特許第6840744号(P6840744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840744
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】ポンプ、特に血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/804 20210101AFI20210301BHJP
【FI】
   A61M1/10 119
【請求項の数】21
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-517851(P2018-517851)
(86)(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公表番号】特表2018-535727(P2018-535727A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016073702
(87)【国際公開番号】WO2017060257
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】15189241.1
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515170724
【氏名又は名称】エーツェーペー エントヴィッケルングゲゼルシャフト エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】シェッケル マリオ
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ ヨルク
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−504091(JP,A)
【文献】 特表2004−514506(JP,A)
【文献】 特表2009−530041(JP,A)
【文献】 特表2012−531975(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0093764(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0178986(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00 ― 60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる駆動シャフト(3)と、前記駆動シャフト(3)の遠位領域で前記駆動シャフト(3)に接続された送達要素(6)と、前記送達要素(6)を取り囲む筐体(5)とを備えるポンプ、特に血液ポンプであり、前記送達要素(6)および前記筐体(5)が、強制的に圧縮された後で自動的に展開するように設計されており、前記筐体(5)が、少なくとも1つの入口開口(23)を備える入口領域(22)と、前記送達要素(6)の一領域を取り囲む液密領域(20)と、ポンプ媒体の出口となる少なくとも1つの開口(25)を備えた出口領域(24)とを備える、ポンプ、特に血液ポンプであって、
前記送達要素(6)が、前記出口領域(24)中に突出するように配置されていることを特徴とする、ポンプ、特に血液ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプであって、前記出口領域(24)が、前記送達要素(6)の軸方向長さの、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも25%重なり合うことを特徴とするポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポンプであって、前記出口領域(24)が、前記送達要素(6)の軸方向長さの、最大で75%、好ましくは最大で65%、特に好ましくは最大で50%重なり合うことを特徴とするポンプ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のポンプであって、前記筐体(5)が、格子(19)を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載のポンプであって、前記格子(19)が、形状記憶材料を含むことを特徴とするポンプ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のポンプであって、前記筐体(5)が、弾性被覆(21)を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載のポンプであって、前記液密領域(20)が、少なくとも部分的には前記弾性被覆(21)で構成されることを特徴とするポンプ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のポンプであって、前記筐体(5)が、膨らんだ状態にあるときに、前記出口領域(24)に、送達方向(26)に先細になる円錐部分を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項9】
