特許第6840894号(P6840894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6840894
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】血液バッグシステム及びクランプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20210301BHJP
   A61M 39/28 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   A61M1/02 121
   A61M39/28 110
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-509536(P2020-509536)
(86)(22)【出願日】2020年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2020004486
【審査請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2019-60681(P2019-60681)
(32)【優先日】2019年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】大橋 広孝
(72)【発明者】
【氏名】中野 将識
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇之
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−129084(JP,A)
【文献】 特開2010−155086(JP,A)
【文献】 特表2018−505005(JP,A)
【文献】 国際公開第01/58507(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0106890(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/157347(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/129520(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/088072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61M 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を収容するための第1バッグと、前記第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容する第2バッグと、添加溶液が収容された第3バッグと、を備え、前記第1バッグに接続された第1チューブは、前記第2バッグに接続された第2チューブと前記第3バッグに接続された第3チューブとに分岐部を介して連結された血液バッグシステムであって、
前記分岐部に設けられた1つのクランプを備え、
前記クランプは、
前記第2チューブの流路を閉塞するための第1クランプ機構と、
前記第3チューブの流路を閉塞するための第2クランプ機構と、を有し、
前記第1クランプ機構は、一度閉塞された前記第2チューブの流路を開放不能に構成され、
前記第2クランプ機構は、閉塞された前記第3チューブの流路を開放可能に構成されている、血液バッグシステム。
【請求項2】
請求項1記載の血液バッグシステムであって、
前記第1クランプ機構は、前記第2チューブの流路が閉塞されるように前記第2チューブの外周面を押圧する第1押圧部を有し、
前記第2クランプ機構は、前記第3チューブの流路が閉塞されるように前記第3チューブの外周面を押圧する第2押圧部を有する、血液バッグシステム。
【請求項3】
請求項2記載の血液バッグシステムであって、
前記第1押圧部は、前記第2チューブの流路が開放される第1開放位置から前記第2チューブの流路が閉塞される第1閉塞位置に変位可能であるとともに前記第1閉塞位置から前記第1開放位置に復帰不能であり、
前記第2押圧部は、前記第3チューブの流路が開放される第2開放位置から前記第3チューブの流路が閉塞される第2閉塞位置に変位可能であるとともに前記第2閉塞位置から前記第2開放位置に復帰可能である、血液バッグシステム。
【請求項4】
請求項3記載の血液バッグシステムであって、
前記第1クランプ機構は、前記第1押圧部を前記第1閉塞位置にロックする第1ロック部を有し、
前記第2クランプ機構は、
前記第2押圧部を前記第2閉塞位置にロックする第2ロック部と、
前記第2閉塞位置にある前記第2押圧部が前記第2開放位置に復帰するように前記第2ロック部の前記ロックを解除するロック解除部と、を有する、血液バッグシステム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の血液バッグシステムであって、
前記クランプは、前記第2チューブと前記第3チューブとの間に設けられた壁部を有し、
前記第1押圧部が前記第1閉塞位置に位置した状態で、前記第2チューブは、前記壁部と前記第1押圧部とによって挟持され、
前記第2押圧部が前記第2閉塞位置に位置した状態で、前記第3チューブは、前記壁部と前記第2押圧部とによって挟持されている、血液バッグシステム。
【請求項6】
血液を収容するための第1バッグと、前記第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容する第2バッグと、添加溶液が収容された第3バッグと、前記第1バッグと分岐部とを接続する第1チューブと、前記分岐部と前記第2バッグとを接続する第2チューブと、前記分岐部と前記第3バッグとを接続する第3チューブとを備える血液バッグシステムにおいて、前記分岐部に設けられる1つのクランプであって、
前記第2チューブの流路を閉塞するための第1クランプ機構と、
前記第3チューブの流路を閉塞するための第2クランプ機構と、
前記分岐部を収容する収容空間と、を有し、
前記第1クランプ機構は、一度閉塞された前記第2チューブの流路を開放不能に構成され、
前記第2クランプ機構は、閉塞された前記第3チューブの流路を開放可能に構成され
前記第2クランプ機構は、
前記第3チューブの前記流路を開放する開放位置と、前記第3チューブの外周面を前記第1クランプ機構に向かって押圧して前記第3チューブの前記流路を閉塞する閉塞位置との間で変位可能な押圧部と、
前記押圧部を前記閉塞位置にロックするためのロック部と、
