(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
量子アニーラとも称される断熱量子コンピュータデバイスでは、アニーラの量子ビットは、それぞれの量子ビットの量子状態が、結合された量子ビットの対応する量子状態に影響を及ぼす制御可能なやり方で互いに動作可能に結合されている。量子アニーラの計算能力は、各量子ビットが結合する他の量子ビットの数が増加するとかなり改善され得る。量子ビット間の十分な結合に伴って、量子アニーラは、特定の事例では汎用量子コンピュータの能力を有するように構築され得る。汎用量子コンピュータは、量子レベルにおいて動作して、何らかの他の多粒子量子システムのダイナミクスを効率的にシミュレートする制御されたデバイスであると理解され得る。
【0020】
特定の量子コンピュータデバイスについて、デバイスにおいて使用される量子ビットのタイプが、量子ビットの最近傍への結合を制限する。そのような可能性として限定する量子ビット設計の一例には、3つのジョセフソン接合によって中断された超伝導材料のループを含む、情報を量子ビット相または磁束状態で蓄積する永久電流の磁束量子ビットがある。多数の量子ビットを採用する量子アニーラについて、そのような量子ビット設計は、一般的にはデバイスのそれぞれの量子ビットがデバイスのそれぞれの他の量子ビットと互いに結合することを許容せず、すなわち量子コンピュータは量子ビット間の完全な接続性を提供しない。その結果、それらの量子コンピュータシステムは、任意数の量子ビットの汎用量子コンピュータを正確に実現することができない。別の言い方をすれば、イジングハミルトニアンと表され得るそのような設計は、量子ビット間の非イジング相互作用がなく結合が制限されているために、汎用量子コンピュータをもたらさないと提唱されている。
【0021】
その上、特定の量子ビット設計について、他の量子ビットとの相互作用が、デコヒーレンスの可能性として強いソースを与え、たとえば約10ナノ秒といったより短い量子ビットデコヒーレンス時間をもたらす。デコヒーレンス時間は、量子ビットが、たとえばもはや基本状態の重ね合わせによって特徴づけられず、量子計算に使用され得なくなるといった、その量子の機械的性質のうちのいくつかを失うのに要する期間に対応する。デコヒーレンスの別のソースには、ジョセフソン接合を形成する誘電体など、量子ビットを構築するために使用される材料から生じるノイズが含まれる。
【0022】
一般に、いくつかの態様では、本開示の主題は、量子アニーラが理論的に任意数の量子ビットの汎用量子コンピュータの能力を伴って完全にプログラム可能である、複数の量子ビットを有する量子アニーラに向けられる。量子アニーラは、量子ビットの間で完全な接続性が達成されることを可能にする一方で改善されたデコヒーレンス時間ももたらす、共面導波管の磁束量子ビットを採用する。その上、量子アニーラが含む少なくとも1つの調整量子デバイスでは、それぞれの調整量子デバイスが2つの異なる共面導波管の磁束量子ビットと電気接触して、量子ビット対量子ビットの相互作用の調整を可能にする。
【0023】
共面導波管の磁束量子ビット
共面導波管の磁束量子ビットを採用する完全にプログラム可能な汎用量子アニーラの説明を提供する前に、
図1A〜
図1Bに関して、共面導波管の磁束量子ビットの概要が提供される。
図1Aは、共面導波管の磁束量子ビット100の一例の上面図を示す概略図である。量子ビット100は、量子デバイス104に結合された共面導波管102を含む。量子デバイス104は、限定はしないが、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)を含み得る。この例では量子デバイス104はDC超伝導量子干渉デバイス(DC-SQUID)であるが、他のSQUIDデバイスも使用され得る。共面導波管102およびDC-SQUID 104は、これらを取り囲む接地面106と電気接触している。導波管102、DC-SQUID 104および接地面106の各々が、誘電体基板上の標準的な薄膜製造プロセスを使用して、超伝導薄膜材料から形成されている。導波管102は、基板上に細長い薄膜として構成されており、薄膜の一端108は接地面106と電気接触しており、薄膜の別の反対端110はDC-SQUID 104と電気接触している。導波管102の細長い面は、対応する同一の広がりをもつ間隙105によって接地面106から分離されている。この例では、それぞれの間隙105の幅は、たとえば電磁波の不必要な反射を防止するために、細長い導波管の長さに沿って一定である。導波管の所望のモードプロファイルは、対称な共面導波管(CPW)モードであり、中央のトレースの両側の2つの接地面は同一の電圧に保たれている。いくつかの実装形態では、導波管102は、(細長い面に沿って測定したとき)約数千マイクロメートルまでの長さと、(長さに対して横断して測定したとき)約数十マイクロメートルまでの幅とを有し得る。導波管102(ならびに接地面106およびDC-SQUIDの一部分)を形成する、堆積されたフィルムの厚さは、たとえば約100〜200nmでよい。
【0024】
いくつかの実装形態では、導波管102のDC-SQUIDから最も遠い端は、量子ビットを読出しデバイス(図示せず)に対して誘導的に結合するための領域をもたらすようにフック形状を有する。
図1Bは、導波管102に対して結合されたDC-SQUID 104の拡大図である。DC-SQUID 104は、各々が非超伝導/絶縁材料の薄膜から形成され得る2つのジョセフソン接合114によって中断された超伝導材料のループ112を含む。たとえば、ジョセフソン接合114は、Al/Al
2O
