特許第6840717号(P6840717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840717
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/47 20060101AFI20210301BHJP
   F16H 37/02 20060101ALI20210301BHJP
   F16H 7/02 20060101ALI20210301BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   B29C45/47
   F16H37/02 C
   F16H7/02 A
   F16D1/02 110
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-244539(P2018-244539)
(22)【出願日】2018年12月27日
(65)【公開番号】特開2020-104370(P2020-104370A)
(43)【公開日】2020年7月9日
【審査請求日】2019年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】上原 丈実
(72)【発明者】
【氏名】大久保 一幸
(72)【発明者】
【氏名】半田 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】常田 聡
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−197616(JP,A)
【文献】 特開2006−062108(JP,A)
【文献】 特開2013−100046(JP,A)
【文献】 特開2000−218666(JP,A)
【文献】 特開平11−170319(JP,A)
【文献】 特開2004−050414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
F16D 1/02
F16H 7/02
F16H 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧式射出成形装置をベースにした射出成形装置であって、
スクリューを回転するために、電動モータと、この電動モータの出力トルクを変更するトルク可変機構と、このトルク可変機構の出力トルクを前記スクリューへ伝達するスクリュー駆動部とを備え、
前記トルク可変機構で、油圧駆動と同等のトルクを前記スクリューへ付与するようにし、
少なくとも前記スクリューを移動する射出シリンダと、前記トルク可変機構が設けられている移動台を移動する射出装置移動シリンダとを備えると共に、
前記射出シリンダ及び前記射出装置移動シリンダへ油圧を供給する油圧ポンプ及び油圧配管を備えていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の射出成形装置であって、
前記トルク可変機構は、歯車減速機と、この歯車減速機と前記電動モータとの間に設けたプレ減速機構とからなり、このプレ減速機構は、前記電動モータのモータ軸に取付ける歯付きプーリと、前記歯車減速機の入力軸に取付ける歯付きプーリと、これらの歯付きプーリに掛け渡す歯付きベルトとからなることを特徴とする射出成形装置。
【請求項3】
請求項2記載の射出成形装置であって、
前記歯車減速機と前記スクリュー駆動部との間に、筒部と、この筒部の両端に設けたフランジとからなるアダプタを有し、
このアダプタの一方のフランジは、油圧モータのフランジと同形とし、前記アダプタの他方のフランジは、前記歯車減速機のフランジと同形としたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の射出成形装置であって、
前記歯車減速機の出力軸と前記スクリュー駆動部とは、軸継手で連結するようにしたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項5】
請求項3記載の射出成形装置であって、
前記筒部に、2個の覗き窓が設けられていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項6】
請求項1記載の射出成形装置であって、