前記ロック部のロックを解除するためのロック解除部と、を有し、
前記ロック解除部は、前記ロック部から前記押圧部の押圧方向とは反対側に延出した操作部を含み、
前記操作部は、前記ロック部がロックされていない状態で前記押圧部よりも前記反対側に延出している、クランプ。
【請求項7】
血液を収容するための第1バッグと、前記第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容する第2バッグと、添加溶液が収容された第3バッグと、を備え、前記第1バッグに接続された第1チューブは、前記第2バッグに接続された第2チューブと前記第3バッグに接続された第3チューブとに分岐部を介して連結された血液バッグシステムであって、
前記分岐部に設けられた1つのクランプを備え、
前記クランプは、第1クランプ機構及び第2クランプ機構を有し、
前記第1クランプ機構は、
可撓性を有する第1アーム部と、
前記第1アーム部に設けられ、前記第2チューブの流路が閉塞されるように前記第2チューブの外周面を押圧する第1凸部と、
前記第2チューブの流路が閉塞された状態で前記第1アーム部に解除不能な状態で係合する第1係合部と、を有し、
前記第2クランプ機構は、
可撓性を有する第2アーム部と、
前記第2アーム部に設けられ、前記第3チューブの流路が閉塞されるように前記第3チューブの外周面を押圧する第2凸部と、
前記第3チューブの流路が閉塞された状態で前記第2アーム部に係合する第2係合部と、
前記第2係合部と前記第2アーム部の係合を解除する係合解除部と、を有する、血液バッグシステム。
【請求項8】
請求項7記載の血液バッグシステムであって、
前記係合解除部は、前記第2係合部が設けられた壁部から前記第2アーム部の外側に向かって突出した操作部を有している、血液バッグシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液バッグシステム及びクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2016−106012号公報には、血液を収容するための第1バッグ(親バッグ)と、第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容するための第2バッグ(子バッグ)と、添加溶液が収容された第3バッグ(薬液バッグ)とを備えた血液バッグシステムが開示されている。
【0003】
第1バッグに接続された第1チューブは、第2バッグに接続された第2チューブと第3バッグに接続された第3チューブとに分岐部を介して連結されている。
【発明の概要】
【0004】
上述したような血液バッグシステムでは、遠心分離移送装置に血液バッグシステムをセットし、第1バッグ内の血液を遠心分離する。そして、遠心分離によって得られた血液成分を第1バッグから第1チューブ及び第2チューブを介して第2バッグに移送する。その後、第1のクランプによって第2チューブの流路を閉塞するとともに第2のクランプによって第3チューブの流路を閉塞した状態で、血液バッグシステムを遠心分離移送装置から取り外す。続いて、第3バッグを懸架台に吊るし、第2のクランプを第3チューブから外し、赤血球保存液等の添加溶液を第3チューブ及び第1チューブを介して第1バッグに移送する。
【0005】
このように、第2チューブの流路を閉塞するための第1のクランプと第3チューブの流路を閉塞するための第2のクランプとが互いに別部品であると、2つのチューブ(第2チューブ及び第3チューブ)のそれぞれの流路を効率的に閉塞することができないことがある。また、添加溶液を移送する際に、誤って第2のクランプが取り外される可能性がある。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、第2チューブ及び第3チューブのそれぞれの流路を効率的に閉塞することができ、添加溶液を移送する際に、誤って第2チューブの流路が開放されることを防止することができる血液バッグシステム及びクランプを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の一態様は、血液を収容するための第1バッグと、前記第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容する第2バッグと、添加溶液が収容された第3バッグと、を備え、前記第1バッグに接続された第1チューブは、前記第2バッグに接続された第2チューブと前記第3バッグに接続された第3チューブとに分岐部を介して連結された血液バッグシステムであって、前記分岐部に設けられた1つのクランプを備え、前記クランプは、前記第2チューブの流路を閉塞するための第1クランプ機構と、前記第3チューブの流路を閉塞するための第2クランプ機構と、を有し、前記第1クランプ機構は、一度閉塞された前記第2チューブの流路を開放不能に構成され、前記第2クランプ機構は、閉塞された前記第3チューブの流路を開放可能に構成されている、血液バッグシステムである。
【0008】
本発明の他の態様は、血液を収容するための第1バッグと、前記第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容する第2バッグと、添加溶液が収容された第3バッグと、前記第1バッグと分岐部とを接続する第1チューブと、前記分岐部と前記第2バッグとを接続する第2チューブと、前記分岐部と前記第3バッグとを接続する第3チューブとを備える血液バッグシステムにおいて、前記分岐部に設けられる1つのクランプであって、前記第2チューブの流路を閉塞するための第1クランプ機構と、前記第3チューブの流路を閉塞するための第2クランプ機構と、前記分岐部を収容する収容空間と、を有し、前記第1クランプ機構は、一度閉塞された前記第2チューブの流路を開放不能に構成され、前記第2クランプ機構は、閉塞された前記第3チューブの流路を開放可能に構成され、前記第2クランプ機構は、前記第3チューブの前記流路を開放する開放位置と、前記第3チューブの外周面を前記第1クランプ機構に向かって押圧して前記第3チューブの前記流路を閉塞する閉塞位置との間で変位可能な押圧部と、前記押圧部を前記閉塞位置にロックするためのロック部と、前記ロック部のロックを解除するためのロック解除部と、を有し、前記ロック解除部は、前記ロック部から前記押圧部の押圧方向とは反対側に延出した操作部を含み、前記操作部は、前記ロック部がロックされていない状態で前記押圧部よりも前記反対側に延出している、クランプである。