(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6840819
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】作業床及び支保柱施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20210301BHJP
B66C 7/08 20060101ALI20210301BHJP
E21D 13/00 20060101ALI20210301BHJP
E21D 15/00 20060101ALI20210301BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
E21D11/40 A
B66C7/08
E21D13/00
E21D15/00
E21D9/06 301D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-202689(P2019-202689)
(22)【出願日】2019年11月7日
【審査請求日】2020年9月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】大石 憲寛
(72)【発明者】
【氏名】井櫻 潤示
(72)【発明者】
【氏名】大西 亮平
【審査官】
田島 拳士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−150107(JP,A)
【文献】
特開2014−118762(JP,A)
【文献】
実開昭58−076679(JP,U)
【文献】
特開2001−151459(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104594137(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 23/00−23/16
E01B 1/00−3/48
E01C 9/00−9/10
B66C 7/00−7/16
E21D 9/00−15/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
併設する二本のトンネルを切り開きトンネルが繋いでいる大断面トンネルにおいて、少なくとも一方の前記トンネルにおける前記切り開きトンネルの接続箇所に支保柱を施工する際に用いられる、門型クレーンが走行する作業床であって、
前記作業床は、
前記トンネルを上空間と下空間に仕切る複数の横架桁と、
前記複数の横架桁の上に敷設される複数の覆工板と、を有し、
前記覆工板が前記門型クレーンの走行を案内するレールを備えており、
前記レールが、それぞれの前記覆工板の上に備えてある平鋼からなる単一部材により形成されている、もしくは、前記覆工板の内部に格納されていることを特徴とする、作業床。
【請求項2】
前記覆工板は、前記門型クレーンの走行方向に延設する複数の形鋼が相互に接続されることにより形成されており、
一つの前記形鋼の有するウエブの直上に前記走行方向に延設する前記平鋼により形成される前記レールが取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の作業床。
【請求項3】
前記覆工板は、前記門型クレーンの走行方向に延設する複数の形鋼が相互に接続されることにより形成されており、
任意の隣り合う二つの前記形鋼の間に前記レールが配設され、
二つの前記形鋼の下フランジ同士と上フランジ同士をそれぞれ平鋼が繋いでおり、上下の該平鋼の間に前記レールが収容されていることを特徴とする、請求項1に記載の作業床。
【請求項4】
併設する二本のトンネルを切り開きトンネルが繋いでいる大断面トンネルにおいて、少なくとも一方の前記トンネルにおける前記切り開きトンネルの接続箇所に支保柱を施工する、支保柱施工方法であって、
前記トンネルを上空間と下空間に仕切る複数の横架桁を該トンネルに架設し、
前記複数の横架桁に、複数の覆工板を敷設し、この際に、複数の覆工板には、門型クレーンの走行を案内するレールを予め備えておき、ここで、前記レールは、それぞれの前記覆工板の上に備えてある平鋼からなる単一部材により形成されている、もしくは、前記覆工板の内部に格納されており、
