(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筒状体の前記内周面と、前記固定部の前記外周面との少なくとも一方に設けられ、前記筒状体の前記内周面と前記固定部の前記外周面との間に前記糸を係止する凹溝を有する、請求項1に記載の糸固定具。
前記ワイヤが挿通されるシースと、前記シースの基端側に配設され、前記ワイヤを前記シースに対して軸方向に移動させる操作部とを有し、前記筒状体に対して前記固定部を相対的に移動させることが可能なアプリケータを有する、請求項1に記載の糸固定具。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態に係る、筒状体及び固定部を分離した糸固定具、及び、糸固定具に固定される糸を示す概略的な断面図である。
【
図1C】
図1Cは、
図1A中の1C−1C線に沿う糸固定具の筒状体の断面及び糸固定具の固定部を示す概略図である。
【
図1D】
図1Dは、
図1A中の1D−1D線に沿う糸固定具の筒状体の断面及び糸固定具の固定部を示す概略図である。
【
図1E】
図1Eは、
図1A中の1E−1E線に沿う糸固定具の固定部の断面を示す概略図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1Aに示す糸固定具の固定部の保持部に対し、固定部の長手軸に直交する方向から糸を対向させる状態に配置した状態を示す概略的な断面図である。
【
図3A】
図3Aは、
図2Aに示す糸固定具の固定部を筒状体の一端に近接させながら、固定部の保持部の底部に糸を案内している状態を示す概略的な断面図である。
【
図4A】
図4Aは、ワイヤを牽引して
図3Aに示す糸固定具の固定部を筒状体の一端から他端に向かって移動させながら、固定部の保持部の底部に糸を案内するとともに、筒状体の凹溝と固定部の外周面との間に糸を案内している状態を示す概略的な断面図である。
【
図5A】
図5Aは、
図4Aに示す糸固定具の固定部を筒状体の他端に向かってさらに移動させて、筒状体の凹溝と固定部の外周面との間に糸を配置するとともに、固定部の保持部の底部に糸を保持させて、糸を糸固定具に固定した状態を示す概略的な断面図である。
【
図5C】
図5Cは、
図5A中の糸固定具の固定部の、糸が保持された保持部及びワイヤを拡大して示す概略的な断面図である。
【
図6A】
図6Aは、
図5Aに示す糸固定具のワイヤを切断した状態を示す概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る糸固定具を体内に入れる際、及び、糸固定具のワイヤを牽引する際に用いられる、内視鏡及び内視鏡の2つの処置具挿通チャンネルにそれぞれ挿通された把持鉗子を示す概略図である。
【
図8A】
図8Aは、糸固定具の固定部14とワイヤとの接続構造の変形例を示す概略図である。
【
図8B】
図8Bは、
図8Aに示す糸固定具の固定部14に対して、ワイヤの接続状態が解除された状態を示す概略図である。
【
図9A】
図9Aは、糸固定具の筒状体及び固定部とともに、筒状体及び固定部を体腔内に導入する、糸固定具のアプリケータを示す概略的な断面図である。
【
図9B】
図9Bは、糸固定具の筒状体に対して係合する突起を有する固定部、及び、突起に接続されたワイヤを示す概略図である。
【
図10】
図10は、糸固定具のワイヤを切断する切断機構の第1機構を示す概略図である。
【
図11】
図11は、糸固定具のワイヤを切断する切断機構の第2機構を示す概略図である。
【
図12A】
図12Aは、糸固定具のワイヤを切断する切断機構の第3機構を示す概略図である。
【
図13】
図13は、糸固定具のワイヤを切断する切断機構の第4機構を用いて、糸固定具のワイヤを切断した状態を示す概略図である。
【
図14A】
図14Aは、糸固定具のワイヤを切断する切断機構の第5機構を示す概略図である。
【
図15A】
図15Aは、糸固定具のワイヤを切断する切断機構の第6機構を示す概略図である。
【
図16A】
図16Aは、
図1Dに示す糸固定具の筒状体及び固定部の外形とは異なる、円筒状の内壁を有する筒状体の断面、及び、円柱状の固定部を示す糸固定具の概略図である。
【
図16B】
図16Bは、
図1D及び
図16Aに示す糸固定具の筒状体及び固定部の外形とは異なる、楕円筒状の内壁を有する筒状体の断面、及び、楕円柱状の固定部を示す糸固定具の概略図である。
【
図16C】
図16Cは、
図1D、
図16A及び
図16Bに示す糸固定具の筒状体及び固定部の外形とは異なる、六角形状の内壁を有する筒状体の断面、及び、六角柱状の固定部を示す糸固定具の概略図である。
【
図17A】
図17Aは、
図1Aに示す糸固定具の筒状体及び固定部とは異なる、係合部を有する筒状体及び係合部を有する固定部を分離した糸固定具の断面を示すとともに、固定部を矢印17Aで示す方向から見た状態を示す概略図である。
【
図18A】
図18Aは、
図1A及び
図17Aに示す糸固定具の筒状体及び固定部とは異なる、係合部を有する筒状体及び係合部を有する固定部を分離した糸固定具の断面を示すとともに、固定部を矢印18Aで示す方向から見た状態を示す概略図である。
【
図19A】
図19Aは、
図1A、
図17A及び
図18Aに示す糸固定具の筒状体及び固定部とは異なる、係合部を有する筒状体及び係合部を有する固定部を分離した糸固定具の断面を示すとともに、固定部を矢印19Aで示す方向から見た状態を示す概略図である。
【
図20】
図20は、
図1Aから
図1Eに示す糸固定具の固定部とは異なり、第2端部に2つの半円柱状部材を並べて形成した曲面で保持部を形成した、糸固定具の固定部を示す概略的な斜視図である。
【
図21A】
図21Aは、
図1Aから
図1Eに示す糸固定具の固定部とは異なり、第2端部に2つの三角柱状部材を隣接して並べて形成した2つの傾斜面で保持部を形成した、糸固定具の固定部を示す概略的な斜視図である。
【
図21C】
図21Cは、
図21Aに示す糸固定具の固定部の変形例を示し、第2端部に2つの三角柱状部材を離間して並べて形成した2つの傾斜面で保持部を形成した、糸固定具の固定部を示す概略的な斜視図である。
【
図22A】
図22Aは、
図1Aから
図1Eに示す糸固定具の固定部とは異なり、第2端部に、第2端部の向かい合う頂点同士を結ぶように、互いに交差する2つの保持部を形成した、糸固定具の固定部を示す概略的な斜視図である。
【
図22B】
図22Bは、
図22Aに示す糸固定具の固定部の変形例を示し、第2端部に、第2端部の向かい合う辺同士を結ぶように、互いに交差する2つの保持部を形成した、糸固定具の固定部を示す概略的な斜視図である。
【
図22C】
図22Cは、
図22A及び
図22Bに示す糸固定具の固定部の変形例を示し、円形状の第2端部に、固定部の長手軸で互いに交差する2つの保持部を形成した、糸固定具の固定部を示す概略的な斜視図である。
【
図23A】
図23Aは、
図1Aから
図1Eに示す糸固定具の固定部とは異なり、固定部を、剛体と弾性体の2体で形成し、剛体と弾性体とが協働して糸の保持部を形成した状態を示す概略的な斜視図である。