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、血液を収容するための第1バッグと、前記第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容する第2バッグと、添加溶液が収容された第3バッグと、を備え、前記第1バッグに接続された第1チューブは、前記第2バッグに接続された第2チューブと前記第3バッグに接続された第3チューブとに分岐部を介して連結された血液バッグシステムであって、前記分岐部に設けられた1つのクランプを備え、前記クランプは、第1クランプ機構及び第2クランプ機構を有し、前記第1クランプ機構は、可撓性を有する第1アーム部と、前記第1アーム部に設けられ、前記第2チューブの流路が閉塞されるように前記第2チューブの外周面を押圧する第1凸部と、前記第2チューブの流路が閉塞された状態で前記第1アーム部に解除不能な状態で係合する第1係合部と、を有し、前記第2クランプ機構は、可撓性を有する第2アーム部と、前記第2アーム部に設けられ、前記第3チューブの流路が閉塞されるように前記第3チューブの外周面を押圧する第2凸部と、前記第3チューブの流路が閉塞された状態で前記第2アーム部に係合する第2係合部と、前記第2係合部と前記第2アーム部の係合を解除する係合解除部と、を有する、血液バッグシステムである。
【0010】
本発明によれば、第1クランプ機構と第2クランプ機構とを有する1つのクランプによって第2チューブ及び第3チューブのそれぞれの流路を効率的に閉塞することができる。また、第1クランプ機構が一度閉塞された第2チューブの流路を開放不能に構成され、第2クランプ機構が閉塞された第3チューブの流路を閉塞可能に構成されている。そのため、血液バッグシステムにおいて、第3バッグの添加溶液を第1バッグに移送する際に、誤って第2チューブの流路が開放されることを防止しつつ第3チューブの流路のみを開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る血液バッグシステム及び遠心分離移送装置の全体構成を示す説明図である。
図2】遠心分離移送装置の単位セットエリアを示す平面図である。
図3図1のクランプの平面説明図である。
図4図4Aは、図3のクランプの第1断面説明図であり、図4Bは、図3のクランプの第2断面説明図である。
図5】薬液バッグから血液バッグに赤血球保存液を移送させる手順の説明図である。
図6図5のクランプの断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る血液バッグシステム及びクランプについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る血液バッグシステム10は、医療従事者等のユーザにより、図1に示すように遠心分離移送装置12にセットされる。遠心分離移送装置12は、血液バッグシステム10の血液を遠心分離し、複数種類の血液成分を生成して保存する。血液バッグシステム10と遠心分離移送装置12とを含む構成を血液製剤製造システム14という。
【0014】
血液バッグシステム10は、遠心分離前の採血に使用される図示しない前処理部と、遠心分離により血液成分を生成して個別に保存する分離処理部16とを有し、両部を中継チューブ18で接続している。分離処理部16は、遠心分離前に、前処理部に繋がる中継チューブ18が切断されて図1中に示される状態となり、遠心分離移送装置12にセットされる。
【0015】
血液バッグシステム10の前処理部は、ドナー(供血者)から全血を採取し、また全血から所定の血液成分(例えば、白血球)を除去する。このため前処理部は、採血針、採血バッグ、初流血バッグ、フィルタ(例えば、白血球除去フィルタ)等を有し、複数のチューブにより各部材を接続することで構成される。また分離処理部16は、中継チューブ18を介してフィルタの下流側に接続されている。具体的には、前処理部は、採血針を通して採取したドナーの全血のうち最初の血液を初流血バッグに貯留し、その後に残りの血液を採血バッグに貯留する。さらに前処理部は、採血バッグに貯留された全血をフィルタに流動させることで、フィルタにおいて白血球を除去し、この除去血液(白血球除去血液)を分離処理部16に移送する。
【0016】
一方、血液バッグシステム10の分離処理部16は、複数のバッグ20(血液バッグ22、PPPバッグ24及び薬液バッグ26)を有し、複数のチューブ30により各バッグ20を接続することで構成される。
【0017】
血液バッグ22(第1バッグ)は、血液バッグシステム10の製品提供状態で、前処理部と繋がる中継チューブ18に直接接続されている。このため、血液バッグ22は、採血時においてフィルタから移送されてきた除去血液を貯留する。この血液バッグ22には、遠心分離移送装置12にセットされ、遠心分離移送装置12の動作により遠心力が付与される。これにより血液バッグ22の除去血液は、比重の異なる血液成分(乏血小板血漿(platelet poor plasma:PPP)、濃厚赤血球(red blood cells:RBC))等に遠心分離される。そして、血液バッグ22は、遠心分離後に遠心分離移送装置12の動作下に、PPPが移送されることで、残留したRBCのみを貯留する。
【0018】
PPPバッグ24(第2バッグ)は、血液バッグ22からPPPが供給されることで、このPPPを保存する。一方、薬液バッグ26(第3バッグ)は、MAP液、SAGM液、OPTISOL等の赤血球保存液(添加溶液)を予め収容している。
【0019】
また、分離処理部16は、遠心分離移送装置12にセットされる前に、セグメントチューブ28が形成される。セグメントチューブ28は、ドナーの血液(除去血液)が内部に存在する密閉チューブ28aを複数有する。複数の密閉チューブ28aは、血液バッグ22と前処理部(フィルタ)との間を接続していた中継チューブ18がフィルタ付近で切断され、さらに所定間隔毎にシールされることで一連に連なるように形成される。このセグメントチューブ28は、ユーザにより必要に応じて切り取られ、血液のチェック等に用いられる。
【0020】
分離処理部16の複数のチューブ30は、分岐部としての分岐コネクタ32(Y型コネクタ)を介して複数に分岐している。詳細には、複数のチューブ30は、第1チューブ34、第2チューブ36及び第3チューブ38を含む。第1チューブ34は、血液バッグ22と分岐コネクタ32の第1コネクタ部32aとを接続する。第2チューブ36は、PPPバッグ24と分岐コネクタ32の第2コネクタ部32bとを接続する。第3チューブ38は、薬液バッグ26と分岐コネクタ32の第3コネクタ部32cとを接続する。
【0021】
