特許第6840765号(P6840765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6840765合成により製造された石英ガラスのディフューザー材料及びその全体又は一部を構成する成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840765
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】合成により製造された石英ガラスのディフューザー材料及びその全体又は一部を構成する成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/06 20060101AFI20210301BHJP
   C03C 11/00 20060101ALI20210301BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20210301BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20210301BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20210301BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   C03C3/06
   C03C11/00
   C03B20/00 C
   F21V3/00 320
   F21V3/06
   G02B5/02 B
   C03B20/00 G
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-541664(P2018-541664)
(86)(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公表番号】特表2019-511985(P2019-511985A)
(43)【公表日】2019年5月9日
(86)【国際出願番号】EP2017053126
(87)【国際公開番号】WO2017137618
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2019年11月12日
(31)【優先権主張番号】16155505.7
(32)【優先日】2016年2月12日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】16157577.4
(32)【優先日】2016年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】シュライヒ,ゲリット
(72)【発明者】
【氏名】ニュルンベルク,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツェンドルファー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】チョリッチュ,ナディネ
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,ベルンハルド
(72)【発明者】
【氏名】クレット,ウルスラ
(72)【発明者】
【氏名】ドネロン,マシュー
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05674792(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0268815(US,A1)
【文献】 特開昭61−126502(JP,A)
【文献】 特開2001−180963(JP,A)
【文献】 特開平06−305736(JP,A)
【文献】 特開2002−316825(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069194(WO,A1)
【文献】 特開2005−239537(JP,A)
【文献】 特開2014−091634(JP,A)
【文献】 特開昭62−059535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
C03B 19/06
C03B 20/00
G02B 5/02
F21V 3/00
F21V 3/06
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的純度が少なくとも99.9%SiOであり、クリストバライト含有量が1%以下であり、密度が2.0から2.18g/cmの範囲であり、空孔を含んでいる石英ガラスのディフューザー材料であって、
前記空孔の少なくとも80%は、最大空孔寸法が20μm未満であり、
(1)前記石英ガラスは合成石英ガラスであり、
(2)前記石英ガラスはヒドロキシル基含有量が200wt.ppmを超える範囲であり、
(3)前記石英ガラスは、1017分子/cmから1019分子/cmの範囲の濃度で水素を含むことを特徴とするディフューザー材料。
【請求項2】
前記空孔の体積が0.9〜5%の範囲であり、好ましくは2.5%より大きいことを特徴とする請求項1に記載のディフューザー材料。
【請求項3】
前記空孔の少なくとも80%は、最大空孔寸法が10μm未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディフューザー材料。
【請求項4】
5cmの測定長さにわたって均一に分布し、1cmの試料体積を有する5つの密度測定試料が、0.01g/cm未満の密度範囲を有するという意味で、前記密度の分布が均質であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のディフューザー材料。