3/Alの薄膜の3層から形成され得る。したがって、ジョセフソン接合114は互いに並列に結合され、第1の共通ノードが導波管102と電気接触し、第2の共通ノードが接地面106と電気接触している。ジョセフソン接合114は、ループ112と同一の超伝導材料または異なる超伝導材料から形成され得る接触パッド115を通じてループ112と電気的に接続される。いくつかの実装形態では、接触パッド115がなく、ジョセフソン接合114は、ループ112と直接物理的かつ電気的に接触している。導波管102、DC-SQUID 104、および接地面106の各々は、アルミニウム(1.2ケルビンの超伝導臨界温度)またはニオブ(9.3ケルビンの超伝導臨界温度)など、超伝導臨界温度以下で超伝導特性を示す材料から形成され得る。導波管102、DC-SQUID 104および接地面106が形成される基板はたとえばサファイア、SiO
2、またはSiなどの誘電材料を含む。いくつかの実装形態では、サファイアには、誘電損が小さく、したがってデコヒーレンス時間がより長くなるという利点がある。
【0025】
いくつかの実装形態では、共面導波管の磁束量子ビット100は、永久電流磁束量子ビットと同様のやり方で動作し得る。すなわち、共面導波管に磁束が導入されたとき、共面導波管ループにおいて反対方向に循環する2つの永久電流状態が生成され得る。そのような磁束は、たとえばオンチップ磁束バイアスラインによって導入され得る。磁束バイアスラインは薄膜超伝導体であり得て、バイアスラインに電流を供給することによって磁束バイアスラインが起動されるとき、共面導波管に対して誘導的に結合することができる。導波管102は共振器としても働き、これによって、他の量子ビットに対する強くかつ遠隔の結合が達成され得る。
図1Cは、量子ビット100を表す回路
図116を示す概略図である。回路
図116に示されるように、量子ビット100は、DC-SQUID 104によってもたらされた2つのジョセフソン接合114に対して並列に結合されているキャパシタンス118とインダクタンス120の両方に関連するものである。回路
図116の接地122は接地面106によってもたらされる。導波管のキャパシタンス値およびインダクタンス値は、薄膜の厚さ、幅、長さ、共面接地面に対する間隙間隔、および基板に基づいて決定される。したがって、量子ビット100など共面導波管の磁束量子ビットについては、量子ビットの共振器部分のキャパシタンス118およびインダクタンス120は導波管102によってもたらされるが、永久電流の磁束量子ビットについては、キャパシタンスおよびインダクタンスは超伝導ループ内の第3のジョセフソン接合を使用して確立される。
【0026】
共面導波管の磁束量子ビットの設計は、永久電流磁束量子ビットに対していくつかの利点を有し得る。たとえば、共面導波管の磁束量子ビットは比較的長いデコヒーレンス時間を示し得る。理論に拘束されずに、デコヒーレンス時間の改善は、ある程度、磁束量子ビットを形成するために主として超伝導材料の単一の層を利用している共面導波管の磁束量子ビットによるものと考えられる。基板上に超伝導材料の単一の層を使用することにより、そうでなければ追加材料層によって存在するはずのデコヒーレンスの原因が除去される。同様に、ジョセフソン接合を形成するために通常は使用される誘電材料も、磁束量子ビットのデコヒーレンスの大きな原因であると考えられる。したがって、永久電流磁束量子ビットの第3のジョセフソン接合を共面導波管で置換することにより、デコヒーレンスの追加の原因が解消され、量子ビットに関連したデコヒーレンス時間がかなり増加され得る。
【0027】
加えて、共面導波管の磁束量子ビットによって、より多くの量子ビットに対する結合が可能になる。一般的な永久電流磁束量子ビットでは、量子コンピュータの内部での結合は、最近傍デバイスを使用して達成され、単一の量子ビットの辺りの領域内で適合し得る量子ビットとの結合に利用可能な量子ビットの数を実質的に制限する。他の量子ビットに対する接続が制限されているために、そのような量子ビット設計に基づく量子プロセッサは、いわゆる埋込問題に苦しむ。これは、キメラグラフの制約を課されたマシン上で計算問題をプログラムする必要があることを意味する。埋込問題の解決は、それだけで計算上困難なタスクであり得、量子アニーラのパワーをさらに制限する。
【0028】
対照的に、共面導波管の磁束量子ビットとの結合は、量子ビットの導波管部分に対する誘導結合によって達成される。導波管のインダクタンスおよびキャパシタンスは巨視的長さ(数mm)にわたって分布するので、結合することができる量子ビットの数がかなり増加され得、したがって、埋込問題を可能性として回避し得る。その上、永久電流磁束量子ビットは一般的には非常に小さく、メゾスコピックスケールのサイズに関連する(たとえば約数ミクロン以下の限界寸法を有する)ものである。しかしながら、共面導波管の磁束量子ビットの構造ははるかに大きく(たとえば約数ミリメートルに)製作することができ、より高い製造信頼性をもたらす。
【0029】
共面導波管の磁束量子ビットを有するプログラム可能な汎用量子アニーラ
理論に拘束されずに、量子アニーラのハミルトニアン(相互作用)が調整可能な係数を伴ういわゆる非確率的項を有するならば、量子アニーラは汎用量子コンピュータの計算能力を有すると言うことができる。非確率的ハミルトニアンは、正の非対角項と負の非対角項の両方を有するハミルトニアンである。たとえば、汎用量子コンピュータを表す形態を有するものとして、次のハミルトニアンが提案されており、
【0031】
Nはシステムにおける量子ビットの総数であり、h
iは量子ビットiに対する局所的バイアスであり、σ
zおよびσ
xはそれぞれ量子ビットのZおよびXのパウリ行列を表し、J
ijおよびK
ijは量子ビットiとjの間の結合強度である。問題事例(problem instance)は、ユーザプログラマブルであるhおよびJの値に符号化される。上記で説明されたように、永久電流の磁束量子ビットなど特定の量子ビット設計を採用する量子コンピュータデバイスは、完全な接続性をもたらさないという点で制限される。すなわち、そのようなシステムでは式(1)におけるK