【
図23B】
図23Bは、
図23Aに示す糸固定具の固定部の変形例を示し、固定部を、剛体と2つの弾性体の3体で形成し、2つの弾性体で糸の保持部を形成した状態を示す概略的な斜視図である。
【
図23C】
図23Cは、
図23Bに示す糸固定具の固定部の変形例を示し、固定部を、剛体と、互いに嵌合させた2つの弾性体の3体で形成し、嵌合させた2つの弾性体で糸の保持部を形成した状態を示す概略的な斜視図である。
【
図24A】
図24Aは、
図1Cに示す糸固定具の筒状体及び固定部の外形とは異なる、糸が配設される凹溝が存在しない筒状体の断面、及び、糸が配設される凹溝を有する固定部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
【0008】
図1Aから
図7を用いて、第1実施形態に係る糸固定具(糸係止具)10について説明する。
【0009】
図1Aから
図1Eに示すように、糸固定具10は、筒状体12と、固定部(保持部)14とを有する。糸16は、人体や動物等の生体の組織に合わせて適宜のものが用いられる。糸16は適宜の強度及び適宜のコシを有するものが用いられることが好ましい。後述するが、糸16が固定部14に所定の位置関係に配置された状態で、固定部14が筒状体12に支持されると、筒状体12と固定部14とは支持された状態を維持するとともに、糸16を固定した状態を維持する。
【0010】
筒状体12及び固定部14は、生体適合性を有する公知の金属材料又は樹脂材料で形成されていることが好ましい。筒状体12及び固定部14は、ともに金属材料で形成されていても良く、ともに樹脂材料で形成されていても良い。筒状体12が金属材料で形成される場合、固定部14が樹脂材料で形成されていても良い。筒状体12が樹脂材料で形成される場合、固定部14が金属材料で形成されていても良い。
【0011】
筒状体12は、一端(先端)22と、他端(基端)24とを有する。筒状体12は、一端22及び他端24の間に、内周面(内壁面)26及び外周面(外壁面)28を有する。なお、筒状体12の中心軸(一端22と他端24との間の断面の重心位置の集合体である重心軸)Cは、一端22と他端24との間の内周面26の形状に基づいて規定される。
【0012】
本実施形態では、
図1C及び
図1Dに示すように、筒状体12の中心軸Cに直交する内周面26の断面は、略矩形状に形成されている。
図1A、
図1B及び
図1Dに示すように、内周面26は、中心軸Cに平行に、固定部14の後述する外周面36との間に糸16を配置する1対の凹溝(糸係止溝)26aを有する。凹溝26a同士は中心軸Cに対して対向していることが好ましい。凹溝26aは、一端22から他端24に向かって形成されている。凹溝26aの中心軸Cの軸回りの周方向幅は、適宜設定可能であるが、糸16の直径よりも大きいことが好ましい。
図1Cに示すように、凹溝26aは、他端24に形成されていなくても良い。なお、筒状体12の内周面26と固定部14の外周面36との間は、凹溝26aにより、糸16が軽い力で係止又は保持される状態に離間している。筒状体12の内周面26と固定部14の外周面36との間の隙間は、糸16の経路を所望の状態に規制していれば良く、糸16を固定する必要はない。
【0013】
図1Aから
図1Eに示すように、固定部14はブロック状又は柱状に形成されている。固定部14は筒状に形成されていても良い。本実施形態では、固定部14は四角柱として形成されている。固定部14は、第1端部(端面)32と、第2端部(端面)34と、第1端部32及び第2端部34との間の部位(少なくとも一部)が筒状体12の内周面26に支持される外周面36とを有する。固定部14の長手軸Lは、第1端部32と第2端部34とにより規定される。より具体的には、長手軸(第1端部32と第2端部34との間の断面の重心位置の集合体である重心軸)Lは、第1端部32と第2端部34との間の外周面36の形状に基づいて規定される。
【0014】
本実施形態では、第1端部32及び第2端部34は、それぞれ、例えば長手軸Lに直交する平面として形成されている。第1端部32及び第2端部34は、それぞれ、凸状の曲面や凹状の曲面等、適宜の形状を採用し得る。
【0015】
固定部14は、固定部14の第2端部34に連続する位置に設けられ、外科的処置に用いられる糸16を保持可能な保持部(係止溝)42を有する。保持部42は、1対のガイド44a,44bと、ガイド44a,44bの間の底部46とを有する。保持部42は、1対のガイド44a,44bと、底部46とが連続して、略V字状に形成されている。このため、保持部42の底部46は、ガイド44a,44bに連続する略V字状に形成されている。ガイド44a,44bは、互いに対向する位置にある。
図1A及び
図1B中、ガイド44a,44bは、それぞれ平面として形成されているが、曲面であっても良い。本実施形態では、底部46は、長手軸Lに直交する方向に延びている。底部46は、固定部14の外周面36に連続する1対の端部46a間に形成されている。底部46の1対の端部46aは、筒状体12に固定部14が支持された状態で、それぞれ筒状体12の内周面26の凹溝26aに対向する。
【0016】
図5Cに拡大して示すように、保持部42の底部46は、例えば適宜の曲面として形成されている。保持部42の底部46は、一例として円弧の一部として形成されている。このとき、保持部42の底部46の半径rは、糸16の半径Rよりも小さいものが用いられる。このため、後述するように、糸16に張力が加えられながら、糸16が保持部42の底部46に向かって移動したときに、底部46及びその近傍のガイド44a,44bにより、糸16がしっかりと係止されて保持される。したがって、保持部42は、糸16を底部46に向かって食い込ませて固定することができる。
【0017】
底部46により規定されるガイド44a,44b間の角度は、保持部42で糸16をガイド44a,44b間に保持可能な角度であれば良い。このため、ガイド44a,44b間の角度は、例えば処置に用いられる糸16の半径Rに合わせて、適宜に設定される。ガイド44a,44b間の距離は、第2端部34に近接する位置で、固定される糸16の直径(2R)よりも大きい。このため、糸16が第2端部34から保持部42の底部46に向かって移動可能である。
【0018】
なお、保持部42の底部46の半径r及び糸16の半径Rは、0.1mmに満たないものから、1mm程度のものなど、糸16の種類により変化させる。
【0019】
図1A及び
図1Bに示すように、固定部14の第2端部34には、ワイヤ52の一端が固定されている。ワイヤ52は、筒状体12の内側を挿通している。図示しないが、ワイヤ52の外側にチューブ又はシースが被覆されていても良いことはもちろんである。ワイヤ52を被覆するチューブ又はシースは、可撓性を有する軟性でも良く、剛体としての硬性でも良い。
【0020】
ワイヤ52は、固定部14の位置を維持した状態で、固定部14に対して牽引されて適宜の張力(牽引力)が加えられると、破断する。後述するが、筒状体12及び固定部14に対して糸16が適切に固定又は係止された状態(
