特許第6840650号(P6840650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6840650放射性コンクリートスラッジを含む排水の浄化方法及び浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840650
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】放射性コンクリートスラッジを含む排水の浄化方法及び浄化装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/06 20060101AFI20210301BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20210301BHJP
   G21F 9/10 20060101ALI20210301BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20210301BHJP
   B01D 25/12 20060101ALI20210301BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20210301BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20210301BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20210301BHJP
   C02F 1/52 20060101ALN20210301BHJP
【FI】
   G21F9/06 521A
   G21F9/12 501D
   G21F9/12 501F
   G21F9/12 501J
   G21F9/06 521J
   G21F9/10 B
   B01D21/01 102
   B01D25/12 A
   B01J20/06 A
   B01J20/18 B
   B01J20/18 E
   B01J20/10 C
   !C02F1/52 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-204413(P2017-204413)
(22)【出願日】2017年10月23日
(65)【公開番号】特開2019-78587(P2019-78587A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】並木 千晶
(72)【発明者】
【氏名】井上 由樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】澤田 紘子
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−182069(JP,A)
【文献】 特開2013−246144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/06
B01D 21/01
B01D 25/12
B01J 20/06
B01J 20/10
B01J 20/18
G21F 9/10
G21F 9/12
C02F 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性コンクリートスラッジを含む排水の浄化方法であって、
前記排水に凝集剤及び吸着剤を添加する添加工程と、
前記凝集剤及び吸着剤の添加された排水を固液分離する固液分離工程と
を具備し、
さらに、前記添加工程において、前記排水にろ過助剤を添加することを特徴とする排水浄化方法。
【請求項2】
前記ろ過助剤は焼成珪藻土又は融剤焼成珪藻土であることを特徴とする請求項に記載の排水浄化方法。
【請求項3】
前記凝集剤は無機系凝集剤であることを特徴とする 請求項1又は2に記載の排水浄化方法。
【請求項4】
前記吸着剤は、ゼオライト、ケイチタン酸塩及びチタン酸塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の排水浄化方法。
【請求項5】
前記吸着剤は、鉄、セシウム、コバルト、マンガン又はユーロピウムを吸着することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の排水浄化方法。
【請求項6】
前記吸着剤は平均粒子径(D50)が20μm以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の排水浄化方法。
【請求項7】
放射性コンクリートスラッジを含む排水を処理する排水浄化装置であって、
前記排水を収容する収容槽と、
前記収容槽内の排水に凝集剤を添加する凝集剤添加装置と、
前記収容槽内の排水に吸着剤を添加する吸着剤添加装置と、
前記収容槽内の排水にろ過助剤を添加するろ過助剤添加装置と、
