの具体的な形態の一例が示されている。
図7(A)はアプリケータの側面図,
図7(B)は磁界発生ロールの断面図,
図7(C)は磁界発生ロールの側面図である。同図に示すように、アプリケータ300は、ケース302の上面302Aに、取手304と電源ボタン306が設けられており、前記ケース302の内部に、誘導コイルを備えた磁界発生ロール310A,310Bと、該磁界発生ロール310A,310Bに供給する電力を調整する共振コンデンサ320A,320Bが設けられている。このほか、アプリケータ300には、必要に応じて、対象物センサ232,温度センサ234,カメラ236が必要に応じて設けられる。そして、前記ケース302の後部には、前記外部電源210のコネクタ部216と接続するコネクタ部240が形成されている。該コネクタ部330は、電源用の一対の端子部のほか、前記対象物センサ232,温度センサ234,カメラ236のうち、搭載した装備に応じて、それらの信号用端子が、外部電源210側の端子部の位置と合うように配置されている。
【0041】
前記アプリケータ300の内側には、磁界発生ロール310A,310Bの軸314が回転可能かつ昇降可能に支持されている。前記磁界発生ロール310A,310Bは、
図7(B)に示すように、略円柱状の回転ロール312の表面に、複数の誘導コイル318を設けた構造となっている。前記アプリケータ300のケース302の内側上部には、前記誘導コイル318から発生する電磁波の拡散を防止するためのフェライト板319等が必要に応じて設けられている。
図7(B)に示す例では、前記回転ロール312の表面に、前記軸314の円周方向に略等間隔で複数設けられた突起316を中心に、平面渦巻状に誘導コイル318が形成されている。このような磁界発生ロール310A,310Bの表面は、前記誘導コイル318が直に加熱対象に接触しないように耐熱性シート322等により覆われている。
【0042】
また、
図7(C)に示す磁界発生ロール310Cのように、回転ロール312の表面に、複数個の誘導コイル318を並べた列を、複数列設けるようにしてもよい。なお、前記誘導コイル318と回転ロール312の間にも、
図7(B)に示すように、安全対策と電磁波の遮蔽を兼ねてフェライト324等を設けるようにしてもよい。前記磁界発生ロール310A,310Bは、その両端面に設けられた軸314を、前記ケース302の側面302B,302C(302Cは図示せず)に形成した長穴308に収納することにより、回転可能かつ上下動可能にケース302の内側に支持される。
【0043】
前記アプリケータ300の内部の後方(
図7(A)の右側)には、前記磁界発生ロール310A,310Bによって加熱された対象物に対し、圧着処理を施すための圧着ローラ340が設けられている。該圧着ローラ340は、前記ケース302の一対の側面302B,302C間にわたって設けられており、その両端面に設けられた軸344を、前記側面302B,302Cに設けられた長穴350に収納することで、回転可能かつ上下動可能に支持される。なお、
図7(A)に示すように、前記長穴350に前記軸344を付勢するスプリング352を設けるか、あるいは、前記ケース302の内部に前記軸344を付勢するスプリング354を設けることで、対象物に凹凸面があっても圧着が可能となる。以上のような圧着ローラ340は、必要に応じて設ければよく、着脱可能な構成としてもよい。
【0044】
更に、前記アプリケータ300は、
図7(A)に示すように、必要に応じて、対象物センサ232,温度センサ234,カメラ236を備えている。まず、前記対象物センサ232は、前記アプリケータ300を当接させる対象物(図示の例では対象物360)側に、発熱導体があるかどうか、ある場合にはその種類及び位置(深さ)を検出する非接触のセンサである。本実施例では、前記対象物センサ232として、電波を対象物に向けて発信し、該対象物による反射波を受信するセンサを利用している。そして、対象物センサ232による検知結果は、前記コネクタ部の結合により外部電源210側へ送られ、更に、本実施例では、オペレータ250の端末252に送られる。そして、該端末252の制御部254では、前記対象物センサ232による検出結果に応じた最適な加熱条件となるように、前記誘導コイル318へ供給する高周波電流の出力を制御する。
【0045】