図5A及び
図5B参照)が形成されるまでは、ワイヤ52は破断されないことが求められる。このため、ワイヤ52の耐破断強度は、筒状体12に対して、糸16が係止された固定部14を支持させる際にワイヤ52が牽引されるのに必要な力よりも大きい。なお、ワイヤ52の破断位置は、できるだけ固定部14に近接する位置であることが好ましい。例えば
図5Cに示すように、ワイヤ52は、通常の径に比べて小さい径を有し、張力により破断するのを許容する小径部(破断許容部)52aを有する。小径部52aは、適宜の長さに形成され、ワイヤ52に張力が加えられた状態で他の部位に比べて応力集中を引き起こす。
【0021】
なお、ワイヤ52は、鋏などの適宜の切断具(図示せず)で適宜の位置が切断されることが可能である。また、糸固定具10のワイヤ52は、後述する切断機構210(
図10から
図15B参照)を用いて切断することも可能である。
【0022】
次に、この実施形態に係る糸固定具10の作用について、説明する。ここでは、
図7に示す内視鏡102及び鉗子(把持鉗子)104,106を用いる例について説明するが、開腹手術などの場合は、内視鏡102は不要となり得る。また、
図7中の内視鏡102は、挿入部112が可撓性を有する、いわゆる軟性内視鏡を示しているが、手術位置によっては、挿入部112が金属材などの剛体で形成された硬性内視鏡を用いることも好適である。
【0023】
図1A及び
図1Bに示すように、糸固定具10の固定部14に連結されたワイヤ52を、筒状体12の内側に挿通させる。この状態で、例えば把持鉗子104,106を用いて、内視鏡102の挿入部112の処置具挿通チャンネル114,116の少なくとも一方を通して、糸固定具10の筒状体12及び固定部14を、体内に入れる。そして、糸固定具10で固定する糸16を、固定部14の近傍に配置する。
【0024】
図2A及び
図2Bに示すように、例えば把持鉗子104,106を用いて、糸16及び固定部14を相対的に移動させて、糸16を、長手軸Lから外れた位置から、長手軸Lに直交する位置に配置する。このとき、糸16を固定部14の保持部42に対向させる。
【0025】
把持鉗子104,106を用いて、筒状体12に対してワイヤ52を引っ張ると、
図3A及び
図3Bに示すように、筒状体12に対して、固定部14が、長手軸Lに沿って移動される。このため、筒状体12の一端22に対して、固定部14の第2端部34が近接する。
【0026】
糸16の直径(2R)は、固定部14の保持部42のガイド44a,44b間のうち、第2端部34における距離よりも小さい。このため、把持鉗子104,106を用いて、筒状体12に対してワイヤ52を引っ張ると、
図3A及び
図3Bに示すように、糸16が保持部42のガイド44a,44b間に案内される。このため、糸16は、保持部42の底部46に向かって呼び込まれる。そして、糸16はワイヤ52の引っ張りに応じて、底部46に向かって案内される。このため、糸16は、固定部14の保持部42の1対のガイド44a,44bにより、長手軸Lに対して交差する方向から底部46に向かって案内(誘導)される。
【0027】
把持鉗子104,106を用いて、筒状体12に対してワイヤ52をさらに引っ張ると、
図4A及び
図4Bに示すように、筒状体12の一端22に対して、固定部14の第2端部34が通される。このため、固定部14の第2端部34が、筒状体12の一端22を通して、他端24に向かって、筒状体12の内周面26に沿って移動される。このとき、糸16が保持部42の底部46の端部46aで曲げられながら、糸16が保持部42のガイド44a,44bにより底部46に向かって案内される。糸16は、筒状体12の一端22から突出した状態となる。筒状体12に対する固定部14の嵌合量が大きくなるにつれて、固定部14の外周面36と筒状体12の内周面26の凹溝26aとの間で糸16を折り曲げながら挟んで、軽い力(糸16に大きな負荷がかからない状態)で係止する。なお、このとき、筒状体12の中心軸Cと、固定部14の長手軸Lとは一致していることが好ましい。
【0028】
把持鉗子104,106を用いて、筒状体12に対してワイヤ52をさらに引っ張る。固定部14の外周面36と筒状体12の内周面26の凹溝26aとの間の糸16の係止により、糸16が筒状体12の他端24に向かって移動するのが抑制されている。このため、
図5A及び
図5Bに示すように、糸16が保持部42のガイド44a,44bにより底部46に向かって案内される。このとき、固定部14の外周面36と筒状体12の内周面26の凹溝26aとの間の糸16が係止されているため、保持部42における糸16に次第に張力が加えられる。このため、固定部14は、保持部42に糸16を係止した状態で、筒状体12と協働して保持部42で糸16に張力を負荷している。筒状体12は、固定部14で糸16が折り返されるように、糸16を保持部42の底部46に向かって付勢する。このため、糸16は、ガイド44a,44b間で底部46に向かって移動して係止されて保持される。
【0029】
このように、固定部14の保持部42に糸16を配置した状態で筒状体12に対して、固定部14が長手軸Lに沿って移動されることで筒状体12の内周面26に固定部14の外周面36が嵌合されて支持される。この場合、筒状体12の内周面26と固定部14の外周面36との間に糸16を係止するとともに、保持部42に糸16を保持させて、筒状体12に対して糸16を固定する。このとき、糸16は、糸固定具10内で略U字状である。
【0030】
糸固定具10の筒状体12及び固定部14がこのように嵌合されて支持され、糸16が保持部42に保持された状態のとき、例えば、固定部14は筒状体12に対して相対的に圧入された状態にあるものとする。この場合、筒状体12の内周面26と固定部14の外周面36との間の摩擦により、筒状体12に対して固定部14が意図せず外れるのが防止される。
【0031】
なお、
図5Cに示すように、保持部42のガイド44a,44b間の距離は、底部46に向かうにつれて小さくなる。このため、糸16に張力が加えられながら、糸16が保持部42の底部46に向かって移動するにつれて、底部46及びその近傍のガイド44a,44bにより、糸16がしっかりと保持される。
【0032】
ワイヤ52には、例えば鉗子104による牽引により、張力が加えられている。このように筒状体12に対して固定部14が支持されて糸固定具10に糸16がしっかりと固定される状態にあっては、ワイヤ52の破断許容部52aは、張力に対する耐性の許容範囲内である。
【0033】
筒状体12に固定部14を支持させたとき、糸16に張力がかけられるにつれて、固定部14の保持部42対して、糸16がより強く呼び込まれる。このため、糸16は、糸固定具10に対し、十分な力量で固定される。
【0034】
次に、
図6A及び
図6Bに示すように、ワイヤ52を破断又は切断する。
【0035】