前記電動モータと前記トルク可変機構とを、油圧モータに交換するときに備えて、前記油圧配管に短い油圧モータ用分岐管が設けられていることを特徴とする射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式射出成形装置をベースにした射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形装置は、金型を型締めする型締装置と、型締めされた金型のキャビティへ樹脂材料を射出する射出機とを主要素とする。
【0003】
従来、油圧式射出成形装置が、広く実用に供されている(例えば、特許文献1(図1)、特許文献2(第1図、第2図)参照)。
特許文献1に示されるように、油圧式射出成形装置は、油圧による型開閉装置、スクリューを回転する油圧モータ、スクリューを前後進させる油圧射出シリンダ、油圧ポンプなどを備えている。
【0004】
特許文献2に示される射出成形装置も、油圧型締シリンダ、スクリューを回転する油圧モータ、スクリューを前後進させる油圧射出シリンダなどを備えている。
特許文献2の第2図によれば、射出チャージ(計量工程に相当)が終了した時点T3から型開きが開始される。
【0005】
このように従来は、計量工程が終了したら、型開き工程が実施される。計量工程では油圧ポンプで発生した圧油を油圧モータへ供給し、型開き工程では油圧ポンプで発生した圧油を油圧型締シリンダへ供給する。計量工程と型開き工程とが時間的に重なっていないため、油圧ポンプの小型化が図れるという利点がある。
【0006】
ところで、従来より、生産性の向上を目的として、計量工程に型開き工程を重ねる(ラップさせる)という要望が出されてきた。重ねることにより、サイクルタイムが短縮でき、生産性が高まるからである。
【0007】
この要求に対応するには、次の2つの対策が挙げられる。
先ず、油圧モータ専用の油圧ポンプを、追加することが考えられる。ただし、新たに油圧ポンプを追加するため、設備コストが嵩むと共に設置スペースが増大する。
【0008】
又は、油圧モータを電気モータに置き換えることが考えられる。
ただし、油圧モータで設計されていた油圧式射出成形装置において、油圧モータを電動モータに交換するには、次に述べる困難さがある。
【0009】
油圧モータの出力軸速度は低速(例えば160rpm)である。対して、電動モータは高速にすることにより、モータの小型化を図るため、出力軸速度は高速(例えば1980rpm)になる。rpmは1分当たりの回転数である(以下同)。
電動モータに減速機を付属させる必要がある。
減速機には無段変速機と非無段変速機とがある。無段変速機は構造が複雑であり、保守点検費用が嵩む。非無段減速機、特に歯車減速機は、構造がごく簡単であり、好まれる。
【0010】
歯車減速機は、一般的な歯車減速機であれば、安価で機械的性能が保証される。
しかし、一般的な歯車減速機の場合、油圧モータ側のフランジと減速機側のフランジの差異、油圧モータ側の出力軸と減速機側の出力軸の径や長さの差異が、不可避的に生じるため、簡単には採用できない。
【0011】
そこで、特別仕様の歯車減速機が必要となるが、特別仕様の歯車減速機は、いわゆる一品ものであるため、高価である。
安価な射出成形装置が要求される中、油圧式射出成形装置をベースにした射出成形装置において、油圧モータを、減速機を備えた電動モータに置き換えることができる技術が求められる。
併せて、複数の射出容量で使用する減速機を一つにすることができる技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−58508号公報
【特許文献2】特公平7−119041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、油圧式射出成形装置をベースにした射出成形装置において、油圧モータを、減速機を備えた電動モータに置き換えることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、油圧式射出成形装置をベースにした射出成形装置であって、
スクリューを回転するために、電動モータと、この電動モータの出力トルクを変更するトルク可変機構と、このトルク可変機構の出力トルクを前記スクリューへ伝達するスクリュー駆動部とを備え、
前記トルク可変機構で、油圧駆動と同等のトルクを前記スクリューへ付与するようにし、
少なくとも前記スクリューを移動する射出シリンダと、前記トルク可変機構が設けられている移動台を移動する射出装置移動シリンダとを備えると共に、
前記射出シリンダ及び前記射出装置移動シリンダへ油圧を供給する油圧ポンプ及び油圧配管を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の射出成形装置であって、