ここで、最適な加熱条件とは、例えば、前記誘導コイル318に供給する高周波電流の電流値,周波数,通電時間等である。具体的には、前記アプリケータ300を対象物360に置いたときに、該対象物360に向けて電波を発信し、反射波を受信して、発熱導体(図示の例では、金属層366)があるかどうか、ある場合には、磁界発生ロール310A,310Bからどの程度の深さにあるかを検知して最適な周波数に調整する,電波を発信して金属の種類を特定し、その発熱量を計算して、通電時間を制御するという具合である。なお、以上のように算出された加熱条件の最適値は、必要に応じて前記メモリ226に保存してもよいし、外部電源210や端末252の図示しないメモリに記録してもよい。
【0046】
前記温度センサ234は、前記対象物センサ232の検知結果に基づいて算出された最適な加熱条件を修正するためのもので、前記制御部254は、前記温度センサ234からの出力が所定の温度になったかどうかをモニターし、前記最適な加熱条件を修正する。すなわち、計算値にフィードバックをかけることで、より適切な加熱制御を行うことができる。
【0047】
前記カメラ236は、アプリケータ300の近傍,例えば、前記磁界発生ロール310A,310Bが当接している部位の画像を撮影するものであり、撮影された画像データは、必要に応じて前記メモリ226に格納される。また、必要に応じて、前記当接部位の画像データは、外部電源210やオペレータ250側の端末252に送信して保存したり、前記端末252の表示部256に表示したりしてもよい。そして、前記オペレータ250が、前記表示部256に表示された画像を見ながら、例えば、「周波数をもう少しあげろ」などの指示を前記制御部254に送り、外部電源210から磁界発生ロール310A,310Bに供給する高周波電流の出力を制御するようにしてもよい。いずれにしても、アプリケータ300で取得した画像やセンサの出力結果をオペレータ側に送ることで、過去の作業で培った経験等に基づく指示を取り入れて、より確実な作業をすることができる。なお、前記カメラ236に基づく撮影は、誘導コイル318へ通電している間は自動的に行うようにしてもよいし、図示しない撮影ボタン等により作業者が任意に行うようにしてもよい。
【0048】
次に、前記アプリケータ300を用いたときの、本実施例の作用を説明する。
図7(A)に示すように、対象物360,362を、金属層366を有する接着剤364を挟んで重ね、例えば、前記対象物360の表面に、前記アプリケータ300を当てる。そして、電源ボタン306を押して前記対象物センサ232から、前記対象物360に向けて電波を発信し、上述したように、前記オペレータ250側の端末252で最適な加熱条件を計算し、該計算結果に基づいて、前記外部電源210から前記磁界発生ロール310A,310Bの誘導コイル318へ供給する高周波電流の出力を調整する。
【0049】
前記誘導コイル318に電流が供給されると、前記接着剤364中の金属層366が発熱し、前記接着剤364が加熱されて、加熱された接着剤364が溶けた状態で、前記対象物360が前記圧着ローラ340によって対象物362に向けて押し付けられる。これにより、加熱から圧着までの工程を連続して行うことができる。なお、本実施例では、前記対象物センサ232による検知結果に基づいて高周波電流の出力を制御する際に、前記温度センサ234の出力に基づいてフィードバックをかける。また、前記端末252から、加熱条件等について指示があった場合には、当該指示を再生し、あるいは、当該指示に基づいて加熱条件の修正を行う。
【0050】
このように、実施例2によれば、外部電源210の電源用ケーブル212を、電源ケーブルと信号線の複合ケーブルとし、外部電源側のコネクタ部216の電源用端子及び信号用端子の配置を、複数のアプリケータ220A〜220Dのうちのいずれのアプリケータのコネクタ部240A〜240Dと接続したときでも、アプリケータ側のコネクタ部の電源用端子及び信号用端子と接続可能な配置とした。このため、上述した実施例1の効果に加え、センサやカメラを搭載したアプリケータであっても、ケーブル回りの構造をシンプルにし、かつ、複数のアプリケータを簡単に使い分けることができる。また、アプリケータ220A〜220D側に、各種センサやカメラ等を設けて、その出力信号等を外部に送信し、検出結果に応じた加熱条件の設定・修正等を指示することも可能となる。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法も一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例1で示した加熱ヘッド26の形状及び寸法も一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例1では円形としたが、直方体状の加熱ヘッドとしてもよい。直方体状の加熱ヘッド(やアプリケータ)の場合は、内部に設ける誘導コイルとして、後述する