まず、ワイヤ52を破断させる場合について説明する。鉗子106を用いて、糸16を固定した糸固定具10の位置を維持した状態で、把持鉗子104で、ワイヤ52を更に牽引する。ワイヤ52は、小径部52aの耐性を超える張力が加えられたとき、小径部52aで破断する。このように、ワイヤ52は、把持鉗子104による牽引により、ワイヤ52の張力が所定以上になったときに、ワイヤ52を破断させる。
【0036】
なお、ワイヤ52を破断させるような張力が小径部52aに加えられた状態にあっても、筒状体12の内周面26と固定部14の外周面36との間の摩擦により、筒状体の内周面26に対して固定部14の外周面36が中心軸C(長手軸L)に沿って移動することが抑制されている。このため、筒状体12の内周面26と固定部14の外周面36との間の隙間(凹溝26a)に配設されて係止された糸16に無理な負荷が加えられることが抑制されている。
【0037】
一方、ワイヤ52を切断する場合、例えば内視鏡102のチャンネル116から把持鉗子106を抜去し、ワイヤ52を切断する鉗子(図示しない)をチャンネル116に挿通させる。そして、鉗子104でワイヤ52を保持しながら、図示しない鉗子の作用部でワイヤ52の適宜の位置を切断する。ワイヤ52を切断する鉗子は、公知のものを適宜に用いることができる。
【0038】
固定部14とワイヤ52との接続は、
図8A及び
図8Bに示す例も好適である。
固定部14の端部34には、例えばリング状又は略C字状の支持部34aが形成されている。支持部34aは、ここでは端部34に対して長手軸Lに沿って基端側に突出しているが、端部34に対して面一に形成されていても良い。ワイヤ52の先端には、連結部材54が連結されている。連結部材54は、固定部14の支持部34aに支持されるフック54aを有する。フック54aは、ワイヤ52が所定の力で牽引されたときに、
図8Aに示す状態から
図8Bに示す状態に変形する。このため、筒状体12及び固定部14に対して糸16が適切に固定又は係止された
図5A及び
図5Bに示す状態と同じ状態に至った後、フック54aが
図8Aに示す状態から
図8Bに示す状態に変形する。このため、ワイヤ52及び連結部材54と、固定部14との間の連結が解除される。
【0039】
糸固定具10の筒状体12に対して固定部14を相対的に移動させる場合、糸固定具10は
図9Aに示すアプリケータ18を有することが好ましい。
【0040】
アプリケータ18は、ワイヤ52が挿通されるシース(挿入部)92と、シース92の基端側に配設され、ワイヤ52をシース92に対してシース92の軸方向に移動させる操作部94とを有する。シース92は、コイル状に形成されたコイルシースが用いられることが好ましい。コイルシース92は、軸方向から外れた方向からの外力に対して適宜の可撓性を発揮するとともに軸方向に軸力を発揮する。操作部94は、スリット96aを有する基体96と、基体96のスリット96aに対して軸方向(先端側及び基端側)に移動する可動部98とを有する。可動部98にはワイヤ52の基端が、カシメ等の固定部98aにより、固定されている。なお、基体96は、その基端に親指等をかける、例えばリング状の指掛け96bを有する。可動部98は、人差し指及び/又は中指をかける指掛け98bを有する。
【0041】
可動部98は、基体96に対して中心軸Cに沿う方向に移動可能である。このため、基体96に対して可動部98を中心軸Cに沿って移動させると、基体96、シース92及び筒状体12に対してワイヤ52及び固定部14が移動する。
【0042】
基体96に対して可動部98を基端側に移動させてワイヤ52を牽引すると、筒状体12に対して固定部14が相対的に移動し、筒状体12に対して固定部14が嵌合する。可動部98を更に基端側に移動させてワイヤ52を更に牽引すると、筒状体12の他端24がシース92の先端92aに当接する。
【0043】
内視鏡102を用いて糸固定具10を体腔内に導入する場合、筒状体12の他端24がシース92の先端92aに当接した状態で、アプリケータ18を有する糸固定具10を、処置具挿通チャンネル114に挿通させることが好ましい。このとき、シース92の先端92aに対して、筒状体12及び固定部14のふらつきが防止される。
【0044】
基体96のスリット96aに対して先端側に可動部98を移動させて、一旦、ワイヤ52の牽引を解放する。このため、筒状体12に対して固定部14が分離して、糸16を固定部14の保持部42に配置可能となる。このとき、シース92の先端92aから筒状体12の基端24が離される。
【0045】
再び基体96に対して可動部98を基端側に移動させてワイヤ52を牽引すると、筒状体12に対して固定部14が相対的に移動し、筒状体12に対して固定部14が嵌合する。このため、糸16を適宜に固定することができる。この状態で可動部98を移動させてワイヤ52をさらに牽引すると、筒状体12の他端24がシース92の先端92aに当接する。この状態で可動部98を移動させてワイヤ52をさらに牽引すると、ワイヤ52の小径部52aが破断する。ワイヤ52の破断とともに、糸16を固定した筒状体12及び固定部14は、シース92の先端92aに対して脱落する。
【0046】
なお、内視鏡102の処置具挿通チャンネル114に糸固定具10を挿通させる際、筒状体12の他端24とシース92の先端92aとを確実に当接した状態にすることが好ましい。このため、筒状体12の他端24とシース92の先端92aとの間が容易に取り外し可能な接着により接続されていることも好ましい。この場合、例えばシース92の先端92a及び/又は筒状体12に対して中心軸Cから外れる方向から外力が負荷されると、接続が解除される。
【0047】
図9Bに示すように、固定部14の第2端部34に突起56が形成されていることも好ましい。突起56は、筒状体12に対して固定部14を嵌合させようとする時点で、筒状体12に係合している。また、突起56には、ワイヤ52の先端が固定されていることが好ましい。このため、筒状体12に対して固定部14を嵌合させる際に、互いの向きを考慮せず、糸固定具10の筒状体12に対して固定部14を確実に引き込むことができる。
【0048】
以上説明したように、この実施形態に係る糸固定具10によれば、以下のことが言える。
【0049】
図6A及び
図6Bに示すように、糸16は糸固定具10に係止及び/又は保持されて固定された状態で、支持される。このとき、糸16は、保持部42での保持(固定)、及び、固定部14の外周面36と筒状体12の内周面26との間の係止により、支持された状態が維持される。そして、筒状体12に固定部14を支持させたとき、糸16は、固定部14の保持部42に対して、適宜の位置まで自然に引き込まれる。このため、筒状体12の大きさ、固定部14の大きさ及び糸16の大きさ(外径)により、筒状体12に対する固定部14の支持位置が長手軸L(中心軸C)に沿って変化し得る。したがって、本実施形態に係る糸固定具10を用いることにより、筒状体12、固定部14及び糸16の寸法公差に影響を受け難くすることができる。また、本実施形態に係る糸固定具10を用いることで、糸16を安定した固定力で固定することができる。
【0050】
