特許第6840533号(P6840533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電工株式会社の特許一覧

特許6840533樹脂組成物、電線ケーブルおよびマスターバッチ
<>
  • 特許6840533-樹脂組成物、電線ケーブルおよびマスターバッチ 図000003
  • 特許6840533-樹脂組成物、電線ケーブルおよびマスターバッチ 図000004
  • 特許6840533-樹脂組成物、電線ケーブルおよびマスターバッチ 図000005
  • 特許6840533-樹脂組成物、電線ケーブルおよびマスターバッチ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840533
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、電線ケーブルおよびマスターバッチ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20210301BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20210301BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20210301BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20210301BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20210301BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08K9/04
   C08L23/06
   C08J3/22CES
   H01B3/44 F
   H01B7/02 F
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-251845(P2016-251845)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-104549(P2018-104549A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加治 亘章
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−290316(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/197842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン中にフラーレンが分散しており、
前記フラーレンの含有量が0.0001質量%〜0.1質量%であり、
前記フラーレンは、ポリスチレンで表面処理されている樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンは、低密度ポリエチレンである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンは、架橋されている請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記フラーレンは、C60および/またはC70を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記フラーレンは、C70より大きい高次のフラーレンを含む請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂組成物が、絶縁層として用いられている電線ケーブル。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造に用いられるマスターバッチであって、
前記ポリオレフィン中にフラーレンが分散しており、
前記フラーレンは、ポリスチレンで表面処理されているマスターバッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、電線ケーブルおよびマスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低密度ポリエチレン(以下、LDPEとする)を架橋した架橋ポリエチレンにフラーレンを添加した樹脂組成物を、電線ケーブルの絶縁層として用いることが提案されている。
【0003】
特許文献1には、フラーレンは、電圧安定剤として作用し、フラーレンが添加されている樹脂組成物は、フラーレンが添加されていない樹脂組成物に比べて、絶縁特性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/197842号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】MIKHAIL V. KOROBOV and ALLAN L. SMITH, "SOLUBILITY OF THE FULLERENES", FULLERENES Chemistry, Physics, and Technology, edited by KARL M. KADISH, RODNEY S. RUOFF, pp. 53-89
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、JIS法C2110−1に準拠した方法により測定される、LDPEに対してフラーレンを添加した樹脂組成物を成形した樹脂シートの絶縁破壊電圧は、フラーレンを添加していないバージンのLDPEを成形した樹脂シートの絶縁破壊電圧よりも、概ね低い値であった(後述の比較例3〜6参照)。
【0007】
更に、フラーレンの含有量が3質量%である樹脂組成物を成形した樹脂シートは、多くの凝集粒が光学顕微鏡で観察された(図4参照)。
【0008】
