【文献】
European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,2011年,79,p.276-284
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タキサン粒子およびその懸濁液がコートされておらず、脂質、ポリマー、タンパク質、ポリエトキシル化ヒマシ油、ならびに、モノ、ジおよびトリグリセリドとポリエチレングリコールのモノおよびジエステルとから構成されるポリエチレングリコールグリセリドを除外する、請求項1に記載の組成物。
前記組成物の投与後、前記タキサン粒子が腫瘍部位に滞留し、前記被検体の内因性免疫系を刺激するのに十分な持続時間、前記腫瘍を前記タキサン粒子に曝露し、それにより、殺腫瘍細胞が生成され、かつ、前記殺腫瘍細胞が前記腫瘍を治療するのに十分なレベルで前記腫瘍へ浸潤する、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本明細書で使用する際、単数形「a」、「an」および「the」には、文脈で別段の指示がない限り、複数の指示対象が含まれる。本明細書で使用する際、「および」は、特に明記しない限り、「または」と交換可能に使用される。
【0045】
本明細書で使用する際、「約(about)」は、記載された測定単位の+/−5パーセント(5%)を意味する。
【0046】
本発明の任意の態様の全ての実施形態は、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、組み合わせて使用することができる。
【0047】
文脈がそうでないことを明確に要求しない限り、詳細な説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などの単語は、排他的または網羅的な意味ではなく包括的な意味、つまり、「包含するが、これらに限定されない(including,but not limited to)」という意味で解釈されるべきである。また、単数または複数を使用する単語には、それぞれ複数と単数が含まれる。さらに、本明細書で使用する際、「本明細書中に(herein)」、「先に(above)」、および「以下に(below)」という単語および同様の意味の単語は、本出願全体を指し、本出願の特定の部分を指すものではない。組成物およびそれらの使用方法は、本明細書を通して開示される成分または工程のいずれかを「含む(comprise)」、「本質的に〜からなる(consist essentially of)」または「〜からなる(consist of)」ことができる。
【0048】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、または開示された正確な形態に限定することを意図していない。本明細書では、本開示の特定の実施形態および実施例を例示の目的で説明しているが、当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な均等の修正が可能である。
【0049】
第一の態様において、本発明は、タキサン粒子を含む組成物を、肺腫瘍を治療するのに有効な量で、肺障害を伴う被検体に肺投与することを含む肺障害の治療方法であって、タキサン粒子が少なくとも95%のタキサンを含み、0.1μm〜5μmの平均粒子径(数)を有する方法を提供する。
【0050】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法によるタキサン粒子の肺投与により、その他のタキサン製剤を使用して以前に可能であったよりもはるかに長い肺内タキサン滞留時間をもたらすことを発見した。以下の実施例に示されるように、タキサンは、投与後少なくとも96時間、被検体の肺組織において検出可能なままである。様々な更なる実施形態において、タキサンは、投与後少なくとも108、120、132、144、156、168、180、192、204、216、228、240、252、264、276、288、300、312、324、または336時間、被検体の肺組織内で検出可能なままである。したがって、本方法は、タキサン粒子が有効な治療となりうる肺腫瘍、中皮腫、肺線維症などの拘束性肺疾患、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの閉塞性肺疾患を含むがこれらに限定されないあらゆる肺障害の治療に使用することができる。
【0051】
本発明の別の態様において、本方法はまた、組成物の投与後、タキサン粒子が被検体の内因性免疫系を刺激するのに十分な持続時間、肺腫瘍のタキサン粒子への曝露を可能にし、それにより、殺腫瘍細胞が生成され、かつ、殺腫瘍細胞が当該腫瘍を治療するのに十分なレベルで腫瘍へ浸潤する。いくつかの実施形態において、内因性免疫系の刺激により、細胞性(細胞介在性)免疫応答が生じる。他の実施形態において、内因性免疫系の刺激により体液性免疫応答が生じる。いくつかの実施形態において、内因性免疫系の刺激により腫瘍ワクチンが生成される。いくつかの実施形態では、転移が低減または排除される。殺腫瘍細胞は、T細胞、B細胞もしくはナチュラルキラー(NK)細胞、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、持続曝露時間量は、少なくとも108、120、132、144、156、168、180、192、204、216、228、240、252、264、276、288、300、312、324、または336時間である。様々な更なる実施形態において、持続曝露時間量は少なくとも3、4、5、6、7または8週間である。組成物は、単回用量の単回投与(サイクル)、または単回投与の2回以上の別個の投与(2回以上のサイクル)での肺投与により投与することができる。いくつかの実施形態では、2回以上の別個の投与は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または14日間隔で又は少なくともその日数間隔で投与される。いくつかの実施形態では、2回以上の別個の投与は、2〜12、2〜11、2〜10、2〜9、2〜8、2〜7、2〜6、2〜5、2〜4、2〜3、3〜12、3〜11、3〜10、3〜9、3〜8、3〜7、3〜6、3〜5、3〜4、4〜12、4〜11、4〜10、4〜9、4〜8、4〜7、4〜6、4〜5、5〜12、5〜11、5〜10、5〜9、5〜8、5〜7、5〜6、6〜12、6〜11、6〜10、6〜9、6〜8、6〜7、7〜12、7〜11、7〜10、7〜9、7〜8、8〜12、8〜11、8〜10、8〜9、9〜12、9〜11、9〜10、10〜12、10〜11、11〜12、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12週間間隔で投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、2〜5、2〜4、2〜3、3〜5、3〜4、2、3、4、5またはそれ以上の別個の投与で投与される。いくつかの実施形態において、2回以上の別個の投与は2〜12週間間隔で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、2〜5回の別個の投与で投与される。いくつかの実施形態において、当該2回以上の別個の投与は少なくとも2週間、週1回投与される。他の実施形態において、当該2回以上の別個の投与は少なくとも1週間、週2回投与され、当該2回以上の別個の投与は少なくとも1日空ける。いくつかの実施形態において、治療方法により、腫瘍が除去(根絶)される。いくつかの実施形態において、組成物は1、2、3、4、5、6回またはそれ以上の別個の投与で投与される。他の実施形態において、組成物は7回以上の別個の投与で投与される。
【0052】
本明細書で使用する際、「タキサン粒子」は、平均粒子径(数)が0.1μm〜5μmのタキサンから本質的になる(すなわち、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%のタキサン)粒子である。本発明で使用するためのタキサン粒子はコーティングされておらず、固体賦形剤内に包埋、含有、封入またはカプセル化されていない。しかしながら、本発明のタキサン粒子は、タキサンの調製中に典型的に見られる不純物および副産物を含んでもよい。そうであっても、タキサン粒子は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%のタキサンを含む。これは、タキサン粒子が実質的に純粋なタキサンからなる、または本質的になることを意味する。
【0053】
タキサンは、非常に水難溶性であるタキサジエンコアを含有するジテルペノイドのクラスである。本発明のタキサン粒子は、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、タキサジエン、バッカチンIII、タクスキニンA、ブレビホリオールおよびタクスピンD、それらの組み合わせ、またはそれらの医薬的に許容される塩を含むがこれらに限定されない、任意の適切なタキサンであり得る。一実施形態において、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセルおよびカバジタキセル、またはそれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択される。
【0054】
パクリタキセルおよびドセタキセル活性医薬成分(API)は、Phyton Biotech LLC(カナダ、バンクーバー)から市販されている。ドセタキセルAPIには、無水の無溶媒基準で計算されたドセタキセルが95%以上または97.5%以上含有されている。パクリタキセルAPIは、無水の無溶媒基準で計算されたパクリタキセルが95%以上または97%以上含有されている。いくつかの実施形態において、パクリタキセルAPIおよびドセタキセルAPIは、USPおよび/またはEPグレードである。パクリタキセルAPIは、半合成の化学プロセスから、または植物細胞などの天然源の発酵または抽出から調製することができる。
【0055】
肺腫瘍は、肺内に存在する任意の腫瘍であり、原発性または転移性肺腫瘍であり得る。肺腫瘍の非限定的例として、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)が挙げられる。一実施形態において、肺腫瘍はSCLCである。別の実施形態では、肺腫瘍はNSCLCである。被験体は、肺腫瘍を有する、ヒトおよび他の霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどを含むがこれらに限定されない任意の哺乳類被験体であり得る。
【0056】
タキサン粒子の「有効量」は、関連する全ての要因に基づいて主治医により決定することができる。タキサン粒子は、投与される唯一のタキサンであってもよく、または全ての状況を考慮して主治医が適切と考える他の治療薬とともに投与されてもよい。一実施形態において、本方法は、静脈内化学療法、放射線療法、外科的切除などの、治療される腫瘍の治療標準で被検体を治療することをさらに含む。
【0057】
本明細書で使用する際、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」は、以下の1つ以上を達成することを意味する:(a)腫瘍または線維化のサイズの縮小;(b)腫瘍増殖率の低下;(c)腫瘍または線維症の除去;(d)転移の発生および/もしくはまん延の低減もしくは制限、または転移の除去。いくつかの実施形態において、治療は腫瘍または線維症の除去である。
【0058】
本発明の特定の一実施形態において、肺投与は、鼻腔内、経口吸入、またはその両方などによるタキサン粒子の単回用量の吸入を含む。タキサン粒子は、2回以上の別個の投与(用量)で投与することができる。この実施形態において、タキサン粒子は、エアロゾル(すなわち、気体媒体中の抗腫瘍性粒子の安定な分散液または懸濁液の液滴)として製剤化することができる。エアロゾルによって送達されるタキサン粒子は、重力沈降、慣性衝突および/または拡散によって気道に堆積する場合がある。圧力計吸入器(pMDI)、ネブライザー、乾燥粉末吸入器(DPI)およびソフトミスト吸入器を含むが、これらに限定されない、エアロゾルを生成するための任意の適切なデバイスを使用してもよい。
【0059】
特定の一実施形態において、本方法は、噴霧化によってエアロゾル化されたタキサン粒子の吸入を含む。ネブライザーは一般に、圧縮空気または超音波パワーを使用して、タキサン粒子またはその懸濁液の吸入可能なエアロゾル液滴を作製する。この実施形態において、噴霧化により、タキサン粒子またはその懸濁液のエアロゾル液滴を被検体に肺送達する。
【0060】
別の実施形態において、本方法は、pMDIを介してエアロゾル化されたタキサン粒子の吸入を含み、タキサン粒子またはその懸濁液は、計量バルブで密閉された加圧容器に少なくとも1つの液化ガスを含有する適切な推薬システム(ハイドロフルオロアルカン(HFA)を含むがこれに限定されない)に懸濁される。弁の作動は、タキサン粒子またはその懸濁液のエアロゾルスプレーの計量された用量の送達をもたらす。
【0061】
他の実施形態において、タキサン粒子は、0.2μmまたは0.3μmより大きい平均粒子径(数)を有する。別の実施形態において、タキサン粒子は、少なくとも0.4μmの平均粒子径(数)を有する。更なる実施形態において、タキサン粒子は、0.4μm〜2μm、または0.5μm〜1.5μm、または0.2μm〜1μm、または0.2μm〜1μm未満の平均粒子径(数)を有する。
【0062】
更なる実施形態では、タキサン粒子は、約0.4μm〜約5μm、約0.4μm〜約3μm、約0.5μm〜約1.4μm、約0.4μm〜約0.8μm、約0.4μm〜約0.7μm、または約0.5μm〜約0.7μmの範囲の平均粒子径数を有することができる。更なる実施形態では、タキサン粒子は、約0.4μm〜約1.2μm、または約0.6μm〜約1.0μmの平均粒子径数を有する。別の実施形態において、タキサン粒子は、0.6μm〜0.861μm、または約0.5μm〜約0.7μm、または約0.2μm〜約1μm、または約0.2μm〜1μm未満、または約0.3μm〜約1μm、または約0.3μm〜1μm未満、または約0.4μm〜約1μm、または約0.4μm〜1μm未満の平均粒子径数を有する。
【0063】
タキサン粒子の粒子径は、粒子径分析機器によって決定することができ、測定値は数分布(数)に基づく平均直径として表される。適切な粒子径分析機器は、フォトゾーンまたは単一粒子光学センシング(SPOS)とも呼ばれる光遮蔽の分析技術を使用するものである。適切な光遮蔽粒子径分析機器は、Particle Sizing Systems(フロリダ州、ポートリッチー)から入手可能なACCUSIZER 780 SISなどのACCUSIZERである。別の適切な粒子経分析機器は、Shimadzu SALD−7101などのレーザー回折を使用するものである。
【0064】
投与のためにタキサン粒子をエアロゾル化する実施形態では、タキサン粒子またはその懸濁液のエアロゾル液滴の空気動力学的中央粒子径(MMAD)は、本発明での使用に適した任意の直径であり得る。一実施形態において、エアロゾル液滴は、約0.5μm〜約6μmの直径のMMADを有する。様々な更なる実施形態において、エアロゾル液滴は、約0.5μm〜約5.5μm直径、約0.5μm〜約5μm直径、約0.5μm〜約4.5μm直径、約0.5μm〜約4μm直径、0.5μm〜3.5μm直径、約0.5μm〜約3μm直径、約0.5μm〜約2.5μm直径、約0.5μm〜約2μm直径、約1μm〜約5.5μm直径、約1μm〜約5μm、約1μm〜約4.5μm直径、約1μm〜約4μm直径、約1μm〜約3.5μm直径、約1μm〜約3μm直径、約1μm〜約2.5μm直径、約1μm〜約2μm直径、約1.5μm〜約5.5μm直径、約1.5μm〜約5μm直径、約1.5μm〜約4.5μm直径、約1.5μm〜約4μm直径、約1.5μm〜約3.5μm直径、約1.5μm〜約3μm直径、約1.5μm〜約2.5μm直径、約1.5μm〜約2μm直径、約2μm〜約5.5μm直径、約2μm〜約5μm直径、約2μm〜約4.5μm直径、約2μm〜約4μm直径、約2μm〜約3.5μm直径、約2μm〜約3μm、および約2μm〜約2.5μm直径のMMADを有する。エアロゾル液滴の空気力学的中央粒子径(MMAD)および幾何標準偏差(GSD)を測定するのに適した機器は、マーサースタイルカスケードインパクター(Mercer−Style Cascade Impactor)などの7段階のエアロゾルサンプラーである。
【0065】
別の実施形態において、タキサン粒子は少なくとも10m2/g、または少なくとも12m2/g、14m2/g、16m2/g、18m2/g、20m2/g、25m2/g、30m2/g、32m2/g、34m2/gもしくは35m2/gの比表面積(SSA)を有する、または、タキサン粒子は約10m2/g〜約60m2/gのSSAを有する。
【0066】