ijσ
xiσ
xj項が失われ、したがって、汎用量子コンピュータの能力を有する完全にプログラム可能なアニーラを実現するためには使用され得ない。対照的に、本開示によって構築された量子アニーラは式(1)の失われたK
ijσ
xiσ
xj項を含むように構築され得る。
【0032】
図2Aは、上記で説明されたように構築された、2つの共面導波管の磁束量子ビット202、206を採用する量子アニーラ200の一例を示す概略図である。
図2Aに示された設計は、2より大きい任意の整数Nの量子ビットの用途に拡張され得る。第1の量子ビット202は、細長い薄膜超伝導導波管205に対して電気的に接続された量子デバイス203(たとえばDC-SQUID)を含む。第2の量子ビット206も、細長い薄膜超伝導導波管209に対して電気的に接続された量子デバイス207(たとえばDC-SQUID)を含む。それぞれの薄膜導波管205、209は、
図2Aにおいて214で示された共面超伝導接地面と電気接触しており、以下で説明されるように、両導波管は互いにクロスオーバして量子ビット間の結合のための領域をもたらすように設計されている。表示の容易さのために、導波管205、209および他の構成要素に対する共面接地面のレイアウトは、
図2Aには示されていない。それぞれの量子ビットの量子デバイス203、207もグラウンド214と電気接触している。その結果、それぞれの量子ビットの細長い薄膜導波管は量子ビットの対応する量子デバイスと並列に結合されていると言われ得る。それぞれの細長い薄膜超伝導導波管は、対応するインダクタンスおよびキャパシタンスとも関連づけられている。たとえば、量子ビット202の導波管205はインダクタンスL
aおよびキャパシタンスC
aを有し、量子ビット206の導波管209はインダクタンスL
bおよびキャパシタンスC
bを有する。
【0033】
それぞれの量子デバイス203、207は、
図2Aにおいて、クロスが組み込まれたボックスによって中断されたループによって表されている。量子デバイスがDC-SQUIDである
図2Aに示された構成について、ループは、それぞれ組み込まれたクロスを包含しているボックスによって表された2つのジョセフソン接合によって中断された超伝導薄膜材料から形成されている。アニーラ200の動作中に、それぞれの量子デバイス203、207は、対応する局所的外部磁束バイアス(Φ
aexまたはΦ
bex)にも関連づけられる。
【0034】
調整量子デバイス210は、量子ビット202、206の各々と電気接触するように配置されている。調整量子デバイス210は、それに接続されている量子ビット間の相互作用の大きさを調整するように動作可能である。調整量子デバイス210は、ユーザが、たとえばハミルトニアンにおける係数J
ijおよびK
ijの大きさを設定することによって量子アニーラをプログラムすることを可能にする。
図2Aの例では、それらの量子ビットは量子ビット202および量子ビット206である。
図2Aに示された調整量子デバイス210がDC-SQUIDであるので、量子ビット対量子ビットの相互作用の大きさは、アニーラ200の動作中にDC-SQUIDに関連づけられた局所的外部磁束バイアスΦ
cexを変化させることによって調整される。量子デバイス203、207と同様に、DC-SQUID 210は、クロスが組み込まれた2つのボックスによって中断されたループによって表され、それぞれのボックスがジョセフソン接合に対応し、ループは超伝導薄膜から形成されている。調整量子デバイス210におけるループの第1の端/接点は、量子デバイス203と細長い薄膜導波管205の間のノードaにおいて第1の量子ビット202と電気接触している。調整量子デバイス210の第2の端/接点は、量子デバイス207と細長い薄膜導波管209の間のノードbにおいて第2の量子ビット206と電気接触している。調整量子デバイス210の局所的外部磁束バイアスΦ
cexを変化させるために、アニーラ200に対して外部磁束Φ
exが印加され得る。調整量子デバイス210がDC-SQUIDであれば、磁束が結果としてDC-SQUIDの臨界電流を調整し、DC-SQUIDが結合の全体強度を設定する。上記で説明されたように、外部磁束は磁束バイアスライン(
図2には示されていない)によって与えられてよい。
【0035】
調整量子デバイス210と量子ビット202、206の間の接続はワイヤ216によってもたらされる。ワイヤ216も導波管および接地面に類似して薄膜超伝導体から形成され得、したがってジオメトリの点から共面であるとも理解され得る。ワイヤ216のキャパシタンスは、量子アニーラ200の約6GHz以下の動作周波数(マイクロ波励起が振動する量子ビットの動作周波数)において安全に無視され得る。しかしながら、ワイヤ216のインダクタンスは、量子ビット間の結合の強度を低下させて不安定性/デコヒーレンスを誘起する可能性があるので、アニーラ200を設計したり動作させたりするときには把握されるべきである。それゆえに、ワイヤ216は、結合器接合インダクタンス未満のインダクタンスを有するべきである。一般的な結合器接合インダクタンスは、たとえば数nH〜数十nHの範囲にあり得る。したがって、たとえば、ワイヤ216のインダクタンスは約100pH〜約10000pHの間に限定され得る。そこで、このインダクタンス値はワイヤ216の幾何学的制約における上限を設定する。
【0036】