また、樹脂組成物中のフラーレンの含有量に対して、樹脂シートの絶縁破壊電圧の値に顕著な傾向がなく(図2参照)、樹脂シートに多くの凝集粒が観察されたことから、フラーレンの分散状態が悪いため、フラーレンを添加しても、樹脂シートの絶縁破壊電圧が高くならないと推定された。
【0009】
ここで、フラーレンは、多くの単体炭素がある中で唯一の分子として知られており、フラーレンの大きさは、約1nmであるので、LDPE中に分子状でフラーレンが分散していると、光学顕微鏡では、フラーレンが観察されることはないと考えられる。
【0010】
また、フラーレンは、溶媒に唯一溶解する炭素の同素体であることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0011】
非特許文献1によると、フラーレンは、芳香族炭化水素には良く溶解し、ハロゲン化炭化水素に少し溶解する。
【0012】
しかしながら、フラーレンは、飽和炭化水素、アルコールおよびその他の極性溶媒には、ほとんど溶解しない。
【0013】
このことから、フラーレンは、飽和炭化水素で構成されるLDPE中に分散しにくいこと、すなわち、樹脂シート中のフラーレンの分散状態が悪いことが推定される。
【0014】
一般に、樹脂組成物の絶縁破壊電圧を低下させる要因は残存する微量不純物や気泡などとされている。樹脂シート中のフラーレンの分散状態が悪いと、凝集したフラーレンが微量不純物と同じような役割をし、樹脂シートの絶縁破壊電圧を低くしたと考えられる。また、樹脂シート中のフラーレンの分散状態を良くすると、樹脂シートの絶縁破壊電圧を高くすることができると考えた。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、樹脂シートの絶縁破壊電圧を向上させることが可能な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)ポリオレフィン中にフラーレンが分散しており、前記フラーレンの含有量が0.0001質量%〜0.1質量%であり、前記フラーレンは、ポリスチレンで表面処理されている樹脂組成物。
(2)前記ポリオレフィンは、低密度ポリエチレンである(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記ポリオレフィンは、架橋されている(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
(4)前記フラーレンは、C60および/またはC70を含む(1)から(3)のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(5)前記フラーレンは、C70より大きい高次のフラーレンを含む(1)から(4)のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載の樹脂組成物が、絶縁層として用いられている電線ケーブル。
(7)(1)から(5)のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造に用いられるマスターバッチであって、前記ポリオレフィン中にフラーレンが分散しており、前記フラーレンは、ポリスチレンで表面処理されているマスターバッチ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂シートの絶縁破壊電圧を向上させることが可能な樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1〜5、比較例1、2の樹脂組成物中のフラーレンの含有量に対する樹脂シートの絶縁破壊電圧の関係を示す図である。
図2】比較例3〜5のフラーレンの樹脂組成物中のフラーレンの含有量に対する樹脂シートの絶縁破壊電圧の関係を示す図である。
図3】比較例2の樹脂組成物を成形した樹脂シートの光学顕微鏡写真である。
図4】比較例6の樹脂組成物を成形した樹脂シートの光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る樹脂組成物について説明する。
【0020】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、ポリオレフィン中にフラーレンが分散しており、フラーレンの含有量は、0.0001質量%〜0.1質量%であり、0.0003質量%〜0.03質量%であることがより好ましく、0.001質量%〜0.01質量%であることがさらに好ましい。ここで、フラーレンは、ポリスチレンで表面処理されている。これにより、ポリオレフィン中にフラーレンが均一に分散するようになる。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲において、フラーレンの含有量とは、ポリスチレンを含まないフラーレンのみの含有量を意味する。
【0022】
ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)が用いられる。このとき、ポリオレフィンは、架橋されていてもよい。
【0023】
尚、本実施形態においては、LDPE以外のポリオレフィンとして、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどを用いてもよい。
【0024】
また、表面処理されていないフラーレンは、ポリオレフィン中に分散しにくいので、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンが用いられる。
【0025】
例えば、フラーレンをポリスチレンで表面処理すると、ポリスチレンの有するベンゼン環がフラーレンの側に向き、反対側にアルキル鎖が向く、フラーレン−ポリスチレン複合体を形成する。すなわち、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンは、外側にアルキル鎖が向くため、ポリオレフィンとのなじみが良くなる。その結果、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンは、ポリオレフィン中に均一に分散しやすくなる。