様々な実施形態において、タキサン粒子は、米国特許第5874029号、第5833891号、第6113795号、第7744923号、第8778181号、第9233348号および第5874029号、第5833891号、第9233348号;米国公報第2015/0375153号、第2016/0354336号、第2016/0374953号;および国際特許出願公開第2016/197091号、第2016/197100号および第2016/197101号(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるような「圧縮逆溶媒による沈殿」(PCA)により作製される。
【0067】
超臨界二酸化炭素、超臨界二酸化炭素(逆溶媒)および溶媒を使用したPCA粒子径縮小方法では、例えば、アセトンまたはエタノールを使用して、十分に特性決定された粒径分布内で0.1〜5ミクロン程の小さなコーティングされていないタキサン粒子を生成する。処理中に二酸化炭素と溶媒が除去され(最大0.5%の残留溶媒が残存することがある)、タキサン粒子が粉末として残る。安定性試験により、パクリタキセル粒子粉末を、室温で最大59か月間、加速条件下(40°C/75%相対湿度)で最大6か月間保管した場合、バイアル剤形で安定していることが示されている。
【0068】
様々な超臨界二酸化炭素粒子径縮小方法によって生成されたタキサン粒子は、物理的衝撃または粉砕(grinding)、例えば、湿式または乾式粉砕(milling)、微粉化、崩壊、粉末化、微小流動化または細粉化を使用する従来の粒子径縮小方法によって生成されたタキサン粒子と比較して、独自の物理的特性を有し得る。米国公開第2016/0374953号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、そのような独特な特性には、0.05g/cm3〜0.15g/cm3の嵩密度(組成物中の粒子全体の質量を、メスシリンダーをタップすることなく、メスシリンダーに注ぐときに粒子が占有する総容量で割ったものであり、総容量は、粒子容量、粒子間空隙容量および内部細孔容量を含む)、および米国公開第2016/0374953号に記載され、以下に記載される超臨界二酸化炭素粒子径縮小方法によって生成されるタキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)粒子の少なくとも18m2/gの比表面積(SSA)が含まれる。この嵩密度範囲は一般に、従来手段によって生成されたタキサン粒子の嵩密度よりも低く、SSAは一般に従来手段によって生成されたタキサン粒子のSSAよりも広い。これらの独特な特性により、従来の手段で生成されたタキサンと比較して、水/メタノール媒体の溶解速度が大幅に増大する。本明細書で使用する際、「比表面積」(SSA)は、以下の方法によりブルナウアー−エメット−テラー(「BET」)等温線によって測定されるタキサン質量単位あたりのタキサン粒子の総表面積である:200〜300mgの既知の質量の分析物を30mLのサンプルチューブに添加する。次に、装填したチューブをPorous Materials Inc.のSORPTOMETER(登録商標)、モデルBET−202Aに取り付ける。その後、BETWIN(登録商標)ソフトウェアパッケージを使用して自動試験を実行し、その後、各サンプルの表面積を計算する。当業者によって理解されるように、「タキサン粒子」は、凝集タキサン粒子と非凝集タキサン粒子の両方を含むことができる。SSAはグラム単位で決定されるため、組成物中の凝集および非凝集タキサン粒子の両方が考慮される。BET比表面積試験手順は、米国薬局方および欧州薬局方の両方に含まれる公定法である。嵩密度の測定は、室温でタップすることなく、メスシリンダーにタキサン粒子を注ぎ、質量および容量を測定し、嵩密度を計算することで実施することができる。
【0069】
米国公開第2016/0374953号に開示されているように、試験により、5mmのボールサイズを使用した(suing)Deco−PBM−V−0.41ボールミルで600RPM、室温で60分間パクリタキセルを粉砕することにより作製したパクリタキセル粒子のSSAが15.0m2/gであり、嵩密度が0.31g/cm3であることが示された。また、米国公開第2016/0374953号に開示されているように、1ロットのパクリタキセル粒子は、次の方法を使用した超臨界二酸化炭素法で生成された場合、37.7m2/gのSSAおよび0.085g/cm3の嵩密度を有していた:パクリタキセル65mg/mLの溶液をアセトンで調製した。BETE MicroWhirl(登録商標)フォグノズル(BETE Fog Nozzle,Inc.)および音波プローブ(Qsonica、モデル番号Q700)を約8mm離して結晶化チャンバー内に配置した。約100nmの穴を持つステンレス鋼メッシュフィルターを結晶化チャンバーに取り付けて、沈殿したパクリタキセル粒子を収集した。超臨界二酸化炭素を製造装置の結晶化チャンバーに入れ、約38℃、流量24kg/時間でおよそ1200psiとした。音波プローブは、20kHzの周波数で総出力の60%に調整した。パクリタキセルを含有するアセトン溶液を、およそ36時間、4.5mL/分の流量でノズルからポンプで送出した。上記の超臨界二酸化炭素法によって生成した更なるロットのパクリタキセル粒子のSSA値は次のとおりである:22.27m2/g、23.90m2/g、26.19m2/g、30.02m2/g、31.16m2/g、31.70m2/g、32.59m2/g、33.82m2/g、35.90m2/g、38.22m2/gおよび38.52m2/g。
【0070】
米国公開第2016/0374953号に開示されているように、試験により、5mmのボールサイズを使用した(suing)Deco−PBM−V−0.41ボールミルで600RPM、室温で60分間ドセタキセルを粉砕することにより作製したドセタキセル粒子のSSAが15.2m2/gであり、嵩密度が0.44g/cm3であることが示された。また、米国公開第2016/0374953号に開示されているように、ドセタキセル粒子は、次の方法を使用した超臨界二酸化炭素法で生成された場合、44.2m2/gのSSAおよび0.079g/cm3の嵩密度を有していた:ドセタキセル79.32mg/mLの溶液をアセトンで調製した。ノズルおよび音波プローブを、およそ9mm離れた加圧可能なチャンバー内に配置した。約100nmの穴を持つステンレス鋼メッシュフィルターを加圧可能なチャンバーに取り付けて、沈殿したドセタキセル粒子を収集した。超臨界二酸化炭素を製造装置の加圧可能なチャンバーに入れ、約38℃、流量68slpmでおよそ1200psiとした。音波プローブは、20kHzの周波数で総出力の60%に調整した。ドセタキセルを含有するエタノール溶液を、およそ95分間、2mL/分の流量でノズルからポンプで送出した。)次いで、ステンレス鋼メッシュフィルターを通して混合物をポンプで送出するときに、沈殿したドセタキセル凝集体および粒子を超臨界二酸化炭素から収集した。ドセタキセルの粒子を含有するフィルターを開け、得られた生成物をフィルターから収集した。
【0071】
米国公開第2016/0374953号に開示されているように、溶解試験により、室温で60分間、600RPMで5mmのボールサイズの(suing)Deco−PBM−V−0.41ボールミルを使用してパクリタキセルおよびドセタキセルを粉砕することによって作製したパクリタキセルおよびドセタキセル粒子と比較して、米国公開第2016/0374953号に記載された超臨界二酸化炭素法によって作製したパクリタキセルおよびドセタキセル粒子のメタノール/水媒体への溶解速度が増大したことが示された。溶解速度の決定に使用される手順は次のとおりである。パクリタキセルの場合、およそ50mgの材料と1.5グラムの1mmガラスビーズをバイアル内でおよそ1時間回転させて、材料をビーズにコーティングした。ビーズをステンレス鋼メッシュ容器に移し、37℃、pH7のメタノール/水50/50(v/v)培地、および75rpmで動作するUSP装置II(パドル)を含有する溶解浴に入れた。10、20、30、60および90分で、5mLのアリコートを取り出し、0.22μmフィルターでろ過し、227nmでUV/VIS分光光度計で分析した。サンプルの吸光度値を、溶解媒体で調製した標準溶液の吸光度値と比較して、溶解した材料の量を決定した。ドセタキセルの場合、およそ50mgの材料を、37℃、pH7のメタノール/水15/85(v/v)培地、および75rpmで動作するUSP装置II(パドル)を含有する溶解浴に直接入れた。5、15、30、60、120および225分で、5mLのアリコートを取り出し、0.22μmフィルターでろ過し、232nmでUV/VIS分光光度計で分析した。サンプルの吸光度値を、溶解媒体で調製した標準溶液の吸光度値と比較して、溶解した材料の量を決定した。パクリタキセルの場合、溶解速度は、超臨界二酸化炭素法で作製した粒子は30分で47%溶解したのに対し、粉砕により作製した粒子は30分で32%溶解した。ドセタキセルの場合、溶解速度は、超臨界二酸化炭素法で作製した粒子は30分で27%溶解したのに対し、粉砕により作製した粒子は30分で9%溶解した。
【0072】
いくつかの実施形態において、タキサン粒子は、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、または少なくとも35m2/gのSSAを有する 。一実施形態において、抗腫瘍性粒子は、約10m2/g〜約50m2/gのSSAを有する。いくつかの実施形態において、抗腫瘍性粒子は、約0.050g/cm3〜約0.20g/cm3の嵩密度(タップなし)を有する。
【0073】
更なる実施形態において、抗腫瘍性粒子は以下のSSAを有する:
(a)16m2/g〜31m2/g、もしくは32m2/g〜40m2/g;
(b)16m2/g〜30m2/g、もしくは32m2/g〜40m2/g;
(c)16m2/g〜29m2/g、もしくは32m2/g〜40m2/g;
(d)17m2/g〜31m2/g、もしくは32m2/g〜40m2/g;
(e)17m2/g〜30m2/g、もしくは32m2/g〜40m2/g;
(f)17m2/g〜29m2/g、もしくは32m2/g〜40m2/g;
(g)16m2/g〜31m2/g、もしくは32m2/g〜40m2/g;
(h)16m2/g〜30m2/g、もしくは33m2/g〜40m2/g;
(i)16m2/g〜29m2/g、もしくは32m2/g〜40m2/g;
(j)17m2/g〜31m2/g、もしくは33m2/g〜40m2/g;
(k)17m2/g〜30m2/g、もしくは33m2/g〜40m2/g;
(l)17m2/g〜29m2/g、もしくは33m2/g〜40m2/g;
(m)16m2/g〜31m2/g、もしくは≧32m2/g;
(h)17m2/g〜31m2/g、もしくは≧32m2/g;
(i)16m2/g〜30m2/g、もしくは≧32m2/g;
(j)17m2/g〜30m2/g、もしくは≧32m2/g;
(k)16m2/g〜29m2/g、もしくは≧32m2/g;
(l)17m2/g〜29m2/g、もしくは≧32m2/g;
(m)16m2/g〜31m2/g、もしくは≧33m2/g;
(n)17m2/g〜31m2/g、もしくは≧33m2/g;
(o)16m2/g〜30m2/g、もしくは≧33m2/g;
(p)17m2/g〜30m2/g、もしくは≧33m2/g;
(q)16m2/g〜29m2/g、もしくは≧33m2/g;または
(r)17m2/g〜29m2/g、もしくは≧33m2/g。
【0074】
いくつかの実施形態において、タキサン粒子はパクリタキセル粒子であり、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、または少なくとも35m2/gのSSAを有する。他の実施形態では、パクリタキセル粒子は、18m2/g〜50m2/g、または20m2/g〜50m2/g、または22m2/g〜50m2/g、または25m2/g〜50m2/g、または26m2/g〜50m2/g、または30m2/g〜50m2/g、または35m2/g〜50m2/g、または18m2/g〜45m2/g、または20m2/g〜45m2/g、または22m2/g〜45m2/g、または25m2/g〜45m2/g、または26m2/g〜45m2/gまたは30m2/g〜45m2/g、または35m2/g〜45m2/g、または18m2/g〜40m2/g、または20m2/g〜40m2/g、または22m2/g〜40m2/g、または25m2/g〜40m2/g、または26m2/g〜40m2/g、または30m2/g〜40m2/g、または35m2/g〜40m2/gのSSAを有する。
【0075】
いくつかの実施形態において、パクリタキセル粒子は、0.05g/cm3〜0.15g/cm3、または0.05g/cm3〜0.20g/cm3の嵩密度(タップなし)を有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、パクリタキセル粒子は、少なくとも40%w/wの溶解速度を有し、75RPMで動作するUSP IIパドル装置において、37℃、pH7で50%メタノール/50%水(v/v)の溶液に30分以下で溶解する。
【0077】
別の実施形態において、パクリタキセル粒子は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する:
(a)約0.050g/cm3〜約0.12g/cm3または約0.060g/cm3〜約0.11g/cm3の平均嵩密度(タップされていない);
(b)少なくとも12m2/g、15m2/g、18m2/g、20m2/g、25m2/g、30m2/g、32m2/g、34m2/gまたは35m2/gのSSA;
(c)約22m2/g〜約40m2/gまたは約25m2/g〜約40m2/g、30m2/g〜約40m2/gまたは約35m2/g〜約40m2/gのSSA;および/または
(d)75PRMで動作するUSP IIパドル装置において、37℃およびpH7.0で、少なくとも40%(w/w)の前記パクリタキセルが、50%メタノール/50%水(v/v)の溶液に、30分以下で溶解する。
【0078】
一実施形態において、パクリタキセル粒子は、約0.050g/cm3〜約0.12g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および少なくとも30m2/gのSSAを有する。別の実施形態において、パクリタキセル粒子は、約0.050g/cm3〜約0.12g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および少なくとも35m2/gのSSAを有する。一実施形態において、パクリタキセル粒子は、約0.050g/cm3〜約0.12g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および約30m2/g〜約40m2/gのSSAを有する。別の実施形態において、パクリタキセル粒子は、約0.060g/cm3〜約0.11g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および約30m2/g〜約40m2/gのSSAを有する。別の実施形態において、パクリタキセル粒子は、約0.060g/cm3〜約0.11g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および少なくとも30m2/gのSSAを有する。更なる実施形態において、パクリタキセル粒子は、約0.060g/cm3〜約0.11g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および少なくとも35m2/gのSSAを有する。
【0079】
別の実施形態において、組成物のパクリタキセル粒子中の少なくとも40%(w/w)のパクリタキセルは、75RPMで動作するUSP IIパドル装置において50%メタノール/50%水(v/v)の溶液に30分以下で溶解する。pH7を使用し、タキサンの溶解度はpHの影響を受けない。別の実施形態において、溶解試験は37℃で実施される。
【0080】
いくつかの実施形態では、タキサン粒子はドセタキセル粒子であり、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、または少なくとも42m2/gのSSAを有する。他の実施形態では、ドセタキセル粒子は、18m2/g〜60m2/g、または22m2/g〜60m2/g、または25m2/g〜60m2/g、または30m2/g〜60m2/g、または40m2/g〜60m2/g、または18m2/g〜50m2/g、または22m2/g〜50m2/g、または25m2/g〜50m2/g、または26m2/g〜50m2/g、または30m2/g〜50m2/g、または35m2/g〜50m2/g、または40m2/g〜50m2/gのSSAを有する。
【0081】
いくつかの実施形態において、ドセタキセル粒子は、0.05g/cm3〜0.15g/cm3の嵩密度(タップなし)を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、ドセタキセル粒子は、75RPMで動作するUSP IIパドル装置において、37℃、pH7で15%メタノール/85%水(v/v)の溶液に30分以下で溶解する少なくとも20%w/wの溶解速度を有する。
【0083】
別の実施形態において、ドセタキセル粒子は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する:
(a)約0.050g/cm3〜約0.12g/cm3または約0.06g/cm3〜約0.1g/cm3の平均嵩密度(タップされていない);