量子ビット202と206は、結合器要素212を介して互いに対して動作可能に結合することができる。すなわち、量子アニーラ200の動作中に、結合器要素212を介して導波管205から導波管209への電磁結合を可能にすることにより、量子ビット202の量子状態を量子ビット206の量子状態ともつれさせることができる。たとえば結合器要素212に含まれる超伝導薄膜材料のループでは、ループの第1の部分が導波管205に沿って第1の方向に延在し、ループの第2の部分が導波管209に沿って第2の直交方向に延在し、導波管205と209が交差するところには直角の曲がりがある。
図2Aでは、導波管205と209は、結合器要素212の近くで互いにオーバラップして示されているが、交差において電気接触しているわけではない。むしろ、導波管205と209は、たとえば、交差において2つの導波管の一方が他方と接触せずに通り過ぎることを可能にするクロスオーバするエアブリッジなどのジャンパを使用して、互いから分離されている。導波管205と209が電気接触なしで互いに交差することを可能にする他の設計が、代わりに使用されてよい。結合器要素212は、(たとえば約数ミクロンの)細い間隙によって各導波管から水平方向に分離されている。プロセッサの動作中に、一方の導波管(たとえば導波管205)からのエネルギーが、超伝導薄膜結合器212に対して誘導的に結合され得て、次いで、結合器要素212の近くに配置された他の導波管(たとえば導波管209)に対して誘導的に結合される。結合器要素212は共面接地面からも物理的に分離している。
図2Aに示されるように、結合器要素212は相互結合パラメータMに関連づけられる。相互結合パラメータMは、2つの量子ビット間の結合器要素212の有効な相互インダクタンスを表す。いくつかの実装形態では、結合器要素212は調整可能である。すなわち、ループはジョセフソン接合またはDC-SQUIDを含むことができる。このようにして、(たとえば本明細書で説明されたような磁束バイアスラインから)結合器要素212に対して磁束バイアスを印加して、DC-SQUIDの接合のインダクタンスを変化させることにより、有効な相互インダクタンスMを変化させることができる。結合器要素212は、トレース幅W、ループアーム長さLおよび間隙距離G(すなわちループアームの間の内側の距離)といった3つのパラメータを用いて定義され得る。トレース幅Wは、いくつかの実装形態では、約1〜5ミクロンの範囲でよい。ループアーム長さLは、いくつかの実装形態では、ネットワークの量子ビットの数に依拠して、約数百ミクロンでよい。間隙距離Gは、いくつかの実装形態では、約数十ミクロンでよい。他の範囲も使用され得る。
図2Aに示された回路要素および共面接地面は基板上に形成され、基板は、たとえばサファイアもしくはSiO
2などの誘電材料またはSiなどの半導体を含むことができる。
【0037】
図2Bは、
図2Aに示された量子アニーラ200に対して等価な回路図を示す概略図である。
図2Bに示されるように、ここで、共面導波管205、209は、導波管205についてはキャパシタC
aおよびインダクタL
a、導波管209についてはキャパシタC
bおよびインダクタL
bといった、それらの回路等価物によって表される。量子ビット間の相互結合Mは、インダクタを囲む破線のボックスを使用して表されている。再び、アニーラ200の動作中に、それぞれのDC-SQUIDは、調整可能な量子デバイス210についてはΦ
cex、量子ビット202のDC-SQUIDについてはΦ
aex、量子ビット206のDC-SQUIDについてはΦ
bexといった、その独自の局所的外部磁束バイアスに関連づけられる。
図2Bは、デバイス200に印加される外部磁束Φ
exの存在も表す。外部磁束Φ
ex、ならびに局所的外部磁束バイアスΦ
aex、Φ
bex、およびΦ
cexの各々が、対応する磁束バイアスライン(図示せず)に印加される電流を変化させることにより、独立して変化され得る。
図2Bに示されるように、それぞれの量子ビットは、量子ビット202についてはΨ
a、量子ビット206についてはΨ
bといった、対応する磁束バイアスにも関連づけられる。
【0038】
図2Bに示された回路図を使用して、典型的な電流対電圧の式から量子アニーラ200を表すハミルトニアンを以下のように導出することができ(DC-SQUIDの磁束バイアスは、以下の式では簡単さのために、すなわち、x=a、b、cについて
【0040】
と落とし込まれ(dropped)、Φ
0は超伝導磁束量子であることに留意されたい)、
【0043】
、I
cは調整量子デバイス210を流れる電流である。
前述の回路モデルに対応する量子ハミルトニアンは次式で表現され得る。
【0047】
に変換することにより、ハミルトニアンは代わりに次式で表現され得る。
【0049】
式(5)がパラメータΦ
cexを含むため、このハミルトニアンは、式(1)に示されたハミルトニアンよりも、実際にはより一般的なバージョンである。すなわち、外部から印加される磁束は、汎用ハミルトニアンのさらなる選択の自由を可能にする自由パラメータである。式(5)で示されたハミルトニアンを有する2つの量子ビットの量子アニーラは、同じサイズ(2ビット)のデジタルコンピュータで可能なあらゆる計算を実行するように使用され得る。
【0050】
最低の2レベルへの低減 - システムを、一般的な無限レベルのシステムから2レベルの量子システムに低減するために、システムは最低の2レベルに切り詰められる。式(5)のσ
xσ
x(略して「XX」とも表現される)項は、次式のように表現され得る。
【0052】
類似した量子ビットを想定すると、式(6)は次式のように短縮され得る。
【0054】
量子ビットレベル波動関数のパリティ特性から以下の関係が得られる。
【0056】
sin(φ)=<0│sin(φ)│1>σ
x (8)
式(5)の非確率的項は、次式のように表現され得る。
【0058】
式(5)における外部磁束Φ
exを調整することにより、式(1)に対応する、モード1とも称される特殊なケースを得ることができる。詳細には、式(5)の右側の第3項を簡単にするために、量子ビット202に対する量子ビット磁束バイアスΨ