【0026】
ここで、フラーレンは、C60であってもよいし、C70であってもよい。また、フラーレンは、C70より大きい高次のフラーレンでもよい。さらに、フラーレンは、それらの混合物であってもよい。
【0027】
フラーレンは、有機溶媒を燃焼した煤から抽出することができ、C60やC70と個々の成分に精製するにしたがって価格が高くなる。このため、煤から抽出した混合物のフラーレンは、比較的安価であり、容易に入手することが可能である。
【0028】
フラーレンは、電子受容体としての特徴がC60、C70、高次のフラーレンの全てに共通した特徴であることから、1種類のフラーレンであってもよいし、複数種のフラーレンの混合物であってもよい。
【0029】
一方、ポリスチレンは、アルキル鎖にベンゼン環を有する構造であり、非対称な構造であるので、電場に曝されると分極しやすい。
【0030】
そのため、樹脂組成物中のポリスチレンの含有量が多くなるに従って、樹脂シートの絶縁破壊電圧が低くなる。その結果、フラーレンを添加した樹脂組成物にさらにポリスチレンを添加すると、樹脂シートの絶縁破壊電圧がさらに低くなる(後述の比較例4〜6の樹脂組成物を成形した樹脂シートの絶縁破壊電圧の値よりも低くなる)。また、ポリスチレンを添加した樹脂組成物にさらにフラーレンを添加しても、低くなった絶縁破壊電圧の回復は見込めない(後述の比較例4〜6の樹脂シートの樹脂組成物を成形した樹脂シートの絶縁破壊電圧と同等の値に至らない)。
【0031】
また、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンをLDPEに過剰に添加すると、ポリスチレンの効果が優勢になり、フラーレンを添加していないバージンのLDPE(後述の比較例3)よりも、樹脂シートの絶縁破壊電圧が小さくなる(図1参照)。
【0032】
一方、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンの添加量を次第に少なくすると、樹脂組成物中のフラーレンの含有量が0.001質量%程度になるまで、樹脂シートの絶縁破壊電圧は、片対数グラフで直線的に大きくなる(図1参照)。
【0033】
樹脂組成物中のフラーレンの含有量を0.001質量%程度より更に少なくすると、ポリスチレンの影響は無視できる程度になるが、フラーレンの効果も小さくなり、樹脂シートの絶縁破壊電圧は、直線的に小さくなる(図1参照)。
【0034】
フラーレンを添加していないバージンのLDPEよりも樹脂シートの絶縁破壊電圧が大きいのは、樹脂組成物中のフラーレンの含有量が0.0001質量%〜0.1質量%の範囲である(図1参照)。
【0035】
そして、フラーレンの含有量が0.003質量%である樹脂組成物を成形した樹脂シートの絶縁破壊電圧が最大値となった(図1参照)。
【0036】
尚、フラーレンをポリスチレンで表面処理する方法としては、例えば、ポリスチレンのトルエン溶液と、フラーレンのトルエン溶液とを混合した後、混合液をメタノールに投入して、固形分を分取する方法などを挙げられる。
【0037】
また、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンをポリオレフィン中に分散させる方法としては、特に限定されないが、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンとポリオレフィンのペレットをドライブレンドして二軸押出機で混練する方法などが挙げられる。
【0038】
また、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンを高濃度で樹脂組成物に添加しても分散性はよい(図3参照)。このため、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンを含み、フラーレンの含有量が0.1質量%を超える樹脂組成物としての、マスターバッチをあらかじめ作製し、マスターバッチをポリオレフィンのペレットで希釈した後、混練して、樹脂組成物としてもよい。
【0039】
樹脂組成物およびマスターバッチの形態としては、特に限定されないが、ペレット等が挙げられる。
【0040】
樹脂組成物の用途としては、特に限定されないが、電線ケーブルの絶縁層等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の実施例を示す。
【0042】
[実施例1]
(ポリスチレンで表面処理されているフラーレンの作製)
数平均分子量約20万のポリスチレンであるディックスチレンCR−2600(DIC社製)と、C6061質量%、C7028質量%、C70より大きい高次のフラーレン11質量%を含有するフラーレン混合物ナノムミックス(フロンティアカーボン社製)を、トルエン(関東化学社製)に、それぞれ溶解させて、ポリスチレンの1質量%溶液およびフラーレン混合物の0.25質量%溶液を作製した。
【0043】
それぞれの溶液を混合して混合液を作製した。混合液の5倍以上の体積のメタノール(純正化学社製)に混合液を投入した後、孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過した。
【0044】
濾別されたケーキを約70℃の真空乾燥機で乾燥させ、乾燥後の固形物を解砕した。得られた解砕物、すなわち、ポリスチレンで表面処理されているフラーレン中のフラーレンの含有量が約20質量%であった。これは、フラーレンの表面をポリスチレンが十分覆う量であると考えられる。
【0045】
この根拠を以下に説明する。
【0046】
