(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0010】
(射出成形機)
図1は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図1〜
図2に示すように、射出成形機は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700とを有する。以下、射出成形機の各構成要素について説明する。
【0011】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中左方向)を後方として説明する。
【0012】
型締装置100は、金型装置10の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
【0013】
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
【0014】
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
【0015】
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型11と可動金型12とで金型装置10が構成される。
【0016】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0017】
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0018】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられる。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0019】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0020】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0021】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0022】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0023】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0024】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
【0025】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータ160のエンコーダ161などを用いて検出する。エンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0026】
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0027】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
【0028】
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(速度の切替位置、型閉完了位置、型締位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。
【0029】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0030】
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化などにより金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0031】
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0032】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、ベルトやプーリなどで構成される回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0033】
尚、回転伝達部185は、ベルトやプーリなどの代わりに、歯車などで構成されてもよい。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。
【0034】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0035】
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
【0036】
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0037】
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0038】
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
【0039】
間隔Lは、型厚調整モータ183のエンコーダ184を用いて検出する。エンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。エンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。
【0040】
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
【0041】
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
【0042】
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
【0043】
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
【0044】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設される。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。タイバーは、上下方向に延びており、下プラテンを貫通し、上プラテンとトグルサポートとを連結する。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
【0045】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0046】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中左方向)を後方として説明する。
【0047】
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
【0048】
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
【0049】
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0050】
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0051】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
【0052】
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータ210のエンコーダ211を用いて検出する。エンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0053】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中右方向)を後方として説明する。
【0054】
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチされ、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
【0055】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0056】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(
図1および
図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0057】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
【0059】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0060】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)まで後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0061】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)まで前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0062】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0063】
尚、射出装置300は、逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0064】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0065】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0066】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の
圧力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
【0067】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0068】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、充填工程、保圧工程、計量工程などを行う。
【0069】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータ350のエンコーダ351を用いて検出する。エンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0070】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。
【0071】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
【0072】