(b)少なくとも12m2/g、15m2/g、18m2/g、20m2/g、25m2/g、30m2/g、35m2/g、40m2/gまたは42m2/gのSSA;
(c)約20m2/g〜約50m2/gまたは約35m2/g〜約46m2/gのSSA;および/または
(d)75RPMで動作するUSP IIパドル装置において、37℃およびpH7.0で、少なくとも20%(w/w)の前記ドセタキセルが、15%メタノール/85%水(v/v)の溶液に、30分以下で溶解する。
【0084】
一実施形態において、ドセタキセル粒子は、約0.050g/cm3〜約0.12g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および少なくとも30m2/gのSSAを有する。別の実施形態において、ドセタキセル粒子は、約0.050g/cm3〜約0.12g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および少なくとも35m2/gのSSAを有する。更なる実施形態において、ドセタキセル粒子は、約0.050g/cm3〜約0.12g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および少なくとも40m2/gのSSAを有する。一実施形態において、ドセタキセル粒子は、約0.050g/cm3〜約0.12g/cm3の平均嵩密度(タップなし)および約20m2/g〜約50m2/gのSSAを有する。別の実施形態において、ドセタキセル粒子の平均嵩密度(タップなし)は約0.06g/cm3〜約0.1g/cm3であり、SSAは約30m2/g〜約50m2/gである。別の実施形態において、ドセタキセル粒子の平均嵩密度(タップなし)は約0.06g/cm3〜約0.1g/cm3であり、SSAは約35m2/g〜約50m2/gである。別の実施形態において、ドセタキセル粒子の平均嵩密度(タップされていない)は約0.06g/cm3〜約0.1g/cm3であり、SSAは約35m2/g〜約45m2/gである。
【0085】
別の実施形態において、ドセタキセルの少なくとも20%(w/w)は、75RPMで動作するUSP IIパドル装置において、15%メタノール/85%水(v/v)の溶液に30分以下で溶解される。タキサンの溶解度がpHにより影響を受けない中性pHを使用した。別の実施形態において、溶解試験は37℃で実施される。
【0086】
これらの様々な実施形態のいずれにおいても、タキサン粒子は、タキサン粒子当たり少なくとも4.16×10−13グラムのタキサン、またはその医薬的に許容される塩を含んでもよい。いくつかの実施形態において、タキサン粒子は、凝集していない個々の粒子であり、複数のタキサン粒子のクラスターではない。
【0087】
本発明の様々な実施形態において、タキサン粒子はコーティングされていない(ニートな)個々の粒子である。タキサン粒子は、いかなる物質にも結合またはコンジュゲートしていない。いかなる物質もタキサン粒子の表面に吸収または吸着されない。タキサン粒子はいかなる物質にもカプセル化されていない。タキサン粒子はいかなる物質にもコーティングされていない。タキサン粒子は、タキサンのマイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ミクロスフェア、またはリポソームではない。および/またはタキサン粒子は、モノマー、ポリマー(または生体適合性ポリマー)、タンパク質、界面活性剤またはアルブミンに結合、付着、カプセル化またはコーティングされていない。いくつかの実施形態において、モノマー、ポリマー(または生体適合性ポリマー)、コポリマー、タンパク質、界面活性剤またはアルブミンは、タキサン粒子の表面に吸収または吸着されない。いくつかの実施形態において、組成物は、ポリマー/コポリマーまたは生体適合性ポリマー/コポリマーを含まない/包含しない、または含有しない。いくつかの実施形態において、組成物はタンパク質を含まない/包含しない、または含有しない。本発明のいくつかの態様において、組成物はアルブミンを含まない/包含しない、または含有しない。本発明のいくつかの態様では、組成物はヒアルロン酸を含まない/包含しない、または含有しない。本発明のいくつかの態様において、組成物は、ヒアルロン酸とタキサンのコンジュゲートを含まない/包含しない、または含有しない。本発明のいくつかの態様では、組成物は、ヒアルロン酸とパクリタキセルのコンジュゲートを含まない/包含しない、または含有しない。本発明のいくつかの態様において、組成物は、ポロキサマー、ポリアニオン、ポリカチオン、修飾ポリアニオン、修飾ポリカチオン、キトサン、キトサン誘導体、金属イオン、ナノベクター、ポリ−ガンマ−グルタミン酸(PGA)、ポリアクリル酸(PAA)、アルギン酸(ALG)、ビタミンE−TPGS、ジメチルイソソルビド(DMI)、メトキシPEG 350、クエン酸、抗VEGF抗体、エチルセルロース、ポリスチレン、ポリ無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリホスファゼン、ポリオルトエステル、ポリエステル、ポリアミド、多糖類、ポリタンパク質、スチレン−イソブチレン−スチレン(SIBS)、ポリ無水物共重合体、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビス(P−カルボキシフェノキシ)プロパン−セバシン酸、ポリ(d、l−乳酸)(PLA)、ポリ(dl−乳酸−co−グリコール酸)(PLAGA)、および/またはポリ(D、L乳酸−co−グリコール酸(PLGA)含まない/包含しない、または含有しない。いくつかの実施形態において、タキサン粒子は結晶形態である。他の実施形態において、タキサン粒子は、非晶質形態、または結晶形態と非晶質形態の両方の組み合わせである。
【0088】
一実施形態において、投与用のタキサン粒子は、約0.1mg/ml〜約100mg/mlのタキサンの懸濁液中(すなわち、医薬的に許容される担体と共に、および/またはエアロゾル製剤中)のタキサンの剤形を含む。様々の更なる実施形態では、剤形は、約0.5mg/ml〜約100mg/ml、約1mg/ml〜約100mg/ml、約2mg/ml〜約100mg/ml、約5mg/ml〜約100mg/ml、約10mg/ml〜約100mg/ml、約25mg/ml〜約100mg/ml、約0.1mg/ml〜約75mg/ml、約0.5mg/ml〜約75mg/ml、約1mg/ml〜約75mg/ml、約2mg/ml〜約75mg/ml、約5mg/ml〜約75mg/ml、約10mg/ml〜約75mg/ml、約25mg/ml〜約75mg/m、約0.1mg/ml〜約50mg/ml、約0.5mg/ml〜約50mg/ml、約1mg/ml〜約50mg/ml、約2mg/ml〜約50mg/ml、約5mg/ml〜約50mg/ml、約10mg/ml〜約50mg/ml、約25mg/ml〜約50mg/m、約0.1mg/ml〜約25mg/ml、約0.5mg/ml〜約25mg/ml、約1mg/ml〜約40mg/ml、約1mg/ml〜約25mg/ml、約2mg/ml〜約25mg/ml、約5mg/ml〜約25mg/ml、約10mg/ml〜約25mg/ml、約0.1mg/ml〜約15mg/ml、約0.5mg/ml〜約15mg/ml、約1mg/ml〜約15mg/ml、約2mg/ml〜約15mg/ml、約5mg/ml〜約15mg/ml、約10mg/ml〜約15mg/ml、約0.1mg/ml〜約10mg/ml、約0.5mg/ml〜約10mg/ml、約1mg/ml〜約10mg/ml、約2mg/ml〜約10mg/ml、約5mg/ml〜約10mg/ml、約0.1mg/ml〜約5mg/ml、約0.5mg/ml〜約5mg/ml、約1mg/ml〜約5mg/ml、約2mg/ml〜約5mg/ml、約0.1mg/ml〜約2mg/ml、約0.5mg/ml〜約2mg/ml、約1mg/ml〜約2mg/ml、約0.1mg/ml〜約1mg/ml、約0.5mg/ml〜約1mg/ml、約0.1mg/ml〜約0.5mg/ml、約0.1mg/ml〜約15mg/ml、約0.5mg/ml〜約15mg/ml、約1mg/ml〜約15mg/ml、約2mg/ml〜約15mg/ml、約5mg/ml〜約15mg/ml、約3mg/ml〜約8mg/ml、もしくは約4mg/ml〜約6mg/mlのタキサン、または少なくとも約0.1、0.5、1、10、20、25、50、75、または100mg/mlタキサンであってもよい。
【0089】
一実施形態において、タキサン粒子は、エアロゾル化の前に液体担体中に存在する。水性液体担体などの、任意の適切な液体担体を使用してもよい。注射用0.9%塩化ナトリウム(USP)などの0.9%生理食塩水(通常の生理食塩水)を含むが、これに限定されない、任意の適切な水性液体担体を使用することができる。別の実施形態において、タキサン粒子は、エアロゾル化の前に懸濁液中に存在する。いくつかの実施形態において、懸濁液は水性担体を含む。担体は、緩衝剤、水中の浸透塩および/または界面活性剤、ならびにpH、等張性および粘度を調整するための他の薬剤を含むことができる。水性担体を使用する一実施形態では、界面活性剤の濃度は、w/wまたはw/v基準で1%未満であり、他の実施形態では、0.5%未満、0.25%未満または約0.1%である。他の実施形態では、水性担体は、界面活性剤GELUCIRE(登録商標)(モノ、ジおよびトリグリセリドおよびポリエチレングリコールのモノおよびジエステルから構成されるポリエチレングリコールグリセリド)および/またはCREMOPHOR(登録商標)(ポリエトキシル化ヒマシ油)を除外できる。いくつかの実施形態において、組成物または懸濁液は、ポリマー、タンパク質(アルブミンなど)、ポリエトキシル化ヒマシ油、ならびに/またはモノ、ジおよびトリグリセリドおよびポリエチレングリコールのモノおよびジエステルから構成されるポリエチレングリコールグリセリドを除外する。
【0090】
いくつかの実施形態では、懸濁液は、水、および任意で、緩衝剤、張性調整剤、防腐剤、粘滑剤、粘度調整剤、浸透剤、界面活性剤、酸化防止剤、アルカリ化剤、酸性化剤、消泡剤および着色料からなる群から選択される1つ以上の賦形剤を含むことができる。例えば、懸濁液は、タキサン粒子、水、緩衝液および塩を含むことができる。懸濁液は、場合によりさらに界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、懸濁液は、水、水に懸濁したパクリタキセル粒子および緩衝液から本質的になるか、またはそれらからなる。懸濁液は、浸透塩をさらに含むことができる。
【0091】
懸濁液は、1つ以上の界面活性剤を含むことができる。適切な界面活性剤には、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩、アセチル化モノグリセリド、ジアセチル化モノグリセリドおよびポロキサマーが例として限定するものではなく含まれる。ポリソルベートは、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、それらはソルビトールとその無水物の一連の部分脂肪酸エステルであり、ソルビトールとその無水物のモルごとにおよそ20、5または4モルのエチレンオキシドと共重合される。ポリソルベートの非限定的な例は、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85およびポリソルベート120である。およそ20モルのエチレンオキシドを含有するポリソルベートは、親水性の非イオン性界面活性剤である。約20モルのエチレンオキシドを含むポリソルベートの例としては、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85およびポリソルベート120が挙げられる。ポリソルベートは、TWEEN(商標)の商品名でCrodaから市販されている。ポリソルベートの番号指定は、TWEENの番号指定に対応する。たとえば、ポリソルベート20はTWEEN 20であり、ポリソルベート40はTWEEN 40であり、ポリソルベート60はTWEEN 60であり、ポリソルベート80はTWEEN 80である。USP/NFグレードのポリソルベートにはポリソルベート20 NF、ポリソルベート40 NF、ポリソルベート60 NFおよびポリソルベート80 NFが含まれる。ポリソルベートは、PhEurグレード(欧州薬局方)、BPグレードおよびJPグレードでも入手可能である。「ポリソルベート」という用語は、一般名称である。ポリソルベート20の化学名は、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレートである。ポリソルベート40の化学名は、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノパルミテートである。ポリソルベート60の化学名は、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノステアレートである。ポリソルベート80の化学名は、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレアートである。いくつかの実施形態において、懸濁液はポリソルベートの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態において、懸濁液は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85および/またはポリソルベート120を含む。他の実施形態において、懸濁液は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60および/またはポリソルベート80を含む。一実施形態において、懸濁液はポリソルベート80を含む。
【0092】
懸濁液は、1つ以上の張性調整剤を含むことができる。適切な張度調整剤には、例として限定するものではないが、1つ以上の無機塩、電解質、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ナトリウム、硫酸カリウム、重炭酸ナトリウムおよびカリウム、ならびにアルカリ土類金属無機塩などのアルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩、マンニトール、デキストロース、グリセリン、プロピレングリコール、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0093】
懸濁液は、1つ以上の緩衝剤を含むことができる。適切な緩衝剤としては、例として限定するものではないが、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム塩酸、水酸化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン、および炭酸水素ナトリウム、ならびに当業者に知られている他のものが挙げられる。緩衝液は、腹腔内での使用に望ましい範囲にpHを調整するために一般的に使用される。通常、約5〜9、5〜8、6〜7.4、6.5〜7.5または6.9〜7.4のpHが望ましい。
【0094】
懸濁液は、1つ以上の粘滑剤を含むことができる。粘滑剤は、腹膜やその中の臓器を覆う膜などの、粘膜上に鎮静膜(soothing film)を形成する薬剤である。粘滑剤は軽度の痛みや炎症を和らげる場合があり、粘膜保護剤と呼ばれることもある。適切な粘滑剤には、本明細書に記載される別の高分子粘滑剤と共に使用される場合、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメチルセルロースなど、約0.2〜約2.5%の範囲のセルロース誘導体;約0.01%のゼラチン;約0.05%〜約1%のポリオール、またグリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400およびプロピレングリコールなどを含む、約0.05〜約1%のポリオール;約0.1〜約4%のポリビニルアルコール;約0.1〜約2%のポビドン;および約0.1%のデキストラン70が含まれる。
【0095】
懸濁液は、pHを調整するために1つ以上のアルカリ化剤を含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「アルカリ化剤」は、アルカリ性媒体を提供するために使用される化合物を意味することが意図されている。そのような化合物には、例として限定するものではないが、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、ならびに当業者に知られている他のものが含まれる。
【0096】
懸濁液は、pHを調整するために1つ以上の酸性化剤を含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「酸性化剤」は、酸性媒体を提供するために使用される化合物を意味することが意図されている。そのような化合物には、例として限定するものではないが、酢酸、アミノ酸、クエン酸、硝酸、フマル酸および他のアルファヒドロキシ酸、塩酸、アスコルビン酸および硝酸、ならびに当業者に知られている他のものが含まれる。
【0097】