前記凝集剤、前記吸着剤、及び、前記ろ過助剤の添加された排水を固液分離する固液分離装置とを具備することを特徴とする排水浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性コンクリートスラッジを含む排水の浄化方法及び浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な建設現場等におけるコンクリート構造物の解体・切断時には、ダスト発生防止のために水散布が行われる。この際、コンクリートや金属粉を含む切削排水が発生する。一般的な建設現場等で発生する切削排水は、沈降分離によって上澄み液と沈降物に分離され、上澄み液は排水され、沈降物は開放系で輸送可能な状態まで脱水・乾燥処理される。また、上記沈降分離において、固形分を沈降しやすくするために、有機系高分子剤を添加することも行われる。
【0003】
コンクリート構造物が原子力施設である場合、廃炉工事などによる、その解体・切断時には、放射性の切削排水が大量に発生することが予想される。このような放射性切削排水の処理においては、切削排水が放射性物質を含むため、安全上、一般建設現場等で行われるような開放系での処理ができない。また、固形分を沈降しやすくするために、有機系高分子剤を添加した場合、固形分中に混在する有機系高分子剤が分解することが考えられ、長期の安全性を担保できないおそれがある。
【0004】
このような放射性切削排水の浄化方法として、放射性コンクリートスラッジを含む廃液を脱水処理し、その後中和処理して放流する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−333496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
切削排水には、コンクリートのスラッジが含まれているため、固形分濃度が高い(例えば、10g/L程度)ことや、pHが高いという特徴がある。このような、コンクリートスラッジを含む排水を脱水処理する場合、液中に溶解された、コンクリート由来のカルシウムが浮遊物質となるため、ろ過性が悪いという課題があった。一方、放射性物質を含む排水に中和処理を施して、カルシウムを固形化し、その後、ろ過しようとすると、中和によって排水のpHが下がり、固形分中に含有された放射性物質が溶解して液中に溶出するという課題があった。
【0007】
本発明は、放射性のコンクリートスラッジを含む排水の処理に際して、排水のろ過性を向上させるとともに、放射性物質を固形分中に固定化することのできる放射性コンクリートスラッジを含む排水の浄化方法及び浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排水浄化方法の一態様は、放射性コンクリートスラッジを含む排水の浄化方法であって、前記排水に凝集剤及び吸着剤を添加する添加工程と、前記凝集剤及び吸着剤の添加された排水を固液分離する固液分離工程とを具備する。さらに、前記添加工程において、前記排水にろ過助剤を添加する。
【0009】
本発明の排水浄化装置の一態様は、放射性コンクリートスラッジを含む排水を処理する排水浄化装置であって、前記排水を収容する収容槽と、前記収容槽内の排水に凝集剤を添加する凝集剤添加装置と、前記収容槽内の排水に吸着剤を添加する吸着剤添加装置と、前記収容槽内の排水にろ過助剤を添加するろ過助剤添加装置と、前記凝集剤、前記吸着剤、及び、前記ろ過助剤の添加された排水を固液分離する固液分離装置とを具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放射性のコンクリートスラッジを含む排水の処理に際して、排水のろ過性を向上させるとともに、放射性物質を固形分中に固定化することのできる放射性コンクリートスラッジを含む排水の浄化方法及び浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る排水浄化方法を概略的に示すフロー図である。
図2】実施形態に係る排水浄化装置を概略的に示すブロック図である。
図3】変形例に係る排水浄化装置を概略的に示すブロック図である。
図4】排水に、凝集剤、吸着剤を添加した際のろ過比抵抗の変化を表すグラフである。
図5】排水に、凝集剤、吸着剤、ろ過助剤を添加した際のろ過比抵抗の変化を表すグラフである。
図6】ろ過助剤の種類と、ろ過比抵抗の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る排水浄化方法を概略的に示すフロー図である。図1に示すように、本実施形態に係る排水浄化方法は、放射性コンクリートスラッジを含む排水(以下、単に「排水」という。)1に、凝集剤と吸着剤を添加する添加工程S10と、凝集剤と吸着剤の添加された排水1を固液分離して排水1中の固形分2を分離する固液分離工程S20とを有している。
【0013】