請求項8に記載のポンプであって、前記筐体(5)が、膨らんだ状態にあるときに、前記出口領域(24)に、前記送達方向(26)に位置する端部で前記円錐部分に接続された基本的に管状の部分を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項10】
請求項に記載のポンプであって、前記格子(19)が、前記液密領域(20)内より前記出口領域(24)内の方が大きな格子開口を有することを特徴とするポンプ。
【請求項11】
請求項8または9に記載のポンプであって、前記出口領域(24)の一領域が、前記筐体(5)から前記送達方向(26)に延びる流出シールド(27)によって取り囲まれることを特徴とするポンプ。
【請求項12】
請求項8または9に記載のポンプであって、前記出口領域(24)の一領域が、前記筐体(5)から前記送達方向(26)に延びる流出管(27’)によって取り囲まれることを特徴とするポンプ。
【請求項13】
請求項12に記載のポンプであって、前記流出管(27’)が、逆止弁を形成するように可撓性になるように設計されていることを特徴とするポンプ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のポンプであって、前記入口領域(22)が、前記送達要素(6)の軸方向長さと重なり合わないことを特徴とするポンプ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のポンプであって、前記駆動シャフト(3)が、前記駆動シャフト(3)の近位端部において、前記駆動シャフト(3)を駆動するモータに接続されていることを特徴とするポンプ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載のポンプであって、前記シャフト(3)が、可撓性シャフト(3)であることを特徴とするポンプ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載のポンプであって、前記シャフト(3)が、カテーテル(2)内を案内されることを特徴とするポンプ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載のポンプであって、前記ポンプが、患者の心室から血管中に血液を送り込むように構成され、前記駆動シャフト(3)が、近位領域で、患者の体外のモータ(7)に接続されるように構成されることを特徴とするポンプ。
【請求項19】
請求項に記載のポンプであって、前記格子(19)が、前記筐体(5)の一領域に基本的に菱形の格子開口を備える菱形格子として設計されていることを特徴とするポンプ。
【請求項20】
請求項19に記載のポンプであって、前記格子(19)が、格子ストラット(45)を含み、前記菱形格子の外周に沿った格子ストラット(45)の数が、mおよびnを自然数としてm・2であり、好ましくは32または40であり、mが2より大きく、好ましくは3より大きいことを特徴とするポンプ。
【請求項21】
請求項20に記載のポンプであって、前記筐体が、前記出口領域(24)で、外周に沿ってm本、好ましくは4本または5本の格子ストラット(45)を有することを特徴とするポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、請求項1のプリアンブルに記載するポンプ、特に血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近位端部および遠位端部とそれらの間に配置されたカテーテルとを備え、可撓性駆動シャフトがカテーテルの内部を案内される血液ポンプは、現況技術で知られている。このような血液ポンプは、通常、折り畳み可能筐体および折り畳み可能送達要素を備えるポンプヘッドを遠位端部に備え、この送達要素は、駆動シャフトの遠位領域に接続されている。このようなポンプヘッドは、手の届きにくい位置まで案内することができる。例えば、このようなポンプヘッドは、心臓の左心室から大動脈に血液を送達するために、大動脈弓を介して大腿動脈を通して患者の大動脈弁の領域に挿入することができる。駆動シャフトは、血液ポンプの近位端部において、通常は患者の体外に位置するモータによって駆動される。このような血液ポンプは、例えば、文献、欧州特許第2868331A2号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、改良されたポンプ、特に動作時により効率が高い改良された血液ポンプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、メインクレームの特徴を備えたポンプによって達成される。従属請求項の特徴および実施例から、他にもさらに発展させることができる。
【0005】
提案するポンプ、特に血液ポンプは、軸方向に延びる駆動シャフトと、駆動シャフトの遠位領域で駆動シャフトに接続された送達要素と、送達要素を取り囲む筐体とを備える。送達要素および筐体は、強制的に圧縮された後で自動的に展開するように設計されている。筐体は、さらに、少なくとも1つの入口開口を備える入口領域と、送達要素の一領域を取り囲む液密領域と、ポンプ媒体の出口となる少なくとも1つの開口を備えた出口領域とを備える。送達要素は、出口領域中に突出するように配置されている。
【0006】