懸濁液は、1つ以上の消泡剤を含むことができる。本明細書で使用する際、用語「消泡剤」は、充填組成物の表面に形成される発泡の量を防止または低減する化合物を意味することが意図されている。適切な消泡剤には、例として限定するものではないが、ジメチコン、シメチコン(SIMETHICONE)、オクトキシノールおよび当業者に知られている他のものが含まれる。
【0098】
懸濁液は、懸濁液の粘度を増加または減少させる1つ以上の粘度調整剤を含むことができる。適切な粘度調整剤には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトールおよびポリビニルピロリドンが含まれる。
【0099】
いくつかの実施形態において、タキサン粒子は、ポリソルベートをさらに含む懸濁液中に存在する。特定の一実施形態において、タキサン粒子は、ポリソルベートをさらに含む懸濁液中に存在し、ポリソルベートはポリソルベート80である。他の実施形態において、ポリソルベートまたはポリソルベート80は、約0.01%v/v〜約1.5%v/vの濃度で懸濁液中に存在する。驚くべきことに、本発明者らは、記載した非常に少量のポリソルベート80が、タキサン粒子と懸濁液中の水性担体(生理食塩水など)との界面での表面張力を低下させることを発見した。いくつかの実施形態では、粒子はポリソルベートまたはポリソルベート80でコーティングされていてもよく、他の実施形態では、粒子はポリソルベートまたはポリソルベート80でコーティングされていない。様々な他の実施形態では、ポリソルベートまたはポリソルベート80は、約0.01%v/v〜約1%v/v、約0.01%v/v〜約0.5%v/v、約0.01%v/v〜約0.4%v/v、約0.01%v/v〜約0.25%v/v、約0.05%v/v〜約0.5%v/v、約0.05%v/v〜約0.25%v/v、約0.1%v/v〜約0.5%v/v、約0.1%v/v〜約0.25%v/v、約0.1%v/v、約0.16v/vまたは約0.25%v/vの濃度で懸濁液中に存在する。更なる実施形態において、パクリタキセルなどのタキサンは、約1mg/ml〜約40mg/ml、または約6mg/ml〜約20mg/mlの濃度で懸濁液中に存在する。様々な更なる実施形態では、タキサンは、約6mg/ml〜約15mg/ml、約6mg/ml〜約10mg/ml、約10mg/ml〜約20mg/ml、約10mg/ml〜約15mg/ml、約6mg/ml、約10mg/mlまたは約15mg/mlの濃度で懸濁液中に存在する。様々な更なる実施形態において、組成物中の水性担体は、約0.9%塩化ナトリウムなどの生理食塩水であってもよい。
【0100】
実施例1 懸濁液中のパクリタキセル粒子(すなわち、実施例1、2、3および4で使用される、本明細書に開示されるようなパクリタキセル粒子であって、、0.83ミクロンの平均粒子径(数)、27.9m2/gのSSAおよび0.0805g/cm3の嵩密度(タップなし)を有するパクリタキセルおよそ98%)−安全性および有効性の開発プログラム−Sprague Dawleyラットのパイロット薬物動態試験
【0102】
実施の概要(EXECUTIVE SUMMARY)
このパイロット試験の目的は、パクリタキセル粒子懸濁液製剤を使用した完全な薬物動態(PK)試験のサンプリング時点を定義することであった。パクリタキセル粒子製剤が肺での保持を増加させる可能性があるため、0.5〜168時間の9つの時点を評価して、完全な薬物動態試験のための適切なサンプリング戦略を決定した。
【0103】
16匹のSprague Dawleyラットを、一度だけ鼻のみからの吸入によりパクリタキセル粒子製剤(0.37mg/kgの目標用量)に曝露した。2匹の動物(n=2)を、曝露後0.5、6、12、24、48、72、120、および168時間の指定された時点で安楽死させた。血液(血漿)および肺組織のサンプルを収集した。
【0104】
曝露当日、パクリタキセル粒子製剤(6mg/mL)をスポンサーによる指示に従って調製した。
【0105】
総エアロゾル曝露時間は、全ての動物について63分であった。鼻のみの曝露チャンバーの呼吸ゾーンに配置した47mm GF/Aフィルター上に蓄積された製剤の量を測定することにより、63分間のパクリタキセル粒子製剤エアロゾル曝露全体にわたってエアロゾル濃度を監視した。エアロゾル粒子径(液滴サイズ)は、曝露チャンバーの動物呼吸ゾーンからマーサースタイルカスケードインパクターを使用して測定した。
【0106】
パクリタキセル粒子懸濁液製剤は、2つのHospitak圧縮空気ジェットネブライザーを使用してエアロゾル化した(平均パクリタキセルエアロゾル濃度:目標82.65μg/L)。GF/Aフィルターから測定した全体の平均エアロゾル濃度は0.24mg/Lであり、平均パクリタキセルエアロゾル濃度は73.5μg/mLであった。粒度分布は、2.2のGSDで2.0μmのMMADと測定された。測定された平均パクリタキセルエアロゾル濃度73.5μg/Lは、目標の平均パクリタキセルエアロゾル濃度82.65μg/Lから約11%低くなった(分析アッセイの精度/回収性能基準±15%以内)。酸素および温度は、パクリタキセル粒子製剤のエアロゾルへの曝露全体を通して監視した。記録された酸素および温度の範囲は、それぞれ19.7%〜20.9%および20.4℃〜20.8℃であった。
【0107】
肺へのパクリタキセル堆積量は、パクリタキセルの平均エアロゾル濃度73.5μg/L、げっ歯類の平均体重326g、想定堆積分率10%および曝露時間63分に基づいて計算した。達成されたげっ歯類の平均堆積量は0.33mg/kgと決定された。0.37mg/kgの目標堆積量と比較すると、達成された平均堆積量は約11%少なかったが、噴霧化曝露の場合に予想される変動性(目標から±15%)の範囲内であった。
【0108】
全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。剖検時に、数匹の動物の肺にわずかな赤い変色が見られた。剖検時に他の異常な巨視的観察は認められなかった。剖検で得られた体重と肺重量から、全ての時点での動物の平均最終体重(標準偏差)は346.26g(24.01)であり、平均肺重量(標準偏差)は1.60g(0.13)であった。
【0109】
全身血液(K2EDTAからの血漿の形態)を液体クロマトグラフィー−質量分析(LCMS)アッセイでアッセイし、肺組織を4.6章(生物学的分析)で簡潔に説明されるようにアッセイして、時間の関数としてパクリタキセルの量を定量した。肺組織分析は、168時間まで検出可能な量のパクリタキセルによる肺曝露を示した。全身血液は24時間後に検出可能なパクリタキセル(1ng/mL未満)を示さなかった。これらのデータに基づいて、PK試験には次のサンプリング時点が推奨される:吸入曝露後、0.5(±10分)、6(±10分)、12(±10分)、24(±30分)、48(±30分)、72(±30分)、120(±30分)168(±30分)、240(±30分)、336(±30分)。
【0110】
目的
このパイロット試験の目的は、パクリタキセル粒子製剤を使用した完全な薬物動態(PK)試験のサンプリング時点を定義することであった。腹腔内(IP)注射で投与したパクリタキセル粒子製剤による予備データは、腹腔内での有意な保持時間を示す。パクリタキセル粒子製剤が肺での保持を増加させる可能性があるため、168時間までの時点を評価して、完全な薬物動態試験のための適切なサンプリング戦略を決定した。
【0111】
材料および方法
試験系
種/株:Sprague Dawleyラット
試験開始時の動物の年齢:8〜10週齢
試験開始時の体重範囲:308〜353g
試験ラット数/性別:雄18匹(試験動物16匹および予備2匹)
供給源:Charles River Laboratories(ニューヨーク州、キングストン)
識別:パーマネントマーカーによる尾マーキング
【0112】
試験および対照品の製剤化および投与
パクリタキセル粒子懸濁液製剤(6mg/mL)を、スポンサーによる指示に従って調製した。簡潔には、パクリタキセル粒子(306mg)を含有するバイアルに5.0mLの1%ポリソルベート80を加えた。パクリタキセル粒子懸濁液バイアルを激しく振とうして反転させ、バイアル内に存在する全ての粒子を確実に濡らした。振とう直後に、46mLの0.9%塩化ナトリウムをバイアルに加え、バイアルを少なくとも1分間振とうして、十分な混合と懸濁液の適切な分散を確認した。得られた製剤は、エアロゾル化作業のためにネブライザーに入れる前に、バイアル内の空気/泡を減らすために、少なくとも5分間そのままにしておいた。最終製剤を室温で保ち、再構成後3時間以内に使用した。
【0113】
実験設計
16匹のSprague Dawleyラットを、一度だけ鼻のみからの吸入によりパクリタキセル粒子懸濁液製剤(0.37mg/kgの目標用量)に曝露した。2匹の動物(n=2)を、血液(血漿)および肺組織を収集するために、曝露後0.5(±10分)、6(±10分)、12(±10分)、24(±30分)、48(±30分)、72(±30分)、120(±30分)および168(±30分)時間で安楽死させた。特定のPKモデリングは行わず、逆に、データは、PK試験のための曝露後のパクリタキセルの検出可能な量の期間を定義する。
【0114】
飼畜、隔離、および試験への割り当て
雄Sprague Dawleyラット(6〜8週齢)をCharles River Laboratories(ニューヨーク州、キングストン)から入手し、14日間隔離した。隔離の終わりに動物の体重を測定し、その後、試験への割り当てのために体重によって無作為化した。動物は、尾マーキングとケージカードによって識別した。標準的な手法を使用して、水、照明、湿度および温度制御を維持および監視した。非曝露時間中は、ラットに標準的なげっ歯類用食餌を自由に与えた。
【0115】
体重および毎日の観察
体重は、無作為化時、試験期間中毎日および安楽死時に収集した。試験時の各動物は、異常、瀕死または死亡の任意の臨床的兆候について、比較医学動物資源(Comparative Medicine Animal Resources:CMAR)要員によって1日2回観察した。
【0116】
鼻のみのエアロゾル曝露
馴化
標準的な技術を使用して、最大70分間、鼻のみの曝露チューブに動物を馴化させた。曝露前の3日間で3つの順化セッションを行った。最初のセッションは30分、2番目のセッションは60分、3番目のセッションは70分続けた。一時的な苦痛以上のものを経験しないことを保証するために、馴化期間中にわたって、かつ、曝露中、それらを綿密に監視した。
【0117】
曝露システム
吸入曝露システムは、2つの圧縮空気ジェットネブライザー(Hospitak)およびげっ歯類の鼻のみの吸入曝露チャンバーからなるものであった。曝露中にわたって、曝露酸素レベル(%)を監視した。パクリタキセル粒子懸濁液製剤エアロゾルを、20psiの吸気圧で、2つの圧縮空気ジェットネブライザーのセット(最大40(±1)分間使用し、その後、残りの曝露時間のために2つの圧縮空気ジェットネブライザーの第二のセットと交換)を用いて生成した。エアロゾルは、24インチのステンレス鋼エアロゾル送達ライン(直径1.53cm)を介して、鼻のみの曝露チャンバーに送った。
【0118】
濃度の監視
エアロゾル濃度の監視は、事前に計量されたGF/A 47mmフィルター上にエアロゾルを収集することにより行った。フィルターは、げっ歯類への曝露を通して、鼻のみの曝露チャンバーのげっ歯類呼吸ゾーンからサンプリングした。GF/Aフィルターを通過するエアロゾルのサンプリング流量は、1.0±0.5L/分に維持した。合計6個のGF/Aフィルターを収集した。13分後に収集した最後のフィルターを除き、曝露時間全体で10分ごとに1個のフィルターを収集した。サンプルの収集後、フィルターの重量を測定して、曝露システム内の総エアロゾル濃度を決定した。フィルターを抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析して、各フィルター上に収集されたパクリタキセルの量を定量化した。エアロゾルの総量と収集されたパクリタキセルエアロゾルをフィルターを通過する総空気流で除算することにより、各フィルターの総エアロゾル濃度およびパクリタキセルエアロゾル濃度を計算した。平均パクリタキセルエアロゾル濃度を使用して、以下に示す式1を使用して、げっ歯類の肺に対するパクリタキセルの達成された平均堆積量を計算した。
【0119】
粒子径の決定
エアロゾルの粒径分布は、マーサースタイルの7段階カスケードインパクター(Intox Products,Inc.、ニューメキシコ州、アルバカーキ)によって、鼻のみの曝露チャンバーのげっ歯類呼吸ゾーンから測定した。粒径分布は、空気動力学的中央粒子径(MMAD)および幾何標準偏差(GSD)に関して決定した。カスケードインパクターのサンプルは、流速2.0±0.1L/分で収集した。
【0120】
用量の決定
堆積量を、式1を使用して計算した。この計算では、ラットの平均群体重とともに、曝露から測定した平均エアロゾル濃度を使用した。このようにして、ラットの肺に堆積したパクリタキセルの推定量を、測定したパクリタキセルエアロゾル濃度を使用して計算した。
【数1】
式中、
堆積量=(DD)μg/kg
2毎分呼吸量(RMV)=0.608×BW0.852
エアロゾル曝露濃度(AC)=パクリタキセルエアロゾル濃度(μg/L)
堆積分率(DF)=想定堆積分率10%
BW=試験中の動物の平均体重(無作為化時、−1日目)(kg)
【0121】
安楽死および剖検
動物を、安楽死用溶液のIP注射によりそれぞれの時点で安楽死させた。剖検中、血液(血漿用)を心臓穿刺によりK2EDTAチューブ内に収集し、肺の重量を測定し、肺組織サンプルを収集し、生物学的分析のために液体窒素で瞬間凍結させた。さらに、資格のある剖検要員によって完全な肉眼検査を行った。身体の外面、開口部、ならびに、頭蓋腔、胸腔および腹腔の内容物を調べた。形態、量、形状、色、稠度および重症度に関する用語集一式を使用して、病変を記述および記録した。
【0122】
生物学的分析
全身血液(K2EDTAからの血漿の形態)および肺組織を液体クロマトグラフィー−質量分析(LCMS)アッセイでアッセイして、時間の関数としてパクリタキセルの量を定量化した。簡潔に言うと、このアッセイでは、超高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析(UPLC−MS/MS)アッセイを利用してパクリタキセルを定量化する。血漿サンプルはタンパク質沈殿法により抽出し、分離は逆相クロマトグラフィーにより達成される。肺サンプルを4:1(水:肺組織)の比にて水で均質化した。次いで、ホモジネートに対し、LCMSでの分析の前に同様のタンパク質沈殿法を行った。マトリックスベースの検量線を使用して定量化を実施した。
【0123】
これらのデータに対しては薬物動態モデリングを実施しなかった。しかしながら、パクリタキセルがアッセイの感度限界(1ng/mL)を下回る濃度を使用して、主要なPK試験のサンプリング時点を定義した。
【0124】
結果
臨床観察および生存
全ての動物は指定された剖検時点まで生存し、体重が増加した。研究期間を通して異常な臨床所見は認められなかった。
【0125】
パクリタキセル粒子の曝露
エアロゾル濃度
表1は、曝露中に各GF/Aフィルターをサンプリングして測定した総エアロゾル濃度およびパクリタキセルエアロゾル濃度を示す。73.5μg/Lの吸入曝露平均パクリタキセルエアロゾル濃度は、82.65μg/Lの目標平均パクリタキセルエアロゾル濃度よりも約11%低かった。平均曝露エアロゾル濃度は、噴霧化吸入曝露に関して予想される目標エアロゾル濃度の±15%以内であった。
【表1】
【0126】
酸素および温度
記録された酸素および温度の範囲は、それぞれ19.7%〜20.9%および20.4℃〜20.8℃であった。
【0127】
粒子径
カスケードインパクターを使用して6.0mg/mLパクリタキセル粒子製剤エアロゾルの、MMAD(GSD)についての粒径分布は、2.0(2.2)μmと決定された。
【0128】
堆積量
パクリタキセルの平均エアロゾル濃度73.5μg/L、平均げっ歯類−1日目(無作為化)体重326g、想定堆積分率10%、および曝露時間63分に基づき、達成されたげっ歯類の平均堆積量は0.33mg/kgと決定された。達成された平均堆積量は、曝露平均エアロゾル濃度において予想される変動性(目標から±15%)により、0.37mg/kgの目標堆積量と比較して約11%少なかった。
【0129】
剖検
全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。剖検時に、いくつかの動物の肺にわずかな赤い変色が見られた。剖検時に他の異常な巨視的観察は認められなかった。個々および平均の肺重量、体重および比を決定した。平均終末体重(標準偏差)は346.26g(24.01)であった。平均肺重量(標準偏差)は1.60g(0.13)であった。臓器肺重量および肺重量:体重比は、吸入物質に対するあり得る毒性学的反応を評価するために使用される一般的なパラメータである。全体として、データは履歴データと一致しており、これら終点のいずれでも応答がなかったことを示している。
【0130】
生物学的分析
結果を以下の表2および
図1に要約する。血漿中の平均パクリタキセル濃度は、曝露後0.5時間で16.705ng/mLであったが、24時間の時点で徐々に減少し、その後の全ての時点で定量下限(1ng/mL)を下回った。肺組織の平均パクリタキセル濃度は、曝露後0.5時間で21940ng/gであり、168時間の時点までに419.6ng/gまで徐々に減少した。これは、最小限の全身曝露で肺にパクリタキセル粒子がかなり保持されていることを示している。