前記トルク可変機構は、歯車減速機と、この歯車減速機と前記電動モータとの間に設けたプレ減速機構とからなり、このプレ減速機構は、前記電動モータのモータ軸に取付ける歯付きプーリと、前記歯車減速機の入力軸に取付ける歯付きプーリと、これらの歯付きプーリに掛け渡す歯付きベルトとからなることを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の射出成形装置であって、
前記歯車減速機と前記スクリュー駆動部との間に、筒部と、この筒部の両端に設けたフランジとからなるアダプタを有し、
このアダプタの一方のフランジは、油圧モータのフランジと同形とし、前記アダプタの他方のフランジは、前記歯車減速機のフランジと同形としたことを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3記載の射出成形装置であって、
前記歯車減速機の出力軸と前記スクリュー駆動部とは、軸継手で連結するようにしたことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項3記載の射出成形装置であって、
前記筒部に、2個の覗き窓が設けられていることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1記載の射出成形装置であって、
前記電動モータと前記トルク可変機構とを、油圧モータに交換するときに備えて、前記油圧配管に短い油圧モータ用分岐管が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、射出成形装置に、電動モータとトルク可変機構とを備え、このトルク可変機構で、油圧駆動と同等のトルクをスクリューへ付与するようにした。
本発明により、油圧式射出成形装置をベースにした射出成形装置において、油圧モータを、減速機を備えた電動モータに置き換えることができる技術が提供される。
【0019】
請求項2に係る発明では、トルク可変機構は、歯車減速機と、この歯車減速機と電動モータとの間に設けたプレ減速機構とからなり、このプレ減速機構は、電動モータのモータ軸に取付ける歯付きプーリと、歯車減速機の入力軸に取付ける歯付きプーリと、これらの歯付きプーリに掛け渡す歯付きベルトとからなる。
歯車減速機の減速比を、プレ減速機構で調整することにより、歯車減速機の出力トルクを油圧モータの出力軸トルクに合わせることができるため、歯車減速機が採用可能となる。
【0020】
必要な出力トルクを、総減速比で割った値が電動モータのトルクになる。歯車減速機だけで減速する場合に比較して、歯車減速機にプレ減速機構を加えた場合は電動モータのトルクを小さくすることができ、電動モータの小型化が図れる。
本発明により油圧式射出成形装置をベースにした射出成形装置において、油圧モータを、歯車減速機を備えた電動モータに置き換えることができる技術が提供される。
【0021】
また、仮に、ベースとなる油圧式射出成形装置の射出容量に応じて、歯車減速機を選定するようにすると歯車減速機の種類が増える。
この点、本発明では、歯付きプーリのプーリ径を変更するだけで、1つの歯車減速機で、射出容量の変化に対応させることができる。
すなわち、本発明により、複数の射出容量で使用する減速機を一つにすることができる技術が提供される。
【0022】
請求項3に係る発明では、歯車減速機とスクリュー駆動部との間に、アダプタを有し、このアダプタの一方のフランジは、油圧モータのフランジと同形とし、アダプタの他方のフランジは、歯車減速機のフランジと同形とした。
油圧式射出成形装置がベースであるため、スクリュー駆動部には油圧モータのフランジに対応するフランジが設けられている。このフランジと歯車減速機のフランジとは、アダプタにより、機械的に連結することができる。
【0023】
請求項4に係る発明では、歯車減速機の出力軸とスクリュー駆動部とは、軸継手で連結するようにした。
仮に、歯車減速機の出力軸をスクリュー駆動部に直接繋ぐと、歯車減速機の出力軸はスクリュー駆動部に嵌るように、形状を整える必要がある。
対して、軸継手を介在させることで、歯車減速機の出力軸を自由な形状にすることができ、歯車減速機のコストアップを抑制することができる。
請求項5に係る発明では、筒部に、2個の覗き窓が設けられている。1個からランプの灯りを投入し、残る1個から筒部の内部を目視することができる。
請求項6に係る発明では、油圧配管に短い油圧モータ用分岐管が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ベースとなる油圧式射出成形装置の側面図である。