第1チューブ34は第1流路34aを有し、第2チューブ36は第2流路36aを有し、第3チューブ38は第3流路38aを有する。第1チューブ34、第2チューブ36及び第3チューブ38のそれぞれは、可撓性を有する。第1流路34a、第2流路36a及び第3流路38aは分岐コネクタ32内の流路を介して相互に連通している。
【0022】
第1チューブ34の血液バッグ22側の端部には、破断可能な封止部材40(クリックチップ)が設けられている。同様に、第3チューブ38の薬液バッグ26側の端部には、破断可能な封止部材42が設けられている。封止部材40、42は、破断操作が行われるまで第1流路34a、第3流路38aを遮断し、血液バッグ22や薬液バッグ26内の液体を他のバッグ20に移送することを防止する。
【0023】
分離処理部16は、分岐コネクタ32に設けられたクランプ43を有する。クランプ43の構成については後述する。
【0024】
一方、血液バッグシステム10の分離処理部16がセットされる遠心分離移送装置12は、箱状の基体44と、基体44の上面を開閉可能な蓋46と、基体44に設けられる遠心ドラム48とを備える。また、遠心分離移送装置12の基体44には、遠心ドラム48を回転させるモータ(不図示)、遠心分離移送装置12の動作を制御する制御部50、及びユーザが確認及び操作を行うための操作表示部52が設けられている。
【0025】
遠心ドラム48は、分離処理部16をセット可能な単位セットエリア54を複数(6つ)有する。1つの単位セットエリア54は、その高さがバッグ20の長手方向長さよりも長く、また遠心ドラム48の回転中心に対し60°の範囲に設定されている。つまり、6つの単位セットエリア54は、周方向に沿って隙間なく並ぶことで、環状の構造体である遠心ドラム48を構成する。
【0026】
単位セットエリア54は、遠心ドラム48の回転に伴い血液バッグ22に遠心力を付与する。具体的に、図2に示すように、単位セットエリア54は、血液バッグ22を収容する血液バッグポケット56と、PPPバッグ24を収容するPPPバッグポケット58と、薬液バッグ26を収容する薬液バッグポケット60とを遠心ドラム48の径方向外側位置に備える。
【0027】
血液バッグポケット56は、単位セットエリア54の周方向中央部に設けられ、PPPバッグポケット58や薬液バッグポケット60よりも大きな容積を有する。PPPバッグポケット58と薬液バッグポケット60は、血液バッグポケット56よりも径方向外側において周方向に並んで設けられる。
【0028】
また、単位セットエリア54の上面54aは、血液バッグシステム10の複数のチューブ30を配置し保持するように構成されている。上面54aにおいて血液バッグポケット56よりも径方向内側の中央領域54a1(第1領域)には、第1チューブ34及びセグメントチューブ28の一部分が配置される。
【0029】
中央領域54a1には、血液バッグポケット56の開口を開閉する蓋体62が設けられている。上面54aの左領域54a2(第2領域)には、中央領域54a1を通った第1チューブ34の一部分、クランプ43、第2チューブ36及び第3チューブ38の一部分が配置される。なお、左領域54a2には、クランプ43を保持する図示しないホルダが設けられてもよい。
【0030】
上面54aの右領域54a3(第3領域)には、中央領域54a1を通ったセグメントチューブ28の一部分が配置される。この右領域54a3には、セグメントチューブ28の複数の密閉チューブ28aを収容するセグメントポケット74が設けられている。
【0031】
さらに、単位セットエリア54のPPPバッグポケット58や薬液バッグポケット60よりも径方向外側には、チューブ保持部76が設けられている。チューブ保持部76は、単位セットエリア54の外周縁に連なる外壁78と、外周縁から外壁78よりも内側に突出する内壁80とを有し、外壁78と内壁80の間に第2チューブ36を配置させる。
【0032】
また、単位セットエリア54は、遠心分離後の血液バッグ22を押圧するスライダ82(押し子)を血液バッグポケット56の径方向内側に備える。スライダ82は、制御部50(図1参照)の制御下に、遠心ドラム48の径方向に沿って進退する。
【0033】
上記の単位セットエリア54では、ユーザにより、除去血液を貯留した血液バッグ22が血液バッグポケット56に、空のPPPバッグ24がPPPバッグポケット58に、赤血球保存液を貯留した薬液バッグ26が薬液バッグポケット60にそれぞれ収容される。そして、単位セットエリア54は、遠心ドラム48の回転により血液バッグ22の除去血液を遠心分離し、遠心分離後にスライダ82を進出して血液バッグ22を押圧する。
【0034】
これにより、血液バッグ22内で遠心分離により生じたPPPがPPPバッグ24に移送され、PPPの移送後は血液バッグ22にRBCが残留する。その後、血液バッグシステム10は、ユーザにより遠心分離移送装置12から取り出されて、図示しないスタンドに薬液バッグ26が吊り下げられる。これにより薬液バッグ26から血液バッグ22に赤血球保存液が供給され、血液バッグ22は薬液を含むRBC(血液製剤)を貯留した状態となる。
【0035】
図3及び図4Aに示すように、血液バッグシステム10のクランプ43は、分岐コネクタ32、第2チューブ36の一部及び第3チューブ38の一部を収容する収容空間Sを有する。クランプ43は、互いに対向するように配置された第1カバー部84及び第2カバー部86と、第1カバー部84及び第2カバー部86を互いに繋ぐように設けられたクランプ本体88とを備える。第1カバー部84と第2カバー部86とは、分岐コネクタ32を挟むように配置されている。
【0036】
図3において、第1カバー部84は、平板状に形成され、第1コネクタ部32aが位置する一端側から第2チューブ36及び第3チューブ38が位置する他端側に幅広に形成されている。第1カバー部84は、第1側辺90と第2側辺92とを含む。第1側辺90は、第1カバー部84の一端から他端まで第2コネクタ部32bの延在方向に沿って延在している。第2側辺92は、第1カバー部84の一端から他端まで第3コネクタ部32cの延在方向に沿って延在している。
【0037】
第1カバー部84には、第1切欠部94と第2切欠部96とが形成されている。第1切欠部94は、第1側辺90から第2チューブ36が位置する側に半円状に延びている。第1切欠部94は、第1側辺90の中央よりも第1カバー部84の他端側にずれて位置している。
【0038】
第2切欠部96は、第2側辺92から第3チューブ38が位置する側に半円状に延びている。第2切欠部96は、第2側辺92の中央よりも第1カバー部84の他端側にずれて位置している。第1切欠部94及び第2切欠部96のそれぞれは、ユーザの手指が挿入可能な程度の大きさに設定されている。ただし、第1切欠部94及び第2切欠部96のそれぞれの形状及び位置は、適宜変更可能である。