【請求項5】
前記空孔がネオンを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のディフューザー材料。
【請求項6】
前記石英ガラスはヒドロキシル基含有量が450+/−50wt.ppmであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のディフューザー材料。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の前記合成により製造されたディフューザー材料の少なくとも一部を構成する成形体を製造する方法であって、グリーン体が分散液と純度が少なくとも99.9%SiOのSiO粉末粒子とを含むスラリーから製造され、前記グリーン体が前記ディフューザー材料への焼結により処理され、以下の方法ステップ:
(a)珪素を含む出発物質の火炎加水分解を含む合成プロセスに基づいて、合成により製造された透明石英ガラスの出発材料を製造し、前記出発材料は200wt.ppmを超えるヒドロキシル基含有量を有し、前記出発材料は200nmの波長での透過係数k200が5×10−3cm−1未満である工程と、
(b)前記出発材料を粉砕し、SiOグレインとする工程と、
(c)前記分散液中の前記SiOグレインを前記分散液と、大部分が10μm未満の大きさである、SiO粉末粒子との前記スラリーを形成するように湿式摩砕する工程と、
(d)前記スラリーを前記SiO粉末粒子の前記グリーン体に成形する工程と、
(e)前記グリーン体を、前記ディフューザー材料を形成するように、1400℃未満の温度で焼結する工程と、
(f)水素とともに前記ディフューザー材料を充填する工程であって、水素を含む雰囲気中で少なくとも1bar及び500℃未満の温度での処理を含む工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
焼結中に分解する成分を前記スラリーに加えることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
焼結はネオンを含む雰囲気中で行われることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記出発材料は1064nmの波長での吸収係数が10ppm/cm以下であり、946nmでの吸収係数が2000ppm/cm以下であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のディフューザー材料からなる成形体であって、分光及び宇宙応用でのディフューザー、デンシトメーター標準、リモートセンシングターゲット、レーザーの共振器及びレーザーの反射器、積分球又は光源のクラッド材として使用するための成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術背景】
【0001】
本発明は、化学的純度が少なくとも99.9%SiOであり、クリストバライト含有量が1%以下であり、密度が2.0から2.18g/cmの範囲であり、合成により製造され、空孔を含んでいる石英ガラスのディフューザー材料に関する。
【0002】
さらに、本発明は、グリーン体が分散液及び合成により製造された純度が少なくとも99.9%SiOのSiO粉末粒子を含んでいるスラリーにより製造され、焼結により処理することでグリーン体をディフューザー材料とする、合成により製造された石英ガラスのディフューザー材料の少なくとも一部を構成する成形体の製造方法に関する。
【0003】
ディフューザー材料は、均一な拡散照明を提供するための固形体又は光学部品の被覆材として使用される。理想的に拡散反射する表面は非鏡面であり、ランベルトの法則により光の放射を反射する。上記法則は、光束の角度が平らになるにつれて放射強度が減少すること、その結果として表面上方の放射密度一定で放射強度が円状分布となることを示す。
【先行技術】
【0004】
「スペクトラロン」(Labsphere,Inc.の商標)は、この点で工業的標準となる。この材料は、例えば、較正パターン、積分球、及び、レーザーの反射標準として使用される。製造及び特性は、US 5,462,705 Aに記載されている。分子鎖の多孔質ネットワークを形成する、焼結されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成される。この多孔質構造は、表面及び該表面下の薄層中で多重内部反射を生じさせ、そのため、表面への光の照射は拡散反射される。
「スペクトラロン」は、反射率が99%より高い平坦な分光プロファイル、及び、赤外からおよそ300nmの波長までの幅広い波長域にわたってのランベルト反射の挙動を示す。
【0005】
しかしながら、プラスチック材料の光学的特性は時間とともに変化し、そのため、測定利用において再較正操作がしばしば必要となる。1.25−1.5g/cmの範囲の、その低い密度のために、「スペクトラロン」は機械的安定性が低く、その温度安定性もおよそ400℃以下の温度でかろうじて利用することができる。
【0006】
John D. Mason et al.による文献「A new Robust Commercial Diffuse Reflector for UV−VIS Applications」; Journal Applied Optics, Vol. 54 (25); 25.08.15; Journal ID: ISSN 0003−6935; http://dx.doi.org/10.1364/AO.54.007542に記載されているように、上記で名付けられたタイプの、合成により製造された、機械的及び熱的により安定である石英ガラスのディフューザー材料は、上記欠点の一部を回避する。「HOD−300」と呼ばれる、合成により製造された石英ガラスのディフューザー材料は、1μmから10μmの範囲の空孔寸法の多数の空孔を含み、機械加工することができる。そのディフューザー材料は、250nmからおよそ1100nmの波長域で、99%をはるかに超える、一定の高い反射率を示す。この文献は、合成石英ガラスからのディフューザー材料の製造を説明していない。