図2】スクリュー駆動部の断面図である。
図3】スクリュー駆動部から油圧モータを分離した状態の図である。
図4】電動モータとプレ減速機構と歯車減速機の概念図である。
図5】アダプタと軸継手の概念図である。
図6】電動モータとプレ減速機構と歯車減速機とスクリュー駆動部の組立図である。
図7図7(a)は図6の7a−7a線断面図、図7(b)は図7(a)のb部拡大図である。
図8】本発明に係る射出成形装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0026】
図1に示すように、ベースとなる油圧式射出成形装置10は、ベッド11と、このベッド11に固定されている型締シリンダ12及び固定盤13と、型締シリンダ12と固定盤13との間に渡されるタイバー14と、このタイバー14に沿って移動可能に型締シリンダ12と固定盤13との間に配置される可動盤15と、固定盤13の外側にてベッド11に移動可能に載せられている移動台16と、この移動台16で支持され固定盤13に向かって延びる加熱筒17と、この加熱筒17に軸方向移動可能に且つ回転可能に収納されるスクリュー18と、このスクリュー18の基部が連結されるスクリュー駆動部30と、このスクリュー駆動部30に取付けられている油圧モータ21と、スクリュー駆動部30と移動台16とに渡される射出シリンダ22と、固定盤13と移動台16とに渡される射出装置移動シリンダ23と、油圧ポンプ25と、油圧配管26とを備えている。
【0027】
油圧ポンプ25で発生した圧油により、油圧モータ21でスクリュー18を回して計量工程を実施し、型締シリンダ24で金型27を型締めし、射出装置移動シリンダ23で加熱筒17、スクリュー18、移動台16、スクリュー駆動部30及び油圧モータ21を一括して移動することで金型27へ加熱筒17をノズルタッチさせ、射出シリンダ22でスクリュー18を前進させることで溶融した樹脂材料を金型27のキャビティへ射出する。
【0028】
射出が終わったら、樹脂材料の冷却と計量とを同時にスタートする。
樹脂材料が固まったら、型締シリンダ24で金型27を開き、エジェクタを前進後退させて製品を取り出す。ベースとなる油圧式射出成形装置10では、油圧モータ21による計量工程が終了した後に型締シリンダ24による型開き、型締めを実施する。型開きと、計量工程とを同時に行わないため、油圧ポンプ25は適正容量に抑えることができる。ただし、サイクルタイムは長くなる。
なお、油圧モータ21の回転速度は、従来の技術で説明した値と同じ(例えば160rpm)である。
【0029】
図2に示すように、スクリュー駆動部30は、例えば、ケース31と、このケース31に軸受32、33を介して回転自在に取付けた中継軸34とからなる。
中継軸34の一端に、スクリュー(図1、符号18)の基部を嵌めることができるスプライン穴35が設けられ、中継軸34の他端に、油圧モータ21の出力軸21aを嵌めるスプライン穴36が設けられている。
【0030】
図3に示すように、ボルト37を緩めると、スクリュー駆動部30から油圧モータ21を取り外すことができる。
取り外すと、油圧モータ21のフランジ21Fが露出する。このフランジ21Fにボルト穴21cが設けられている。フランジ21Fにおけるボルト穴21cのピッチ円はD1であり、ピッチはp1である。
【0031】
また、スクリュー駆動部30から油圧モータ21を取り外すことで、スクリュー駆動部30のフランジ31Fが露出する。このフランジ31Fに雌ねじ31aが設けられている。フランジ31Fにおける雌ねじ31aのピッチ円はD1であり、ピッチはp1である。
【0032】
図4に示すように、電動モータ40とトルク可変機構45とを準備する。トルク可変機構45は、油圧駆動(油圧モータ21)と同等のトルクをスクリュー(図1、符号18)へ付与する役割を果たす。
トルク可変機構45は、例えば、プレ減速機構50と、歯車減速機60とからなる。
電動モータ40は、サーボモータが好ましい。この電動モータ40は、適当な形状のブラケット41及びテンション金具42を用いて、歯車減速機60の上面に取付けることができる。
なお、テンション金具42は、ジャッキボルト43を備えており、このジャッキボルト43により、歯付きベルト53のテンション(張力)を調整することができる。
【0033】