また、図2は、本実施形態に係る排水浄化装置10を概略的に示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る排水浄化装置10は、排水1を収容する収容槽11と、収容槽11内の排水1に凝集剤4を添加する凝集剤添加装置14と、収容槽11内の排水1に吸着剤5を添加する吸着剤添加装置15と、凝集剤4及び吸着剤5の添加された排水1を固液分離する固液分離装置13を備えている。
【0014】
排水1は、放射性コンクリートスラッジを含む排水である。排水1は、例えば、原子力施設等、放射性のコンクリート構造物を切断する際に発生し、コンクリートスラッジと水とを含む。また、コンクリートスラッジには放射性物質が含まれている。このような放射性物質としては、例えば、放射性の鉄(Fe)、セシウム(Cs)、コバルト(Co)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、ユーロピウム(Eu)等である。
【0015】
本実施形態に係る排水浄化方法では、図2に示す収容槽11内に排水1が収容され、凝集剤添加装置14によって、収容槽11内の排水1に凝集剤4が添加される。また、吸着剤添加装置15によって、収容槽11内の排水1に吸着剤5が添加される(添加工程S10)。
【0016】
添加工程S10における凝集剤4と吸着剤5の添加順序は、収容槽11内で排水1、凝集剤4及び吸着剤5が混合されれば、いずれが先であっても、又は、同時であってもよい。
【0017】
凝集剤4は排水1中に溶解された、コンクリート由来のカルシウムを主成分とする浮遊物質を凝集させる。凝集剤4は例えば、無機系凝集剤であり、CaO、SOを主成分としてSiO又はAlを含む無機系凝集剤を使用することができる。凝集剤4としては、浮遊物質の凝集性能が高い点で、CaOを40〜50質量%、SOを25〜40質量%、SiOを0〜20質量%、Alを0〜15質量%の割合で含む無機系の凝集剤が好ましい。凝集剤4としては、浮遊物質の凝集性能が高く、廃水1のろ過性を向上させる点で、CaOを44質量%とSOを27質量%とSiOを16質量%含む凝集剤、CaOを42質量%とSOを40質量%とSiOを8質量%含む凝集剤、CaOを42質量%とSOを35質量%とAlを9%含む凝集剤が特に好ましい。
【0018】
排水1に添加する凝集剤4の量は、排水1中の浮遊物質の量にもよるが、たとえば、凝集剤4と排水1の液固比(排水1/凝集剤4(mL/g))で200(mL/g)程度である。
【0019】
吸着剤5は、排水1中の放射性物質を吸着する。また、吸着剤5によって、ろ過比抵抗を低減する効果も得られる。吸着剤5としては、ゼオライト系の吸着剤、チタン酸塩あるいはケイチタン酸塩を使用することができる。ゼオライト系の吸着剤としては、例えば、モルデナイト、チャバサイト、A型ゼオライトが挙げられる。
【0020】
上述した中でも、ゼオライト系の吸着剤は、Cs、Coに対する吸着性能が高い。また、ケイチタン酸系の吸着剤は、Csに対する吸着性能が高く、チタン酸系の吸着剤は、Fe、Coに対する吸着性能が高い。そのため、ゼオライト系の吸着剤、ケイチタン酸塩又はチタン酸塩が好適に使用される。
【0021】
吸着剤5の形状は、粒状(ペレット状)、粉末状、不定形状などであり、特に限定されない。吸着剤5は粉末状であると、放射性物質に対する吸着性能が高いため好ましい。また、粉末状の吸着剤5を用いることで、排水1中の放射性物質に対する吸着性能を向上させることができる。粉末状の吸着剤5の平均粒子径D50は、例えば、20μm以下であることが好ましく0.5〜0.6μm程度がより好ましい。ここでの吸着剤の平均粒子径は個数基準による平均粒子径(D50)であり、レーザ回折式粒子径分布測定装置によって測定することができる。
【0022】
排水1に添加する吸着剤5の量は、排水1中の放射性物質の量にもよるが、例えば、吸着剤5と排水1の液固比(排水1/吸着剤5(mL/g))で200(mL/g)程度である。
【0023】
次いで、図2に示す固液分離装置13によって、凝集剤4と吸着剤5を含む排水1が固液分離される。これにより、排水1は、固形分2と、固形分2の除去された上澄み液3に分離される(固液分離工程S20)。固液分離装置13としては、フィルタープレス装置等が用いられる。この際、添加工程S10において、排水1中の浮遊物質が凝集剤4により凝集されて固形化されることによって、液中の浮遊物質が低減されているため、凝集剤4を添加せずに固液分離を行う場合に比べてろ過性が向上される。また、コンクリートスラッジに含有されて排液1中に溶出した放射性物質は、吸着剤5に吸着されて固形化される。
【0024】
固形分2中には、コンクリートスラッジのほか、排水1中に溶解していて、吸着剤5に吸着された放射性物質が含まれる。固形分2は、安定化処理(S30)された後、保管ないし貯蔵される。
【0025】
上澄み液3は、さらに、必要に応じて、吸着剤等によって上澄み液3中に残留する放射性物質が吸着除去され、さらに、ろ過処理(S40)されるなどの後処理が施されて環境排水基準を満たした後、保管または放出される。
【0026】