【表2】
【0131】
結論
16匹の雄Sprague Dawleyラットを、一度だけ鼻のみからの吸入によりパクリタキセル粒子製剤エアロゾル(0.37mg/kgの目標用量)に曝露した。2匹の動物(n=2)を、血液(血漿)および肺組織を収集するために、曝露から0.5、6、12、24、48、72、120および168時間後に安楽死させた。
【0132】
63分間の吸入曝露中の平均パクリタキセルエアロゾル濃度73.5μg/Lは、目標の平均パクリタキセルエアロゾル濃度82.65μg/Lよりも約11%低かった。平均曝露エアロゾル濃度は、噴霧化吸入曝露に関して予想される目標エアロゾル濃度の±15%以内であった。カスケードインパクターを使用して6.0mg/mLパクリタキセル粒子製剤エアロゾルの、MMAD(GSD)についての粒径分布は、2.0(2.2)μmと決定された。記録された酸素および温度の範囲は、それぞれ19.7%〜20.9%および20.4℃〜20.8℃であった。
【0133】
パクリタキセル堆積量は、パクリタキセルの平均エアロゾル濃度73.5μg/L、げっ歯類の平均体重326g、想定堆積分率10%および曝露時間63分に基づいて計算した。達成されたげっ歯類の平均堆積量は0.33mg/kgと決定された。予想される変動性(目標から±15%)により、目標の堆積量0.37mg/kgと比較して、達成された平均堆積量は約11%減少した。
【0134】
全ての動物は、予定された剖検時点まで生存した。剖検時に、数匹の動物の肺にわずかな赤い変色が見られた。剖検時に他の異常な巨視的観察は認められなかった。剖検で得られた体重と肺重量から、平均最終体重(標準偏差)は346.26g(24.01)であり、平均肺重量(標準偏差)は1.60g(0.13)であった。臓器肺重量および肺重量:体重比は、吸入物質に対するあり得る毒性学的反応を評価するために使用される一般的なパラメータである。全体として、データはこれらのエンドポイントのいずれでも応答がなかったことを示している。
【0135】
血漿中の平均パクリタキセル濃度は、曝露後0.5時間で16.705ng/mLであったが、その後24時間の時点で徐々に減少し、24時間後の全ての時点で定量下限を下回った。肺組織の平均パクリタキセル濃度は、曝露後0.5時間で21940ng/gであり、168時間の時点までに419.6ng/gまで徐々に減少した。これは、最小限の全身曝露で肺にパクリタキセル粒子がかなり保持されていることを示している。PK試験には、次のサンプリング時点が推奨される:曝露後、0.5(±10分)、6(±10分)、12(±10分)、24(±30分)、48(±30分)、72(±30分)、120(±30分)168(±30分)、240(±30分)、336(±30分)時間。
【0136】
実施例2:試験FY17−008B−パクリタキセル粒子エアロゾル吸入曝露試験
実施の概要
この作業の全体的な目的は、6.0mg/mLおよび20.0mg/mLのパクリタキセル粒子懸濁液製剤で、雄ラットに鼻のみの吸入曝露を行うことであった。ラット吸入曝露を、それぞれ65分間行った。
【0137】
6.0mg/mLおよび20.0mg/mLのパクリタキセル粒子懸濁液製剤を、スポンサーによる指示に従って調製した。2つのHospitak圧縮空気ジェットネブライザーを20psiで同時に使用して、パクリタキセル粒子製剤をげっ歯類吸入曝露チャンバー内にエアロゾル化した。各曝露中に、1.0±0.5L/分の流量で47mm GF/Aフィルターにサンプリングすることにより、動物呼吸ゾーンからエアロゾル濃度を測定した。2.0±0.1L/分の流量でマーサースタイルカスケードインパクターを使用して、動物呼吸ゾーンからエアロゾルをサンプリングすることにより、粒子径を決定した。フィルターを重量分析して総パクリタキセル粒子エアロゾル濃度を決定し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を介して各曝露のパクリタキセルエアロゾル濃度を決定した。吸入曝露中の酸素および温度を監視して記録した。
【0138】
平均総パクリタキセル粒子エアロゾル濃度およびパクリタキセルエアロゾル濃度は、6.0mg/mLパクリタキセル粒子製剤で行われた吸入曝露について、それぞれRSD 7.43%で0.25mg/L、およびRSD 10.23%で85.64μg/Lと決定した。カスケードインパクターを使用して測定された平均空気動力学的中央粒子径直(幾何学的標準偏差)は、6.0mg/mLパクリタキセル粒子製剤エアロゾルで1.8(2.0)μmであった。平均総パクリタキセル粒子エアロゾル濃度およびパクリタキセルエアロゾル濃度は、20.0mg/mLパクリタキセル粒子製剤で行われた吸入曝露について、それぞれRSD 10.95%で0.46mg/L、およびRSD 11.99%で262.27μg/Lと決定した。カスケードインパクターを使用して測定された平均空気動力学的中央粒子径(幾何学的標準偏差)は、20.0mg/mLパクリタキセル粒子製剤エアロゾルについて2.3(1.9)μmであった。
【0139】
平均パクリタキセル堆積量0.38mg/kgおよび1.18mg/kgは、それぞれ、6.0mg/mLおよび20.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤の65分間の曝露について、式1を使用して計算した。
【0140】
製剤化および吸入曝露
製剤の調製
材料
試験品
吸入曝露に使用した試験品を以下に示す。
パクリタキセル粒子
【表2-2】
【0141】
製剤化および吸入曝露
製剤の調製
6.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤を次のように調製した:簡潔には、パクリタキセル粒子(306mg)を含有するバイアルに5.0mLの1%ポリソルベート80を加えた。バイアルを激しく振とうして反転させ、バイアル内に存在する全ての粒子を確実に濡らした。振とう直後に、46mLの0.9%塩化ナトリウム溶液をバイアルに加え、バイアルを少なくとも1分間振とうして、十分な混合と懸濁液の適切な分散を確認した。
【0142】
6.0mg/mL製剤のための上記のパクリタキセル粒子製剤手順を使用して、20.0mg/mLパクリタキセル粒子製剤を調製した。ただし、6.0mg/mL製剤のために46mLを使用したことに代えて、10.3mLの0.9%塩化ナトリウム溶液をバイアルに加えた。
【0143】
得られた製剤は、エアロゾル化作業のためにネブライザーに入れる前に、バイアル内の空気/泡を減らすために、少なくとも5分間そのままにしておいた。6.0mg/mLの最終製剤を室温で保ち、再構成後2時間以内に噴霧化した。20.0mg/mLの最終製剤を室温に保ち、再構成後30分以内に噴霧化した。
【0144】
実験設計
30匹のSprague Dawleyラットを静脈内ABRAXANE(登録商標)(パクリタキセル:目標用量5.0mg/kg)の単回「臨床基準」用量に曝露し、30匹のSprague Dawleyラットを本明細書に開示したパクリタキセル粒子製剤に曝露し(目標用量0.37mg/kg)、そして30匹のSprague Dawleyラットを、パクリタキセル粒子製剤(目標用量1.0mg/kg)に一度だけ鼻のみからの吸入により曝露した。3匹の動物(n=2)を、血液(血漿)および肺組織を収集するために、曝露後0.5(±10分)、6(±10分)、12(±10分)、24(±30分)、48(±30分)、72(±30分)、120(±30分)、168(±30分)、240(±30分)および336(±30分)時間で安楽死させた。血漿および肺組織に対して非コンパートメント分析を実施して、各用量群に関する曝露後のパクリタキセルの検出可能な量の持続時間を特定した。
曝露システムのセットアップ/エアロゾル生成:実施例1と同様
エアロゾル濃度の監視:実施例1と同様
粒径分布:実施例1と同様
堆積量の計算:実施例1と同様
【0145】
結果
曝露結果
エアロゾル濃度および粒子径
鼻のみの曝露チャンバーの動物呼吸ゾーンから47mmのGF/Aフィルターを使用して、各パクリタキセル粒子製剤エアロゾル曝露中にわたってエアロゾル濃度を監視した。各曝露中に7個の47mm GF/Aフィルターをサンプリングした。それぞれの低用量群と高用量群で、FS−1からFS−6までのフィルターをそれぞれ10分間サンプリングし、FS−7フィルターを5分間サンプリングした。粒子径は、曝露チャンバーの動物呼吸ゾーンからマーサースタイルカスケードインパクターを使用して測定した。表3および4は、それぞれ低用量および高用量の曝露中にGF/Aフィルターをサンプリングして測定した総エアロゾル濃度およびパクリタキセルエアロゾル濃度を示す。
【表3】
【表4】
【0146】
粒子径(エアロゾルの液滴サイズ)分布は、カスケードインパクターを使用して、各パクリタキセル粒子製剤エアロゾルに関する、MMAD(空気動力学的直径に対する浮遊粒子質量の分布の中央値)(GSD;粒径分布の変動性を特性決定するためのMMAD測定に付随)によって決定した。6.0mg/mLおよび20.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤エアロゾルの場合、MMAD(GSD)はそれぞれ1.8(2.0)μmおよび2.3(1.9)μmと決定された。
図2および3は、それぞれ6.0mg/mLおよび20.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤エアロゾルの粒径分布を示す。
【0147】
堆積量
パクリタキセルの堆積量は、式1を使用して、低用量および高用量パクリタキセル粒子製剤曝露それぞれについてのパクリタキセルの平均エアロゾル濃度、平均ラット体重、想定堆積分率10%、および曝露時間65分に基づいて計算した。表5は、各曝露についての、平均パクリタキセルエアロゾル濃度、平均ラット体重、曝露時間、および堆積量を示す。達成されたげっ歯類の平均堆積量は、6.0mg/kgおよび20.0mg/kgのパクリタキセル粒子製剤曝露で、それぞれ0.38mg/kgおよび1.18mg/kgと決定された。
【表5】
【0148】
酸素および温度
酸素および温度は、パクリタキセル粒子製剤のエアロゾルへの曝露全体を通して監視した。記録された酸素および温度範囲は、6.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤への曝露について、それぞれ19.8%〜20.9%および20.7℃〜20.8℃であった。20.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤の曝露では、記録された酸素値は曝露全体を通して19.8%であり、温度範囲は20.7℃〜20.8℃であった。
【0150】
実施例3 ヌードラット同所性肺癌モデルにおける吸入パクリタキセル粒子製剤の有効性の評価−試験FY17−095
【0151】
実施の概要
−1日目に127匹のNIH−rnuヌードラットにX線を照射して免疫抑制を誘導した。0日目に、動物に気管内(IT)注入によりCalu3腫瘍細胞を投与した。動物は3週間の増殖期間を経た。3週目に、体重の層別化により、動物を5つの試験群に無作為化した。4週目から、群2の動物には、22、29および36日目に静脈内(IV)投与(5mg/kg)により、週1回、ABRAXANE(登録商標)を投与した。群3および4の動物には、それぞれ週1回(月曜日)、吸入(INH)用量のパクリタキセル粒子製剤を、低(0.5mg/kg)および高(1.0mg/kg)目標用量で投与した。群5および6の動物には、それぞれ週2回(月曜日および木曜日)、目標吸入用量のパクリタキセル粒子製剤を、低(0.50mg/kg)および高(1.0mg/kgまで)用量で投与した。群1の動物は、正常な腫瘍細胞増殖の対照として未処置のままにした。8週目に全ての動物を剖検した。
【0152】
全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。このモデルに関して、皮膚発疹および呼吸困難が臨床的に観察された。全ての群で、試験の過程全体にわたってほぼ同じ割合で体重が増加した。
【0153】
週1回の低用量パクリタキセル粒子製剤群と週2回の低用量パクリタキセル粒子製剤群の吸入曝露平均パクリタキセルエアロゾル濃度は、それぞれ270.51μg/Lと263.56μg/Lであった。週1回の高用量パクリタキセル粒子製剤群および週2回の高用量パクリタキセル粒子製剤群の吸入曝露平均パクリタキセルエアロゾル濃度は、それぞれ244.82μg/Lおよび245.76μg/Lであった。
【0154】
用量は、平均エアロゾルパクリタキセル濃度、最新の群平均体重、10%の推定堆積分率、および33(低用量)または65(高用量)分の曝露時間に基づいている。4週間の治療中、週1回の低用量パクリタキセル粒子製剤群および週2回の低用量パクリタキセル粒子製剤群についての、達成されたげっ歯類の平均堆積量は、それぞれ0.655mg/kgおよび0.640mg/kg(1.28mg/kg/週)であった。週1回の高用量パクリタキセル粒子製剤群および週2回の高用量パクリタキセル粒子製剤群についての、達成されたげっ歯類の平均堆積量は、それぞれ1.166mg/kgおよび1.176mg/kg(2.352mg/kg/週)であった。ABRAXANE(登録商標)のIV注射を受けた群では、22、29および36日目の平均用量は、それぞれ4.94、4.64および4.46mg/kgであった。
【0155】
予定された剖検で、各群からの大多数の動物は、肺に黄褐色の結節および/または肺の赤または黄褐色の斑状変色を有していた。他の単発的観察には、ある動物の腹部ヘルニアおよび別の動物の心膜結節が含まれていた。剖検時に他の異常な巨視的観察は認められなかった。
【0156】
ABRAXANE(登録商標)で処置した動物の肺重量では、肺:BW比および肺:脳重量比は、未処置の対照と比較して有意に低かった。週1回のパクリタキセル粒子製剤の高用量群は、ABRAXANE(登録商標)群と同等の体重であり、未処置の対照群と比較して肺の重量と肺:脳比が有意に低かった。
【0157】
組織学的には、全ての群における大多数の動物の肺には、腫瘍形成の何らかの徴候が含まれていた。腫瘍形成は、肺実質内にランダムに散在する膨張性の様々なサイズの小さな塊と、肺実質の最大75%まで、より小さな気道や血管を除去したそれより大きな膨張した癒着塊(coalescing masses)の存在を特徴としていた。より大きな塊は主に肺門領域に分布しているか、軸方向の気道に並んでおり、小さな塊は一般に末梢に位置していた。
【0158】
肺腫瘍塊の主要な形態学的細胞特性は、肺の腺癌の未分化パターンの存在からかなり分化したパターンまで様々であった。主要な腫瘍細胞タイプは、未分化腺癌の形態を示した。細胞は多形性で、大きく、退生で、淡色の両染性染色(pale amphophilic−staining)を有し、ムコイド小胞に似た微細な細胞質内液胞を有し、中等度〜顕著な核大小不同を示し、個別化されまたはシート状に増殖し、腺癌への分化に向けた明確な特徴を欠いていることが観察された。しかしながら、他の塊内で観察された、または前述の未分化塊内で増殖した細胞の形態的特徴は、より組織化され、明確な腺房分化を実証する高分化肺腺癌と一致していた。これらの両染性染色腫瘍細胞は、主に巣または腺パターンに配置され、肺胞中隔に結合していることが観察された。この腫瘍細胞集団では、有糸分裂像はめったに観察されなかった。これらの塊内であまり頻繁に観察されなかったのは、少量〜中程度の量の淡く好塩基性染色された細胞質、卵形体および可変胞核、ならびに中等度の核大小不同を伴う初期に出現する比較的小さな原始腫瘍細胞(Primitive Tumor Cells)の焦点領域であった。これらの原始腫瘍細胞は、ランダムにシート状に増殖していることが観察された。有糸分裂像およびアポトーシス小体の数の増加は、この好塩基性原始腫瘍細胞集団で最も頻繁に認められた。間質性線維症を伴う混合炎症細胞(主に好酸球、リンパ球、泡沫状マクロファージおよび偶発的(occasional)巨大細胞)浸潤を特徴とする炎症が一般的に観察された。重要な実質壊死がないのはまれであった。
【0159】
病理学者は、腫瘍細胞の漸進的な欠如から肺実質の残留線維化結合組織足場を伴う腫瘍細胞の完全な欠如を特徴とし、かつ、泡沫状マクロファージの浸潤を伴う個々の腫瘍塊の縁部のスカロッピングの存在が、腫瘍退縮の徴候であると考えた。
【0160】
陽性対照群1およびABRAXANE(登録商標)処置比較群2と比べて、腺癌腫瘤塊および原始腫瘍細胞集団の重症度の低下、ならびに腫瘍退縮の徴候を特徴とするパクリタキセル粒子製剤処置群(群3〜6)では肺腫瘍の全体的な負荷が減少した。他の治療関連の病変または所見は観察されなかった。吸入によりパクリタキセル粒子製剤を投与された動物の肺では、広範な単核細胞浸潤が観察された。使用したモデルはT細胞が欠損しているため、細胞はB細胞またはNK細胞である可能性が高い。局所的な、そしておそらくはより高濃度でのパクリタキセル粒子への腫瘍の曝露が腫瘍に影響を与え、環境の変化につながり、単核細胞の浸潤物が肺に導入されるものと仮定されている。
【0161】
目的
この試験の目的は、肺癌の同所性モデルにおける腫瘍負荷の軽減において、吸入パクリタキセル粒子製剤の静脈内投与の、ABRAXANE(登録商標)の臨床基準用量と比較した有効性を評価することであった。