プレ減速機構50は、一対の歯付きプーリ51、52と、これらの歯付きプーリ51、52に掛け渡す歯付きベルト53からなる。歯付きプーリ51、52の歯数は任意であるが、例えば、電動モータ40側の歯付きプーリ51は42歯で、歯車減速機60側の歯付きプーリ52は64歯である。この場合、プレ減速機構50の減速比は、64/42=1.52となる。
【0034】
仮に、64歯を65歯に変えると、減速比は、65/42=1.55になる。(1.55−1.52)÷1.52=0.02の計算により、1歯の変更で減速比は2%変化した。歯数を変更したときには、ジャッキボルト43により、電動モータ40のモータ軸と歯車減速機60の入力軸62との軸間距離を変更することで、歯付きベルト53の張りを適正にすることができる。すなわち、プレ減速機構50では、モータ軸と入力軸62との軸間距離を極めて容易に変更することができる。
【0035】
歯付きプーリ51、52は、平プーリ又はVプーリであってもよく、歯付きベルト53は、平ベルト又はVベルトであってもよい。これらは構造が単純であり、安価である。
ただし、平ベルトやVベルトは、プーリとの間で滑りが起こりやすい。この点、歯付きプーリ51、52及び歯付きベルト53であれば、滑る心配がないので、より好ましい。
【0036】
歯車減速機60は、減速機ケース61と、この減速機ケース61に回転自在に取付けられた入力軸62、中間軸63及び出力軸64と、入力軸62に取付けられた第1小径ギヤ65と、中間軸63に取付けられた第1大径ギヤ66及び第2小径ギヤ67と、出力軸64に取付けられた第2大径ギヤ68とからなり、第1小径ギヤ65と第1大径ギヤ66との間で第1段減速比が得られ、第2小径ギヤ67と第2大径ギヤ68との間で第2段減速比が得られる。
第1段減速比と第2段減速比の積が、歯車減速機60の減速比となる。歯車減速機60の減速比は、例えば、8.145である。
【0037】
なお、減速機ケース61には、出力軸64を囲うように、フランジ61Fが設けられている。このフランジ61Fにおける雌ねじ61aのピッチ円はD2であり、ピッチはp2である。
【0038】
電動モータ40の回転速度が1980rpmであれば、1980÷1.52÷8.145=160の計算により、歯車減速機60の出力軸64の回転速度は160rpmとなる。この160rpmは、油圧モータ(図1、符号21)の回転速度に合致する。
なお、トルクは減速比に比例して変化する。
電動モータ40の出力トルクがTmであれば、歯車減速機60の出力トルクは、(Tm×1.52×8.145=12.3×Tm)となり、歯車減速機60の出力トルクを油圧モータの出力トルクに合わせることができる。
【0039】
歯車減速機60の減速比は、歯数を変更することにより変更することができるが、入力軸62と中間軸63の軸間距離は決まっているため、例えば、第1小径ギヤ65の歯数を1歯増やすと、第1大径ギヤ66の歯数を1歯減じる。結果、第1減速比は5%程度増加する。この5%程度は、プレ減速機構50の2%程度より十分に大きい。
5%増加すると、歯車減速機60の減速比は、8.145の次が8.552となり、上記した出力トルクの調整が難しくなる。
この点、プレ減速機構50を設けることにより、プレ減速機構50の減速比で歯車減速機60の減速比を調整することができ、出力トルクの調整が容易になる。
【0040】
図5に示すように、アダプタ70と軸継手80とを準備する。
アダプタ70は、筒部71と、この筒部71の両端に設けたフランジ72、73とからなる。
このアダプタ70の一方のフランジ72は、スクリュー駆動部30のフランジ31Fと同形である。
アダプタの他方のフランジ73は、歯車減速機60のフランジ61Fと同形とする。
【0041】
なお、図3で説明したように、スクリュー駆動部30のフランジ31Fと油圧モータ21のフランジ21Fは、共にピッチ円がD1でピッチがp1であり、同形である。
【0042】
また、軸継手80は、一方にスクリュー駆動部30のスプライン穴36に嵌るスプライン軸81を備え、他方に歯車減速機60の出力軸64に嵌るスプライン穴82を備えている。
【0043】
組立方法は任意であるが、例えば、歯車減速機60の出力軸64に軸継手80を取付ける。歯車減速機60にボルト74にてアダプタ70を取付ける。
次に、歯車減速機60を移動し、軸継手80をスクリュー駆動部30に取付けつつ、アダプタ70をスクリュー駆動部30に当て、ボルト75で固定する。
【0044】
図6に示すように、歯車減速機60にプレ減速機構50及び電動モータ40を取付ける。プレ減速機構50及び電動モータ40は、予め歯車減速機60に取付けておくことは差し支えない。