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクルの短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0073】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータ340のエンコーダ341を用いて検出する。エンコーダ341は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0074】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0075】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0076】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中右方向)を後方として説明する。
【0077】
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0078】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンク413から作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0079】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0080】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。ピストンロッド433が前室435を貫通しているため、前室435の断面積は後室436の断面積より小さい。
【0081】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0082】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
【0083】
第1リリーフ弁441は、第1流路401内の圧力が設定値を超えた場合に開き、第1流路401内の余分な作動液をタンク413に戻して、第1流路401内の圧力を設定値以下に保つ。
【0084】
第2リリーフ弁442は、第2流路402内の圧力が設定値を超えた場合に開き、第2流路402内の余分な作動液をタンク413に戻して、第2流路402内の圧力を設定値以下に保つ。
【0085】
フラッシング弁443は、前室435の断面積と後室436の断面積との差に起因する作動液の循環量の過不足を調整する弁であり、例えば
図1および
図2に示すように3位置4ポートのスプール弁で構成される。
【0086】
第1チェック弁451は、第1流路401内の圧力がタンク413内の圧力よりも低い場合に開き、タンク413から第1流路401に作動液を供給する。
【0087】
第2チェック弁452は、第2流路402内の圧力がタンク413の圧力よりも低い場合に開き、タンク413から第2流路402に作動液を供給する。
【0088】
電磁切替弁453は、液圧シリンダ430の前室435と液圧ポンプ410の第1ポート411との間の作動液の流れを制御する制御弁である。電磁切替弁453は、例えば第1流路401の途中に設けられ、第1流路401における作動液の流れを制御する。
【0089】
電磁切替弁453は、例えば
図1および
図2に示すように2位置2ポートのスプール弁で構成される。スプール弁が第1位置(
図1および
図2中左側の位置)の場合、前室435と第1ポート411との間の両方向の流れが許容される。一方、スプール弁が第2位
置(図1および
図2中右側の位置)の場合、前室435から第1ポート411への流れが制限される。この場合、第1ポート411から前室435への流れは制限されないが、制限されてもよい。
【0090】
第1圧力検出器455は、前室435の液圧を検出する。前室435の液圧によってノズルタッチ圧力が生じるため、第1圧力検出器455を用いてノズルタッチ圧力が検出できる。第1圧力検出器455は、例えば第1流路401の途中に設けられ、電磁切替弁453を基準として前室435側の位置に設けられる。電磁切替弁453の状態に関係なく、ノズルタッチ圧力が検出できる。
【0091】
第2圧力検出器456は、第1流路401の途中に設けられ、電磁切替弁453を基準として第1ポート411側の位置に設けられる。第2圧力検出器456は、電磁切替弁453と第1ポート411との間における液圧を検出する。電磁切替弁453が第1ポート411と前室435との間の両方向の流れを許容する状態の場合、第1ポート411と電磁切替弁453との間における液圧と、電磁切替弁453と前室435との間における液圧とは等しい。よって、この状態の場合、第2圧力検出器456を用いてノズルタッチ圧力が検出できる。
【0092】
尚、本実施形態では、第1流路401の途中に設けられる圧力検出器を用いてノズルタッチ圧力を検出するが、例えばノズル320に設けられるロードセルなどを用いてノズルタッチ圧力を検出してもよい。つまり、ノズルタッチ圧力を検出する圧力検出器は、移動装置400、射出装置300のいずれに設けられてもよい。
【0093】
尚、本実施形態では、移動装置400として、液圧シリンダ430が用いられるが、本発明はこれに限定されない。
【0094】
(制御装置)
制御装置700は、
図1〜
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0095】
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。操作画面は、射出成形機の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機の設定(設定値の入力を含む)などを行う。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
【0096】
(射出装置の構造)
図3は、一実施形態による射出装置の構造の一例を示す上面図である。