特に、送達要素は、筐体および送達要素が膨らんだ状態にあるときに外側領域中に突出するように配置されるものと考えることもできる。出口領域は、送達方向に配置された送達要素の一領域を取り囲む。出口領域に上記の少なくとも1つの開口があることにより、送達要素は、出口領域では完全に液密に封止されるわけではない。このように、出口領域は、送達方向側の送達要素の端部に位置する送達要素の一領域を取り囲むことができる。液密領域は、通常は、送達方向に位置する入口領域の端部に接続し、出口領域は、通常は、送達方向に位置する液密領域の端部に接続する。入口領域、液密領域、および出口領域は、少なくともいくつかの部分で、通常は、基本的に環状の断面を有する。ポンプ媒体は、ポンプの動作時に、入口領域を通って筐体に流入し、出口領域を通って筐体から出るように企図されている。
【0007】
筐体は、通常は、出口領域に、軸方向開口に加えて側方開口を備え、送達されるポンプ媒体が、出口領域において径方向に、すなわち駆動シャフト軸に対して直交して、筐体から流出することができるように、すなわち流出するときに少なくとも径方向速度成分を有するようになっている。
【0008】
驚くべきことに、このような構成により、上述のタイプの知られている血液ポンプと比較して、ポンプ出力を劇的に高めることができることが分かっている。例えばモータ出力が同じであるとすると、このようにして、所与の時間間隔内に送達される流体体積を、最大で50%高めることができる。
【0009】
通常は、ここでの送達要素は、液密領域から部分的に突出する。こうして、送達要素は、出口領域中に部分的に突出する。
【0010】
例えば、出口領域は、送達要素の軸方向長さと、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも25%重なり合うものと考えることもできる。
【0011】
さらに、出口領域は、送達要素の軸方向長さと、最大で75%、好ましくは最大で65%、特に好ましくは最大で50%重なり合うものと考えることもできる。
【0012】
筐体は、通常は、特に前記出口領域に格子を備える。格子は、高い信頼性で膨らまし、圧縮することができるように、形状記憶材料、または適当な記憶合金を含むことができる。格子は、例えば、ニチノール、プラスチック、鉄合金、または銅合金を含むことができる。筐体は、入口領域、および/または液密領域、および/または出口領域に格子を含むものと考えることができる。
【0013】
通常は、筐体は、弾性被覆を備える。弾性被覆は、例えば、場合によって存在することがある格子の内側および/または外側に配置することができる。被覆は、格子の開口を閉じるのに適しており、例えば、ポリウレタン被覆とすることができる。ただし、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、またはパリレンなどを使用することもできる。
【0014】
液密領域は、少なくとも部分的には弾性被覆で構成することができる。出口領域および入口領域は、通常は、格子開口を有する格子で構成され、出口領域と入口領域の間の液密領域は、格子を覆う弾性被覆で構成される。
【0015】
筐体は、膨らんだ状態にあるときに、出口領域に、送達方向に円錐形に先細になる円錐部分を有するものと考えることもできる。筐体は、膨らんだ状態にあるときに、入口領域に、送達方向に広がる円錐部分を有するものと考えることもできる。
【0016】
さらに、筐体は、膨らんだ状態にあるときに、出口領域に、送達方向に位置する端部で前記円錐部分に接続された基本的に管状の部分を備えることもできる。出口領域の管状部分は、送達方向と反対側の端部で液密領域の管状部分に接合することができる。
【0017】
通常は、格子は、液密領域内より出口領域内の方が大きな格子開口を有する。さらに、格子が、液密領域内より入口領域内の方が大きな格子開口を有するものと考えることもできる。貫流が生じる筐体の領域で開口を拡大することにより、ポンプによって血液が損傷を受けることを防止する、または少なくとも最小限に抑えることができる。
【0018】
出口領域の一領域が、流出要素によって取り囲まれるものと考えることもできる。特に、出口領域の一領域が、ポンプ筐体から送達方向に延びる流出シールドによって取り囲まれるものと考えることもできる。流出シールドは、基本的に、円錐台形の側面に対応する形状を有することができる。通常は、流出シールドの先細端部が、筐体の、特に液密領域に固定される。流出シールドの拡径端部は、流出シールドが出口領域を部分的に、または完全に取り囲むように送達方向に位置合わせすることができる。流出シールドによって、ポンプ内の流れの状態をさらに最適化することができ、これにより送達出力を改善することができる。
【0019】
出口領域の一領域を、ポンプ筐体から送達方向に延びる流出管によって取り囲むことも可能である。通常は、流出管は、逆止弁を形成するように可撓性になるように設計されている。このような流出管は、流出シールドと同様に、流れの状態のさらなる最適化、およびポンプ出力の向上に寄与することができる。例えば、文献、欧州特許2345440B1に記載されている流出管が可能である。
【0020】