【0007】
不透明な合成石英ガラスの一般的な製造方法は、DE 102 43 953 A1により知られている。使用される出発材料は、ロール式の造粒法を使用することで、ナノスケールであり、アモルファスであり、合成により製造されたSiOの一次粒子を用いて得た多孔質SiO顆粒粒子のSiO顆粒である。この顆粒粒子のサイズは、100μmから500μmの間である。熱的に固化された多孔質の「細かい顆粒」は、塩素を含む雰囲気中、1200℃の温度の回転炉での処理により、これらの原料顆粒から製造され、1450℃の温度まで加熱することにより、それらの一部分に、完全にガラス化された合成石英ガラスグレインが製造される。細かい顆粒の粒子及び石英ガラスグレインの粒子は、160μm未満の平均サイズ(メジアン又はD50の値)を有する。上記D50の値は、累積粒子体積の50%まで到達していない粒子のサイズを示す。
【0008】
SiOの細かい顆粒及び石英ガラスグレインの50:50混合物の調製品は、脱イオン水に入れてかき混ぜられる。この分散系は、ポリウレタンライニングボールミル中で、およそ1時間撹拌され、続けて、多孔質プラスチックモールドに投入される。該多孔質プラスチックモールドでは、脱水及び外部形成が起こって開放気孔性のグリーン体を形成する。この乾燥プロセスでは、個々の顆粒粒子間に強固な結合がすでに形成されており、グリーン体は高密度化され、固化される。このことは、続く不透明な石英ガラスとする焼結を促進する。ここで達成される密度は、2.10g/cmから2.18g/cmの範囲にある。
【0009】
WO 2008/040615 A1によると、この手順の変更において、水系分散のための出発材料として熱的に高密度化されたSiO顆粒グレインの代わりに、SiOナノ粒子及びSiO含有量が少なくとも重量で99%である合成により製造された石英ガラスの球状粒子の混合物が使用される。この球状石英ガラス粒子は、1μmから3μmの範囲にサイズ分布の第一の極大を、5μmから50μmの間に第二の極大を有する多様な粒子サイズ分布を示す。例えば、2、5、15、30、及び、40μmのD50値を有する粒子分布を使用することができる。分散系の固体含有量(球状SiO粒子及びSiOナノ粒子を合わせた重量パーセント)は83%と90%の間である。アモルファスSiO粒子の多様な粒子サイズ分布及び高い固体含有量は、モールドキャスト後の分散系の均一で少ない収縮に繋がる。これは、SiOナノ粒子の添加によって促進される。ここで、この添加は、すでに上記説明されたように、アモルファスSiO粒子の間の相互作用を強めることにもなる。
【0010】
光学的に均質及び美的魅力のある不透明石英ガラスの反射体層を製造するために、分散系は、ドクターブレード装置を使用して、ランプチューブの曲面上に均一に分布される。乾燥及び1280℃の焼結炉内での焼結後、空気中で3時間の焼結時間の間に得られる反射体層は、半球反射率(積分球を使用した方法により決定される)が、300−2100nmの波長範囲において、0.8mmの厚さで、およそ95%(「スペクトラロン」の反射率に基づく)のほぼ均一な反射率を示す。210nmの波長では、反射率は98%よりも更に高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の典型的な特性のために、合成により製造された不透明な石英ガラスは、使用中に高い腐食性、機械的及び熱的負荷又は応力が予期されなければならない場合、分光光学的ディフューザーのためのディフューザー材料として、原則的に予定されている。しかしながら、ランベルト挙動に加えて、材料の均質性、及び、ある適用では紫外線放射への耐性も、高品質のディフューザーのための重要な材料パラメータとなる。これらの要求は、以前に知られている不透明な合成石英ガラスのディフューザー材料によって十分に満足されていない。
【0012】
そのため、本発明の目的は、既知の合成により製造された不透明な石英ガラスと比較して、幅広い波長域にわたるランベルト挙動の拡散反射率によってだけでなく、その材料の均質性及び紫外放射耐性によっても特徴付けられるディフューザー材料を提供することである。
【0013】
さらに、本発明の目的は、このようなディフューザー材料の再現性の高い製造を可能にする方法を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ディフューザー材料として、上述のタイプの材料から出発するこの目的は、石英ガラスはヒドロキシル基含有量が少なくとも200wt.ppmの範囲であり、空孔の少なくとも80%は、最大空孔寸法が20μm未満である本発明によって達成される。
【0015】
本発明のディフューザー材料は、照射される放射の拡散反射(以降、反射モードと記載)に使用されるディフューザー、及び、放射の透過における拡散放射体(以降、透過モードと呼ぶ)としての両方に適している。
【0016】
透過モードでは、透過光の量は、例えば、方向性半球透過率として、室温で、積分球(ウルブリヒト球)測定の原理により検出される。不透明な材料では、この因子は、放射が透過する厚さに強く依存する。このため反射モードでは、反射光の量は、典型的には積分球により方向性半球反射率として決定される。
【0017】