図4は、
図3のIV−IV線に沿った射出装置の断面図である。
図5は、
図3のV−V線に沿った射出装置の断面図である。
【0097】
射出装置300は、シリンダ310の後端部を保持する前方サポート302と、前方サポート302の後方に設けられる後方サポート303とを有する。前方サポート302および後方サポート303は、スライドベース301上に固定される。
【0098】
前方サポート302と後方サポート303との間には、可動プレート304が進退自在に設けられる。可動プレート304のガイド305は、前方サポート302と後方サポート303との間に架け渡される。尚、ガイド305は、スライドベース301上に敷設されてもよい。
【0099】
計量モータ340は、可動プレート304に組付けられてよい。計量モータ340の回転運動は、ベルトやプーリなどの回転伝達機構342によってスクリュ330に伝達される。尚、計量モータ340は、スクリュ330の延長軸に直結されてもよく、スクリュ330と同一直線上に配されてもよい。
【0100】
射出モータ350は、後方サポート303に組付けられてよい。射出モータ350の回転運動は、運動変換機構370によって可動プレート304の直線運動に変換されたうえで、スクリュ330に伝達される。
【0101】
運動変換機構370は、射出モータ350によって回転させられる回転伝達軸371と、回転伝達軸371の回転によって回転させられるねじ軸372と、ねじ軸372に螺合され、ねじ軸372の回転によって進退させられるねじナット373とを有する。
【0102】
回転伝達軸371は、例えば、射出モータ350の回転子の内部において回転子とスプライン結合される。回転伝達軸371は、外周部に、周方向に間隔をおいて複数のキーを有する。一方、射出モータ350の回転子は、内周部に、複数のキーが摺動自在に挿入される複数のキー溝を有する。キーの数やキー溝の数は1つでもよい。
【0103】
尚、本実施形態の回転伝達軸371は、射出モータ350の回転子の内部において回転子とスプライン結合されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、回転伝達軸371は、射出モータ350の回転子と摩擦力で結合されてもよい。この場合、回転伝達軸371と回転子との間に、くさびなどが打ち込まれてもよい。
【0104】
回転伝達軸371は、ねじ軸372と一体に形成されてもよいし、ねじ軸372と別に形成され、ねじ軸372と連結されてもよい。
【0105】
回転伝達軸371やねじ軸372は、
図5に示すように軸受374、軸受374の外輪を保持する軸受ホルダ375を介して、後方サポート303に対し進退不能に且つ回転自在に組付けられる。一方、ねじナット373は、可動プレート304に対し固定される。
【0106】
運動変換機構370、軸受374、軸受ホルダ375などで運動変換機構アセンブリが構成される。運動変換機構アセンブリは、予め組立てられたうえで、射出モータ350を介して後方サポート303に組付けられる。例えば射出モータ350はボルトなどで後方サポート303に固定され、軸受ホルダ375は射出モータ350の前フランジ355(
図6(a)参照)にインロー嵌合される。前フランジ355は、前後方向に延びる複数の穴壁面395、396と、複数の穴壁面395、396の間に段差を形成する段差面397とを有する。前フランジ355の前側の穴壁面395と軸受ホルダ375の外周面とが接触し、且つ、前フランジ355の段差面397と軸受ホルダ375の後端面とが接触する。これにより、運動変換機構アセンブリと射出モータ350の芯出しと前後方向位置決めがなされる。
【0107】
尚、射出モータ350の前フランジ355(より詳細には後述の前フランジ本体部391)は、後方サポート303にインロー嵌合されてもよい。例えば、後方サポート303は、前後方向に延びる複数の穴壁面と、複数の穴壁面の間に段差を形成する段差面を有する。後方サポート303の後側の穴壁面と前フランジ355の外周面とが接触し、且つ、後方サポート303の段差面と前フランジ355の前端面とが接触する。これにより、後方サポート303と射出モータ350の芯出しと前後方向位置決めがなされる。
【0108】
射出モータ350を駆動して回転伝達軸371を回転させると、ねじ軸372が回転させられ、ねじナット373が進退させられる。これにより、可動プレート304が進退して、シリンダ310の内部においてスクリュ330が進退させられる。
【0109】
射出モータ350および運動変換機構370は、
図3に示すように、スクリュ330の中心線を中心に対称に配されてよい。尚、射出モータ350および運動変換機構370の数は1つでもよく、射出モータ350および運動変換機構370はスクリュ330の中心線上に配されてもよい。
【0110】
図6は、第1実施例による射出装置の要部と、第2実施例による射出装置の要部とを比較する断面図である。
図6(a)は、第1実施例による射出装置の要部を示す断面図であって、
図5に示す射出装置の一部を拡大して示す断面図である。
図6(b)は、第2実施例による射出装置の要部を示す断面図である。
【0111】
射出モータ350は、固定子352と、回転子353と、固定子352に対し回転子353を回転自在に支持するモータ軸受354と、前側のモータ軸受354を保持する前フランジ355と、後側のモータ軸受354を保持する後フランジ356とを有する。固定子352は、固定子352よりも前方の前フランジ355と、固定子352よりも後方の後フランジ356とで挟んで保持される。
【0112】
固定子352は、例えば、固定子コア381、および固定子コイル382を有する。固定子コア381は、電磁鋼板を積層したものであってよい。固定子コイル382は、回転磁界を形成するものである。固定子コイル382は、固定子コア381のスロット内に配設される。尚、固定子コイル382の代わりに、永久磁石が用いられてもよい。