前記レールに沿って前記門型クレーンを走行させながら前記支保柱を施工することを特徴とする、支保柱施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業床及び支保柱施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、軟弱な地盤が分布する都市部において道路トンネルを施工する場合、開削工法の適用が一般的であるものの、開削工法は、工事中の騒音や振動、交通規制等の課題を内在している。また、都市部の道路下空間は、複数の地下鉄や共同溝等の埋設物が輻輳していることから、新たに施工しようとするトンネルの設置深度は往々にして深くなる傾向にあり、設置深度の深層化は建設費の増大に直結する。このような背景の下、道路トンネルの施工に際してシールド工法を適用するケースが増加している。ところで、この道路トンネルの施工に当たり、一般の道路トンネルの施工では、例えば一台のシールド掘進機の掘進によって断面円形の本線トンネルが施工されることで足りる。一方、道路トンネルの分合流部の施工では、本線トンネルとランプトンネルの各断面を包括する、極めて大規模な地中拡幅が必要になり、その施工方法には様々な工夫を講じる必要がある。施工方法の一例として、本線トンネルとランプトンネルの2つのトンネル間に円弧状もしくは直線状のパイプルーフを架け渡して先受け支保工を施工する方法が挙げられる。この先受け支保工を施工した後、トンネル内を支保工にて支持し、上方のパイプルーフ直下を掘削しながらトンネルの一部を撤去することにより、例えば多連円弧状の大断面空間が形成される。そして、このように形成された大断面空間において、上記する道路トンネルの分合流部等の構造物を構築することができる。
【0003】
ここで、
図1及び
図2を参照して、この大断面トンネルの施工方法を詳説する。
図1は、道路トンネルの分合流部の施工方法及び仮設構造を説明する縦断面図であり、
図2は、
図1と同様に道路トンネルの分合流部の施工方法と本設構造を説明する縦断面図である。道路トンネルの分合流部の施工方法においては、まず、地中に間隔を置いて、相対的に小断面のランプトンネル100と、相対的に大断面の本線トンネル200とを併設施工する。本線トンネル200とランプトンネル100はいずれも、シールド工法にて施工され、複数のセグメント20がリング方向に接続されてセグメントリングを形成するとともに、複数のセグメントリングがトンネルの延伸方向に接続されることにより所定延長に亘るトンネルを形成している。各セグメント20は、周方向に延びる湾曲した複数の主桁21と、主桁21の外周面に溶接にて接続されたスキンプレート24と、主桁21の周方向端部において当該主桁21とスキンプレート24に溶接にて接続された継手板22と、主桁21同士を繋いでセグメント20を補強するする縦リブ23と、を有する。
次に、ランプトンネル100と本線トンネル200の各トンネル内において、パイプルーフ300との交差位置を起点として鉛直方向に延設する支保柱60(鉛直支保工)を施工する。次に、ランプトンネル100と本線トンネル200の上方において双方のトンネル間にパイプルーフ300を架け渡す。パイプルーフ300は、ランプトンネル100を発進側トンネルとし、ランプトンネル100から鋼管30を順次推進させながら到達側トンネルである本線トンネル200の手前まで湾曲線形を有して延設している。尚、ランプトンネル100が到達側トンネルであり、本線トンネル200が発進側トンネルであってもよい。また、直線状のパイプルーフが施工されてもよい。ランプトンネル100と本線トンネル200の下方位置においても、一点鎖線で示す下方のパイプルーフ300Aを必要に応じて施工する。そして、ランプトンネル100と本線トンネル200の下方位置には、双方のトンネル間に跨る先行仮設下部受け400を架け渡す。尚、支保柱60の施工は、パイプルーフ300,300Aの架け渡しの後で行ってもよい。
仮設構造ではないが、ランプトンネル100と本線トンネル200にはそれぞれ、上方斜め支保工70と下方斜め支保工80を仮設段階で施工する。これらの部材はいずれも、図中の建築限界の外周側に位置しており、この建築限界の外周側に施工されるコンクリート等に埋設される部材となり得る。上方斜め支保工70は、図中の一点鎖線で示す本設の切り開きトンネル700(もしくは、切り拡げトンネル)の軸線に沿う方向に延びて、本設トンネル供用後に切り開きトンネル700から作用する軸力を逃がす部材である。一方、下方斜め支保工80も、図中の一点鎖線で示す本設の切り開きトンネル700の軸線に沿う方向に延びて、本設トンネル供用後に切り開きトンネル700から作用する軸力を逃がす部材である。