そして、筒状体12の内周面26は、固定部14の外周面36との間に糸16を係止することで、糸16に張力が加えられたときに糸16が保持部42から滑って保持(固定)が解除されることを防止することができる。
【0051】
なお、ワイヤ52の小径部(破断許容部)52aが破断されるような張力がワイヤ52に加えられたときにも、糸16及び糸固定具10は、
図5A及び
図5Bに示す状態を維持することができる。
【0052】
また、本実施形態では、ワイヤ52を鉗子104で牽引することで、筒状体12に対して固定部14を支持させる例について説明した。鉗子104,106を用いて筒状体12に対して固定部14を押し込むことで、筒状体12に対して固定部14を支持させても良いことはもちろんである。この場合、ワイヤ52は不要となり得る。なお、糸16を固定する向きは処置に応じて変化する。このため、ワイヤ52は固定部14に接続されていることが好ましい。
【0053】
次に、糸固定具10の固定部14に固定されたワイヤ52を、筒状体12の内周面26に配設された切断機構210を用いて切断する機構について説明する。なお、ここでは、筒状体12の内周面26に切断機構210が設けられる例について説明するが、上述したアプリケータ18のシース92(
図9A参照)の内周面の先端部近傍に同様の機構が設けられていることも好適である。以下に説明する切断機構210は、筒状体12及び/又はアプリケータ18に設けられる。すなわち、切断機構210は、筒状体12及びアプリケータ18の少なくとも一方に設けられる。
【0054】
切断機構210の第1機構について、
図10を用いて説明する。
【0055】
図10に示すように、切断機構210は、カッタ212と、ワイヤ支持部214とを有する。ワイヤ支持部214は筒状体12の他端(基端)24に近接する位置に配設されている。カッタ212は、ワイヤ支持部214よりも筒状体12の一端(先端)22に近接する位置にある。
【0056】
固定部14に対するワイヤ52の固定位置は、
図10中の符号Fで示す、中心軸Cに平行な位置(基準位置)を基準として、距離D1の位置にある。基準位置Fは、固定部14に対するワイヤ52の固定位置が筒状体12の内周面26に対して最も近接する位置である。カッタ212の刃212aは、基準位置Fを基準として、距離D2の位置にある。ワイヤ支持部214は、基準位置Fを基準として、距離D3の位置にある。距離D2は距離D1よりも大きい。距離D3は距離D2よりも大きい。
【0057】
図10に実線で示すように、筒状体12の他端24に対する固定部14の第2端部(基端)34の位置が遠いと、ワイヤ52とカッタ212の刃212aとの間は離間している。ワイヤ52の牽引により、
図10に破線で示すように、筒状体12の他端24に対する固定部14の第2端部34の位置が近づけられると、ワイヤ52とカッタ212の刃212aとの間が当接する。筒状体12の他端24に対する固定部14の第2端部34の位置が更に近づけられると、ワイヤ52はカッタ212の刃212aに押し付けられる。このため、ワイヤ52がカッタ212の刃212aにより切断される。
【0058】
なお、カッタ212及びワイヤ支持部214の両方が、筒状体12の内周面26の代わりに、アプリケータ18のシース92の内周面に設けられていることも好ましい。また、カッタ212が筒状体12の内周面26に、ワイヤ支持部214がアプリケータ18のシース92の内周面に設けられていることも好ましい。
【0059】
切断機構210の第2機構について、
図11を用いて説明する。
【0060】
図11に示すように、切断機構210は、第1ワイヤ支持部222と、カッタ224と、第2ワイヤ支持部226と、第3ワイヤ支持部228とを有する。第2ワイヤ支持部226は、バネなどの付勢部材(弾性部材)226aにより、基準位置Fに対して対向する位置又はその近傍に向かって付勢されている。第3ワイヤ支持部228は、ここでは、アプリケータ18のシース92(
図9A参照)の内周面に配設されているが、筒状体12の内周面26に配設されていることも好適である。
【0061】
固定部14に対するワイヤ52の固定位置、及び、第1ワイヤ支持部222の位置は、
図11中の基準位置Fを基準として、距離D1の位置にある。カッタ224の刃224aは、基準位置Fを基準として、距離D2の位置にある。第2ワイヤ支持部226は、基準位置Fを基準として、距離D3の位置にある。第3ワイヤ支持部228の位置は、基準位置Fを基準として、距離D4の位置にある。距離D2は距離D1よりも大きい。距離D3は距離D2よりも大きい。距離D4は距離D3よりも小さい。なお、付勢部材226aにより、距離D3は可変である。
【0062】
図11に示すように、筒状体12に対して固定部14の位置が固定された状態でワイヤ52がさらに牽引されると、ワイヤ52の張力が大きくなる。このため、ワイヤ52は、第2ワイヤ支持部226の付勢部材226aの付勢力に抗して、基準位置Fに近づいて、ワイヤ52とカッタ224の刃224aとの間が当接する。ワイヤ52がさらに牽引されて張力が大きくなると、ワイヤ52はカッタ224の刃224aに押し付けられる。このため、ワイヤ52がカッタ224の刃224aにより切断される。
【0063】
切断機構210の第3機構について、
図12A及び
図12Bを用いて説明する。
【0064】
図12A及び
図12Bに示すように、切断機構210は、第1ワイヤ支持部232と、カッタ234と、第2ワイヤ支持部236とを有する。
【0065】
固定部14に対するワイヤ52の固定位置、及び、第1ワイヤ支持部232の位置は、
図12A中の基準位置Fを基準として、距離D1の位置にある。カッタ234の刃234aは、基準位置Fを基準として、距離D2の位置にある。第2ワイヤ支持部236は、基準位置Fを基準として、距離D3の位置にある。距離D2は距離D1よりも大きい。距離D3は距離D2よりも小さい。
【0066】
図12Aに示すように、ワイヤ52は、カッタ234の刃234aに常に接触している。筒状体12に対して固定部14の位置が固定された状態でワイヤ52がさらに牽引されると、ワイヤ52の張力が大きくなる。このため、ワイヤ52は、カッタ234の刃234aに押し付けられる。このため、
図12Bに示すように、ワイヤ52がカッタ234の刃234aにより切断される。
【0067】
切断機構210の第4機構について、
図13を用いて説明する。
【0068】
図13に示すように、切断機構210は、第1ワイヤ支持部242と、カッタ244と、第2ワイヤ支持部246とを有する。カッタ244の刃244aは、バネなどの付勢部材248により、基準位置Fに対して対向する位置又はその近傍に向かって付勢されている。
【0069】
固定部14に対するワイヤ52の固定位置、及び、第1ワイヤ支持部242の位置は、
図13中の基準位置Fを基準として、距離D1の位置にある。カッタ244の刃244aは、基準位置Fを基準として、距離D2の位置にある。第2ワイヤ支持部246の位置は、基準位置Fを基準として、距離D3の位置にある。距離D2は距離D1よりも大きい。距離D3は距離D2よりも小さい。距離D2は可変である。
【0070】