aおよび量子ビット206に対する量子ビット磁束バイアスΨ
bが外部磁束バイアスΦ
exとバランスをとられてゼロになり、すなわち、
【0062】
上つき文字は式(7)の係数の表記法を表す。たとえば、cos
00(φ)は<0|cos(φ)0>に対応する。類似した量子ビットが想定されるなら、式(10)は次式に短縮することができる。
【0064】
あるいは、いくつかの実装形態では、式(5)は
【0066】
という形のハミルトニアンを返すことができ、モードIIとも称される。
【0067】
図2Cは、量子アニーラ200の代替図を示す概略図である。
図2Cに示されるように、組み込まれたクロス付きのボックスは、それぞれ
図2A〜
図2Bのジョセフソン接合ではなく単一のDC-SQUIDを表す。したがって、調整量子デバイス210はSQUID 207と薄膜超伝導導波管209の間のノードbに対して電気的に接続されており、またSQUID 203と薄膜超伝導導波管205の間のノードaに対して電気的に接続されている。SQUIDを通る局所磁束バイアス(Φ
aex、Φ
bex、Φ
cex)は、外部から印加される磁束バイアスΦ
exと、それぞれの量子ビット共振器を通る磁束バイアス(Ψ
a、Ψ
b)とに対して横方向に沿って広がるものとしても表される。
【0068】
図2Cには読出しデバイス220も示されており、それらの各々が、対応する量子ビットに対して動作可能に結合し得るように、その量子ビットの薄膜超伝導導波管に対する結合距離の範囲内に配置されている。読出しデバイス220は、読出し動作中に、結合している量子ビットの状態を読み取る。量子プロセッサの状況では、デバイス220などの読出しデバイスは、たとえばビットストリングをもたらすために量子ビットの最終状態を読み出すのに使用される。
図2Cに示される例では、各読出しデバイス220に含まれる細長い薄膜超伝導体(たとえばアルミニウムまたはニオブ)は、誘電体基板上に蛇行パターンで配置され、第1の端から隣接する導波管まで誘導的に結合するように構成されている。すなわち、読出しデバイス220は、導波管に対して直接電気接続するのではなく(接地面1106の比較的弱い電気接続によるのではなく)、使用中に、導波管によって量子ビット1100に対して誘導的に結合され得る。共面導波管と読出しデバイスの間の分離は、たとえば約2ミクロンであり得る。読出しデバイス220の第2の反対端において、読出しデバイスは、基板/チップ上に形成された他の要素、またはルーティング回路(たとえばラッチ要素、シフトレジスタ、もしくはマルチプレクサ回路)などの基板/チップ外部に形成された要素に対してさらに結合され得る。
【0069】
式(5)の汎用ハミルトニアンを有する量子アニーラ200は、様々なやり方で量子計算に使用され得る。たとえば、最適化問題を解決するために、最小化されるべき関数はハミルトニアンの形式で書かれる。磁束Φ
ex、Ψ
a、およびΨ
bは、アニーラ200が、選択されたハミルトニアンと一致するように(本明細書で説明されたように磁束バイアスラインを使用して)個々に設定され、したがって問題ハミルトニアンの基底状態を符号化する。次いで、システムは、解ハミルトニアンの基底状態へ進化するように、時間t=0からt=Tまでゆっくりアニール化される。時間Tにおいて、読出しデバイス220を使用してシステムの状態が測定される。いくつかの実装形態では、量子アニーラ200は、イジングハミルトニアンを単独で利用する特定の場合に関する問題を解くために使用され得る。そうするために、調整量子デバイス210との相互作用をオフにする、すなわちK
ijをゼロに設定することによって、式(5)の第3行がゼロに設定される。
【0070】
別の例では、量子アニーラ200はK
ij項がゼロでない問題を解くために使用され得る。たとえば、いくつかの実装形態では、K
ij相互作用は、アニーリングステップ中はオンに保たれ、最後にオフされ得る。たとえば、断熱量子計算は次式のように一般化され得、
H(s)=(1-s)H
B+sH
P+s(1-s)H
D
H
Bは初期のハミルトニアンであり、H
Pは
【0072】
と定義される問題ハミルトニアンであり、H
Dは
【0074】
と定義されるK
ij相互作用ハミルトニアンである。システムは、アニール化されるにつれて、s=0における第1の状態(H(0)=H
Bになる)からs=1における第2の最終状態(H(1)=H
Pになる)へと進む。s=0とs=1の間で相互作用ハミルトニアンはオンである。
【0075】
図2A〜
図2Cに示された量子アニーラ設計は、完全にプログラム可能な汎用量子コンピュータを引き続きもたらしながら、2つよりも多い量子ビットを含むように拡張され得る。たとえば、
図3は、完全にプログラム可能な汎用量子コンピュータをもたらすことができる、4つの量子ビットを有する量子アニーラ300の概略図である。構成要素は、上記で説明されたようにサファイアなどの誘電体基板上に形成される。表示の容易さのために
図4には共面接地面は表されていないが、グラウンド接続314は依然として与えられている。量子アニーラ300の各量子ビット(302、304、306、308)は、アニーラ200の設計に類似して、それぞれの薄膜超伝導導波管(303、305、307、309)と電気接触しているDC-SQUID(311、313、315、317)などの量子デバイスを含む。
図3に示された解説の目的で、組み込まれたクロスを包含している各ボックスは、
図2A〜
図2Bのようにジョセフソン接合を表すわけではなく、DC-SQUIDに対応する。導波管(303、305、307、309)は、各導波管が、結合領域において別の量子ビットからの導波管に対してクロスオーバするかまたはオーバラップするように設計されている。たとえば、
図3に示されるように、各導波管は、結合領域をもたらすために直角/L字形を形成するように設計されている。