【0039】
第2カバー部86は、第1カバー部84と同様に構成されている。そのため、第2カバー部86の構成の説明については省略する。
【0040】
図4Aにおいて、クランプ本体88は、可撓性を有する樹脂材料によって一体的に成形されている。クランプ本体88は、第1チューブ34側に配置された第1壁部98と、第2チューブ36及び第3チューブ38の間に配置された第2壁部100と、第2チューブ36の第2流路36aを閉塞するための第1クランプ機構102と、第3チューブ38の第3流路38aを閉塞するための第2クランプ機構104とを有する。
【0041】
第1壁部98には、第1チューブ34が挿通する第1挿通孔106が形成されている。第1壁部98は、分岐コネクタ32の第1コネクタ部32aを支持する。第1壁部98は、第1カバー部84及び第2カバー部86に対して連結している。
【0042】
第2壁部100は、第1カバー部84及び第2カバー部86に対して連結している。第2壁部100は、クランプ43の厚さ方向(第1カバー部84及び第2カバー部86の並び方向)から見て三角形状に形成されている。第2壁部100は、第2チューブ36に沿って延在した第1側面108と、第3チューブ38に沿って延在した第2側面110とを有する。
【0043】
第1側面108は、分岐コネクタ32の第2コネクタ部32bの外周面に接触又は近接している。第2側面110は、分岐コネクタ32の第3コネクタ部32cの外周面に接触又は近接している。第1側面108と第2側面110とで形成される角部112は、第2コネクタ部32b及び第3コネクタ部32cの間に位置している。第1側面108には、第2チューブ36の外周面に接触する第1突出部109が形成されている。第2側面110には、第3チューブ38の外周面に接触する第2突出部111が形成されている。
【0044】
第1クランプ機構102は、第2チューブ36の第2流路36aが閉塞されるように第2チューブ36の外周面を押圧する第1押圧部114と、第1押圧部114をロックするための第1ロック部116とを含む。
【0045】
第1押圧部114は、可撓性を有している。第1押圧部114は、第2チューブ36の第2流路36aが開放される第1開放位置(図4Aの位置)から第2チューブ36の第2流路36aが閉塞される第1閉塞位置(図4Bの位置)に変位可能に設けられている。第1押圧部114は、第1壁部98から第2チューブ36(第2コネクタ部32b)に沿って延出した第1アーム部118と、第1アーム部118の内面から突出した第1凸部120とを有する。
【0046】
第1アーム部118は、第2チューブ36に対して第2壁部100とは反対側に位置している。つまり、第2チューブ36は、第2壁部100の第1側面108(第1突出部109)と第1アーム部118との間に配置されている。第1凸部120は、第1アーム部118の内面のうち第2チューブ36に対向する部位に位置している。第1押圧部114は、第1カバー部84及び第2カバー部86に対して直接的に連結されていない。そのため、第1押圧部114は、第1アーム部118の延在方向と交差する方向に弾性変形可能である。
【0047】
第1ロック部116は、第1押圧部114を第1閉塞位置にロックする。具体的に、第1ロック部116は、第2壁部100から第1アーム部118が位置する側に延出した第1延出部122と、第1延出部122の延出端部に設けられた第1爪部124とを有する。第1延出部122には、第2チューブ36が挿通する第2挿通孔126が形成されている。第1爪部124は、第1アーム部118の延出端部と係合することで、第2チューブ36の第2流路36aを閉塞する。第1ロック部116は、第1カバー部84及び第2カバー部86に対して直接的に連結されていない。そのため、第1ロック部116は、第1延出部122の延出方向と交差する方向に弾性変形可能である。
【0048】
第1爪部124には、第1傾斜面128と第1ストッパ面130(第1係合部)とが形成されている。第1傾斜面128は、第1爪部124の先端から基端方向(第2壁部100が位置する側)に向かって分岐コネクタ32側に傾斜している。第1傾斜面128には、第1押圧部114が第1開放位置にあるときに第1アーム部118の延出端部が接触する(図4A参照)。第1ストッパ面130は、第1傾斜面128のうち第2壁部100が位置する側の端から分岐コネクタ32とは反対側に延びている。第1ストッパ面130には、第1押圧部114が第1閉塞位置にあるときに第1アーム部118の延出端部の外面が接触する(図4B参照)。
【0049】
第1クランプ機構102は、第1ロック部116のロックを解除する機能を有しない。そのため、第1押圧部114は、第1閉塞位置から第1開放位置に復帰不能である。換言すれば、第1クランプ機構102は、閉塞された第2チューブ36の流路を開放不能に構成されている。
【0050】
第2クランプ機構104は、第3チューブ38の第3流路38aが閉塞されるように第3チューブ38の外周面を押圧する第2押圧部132と、第2押圧部132をロックするための第2ロック部134と、第2ロック部134のロックを解除するロック解除部136とを含む。
【0051】
第2押圧部132は、可撓性を有している。第2押圧部132は、第3チューブ38の第3流路38aが開放される第2開放位置(図4Aの位置)から第3チューブ38の第3流路38aが閉塞される第2閉塞位置(図4Bの位置)に変位可能に設けられている。第1壁部98から第3チューブ38(第3コネクタ部32c)に沿って延出した第2アーム部138と、第2アーム部138の内面から突出した第2凸部140とを有する。
【0052】
第2アーム部138は、第3チューブ38に対して第2壁部100とは反対側に位置している。つまり、第3チューブ38は、第2壁部100の第2側面110(第2突出部111)と第2アーム部138との間に配置されている。第2凸部140は、第2アーム部138の内面のうち第3チューブ38に対向する部位に位置している。第2押圧部132は、第1カバー部84及び第2カバー部86に対して直接的に連結されていない。そのため、第2押圧部132は、第2アーム部138の延在方向と交差する方向に弾性変形可能である。
【0053】