ワイヤ52は、カッタ244の刃244aに常に接触している。筒状体12に対して固定部14の位置が固定された状態でワイヤ52がさらに牽引されると、ワイヤ52の張力が大きくなる。このため、ワイヤ52は、カッタ244の刃244aに押し付けられる。このため、付勢部材248の付勢力により、
図13に示すように、ワイヤ52がカッタ244の刃244aにより切断される。
【0071】
切断機構210の第5機構について、
図14A及び
図14Bを用いて説明する。
【0072】
図14Aに示すように、切断機構210は、刃受け(blade rest)252と、第1ワイヤ支持部254と、第2ワイヤ支持部256と、第3ワイヤ支持部258と、回動部材260と、カッタ262とを有する。
【0073】
第2ワイヤ支持部256は回動部材260に設けられている。回動部材260は第3ワイヤ支持部258により、回動可能に支持されている。回動部材260はバネなどの付勢部材260aにより、カッタ262の刃262aが刃受け252から離隔するように付勢されている。
【0074】
固定部14に対するワイヤ52の固定位置、及び、第1ワイヤ支持部254の位置は、
図14A中の基準位置Fを基準として、距離D1の位置にある。第2ワイヤ支持部256は、基準位置Fを基準として、距離D2の位置にある。第3ワイヤ支持部258は、基準位置Fを基準として、距離D3の位置にある。距離D2は距離D1よりも大きい。距離D3は距離D2よりも小さい。なお、刃受け252は、基準位置Fを基準として、距離D1と同じか、それよりも小さい距離の位置にあることが好ましい。刃受け252は、ワイヤ52を載置している。
【0075】
筒状体12に対して固定部14の位置が固定された状態でワイヤ52がさらに牽引されると、ワイヤ52の張力が大きくなる。ワイヤ52は、付勢部材260aの付勢力に抗して、第2ワイヤ支持部256を基準位置Fに近接させる。このとき、カッタ262の刃262aが、刃受け252に近づく。ワイヤ52がさらに牽引されると、ワイヤ52の張力が大きくなる。このため、カッタ262の刃262aで、刃受け252上に載置されたワイヤ52を挟んで切断する。
【0076】
切断機構210の第6機構について、
図15A及び
図15Bを用いて説明する。
【0077】
図15Aに示すように、切断機構210は、刃受け(blade rest)272と、第1ワイヤ支持部274と、第2ワイヤ支持部276と、回動部材278と、カッタ280と、第3ワイヤ支持部282とを有する。
【0078】
回動部材278は支軸278aにより筒状体12に対して回動可能に支持されている。第2ワイヤ支持部276は、バネなどの付勢部材276aにより、支持されている。第2ワイヤ支持部276は回動部材278に設けられている。このため、回動部材278は付勢部材276aにより、カッタ280の刃280aが刃受け272から離隔するように付勢されている。
【0079】
固定部14に対するワイヤ52の固定位置、及び、第1ワイヤ支持部274の位置は、
図15A中の基準位置Fを基準として、距離D1の位置にある。第2ワイヤ支持部276は、基準位置Fを基準として、距離D2の位置にある。第3ワイヤ支持部282は、基準位置Fを基準として、距離D3の位置にある。距離D2は距離D1と同じか、それよりも小さい。距離D3は距離D2よりも大きい。なお、刃受け272は、基準位置Fを基準として、距離D1と同じか、それよりも小さい距離の位置にあることが好ましい。刃受け272は、ワイヤ52を載置している。
【0080】
筒状体12に対して固定部14の位置が固定された状態でワイヤ52がさらに牽引されると、ワイヤ52の張力が大きくなる。ワイヤ52は、付勢部材276aの付勢力に抗して、第2ワイヤ支持部276を基準位置Fから離隔させる。このとき、回動部材278が支軸278aの軸周りに回動して、カッタ280の刃280aが、刃受け272に近づく。ワイヤ52がさらに牽引されると、ワイヤ52の張力が大きくなる。このため、カッタ280の刃280aで、刃受け272上に載置されたワイヤ52を挟んで切断する。
【0081】
筒状体12及び固定部14の形状の変形例について説明する。
図16Aから
図16Cに示す例では、糸16の存在を省略している。
【0082】
図1Aから
図6Bに示す例では筒状体12の中心軸Cに直交する断面の内周面26が略矩形状に形成されている。
図16Aに示す例では、筒状体12の中心軸Cに直交する断面の内周面26が略円環状に形成されている。
図1Aから
図6Bに示す例では固定部14の長手軸Lに直交する断面の外周面36が略矩形状に形成されている。
図16Aに示す例では、固定部14の長手軸Lに直交する断面の外周面36が略円形状に形成されている。
図1Aから
図6Bに示す例では筒状体12の中心軸Cに直交する断面の外周面28が略矩形状に形成されている。
図16Aに示す例では、筒状体12の中心軸Cに直交する断面の外周面28が略楕円形状に形成されている。
【0083】
図16Bに示す例の筒状体12の中心軸Cに直交する断面の内周面26は、略楕円環状に形成されている。固定部14の長手軸Lに直交する断面の外周面36は、略楕円形状に形成されている。
【0084】
図16Cに示す例の筒状体12の中心軸Cに直交する断面の内周面26は、略六角形の環状に形成されている。固定部14の長手軸Lに直交する断面の外周面36は、略六角形状に形成されている。
なお、
図16Cに示す例の筒状体12の中心軸Cに直交する断面の外周面28は、略六角形状に形成されている必要はなく、円形状に形成されている。
【0085】
このように、筒状体12の内周面26の中心軸Cに直交する断面は、
図1Aから
図6Bで示した略矩形状に限らず、円形(
図16A参照)、楕円(
図16B参照)、適宜の多角形(
図16C参照)であるなど、適宜の形状を採用し得る。また、筒状体12の外周面28の中心軸Cに直交する断面は内周面26と同一形状であることには限られず、適宜の形状を採用し得る。また、固定部14の長手軸Lに直交する断面は、略矩形状に限らず、適宜の多角形、楕円、円形であるなど、筒状体12の内周面26の形状に合わせて、適宜の形状を採用し得る。また、図示しないが、例えば固定部14が五角柱である場合、第2端部34において、長手軸Lを中心として向かい合う頂点と辺との間に保持部42が形成されることも好ましい。
【0086】
以下、筒状体12に対する固定部14の支持構造の変形例について、説明する。
【0087】
図17A及び
図17Bに示すように、例えば筒状体12の他端24の近傍には、固定部14が筒状体12の他端24を通して移動するのを抑制する係合凹部(係合部)27aが形成されている。固定部14の第2端部(端面)34の近傍には、係合凹部27aに係合する係合凸部(係合部)37aが形成されている。係合凹部27a及び係合凸部37aは、ここではそれぞれ1対である例を示している。この場合、筒状体12に対する固定部14の長手軸Lの軸周りの向きを所定の状態にして、筒状体12に対して固定部14が係合される。このため、筒状体12に対して、固定部14が係合されて支持された状態が安定して維持される。
【0088】