本線トンネル200とランプトンネル100のうち、先行仮設下部受け400の端部が嵌め込まれる箇所には予めセグメント20に対して凹陥部25が設けられ、例えばこの凹陥部25は、トンネル施工当初はコンクリート等で閉塞されている。その施工方法の詳細は省略するが、例えば、ランプトンネル100の凹陥部25(発進部)から折れ機構を有して曲線施工対応の掘進機を発進させ、地山を掘進しながら鋼管50の推進を実行して鋼管50同士を繋ぐことにより、先行仮設下部受け400が施工される。この施工において、鋼管の推進に適用された掘進機は、本線トンネル200の凹陥部25まで到達して先行仮設下部受け400の施工を完了した後、例えば縮径して、先行仮設下部受け400を構成する複数の鋼管50の内部を介して発進側トンネル100内に引き戻されて回収される。また、本線トンネル200とランプトンネル100において、切り開きトンネル700の端部が接続される箇所のセグメント20においても、それぞれ凹陥部26,27が予め設けられている。
発進側トンネル100側においては、パイプルーフ300を構成する複数の鋼管30のうち、後端に位置する鋼管30の端部32と、セグメント20に固定されている鋼製の収容開口部に固定されている伝達部材10もしくはキャップ部材17と、鋼管30の端部32と伝達部材10もしくはキャップ部材17とを接続するコンクリート体40と、により、パイプルーフと発進側トンネルの接続構造600が形成される。一方、到達側トンネル200側においては、到達側トンネル200の手前で先端31が止まっている鋼管30と、セグメント20から地山G内に突出している鋼製の突出部と、鋼管30の先端31と鋼製の突出部とを巻き込んで一体化しているコンクリート体40と、により、パイプルーフと到達側トンネルの接続構造500が形成される。
【0004】
次に、
図2に示すように、パイプルール300,300Aを支保工として、パイプルール300の下方やパイプルール300Aの上方を透かし掘り等して施工空間SPを形成し、切り開きトンネル700用のセグメント同士を継手部を介して接続しながら、本線トンネル200とランプトンネル100に掛け渡す。ここで、切り開きトンネル700用のセグメントは、本線トンネル200もしくはランプトンネル100側に取り付けられるAセグメント20A及びBセグメント20Bと、左右のBセグメント20Bのテーパー状の端面の間に、施工空間SP側からX方向に落とし込まれる(もしくは差し込まれる)ことにより取り付けられるKセグメント20Cとにより形成される。
図2に示すようなAセグメント20AとBセグメント20BとKセグメント20Cは相互にセグメント継手を介して接続され、切り開き区間に亘り、各セグメントがリング継手を介して接続されることにより、切り開きトンネル700が形成される。
切り開きトンネル700により本線トンネル200とランプトンネル100が繋がれた後、本線トンネル200とランプトンネル100双方の内側の建築限界と干渉する領域を撤去することにより、大断面トンネルが施工される。
【0005】
ところで、
図1に示す道路トンネルの分合流部の仮設構造においては、ランプトンネル100と本線トンネル200のいずれにおいても、トンネルが作業床を介して上空間と下空間に仕切られ、この作業床を利用して、支保柱60の施工をはじめとする、様々な施工が行われる。また、作業床を介して上空間と下空間が形成されることにより、それぞれの空間に固有の作業通路が確保されることから、トンネル内における施工効率が高まる。
作業床を利用した施工の中でも、支保柱60の施工を効率的に行う観点から、作業床上に門型クレーンを走行自在に設置し、門型クレーンを利用して支保柱60が施工される場合がある。
図1からも明らかなように、支保柱60はトンネルの上方位置と下方位置に亘り鉛直姿勢で取り付けられることから、作業床のうち支保柱60と干渉する箇所が適宜撤去されながら、支保柱60が施工される。尚、この支保柱60は、切り開きトンネル700の延長区間に亘り、所定の間隔を置いて複数設置される。
【0006】