第2ロック部134は、第2押圧部132を第2閉塞位置にロックする。具体的に、第2ロック部134は、第2壁部100から第2アーム部138が位置する側に延出した第2延出部142と、第2延出部142の延出端部に設けられた第2爪部144とを有する。第2延出部142には、第3チューブ38が挿通する第3挿通孔146が形成されている。第2爪部144は、第2アーム部138の延出端部と係合することで、第3チューブ38の第3流路38aを閉塞する。第2ロック部134は、第1カバー部84及び第2カバー部86に対して直接的に連結されていない。そのため、第2ロック部134は、第2延出部142の延出方向と交差する方向に弾性変形可能である。
【0054】
第2爪部144には、第2傾斜面148と第2ストッパ面150(第2係合部)とが形成されている。第2傾斜面148は、第2爪部144の先端から基端方向(第2壁部100が位置する側)に向かって分岐コネクタ32側に傾斜している。第2傾斜面148には、第2押圧部132が第2開放位置にあるときに第2アーム部138の延出端部が接触する(図4A参照)。第2ストッパ面150は、第2傾斜面148のうち第2壁部100が位置する側の端から分岐コネクタ32とは反対側に延びている。第2ストッパ面150には、第2押圧部132が第2閉塞位置にあるときに第2アーム部138の延出端部の外面に接触する(図4B参照)。
【0055】
ロック解除部136は、第2ストッパ面150と第2アーム部138の延出端部との係合を解除する係合解除部である。ロック解除部136は、第2爪部144から第2壁部100とは反対側に延出した操作部152と、操作部152に設けられた滑り止め用の複数の突起154とを含む。操作部152は、ユーザが手指で操作し易い大きさに形成されている。操作部152は、第2ストッパ面150が設けられた第2爪部144(壁部)から第2アーム部138の外側に向かって突出している。複数の突起154は、操作部152のうち第1壁部98が位置する側の面から突出している。複数の突起154は、操作部152の延出方向に沿って設けられている。各突起154は、クランプ43の厚さ方向に線状に延在している。第2クランプ機構104は、閉塞された第3チューブ38の第3流路38aを開放可能に構成されている。
【0056】
本実施形態に係る血液バッグシステム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その動作について説明する。
【0057】
上述したように、血液バッグシステム10は、ユーザ(医療従事者)により採血時に前処理部が使用されることで、ドナーの全血から所定成分(白血球)を除いた除去血液を血液バッグ22に貯留する。血液バッグ22には、ドナーに応じた適宜の血液量(例えば、400cc)の血液が貯留される。
【0058】
その後、図2に示すように、ユーザは、除去血液を遠心分離するために、血液バッグシステム10の分離処理部16を前処理部から切り離して遠心分離移送装置12にセットする。血液バッグ22は、単位セットエリア54の血液バッグポケット56に挿入される。第1チューブ34は、上面54aの中央領域54a1に配置される。薬液バッグ26は、薬液バッグポケット60に挿入され、PPPバッグ24は、PPPバッグポケット58に挿入される。また、クランプ43が上面54aの左領域54a2に配置される。そして、ユーザが蓋体62を閉じると、封止部材40が破断されて、第1チューブ34の第1流路34aを開放する。
【0059】
血液バッグシステム10のセット後に、遠心分離移送装置12は、制御部50の制御下に遠心ドラム48を回転させることで、血液バッグ22の除去血液を、比重が異なる血液成分(PPP、RBC等)に遠心分離する。この遠心分離後、遠心分離移送装置12は、スライダ82により血液バッグ22を押圧する。これにより、比重が軽いPPPが血液バッグ22から流出し、このPPPは、第1チューブ34、分岐コネクタ32、第2チューブ36を順に流動してPPPバッグ24に流入する。
【0060】
遠心分離移送装置12は、血液バッグ22からPPPバッグ24にPPPを移送すると、スライダ82を後退させ、血液バッグポケット56から血液バッグ22を取り出し可能とする。そして、ユーザは、クランプ43によって第2チューブ36の第2流路36aと第3チューブ38の第3流路38aとのそれぞれを閉塞する。
【0061】
すなわち、図4Bに示すように、ユーザは、クランプ43における第1アーム部118の外面を内側(第2壁部100が位置する側)に押圧する。この際、ユーザは、第1カバー部84及び第2カバー部86の第1切欠部94に手指を挿入することにより、第1アーム部118を容易に押圧することができる。
【0062】
そうすると、第1アーム部118が第2壁部100側に撓む(弾性変形する)ため、第2チューブ36の外周面が第1凸部120によって第2壁部100側に押される。換言すれば、第2チューブ36は、第2壁部100の第1突出部109と第1凸部120とによって挟持される。これにより、第2チューブ36の第2流路36aが閉塞される。つまり、第1押圧部114が第1開放位置から第1閉塞位置に変位する。また、第1ロック部116が第1アーム部118によって外側に押されて撓む(弾性変形する)ため、第1傾斜面128を乗り越えた第1アーム部118が第1ストッパ面130に接触する。これにより、第1押圧部114は、第1閉塞位置にロックされる。
【0063】
ユーザは、クランプ43における第2アーム部138の外面を内側(第2壁部100が位置する側)に押圧する。この際、ユーザは、第1カバー部84及び第2カバー部86の第2切欠部96に手指を挿入することにより、第2アーム部138を容易に押圧することができる。
【0064】
そうすると、第2アーム部138が第2壁部100側に撓む(弾性変形する)ため、第3チューブ38の外周面が第2凸部140によって第2壁部100側に押される。換言すれば、第3チューブ38は、第2壁部100の第2突出部111と第2凸部140とによって挟持される。これにより、第3チューブ38の第3流路38aが閉塞される。つまり、第2押圧部132が第2開放位置から第2閉塞位置に変位する。また、第2ロック部134が第2アーム部138によって外側に押されて撓む(弾性変形する)ため、第2傾斜面148を乗り越えた第2アーム部138が第2ストッパ面150に接触する。これにより、第2押圧部132は、第2閉塞位置にロックされる。
【0065】
その後、ユーザは、図5に示すように、血液バッグシステム10を遠心分離移送装置12から取り出して、薬液バッグ26を図示しないスタンドに吊り下げる。そして、第3チューブ38の第3流路38aを開放する。具体的に、図6において、ユーザは、ロック解除部136の操作部152を第1壁部98から離間する方向に操作する。そうすると、第1壁部98と第2爪部144との間隔が広がるように第2延出部142が撓む(弾性変形する)ため、第2アーム部138が第2ストッパ面150から離れる。これにより、第2アーム部138が復元力によって元の形状に戻るため、第2押圧部132は、第2閉塞位置から第2開放位置に復帰する。