なお、筒状体12及び固定部14の素材は、筒状体12に対して固定部14を支持可能であるように適宜に選択される。筒状体12が金属材である場合、固定部14の特に係合凸部37aが筒状体12に用いられる金属材に比較して大きく弾性変形可能な樹脂材又はゴム材であることが好適である。固定部14の係合凸部37aが金属材である場合、筒状体12が固定部14の係合凸部37aの金属材に比較して大きく弾性変形可能な樹脂材又はゴム材であることが好適である。
【0089】
図18A及び
図18Bに示すように、固定部14の係合凸部(係合部)37aは、第2端部(端面)34の縁部の全周にわたって形成されている。筒状体12の内周面26は、筒状体12の一端22から他端24に至るまで同一の断面形状に形成されている。このため、
図17A及び
図17Bに示す例とは異なり、固定部14の係合凸部37aは、固定部14の第2端部34の縁部の全周にわたって形成されていても良い。この場合、固定部14の係合凸部37aは、筒状体12の一端22から他端24に向かって圧入される。そして、筒状体12の内周面26と固定部14の外周面36とは、摩擦により長手軸L及び中心軸Cに沿って移動すること、及び、長手軸L及び中心軸Cの軸周りに回転することが抑制されている。
【0090】
なお、筒状体12が金属材である場合、固定部14の特に係合凸部37aが筒状体12に用いられる金属材に比較して大きく弾性変形可能な樹脂材又はゴム材であることが好適である。固定部14の係合凸部37aが金属材である場合、筒状体12が固定部14の係合凸部37aの金属材に比較して大きく弾性変形可能な樹脂材又はゴム材であることが好適である。
【0091】
なお、
図18A及び
図18Bに示す例は、
図17A及び
図17Bに示す例と同様に、筒状体12及び固定部14の素材は、筒状体12に対して固定部14を支持可能であるように適宜に選択される。
【0092】
図19A及び
図19Bに示すように、筒状体12の内周面26には、係合凸部(係合部)27bが形成されている。固定部14の外周面36には、係合凹部(係合部)37bが形成されている。筒状体12の内周面26の係合凸部27bは、固定部14の外周面36の係合凹部37bに係合される。このため、筒状体12に対して、固定部14が係合されて支持された状態が安定して維持される。
【0094】
図16Aから
図19Bに示す糸固定具10の例によっても、筒状体12の大きさ、固定部14の大きさ及び糸16の大きさ(外径)により、筒状体12に対する固定部14の支持位置が長手軸L(中心軸C)に沿って変化し得る。したがって、
図16Aから
図19Bに示す糸固定具10を用いることにより、筒状体12、固定部14及び糸16の寸法公差に影響を受け難くすることができる。また、
図16Aから
図19Bに示す糸固定具10を用いることで、糸16を安定した固定力で固定することができる。
【0095】
図20から
図23Cにおいて、筒状体12及び糸16の図示を適宜に省略しながら、糸固定具10の固定部14について説明する。
図20から
図23Cに示す固定部14に対し、適宜の内周面26を有する筒状体12を用いることができる。特に、保持部42の底部46の端部46aと筒状体12の内周面26との間に糸16の直径よりも僅かに小さい隙間を形成し、その隙間に糸16を係止できるものであれば、用いることができる。そして、
図20から
図23Cに示す例の固定部14を用いる場合も、筒状体12の大きさ、固定部14の大きさ及び糸16の大きさ(外径)により、筒状体12に対する固定部14の支持位置が長手軸L(中心軸C)に沿って変化し得る。したがって、
図20から
図23Cに示す固定部14に対して適宜の筒状体12及び糸16を用いることで、筒状体12、固定部14及び糸16の寸法公差に影響を受け難くすることができる。
【0096】
固定部14の保持部42を含む第2端部34の変形例について説明する。
【0097】
図20に示す例は、固定部14の第2端部(端面)34が平面ではない。固定部14の第2端部34には、長手軸Lに直交する方向に半円柱状部材62a,62bが並べられている。半円柱状部材62a,62bは同一形状であることが好ましい。このとき、半円柱状部材62a,62b間により、保持部42が形成されている。なお、保持部42のガイド44a,44bも、平面ではなく、曲面として形成されている。
【0098】
この場合の固定部14も、上述した実施形態で説明した固定部14と同様に使用することができる。
【0099】
図21A及び
図21Bに示す例は、固定部14の第2端部(端面)34が単なる平面ではなく、凹凸が存在する。固定部14の第2端部34には、長手軸Lに直交する方向に三角柱状部材64a,64bが並べられている。三角柱状部材64a,64bは、第2端部34に、長手軸Lに平行な2つの三角形状の三角形状面66a,66bと、長手軸Lに交差する2つの矩形状の傾斜面68a,68bとを有する。2つの傾斜面68a,68bは、1つの交差点69を形成する。なお、交差点69は、2つの三角形状面66a,66b及び2つの傾斜面68a,68bによっても同一に規定される。そして、ここでは、交差点69は長手軸L上にある。
【0100】
図示を省略する糸16は、
図21A中の破線Bで示す、交差点69を通り、2つの傾斜面68a,68bの傾斜方向に直交する位置に載置される。このとき、破線Bで示した位置が保持部42の底部46として用いられる。また、傾斜面68a,68bのうち、破線Bで示した位置から第1端部32に対して離れた部位が、保持部42のガイド44a,44bとして用いられる。この例では、ガイド44a,44bは、対向しない、非対向位置にある。
【0101】
図21Bは、
図21A中の矢印21Bで示す方向から見た図を示す。傾斜面68a,68bは、交差点69を底部46とする略V字状に形成されている。このため、傾斜面68a,68bは、保持部42を規定する。
【0102】
この場合の固定部14も、上述した実施形態で説明した固定部14と同様に使用することができる。
【0103】
図21C及び
図21Dに示す例は、2つの三角柱状部材64a,64bが離間している。すなわち、2つの三角柱状部材64a,64b間には、隙間G(
図21C参照)が形成されている。三角柱状部材64a,64bは、第2端部34に、長手軸Lに沿って形成された2つの三角形状面66c,66dと、長手軸Lに交差する2つの矩形状の傾斜面68a,68bとを有する。
【0104】
図21Dは、
図21C中の矢印21Dで示す方向から見た図を示す。傾斜面68a,68bは、略V字状に形成されている。このため、傾斜面68a,68bは、保持部42を規定する。傾斜面68a,68bは、
図21C中の矢印21Dで示す方向から見たときに、保持部42の底部46を規定する。また、傾斜面68a,68bのうち、破線Bで示した位置から第1端部32に対して離れた部位が、保持部42のガイド44a,44bとして用いられる。
【0105】