【0113】
回転子353は、例えば、回転子コア383、および磁石部としての永久磁石384を有する。回転子コア383は、前後両端部においてモータ軸受354の内輪を保持する。回転子コア383の中央部には永久磁石384が取り付けられる。永久磁石384は、固定子コイル382の回転磁界によって回転させられるものである。永久磁石384は、回転子コア383の外周に取り付けられる。尚、磁石部として永久磁石の代わりに電磁石が用いられてもよい。
【0114】
モータ軸受354は、固定子352に対し回転子353を回転自在に支持する。モータ軸受354は、回転子353の前後両端部に、それぞれ設けられる。モータ軸受354の数は、
図6(a)では2つであるが、3つ以上でもよい。モータ軸受354は、ねじ軸372の軸受374とは別に設けられてよい。
【0115】
前フランジ355は、回転子353の前端部を回転自在に支持するモータ軸受354を保持する。前フランジ355は、
図6(a)に示すように、リング状の前フランジ本体部391と、前フランジ本体部391から後方に突出する前フランジ外輪保持部392とを有する。前フランジ本体部391は、固定子コイル382よりも前方に設けられ、後方サポート303の後面に取付けられる。一方、前フランジ外輪保持部392は、固定子コイル382よりも前方から固定子コイル382の径方向内側に挿入されており、回転子353の前端部を回転自在に支持するモータ軸受354の外輪を保持する。
【0116】
後フランジ356は、回転子353の後端部を回転自在に支持するモータ軸受354を保持する。後フランジ356は、
図6(a)に示すように、リング状の後フランジ本体部393と、後フランジ本体部393から前方に突出する後フランジ外輪保持部394とを有する。後フランジ本体部393は、固定子コイル382よりも後方に設けられる。一方、後フランジ外輪保持部394は、固定子コイル382よりも後方から固定子コイル382の径方向内側に挿入されており、回転子353の後端部を回転自在に支持するモータ軸受354の外輪を保持する。
【0117】
前フランジ本体部391と後フランジ本体部393とは、固定子352を前後両側から挟んで保持する。前フランジ本体部391と後フランジ本体部393との間に、回転子353の永久磁石384が設けられる。つまり、永久磁石384は、前フランジ本体部391よりも後方、且つ、後フランジ本体部393よりも前方に配される。
【0118】
射出モータ350の回転運動は、回転伝達軸371を介してねじ軸372に伝達され、ねじ軸372に螺合されるねじナット373の直線運動に変換される。射出モータ350と、回転伝達軸371と、ねじ軸372と、ねじナット373とは、同一直線上に配される。
【0119】
回転伝達軸371は、回転伝達軸371よりも前方に配されるねじ軸372から後方に向けて延びる延長軸部376と、延長軸部376から後方に向けて延びて回転子353の内部において回転子353と結合される結合軸部377とを有する。これにより、射出モータ350の軸方向と直交する方向(例えば
図6(a)において上下方向)から見たときに射出モータ350と運動変換機構370の一部とをオーバラップすることができ、射出装置300の前後長を短縮できる。よって、射出成形機の全長を短縮できる。
【0120】
回転伝達軸371の結合軸部377は、例えば、射出モータ350の回転子353の内部において回転子353とスプライン結合される。回転伝達軸371の結合軸部377は、外周部に、周方向に間隔をおいて複数のキーを有する。一方、回転子353は、内周部に、複数のキーが摺動自在に挿入される複数のキー溝を有する。キーの数やキー溝の数は1つでもよい。
【0121】
尚、回転伝達軸371の結合軸部377は、射出モータ350の回転子353の内部において回転子353とスプライン結合されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、回転伝達軸371の結合軸部377は、射出モータ350の回転子353と摩擦力で結合されてもよい。この場合、回転伝達軸371の結合軸部377と回転子353との間に、くさびなどが打ち込まれてもよい。
【0122】
回転伝達軸371は、ねじ軸372と一体に形成されてもよいし、ねじ軸372と別に形成され、ねじ軸372と連結されてもよい。
【0123】
回転伝達軸371の少なくとも一部は、射出モータ350の永久磁石384よりも射出モータ350の径方向内側に配設され、射出モータ350の軸方向に直交する方向(例えば
図6(a)において上下方向)から見たとき、永久磁石384とオーバラップする。これにより、射出装置300の前後長をより短縮できる。永久磁石384は、上述の如く、前フランジ本体部391よりも後方、且つ、後フランジ本体部393よりも前方に配される。
【0124】
モータ軸受354の少なくとも一部は、固定子コイル382よりも射出モータ350の径方向内側に配設され、射出モータ350の軸方向に直交する方向(例えば
図6(a)において上下方向)から見たとき、固定子コイル382とオーバラップする。これにより、射出装置300の前後長をより短縮できる。
【0125】
例えば、前フランジ355で保持されるモータ軸受354は、固定子コイル382よりも射出モータ350の径方向内側に配設され、射出モータ350の軸方向に直交する方向から見たとき、固定子コイル382とオーバラップする。このオーバラップのために、
図6(a)に示す第1実施例の射出モータ350は、
図6(b)に示す第2実施例の射出モータ350Aとは異なる下記の(1)〜(5)の構造を有する。下記の(1)〜(5)の構造によれば、射出モータ350の径方向寸法の拡大を抑制しつつ、射出モータ350の軸方向においてモータ軸受354と固定子コイル382とをオーバラップさせることができる。