次に、スクリュー駆動部30及びアダプタ70に、透明又はほぼ透明の潤滑油(図7、符号99)を注入する。この潤滑油で、軸受32、33、スプライン軸81及びスプライン穴82などを潤滑する。
【0045】
ところで、多くの軸は軸受で支持されるが、軸継手80は軸受で支持されていない。
軸受で支持されている構造に比較して、軸受で支持されない構造では、長期間使用すると摩耗が発生する可能性がある。具体的には、スプライン穴の溝とスプライン軸の突条とが擦れ合う。
摩耗の程度は許容範囲に留まる。しかし、対策を講じるに越したことはない。その対策の一例を、図7に基づいて説明する。
【0046】
図7(b)に示すように、覗き窓90は、筒部71に設けた適当な大きさの穴91及びこの穴91より少し小径の穴92と、穴91と穴92とで形成される段部93に当てるパッキン94と、このパッキン94に当てるガラス(又は透明樹脂)板95と、このガラス板95を抑えるリングナット96とからなる。
【0047】
このような構造の覗き窓90は、筒部71に、1個、2個又は3個以上設ける。ただし、個数を増やすと、アダプタ70の構造が複雑になり、好ましくない。
図7(a)に示すように中心を通る線97上に左右2個設けることが推奨される。1個からランプ98の灯りを投入し、残る1個から目視することができる。
【0048】
万一、軸継手80に摩耗が進行すると、摩耗粉が潤滑油99に拡散するが、潤滑油99が汚れ、この汚れを覗き窓90で検知することができる。
【0049】
以上により、図8に示すような、油圧式射出成形装置をベースにした射出成形装置10Bが得られる。すなわち、この射出成形装置10Bは、スクリュー18の回転を電動モータ40で実施するため、油圧で実施する型締シリンダ24の作動と、電動モータ40で実施する計量工程とを同時並行的に実施することができる。
【0050】
図8に示す油圧配管26に、短い油圧モータ用分岐管26aが設けられ、この短い油圧モータ用分岐管26aがキャップ26bで塞がれている。
本発明によれば、油圧ポンプ25及び油圧配管26が残っているため、何時でも、図8図1に戻すことができるという利点もある。
【0051】
本発明は、射出成形装置10Bを新設する場合と、既存の設備を改造して射出成形装置10Bを得る場合のいずれにも適用できる。
・射出成形装置10Bを新設する場合:
図1に示す油圧式射出成形装置10の設計図に、アダプタ70、軸継手80、歯車減速機60、プラ減速機構50及び電動モータ40の図面を加えるだけで、図8に示す射出成形装置10Bを得ることができ、設計の負担が大幅に軽減される。
【0052】
・改造により射出成形装置10Bを得る場合:
図1に示す油圧式射出成形装置10から油圧モータ21を外し、アダプタ70、軸継手80、歯車減速機60、プラ減速機構50及び電動モータ40を取付けるだけで、図8に示す射出成形装置10Bを得ることができ、設備費用が大幅に軽減される。
【0053】
尚、実施例では、軸継手80の一端にスプライン軸81、他端にスプライン穴82を設けたが、両端共にスプライン軸にすることや、両端共にスプライン穴にすることは差し支えない。スプライン軸81はキー付き軸であってもよく、スプライン穴82はキー溝付き穴であってもよい。
要は、軸継手80の形状は、スクリュー駆動部30の中継軸34の形状、及び歯車減速機60の出力軸64の形状によって決めればよい。
【0054】
また、トルク可変機構45は、油圧駆動と同等のトルクをスクリューへ付与することができる機構であればよく、無段変速機のみで構成することが可能であるため、プレ減速機構50と歯車減速機60とに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、油圧式射出成形装置を一部変更した射出成形装置に好適である。
【符号の説明】
【0056】
10…ベースとなる油圧式射出成形装置、10B…射出成形装置、16…移動台、18…スクリュー、21…油圧モータ、21F…油圧モータのフランジ、22…射出シリンダ、23…射出装置移動シリンダ、25…油圧ポンプ、26…油圧配管、26a…短い油圧モータ用分岐管、30…スクリュー駆動部、31F…スクリュー駆動部のフランジ、40…電動モータ、45…トルク可変機構、50…プレ減速機構、51、52…歯付きプーリ、53…歯付きベルト、60…歯車減速機、61F…歯車減速機のフランジ、64…歯車減速機の出力軸、70…アダプタ、71…筒部、72、73…筒部に設けたフランジ、80…軸継手、90覗き窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8