なお、2つの三角形状面66c,66d同士の隙間(間隔)Gは、固定部14の第2端部34から第1端部32に近づくにつれて狭くなっていることが好ましい。2つの三角形状面66c,66d同士の最大間隔は、用いられる糸16の直径よりも大きい。2つの三角形状面66c,66d同士の間隔は、固定部14の第2端部34から第1端部32に近づくにつれて、用いられる糸16の直径よりも小さくなる。この場合、三角形状面66c,66d同士の間は、糸16の別の保持部42bとして用いられ得る。
【0106】
この場合の固定部14も、上述した実施形態で説明した固定部14と同様に使用することができる。
【0107】
図22Aに示す例は、固定部14の第2端部(端面)34には、複数の保持部42a,42bが形成されている。保持部42a,42bは、
図1Aから
図6Bに示す固定部14の保持部42とそれぞれ同様の形状に形成されている。このため、保持部42a,42bは、長手軸Lに対して交差する方向から糸16を案内する複数対のガイド44a,44b(
図5C参照)を有する。
図22A中、保持部42a,42bは、いずれも長手軸Lを通っているが、長手軸Lからずれていても良い。
【0108】
図22Aに示す例は、固定部14の第2端部(端面)34において、長手軸Lを中心として向かい合う頂点同士の間に保持部42a,42bが形成されている。
【0109】
図22Bに示す例は、固定部14の第2端部(端面)34において、長手軸Lを中心として向かい合う辺同士の間に保持部42a,42bが形成されている。この場合、保持部42a,42bは、互いに直交していることが好ましい。
【0110】
図22A又は
図22Bに示す例では、複数(2つ)の保持部42a,42bが形成されている。この場合、糸16をいずれかの保持部42a,42bに案内すれば良い。このため、上述した
図1Aから
図6Bに示す例に比べて、糸16を保持部42a,42bに対向させる際に、糸16の向きを考慮する必要性を低減することができる。
【0111】
なお、固定部14の第2端部(端面)34は、略矩形状である必要はない。例えば
図16Cに示すように、固定部14の第2端部(端面)34は、円形状に形成されていても良いし、楕円形状に形成されていても良い。この場合、保持部42a,42bは互いに直交していても良く、直交していなくても良い。
【0112】
上述した例は、固定部14が一体的である例について説明した。以下、固定部14が複数の素材で形成されている例について説明する。
【0113】
図23Aに示すように、固定部14は、ブロック状又は柱状の剛体82と、剛体82に支持され、剛体82に比べて大幅に弾性変形し易い弾性体84とを有する。
【0114】
剛体82は、例えば多角柱状、半円柱状、半楕円柱状など、適宜の柱状に形成されている。剛体82に対して弾性体84が支持される部位は、剛体82と弾性体84とが協働して糸16を係止して保持する保持部42を形成するため、糸16との接触面積をできるだけ大きくする形状に形成される。このため、剛体82に対して弾性体84が支持される部位は、平面であったり、凸状又は凹状の曲面として形成されることが好ましい。
【0115】
弾性体84は、第1端部32に近接する位置が剛体82に支持され、第2端部34に近接する位置が、剛体82から離されている。
【0116】
図23Bに示す例は、固定部14は、ブロック状又は柱状の剛体82と、剛体82に支持され、剛体82に比べて大幅に弾性変形し易い2つの弾性体84a,84bとを有する。すなわち、
図23Bに示す固定部14は、3体で形成されている。
【0117】
弾性体84aは、第1端部32に近接する位置で剛体82に支持され、第2端部34に近接する位置が、剛体82から離されている。弾性体84bは、第2端部34に近接する位置で剛体82に支持され、第1端部32に近接する位置が、剛体82から離されている。そして、
図21Aから
図21Dに示す例と同様に、図示を省略する糸16は、破線Bで示す、2つの傾斜面68a,68bの傾斜方向に直交する位置に載置される。このとき、破線Bで示した位置が保持部42の底部46として用いられる。また、傾斜面68a,68bのうち、破線Bで示した位置から第1端部32に対して離れた部位が、保持部42のガイド44a,44bとして用いられる。この例では、ガイド44a,44bは、対向しない、非対向位置にある。
【0118】
なお、2つの弾性体84a,84bの間は、当接していても良く、
図21Cに示す例と同様に隙間があっても良い。
【0119】
図23Cに示す例は、固定部14は、ブロック状又は柱状の剛体82と、剛体82に支持され、剛体82に比べて大幅に弾性変形し易い2つの弾性体84a,84bとを有する。すなわち、
図23Cに示す固定部14は、
図23Bに示す例と同様に、3体で形成されている。
【0120】
弾性体84aは、第1端部32に近接する位置で剛体82に支持され、第2端部34に近接する位置が、剛体82から離されている。弾性体84bは、第2端部34に近接する位置で剛体82に支持され、第1端部32に近接する位置が、剛体82から離されている。また、弾性体84aは略U字状の凹部86aを有し、弾性体84bは略U字状の凹部86bを有する。弾性体84a,84bは、互いの凹部86a,86bで嵌合されている。弾性体84a,84bは、ガイド44a,44b及び凹部86a,86b間に底部46を形成し、すなわち、糸16が係止されて保持される保持部42が形成されている。この例では、ガイド44a,44bは、対向する、対向位置にある。
【0121】
このように、固定部14は、糸16が保持部42に案内されることが可能な種々の形状が用いられ得る。また、筒状体12は、特に内周面26が固定部14と協働して、固定部14に糸16を係止及び/又は固定した状態に固定できる形状であれば良い。
【0122】
なお、
図20から
図23Cに示す固定部14を、適宜の筒状体12及び適宜の糸16とともに用いて糸固定具10を形成する。このとき、糸固定具10は、糸16を安定した固定力で固定することができる。
【0123】
上述した例では、筒状体12の内周面26に凹溝26aを形成した例について説明した。
【0124】
図24A及び
図24Bに示す例では、固定部14には、保持部42の底部46の1対の端部46aに連続する外周面36に、1対の凹溝(糸係止溝)36aが形成されている。凹溝36aは、保持部42の底部46から、固定部14の第1端部32まで連続していることが好ましい。
【0125】
一方、筒状体12の内周面26に凹溝26aは形成されていない。
【0126】
このように、筒状体12の内周面26と、固定部14の外周面36との間に糸16が係止及び/又は保持される構造であっても良い。
【0127】
上述した
図1Dに示す例では、筒状体12の内周面26に凹溝26aを形成し、
図24Aに示す例では、固定部14の外周面36に凹溝36aを形成する例について説明した。筒状体12の内周面26に凹溝26aが形成され、固定部14の外周面36に凹溝36aが形成された構造が好適であることはもちろんである。このため、凹溝26a,36aは、筒状体12及び固定部14の少なくとも一方に形成される。
【0128】
これまで、幾つかの実施形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。