【0162】
材料および方法
試験系
種/株:NIH−rnuヌードラット
試験開始時の動物の年齢:3〜5週齢
試験開始時の体重範囲:およそ150〜200g
試験ラット数/性別:雄127匹(試験動物120匹および予備7匹)
供給源:Envigo
識別:パーマネントマーカーによる尾マーキング
【0163】
ABRAXANE(登録商標)製剤
IV製剤に使用する臨床基準材料は、製剤ABRAXANE(登録商標)であった。製剤は、投与当日に生理食塩水で5.0mg/mLに再構成され、製造元の指示に従って保存した。
【0164】
パクリタキセル粒子製剤
曝露用の20.0mg/mlパクリタキセル粒子製剤は、スポンサーの推奨事項に従って調製した。具体的には、パクリタキセル粒子を1%ポリソルベート80で再構成した。全ての粒子が濡れるまでバイアルを手で振とうした。追加の注射用0.9%塩化ナトリウムを(所望の濃度目標まで)添加し、バイアルをさらに1分間手で振とうした。大きな塊が見えなくなり、懸濁液が適切に分散するまで振とうを続けた。
【0165】
得られた製剤は、エアロゾル化作業のためにネブライザーに入れる前に、バイアル内の空気/泡を減らすために、少なくとも5分間そのままにしておいた。最終製剤を室温に保ち、再構成後2時間以内に噴霧化した。最終の20.0mg/mLを室温で保ち、再構成後30(+5)分以内に噴霧化した。
【0166】
実験設計
試験には127匹の動物を使用した。X線照射および腫瘍細胞の投与の前に、7匹の動物を予備として指定した(予備動物には照射も細胞株点滴も行わなかった)。−1日目に、全ての試験動物にX線を照射して免疫抑制を誘導した。0日目に、動物に気管内(IT)注入によりCalu3腫瘍細胞を投与した。動物は3週間の増殖期間を経た。3週目に、体重の層別化により、動物を以下の表6に概説する群に無作為化した。4週目から、群2の動物は、静脈内(IV)投与(5mg/kg)により、週1回、目標用量のABRAXANE(登録商標)を与えられた。群3および4の動物には、それぞれ週1回(月曜日)、吸入(INH)目標用量のパクリタキセル粒子製剤を、低(0.5mg/kg)および高(1.0mg/kg)用量で投与した。群5および6の動物には、それぞれ週2回(月曜日および木曜日)、吸入目標用量のパクリタキセル粒子製剤を、低(0.50mg/kg)および高(1.0mg/kg)用量で投与した。群1の動物は、正常な腫瘍細胞増殖の対照として未処置のままにした。8週目に全ての動物を剖検した。
【表6】
【0167】
飼畜、隔離、および試験への割り当て
隔離後、全ての動物の体重を測定し、体重に基づいて無作為化して7匹のスペアを除いた。1週目から3週目までは、ケージカード(LC番号)と尾のマーキングによって動物を識別した。
【0168】
治療開始する3週前に、動物の体重を測定し、体重の層別化により上記の群に無作為化し、試験IDを割り当てた。この時点からは、動物をケージカードおよびシャーピー(sharpie)尾マーキングによって識別した。
【0169】
免疫抑制および照射
−1日目、動物は、250kVp、15mAおよび線源から物体までの距離100cmに設定した約500ラドでの全身X線曝露(Phillips RT 250 X−ray Therapy Unit,、Phillips Medical Systems(コネチカット州、シェルトン))を受けた。動物を、パイのスライス当たり2〜3匹としてパイチャンバーユニットに入れた。照射プロセスには約10〜15分かかった。
【0170】
腫瘍細胞の移植
0日目に、動物は、ITにより投与した腫瘍細胞(Calu3)を受けた。簡潔には、誘導チャンバー内で3〜5%イソフルランで麻酔した後、傾斜した吊り下げ式点滴プラットフォームに上切歯を引っ掛けて動物を載置した。スタイレットがちょうど喉頭を過ぎて気管に挿入されている間、動物の舌を軽く固定した。EDTA懸濁液中の細胞の容量(目標投与量:500μL;濃度:0.5mLあたりおよそ20x106)を気管内注入により肺に送達した。注入後、動物の呼吸と動きを注意深く監視した。腫瘍細胞の移植後、動物は、腫瘍細胞の生着と肺癌の発生を可能にするために、治療のおよそ3週間前に腫瘍増殖期間を経た。
【0171】
Calu3の増殖および調製
Calu3細胞を、細胞培養フラスコ内にて5%CO2で37℃にて増殖させた。細胞を、80%コンフルエンスになるまで、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640培地で増殖させた。細胞は点滴の当日まで維持した。点滴の前に、PBSで洗浄することにより細胞を回収し、トリプシンを添加してフラスコから細胞を除去した。10%FBSを含むRPMI 1640培地で細胞を中和した。その後、細胞を100xgで5分間遠心分離し、培地を除去し、細胞を450μLの無血清RPMIで2,000万個細胞の濃度に再懸濁した。点滴の前に、50μLの70μM EDTAを細胞懸濁液に添加して、ラット当たりの総IT投与量を500μLにした。
【0172】
体重および毎日の観察
無作為化のために、3週目は週1回、4週目から試験の終わりまでは週2回、および剖検時に体重を収集した。
【0173】
試験中の各動物を、異常、罹病率または死亡のいかなる臨床的兆候について1日2回観察した。技術者は、投薬および体重のセッション中に動物を観察した。
【0174】
ABRAXANE(登録商標)投与IV−尾静脈注射
ABRAXANE(登録商標)(5mg/mL、最大投与量250μL)を、22、29および36日目にIV尾静脈注射により群2の動物に投与した。
【0175】
パクリタキセル粒子製剤の投与−鼻のみのエアロゾル曝露
馴化
最大70分間、鼻のみの曝露チューブに動物を馴化させた。曝露前の3日間で3つの馴化セッションを行った。最初のセッションは30分、2番目のセッションは60分、3番目のセッションは70分続けた。一時的な苦痛以上のものを経験しないことを保証するために、順応期間中にわたって、かつ、曝露中、それらを綿密に監視した。
【0176】
曝露システム
エアロゾルは、20psiのネブライザー圧力で、
図7に示すように、2つの圧縮空気ジェットHospitakネブライザーで生成した。20.0mg/mLのパクリタキセル粒子懸濁液製剤を、低用量および高用量の曝露に使用した。エアロゾルを、送達ラインを介して32ポートの鼻のみの曝露チャンバーに送った。げっ歯類の吸入曝露は33または65分間行った。パクリタキセル粒子懸濁液エアロゾルを、2つのHospitak圧縮空気ジェットネブライザーのセット(最大40(±1)分間使用)で生成し、その後、残りの曝露時間、2つのHospitakネブライザーの第二のセットと交換した。各吸入曝露全体にわたって酸素および温度を監視して記録した。
【0177】
濃度の監視
エアロゾル濃度の監視は、事前に計量されたGF/A 47mmフィルター上にエアロゾルを収集することにより行った。フィルターは、各吸入曝露全体にわたって鼻のみの曝露チャンバーの動物呼吸ゾーンからサンプリングした。GF/Aフィルターを通過するエアロゾルのサンプリング流量は、1.0±0.5L/分に維持した。フィルターは、最後のフィルターを除き、各露出期間全体にわたって10分ごとに収集した。33分続く低容量曝露(群3および5)では、13分後に最終フィルターを収集し、65分続く高用量曝露(群4および6)では、15分後に最終フィルターを収集した。サンプルの収集後、フィルターの重量を測定して、曝露システム内の総エアロゾル濃度を決定した。
【0178】
計量後、各フィルターを7mLガラスバイアルに入れた。ガラスバイアル内のフィルターを抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析して、フィルター上に収集されたパクリタキセルの量を定量化した。エアロゾルの総量と収集されたパクリタキセルエアロゾルをフィルターを通過する総空気流で除算することにより、各フィルターの総エアロゾル濃度およびパクリタキセルエアロゾル濃度を計算した。平均パクリタキセルエアロゾル濃度を使用して、以下の章「用量の決定」に示す式1を使用して、げっ歯類の肺に対するパクリタキセルの達成された平均堆積量を計算した。
【0179】
用量の決定
堆積量を、式1を使用して計算した。この計算では、ラットの平均群体重とともに、曝露から測定した平均エアロゾル濃度を使用した。このようにして、ラットの肺に堆積したパクリタキセルの推定量を、測定したパクリタキセルエアロゾル濃度を使用して計算した。
【数2】
式中、
堆積量=(DD)μg/kg
2毎分呼吸量(RMV)=0.608 x BW0.852
エアロゾル曝露濃度(AC)=パクリタキセルエアロゾル濃度(μg/L)
堆積分率(DF)=想定堆積分率10%
BW=試験中の動物の平均体重(無作為化時、−1日目)(kg)
【0180】
安楽死および剖検
予定された剖検で、過剰用量のバルビツール酸塩系鎮静剤の腹腔内注射により動物を安楽死させた。
【0181】
血液および組織の収集
全ての剖検について、最終体重および脳重量を収集した。予定された安楽死のために、(血漿用の)血液を心臓穿刺によりK2EDTAチューブに収集した。肺を摘出し、重量を測定した。腫瘍、気管気管支リンパ節を含む肺組織の切片を、あり得る今後の分析のために液体窒素で凍結した。残りの肺を、あり得る組織病理のために固定した。
【0182】
組織病理
固定した左肺葉を「パン(bread loaf)」の方法でトリミングし、交互の切片を2つのカセットに入れて、それぞれ左肺の3つの代表的な切片を含む2つのスライドを得た。組織を常套的に処理し、パラフィン包埋し、約4μmの切片とし、取り付けて、顕微鏡検査のためにヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色した。所見を、主観的、半定量的に評価した。
【0183】
縦方向にトリミングされた、試験中の120匹の処理されたヌードラットのうち60匹から得られた肺の切片(1〜4/動物)を、光学顕微鏡評価のためにH&Eステンドグラススライドに加工した。
【0184】
この検査中、顕微鏡所見を記録し、電子病理報告システム(PDS−Ascentos−1.2.0、V.1.2)に転送した。このシステムは、肺負荷特性データの発生率および重症度をまとめ、結果を表にし、個々の動物データを生成した。60匹のヌードラットの肺を組織学的に検査した:群1[1001−1010]、群2[2001−2010]、群3[3001−3010]、群4[4001−4010]、群5[5001−5010]、群6[6001−6010])。これらの肺の腫瘍量のレベルを評価するために、肺を組織病理学的検査中に評価し、採点した。各累積肺負荷特性診断のために:1)腺癌(未分化および分化)、2)原始腫瘍細胞(低分化多形細胞)および3)腫瘍退縮について、次のように提供される肺組織全体の関与率(%)を示す4点評価尺度を使用して、肺を半定量的に評価した:0=徴候なし、1=最小(関与する肺切片の総面積の約1〜25%)、2=軽度(関与する肺切片の総面積の約25〜50%)、3=中程度(関与する肺切片の総面積の約50〜75%)、および4=顕著(関与する肺切片の総面積の約75〜100%)。
【0185】
組織形態計測
組織形態計測分析は、各群の最初の10匹の動物の固定した左肺葉を使用して実施した。形態計測(「パンスライス」)スタイルのトリムを使用して、組織をトリミングした。簡潔に言うと、トリミングは肺の頭蓋端から2〜4mmのランダムなポイントから始めた。各肺切片は約4mmの厚さに切断した。奇数番号の切片は尾側を下にしてカセット1に配置し、偶数番号の切片はカセット2に配置した。次に、組織切片を処理し、パラフィン包埋し、4μmmの切片とし、検査のためにヘマトキシリンとエオシン(HE)で染色した。両方のスライド(奇数および偶数のスライス)を使用して、動物当たりの平均腫瘍分率を決定した。
【0186】
Lovelace Biomedicalによる指定動物から得られたヘマトキシリンおよびエオシン(HE)で染色した肺組織の形態計測分析を実施した。スライド全体(左肺全体の横断切片を含む、動物1匹当たり2枚)を、Hamamatsu Nanozoomerを使用してスキャンした。スキャンは、Visiopharm Integrator Systemソフトウェア(VIS、バージョン2017.2.5.3857)で分析した。GraphPad Prism 5(バージョン5.04)で腫瘍面積分率の統計分析を実施した。
【0187】
各スライドに存在する腫瘍面積の量を定量化するように設計されたコンピューター化された画像定量化を、スライド全体のスキャンを使用して、全ての左肺組織で実行した。肺転移面積を定量化するVisiopharm Applicationを使用して、細胞密度、染色強度、サイズおよび染色強度に基づいて腫瘍細胞を正常肺組織と区別した。単純なH&E染色に基づくこの定量は完全ではないことに留意されたい(つまり、腫瘍組織、壊死性腫瘍および生存可能な腫瘍組織のタイプを完全に識別することはできず、一部の正常な構造が腫瘍として含まれる場合がある)。このプロセスをH&E部分に適用する価値は、それが腫瘍の定量化への公平なアプローチであるということである。肺全体の面積を決定し、次いで、転移として特定された構造が占める面積を、総面積の割合として表す。肺外構造が除外され、肺全体が含まれることを確認するために分析される領域の微調整は、手動で実行することができる。他の手動操作は、全ての群で一貫性を確保し、偏る可能性を排除するために回避される。可能であれば、腫瘍組織のみを識別するための特定の免疫組織化学的染色を開発すると、この分析の特異性が高まる。
【0188】
採血および処理
剖検で収集した血液を、最低1300gを4℃で10分間遠心分離することにより血漿に処理した。血漿サンプルは、分析またはスポンサーへの出荷まで−70〜−90℃で保存した。
【0189】
結果
臨床観察、生存および体重
全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。このモデルに関連する臨床的観察には、皮膚発疹および呼吸困難が含まれていた。1匹の動物に上腹部ヘルニアが認められた。獣医の推奨に従って、動物を、吸入曝露を受けない群1(未処置対照)に切り替えたため、曝露チューブの拘束は必要なかった。
【0190】
図8は、試験期間中の平均体重を示している。
図9は、0日目からの平均体重の変化率を示している。全ての群で、試験の過程を通じてほぼ同じ割合で体重が増加した。
【0191】
ABRAXANE(登録商標)IV尾静脈注射
ABRAXANE(登録商標)のIV注射を受けた群では、22、29および36日目の平均用量は、それぞれ4.94、4.64および4.46mg/kgであった。
【0192】
パクリタキセル粒子の曝露
エアロゾル濃度および堆積量
総エアロゾル濃度およびパクリタキセルエアロゾル濃度は、各曝露中にGF/Aフィルターのサンプリングにより測定した。週1回の低用量パクリタキセル粒子製剤群と週2回の低用量パクリタキセル粒子製剤群の吸入曝露平均パクリタキセルエアロゾル濃度は、それぞれ270.51μg/Lと263.56μg/Lであった。週1回の高用量パクリタキセル粒子製剤群および週2回の高用量パクリタキセル粒子製剤群の吸入曝露平均パクリタキセルエアロゾル濃度は、それぞれ244.82μg/Lおよび245.76μg/Lであった。酸素および温度レベルは、各曝露全体にわたって監視した。
【0193】
用量は、平均エアロゾルパクリタキセル濃度、最新の群平均体重、10%の推定堆積分率、および33または65分の曝露時間に基づいている。4週間の治療中、週1回の低用量パクリタキセル粒子製剤群および週2回の低用量パクリタキセル粒子製剤群についての、達成されたげっ歯類の平均堆積量は、それぞれ0.655mg/kgおよび0.640mg/kg(1.28mg/kg/週)であった。
【0194】
週1回の高用量パクリタキセル粒子製剤群および週2回の高用量パクリタキセル粒子製剤群についての、達成されたげっ歯類の平均蓄積量は、それぞれ1.166mg/kgおよび1.176mg/kg(2.352mg/kg/週)であった。
【0195】
粒子径(MMAD&GSD)
粒径分布は、カスケードインパクターを使用して各パクリタキセル粒子製剤エアロゾルの空気動力学的中央粒子径(MMAD)および幾何標準偏差(GSD)に関して決定した。20.0mg/mLパクリタキセル粒子製剤エアロゾルの場合、平均MMADは2.01μm、GSDは1.87であると決定された。
【0196】
剖検所見および臓器重量
全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。剖検で、各群からの動物は、肺に黄褐色の結節および/または肺の赤または黄褐色の斑状変色を有していた。他の単発的観察には、ある動物の腹部ヘルニアおよび別の動物の心膜結節が含まれていた。剖検時に他の異常な巨視的観察は認められなかった。1匹の動物には、剖検時に目に見える腫瘍(結節)は認められなかった。
【0197】
個々の動物の臓器重量データを
図10、
図11および
図12にグラフで示す。ABRAXANE(登録商標)で処置した動物の肺重量では、肺:BW比および肺:脳重量比は、未処置の対照と比較して有意に低かった。週1回のパクリタキセル粒子製剤の高用量群は、ABRAXANE(登録商標)群と同等の体重であり、未処置の対照群と比較して肺の重量と肺:脳比が有意に低かった。週1回の低用量パクリタキセル粒子製剤群、週2回の低用量および週2回の高用量パクリタキセル粒子製剤群は、一般的に同様の平均肺重量および比を有していた。