ここで、特許文献1には、覆工板の上に橋型クレーン等の軌道を設置する場合に、軌道をトラック等の車両が容易に横切ることが可能で、かつ、容易に撤去することができるようにした、覆工板上走路が開示されている。具体的には、軌道式走行車の走行方向に沿って延在するベース部と、ベース部上に沿って載置されて延在するレール部と、ベース部の端部に設けられた接合部とにより構成される軌道と、二つの軌道間の間隔を保持する間隔保持部材と、接合部同士をつなぐ継手部と、軌道の末端に設けられた端末ストッパとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−151459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の覆工板上走路を形成する軌道は、覆工板上に設けられた長尺な平板状のベース部と、ベース部上に設けられた平板状のレール部とを備えた、複数部材の積層構造の軌道であることから、実際に軌道の高さはある程度の高さにならざるを得ず、トラック等の車両が容易に横切ることが可能か否かは定かでない。
【0009】
本発明は、併設する二本のトンネルを切り開きトンネルが繋いでいる大断面トンネルにおいて、少なくとも一方のトンネルにおける切り開きトンネルの接続箇所に支保柱を施工する際に用いられる、門型クレーンが走行する作業床に関し、作業床上における車両や作業員の通行に支障とならない門型クレーンのレールを備えている作業床と、この作業床を用いた支保柱施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による作業床の一態様は、
併設する二本のトンネルを切り開きトンネルが繋いでいる大断面トンネルにおいて、少なくとも一方の前記トンネルにおける前記切り開きトンネルの接続箇所に支保柱を施工する際に用いられる、門型クレーンが走行する作業床であって、
前記作業床は、
前記トンネルを上空間と下空間に仕切る複数の横架桁と、
前記複数の横架桁の上に敷設される複数の覆工板と、を有し、
前記覆工板が前記門型クレーンの走行を案内するレールを備えており、
前記レールが、前記覆工板上の扁平な単一部材により形成されている、もしくは、前記覆工板の内部に格納されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、トンネルを上空間と下空間に仕切る作業床において、門型クレーンの走行を案内するレールが、扁平な単一部材により形成されている、もしくは、覆工板の内部に格納されていることにより、門型クレーンのレールが作業床上における車両や作業員の通行の支障にならない。レールが覆工板上の扁平な単一部材により形成されている形態では、上方に突出するレールが扁平な単一部材であることから、トラック等の車両が仮にレールを横切る際にもその支障にならず、レールが覆工板の内部に格納されている形態では、覆工板上に突出するレール自体が存在しないことから、作業床上における車両等の自由な走行が保証される。尚、後者の形態では、門型クレーンが走行しない場合にレールが覆工板の内部に格納されていて、門型クレーンが走行する際に覆工板の例えば上面が開放されてレールが上方に臨み、門型クレーンの車輪が覆工板の内部のレールに対して走行自在に載置される。
【0012】
併設する二本のトンネルは、上記するように、本線トンネルとランプトンネル等であり、切り開きトンネルが切り開き区間において双方のトンネルを繋ぐ。例えば
図1に示すように、本線トンネルとランプトンネルの双方に支保柱が施工されることから、双方のトンネル内において作業床が施工される。各トンネルにおいては、例えばその左右の対応する位置に一組のブラケットが取り付けられ、一組のブラケット上に横架桁が敷設される。各トンネルにおいて、切り開きトンネルが施工される区間には、その長手方向に間隔を置いて複数の横架桁が設置され、各横架桁に複数の覆工板が敷設されることにより、作業床が施工される。作業床の上空間と下空間は、相互に区分けされた施工空間となる。例えば、上空間において、作業床の中央位置よりも左側に二条のレールが設けられ、この二条のレールに沿って門型クレーンが走行する。この場合、上空間における作業床の中央位置よりも右側は、トラックやミキサー車等の車両が走行する走行路として使用することができる。
【0013】
また、本発明による作業床の他の態様において、前記覆工板は、前記門型クレーンの走行方向に延設する複数の形鋼が相互に接続されることにより形成されており、
一つの前記形鋼の有するウエブの直上に前記走行方向に延設する平鋼により形成される前記レールが取り付けられていることを特徴とする。