・ 本発明のディフューザー材料は、合成により製造された石英ガラスから構成される。合成石英ガラスは、高い純度、及び、透明性の場合300nm未満の波長の紫外放射に対しても、幅広い波長域にわたって光放射に対する高い直行透過率によって特徴づけられる。本発明のディフューザー材料では、直行透過率は、石英ガラスの多孔性により減少する。それでもなお、低い固有の吸収は、(特に紫外波長域での)散乱挙動、したがって拡散反射及び拡散透過の効率を促進させる。
【0018】
合成石英ガラスは、合成により製造された珪素を含む出発材料を使用して製造される。主成分はSiOであり、望ましくない不純物は多くてもサブppmの範囲であるという意味で、高い純度である。
【0019】
・ 天然のSiO原材料を溶融した石英ガラスと比較して、合成により製造された石英ガラスは感光し難く、高エネルギーの紫外放射に対して、より高い耐性を示す。紫外放射に対する耐性のさらなる改善を達成するため、合成石英ガラスは、200wt.ppm以上、好ましくは450+/−50wt.ppmの範囲でヒドロキシル基を含有する。ヒドロキシル基は石英ガラスの粘性を減少させる。このため、ヒドロキシル基は、石英ガラス部品への熱負荷において、高い寸法安定性という点で望ましくない。しかしながら、上記の特定の濃度のヒドロキシル基により、紫外放射への放射耐性が向上したディフューザー材料を得られることが分かった。しかしながら、500wt.ppmを超えるヒドロキシル基含有量は好ましくない。
【0020】
・ ディフューザー材料の不透明性は、空孔の数、サイズ、及び、形状により決定される。これらは、石英ガラス母材中、光学的欠陥として振る舞い、ディフューザー材料が、層の厚さに依存して、不透明な半透明又は不透明となる効果を有する。空孔はできる限り小さく、石英ガラスディフューザー材料中に均一に分布している。空孔の少なくとも80%は20μm未満の空孔サイズを有し、好ましくは15μm未満、特に好ましくは10μm未満である。上記80%の空孔の割合は1μmより大きい空孔サイズの空孔のみに関するものである。空孔は、バルジを有する非球状形状であることが好ましい。このことは、本発明の方法の説明に基づいて、以下でさらに詳細に説明する。これらの不規則な形状は、ディフューザー材料中のより効率的な光散乱に寄与する。空孔サイズは、空孔の2つの対向する空孔壁間の最大距離である。この最大距離は、DIN 66141及びISO−13322−2標準で定義される、いわゆる粒子の「フェレット径」と類似の顕微鏡画像解析によって決定される。本発明の不透明石英ガラスは、250nmと2500nmの間のとても広い波長域にわたるランベルト挙動の拡散反射率又は拡散透過率により特徴づけられる。このディフューザー材料は、機械的及び熱的に比較的安定であり、気密性がある、すなわち、開放気孔がない。ディフューザー材料は、拡散反射又は透過部品として、又は、基材上の層として存在し、高い熱的及び化学的安定性、並びに、エッチング作用を有する気体及び液体への高い耐性を要求する応用にも適している。
【0021】
空孔での拡散散乱の程度は、空孔のサイズ及び数に依存する。この観点において、空孔の体積が0.9%〜5%の範囲の場合、ここで好ましくは2.5%より大きい場合に有用であることが分かった。
【0022】
多孔質材料の「空孔の体積」は、材料中のキャビティ又はボイドにより占有される自由体積を示す。空孔の体積は、密度測定により決定される。
【0023】
均一な空孔分布及び散乱特性の高い均質性のために、5cmの測定長さにわたって均一に分布し、1cmの試料体積を有する5つの密度測定試料が、0.01g/cm未満の密度範囲を示すという意味で、ディフューザー材料が均質な密度分布を有することが、有用であることが分かった。
【0024】
本発明のディフューザー材料の石英ガラスは、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu、Cr、Mn、Ti、Al、Zr、Ni、Mo、及び、Wの全不純物含有量が0.5wt.ppm以下であることが好ましい。
【0025】
この合成石英ガラスは、SiOの含有量が、SiOの重量で少なくとも99.9%の、好ましくはSiOの重量で少なくとも99.99%の、高い化学的純度であることを保証し、そのため、不純物原子による光吸収は最小化され、深紫外域での吸収は特に減少する。
【0026】
ディフューザー材料の散乱特性及び不透明性は、空孔と石英ガラス母材の屈折率の差により影響を受ける。この屈折率の差が大きくなるにつれ、散乱及び不透明性の程度が大きくなる。空孔の屈折率は、その中が真空が優勢か、又は、気体を含んでいるか、及び、場合により気体の種類に依存する。気体は、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、又は、それらの混合物、例えば空気のようなものである。しかしながら、本発明のディフューザー材料の特に好ましい態様では、空孔はネオンを含む。
【0027】
ネオンガスは、他の気体と比べて低い屈折率を有する。ヘリウムや水素の屈折率がさらに低いことは事実である。しかしながら、石英ガラス中でのこれらの高い拡散性及び溶解性のために、これらの気体は空孔から外に出てしまい、そのため、空孔は焼結の間に崩壊してしまう。これは真空下の空孔でも生じる。ネオンは、石英ガラスに溶解しない最も低い屈折率を有する気体である。そのため、ネオンを含む空孔は低い屈折率を有し、焼結の間に消失しない。理想的には、空孔中の全気体成分がネオンである。しかしながら、ネオンガス量が少なくとも5vol.%(空孔中の全気体体積に基づく)の時に、不透明性への大きな影響はすでに達成されている。好ましくは、ネオンガス量は少なくとも30vol.%であり、特に好ましくは少なくとも50vol.%である。
【0028】