【0076】
アニーラ300においてそれぞれの量子ビットがそれぞれの他の量子ビットと動作可能に結合することができるように、各結合領域/導波管のクロスオーバに隣接して結合器要素312が配置されている。たとえば、
図3に示された例では、完全な接続性を保証するために6つの結合器要素312が設けられている。詳細には、異なる量子ビットからの2つの薄膜超伝導導波管の間の各クロスオーバ領域において、各導波管に隣接して薄膜超伝導ループ312が配置されており、ループの第1の部分は導波管のうち1つの導波管の長尺方向に沿って第1の方向に延在し、ループの第2の部分は、導波管が交差するところで直角に曲がって、他の導波管の長尺方向に沿った第2の直交方向に延在する。それゆえに、このように結合器要素312を置くことにより、アニーラ300の動作中にそれぞれの量子ビットがそれぞれの他の量子ビットと互いに結合され得る。たとえば、量子ビット302は、量子ビット304、306、および308の各々に対して結合され得る。同様に、量子ビット304も、量子ビット306および308の各々に対して結合され得る。また、量子ビット306も、量子ビット308に対して結合され得る。上記で説明されたように、導波管303、305、307、309は互いにオーバラップするように示されているが、交差において電気接触しているわけではない。むしろ、導波管303、305、307、309は、たとえば、交差において2つの導波管の一方が他方と接触せずに通り過ぎることを可能にするクロスオーバするエアブリッジなどのジャンパを使用して、互いから分離されている。結合器要素312は、(たとえば約数ミクロンの)細い間隙によって各導波管から水平方向に分離されている。
【0077】
量子アニーラ200は単一の調整量子デバイス210を含んでいるが、2つよりも多くの量子ビットを有するアニーラは、各量子ビット間の相互作用の調整を可能にするのに十分な数の調整量子デバイスを含むべきである。たとえば、
図3に示された例では、量子アニーラ300は6つの調整量子デバイス310を含む。各調整量子デバイス310に含まれるDC-SQUIDなどのSQUIDは、2つの異なる量子ビットと電気接触している。詳細には、各調整量子デバイス310について、デバイス310の第1の端は、薄膜超伝導導波管と量子ビットのSQUIDの間のノードにおいて1つの量子ビットと電気接触しており、デバイスの第2の端は、薄膜超伝導導波管と他の量子ビットのSQUIDの間の異なるノードにおいて別の異なる量子ビットと電気接触している。デバイス310は、アニーラ200の調整量子デバイス210と同様に、薄膜超伝導体をワイヤとして使用して、量子ビットに対して電気的に接続され得、ワイヤのキャパシタンスは、量子アニーラ300の(たとえば約6GHz以下の)動作周波数において安全に無視され得る。繰り返しになるが、ワイヤのインダクタンスは、量子ビット間の結合強度の低下および不安定性/デコヒーレンスを防止するために考慮に入れるべきである。量子アニーラ300は、各量子ビットについて、読出しデバイス220と同様のやり方で構築された対応する読出しデバイス320も含む。
【0078】
本明細書において説明されたデジタルおよび量子の主題ならびにデジタル機能動作および量子動作の実施形態は、デジタル電子回路、適切な量子回路、もしくはより一般的には量子計算システムにおいて、実体的に具現されたデジタルコンピュータもしくは量子コンピュータのソフトウェアもしくはファームウェアにおいて、本明細書おいて開示された構造およびそれらの構造の等価物を含むデジタルコンピュータもしくは量子コンピュータのハードウェアにおいて、またはそれらの1つもしくは複数の組合せにおいて、実施され得る。「量子計算システム」という用語は、限定はしないが、量子コンピュータ、量子情報処理システム、量子暗号システム、または量子シミュレータを含み得るものである。
【0079】
本明細書で説明されたデジタルおよび量子の主題の実施形態は、1つまたは複数のデジタルコンピュータプログラムまたは量子コンピュータプログラム、すなわちデータ処理装置によって実行するため、またはデータ処理装置の動作を制御するために、有体の非一時的記憶媒体上に符号化されたデジタルコンピュータまたは量子コンピュータのプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実施され得る。デジタルコンピュータまたは量子コンピュータの記憶媒体は、機械可読の記憶装置、機械可読の記憶基板、ランダムアクセスまたはシリアルアクセスの記憶装置、1つまたは複数の量子ビット、あるいはそれらのうち1つまたは複数の組合せであり得る。その代わりに、またはそれに加えて、プログラム命令は、たとえばデータ処理装置による実行のために、適切な受信器装置へ伝送するように、デジタル情報または量子情報を符号化するために機械生成された電気、光、または電磁気の信号といった、デジタル情報または量子情報を符号化することができる、人為的に生成されて伝搬する信号上で符号化され得る。
【0080】