例えば、複数のH形鋼が併設され、隣接するH形鋼の上フランジ同士と下フランジ同士が溶接等にて接合されることにより、覆工板が形成される。そして、扁平な部材である平鋼からなるレールがH形鋼のウエブの直上に配設されていることにより、門型クレーンの重量が載荷されるレールを、覆工板を構成する高剛性のウエブにより安定的に支持することができる。門型クレーンの二つの脚部にある車輪を走行自在に支持する二条のレールは、門型クレーンの幅に応じた異なる覆工板の表面に、溶接やボルト等により取り付けられる。
さらに、門型クレーンの走行に際してレールを使用するに当たり、レールが低い姿勢で覆工板の上面に露出していることから、門型クレーンをレール上に速やかに載置し、使用することができる。例えば、他の形態である覆工板の内部にレールが収容されている形態では、レールの使用に当たり、覆工板におけるレールの上方にある平鋼等を切断撤去する施工が必要になる。
【0014】
また、本発明による作業床の他の態様において、前記覆工板は、前記門型クレーンの走行方向に延設する複数の形鋼が相互に接続されることにより形成されており、
任意の隣り合う二つの前記形鋼の間に前記レールが配設され、
二つの前記形鋼の下フランジ同士と上フランジ同士をそれぞれ平鋼が繋いでおり、上下の該平鋼の間に前記レールが収容されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、二つのH形鋼等の形鋼の下フランジ同士と上フランジ同士がそれぞれ溶接等によって平鋼を介して繋がれていることにより、門型クレーンを走行させるべくレールを使用する際には、平鋼を容易に切断撤去することができる。ここで、レールは、覆工板を形成する形鋼と同程度の高さを有しているのがよく、レールが覆工板の内部に収容されている際には、レールの頭部にて上方にある平鋼を支持するのがよい。
【0016】
また、本発明による支保柱施工方法の一態様は、
併設する二本のトンネルを切り開きトンネルが繋いでいる大断面トンネルにおいて、少なくとも一方の前記トンネルにおける前記切り開きトンネルの接続箇所に支保柱を施工する、支保柱施工方法であって、
前記トンネルを上空間と下空間に仕切る複数の横架桁を該トンネルに架設し、
前記複数の横架桁に、複数の覆工板を敷設し、この際に、複数の覆工板には、門型クレーンの走行を案内するレールを予め備えておき、ここで、前記レールは、前記覆工板上の扁平な単一部材により形成されている、もしくは、前記覆工板の内部に格納されており、
前記レールに沿って前記門型クレーンを走行させながら前記支保柱を施工することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、門型クレーンを走行させながら支保柱をトンネル内に施工する作業床において、門型クレーンが走行するレールが作業床を形成する覆工板に予め備えてあることにより、支保柱の施工性が良好になる。さらに、門型クレーンが走行するレールが、覆工板上の扁平な単一部材により形成されている、もしくは、覆工板の内部に格納されていることにより、作業床上における車両等の自由な走行が保証される。
【0018】
また、本発明による支保柱施工方法の他の態様において、前記覆工板は、前記門型クレーンの走行方向に延設する複数の形鋼が相互に接続されることにより形成されており、
一つの前記形鋼の有するウエブの直上に前記走行方向に延設する平鋼により形成される前記レールが取り付けられていることを特徴とする。
本態様によれば、門型クレーンの走行に際してレールを使用するに当たり、レールが低い姿勢で覆工板の上面に露出していることから、門型クレーンをレール上に速やかに載置し、使用することができる。
【0019】
また、本発明による支保柱施工方法の他の態様において、前記覆工板は、前記門型クレーンの走行方向に延設する複数の形鋼が相互に接続されることにより形成されており、
任意の隣り合う二つの前記形鋼の間に前記レールが配設され、
前記二つの形鋼の下フランジ同士と上フランジ同士をそれぞれ平鋼が繋いでおり、上下の該平鋼の間に前記レールが収容されており、
前記門型クレーンの走行に当たり、上方の前記平鋼を撤去して前記レールを上方空間に臨ませることを特徴とする。