通常は、入口領域は、送達要素の軸方向長さと重なり合わない。したがって、送達要素は、入口領域中に突出しないように配置することができる。これにより、ポンプの吸引領域において、患者の身体の部位から送達要素を遮蔽することができ、これにより、患者が負傷することを回避することができる。
【0021】
駆動シャフトは、通常は、駆動シャフトの近位端部において、駆動シャフトを駆動するモータに接続されている。このシャフトは、例えば、カテーテル内を案内される可撓性シャフトとすることができる。
【0022】
このポンプは、患者の心室から血管中に血液を送り込むように構成されることができ、駆動シャフトは、近位領域で、患者の体外にあるモータに接続されるように構成される。モータは、例えば、患者の大腿に固定されるように設計することができる。カテーテルおよび駆動シャフトは、この目的のために、少なくとも50cm、好ましくは少なくとも90cmの適切な長さを有することができる。可撓性駆動シャフトの最大長さは、200cm、好ましくは150cmである。
【0023】
格子は、筐体の一領域に基本的に菱形の格子開口を備える菱形格子として設計することができる。
【0024】
格子が、格子ストラットを含み、菱形格子の外周に沿った格子ストラットの数が、mおよびnを自然数としてm・2であり、好ましくは32または40であり、mが2より大きく、好ましくは3より大きいものと考えることもできる。また、筐体は、出口領域で、外周に沿ってm本、好ましくは4本または5本の格子ストラットを有するものと考えることもできる。
【0025】
このような設計により、例えば筐体の遠位端部の方向または近位端部の方向に、格子ストラットを特に安定して減少させることができる。さらに、このようにして、格子開口を特に安定して拡大することができる。ここで、特定の軸方向位置において筐体の外周に沿って全ての格子ストラットを対にしてY字型に接合するものと考えることもできる。このような接合を、筐体のさらに別の1つまたは複数の軸方向位置において繰り返し行うこともできる。例えば筐体の外周に沿って5本のストラットと5つの開口があるとすると、例えば、筐体の端部でストラットの数を10、20、40、…と段階的に増加させることができる。例えば、筐体の外周に沿って4(3)本のストラットおよび4(3)つの開口がある状態から開始して、ストラットおよび開口の数を、8(6)、16(12)、32(24)、…と段階的に増加させることもできる。ここで、nは段階数であり、mは、接合が開始する軸方向位置における筐体の外周に沿ったストラットおよび開口の数である。
【0026】
本願は、さらに、軸方向に延びる駆動シャフトと、駆動シャフトの遠位領域で駆動シャフトに接続された送達要素と、送達要素を取り囲む筐体とを備える血液ポンプに関する。送達要素および筐体は、強制的に圧縮された後で自動的に展開するように設計されている。筐体は、格子と、少なくとも1つの入口開口を備える入口領域と、送達要素の一領域を取り囲む液密領域と、ポンプ媒体の出口となる少なくとも1つの開口を備えた出口領域とを備える。格子は、さらに、格子開口と格子ストラットとを備え、格子の第1の軸方向位置における格子の外周に沿った格子ストラットの数は、mであり、格子は、格子の外周に沿った格子ストラットの数が、格子の第2の軸方向位置におけるm・2本までn段階で軸方向に増加するように設計されており、mおよびnは、自然数であり、mは、2より大きく、好ましくは3より大きい。mは、例えば3、4、または5であってもよい。あるいは、mは、例えば6、8、または10であってもよい。
【0027】
通常は、格子の第2の軸方向位置における格子の外周に沿った格子ストラットの数は、32または40であるものと考えられる。さらに、通常は、筐体は、出口領域で、外周に沿ってm本、好ましくは4本または5本の格子ストラットを含むものと考えられる。このような実施形態では、血液が出口領域の格子ストラットの間を流れるときの血液の損傷を軽減することができる。
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ポンプ構成を示す概略図である。
図2】ポンプヘッドを示す概略図である。
図3(a)】ポンプヘッドを示す、さらに別の概略図である。
図3(b)】ポンプヘッドを示す、さらに別の概略図である。
図4】筐体を示す概略図である。
図5】モータを示す概略図である。
図6】別のモータを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、ポンプ構成1を示す概略図である。ポンプ構成1は、カテーテル2を含み、このカテーテル2内を、可撓性駆動シャフト3が案内される。カテーテル2は、ポンプヘッド4に接続されている。このポンプヘッド4は、筐体5と、この筐体5内に配置された、駆動シャフト3の近位端部に接続されたモータ7によって駆動シャフト3を介して駆動することができる送達要素6とを含む。ポンプヘッド4とカテーテル2および駆動シャフト3とは、左心室10の領域内のポンプヘッド4が大動脈弁11の領域に位置するように、ポート8を介して大腿動脈9内に導入される。動作時には、駆動シャフト3がモータ7によって駆動され、ポンプ構成1は、左心室10から大動脈12内に血液を送達する。図示の左心支援用の構成では、ポンプ構成1の送達方向は、ポンプ構成1の遠位端部13からポンプ構成1の近位端部14に向かう方向に対応する。
【0031】