以上説明した本実施形態の排水の浄化方法及び浄化装置によれば、放射性のコンクリートスラッジを含む排水の処理に際して、排水に凝集剤及び吸着剤を添加した後に固液分離をすることで、排水のろ過性を向上させるとともに、放射性物質を固形分中に固定化することができる。
【0027】
次に、図1及び図3を参照して、第1の実施形態に係る排水浄化方法の変形例について説明する。本変形例の排水浄化方法は、添加工程S10において、排水1に、凝集剤4と吸着剤5と、さらに、ろ過助剤6を添加する点で第1の実施形態に係る排水浄化方法と異なるが、その他の工程は第1の実施形態に係る排水浄化方法と同様である。図3は、本変形例の排水浄化方法に用いられる排水浄化装置20を概略的に表す図である。図3に示す排水浄化装置20は、図1に示す排水浄化装置10にさらに、排水1にろ過助剤6を添加するろ過助剤添加装置16を有する点で、排水浄化装置10と異なっているが、その他の構成は排水浄化装置10と同様である。そのため、第1の実施形態と共通する工程及び構成については重複する説明を省略する。
【0028】
本変形例の排水浄化方法は、添加工程S10において、排水1に、凝集剤4と吸着剤5と、さらに、ろ過助剤6を添加する。ろ過助剤6を添加することで、凝集剤4と吸着剤5を添加した排水1のろ過性をより向上させることが可能である。
【0029】
ろ過助剤6は、例えば、排水1のろ過性を向上させ、また、フィルタープレス等のろ材表面に堆積される浮遊物質層内に排水1の流路を形成することで、ろ過速度を向上させることができる。ろ過助剤6としては、珪藻土やパーライトなどSiOを主成分とする鉱物、セルロース等を使用することができる。珪藻土としては、珪藻土に少量の炭酸ナトリウムを添加して焼成して得られる融剤焼成珪藻土や、珪藻土に含まれる有機物を分解除去するために珪藻土を焼成して得られる焼成珪藻土であってもよい。
【0030】
珪藻土は、例えば、SiOの含有割合が85質量%程度で、これ以外にAl、Fe、NaO、KO、CaO、MgOなどを含んでいる。また、パーライトは、SiOの含有割合が75質量%程度、Alが14質量%程度で、その他、Fe、CaO、NaO、KO、MgO等を含んでいる。セルロースは、例えば、木材を高度に精製し微細化して得られる。
【0031】
上述した中でも、ろ過助剤としては、排水1のろ過比抵抗を下げてろ過性を向上させる点で、焼成珪藻土又は融剤焼成珪藻土が好ましく、融剤焼成珪藻土が特に好ましい。
【0032】
排水1に添加するろ過助剤6の量は、排水1中の浮遊物質の量にもよるが、例えば、ろ過助剤6と排水1の液固比(排水1/ろ過助剤6(mL/g))で130(mL/g)程度である。
【0033】
凝集剤4、吸着剤5及びろ過助剤6の添加された排水1は、第1の実施形態と同様に、図2に示す固液分離装置13によって固液分離される。これにより、排水1は、固形分2と、固形分2の除去された上澄み液3に分離される(固液分離工程S20)。
【0034】
固形分2は、安定化処理(S30)された後、保管ないし貯蔵される。上澄み液3は、さらに、必要に応じて、吸着剤等によって上澄み液3中に残留する放射性物質が吸着除去され、さらに、ろ過処理(S40)されるなどの後処理が施されて環境排水基準を満たした後、放出される。
【0035】
以上説明した本実施形態の排水の浄化方法及び浄化装置の変形例によれば、放射性のコンクリートスラッジを含む排水の処理に際して、排水に凝集剤4、吸着剤5及びろ過助剤6を添加した後に固液分離をすることで、排水のろ過性をより向上させるとともに、放射性物質を固形分中に固定化することができる。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
本実施例では、凝集剤と吸着剤の添加による放射性物質の低減効果について調べた。酸化ケイ素(SiO)や炭酸カルシウム(CaCO)を主成分とするコンクリートをバンドソーで切断した際に発生したコンクリート切削排水を攪拌し、その後、1時間静置して、上澄み液(pH12)を採取した。この上澄み液に、硫酸鉄7水和物、硝酸コバルト6水和物、硝酸セシウムをそれぞれ100ppmとなるよう添加して、さらにその上澄み部分を10倍(濃度100ppmが10ppmになるよう)に、各化合物の添加前の上澄み液で希釈したものを模擬コンクリート切削排水として用意した。この模擬コンクリート切削排水に凝集剤を液固比200(mL/g)で添加して強撹拌し、その後、弱撹拌した。その後、吸着剤を液固比200(mL/g)で添加して、3分撹拌した。
【0037】
凝集剤を添加し、攪拌してから3分後と、吸着剤を添加して攪拌してから3分後及び1日後の模擬コンクリート切削排水の上澄み液を採取し、上澄み液に含有される元素濃度を誘導結合プラズマ質量分析機(ICP−MS)によって測定した。また、吸着剤を添加した後の上澄み液のpHを測定した。結果を表1に示す。
【0038】
なお、実施例1、2で用いた凝集剤及び吸着剤は次のものである。吸着剤の平均粒子径は個数基準による平均粒子径(D50)であり、レーザ回折式粒子径分布測定装置(SALD−3100、島津製作所社製)によって測定した。