特に、高い紫外放射耐性に関して、石英ガラスは1017分子/cmから1019分子/cmの範囲の濃度で水素を含むことが好ましい。
【0029】
水素は、短波、高エネルギーの紫外放射へのディフューザー材料の曝露によって生じる石英ガラスネットワークの構造欠陥を修復することができる。これは、本発明のディフューザー材料のより良い長期安定性において重要である。そのために適した水素充填は、適用条件、特に、放射量に依存する。1017分子/cm未満の濃度では、欠陥修復効果は小さく、1019分子/cmより高い濃度を準備することは困難である。
【0030】
本発明のディフューザー材料は、例えば、分光及び宇宙応用でのディフューザーとして、デンシトメーター標準として、リモートセンシングターゲットのために、拡散反射するレーザーの共振器及び反射器のために、積分球内で、又は、光源のクラッド材として、使用される。これは、400℃を超える高い温度でのディフューザーとしての応用にも適している。
【0031】
本発明のディフューザー材料から構成される成形体又は上記のディフューザー材料を含有する成形体を製造するための本発明の方法に関して、上述のタイプの方法から出発する上記目的は、本発明に従って、以下の方法ステップを含む方法により達成される。
(a)少なくとも200wt.ppmのヒドロキシル基含有量を有する合成により製造された透明石英ガラスの出発材料を粉砕し、SiOグレインを得る工程と、
(b)前記分散液中の前記SiOグレインを前記分散液と、大部分が10μm未満の大きさである、SiO粉末粒子との前記スラリーを形成するように湿式摩砕する工程と、
(c)前記スラリーを前記SiO粉末粒子の前記グリーン体に成形する工程。
【0032】
本発明の方法は、成形体前の中間製造物が多孔質グリーン体の形態で得られるスラリー法を含む。スラリー法それ自体及びグリーン体での中間状態は、最終のディフューザー材料に影響を与え、特性を設定及び変更するための手段となる。本発明の方法は、使用される出発材料のタイプにおいて、実質的に、従来技術により知られる手順とは異なる。
【0033】
・ 方法ステップ(a)によると、合成により製造された透明石英ガラスの出発材料は粉砕される。
【0034】
合成透明石英ガラスは、例えば、合成により製造された珪素化合物の火炎加水分解又は酸化により、いわゆるゾル−ゲル法による有機珪素化合物のポリコンデンセーションにより、又は、液中での無機珪素化合物の加水分解及び沈殿により得られる。合成石英ガラスの工業的な製造では、SiOリッチな一次粒子、及び、いわゆるスート又はフィルターダストも得られる。これらの塵もまた、造粒により予め高密度化した後に、焼結又は溶融することで、合成透明石英ガラスとすることができる。適切な準備又は圧縮造粒の方法の例は、皿形造粒機械中での回転造粒、噴霧造粒、遠心アトマイゼーション、流動層造粒、造粒ミル、圧入、ローラープレス、ブリケッティング、薄片製造又は押し出し加工を使用した造粒法である。
【0035】
合成透明石英ガラスは高密度であり、高い純度により特徴付けられる。望ましくない不純物は高々サブppmの範囲で含有される。好ましくは、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu、Cr、Mn、Ti、Al、Zr、Ni、Mo、及び、Wの全不純物含有量が0.5wt.ppm以下である。
【0036】
・ スラリーの作成のための出発材料としての合成透明石英ガラスの製造は、高い材料支出及びコストが伴う。それでもなお、本発明の方法は、石英ガラスを粉砕して合成SiOグレインとする工程を含む。粉砕の間に生じる破砕された領域の表面は、比較的反応性が高く、続く処理ステップでの安定なスラリーの調製に寄与する。
【0037】
これは特に、分散液中のSiOグレインのさらなるミリングにも関係する。摩砕及び均質化プロセスの過程で、分散液は、新たに製造された粒子の反応表面を変えることができ、特にそれらの間の相互作用を引き起こすことができ、続く焼結プロセスでより高密度であり、より安定な結合に寄与することができる。アルコール又は水ベースの分散系では、分散系の極性を有する性質が粒子間の相互作用を強めることができ、グリーン体の乾燥及び焼結を促進することができる。
【0038】
・ 合成透明石英ガラスは、ヒドロキシル基を200wt.ppm以上、好ましくは450+/−50wt.ppmの範囲の濃度で含有するものが使用される。上記規定した濃度のヒドロキシル基は、ディフューザー材料に、紫外放射に対してより高い放射耐性を与える。しかしながら、500wt.ppmより高いヒドロキシル基含有量の石英ガラスの出発材料は好ましくない。
【0039】
・ 方法ステップ(a)の出発材料の粉砕及び方法ステップ(b)のSiOグレインの湿式摩砕の両方において、破砕された表面、及び、通常、球状でなく非球状で、荒れた、ぎざぎざのある形状である断片が製造される。グリーン体では、これらのSiO粒子は互いにかみ合うことで、グリーン体は高い密度及び強度となる。これは焼結を加速し、このために、1400℃未満の比較的低い温度で実施することができる。
【0040】
・ 空孔は、グリーン体を焼結しディフューザー材料とする間に生じ、又は、空孔は焼結後に存在している残り、さらには大きなボイドとして維持される。ディフューザー材料中の空孔の数及びサイズは、焼結温度及び時間に依存するが、主にグリーン体を構成するSiOグレインのタイプに依存する。グリーン体が、SiO顆粒粒子又は多かれ少なかれ球状形状を有する高密度なSiOグレインから製造される上記従来技術とは対照的に、本発明の方法のグリーン体は、粉砕され摩砕されたSiOグレインから構築される。これは、グリーン体に異なるサイズの比較的不規則な形状のボイドを生成させる。このため、そのようなグリーン体の焼結後に残存する空孔も、製造プロセスにより不規則な形状となり、それらは、ディフューザー材料の散乱挙動に効率的に影響を与える、外に向かって配向した角度のバルジによって特に特徴付けられる。