本態様によれば、二つのH形鋼等の形鋼の下フランジ同士と上フランジ同士がそれぞれ溶接等によって平鋼を介して繋がれていることにより、門型クレーンを走行させるべくレールを使用する際には、平鋼を容易に切断撤去することができる。また、門型クレーンを使用しない場合は、作業床の上方にレールが突出していないことから、門型クレーンのためのレールが作業床上における車両等の自由な走行の障害にならない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の作業床とこの作業床を用いた支保柱施工方法によれば、レールに沿って移動する門型クレーンを使用しながら支保柱を施工できること、及び、門型クレーン用のレールが作業床上における車両や作業員の通行に支障とならず、作業床上における車両等の自由な走行が保証されることにより、トンネル内における施工性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】道路トンネルの分合流部の施工方法及び仮設構造を説明する縦断面図である。
【
図2】道路トンネルの分合流部の施工方法と本設構造を説明する縦断面図である。
【
図3】実施形態に係る支保柱施工方法の一例を説明する縦断面図である。
【
図4A】第1実施形態に係る作業床を構成する、レールを備えた覆工板の一例の平面図である。
【
図4B】
図4AのB−B矢視図であって、第1実施形態に係る作業床を構成する、レールを備えた覆工板の一例の縦断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る作業床に設けられている二条のレールに、門型クレーンの車輪が載置されている状態を示す縦断面図である。
【
図6A】第2実施形態に係る作業床を構成する、レールを備えた覆工板の一例の平面図である。
【
図6B】
図6AのB−B矢視図であって、第2実施形態に係る作業床を構成する、レールを備えた覆工板の一例の縦断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る作業床の縦断面図であって、レールの上を門型クレーンが走行していない場合の図である。
【
図8】第2実施形態に係る作業床の縦断面図であって、レールの上を門型クレーンが走行している場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各実施形態に係る作業床と支保柱施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[実施形態に係る支保柱施工方法]
まず、
図3を参照して、実施形態に係る支保柱施工方法の一例について説明する。ここで、
図3は、実施形態に係る支保柱施工方法の一例を説明する縦断面図である。
【0024】
以下で説明する施工方法は、
図1に示すように、併設する二本のトンネル100,200を切り開きトンネル700が繋いでいる大断面トンネルにおいて、少なくとも一方のトンネル100等における切り開きトンネル700の接続箇所に支保柱60を施工する施工方法である。
【0025】
図3に示すトンネル100は、
図1に示す道路トンネルの分合流部の仮設構造を構成するランプトンネルであり、
図3は、ランプトンネル100における支保柱施工方法を示している。尚、以下、ランプトンネル100を用いて、その内部における支保柱施工方法について説明するが、
図1に示す本線トンネル200においても、同様の施工方法により支保柱が施工される。
【0026】
図3に示すように、トンネル100内における左右の対応する位置には、一組の鋼製のブラケット810が取り付けられ、一組のブラケット810の上にH形鋼等により形成される横架桁820が敷設される。この一組のブラケット810と横架桁820の組み合わせは、ランプトンネル100における切り開きトンネル700との接合区間に亘り、トンネルの延伸方向に間隔を置いて複数設置される。例えば、横架桁820の上に載置される覆工板830の長手方向の長さ(2m乃至3m程度)ごとに、一組のブラケット810と横架桁820が設置される。
【0027】
間隔を置いて併設される横架桁820には、平面視矩形の覆工板830が架け渡され、
図3に示すように複数の覆工板830が左右方向に併設されるとともに、トンネル100の延伸方向に複数の覆工板830の並びが連続することにより、ブラケット810と横架桁820を含めて、作業床800が形成される。
【0028】
作業床800により、トンネル100の内部は、上空間UPと下空間UNに仕切られ、上空間UPと下空間UNにおいてそれぞれ固有の作業が行われるとともに、トンネル100内において上空間UPと下空間UNに固有の車両用の走行路や作業員W1,W2等の作業員用の通路が形成される。
【0029】
トンネル100の内部において支保柱60(
図1に示す実線の支保柱、及び