【0066】
この際、第1押圧部114は第1閉塞位置に位置したままである。つまり、第2チューブ36の第2流路36aは、閉塞状態のまま維持される。そのため、赤血球保存液がPPPバッグ24内に流入することが防止される。これにより、血液バッグ22には、赤血球保存液を含むRBCが貯留される。
【0067】
この場合、本実施形態に係る血液バッグシステム10及びクランプ43は、以下の効果を奏する。
【0068】
クランプ43は、第2チューブ36の第2流路36aを閉塞するための第1クランプ機構102と、第3チューブ38の第3流路38aを閉塞するための第2クランプ機構104とを有する。第1クランプ機構102は、一度閉塞された第2チューブ36の第2流路36aを開放不能に構成され、第2クランプ機構104は、閉塞された第3チューブ38の第3流路38aを開放可能に構成されている。
【0069】
このような構成によれば、第1クランプ機構102と第2クランプ機構104とを有する1つのクランプ43によって第2チューブ36の第2流路36aと第3チューブ38の第3流路38aとを効率的に閉塞することができる。また、第1クランプ機構102が一度閉塞された第2チューブ36の第2流路36aを開放不能に構成され、第2クランプ機構104が閉塞された第3チューブ38の第3流路38aを閉塞可能に構成されている。そのため、血液バッグシステム10において、薬液バッグ26の赤血球保存液を血液バッグ22に移送する際に、誤って第2チューブ36の第2流路36aが開放されることを防止しつつ第3チューブ38の第3流路38aのみを開放することができる。
【0070】
第1クランプ機構102は、第2チューブ36の第2流路36aが閉塞されるように第2チューブ36の外周面を押圧する第1押圧部114を有する。第2クランプ機構104は、第3チューブ38の第3流路38aが閉塞されるように第3チューブ38の外周面を押圧する第2押圧部132を有する。
【0071】
このような構成によれば、第1押圧部114によって第2チューブ36の第2流路36aを確実に閉塞することができる。また、第2押圧部132によって第3チューブ38の第3流路38aを確実に閉塞することができる。
【0072】
第1押圧部114は、第2チューブ36の第2流路36aが開放される第1開放位置から第2チューブ36の第2流路36aが閉塞される第1閉塞位置に変位可能であるとともに第1閉塞位置から第1開放位置に復帰不能である。第2押圧部132は、第3チューブ38の第3流路38aが開放される第2開放位置から第3チューブ38の第3流路38aが閉塞される第2閉塞位置に変位可能であるとともに第2閉塞位置から第2開放位置に復帰可能である。
【0073】
このような構成によれば、第1押圧部114を第1開放位置から第1閉塞位置に変位させることにより第2チューブ36の第2流路36aを容易に閉塞することができる。また、第1押圧部114が第1閉塞位置から第1開放位置に復帰不能であるため、一度閉塞された第2チューブ36の第2流路36aが開放されることはない。また、第2押圧部132を第2開放位置から第2閉塞位置に変位させることにより第3チューブ38の第3流路38aを容易に閉塞することができる。さらに、第2押圧部132を第2閉塞位置から第2開放位置に復帰させることにより、閉塞した第3チューブ38の第3流路38aを容易に開放させることができる。
【0074】
第1クランプ機構102は、第1押圧部114を第1閉塞位置にロックする第1ロック部116を有する。第2クランプ機構104は、第2押圧部132を第2閉塞位置にロックする第2ロック部134と、第2閉塞位置にある第2押圧部132が第2開放位置に復帰するように第2ロック部134のロックを解除するロック解除部136と、を有する。
【0075】
このような構成によれば、第1ロック部116によって第1押圧部114を第1閉塞位置に保持することができ、第2ロック部134によって第2押圧部132を第2閉塞位置に保持することができる。また、ロック解除部136によって第2ロック部134のロックを解除することにより、第2押圧部132を第2閉塞位置から第2開放位置に復帰させることができる。
【0076】
クランプ43は、第2チューブ36と第3チューブ38との間に設けられた第2壁部100を有する。第1押圧部114が第1閉塞位置に位置した状態で、第2チューブ36は、第2壁部100と第1押圧部114とによって挟持されている。第2押圧部132が第2閉塞位置に位置した状態で、第3チューブ38は、第2壁部100と第2押圧部132とによって挟持されている。
【0077】
このような構成によれば、第2チューブ36の第2流路36aと第3チューブ38の第3流路38aとを簡単に閉塞することができる。
【0078】
ロック解除部136は、第2ストッパ面150が設けられた第2爪部144から第2アーム部138の外側に向かって突出した操作部152を有している。
【0079】
このような構成によれば、ユーザは、操作部152を操作し易いため、第2ストッパ面150と第2爪部144との係合を容易に解除することができる。
【0080】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0081】
本発明のクランプにおいて、第1クランプ機構は、第2コネクタ部32b及び第3コネクタ部32cを通る平面と直交する方向からのユーザの操作により第1押圧部114が第1開放位置から第1閉塞位置に変位するように構成されてもよい。また、第2クランプ機構は、第2コネクタ部32b及び第3コネクタ部32cを通る平面と直交する方向からのユーザの操作により第2押圧部132が第2開放位置から第2閉塞位置に変位するように構成されてもよい。この場合、遠心分離移送装置12の単位セットエリア54の左領域54a2にクランプをセットした状態でユーザはクランプを上方から操作することができるため、クランプの操作性の向上を図ることができる。
【0082】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0083】