【0126】
(1)第1実施例の前フランジ355は、
図6(a)に示すように、リング状の前フランジ本体部391と、前フランジ本体部391から後方に突出する筒状の前フランジ外輪保持部392とを有する。前フランジ本体部391は、固定子コイル382よりも前方に設けられる。一方、前フランジ外輪保持部392は、固定子コイル382よりも前方から固定子コイル382の径方向内側に挿入され、回転子353の前端部を回転自在に支持するモータ軸受354の外輪を保持する。モータ軸受354は、固定子コイル382の径方向内側において、前フランジ外輪保持部392で保持される。これにより、モータ軸受354を射出モータ350の軸方向において固定子コイル382とオーバラップできる。その結果、射出装置300の前後長を短縮できる。
【0127】
これに対し、第2実施例の前フランジ355Aは、
図6(b)に示すように、固定子コイル382Aよりも前方において、回転子353Aの前端部を回転自在に支持するモータ軸受354Aの外輪を保持する。従って、モータ軸受354Aは、射出モータ350Aの軸方向において固定子コイル382Aとオーバラップしない。
【0128】
(2)第1実施例の前フランジ355で保持されるモータ軸受354は、
図6(a)に示すように、回転子353よりも径方向外側にはみ出さないように配され、回転子353の永久磁石384の外周よりも径方向内側に配される。これにより、前フランジ355で保持されるモータ軸受354を固定子コイル382と干渉しないように固定子コイル382の内側に配設でき、モータ軸受354を射出モータ350の軸方向において固定子コイル382とオーバラップできる。その結果、射出装置300の前後長を短縮できる。
【0129】
これに対し、第2実施例の前フランジ355Aで保持されるモータ軸受354Aは、
図6(b)に示すように、回転子353A(詳細には永久磁石384Aの外周)よりも径方向外側にはみ出す。そのため、前フランジ355Aで保持されるモータ軸受354Aを後方にずらして固定子コイル382Aの内側に配設しようとすると、固定子コイル382Aと干渉してしまう。
【0130】
(3)第1実施例の回転子コア383は、その外周に、前フランジ355で保持されるモータ軸受354との間に隙間を形成する段差面385を有する。段差面385よりも前側の部分(モータ軸受354の内輪を保持する部分)は、段差面385よりも後側の部分(永久磁石384が取り付けられる部分)よりも外径が小さい。よって、段差面385よりも前側の部分と、固定子コイル382との径方向における間隔が大きく、固定子コイル382と干渉しないように固定子コイル382の内側にモータ軸受354を配設でき、モータ軸受354を射出モータ350の軸方向において固定子コイル382とオーバラップできる。その結果、射出装置300の前後長を短縮できる。
【0131】
これに対し、第2実施例の回転子コア383Aは、その外周に、前フランジ355Aで保持されるモータ軸受354Aとの間に隙間を形成する段差面を有しない。そのため、回転子コア383Aと固定子コイル382Aとの径方向における間隔が小さく、固定子コイル382Aと干渉しないように固定子コイル382Aの内側にモータ軸受354Aを配設することが困難である。
【0132】
(4)第1実施例の回転子コア383の前端部は、延長軸部376と径方向においてオーバラップする。よって、回転子コア383の前端部と固定子コイル382との径方向における間隔が大きく、固定子コイル382と干渉しないように固定子コイル382の内側にモータ軸受354を配設でき、モータ軸受354を射出モータ350の軸方向において固定子コイル382とオーバラップできる。その結果、射出装置300の前後長を短縮できる。
【0133】
これに対し、第2実施例の回転子コア383Aの前端部は、延長軸部376Aよりも径方向外側に配設される。そのため、回転子コア383Aの前端部と固定子コイル382Aとの径方向における間隔が小さく、固定子コイル382Aと干渉しないように固定子コイル382Aの内側にモータ軸受354Aを配設することが困難である。そのため、モータ軸受354Aを射出モータ350Aの軸方向において固定子コイル382Aとオーバラップできない。
【0134】
(5)第1実施例の回転伝達軸371は、延長軸部376と結合軸部377との間に段差面378を有する。結合軸部377の外径は、延長軸部376の外径よりも小さい。よって、結合軸部377と固定子コイル382との径方向における間隔が大きく、固定子コイル382と干渉しないように固定子コイル382の内側にモータ軸受354を配設でき、モータ軸受354を射出モータ350の軸方向において固定子コイル382とオーバラップできる。その結果、射出装置300の前後長を短縮できる。
【0135】
これに対し、第2実施例の回転伝達軸371Aは、延長軸部376Aと結合軸部377Aとの間に段差面を有しない。結合軸部377Aの外径は、延長軸部376Aの外径と略同じである。結合軸部377Aと固定子コイル382Aとの径方向における間隔が小さく、固定子コイル382Aと干渉しないように固定子コイル382Aの内側にモータ軸受354Aを配設することが困難である。そのため、モータ軸受354Aを射出モータ350Aの軸方向において固定子コイル382Aとオーバラップできない。
【0136】
尚、
図6(a)に示す第1実施例の射出モータ350は、上記の(1)〜(5)の構造を有するが、上記の(1)〜(5)の構造のうちの少なくとも1つを有していてもよい。射出モータ350の径方向寸法の拡大を抑制しつつ、射出モータ350の軸方向においてモータ軸受354と固定子コイル382とをオーバラップさせることができればよい。
【0137】