ただし、ポンプ構成1は、例えば右心支援に適したポンプ構成1の近位端部14から遠位端部13に向かう方向に血液を送達するように構成することもできる。
【0032】
ポンプヘッド4を、図2に概略的に示す。図2以降の図で繰り返し示される特徴には、同じ参照番号を付してある。ポンプヘッド4は、送達要素6と、筐体5とを含む。この例の送達要素6は、回転羽根の形態をした2つの可撓性区間を備えるポンプロータとして設計されている。さらに、ポンプヘッド4の遠位領域15に取り付けられた駆動シャフト3も示されている。弾性変形可能な材料で構成されるいわゆるピグテール17が、ポンプヘッド4の遠位端部16に設けられている。円筒要素18が、駆動シャフト3に堅く接続されている。送達要素6は、円筒要素18に固定されている。送達要素6および筐体5は、展開可能な設計であり、強制的に圧縮された後で自動的に展開することができるようになっている。送達要素6は、プラスチック製である。筐体5は、形状記憶材料ニチノール製である。送達要素6および筐体5が展開可能な設計であることにより、ポンプヘッド4全体を展開することができる。
【0033】
筐体5は、菱形格子19として設計され、液密領域20にポリウレタン製の弾性被覆21を備える。弾性被覆21は、格子19によって液密領域20に形成された菱形格子開口を弾性被覆21によって液密に閉じることができるように、菱形格子19の内側および外側を覆っている。
【0034】
筐体5は、さらに、弾性被覆21によって覆われていない入口領域22を備える。入口領域22では、菱形格子開口は入口開口となる。図2では、例示を目的として、そのうちの1つに参照番号23を付してある。筐体5は、やはり弾性被覆21によって覆われていない出口領域24を備える。出口領域24では、菱形格子開口は出口開口となる。例示を目的として、そのうちの1つを図示し、参照番号25を付してある。
【0035】
ポンプ構成1の動作時には、駆動シャフト3が、モータ7によって駆動され、駆動シャフト3に接続された送達要素6が、駆動シャフト3の軸の周りで回転する。これにより、血液は、入口領域22の入口開口を通して筐体5内に移送され、その後、出口領域24の出口開口を通って筐体5から出て行く。血液は、このようにポンプ構成1によって送達方向26に送達される。
【0036】
弾性被覆21は、送達要素6の軸方向の全長を完全に取り囲んでいるわけではない。送達要素6は、出口領域24の途中まで突出し、少なくとも参照番号25で示す出口開口が、送達要素6の側方すなわち径方向に隣接して配置されるようになっている。これに対して、遠位端部の弾性被覆21は、送達要素6が入口領域22中に全く、または有意に突出せず、したがって側方を入口開口で囲まれないように設計されている。
【0037】
弾性被覆21および送達要素6の設計、ならびにそれらの互いに対する配置は、送達要素6の軸方向長さの約3分の1が、液密領域20を形成する弾性被覆21によって取り囲まれないようになっている。図示の例では、この分の送達要素6の軸方向長さは、出口領域24によって取り囲まれている。
【0038】
ポンプヘッド4は、流出要素をさらに備える。これは、図3(a)に示すような流出シールド27として、または図3(b)に示すような流出管27’として設計することができる。
【0039】
図3(a)に示す流出シールド27は、筐体5の液密領域20で筐体5に固定されている。流出シールド27は、円錐台形の側方表面の形状を有し、送達方向26に向かって広がるように送達方向26に延びている。送達要素6および出口領域24は、流出シールド27によって取り囲まれている。別の実施形態では、出口領域24が流出シールド27によって部分的に取り囲まれることも考えられる。
【0040】
図3(b)のポンプヘッド4は、流出シールド27の代わりに流出管27’が設けられる点だけが、図3(a)に示すポンプヘッド4と異なる。この流出管27’は、液密領域20で筐体5に固定され、そこから送達方向26に延びている。流出管27’は、ポリウレタン製であり、送達方向26に位置する領域に開口28,28’ ,28’’を含む。図示の例では、出口領域24は、流出管27’によって完全に取り囲まれている。流出管27’は可撓性であり、送達方向26とは反対の方向に血流が生じると、カテーテル2および/または筐体5に押し付けられることによって自動的に閉じる。
【0041】
図4は、筐体5の菱形格子19を示す概略図である。また、弾性被覆21を備えた液密領域20、ならびに入口領域22および出口領域24も示してある。入口領域22および出口領域24の両領域は、円錐形状を有し、液密領域20は、基本的に管状である。格子19は、格子ストラットを含み、そのうちの1つに、例示を目的として参照番号45を付してある。格子ストラット45は、基本的に菱形の格子開口が、液密領域20内より入口領域22および出口領域24内の方が大きくなるように走っている。図4では、全体がよく分かるように、筐体5の向こう側にある格子ストラットは点線のみで示してある。
【0042】
液密領域20では、格子ストラット45は、比較的細かいメッシュ状の格子を形成する。格子19は、液密領域20では筐体5の外周に沿って、32本のストラットを含む、あるいは結節点を有する筐体5の軸方向位置でこの外周を考えれば、16個の結節を備える。このような密なメッシュ状の格子19により、液密領域20の筐体5のほぼ円形の断面が得られる。