【0041】
一般的に、グリーン体は、製造されるディフューザーの最終的な外形(又は、成形体の一部としてのディフューザー材料の形状)に近い形態をすでに有している。これは、例えば、大きな固形体、中空体、又は、基材上の層である。グリーン体は、モールド中に懸濁液を投入することにより得られる。しかしながら、例えば、モールドへの吸引、浸漬、射出、分散コーティング、フィリング、ドレッシング、トロウェリング、ドクターブレードの利用等の他の処理方法も、懸濁液に適している。
【0042】
グリーン体は、乾燥及び焼結により、気密性であり、機械的に安定なブランクとする。ここで、焼結プロセスの強度は、表面が溶けないようにする一方で、他方では、できる限り高いブランク密度を達成するように選択される。焼結に適したパラメータ(焼結温度、焼結時間、雰囲気)は、簡単な試験で決定することができる。
【0043】
ネオンを含む空孔を有するディフューザー材料のために、焼結はネオンを含む雰囲気中で行われることが好ましい。
【0044】
焼結がネオンを含む雰囲気中で行われる場合、空孔はおよそ1375℃の温度で閉じ、ネオンガスはその温度で閉じ込められる。空孔の屈折率は、大気よりいくらか低い、室温でのネオンの分圧により決まる。ディフューザー材料を参照してすでに上記で説明したように、ネオンガスは、焼結の間に空孔から消失しない、最小の屈折率を有する気体である。このため、ネオンを含む空孔は、比較的低い屈折率を有する。理想的には、焼結雰囲気は、100%ネオンで構成される。しかしながら、焼結の間、雰囲気中のネオンガス含有量が少なくとも5vol.%の時に、不透明性への大きな影響がすでに達成されている。これは、好ましくは、少なくとも30vol.%であり、特に好ましくは少なくとも50vol.%である。
【0045】
焼結後に得られるブランクは、基材上の層として、又は、大きな部品として存在する。熱処理、水素充填、又は、機械的な処理のような実行されうる後処理において、成形体が完全にディフューザー材料からなる条件では、成形体を形成し、又は、上記成形体の一部のみがディフューザー材料からなる場合では、成形体の一部を形成する。
【0046】
ブランクに含まれる空孔は、石英ガラス母材中で光学的欠陥として振る舞い、ディフューザー材料は、材料の厚さに依存して不透明又は半透明となる。空孔はできる限り小さく、石英ガラスディフューザー材料中に均一に分布している。空孔の少なくとも80%は、最大空孔寸法が20μm未満であり、好ましくは15μm、特に好ましくは10μmである。80%の上記空孔量は、1μmより大きい空孔サイズの空孔のみに関する。ディフューザー材料から完全に構成される部品は、切断、ミリング、ドリリング、研削のような機械的な処理によるブランク、又は、例えば、成形体の一部としての基材上の拡散散乱反射体層(反射体の形態で)から製造される。
【0047】
焼結中に分解する成分をスラリーに加える場合、焼結後、ディフューザー材料の多孔性に付加的に影響を与えることができる。
【0048】
グリーン体の焼結の間、その反射率は大きく減少する。焼結プロセスの結果、空孔を含むが、気密性(密閉気孔)のブランクとなる。石英ガラスを緻密焼結しただけで、開孔多孔性がなくなることは、利点であることが分かった。必須のパラメータは焼結時間及び焼結温度である。本発明の方法において、1400℃より低い低焼結温度は特に有利である。
【0049】
水素は、石英ガラスのネットワーク構造中の欠陥を飽和させ、紫外放射に対するガラスの放射耐性を改善することができる。この点で、ブランクが、水素を含む雰囲気中、500℃未満の温度で、少なくとも1barの圧力で、水素での不透明石英ガラスの充填のために処理される場合に有利であることが分かった。
【0050】
ディフューザー材料の純度及びそのヒドロキシル基含有量は、実質的に、ブランクの形態での半製品に依存し、したがって出発材料に依存する。これに関して、1064nmの波長での吸収係数が10ppm/cm以下であり、946nmの波長での吸収係数が2000ppm/cm以下である出発材料が用いられることが好ましい。
【0051】
波長946nm及び1064nmはNd:YAGレーザーの典型的な発光線である。1064nm周辺の波長での吸収は、金属不純物の典型である。出発材料としての合成石英ガラスの高い純度は、その波長での10ppm/cmの低い吸収係数に表される。これは、高純度のディフューザー材料の前提条件である。対照的に、およそ946nmの波長での吸収は石英ガラス中のヒドロキシル基の典型である。2000ppm/cm以下の吸収係数は、中間的なヒドロキシル基含有量を示している。しかしながら、この波長での吸収係数は、1500ppm/cm未満とならないことが好ましい。
【0052】
さらに、本発明の方法において、出発材料は、200nmの波長での透過係数k200が5×10−3cm−1未満であることが好ましい。
【0053】
k値は、以下の式:
【数1】
の透過係数(定数k)である。(I=透過した強度、I=入射強度、d=試料厚さ、R=試料表面の反射率)。
【0054】
k200値は、紫外波長200nmでの材料特有の透過係数を表す。この式は、測定された透過率I/Iと材料特性、吸光度とを関連付ける。測定された透過率I/Iは、材料の吸収及び材料体積中の光の散乱のどちらも含む。
【0055】