【0039】
凝集剤(i):CaO(44%)−SO(27%)−SiO(16%)
凝集剤(ii):CaO(42%)−SO(40%)−SiO(8%)
凝集剤(iii):CaO(42%)−SO(35%)−Al(9%)
吸着剤A:A型ゼオライト(粉末状のA型ゼオライトの平均粒子径D50:0.6μm)
吸着剤B:チタン酸塩(粉末状のチタン酸塩の平均粒子径D50:0.6μm)
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示す結果から、凝集剤及び吸着剤を添加することで、コンクリート切削排水中のFe濃度、Co濃度、Cs濃度は、同時に低減されたことが分かる。
【0042】
(実施例2)
本実施例では、凝集剤及び吸着剤を添加した後のろ過比抵抗について調べた。上記実施例1と同様の模擬コンクリート切削排水に、凝集剤と粉末状の吸着剤を順に添加して、凝集剤及び吸着剤を添加する前の模擬コンクリート切削排水、凝集剤のみ添加した後の模擬コンクリート切削排水、凝集剤と吸着剤を添加した後の模擬コンクリート切削排水のそれぞれについて、ろ過比抵抗を測定した。結果を図4に示す。なお、本実施例では、凝集剤は上記凝集剤(iii)、吸着剤はA型ゼオライト(粉末状、平均粒子径D50:0.6μm)を使用した。また、凝集剤及び吸着剤の添加量はいずれも、液固比200(mL/g)とした。
【0043】
図4より、模擬コンクリート切削排水に凝集剤のみを添加した場合にはろ過比抵抗が高いものの、さらに粉末状の吸着剤を添加することでろ過比抵抗が低減されて、9.8×1010[m/kg]まで低減したことが分かる。ろ過比抵抗が高いと、固液分離における処理流量が少なくなるが、上記結果から、凝集剤と粉末吸着剤を添加することで、処理流量を多くできることが分かる。また、ろ過比抵抗は9.8×1010[m/kg]と低減したので、十分な処理流量が得られる。
【0044】
(実施例3)
本実施例では、ろ過助剤を用いた場合のろ過比抵抗について調べた。上記実施例1と同様の模擬コンクリート切削排水に凝集剤(凝集剤(iii))及び吸着剤(ケイチタン酸塩)を添加し、さらに、ろ過助剤を添加した。吸着剤は、粉末状の吸着剤、粒状の吸着剤のそれぞれを使用した。凝集剤、吸着剤の添加量は液固比200(mL/g)、ろ過助剤の添加量は液固比130(mL/g)とした。
【0045】
凝集剤及び吸着剤を添加する前の模擬コンクリート切削排水、凝集剤のみ添加した後の模擬コンクリート切削排水、凝集剤と吸着剤(粉末状又は粒状)を添加した後の模擬コンクリート切削排水、凝集剤、粉末状吸着剤、ろ過助剤を添加した後の模擬コンクリート切削排水のそれぞれについて、ろ過比抵抗を測定した。凝集剤は上記凝集剤(ii)、吸着剤はケイチタン酸、ろ過助剤は焼成珪藻土を使用した。結果を図5に示す。また、ろ過助剤として融剤焼成系珪藻土を使用した結果を図6に示す。
【0046】
図5によれば、模擬コンクリート切削排水に凝集剤と粉末状の吸着剤を添加し、さらにろ過助剤を添加することでろ過比抵抗が低減されたことが分かる。これにより、模擬コンクリート切削排水に凝集剤、粉末状の吸着剤、ろ過助剤を添加することで固液分離における処理流量を多くできることが分かる。また、図6によれば、ろ過助剤としては、焼成珪藻土に比べて融剤焼成珪藻土を用いた方が、ろ過比抵抗の低減効果が高いことが分かる。
【0047】
(実施例4)
本実施例では、吸着剤の形状による放射性物質除去効果について調べた。上記実施例1と同様の模擬コンクリート切削排水に凝集剤(凝集剤(i))及び吸着剤(大きさがJIS篩による測定で20〜50meshの粒状又は平均粒子径D50が0.6μmの粉末状のケイチタン酸塩)を、液固比200(mL/g)で添加して攪拌した。その3分後と1日後に、模擬コンクリート切削排水の上澄み液を採取し、上澄み液に含有されるセシウム濃度を誘導結合プラズマ質量分析機(ICP−MS)によって測定した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2によれば、粉末状の吸着剤は粒状の吸着剤と比較して10倍程度の濃度低減効果があることが分かる。
【0050】
上記実施例より、実施形態の排水の浄化方法及び浄化装置によれば、放射性のコンクリートスラッジを含む排水の処理に際して、排水に凝集剤及び吸着剤、さらに必要に応じてろ過助剤を添加した後に固液分離をすることで、排水のろ過性を向上させるとともに、放射性物質を固形分中に固定化できることが分かる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…排水、2…固形分、3…上澄み液、4…凝集剤、5…吸着剤、6…ろ過助剤、10,20…排水浄化装置、11…収容槽、13…固液分離装置、14…凝集剤添加装置、15…吸着剤添加装置、16…ろ過助剤添加装置、S10…添加工程、S20…固液分離工程、S30…安定化処理、S40…ろ過処理。
図1
図2
図3
図4
図5
図6