【0198】
形態計測
全ての処置群は、対照群と比較して、平均肺腫瘍分率の減少を示した。しかしながら、群間に統計的に有意な差はなかった。断面肺スライドで検査した腫瘍面積分率に関して、IV ABRAXANE(登録商標)治療と任意のパクリタキセル粒子製剤治療レジメンのいずれかとの間に統計的に有意な差はなかった。このモデルに特有のものであるように、全ての群の動物間に腫瘍分率の広い変動があった。これらのデータは、最終解釈のための肺:脳重量比および標準的な組織病理などの、このモデルにおける肺腫瘍負荷の他の指標と組み合わせて考慮されるべきである。形態計測分析および組織病理学的検査は左肺葉の固定肺組織で行われ、肺組織に関する他の分析は右肺葉の凍結組織で行われる可能性があることに留意することが重要である。平均腫瘍面積は、
図13および
図14に示す。
【0199】
病理学結果
新生細胞の特定された集団のスライド検査の結果として、病理学者は以下を決定した:(1) 未処置の対照群1(2.1)と比較して、全ての処置群(群2(1.7)、群、3(1.8)、群4(1.7)、群5(1.6)および群6(1.6))で腺癌の全体的な肺腫瘍負荷(未分化および分化細胞)の重症度にわずかな減少があった。(2)対応する対照群1(0.9)および群2(1.0)および3と比較して、群3(0.3)、群4(0.3)、群5(0.2)および群6(0.2)では、重症度の低下によって明らかな原始腫瘍細胞集団の減少があった。3)対応する対照群1(0.0)および群2(0.1)と比較して、群3(0.6)、群4(1.0)、群5(0.8)および群6(1.0)では、腫瘍退縮が存在した。肺負荷特性データの発生率および重症度を表7および
図15にまとめる。スライドの顕微鏡写真を
図16〜50に示す。
【表7】
【0200】
図16〜50の顕微鏡写真の組織学的概要
一般的な観察:
対照:細胞が増殖し、免疫細胞の浸潤がほとんど〜全くない、広範なレベルの生存腫瘍。
ABRAXANE(登録商標) IV:腫瘍退縮と共に一部のリンパ球反応を伴う、多くの生存しているように見える腫瘍塊。
パクリタキセル粒子製剤、週1回、高:生存腫瘍細胞がほとんど残っていない肺から腫瘍が排除されている。残っている塊は免疫細胞浸潤物と線維化のようである。
パクリタキセル粒子製剤、週2回、低:マクロファージや単核細胞などの免疫細胞浸潤物に囲まれたいくつかの残存腫瘍結節。
パクリタキセル粒子製剤、週2回、高:腫瘍に代わる免疫浸潤物および間質性線維症を伴う腫瘍結節はほとんどない。
【0201】
吸入によりパクリタキセル粒子製剤を投与された動物の肺では、広範な単核殺腫瘍細胞浸潤が観察された。使用されるモデルはT細胞が欠損しているため、細胞はB細胞またはNK細胞、あるいはその両方である可能性がある。B細胞は抗体の産生を担い、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性を介して腫瘍細胞の殺傷に関与することができる(抗体はFc受容体を発現する細胞に結合し、これらの細胞の殺傷能力を高める)。NK細胞は、腫瘍細胞の殺傷に重要な先天性リンパ系細胞である。腫瘍のある患者では、NK細胞の活性が低下し、腫瘍の増殖が可能となる。T細胞に加えて、NK細胞はいくつかのチェックポイント阻害剤の標的であり、それらの活性を増加させる。
【0202】
トリガー信号または阻害信号のいずれかを送達できる様々な表面受容体を使用することにより、NK細胞は環境内の細胞を監視して、細胞が異常(腫瘍またはウイルス感染している)であり、細胞毒性によって排除されるべきかどうかを確認する。
【0203】
NK細胞の細胞毒性および走化性は、腫瘍細胞およびそれらの副産物を含む多くの病理学的プロセスにより修正可能である。特定の信号に応じて、それらの機能は増強または強化される。様々なToll様受容体(TLR)を使用することにより、いくつかの病原体関連分子パターン(PAMP)に対応して、NK細胞は、サイトカイン産生および/または細胞溶解活性を高めることができる。IL−2、IL−15、IL−12、IL−18およびIFNα/βなどのサイトカインもNK細胞の活性を修正することができる。NK細胞は、様々な腫瘍細胞標的を殺傷することができる細胞溶解エフェクターのみの単純な細胞ではなく、むしろそれらは多様な環境の状況でそれらの活動を微調整できる不均一な集団を表す。
【0204】
パクリタキセル粒子製剤で治療した動物の肺では腫瘍負荷が著しく減少し、ABRAXANE(登録商標)IVの場合よりも低いようである。したがって、パクリタキセル粒子製剤の形態でのパクリタキセルの局所投与は、更なる効力を付与する。これは、長期にわたる化学療法へのより長い曝露と腫瘍部位への活発な細胞浸潤の両方による可能性が高い。この後者の反応は、投与密度(実際の用量および投与頻度)に依存しているようであった。
【0205】
特定の顕微鏡写真の観察:
図16:被検体1006(対照)腺癌−3、原始−1、退縮−0。低倍率(2倍)。肺胞腔内または肺胞中隔の内側にある未分化で、多形性で、大きな退生腫瘍細胞の一般的な分布を示す。細胞の大部分は腺癌の特徴を持たず、連続する腫瘍のシートとして出現する。多くの細胞は好塩基性染色細胞質を有するが、他の細胞は大きく、退生であり、淡色の両染性染色を含む。肺胞マクロファージの既存の集団の存在と腫瘍退縮の欠如に留意されたい。
【0206】
図30:被検体2003(IV ABRAXANE(登録商標))腺癌−1、原始−1、退縮−1。低倍率(4倍)。主に末梢部にある腫瘍塊の一般的な分布、ならびに肺胞腔を充填する複数の小さな膨張性腫瘍塊を示す。腫瘍細胞は多形性で、大きく、退性で、淡色の両染性染色を有し、腺癌の未分化パターンから分化パターンまで様々である。腫瘍退縮の徴候は腫瘤の周辺に存在し、主にマクロファージの浸潤を特徴とする。
【0207】
図36:被検体2010(IV ABRAXANE(登録商標))腺癌−3、原始−1、退縮−0。低倍率(2倍)。大部分の肺胞腔を充填する大きな膨張性腫瘍塊の一般的な分布、ならびに末梢部にある新生細胞を示す。ほとんどの腫瘍細胞は、主に未分化で、多形性で、大きく、退生で、淡色の両染性染色を有する。原始細胞はより小さく卵形であり、可変性の小胞核を有する好塩基性染色細胞質をより多く有し、中等度〜顕著な核大小不同を有する。炎症性細胞浸潤は、主に好中球およびマクロファージである。この画像は、腫瘍退縮がないことを示している。
【0208】
図39:被検体4009(IHパクリタキセル粒子製剤、1×/週、高)腺癌−0、原始−0、退縮−4。低倍率(2倍)。以前に存在していた腫瘍塊の一般的な分布を示す。線維性結合組織、中心コラーゲン間質および線維細胞の複数の小さな領域の存在が末梢肺胞腔に見られ、肥厚した肺胞中隔が腫瘍退縮の徴候を裏付けている。さらに、肺胞腔は通常、腫瘍退縮の更なる徴候とともに、マクロファージおよびリンパ球の浸潤で充填されている。
【0209】
図42:被検体5010(IHパクリタキセル粒子製剤、2×/週、低)腺癌−1、原始−0、退縮−3。低倍率(2倍)。以前に存在していた腫瘍塊の一般的な分布を示す。退縮塊は可変的に小さく、ランダムに分布している。線維性結合組織が肺胞腔を充填/置換するのが見られ、退縮している腺癌の病巣を示唆している。急性壊死、線維性結合足場、マクロファージの混合細胞浸潤、上皮内ならびに間質周辺の巨大細胞およびリンパ球は、腫瘍退縮の兆候である。
【0210】
図46:被検体6005(IHパクリタキセル粒子製剤、2×/週、高)腺癌−1、原始−0、退縮−4。低倍率(2倍)。肺胞腔を充填/置換する線維性結合組織の複数の小さな領域に以前に存在した腫瘍塊の一般的な分布を示し、腺癌細胞の以前の浸潤物の病巣を示唆している。腫瘍退縮は、以前に存在していた腫瘍塊の線維化、肺胞腔を充填/置換する末梢の中心コラーゲン間質コアおよび線維性結合組織、中隔の肥厚、ならびにリンパ球およびマクロファージが浸潤した肺胞腔を充填する線維細胞の存在によって証明される。
【0211】
結論
−1日目に127匹のNIH−rnuヌードラットにX線を照射して免疫抑制を誘導した。0日目に、動物に気管内(IT)注入によりCalu3腫瘍細胞を投与した。動物は3週間の増殖期間を経た。3週目に、体重の層別化により、動物を群に無作為化した。4週目から、群2の動物には、22、29および36日目に静脈内(IV)投与(5mg/kg)により、週1回、ABRAXANE(登録商標)を投与した。群3および4の動物には、それぞれ週1回(月曜日)、吸入(INH)用量のパクリタキセル粒子製剤を、低い(0.5mg/kg)および高い(1.0mg/kg)目標用量で投与した。群5および6の動物には、それぞれ週2回(月曜日および木曜日)、目標吸入用量のパクリタキセル粒子製剤を、低(0.50mg/kg)および高(1.0mg/kg)用量で投与した。群1の動物は、正常な腫瘍細胞増殖の対照として未処置のままにした。8週目に全ての動物を剖検した。
【0212】
全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。このモデルに関連する臨床的観察には、皮膚発疹、呼吸困難が含まれていた。全ての群で、試験の過程を通してほぼ同じ割合で体重が増加した。
【0213】
週1回の低用量パクリタキセル粒子製剤群と週2回の低用量パクリタキセル粒子製剤群の吸入曝露平均パクリタキセルエアロゾル濃度は、それぞれ270.51μg/Lと263.56μg/Lであった。週1回の高用量パクリタキセル粒子製剤群および週2回の高用量パクリタキセル粒子製剤群の吸入曝露平均パクリタキセルエアロゾル濃度は、それぞれ244.82μg/Lおよび245.76μg/Lであった。
【0214】
用量は、平均エアロゾルパクリタキセル濃度、最新の群平均体重、10%の推定堆積割合、および33または65分の曝露時間に基づいている。4週間の治療中、週1回の低用量パクリタキセル粒子製剤群および週2回の低用量パクリタキセル粒子製剤群についての、達成されたげっ歯類の平均堆積量は、それぞれ0.655mg/kgおよび0.640mg/kg(1.28mg/kg/週)であった。週1回の高用量パクリタキセル粒子製剤群および週2回の高用量パクリタキセル粒子製剤群についての、達成されたげっ歯類の平均堆積量は、それぞれ1.166mg/kgおよび1.176mg/kg(2.352mg/kg/週)であった。ABRAXANE(登録商標)のIV注射を受けた群では、22、29および36日目の平均用量は、それぞれ4.94、4.64および4.46mg/kgであった。
【0215】
予定された剖検で、各群からの大多数の動物は、肺に黄褐色の結節および/または肺の赤または黄褐色の斑状変色を有していた。他の単発的観察には、ある動物の腹部ヘルニアおよび別の動物の心膜結節が含まれていた。剖検時に他の異常な巨視的観察は認められなかった。
【0216】
ABRAXANE(登録商標)で処置した動物の肺重量では、肺:BW比および肺:脳重量比は、未処置の対照と比較して有意に低かった。週1回のパクリタキセル粒子製剤の高用量群は、ABRAXANE(登録商標)群と同等の体重であり、未処置の対照群と比較して肺の重量と肺:脳比が有意に低かった。
【0217】
陽性対照群1およびABRAXANE(登録商標)比較群2と比べて、明らかな有害事象を伴わない肺/脳重量比の低下および全体的な肺腫瘍負荷の低下により測定される治療効果があった。吸入パクリタキセル粒子製剤で処置した肺腫瘍負荷の組織学的分析は、腫瘍塊の減少、原始腫瘍細胞集団の減少、および腫瘍退縮の増加を示した。吸入によりパクリタキセル粒子製剤を投与された動物の肺では、広範な単核細胞浸潤が観察された。使用されるモデルはT細胞が欠損しているため、細胞はB細胞またはNK細胞である可能性がある。局所的な、そしておそらくはより高濃度でのパクリタキセル粒子への腫瘍の曝露が腫瘍に影響を与え、環境の変化につながり、単核細胞の浸潤物が肺に導入されるものと仮定されている。
【0218】
実施例4:Study FY 17−008B−パクリタキセル粒子の薬物動態試験
実施の概要
90匹の雄Sprague Dawleyラットを、静脈内(IV)ボーラス注射により「臨床基準」用量のパクリタキセルであるABRAXANE(登録商標)(注射懸濁液用のパクリタキセルタンパク質結合粒子、別名nab−パクリタキセル)に曝露するか、または一度だけ鼻のみからの吸入によりパクリタキセル粒子製剤(目標用量0.37または1.0mg/kg)に曝露した。3匹の動物(n=3)を、血液(血漿)および肺組織を収集するために、曝露後0.5〜336時間の10時点で安楽死させた。血漿および肺組織に対して非コンパートメント分析(NCA)を実施して、各用量群に関する曝露後のパクリタキセルの検出可能な量の持続時間を特定した。全ての群から336時間の時点に指定された動物の右肺を液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)分析のために収集し、一方、左肺には10%中性緩衝ホルマリン(NBF)を灌流し、あり得る組織病理のために保持した。比較組織病理を可能にするために、336時間の時点で3匹の予備動物(ナイーブ対照)を安楽死させ、同じ方法で肺収集を行った。他の全ての時点に指定された動物は、LCMS分析のために全ての肺を個別に凍結した。
【0219】
低用量および高用量パクリタキセル粒子製剤群の吸入曝露平均パクリタキセルエアロゾル濃度は、それぞれ85.64μg/Lおよび262.27μg/Lであった。平均曝露エアロゾル濃度は、噴霧化吸入曝露に関して予想される目標エアロゾル濃度の±15%以内であった。カスケードインパクターを使用して各パクリタキセル粒子製剤エアロゾルの、MMAD(GSD)についての粒径分布を決定した。6.0mg/mLおよび20.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤エアロゾルの場合、MMAD(GSD)はそれぞれ1.8(2.0)μmおよび2.3(1.9)μmと決定された。
【0220】
パクリタキセル堆積低用量は、パクリタキセルの平均エアロゾル濃度85.64μg/L、0日目の平均群体重420.4g、想定堆積分率10%、および曝露時間65分に基づいて計算した。低用量パクリタキセル粒子製剤群の、達成されたげっ歯類の平均堆積量は0.38mg/kgと決定された。高用量パクリタキセル粒子製剤群の場合、パクリタキセルの平均エアロゾル濃度262.27μg/L、0日目の群平均体重420.5g、想定堆積分率10%、および曝露時間65分であり、達成されたげっ歯類の平均堆積量は1.18mg/kgと決定された。記録された酸素および温度範囲は、6.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤への曝露について、それぞれ19.8%〜20.9%および20.7℃〜20.8℃であった。20.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤の曝露では、記録された酸素値は曝露全体を通して19.8%であり、温度範囲は20.7℃〜20.8℃であった。
【0221】
ABRAXANE(登録商標)のIV注射を受けた群では、1日目の体重は386.1〜472.8gの範囲であった。これにより、ABRAXANE(登録商標)の用量は2.6〜3.2mg/kgであり、平均群用量は2.9mg/kgであった。
【0222】
全ての群で、試験の過程を通して体重が増加した。研究期間を通して異常な臨床所見は認められなかった。全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。全ての動物を、各時点を対象とした期間内で安楽死させた。
【0223】
剖検で、各群の動物の約半数で、肺に最小限から軽度の黄褐色の変色が見られた。このような観察は、吸入曝露に関連していることが多い。他の一時的な観察には、心臓の拡大(動物#2016)および気管気管支リンパ節の拡大が含まれていた。剖検時に他の異常な巨視的観察は認められなかった。組織病理は、この試験の条件下で、試験および参照品で処置されたラットの肺および気管が正常範囲内であり、ナイーブラットの肺および気管と区別できないことを示した。投与から336時間後の屠殺時に、肺に堆積した外因性物質に対する生理学的に正常な反応として吸入試験で一般的なマクロファージの蓄積は、この試験で調べた治療動物の肺切片内では見られなかった。
【0224】
NCAは、曝露(濃度対時間曲線下面積[AUC])、最大濃度までの時間(Tmax)、最大濃度(Cmax)、および可能であれば見かけの最終半減期(T1/2)を定量化するように設計されていた。
【0225】
新規パクリタキセル粒子製剤の仮説は、製剤により肺組織内でのパクリタキセルの保持が増加し、全身曝露が減少するというものであった。全身血漿内の半減期は、試験した製剤/用量では変化せず、肺組織内の半減期は、吸入により送達されたパクリタキセル粒子製剤で増加した。吸入によるパクリタキセル粒子製剤として送達された場合、肺組織への曝露(用量正規化AUC)は増加した。
【0226】
まとめると、データは、IV「臨床基準」と比較すると、吸入により送達される場合に、肺組織内にパクリタキセル粒子が有意に保持されることを示している。
【0227】
目的