上記実施形態は、血液を収容するための第1バッグ(22)と、前記第1バッグ(22)内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容する第2バッグ(24)と、添加溶液が収容された第3バッグ(26)と、を備え、前記第1バッグ(22)に接続された第1チューブ(34)は、前記第2バッグ(24)に接続された第2チューブ(36)と前記第3バッグ(26)に接続された第3チューブ(38)とに分岐部(32)を介して連結された血液バッグシステム(10)であって、前記分岐部(32)に設けられた1つのクランプ(43)を備え、前記クランプ(43)は、前記第2チューブ(36)の流路(36a)を閉塞するための第1クランプ機構(102)と、前記第3チューブ(38)の流路(38a)を閉塞するための第2クランプ機構(104)と、を有し、前記第1クランプ機構(102)は、一度閉塞された前記第2チューブ(36)の流路(36a)を開放不能に構成され、前記第2クランプ機構(104)は、閉塞された前記第3チューブ(38)の流路(38a)を開放可能に構成されている、血液バッグシステム(10)を開示している。
【0084】
上記の血液バッグシステム(10)において、前記第1クランプ機構(102)は、前記第2チューブ(36)の流路(36a)が閉塞されるように前記第2チューブ(36)の外周面を押圧する第1押圧部(114)を有し、前記第2クランプ機構(104)は、前記第3チューブ(38)の流路(38a)が閉塞されるように前記第3チューブ(38)の外周面を押圧する第2押圧部(132)を有してもよい。
【0085】
上記の血液バッグシステム(10)において、前記第1押圧部(114)は、前記第2チューブ(36)の流路(36a)が開放される第1開放位置から前記第2チューブ(36)の流路(36a)が閉塞される第1閉塞位置に変位可能であるとともに前記第1閉塞位置から前記第1開放位置に復帰不能であり、前記第2押圧部(132)は、前記第3チューブ(38)の流路(38a)が開放される第2開放位置から前記第3チューブ(38)の流路(38a)が閉塞される第2閉塞位置に変位可能であるとともに前記第2閉塞位置から前記第2開放位置に復帰可能であってもよい。
【0086】
上記の血液バッグシステム(10)において、前記第1クランプ機構(102)は、前記第1押圧部(114)を前記第1閉塞位置にロックする第1ロック部(116)を有し、前記第2クランプ機構(104)は、前記第2押圧部(132)を前記第2閉塞位置にロックする第2ロック部(134)と、前記第2閉塞位置にある前記第2押圧部(132)が前記第2開放位置に復帰するように前記第2ロック部(134)の前記ロックを解除するロック解除部(136)と、を有してもよい。
【0087】
上記の血液バッグシステム(10)において、前記クランプ(43)は、前記第2チューブ(36)と前記第3チューブ(38)との間に設けられた壁部(100)を有し、前記第1押圧部(114)が前記第1閉塞位置に位置した状態で、前記第2チューブ(36)は、前記壁部(100)と前記第1押圧部(114)とによって挟持され、前記第2押圧部(132)が前記第2閉塞位置に位置した状態で、前記第3チューブ(38)は、前記壁部(100)と前記第2押圧部(132)とによって挟持されてもよい。
【0088】
上記実施形態は、血液を収容するための第1バッグ(22)と、前記第1バッグ(22)内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容する第2バッグ(24)と、添加溶液が収容された第3バッグ(26)と、前記第1バッグ(22)と分岐部(32)とを接続する第1チューブ(34)と、前記分岐部(32)と前記第2バッグ(24)とを接続する第2チューブ(36)と、前記分岐部(32)と前記第3バッグ(26)とを接続する第3チューブ(38)とを備える血液バッグシステム(10)において、前記分岐部(32)に設けられる1つのクランプ(43)であって、前記第2チューブ(36)の流路(36a)を閉塞するための第1クランプ機構(102)と、前記第3チューブ(38)の流路(38a)を閉塞するための第2クランプ機構(104)と、を有し、前記第1クランプ機構(102)は、一度閉塞された前記第2チューブ(36)の流路(36a)を開放不能に構成され、前記第2クランプ機構(104)は、閉塞された前記第3チューブ(38)の流路(38a)を開放可能に構成されている、クランプ(43)を開示している。
【0089】
上記実施形態は、血液を収容するための第1バッグ(22)と、前記第1バッグ(22)内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容する第2バッグ(24)と、添加溶液が収容された第3バッグ(26)と、を備え、前記第1バッグ(22)に接続された第1チューブ(34)は、前記第2バッグ(24)に接続された第2チューブ(36)と前記第3バッグ(26)に接続された第3チューブ(38)とに分岐部(32)を介して連結された血液バッグシステム(10)であって、前記分岐部(32)に設けられた1つのクランプ(43)を備え、前記クランプ(43)は、第1クランプ機構(102)及び第2クランプ機構(104)を有し、前記第1クランプ機構(102)は、可撓性を有する第1アーム部(118)と、前記第1アーム部(118)に設けられ、前記第2チューブ(36)の流路(36a)が閉塞されるように前記第2チューブ(36)の外周面を押圧する第1凸部(120)と、前記第2チューブ(36)の流路(36a)が閉塞された状態で前記第1アーム部(118)に係合する第1係合部(130)と、を有し、前記第2クランプ機構(104)は、可撓性を有する第2アーム部(138)と、前記第2アーム部(138)に設けられ、前記第3チューブ(38)の流路(38a)が閉塞されるように前記第3チューブ(38)の外周面を押圧する第2凸部(140)と、前記第3チューブ(38)の流路(38a)が閉塞された状態で前記第2アーム部(138)に係合する第2係合部(150)と、前記第2係合部(150)と前記第2アーム部(138)の係合を解除する係合解除部(136)と、を有する、血液バッグシステム(10)を開示している。
【0090】
上記の血液バッグシステム(10)において、前記係合解除部(136)は、前記第2係合部(150)が設けられた壁部(144)から前記第2アーム部(138)の外側に向かって突出した操作部(152)を有してもよい。
【要約】
血液バッグシステム(10)のクランプ(43)は、第2チューブ(36)の第2流路(36a)を閉塞するための第1クランプ機構(102)と、第3チューブ(38)の第3流路(38a)を閉塞するための第2クランプ機構(104)とを有する。第1クランプ機構(102)は、一度閉塞された第2チューブ(36)の第2流路(36a)を開放不能に構成され、第2クランプ機構(104)は、閉塞された第3チューブ(38)の第3流路(38a)を開放可能に構成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6