量子情報および量子データという用語は、量子システムによって搬送される情報もしくはデータ、量子システムに保持されている情報もしくはデータ、または量子システムに記憶されている情報もしくはデータを指し、最小の自明でないシステムは量子ビットであり、すなわち量子情報の単位を定義するシステムである。「量子ビット」という用語は、対応する状況における2レベルのシステムとして適切に近似され得るすべての量子システムを包含することが理解される。そのような量子システムは、たとえば2つ以上のレベルを有するマルチレベルシステムを含み得る。例として、そのようなシステムは、原子、電子、光子、イオンまたは超伝導量子ビットを含み得る。多くの実装形態では、計算上の基本状態はグラウンドおよび第1の励起状態に関連づけられる(identified with)が、しかしながら、計算上の状態が、より高いレベルの励起状態に関連づけられる他の設定が可能であることが理解される。「データ処理装置」という用語は、デジタルまたは量子のデータ処理ハードウェアを指し、例としてプログラム可能なデジタルプロセッサ、プログラム可能な量子プロセッサ、デジタルコンピュータ、量子コンピュータ、複数のデジタルおよび量子のプロセッサまたはコンピュータ、ならびにその組合せを含む、デジタルデータまたは量子データを処理するためのすべての種類の装置、デバイス、およびマシンを包含する。装置は、たとえばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、または量子シミュレータ、すなわち特定の量子システムに関する情報をシミュレートするかまたは生成するように設計されている量子データ処理装置といった専用論理回路でもあり得、あるいはこれらをさらに含むことができる。詳細には、量子シミュレータは、汎用の量子計算を実行する能力は有していない専用の量子コンピュータである。装置は、ハードウェアに加えて、デジタルコンピュータまたは量子コンピュータのプログラムのための実行環境を生成するコード、たとえばプロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらのうち1つまたは複数の組合せを構成するコードを任意選択で含み得る。
【0081】
プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、もしくはコードとも称され得る、またはそれらとして記述され得る、デジタルコンピュータプログラムは、コンパイル型言語もしくはインタープリタ型言語、または宣言型言語もしくは手続き型言語を含んでいる任意の形式のプログラム言語で書かれ得て、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはデジタルコンピュータ環境で使用するのに適切な他のユニットとして含まれる任意の形式で配置され得る。プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、もしくはコードとも称され得る、またはそれらとして記述され得る、量子コンピュータプログラムは、コンパイル型言語もしくはインタープリタ型言語、または宣言型言語もしくは手続き型言語を含んでいる任意の形式のプログラム言語で書かれ得て、適切な量子プログラム言語に変換され、あるいは、たとえばQCLまたはQuipperといった量子プログラム言語で書かれ得る。
【0082】
デジタルコンピュータまたは量子コンピュータのプログラムは、ファイルシステムのファイルに対応してよいが、対応する必要はない。プログラムは、たとえばマークアップ言語のドキュメントで記憶された1つまたは複数のスクリプトといった他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部分、当該プログラムに専用の単一ファイル、あるいは、たとえば1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部分を記憶するファイルといった複数の統合されたファイルに記憶され得る。デジタルコンピュータまたは量子コンピュータのプログラムは、1つのデジタルコンピュータまたは1つの量子コンピュータ上で、あるいは、1つのサイトに配置されている、または複数のサイトにわたって分散し、デジタルまたは量子のデータ通信ネットワークによって相互接続されている、複数のデジタルコンピュータまたは量子コンピュータ上で、実行されるように配置され得る。量子データの通信ネットワークは、たとえば量子ビットといった量子システムを使用して量子データを伝送し得るネットワークであると理解されている。一般に、デジタルデータの通信ネットワークは量子データを伝送することができないが、量子データの通信ネットワークは量子データとデジタルデータの両方を伝送し得る。
【0083】
本明細書で説明された処理および論理の流れを実行し得る1つまたは複数のプログラム可能なデジタルコンピュータまたは量子コンピュータは、1つまたは複数のデジタルプロセッサまたは量子プロセッサを用いて動作し、必要に応じて1つまたは複数のデジタルコンピュータプログラムまたは量子コンピュータプログラムを実行して入力のデジタルデータおよび量子データに対して動作し、出力を生成することによって機能を実行する。処理および論理の流れも、たとえばFPGAもしくはASICまたは量子シミュレータといった専用論理回路によって、あるいは専用論理回路または量子シミュレータと、1つまたは複数のプログラムされたデジタルコンピュータまたは量子コンピュータとの組合せによって実行され得、装置もこれらの専用論理回路として実施され得る。
【0084】
1つまたは複数のデジタルコンピュータまたは量子コンピュータのシステムに関して、特定の動作または行為を実行するように「構成されている」ということは、動作において、システムに動作または行為を実行させるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアまたはそれらの組合せがシステムにインストールされていることを意味する。1つまたは複数のデジタルコンピュータまたは量子コンピュータのプログラムに関して、特定の動作または行為を実行するように構成されているということは、1つまたは複数のプログラムに含まれている命令が、デジタルデータ処理装置または量子データ処理装置によって実行されたとき、この装置に動作または行為を実行させることを意味する。量子コンピュータがデジタルコンピュータから受け取り得る命令が、量子計算装置によって実行されたとき、この装置に動作または行為を実行させる。
【0085】