図3に示す一点鎖線の支保柱)を施工するに当たり、作業床800が備えている二条のレール840に門型クレーン900の有する車輪930が載置され、門型クレーン900がレール840に案内されながら、トンネル100内において間隔を置いて複数の支保柱60を施工する。
【0030】
門型クレーン900は、左右の脚910と、左右の脚910の上端同士を繋ぐ横架桁920と、脚910の下端において回転自在に装着されている車輪930と、を基本構成とし、この基本構成を間隔を置いて複数組備えており、それぞれの基本構成同士をトンネル100の延伸方向に延びる水平材等にて繋ぐことにより、正面視門型の三次元構造を有している。また、多様な作業用ブーム940や作業ステージ950を備えており、これらを使用して、例えば所定長さの鋼管等を鉛直方向に繋ぎながら、トンネル100の上下に亘って鉛直方向に延びる支保柱60を施工することができる。
【0031】
図3においては、トンネル100の中央ラインCLよりも左側に支保柱60が施工されることから、作業床800の左側にレール840を備えた覆工板830が敷設されている。より具体的には、予めレール840を備えている複数の覆工板830が、各レール840が連続するようにトンネル100の延伸方向に敷設されて一条のレール840が形成され、これがトンネル100の中央ラインCLの左側において門型クレーン900の幅の間隔を有して二条設けられている。
【0032】
覆工板830がその上面等に予めレール840を備えていることにより、現場において、覆工板830に対してレール840を溶接等にて接続する作業が不要になることから、支保柱60の良好な施工性に繋がり、さらには、トンネル100内における溶接作業に伴う危険性が解消される。
【0033】
作業床800は、門型クレーン900等の荷重に対抗するべく、その下方の適所が油圧ジャッキ850等により支持されている。
【0034】
図3に示すように、門型クレーン900をレール840に沿って移動させながら支保柱60を施工することにより、支保柱60を良好な施工性の下で施工することができる。また、門型クレーン900の形状により、その内部にトラックD等の車両を走行させることができる。さらに、トンネル100のうち、門型クレーン900が走行しない中央ラインCLよりも右側の領域は、ミキサー車M等の車両の走行路や作業員の通路、各種の施工空間として利用することができる。
【0035】
[第1実施形態に係る作業床]
次に、
図4及び
図5を参照して、第1実施形態に係る作業床の一例について説明する。ここで、
図4Aは、第1実施形態に係る作業床を構成する、レールを備えた覆工板の一例の平面図であり、
図4Bは、
図4AのB−B矢視図であって、第1実施形態に係る作業床を構成する、レールを備えた覆工板の一例の縦断面図である。また、
図5は、第1実施形態に係る作業床に設けられている二条のレールに、門型クレーンの車輪が載置されている状態を示す縦断面図である。
【0036】
図4に示すように、覆工板830は、複数のH形鋼834(図示例は五つのH形鋼で、H形鋼は型鋼の一例)は、ウエブ831と下フランジ832と上フランジ833とを有し、隣接するH形鋼834の上フランジ833同士と下フランジ832同士がともに溶接により接合されている。さらに、左右端のH形鋼834の側方には、左右のH形鋼834の内部を閉塞するようにして平鋼835が配設され、上フランジ833と下フランジ832に溶接にて接合されることにより、覆工板830が形成される。
【0037】
この覆工板830において、任意のH形鋼834(図示例は左端から二つ目のH形鋼)の上フランジ833の上面であって、ウエブ831の直上位置に、平鋼により形成されるレール840が溶接により接合されている。
【0038】
ここで、覆工板830の寸法例として、短辺の幅t1は1m程度(従って一つのH形鋼834の幅が200mm程度)、長辺の長さt2は2m乃至3m程度、厚みt3は200mm程度かそれ以下(例えば190mm)等である。
【0039】
そして、門型クレーン用のレール840に適用される平鋼の厚みt4は25mm程度であり、幅は65mm程度である。このように、レール840が厚みの薄い扁平な単一の平鋼により形成されていることにより、例えば、
図3において門型クレーン900が使用されていない状態において、作業床800の表面からレール840が上方に突出している場合であっても、トラックD等の車両がトンネル100の延伸方向に走行する際や、トンネル100の断面方向に横切るように走行する際に、レール840が障害となることはない。また、作業床800上を作業員が通行する際にも、レール840が通行の障害となることはない。