図3(D-1)〜(D-3)に示す誘導コイル110A〜110Cを設けるようにしてもよい。
(2)前記実施例で示したコネクタ部も一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜設計変更可能である。たとえば、前記実施例1では、外部電源側をプラグとし、アプリケータ側をソケットとしたが逆であってもよい。また、端子のオスとメスを逆にしてもよいし、オス・メス以外の接続形態を利用してもよい。
(3)前記実施例で示したアプリケータの数も一例であり、20〜30個のアプリケータを使い分けるようにするなど、必要に応じて適宜増減してよい。
【0052】
(4)前記実施例1で示した平面渦巻状の誘導コイル40A〜40Eも一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜変更可能である。例えば、
図3(D-1)に示す誘導コイル110Aは、直方体状のコア112Aに巻線114を巻回した構造となっている。また、
図3(D-2)に示す誘導コイル110Bは、略コ字状のコア112Bに巻線114が巻き付けられた形状であり、
図3(D-3)に示す誘導コイル110Cは、略E字状のコア112Cに巻線114が巻き付けられた形状である。このほかに、平面状コイルをアプリケータや加熱ヘッド内に複数備えるような構成としてもよい。
【0053】
例えば、
図9に示すアプリケータ400は、ケース402の上面402Aに取手404が設けられ、底面402Bの内側には、平面渦巻状の誘導コイル406A,406Bが設けられている(共振コンデンサは図示を省略している)。また、ケース402には、側面402C,402Dに軸412によって回転可能に支持された駆動ローラ410が設けられている。該駆動ローラ410は、前記底面402Bの一端側(
図9の例では右側)に形成された開口部408に配置されている。また、前記軸412は、ケース402の側面402C,402Dに形成された長穴414に支持されており、加熱対象に対して押し付け可能となっている。前記駆動ローラ410を加熱対象に押し付けることで、図示しないモータ等により駆動ローラ410が回転して、例えば、
図9に矢印F9で示す方向にアプリケータ400が自走する。手作業による加熱の場合、作業者によりアプリケータを滑らせる速度が異なり、加熱ムラが生じることがあるが、このように駆動ローラ410を設けて自走させることにより、加熱ムラを抑制して加熱の均一化を図ることができる。また、前記アプリケータ400では、2つの誘導コイル406A,406Bを設けることとしたが、1つの誘導コイルとしてもよいし、3つ以上の誘導コイルを設けてもよい。更に、誘導コイルの数や消費電力に応じて、共振コンデンサを必要に応じて一つ以上設けるようにしてよい。
【0054】
(5)本発明で用いる外部電源としては、固定型電源であってもよいし、前記実施例1で示したような携帯型電源であってもよい。
【0055】
(6)前記実施例では、アプリケータのケースに加熱ヘッドを固定することとしたが、これも一例であり、消費電力が同じ他の誘導コイルを備えた加熱ヘッドをアプリケータに対して着脱可能な構成とすることで、更に使用範囲を広げることができる。
(7)前記実施例1では、加熱対象側の金属板60を利用して誘導加熱を行うこととしたが、
図4(B)〜(D)に示すように、加熱ヘッド26側に金属板66,66´を設けることにより誘導加熱する構成としてもよい。あるいは、接着剤64が導電性材料を含むものであれば、加熱ヘッド26側及び接着対象側のいずれにも金属板を設けることなく接着が可能である。また、本発明は、金属板のみならず、木材,合板,樹脂板,タイルの接着などにも利用でき、更に、接着のみならず、変形などの多目的な加工にも適用可能である。
【0056】
(8)前記実施例2では、
図5及び