数平均分子量約20万のポリスチレンは、分子量99のスチレンユニットを約2000個有し、スチレンユニットは、ベンゼン環を1個有する。C60は、二十面体であり、1つの面をベンゼン環1個で覆うと、1分子のC60につき、スチレンユニットが20個必要となる。このため、約2000個のスチレンユニット、すなわち、数平均分子量約20万のポリスチレン1個で完全に覆うことができるC60は約100個となる。C60の分子量は720であるので、数平均分子量約20万のポリスチレン約20万質量部で完全に覆うことができるC60は7.2万質量部となる。その結果、数平均分子量約20万のポリスチレンで表面処理されているC60中のC60の含有量は、
7.2万/(7.2万+20万)×100=26質量%
となる。
【0047】
70は、37面体であるので、C60と同様に計算すると、数平均分子量約20万のポリスチレンで表面処理されているC70中のC70の含有量は、18質量%となる。さらに高次フラーレンについても同様である。
【0048】
(樹脂組成物の作製)
まず、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンと、LDPEであるノバテックLD ZF33(日本ポリエチレン社製)をドライブレンドし、混合物を作製した。このとき、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンの添加量を調整して、混合物中のフラーレンの含有量を0.0003質量%とした。
【0049】
次に、L/D=30の二軸押出機KZW15−30MG(テクノベル社製)に混合物を投入して混練し、樹脂組成物(ペレット)を作製した。
【0050】
このとき、絶縁破壊電圧は、微量なコンタミが影響するので、混合物を混練する前に、二軸押出機を分解掃除した後、バージンのポリエチレンを60分間流して、クリーンな状態で混合物を混練した。
【0051】
また、樹脂の劣化を防止するために、アルゴンガスをパージしながら、混合物を混練した。
【0052】
(実施例2〜5)
樹脂組成物を作製する際に、混合物中のフラーレンの含有量を、それぞれ0.001質量%、0.003質量%、0.03質量%、0.1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0053】
(比較例1、2)
樹脂組成物を作製する際に、混合物中のフラーレンの含有量を、それぞれ0.3質量%、3.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0054】
(比較例3)
樹脂組成物を作製する際に、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンを用いず、以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0055】
(比較例4〜6)
樹脂組成物を作製する際に、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンの代わりに、表面処理されていないフラーレンとして、フラーレン混合物ナノムミックス(フロンティアカーボン社製)を用いた以外は、それぞれ実施例4、5、比較例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0056】
(樹脂シートの作製)
樹脂組成物(ペレット)を70℃の熱風乾燥器で3時間乾燥させた後、150mm×150mm×1mmの枠にペレットを配置して、160℃でプレス成形し、樹脂シートを作製した。
【0057】
(絶縁破壊電圧)
まず、絶縁破壊電圧を測定する予定の個所の樹脂シートの厚みを測定した。次に、樹脂シートをシリコン油浴中に入れて、樹脂シートの厚み方向から上下に直径25mmの電極で挟み、絶縁破壊電圧を測定した。
【0058】
ここで、絶縁破壊電圧の測定方法は、JIS法のC2110−1に準拠し、20秒段階法で絶縁破壊電圧を測定した。具体的には、所定の電圧で20秒間絶縁破壊されなければ、昇圧するステップを繰り返し、絶縁破壊される前に設定した電圧を絶縁破壊電圧とした。
【0059】
なお、20kVまでは1kVずつ昇圧し、20kV以降は2kVずつ昇圧した。
【0060】
また、絶縁破壊試験装置YST−243−100RH0(ヤマヨ試験器社製)で絶縁破壊電圧を測定した。
【0061】
さらに、絶縁破壊電圧を測定する雰囲気を23±2℃、50±5%RHとした。
【0062】
表1に、樹脂シートの絶縁破壊電圧の測定結果を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1から、実施例1〜5の樹脂組成物を成形した樹脂シートは、絶縁破壊電圧が高いことがわかる。
【0065】
これに対して、比較例1〜3の樹脂組成物は、フラーレンの含有量が、それぞれ0.3、3、0質量%であるため、樹脂シートの絶縁破壊電圧が低い。
【0066】
また、比較例4〜6の樹脂組成物は、フラーレンが表面処理されていないため、樹脂シートの絶縁破壊電圧が低い。
【0067】
図1に、実施例1〜5、比較例1、2の樹脂組成物中のフラーレンの含有量に対する樹脂シートの絶縁破壊電圧の関係を示す。
【0068】
図2に、比較例3〜5の樹脂組成物中のフラーレンの含有量に対する樹脂シートの絶縁破壊電圧の関係を示す。
【0069】
(フラーレンの分散性)
樹脂組成物(ペレット)を160℃でプレス成形して、厚さ100μmの樹脂シートを作製し、樹脂シートの表面を光学顕微鏡で観察し、フラーレンの分散性を評価した。
【0070】
図3に、比較例2の樹脂組成物を成形した樹脂シートの光学顕微鏡写真を示す。
【0071】
図3から、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンの凝集粒がほとんど形成されておらず、ポリスチレンで表面処理されているフラーレンは、分散性が良好であることがわかる。
【0072】
図4に、比較例6の樹脂組成物を成形した樹脂シートの光学顕微鏡写真を示す。
【0073】
図4から、表面処理されていないフラーレンの多くの凝集粒が形成されており、表面処理されていないフラーレンは、分散性は悪いことがわかる。
図1
図2
図3
図4