この研究の目的は、臨床基準用量のパクリタキセルと比較したパクリタキセル粒子製剤の薬物動態を決定することであった。吸入により投与されたパクリタキセル粒子製剤を用いたLovelace Biomedicalの試験FY 17−008A(上記の実施例1)のパイロット薬物動態(PK)データは、肺組織での168時間を超える保持時間を示した。この試験では、単回低用量または高用量の鼻のみの吸入用パクリタキセル粒子製剤、または静脈内(IV)尾注射による単回臨床基準用量のパクリタキセルのいずれかを投与された動物の血漿および肺組織を、0.5〜336時間の時点で評価した。
【0228】
材料および方法
試験系
種/株:Sprague Dawleyラット
試験開始時の動物の年齢:8〜10週齢
試験開始時の体重範囲:345〜447g
試験ラット数/性別:雄95匹(試験動物90匹および予備5匹)
供給源:Charles River Laboratories(ニューヨーク州、キングストン)
識別:パーマネントマーカーによる尾マーキング
【0229】
ABRAXANE(登録商標)製剤
IV製剤に使用する臨床基準材料は、医療品ABRAXANE(登録商標)(製造元:Celgene Corporation(ニュージャージー州、サミット);ロット:6111880)であった。医療品は、投与当日に生理食塩水(製造元:Baxter Healthcare,Deerfield,ll;ロット:P357889)で5.0mg/mLに再構成され、製造元の指示に従って保存した。
【0230】
パクリタキセル粒子製剤
低用量群曝露用の6.0mg/mlパクリタキセル粒子製剤および高用量群曝露用の20.0mg/mlパクリタキセル粒子製剤を、スポンサーの推奨に従って調製した。具体的には、パクリタキセル粒子を1%ポリソルベート80で再構成した。全ての粒子が濡れるまでバイアルを手で振とうした。追加の注射用0.9%塩化ナトリウムを(所望の濃度目標まで)添加し、バイアルをさらに1分間手で振とうした。
【0231】
大きな塊が見えなくなり、懸濁液が適切に分散するまで振とうを続けた。得られた製剤は、エアロゾル化作業のためにネブライザーに入れる前に、バイアル内の空気/泡を減らすために、少なくとも5分間そのままにしておいた。6.0mg/mLの最終製剤を室温で保ち、再構成後2時間以内に噴霧化した。20.0mg/mLの最終製剤を室温で保ち、再構成後30分以内に噴霧化した。
【0232】
実験設計
表8に示す群1の動物には、IV尾静脈注射により、単回「臨床基準」用量(製剤濃度:5mg/mL、目標用量:体重に基づいて5.0mg/kg、目標投与量:250μLを超えない)のABRAXANE(登録商標)(注射懸濁液用のパクリタキセルタンパク質結合粒子)を投与した。表9の群2および3の動物は、以下の実験設計ごとに一度だけ鼻のみの吸入(INH)によりパクリタキセル粒子製剤エアロゾル(目標用量0.37または1.0mg/kg)に曝露した。3匹の動物(n=2)を、血液(血漿)および肺組織を収集するために、曝露後0.5(±10分)、6(±10分)、12(±10分)、24(±30分)、48(±30分)、72(±30分)、120(±30分)、168(±30分)、240(±30分)および336(±30分)時間で安楽死させた。血漿および肺組織に対して非コンパートメント分析を実施して、各用量群に関する曝露後のパクリタキセルの検出可能な量の持続時間を特定した。全ての群から336時間の時点に指定された動物の右肺をLCMS分析のために個々に凍結し、一方、左肺には10%中性緩衝ホルマリン(NBF)を灌流し、あり得る組織病理のために保持した。比較組織病理を可能にするために、336時間の時点と共に3匹の予備動物(ナイーブ対照)も安楽死させ、同じ方法で肺収集を行った。
【表8】
【0233】
飼畜、隔離、および試験への割り当て
雄Sprague Dawleyラット(6〜8週齢)をCharles River Laboratories(ニューヨーク州、キングストン)から入手し、14日間隔離した。隔離の終わりに動物の体重を測定し、その後、試験への割り当てのために体重によって無作為化した。動物は、尾マーキングとケージカードによって識別した。適切なSOPに従って、水、照明、湿度および温度制御を維持および監視した。非曝露時間中は、ラットに標準的なげっ歯類用食餌を自由に与えた。
【0234】
体重および毎日の観察
体重は、無作為化時、試験期間中毎日および安楽死時に収集した。試験時の各動物は、異常、瀕死または死亡の任意の臨床的兆候について、比較医学動物資源(CMAR)要員によって1日2回観察した。
【0235】
ABRAXANE(登録商標)投与IV−尾静脈注射
一度だけのIV尾静脈注射により、ABRAXANE(登録商標)(濃度:5mg/ml;目標用量:体重に基づいて5.0mg/kg、投与量:250μLを超えない)を群1の動物に投与した。
【0236】
パクリタキセル粒子の投与−鼻のみのエアロゾル曝露
馴化
最大70分間、鼻のみの曝露チューブに動物を馴化させた。曝露前の3日間で3つの馴化セッションを行った。最初のセッションは30分、2番目のセッションは60分、3番目のセッションは70分続けた。一時的な苦痛以上のものを経験しないことを保証するために、馴化期間中にわたって、かつ、曝露中、それらを綿密に監視した。
【0237】
曝露システム
エアロゾルは、20psiのネブライザー圧力で、上記
図7に示すように(実施例3を参照)、2つの圧縮空気ジェットHospitakネブライザーで生成した。6.0mg/mLおよび20.0mg/mLのパクリタキセル粒子懸濁液製剤を、それぞれ低用量および高用量の曝露に使用した。両方の製剤を別々にエアロゾル化し、送達ラインを介して32ポートの鼻のみの曝露チャンバーにエアロゾルを送った。げっ歯類の吸入曝露は各々65分間行った。パクリタキセル粒子懸濁液エアロゾルを、2つのHospitak圧縮空気ジェットネブライザーのセット(最大40(±1)分間使用)で生成し、その後、残りの曝露期間、2つのHospitakネブライザーの第二のセットと交換した。各吸入曝露全体にわたって酸素および温度を監視して記録した。
【0241】
安楽死および剖検
上記の実験設計における時点で、安楽死用溶液の腹腔内(IP)注射により動物を安楽死させた。
【0242】
336時間の時点(および予備の動物、n=3)の場合:剖検中、(血漿用の)血液を心臓穿刺によりK2EDTAチューブに収集した。全肺重量を収集し、左肺を縛り、中性緩衝ホルマリンを充填し、あり得る組織病理のために保存した。右肺葉の重量を個別に測定し、液体窒素で急速凍結し、生物学的分析のために−70〜−90℃で保存した。さらに、資格のある剖検要員によって完全な肉眼検査を行った。身体の外面、開口部、ならびに、頭蓋腔、胸腔および腹腔の内容物を調べた。形態、量、形状、色、稠度および重症度に関する用語集セットを使用して、病変を記述および記録した。
【0243】
他の全ての時点の場合:剖検中、(血漿用の)血液を心臓穿刺によりK2EDTAチューブに収集した。全肺重量を収集し、肺葉の重量を個別に測定し、液体窒素で瞬間凍結し、生物学的分析のために−70〜−90℃で保存した。さらに、資格のある剖検要員によって完全な肉眼検査を行った。身体の外面、開口部、ならびに、頭蓋腔、胸腔および腹腔の内容物を調べた。形態、量、形状、色、稠度および重症度に関する用語集セットを使用して、病変を記述および記録した。
【0244】
組織病理
利用可能な固定組織をトリミングした。固定した左肺葉をトリミングして、気道を伴う典型的な毒性病理学スタイルの切片を作製した。組織を常套的に処理し、パラフィン包埋し、約4μmの切片とし、取り付けて、顕微鏡検査のためにヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色した。所見は、1〜5のスケールで毒性病理学を経験した1人の病理学者によって半定量的に主観的に評価された(l=最小、2=軽度、3=中程度、4=顕著、5=重度)。Provantis(商標)(Instem LSS Ltd.、英国、スタッフォードシャー)コンピューターソフトウェア/データベースを、組織病理学データの取得、報告および分析に使用した。
【0245】
採血および処理
剖検で収集した血液を、最低1300gを4℃で10分間遠心分離することにより血漿に処理した。血漿サンプルは、分析まで−70℃〜−90℃で保存した。
【0246】
生物学的分析
全身血液(K2EDTAからの血漿の形態)および肺組織を液体クロマトグラフィー−質量分析(LCMS)アッセイでアッセイして、時間の関数としてパクリタキセルの量を定量化した。簡潔に言うと、このアッセイでは、超高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析(UPLC−MS/MS)アッセイを利用してパクリタキセルを定量化する。
【0247】
サンプルはタンパク質沈殿法により抽出し、分離は逆相クロマトグラフィーにより達成される。マトリックスベースの検量線を使用して定量化を実施した。
【0248】
非コンパートメント分析は、血漿および肺組織の濃度から得られたデータについて実施した。最低でも、Cmax、Tmax、AUCおよび見かけの最終半減期が決定された。他のパラメータは、データに基づいて決定してもよい。
【0249】
結果
臨床観察、生存および体重
全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。全ての動物を、各時点を対象とした期間内で安楽死させた。
【0250】
研究期間を通して異常な臨床所見は認められなかった。
【0251】
図51および
図52は、試験期間中の平均体重を1日目からの変化率(%)として示している。全ての群で、試験の過程を通してほぼ同じ割合で体重が増加した。
【0252】
ABRAXANE(登録商標)IV尾静脈注射
ABRAXANE(登録商標)のIV注射を受けた群では、1日目の体重は386.1〜472.8gの範囲であった。これにより、ABRAXANE(登録商標)の用量は2.6〜3.2mg/kgであった。平均用量(標準偏差)は2.9(0.16)mg/kgであった。個々のABRAXANE(登録商標)用量を表9に示す。
【表9】
【0253】
パクリタキセル粒子の曝露
エアロゾル濃度および粒子径
実施例2の結果−エアロゾル濃度および粒子径を参照。
【0254】
酸素および温度
実施例2の結果−酸素および温度を参照。
【0255】
堆積量
実施例2の結果−堆積量を参照。
【0256】
剖検
全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。剖検で、各群の動物に、肺に最小限から軽度の黄褐色の変色が見られた(表10)。このような観察は、吸入曝露に関連していることが多い。他の一時的な観察には、心臓の拡大(動物#2016)および気管気管支リンパ節の拡大が含まれていた。剖検時に他の異常な巨視的観察は認められなかった。
【表10】
【0257】
組織病理
この試験のために調べた投与後336時間(〜14日)の屠殺動物の気管および左肺内に顕著な異常は認められなかった。組織は、対照としての「予備」動物と顕微鏡的に区別がつかなかった。
【0258】
マクロファージの蓄積は、この試験で調べた治療動物の肺切片内では明らかではなかった。肺胞マクロファージのある程度の増加は、肺に堆積した外因性物質に対する生理学的に正常な反応として、吸入試験ではごく一般的である(また、未処置動物では、より低い程度の増加が比較的一般的な観察結果である)。この試験における吸入投与動物における明らかな欠如は、組織学的に調べた投与後の比較的遅い時点(336時間または約〜14日)に一部関連している可能性がある。
【0259】
生物学的分析およびPKモデリング
結果を以下の表11、12および13、ならびに
図53および
図54にまとめる。平均パクリタキセル血漿濃度対時間および平均パクリタキセル肺組織濃度対時間データは上記のようにモデル化され、結果は表14および15それぞれに示されている。
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0260】
モデリングは、各時点での平均血漿または肺組織濃度に基づいて、WinNonlinを使用して実施した。NCAは、曝露(濃度対時間曲線下面積[AUC])、最大濃度までの時間(Tmax)、最大濃度(Cmax)、および可能であれば見かけの最終半減期(T1/2)を定量化するように設計されていた。
【0261】
全身血漿内の半減期は、試験した製剤/用量では変化せず、肺組織内の半減期は、吸入により送達されたパクリタキセル粒子製剤で増加した。吸入によるパクリタキセル粒子製剤として送達された場合、肺組織への曝露(用量正規化AUC)は増加した。
【0262】
まとめると、データは、吸入により送達される場合に、肺組織内にパクリタキセル粒子が有意に保持されることを示している。
【0263】
結論
90匹の雄Sprague Dawleyラットを、静脈内(IV)ボーラス注射により「臨床参照」用量のパクリタキセルであるABRAXANE(登録商標)(注射懸濁液用のパクリタキセルタンパク質結合粒子)に曝露するか、または一度だけ鼻のみからの吸入によりパクリタキセル粒子製剤(目標用量0.37または1.0mg/kg)に曝露した。3匹の動物(n=3)を、血液(血漿)および肺組織を収集するために、曝露後0.5〜336時間の10時点で安楽死させた。血漿および肺組織に対して非コンパートメント分析を実施して、各用量群に関する曝露後のパクリタキセルの検出可能な量の持続時間を特定した。全ての群から336時間の時点に指定された動物の右肺を液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)分析のために収集し、一方、左肺には10%中性緩衝ホルマリン(NBF)を灌流し、あり得る組織病理のために保持した。比較組織病理学を可能にするために、336時間の時点で3匹の予備動物(ナイーブ対照)も安楽死させ、同じ方法で肺収集を行った。他の全ての時点に指定された動物は、LCMS分析のために全ての肺を個別に凍結した。
【0264】
低用量および高用量パクリタキセル粒子製剤群の吸入曝露平均パクリタキセルエアロゾル濃度は、それぞれ85.64μg/Lおよび262.27μg/Lであった。平均曝露エアロゾル濃度は、噴霧化吸入曝露に関して予想される目標エアロゾル濃度の±15%以内であった。カスケードインパクターを使用して各パクリタキセル粒子製剤エアロゾルの、MMAD(GSD)についての粒径分布を決定した。6.0mg/mLおよび20.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤エアロゾルの場合、MMAD(GSD)はそれぞれ1.8(2.0)μmおよび2.3(1.9)μmと決定された。
【0265】
パクリタキセル堆積用量は、パクリタキセルの平均エアロゾル濃度85.64μg/L、0日目の平均群体重420.4g、想定堆積分率10%、および曝露時間65分に基づいて計算した。低用量パクリタキセル粒子製剤群の、達成されたげっ歯類の平均堆積量は0.38mg/kgと決定された。高用量パクリタキセル粒子製剤群の場合、パクリタキセルの平均エアロゾル濃度262.27μg/L、0日目の群平均体重420.5g、想定堆積分率10%、および曝露時間65分であり、達成されたげっ歯類の平均堆積量は1.18mg/kgと決定された。記録された酸素および温度範囲は、6.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤への曝露について、それぞれ19.8%〜20.9%および20.7℃〜20.8℃であった。20.0mg/mLのパクリタキセル粒子製剤の曝露では、記録された酸素値は曝露全体を通して19.8%であり、温度範囲は20.7℃〜20.8℃であった。
【0266】
ABRAXANE(登録商標)のIV注射を受けた群では、1日目の体重は386.1〜472.8gの範囲であった。これにより、ABRAXANE(登録商標)の用量は2.6〜3.2mg/kgであり、平均群用量は2.9mg/kgであった。
【0267】
全ての群で、試験の過程を通して体重が増加した。研究期間を通して異常な臨床所見は認められなかった。全ての動物は、指定された剖検時点まで生存した。全ての動物を、各時点を対象とした期間内で安楽死させた。
【0268】
剖検で、各群の動物の約半数で、肺に最小限から軽度の黄褐色の変色が見られた。このような観察は、吸入曝露に関連していることが多い。他の一時的な観察には、心臓の拡大(動物#2016)および気管気管支リンパ節の拡大が含まれていた。剖検時に他の異常な巨視的観察は認められなかった。組織病理学は、この試験の条件下で、試験および参照品で処置されたラットの肺および気管が正常範囲内であり、ナイーブラットの肺および気管と区別できないことを示した。
【0269】
NCAは、曝露(濃度対時間曲線下面積[AUC])、最大濃度までの時間(Tmax)、最大濃度(Cmax)、および可能であれば見かけの最終半減期(T1/2)を定量化するように設計されていた。
【0270】
新規パクリタキセル粒子製剤の仮説は、製剤により肺組織内でのパクリタキセルの保持が増加し、全身曝露が減少するというものであった。全身血漿内の半減期は、試験した製剤/用量では変化せず、肺組織内の半減期は、吸入により送達されたパクリタキセル粒子製剤で増加した。吸入によるパクリタキセル粒子製剤として送達された場合、肺組織への曝露(用量正規化AUC)は増加した。
【0271】
まとめると、データは、IV「臨床基準」と比較すると、吸入により送達される場合に、肺組織内にパクリタキセル粒子が有意に保持されることを示している。