【0040】
図5に示すように、門型クレーン900が使用される場合は、平鋼により形成される二条のレール840に対して、門型クレーン900を形成する左右の脚910の下端にある車輪930が走行自在に載置される。
【0041】
[第2実施形態に係る作業床]
次に、
図6及び
図8を参照して、第2実施形態に係る作業床の一例について説明する。ここで、
図6Aは、第2実施形態に係る作業床を構成する、レールを備えた覆工板の一例の平面図であり、
図6Bは、
図6AのB−B矢視図であって、第2実施形態に係る作業床を構成する、レールを備えた覆工板の一例の縦断面図である。また、
図7は、第2実施形態に係る作業床の縦断面図であって、レールの上を門型クレーンが走行していない場合の図であり、
図8は、第2実施形態に係る作業床の縦断面図であって、レールの上を門型クレーンが走行している場合の図である。
【0042】
図6に示すように、覆工板830Aも覆工板830と同様に、複数のH形鋼834(図示例は四つのH形鋼で、H形鋼は型鋼の一例)を有し、隣接するH形鋼834の上フランジ833同士と下フランジ832同士がともに溶接により接合されている。そして、覆工板830Aにおいては、任意の隣り合う二つのH形鋼834(図示例では、左端とその横のH形鋼)の間に間隔があり、この間隔を上下で閉塞するように、双方の上フランジ833同士を平鋼837が繋ぎ、双方の下フランジ832同士を別途の平鋼836が繋いでいる。そして、覆工板830Aと同程度の高さのあるレール840Aが平鋼836上に載置され、レール840Aの頭部が平鋼837を支持するようにして覆工板830Aの内部に収容されている。
【0043】
ここで、
図6Bに示すように、レール840Aを支持する下方の平鋼836は、上方の平鋼837よりも厚みを有するものが適用されるのが好ましい。例えば、レール840Aが60kg級のレールの場合に、平鋼837には4.5mm程度の厚みのものが適用され、平鋼836には12mm程度の厚みのものが適用される。
【0044】
図7に示すように、門型クレーンを使用しない場合は、レール840Aは覆工板830Aの内部に収容されていることから、レール840A自体はある程度の高さを有するものの、作業床800Aの上方にレール840Aが突出しないことから、作業床800A上の車両の走行や作業員の通行がレール840Aにより妨げられることがない。
【0045】
一方、
図8に示すように、門型クレーン900を使用する場合は、上方の平鋼837が切断撤去されることにより、覆工板830Aの内部に収容されていたレール840Aを上方に露出させる。そして、二条のレール840Aに対して、門型クレーン900の有する車輪930を載置することにより、作業床800A上において門型クレーン900を走行させることが可能になる。
【0046】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0047】
20:セグメント
20A:Aセグメント
20B:Bセグメントあ
20C:Kセグメント
60:支保柱
100:ランプトンネル(トンネル)
200:本線トンネル(トンネル)
300,300A:パイプルーフ
700:切り開きトンネル
800,800A:作業床
810:ブラケット
820:横架桁
830,830A:覆工板
831:ウエブ
832:下フランジ
833:上フランジ
834:H形鋼(形鋼)
835:平鋼
840:レール(平鋼)
840A:レール
836,837:平鋼
900:門型クレーン
910:脚:
920:横架桁
930:車輪
UP:上空間
UN:下空間
M:ミキサー車(車両)
D:トラック(車両)
【要約】
【課題】作業床上における車両や作業員の通行に支障とならない門型クレーンのレールを備えている作業床と、この作業床を用いた支保柱施工方法を提供する。
【解決手段】作業床800は、トンネル100を上空間UPと下空間UNに仕切る複数の横架桁820と、複数の横架桁820の上に敷設される複数の覆工板830とを有し、覆工板830が門型クレーン900の走行を案内するレール840,840Aを備えており、レール840は、覆工板830上の扁平な単一部材により形成されている、もしくは、レール840Aは、覆工板830Aの内部に格納されている。
【選択図】
図5