図6に示す例において、一つのアプリケータには、一つのセンサやカメラを設けることとしたが、これも一例であり、一つのアプリケータに複数のセンサやカメラを設けることを妨げるものではなく、電源側コネクタ及びアプリケータ側コネクタの端子の配置を適宜設定することで、上述した実施例2と同様の効果が得られる。また、前記実施例2では、6端子構造を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、使用するアプリケータの数や種類に応じて適宜端子数やその配列は変更可能である。
(9)前記実施例で示した回路構成も一例であり、共振コンデンサは直列に配置してもよいし、直並列に配置するようにしてもよい。また、一つのアプリケータに、必要に応じて複数の共振コンデンサを設けるようにしてもよい。
(10)前記実施例2で示した
図7のアプリケータ300も一例であり、同図に示した形態に限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記圧着ローラ340は一例であり、該圧着ローラ340は必要に応じて設ければよく、用途に応じて着脱できる構成としてもよい。
【0057】
(11)前記実施例2では、電源ケーブル212を外部電源側に固定し、コネクタ部216がいずれのアプリケータ220A〜220Dのコネクタ部240A〜240Dにも接続可能な構成としたが、これも一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜設計変更可能である。例えば、
図8(A)に示す例は、アプリケータ側に電源用ケーブルを設けた例であり、アプリケータ220A側に電源用ケーブル212Aを設け、その先端に、前記コネクタ部240Aと同様の端子配置のコネクタ部240A´を設けている。前記電源用ケーブル212Aは、電源ケーブルca,ca´と、対象物センサ232用の信号線ccを束ねた複合ケーブルとなっている。他のアプリケータ220B〜220Dについても同様に、電源用ケーブルとコネクタ部を設ける。そして、外部電源210側には、前記コネクタ部216と同様の端子配置のコネクタ部216´を設ける。このような構成とすることで、アプリケータ側の電源ケーブルを外部電源210に接続するだけで、簡単にアプリケータの交換が可能である。なお、図示は省略するが、前記電源ケーブルとアプリケータを着脱可能な構成としてもよい。
【0058】
あるいは、
図8(B)に示す例のように、アプリケータ側に一端が接続される電源用ケーブル212´を、前記
図5に示す例のように、電源ケーブルca,ca´と全ての信号線cb〜ceを備え、他端に前記コネクタ部216に対応する端子配置のコネクタ部217を設け、外部電源210側のコネクタ部216´に接続する構成としてもよい。また、
図8(C)に示すように、前記電源用ケーブル212´の両端に、コネクタ部216,217を設け、外部電源210側には、コネクタ部216´を設けるようにしてもよい。
図8(B)に示す例によれば、全てのアプリケータに同一の電源用ケーブル212´を使用することができ、
図8(C)に示す例によれば、前記電源用ケーブル212´を一つのみ用いて複数のアプリケータと外部電源間で付け替えて使用することができる。
【0059】
(12)前記実施例では、いずれもアプリケータに取手を設けたハンディタイプとしたが、これも一例であり、例えば、ロッド(柄)の先端に設けて使用してもよいし、ロボットや各種加工装置等に取り付けて使用してもよい。
(13)前記実施例2では、外部電源210とインターネット260で接続可能な端末252側の制御部254によって、アプリケータに設けたセンサ出力やカメラの撮影画像に基づき最適条件を算出することとしたが、
図5に示すように、外部電源210側に同様の機能を有する制御部218を設けるようにしてもよい。また、前記実施例2で示したセンサの種類や、その出力に基づく制御も一例であり、必要に応じて適宜設計変更可能である。
(14)前記実施例では、対象物同士を接着する例を示したが、接着されている対象物同士を剥がしたり、解体したりするために加熱してもよい。また、本発明は、天井,壁,床等の作業のほか、構造物、建築物全般の床・壁・天井や、トンネル・下水管・橋梁・防音壁等の新設や補修等に適用可能である。特に、実施例2の形態によれば、遠隔指示や遠隔操作が可能であるため、危険作業になる場所・部位等の作業に好適である。