【0043】
筐体5の外周に沿った格子ストラット45の数は、液密領域20から入口領域22および出口領域24の方向に、格子ストラットを対にして結合することによって半減し、対応する領域において、筐体5は、結節点のない外周に沿って16本の格子ストラット45を含む。格子ストラット45の数は、その後、入口領域22および出口領域24の方向に、格子ストラットを対にして結合することによって再び減少し、これらの領域では、筐体5は、8本の格子ストラット45を備える。さらに、出口領域24において上述の方法で格子ストラット45の数をさらに減少させ、筐体5は、送達方向26にさらに進んだ位置にある領域では、外周に沿って4本しか格子ストラット45を有していない。
【0044】
上記のように格子ストラット45の数を減らすことにより、液密領域20内より入口領域22および出口領域24において大きな格子開口を有する格子19が形成される。
【0045】
出口領域24および入口領域22の円錐領域の格子ストラット45は、螺旋状構造を形成し、これによりポンプヘッド4をカニューレから押し出したときにポンプヘッド4を確実に展開することができる。
【0046】
図5は、モータ7を示す概略図である。モータ7は、シャフトスタブ29の領域で、シャフトスタブ29に接着されているカテーテル2に接続される。可撓性駆動シャフト3は、カテーテル2内を案内される。モータ7は、さらに、ロータ磁石31を有するロータ30を備える。
【0047】
可撓性駆動シャフト3は、ロータ30に接続されており、ロータ30が回転すると、ロータ30から可撓性駆動シャフト3にトルクが伝達されるようになっている。このトルクが、可撓性駆動シャフトを介して送達要素6に伝達され、ポンプ構成はモータ7によって駆動される。
【0048】
ロータ30は、2つの軸受32,33によって軸方向に取り付けられている。これらの軸受のうちの一方33は、ロータ30を軸方向に安定させるためのばね要素34によって付勢されている。ばね要素34は、例えば、コイルばねまたは環状ばねとして設計される可能性がある。軸受32,33は、それぞれ、玉軸受または滑り軸受として設計される可能性がある。軸受32,33が玉軸受として設計される場合には、軸受32,33は、玉軸受が磁化不能材料を有するように、セラミック製の玉と、プラスチック製の保持器とを備える。軸受のリングは、例えば磁化可能金属から設計することも、あるいは磁化不能材料から設計することもできる。軸受32,33が滑り軸受として設計される場合には、これらの軸受はそれぞれ、DLCコーティングインプラント鋼およびイットリウム安定化酸化ジルコニウムを含む。
【0049】
ロータ磁石31は、生体適合性のDLCコーティングを含む。モータ7は、さらに、ステータ36を備える。ステータ36は、電気接続部38に導電的に接続された、いくつかの巻線37を備える。ステータ36は、さらに、バックアイアン積層39を備える。巻線37は、熱伝達性の酸化アルミニウムを含む生体適合性のエポキシ樹脂でポッティングされている。
【0050】
環状の断面を有する隙間40が、巻線37のコーティングの内側と、ロータ磁石31のコーティング35の外側との間に形成されている。隙間40は、0.2mmの幅を有する。この隙間40は、リンス接続部42に接続されたリンス開口41と流体接続しており、リンス接続部42は、モータ7の近位端部に配置されている。隙間40は、さらに、駆動シャフト3とカテーテル2の間に形成された中間空間と流体接続している。したがって、例えば、リンス接続部42を介してリンス開口41および隙間40ならびに中間空間にグルコース溶液を流すことができる。グルコース溶液は、このようにして、動作中にロータ30の周りを流れる。ロータ磁石31の外側と巻線37の内側の間の径方向距離は、0.5mmである。ここで、巻線37の内径は、ロータ磁石31の外径の1.1倍に対応する。
【0051】
ステータ36とロータ30は、使用者が解除できないような方法で互いに接続されており、モータ筐体43に組み込まれている。モータ筐体43は、例えば、グリップまたは冷却体に接続することができる。モータは、巻線37とロータ磁石31の間の距離が非常に小さいことにより、非常に効率的に動作させることができるので、この筐体に接続されていることがあるモータ筐体43およびグリップまたは冷却体は、ポンプ構成1が32000rpmの速度および毎分2.5lの送達出力で動作するときに露出表面において40℃未満にしか加熱されない。
【0052】
図6に示すモータ7’は、この実施形態のステータ36が、隙間40を画定する液密スリーブ44を備える点だけが、図5に示すモータ7と異なる。この実施形態では、隙間40の幅は0.15mmである。スリーブ44は、ポリエーテルエーテルケトンで構成され、磁気的に不活性である。スリーブ44は、例えばスリーブ44によって巻線37とステータ36の他の部分とが場合によっては隙間40を通って流れることもあるリンス流体から分離されるように配置される。軸方向のスリーブ44の長さは、ロータ磁石31の軸方向長さの約1.2倍である。
【0053】
単に実施例に開示しただけの様々な実施形態の特徴は、互いに結合することができ、また個別に請求することができる。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5
図6