表式(1−R)は、測定試料の両表面での反射損失(散乱又は吸収をしないような理想表面の仮定の下で)を表す。体積散乱がとても小さい場合、k値は実質的に材料の吸収を表す。不純物が吸収の主な要因である場合、200nmの波長で典型的にそうであるように、小さいk値は石英ガラスの純度の間接的な尺度となる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、実施形態と図面を参照し、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の発明されたディフューザー材料の実施形態の製造を説明するフローダイアグラムを示す。
図2】ディフューザー材料の表面の顕微鏡画像である。
図3】ディフューザーの分光反射及び透過挙動のダイアグラムを示す。
図4】ディフューザーの分光反射及び透過挙動のダイアグラムを示す。
図5】ディフューザーの分光反射及び透過挙動のダイアグラムを示す。
図6】ディフューザーの分光反射及び透過挙動のダイアグラムを示す。
図7】合成により製造された石英ガラスのディフューザー材料の分光反射及び透過挙動のダイアグラムを示す。
【0058】
図1に基づいて、250−800nmの波長域において、地球の大気の特性測定のための分光器で使用される石英ガラスのプレート形状のディフューザーの製造を参照し、本発明の方法を、典型的な方式で説明する。
【0059】
[合成により製造された石英ガラスのグレインの調製]
450wt.ppmのヒドロキシル基含有量の透明石英ガラスの円筒が、SiClの火炎加水分解により標準的な方法で製造される。200−2500nmの波長域での透過率及び反射率の値は、両面が研磨された合成石英ガラスからなる測定試料を、分光器(Perkin Elmer Lamda900/950)を使用する方法により決定した。
【0060】
該測定データに基づいて、1064nmの波長での5ppm/cmの吸収係数、及び、964nmの波長での1800ppm/cmの吸収係数が決定された。この合成石英ガラスのk200値は3×10−3cm−1未満である。
【0061】
[SiOスラリーの調製]
顆粒状の破砕された出発材料の調製のために、合成石英ガラスの石英ガラス円筒はミル加工され、グレインサイズが250μmと650μmの間であるアモルファス石英ガラス断片2の粒度分が、ふるい分けにより抽出される。
【0062】
10kgのスラリー1(SiO−水スラリー)のバッチのために、8.2kgのアモルファス合成石英ガラスグレイン2は、およそ20リットルの体積含有量の石英ガラスライニングドラムミル中で、導電率が3μS未満である1.8kgの脱イオン水3と混合される。この混合物は、ローラーブロック状の石英ガラスの摩砕ボールによって、23rpmで7日間摩砕され、78%の固体含有量の均質なベーススラリー1が形成される。湿式摩砕の間、石英ガラスグレインはさらに粉砕され、SiOの溶解によっておよそ4までpHが減少する。
【0063】
続いて、ここで得られたスラリー1から摩砕ボールが除去され、スラリーはさらに12時間撹拌される。使用される石英ガラスグレインは摩砕され、およそ40μmのD90値及び10μmのD50値で特徴づけられる粒子サイズ分布を有する細かいSiO粒子とする。
【0064】
[グリーン体及び多孔質SiOブランクの調製]
スラリー5は市販のダイキャスト機械のダイに投入され、多孔質プラスチック膜を通して脱水され、多孔質グリーン体6が形成される。グリーン体6は、380nmの外径及び40nmの厚さを有するプレート形状を有する。
【0065】
結合した水の除去のために、グリーン体6は、5日間、およそ90℃で通気させた炉内で乾燥され、冷却後、得られた多孔質グリーン体6は機械的に処理され、製造される石英ガラスディフューザープレート8のほとんど最終寸法とされる。
【0066】
[不透明合成石英ガラスの成形体の調製]
グリーン体6を焼結するために、上記グリーン体は、1395℃の加熱温度まで、1時間以内で、空気中、焼結炉内で加熱され、1時間その温度で維持される。冷却は、1000℃の炉温度まで1℃/minの冷却ランプで、続けて、閉じた状態の炉で、非制御方式で、行われる。
【0067】
代替方法において、グリーン体6は、ネオン雰囲気(およそ100%ネオン)中で、閉じた焼結炉内で、1395℃の温度まで焼結される。1時間の加熱時間の後、空孔は閉じられ、材料は、1℃の冷却速度で1000℃の炉温度まで、続く自由冷却で室温まで、冷却される。このような方法により得られたディフューザー材料は、大気圧より低い内圧を有する密閉気孔を含み、ほとんど完全にネオンガスにより規定される。
【0068】
このような方法で得られたブランク7は、開放気孔を持たない合成石英ガラスから構成される。水素を充填するために、ブランク7は、4時間の間、1barの圧力で、純粋な水素中、400℃で、ブランク7と同様の寸法を有する透明石英ガラスの参照試料と共に水素充填される。比較試料は、この水素充填をしないままとした。
【0069】
このディフューザープレート8は、ブランク7から切断され、研削された。この場合、ディフューザープレート8は、完全にディフューザー材料から構成される本発明の成形体(8)を形成する。
【0070】
[材料特性]
ディフューザー材料/成形体8は、450wt.ppmのヒドロキシル基含有量であり、3×1017分子/cmの水素の平均充填量であり、2.145g/cmの密度である気密性の密閉気孔の不透明な石英ガラスからなる。プレート径は80mmであり、プレート厚さは5mmである。
【0071】
ヒドロキシル基含有量は、「Optical Determinations of OH in Fused Silica」 (J.A.P. 37, 3991 (1966)で公表されたD. M. Dodd & D. M. Fraserの方法を使用して、赤外分光により決定される。ここに示される分光器の代わりに、FTIR分光器が使用される。およそ3670cm−1の吸収バンドが評価され、高いヒドロキシル基含有量では、吸収バンドは7200cm−1である。拡散材料中に、絶対値を歪める内部反射が生じるため、比較のために、すべての測定は3mmの厚さを有する試料ディスク上で行われる。