同様に、後フランジ356で保持されるモータ軸受354は、固定子コイル382よりも射出モータ350の径方向内側に配設され、射出モータ350の軸方向に直交する方向から見たとき、固定子コイル382とオーバラップする。このオーバラップのために、
図6(a)に示す第1実施例の射出モータ350は、
図6(b)に示す第2実施例の射出モータ350Aとは異なる下記の(6)〜(9)の構造を有する。下記の(6)〜(9)の構造によれば、射出モータ350の径方向寸法の拡大を抑制しつつ、射出モータ350の軸方向においてモータ軸受354と固定子コイル382とをオーバラップさせることができる。
【0138】
(6)第1実施例の後フランジ356は、
図6(a)に示すように、リング状の後フランジ本体部393と、後フランジ本体部393から前方に突出する筒状の後フランジ外輪保持部394とを有する。後フランジ本体部393は、固定子コイル382よりも後方に設けられる。一方、後フランジ外輪保持部394は、固定子コイル382よりも後方から固定子コイル382の径方向内側に挿入され、回転子353の後端部を回転自在に支持するモータ軸受354の外輪を保持する。モータ軸受354は、固定子コイル382の径方向内側において、後フランジ外輪保持部394で保持される。これにより、モータ軸受354を射出モータ350の軸方向において固定子コイル382とオーバラップできる。その結果、射出装置300の前後長を短縮できる。
【0139】
これに対し、第2実施例の後フランジ356Aは、
図6(b)に示すように、固定子コイル382Aよりも後方において、回転子353Aの後端部を回転自在に支持するモータ軸受354Aの外輪を保持する。従って、モータ軸受354Aは、射出モータ350Aの軸方向において固定子コイル382Aとオーバラップしない。
【0140】
(7)第1実施例の後フランジ356で保持されるモータ軸受354は、
図6(a)に示すように、回転子353よりも径方向外側にはみ出さないように配され、回転子353の永久磁石384の外周よりも径方向内側に配される。これにより、後フランジ356で保持されるモータ軸受354を固定子コイル382と干渉しないように固定子コイル382の内側に配設でき、モータ軸受354を射出モータ350の軸方向において固定子コイル382とオーバラップできる。その結果、射出装置300の前後長を短縮できる。
【0141】
これに対し、第2実施例の後フランジ356Aで保持されるモータ軸受354Aは、
図6(b)に示すように、回転子353Aよりも径方向外側にはみ出している。そのため、後フランジ356Aで保持されるモータ軸受354Aを前方にずらして固定子コイル382Aの内側に配設しようとすると、固定子コイル382Aと干渉してしまう。
【0142】
(8)第1実施例の回転子コア383は、その外周に、後フランジ356で保持されるモータ軸受354との間に隙間を形成する段差面386を有する。段差面386よりも後側の部分(モータ軸受354の内輪を保持する部分)は、段差面386よりも前側の部分(永久磁石384が取り付けられる部分)よりも外径が小さい。よって、段差面386よりも後側の部分と、固定子コイル382との径方向における間隔が大きく、固定子コイル382と干渉しないように固定子コイル382の内側にモータ軸受354を配設でき、モータ軸受354を射出モータ350の軸方向において固定子コイル382とオーバラップできる。その結果、射出装置300の前後長を短縮できる。
【0143】
これに対し、第2実施例の回転子コア383Aは、その外周に、後フランジ356Aで保持されるモータ軸受354Aとの間に隙間を形成する段差面を有しない。そのため、回転子コア383Aと固定子コイル382Aとの径方向における間隔が小さく、固定子コイル382Aと干渉しないように固定子コイル382Aの内側にモータ軸受354Aを配設することが困難である。
【0144】
(9)第1実施例の回転子コア383の後端部は、延長軸部376と径方向においてオーバラップする。よって、回転子コア383の後端部と固定子コイル382との径方向における間隔が大きく、固定子コイル382と干渉しないように固定子コイル382の内側にモータ軸受354を配設でき、モータ軸受354を射出モータ350の軸方向において固定子コイル382とオーバラップできる。その結果、射出装置300の前後長を短縮できる。
【0145】
これに対し、第2実施例の回転子コア383Aの後端部は、延長軸部376Aよりも径方向外側に配設される。そのため、回転子コア383Aの後端部と固定子コイル382Aとの径方向における間隔が小さく、固定子コイル382Aと干渉しないように固定子コイル382Aの内側にモータ軸受354Aを配設することが困難である。そのため、モータ軸受354Aを射出モータ350Aの軸方向において固定子コイル382Aとオーバラップできない。
【0146】
尚、
図6(a)に示す第1実施例の射出モータ350は、上記の(6)〜(9)の構造を有するが、上記の(6)〜(9)の構造のうちの少なくとも1つを有していてもよい。射出モータ350の径方向寸法の拡大を抑制しつつ、射出モータ350の軸方向においてモータ軸受354と固定子コイル382とをオーバラップさせることができればよい。
【0147】
(変形および改良)
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0148】
上記実施形態では本発明を射出モータ350に適用した例について説明したが、本発明を他のモータに適用してもよい。本発明を適用できるモータとしては、例えば、型締モータ160、エジェクタモータ210などが挙げられる。モータは、回転伝達軸を介してねじ軸を回転させることにより、ねじ軸に螺合されるねじナットを進退させるものであればよい。本発明を型締モータ160に適用する場合、型締装置100の前後長を短縮できる。また、本発明をエジェクタモータ210に適用する場合、エジェクタ装置200の前後長を短縮できる。