デジタルコンピュータまたは量子コンピュータのプログラムを実行するのに適切なデジタルコンピュータまたは量子コンピュータは、汎用もしくは専用のデジタルプロセッサもしくは量子プロセッサまたはその両方、あるいは任意の他の種類の中央のデジタル処理ユニットまたは量子処理ユニットに基づくものであり得る。一般に、中央のデジタル処理ユニットまたは量子処理ユニットは、読取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、もしくは量子データを伝送するのに適切なたとえば光子といった量子システム、またはそれらの組合せから、命令およびデジタルデータまたは量子データを受け取ることになる。
【0086】
デジタルコンピュータまたは量子コンピュータの必須要素には、命令を実行するかまたは実行するための中央処理装置と、命令およびデジタルデータまたは量子データを記憶するための1つまたは複数の記憶装置とがある。中央処理装置および記憶装置は、専用論理回路または量子シミュレータによって補足されるか、またはこれに組み込まれ得る。一般に、デジタルコンピュータまたは量子コンピュータは、たとえば磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、または量子情報を記憶するのに適切な量子システムといった、デジタルデータまたは量子データを記憶するための1つまたは複数の大容量記憶装置も含んでいるか、あるいはデジタルデータもしくは量子データを受け取るため、またはデジタルデータもしくは量子データを転送するため、あるいはその両方のために、大容量記憶装置に対して動作可能に結合されることになる。しかしながら、デジタルコンピュータまたは量子コンピュータには、そのようなデバイスがなくてもよい。
【0087】
デジタルコンピュータまたは量子コンピュータのプログラム命令と、デジタルデータまたは量子データとを記憶するのに適切な、デジタルまたは量子のコンピュータ可読媒体は、不揮発性のデジタルまたは量子のメモリ、媒体および記憶装置のすべての形式を含み、例として、たとえばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリ素子といった半導体メモリ素子と、たとえば内部ハードディスク、または取外し可能ディスクといった磁気ディスクと、光磁気ディスクと、CD-ROMディスクおよびDVD-ROMディスクと、たとえばトラップ原子またはトラップ電子といった量子システムとを含む。量子メモリは、たとえば、光が、伝送のため、および重ね合わせまたは量子コヒーレンスなどの量子データの量子特性を記憶しかつ保存するために使用される、光インターフェース(light-matter interfaces)といった、量子データを高忠実度かつ高効率で長い間記憶することができるデバイスであることが理解される。
【0088】
本明細書で説明された種々のシステムまたはそれらの一部分の制御は、デジタルコンピュータまたは量子コンピュータのプログラム製品で実施され得、このプログラム製品には、1つまたは複数の非一時的な機械可読記憶媒体に記憶され、1つまたは複数のデジタル処理デバイスまたは量子処理デバイス上で実行可能な命令が含まれている。本明細書で説明されたシステムまたはそれらの一部分は、それぞれが、装置、方法、あるいは1つまたは複数のデジタル処理デバイスまたは量子処理デバイスと、本明細書で説明された動作を実行するための実行可能命令を記憶するための記憶装置とを含み得るシステムとして実施され得る。
【0089】
本明細書は多くの特定の実装形態の詳細を包含しているが、これらは、特許請求され得るものの範囲に対する制限としてではなく、特定の実施形態に固有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。本明細書において個別の実施形態の状況で説明された特定の特徴は、単一の実施形態の組合せでも実施され得る。反対に、単一の実施形態の状況で説明された種々の特徴も、複数の実施形態において別個に実施され得、または任意の適切な副組合せにおいて実施され得る。その上、各特徴は、上記では特定の組合せで作動するものとして説明され、当初はそのように特許請求さえされるかもしれないが、特許請求された組合せからの1つまたは複数の特徴が、場合によっては組合せから削除され得、また、特許請求された組合せが、副組合せまたは副組合せの変形形態に向けられてもよい。
【0090】
同様に、図面において動作が特定の順番で表されているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順番または順序で実行されること、あるいは図示のすべての動作が実行されること、を必要とするものと理解されるべきではない。特定の環境では、マルチタスクおよび並行処理が有利なことがある。その上、前述の実施形態の種々のシステムモジュールおよびコンポーネントの分離は、すべての実施形態においてそのような分離が必要とされるものと理解されるべきではなく、説明されたプログラムコンポーネントおよびシステムは、単一のソフトウェア製品において全体的に一緒に一体化され得るか、または複数のソフトウェア製品へとパッケージ化され得ることを理解されたい。
【0091】
主題の特定の実施形態が説明されてきた。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正形態が作製され得る。たとえば、特許請求の範囲において列挙された行為は、異なる順番で実行されても、望ましい結果を達成することができる。一例として、添付図において表された処理は、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序または順番を必ずしも必要とするわけではない。場合によっては、マルチタスクおよび並行処理が有利なことがある。