【0072】
水素充填プロセスの参照試料では、水素含有量(H含有量)は、Khotimchenko et al.: 「Determining the Content of Hydrogen Dissolved in Quartz Glass Using the Methods of Raman Scattering and Mass Spectrometry」 Zhurnal Prikladnoi Spektroskopii, Vol. 46, No. 6 (June 1987), pp. 987−991により提案されたラマン測定に基づいて決定される。
【0073】
ディフューザー材料は、0.4wt.ppmのLi、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu、Cr、Mn、Ti、Al、Zr、Ni、Mo及びWの全不純物含有量を示す。上記不純物は、ICP−OES又はICP−MS法により決定される。
【0074】
視覚的に、表面は白色でマットに見える。多数の細かく分布した空孔31は、図2の研削された表面上を顕微鏡下で観察することで観ることができる。ディフューザー材料の全多孔率はおよそ2.5%である。空孔は最大寸法が20μm未満であり、平均(メジアン値)で、最大寸法はおよそ5μmである。
【0075】
本発明のディフューザー材料は開放気孔性を示さないため、アルキメデスの原理による単純な密度測定が可能である。多孔率は、透明石英ガラスの密度を考慮して、密度測定に基づいて決定される。透明ガラスの密度は、およそ2.2g/cmである。
【0076】
密度分布の均質性を確認するため、それぞれ1cmの体積を有する5つの試料がディフューザープレート8の異なる領域から採取され、密度が上記試料において決定された。2.145g/cmの平均密度周辺の密度測定試料の較差は0.01g/cmである。
【0077】
図3及び4のダイアグラムは、250nmから2500nmの波長域に対する、ディフューザープレート8(厚さ:5mm)の積分球による標準的な方法で測定された方向性半球反射率R(%)を示す。
【0078】
図5及び6のダイアグラムは、250nmから2500nmの波長域に対する、ディフューザープレート8(厚さ:5mm)の積分球による標準的な方法で測定された方向性半球透過率T(%)を示す。
【0079】
すべてのダイアグラムは、2つのそれぞれの曲線を示す。これらは、紫外波長域を除いて、実質的に一致する。参照数字10によりここに示される上方の測定曲線は、測定試料のUV放射前の測定結果をそれぞれ示し、下方の測定曲線2は、上記照射後のプロファイルを示す。照射の間、測定試料は太陽定数Scの5倍で照射された。Scは、平均地球−太陽距離で、伝搬方向に平行な、単位面積及び時間当たりの太陽のエネルギーフラックス密度を示す。太陽定数はおよそ1366W/mであり、全照射量は1.53×10mJ/cmであった。
【0080】
上記で説明したように、図3及び5のダイアグラムは、それぞれ、水素充填していない試料の測定結果を示し、図4及び6のダイアグラムは、水素充填した試料の測定結果を示す。
【0081】
測定波長域のディフューザー材料は、10−25%の近似的に一定の方向性半球透過率Tを有することが、そこから分かる。この波長域で、反射率Rは60%から80%の間である。ヒドロキシル基による吸収に起因する低減した反射の領域が、1400nm及び2200nmの波長に確認される。およそ250nmの波長での真空紫外領域では、反射率は70%であり、このように、「スペクトラロン」(登録商標)のそれよりも高い。照射後、水素充填していない測定試料(図3及び5)は、紫外波長域で反射率R及び透過率Tどちらも明らかな減少を示す。対照的に、水素充填した試料の測定曲線(図4及び6)は、この減少を示さないか、大きく低減した程度でしかそれを示さない。250nm未満の誘導吸収は、水素により修復できる欠陥中心により引き起こされる。
【0082】
試料寸法:プレート径=40mm、プレート厚さ=7.5mmを有するさらなるディフューザー材料の試料が、上記で説明された方法に基づいて水素で充填された。方向性半球透過率「T」及び方向性半球反射率「R」は、250nmから2500nmの波長域にわたってこの試料について測定された。そのために使用されるAZ Technology社の測定装置の名前は「TESA 2000」である。
【0083】
図7のダイアグラムは、反射率及び透過率の測定強度の合計(R+T)の分光プロファイルを示す。このタイプの表現は、反射率R、透過率T及び吸収率Aの以下の関係式:R+T=100−Aに基づく。これは、照射された放射強度の100%で失われる割合は、せいぜい測定試料のディフューザー材料中の吸収によるものであることを意味する。
【0084】
このダイアグラムは2つの曲線10、20を含む。測定曲線10は、上記でより詳細に定義したように(太陽定数Scの5倍)、測定試料の紫外線照射前に得られた測定結果を示す。測定曲線20は、この紫外線照射後のプロファイルを示す。
【0085】
ヒドロキシル基による吸収に起因するおよそ1350nm及び2200nmでの顕著な極小値を除いて、どちらの測定試料も、波長域にわたって、80%よりはるかに高いR+Tの実質的に一定強度を示し、250nmから300nmの紫外波長においては85%を超える強度を示した。2つの曲線10及び20の間の差は±1.5%の不正確さの範囲内であった。試料の洗浄の間の小さなずれ又は測定試料20中の紫外照射後の欠陥のブリーチによるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7