【文献】
GAO, Ping et al.,Visualization of nigrosomes-1 in 3T MR susceptibility weighted imaging and its absence in diagnosing Parkinson's disease,European Review for Medical and Pharmacological Science,2015年,Vol.19, No.23,Pages: 4603 - 4609
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
神経退行性疾患は、神経細胞が何らかの原因によって消滅することにより脳機能に異常を起こす病気を指す。
【0003】
代表的な神経退行性疾患としては、その多くがアルツハイマー病やパーキンソン病であり、稀にルー・ゲーリック病などが挙げられる。
【0004】
神経退行性疾患の内、パーキンソン病は、神経細胞が破壊される代表的な神経退行性疾患であって、筋固縮、揺戦、小刻み歩行症状と共に鬱や不安感が伴い、生活の質が大きく下がる。
【0005】
これらの神経退行性疾患の診断方法としては、粘膜との接触、または皮膚破壊、或いは自然開口部または人工開口部以外に、内部体腔に挿入することなく診断する非侵襲的な方法がある。
【0006】
例えば、下記の特許文献1および特許文献2には、従来技術による神経退行性疾患を診断する技術が開示されている。
【0007】
今までのパーキンソン病診断及び薬物誘発性パーキンソン症の鑑別診断には、同位元素を用いた[18F]FP−CIT陽電子放射断層撮影(Positron emission tomography、PET)が最も客観的な方法として用いられている。
【0008】
しかし、前記[18F]FP−CIT PETは、非常に高額な検査方法であり、被曝のリスクがある。
【0009】
したがって、MRIを用いてニグロソーム1領域を観察し、パーキンソン病を診断することができる技術の開発が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施例によるパーキンソン病診断装置及び方法を添付された図面を参照して、詳細に説明する。
【0020】
まず、
図1を参照して、黒質内のニグロソーム1領域を観察し、パーキンソン病を診断する基準を説明する。
【0021】
図1は、黒質とニグロソーム1領域を含むMRIを例示した図である。
【0022】
図1の(a)には、イメージングスラブ(imaging slab)が示されており、
図1の(b)には、健常者の黒質(substantia nigra)とニグロソーム1領域の画像が示されており、
図1の(c)には、パーキンソン病患者の黒質とニグロソーム1領域の画像が示されている。
【0023】
健常者の黒質内ニグロソーム1領域は、
図1の(b)に示すように黒く表示され、パーキンソン病患者のニグロソーム1領域は、
図1の(c)に示すように比較的灰色に近く表示される。
【0024】
したがって、本発明は、MRIにおいて、パーキンソン病の画像バイオマーカーとして提示されたニグロソーム1領域の陰影を観察し、パーキンソン病であるか否かを診断することができる。
【0025】
例えば、本発明は、3T MRIにおいて、磁化率マップ強調画像(Susceptibility MapWeighted Imaging、以下「SMWI」という)プロトコル及びその内部の定量的磁化率マッピング(Qluantitative Susceptibility Mapping、以下「QSM」という)アルゴリズムを適用してニグロソーム1領域の可視性を向上させ、ニグロソーム1領域が正常か否かを解析し、パーキンソン病を診断する。
【0026】
黒質緻密部(substantia nigra pars compacta)は、ドーパミン性神経細胞の高密度集団を含む中脳構造である。このニューロンは、特発性パーキンソン病(idiopathicParkinson’s disease、IPD)において、徐々に消失され障害をもたらす。この領域は、健常なコントラスト群と比較したとき、IPD患者において、鉄(iron)の濃度が増加していることが分かる。
【0027】
最近では、健常な被検者の高解像度磁化率コントラスト画像からニグロソーム1として知られている黒質緻密部の小さな部分を視覚化した結果、ニグロソーム1とその周辺の黒質領域(substantia nigra regions)間のコントラストは、鉄の濃度の差異によるものであって、IPD患者からの二つの部位における磁化率の差異は、著しく減少することが表された。
【0028】
このような二つの部位における磁化率の差異の減少は、IPDのイメージングバイオマーカーとして活用されている。
【0029】
したがって、ニグロソーム1構造は、高解像度(例えば、0.3mm平面分解能)T2−強調画像または磁化率強調画像(SWI)を用いて7T MRIにおいて成功的に描写された。
【0030】
しかし、低磁界の強度、例えば、3T MRIにおいては、限られた空間解像度と信号/コントラスト対ノイズ比(SNR/CNR)により、3D高解像度T2−強調画像からコントラスト(contrast)、すなわち、コントラスが著しく減少した構造が観察される。
【0031】
これらの制限は、接近法の有用性を実証したいくつかの成功的な研究にもかかわらず、3T MRIにおいて、ニグロソーム1イメージングの信頼性と適用可能性を阻害した。
最近では、前記のような問題点を解消するために、向上された磁化率コントラストを提供するための新たな方法が提案されている。
【0032】
その中の一方法は、SNRを向上させるために、単一エコー画像を用いる代わりに、マルチエコーグラジェントリコールエコー(multi−echo gradient recall echo、以下「マルチエコーGRE」という)マグニチュード画像(magnitude images)を組み合わせるというものであって、3T MRIにおいて、IPDを診断するのに比較的高い正確度を示す。
【0033】
前記マグニチュード画像の代案は、磁化率コントラストを高めるために重み付けマスク(mask)として位相(phase)情報を用いる磁化率強調画像(susceptibility−weighted imaging、SWI)があるが、位相イメージングのブルーミング(blooming)によりアーチファクト(artifacts)を生成することができる。
【0034】
他の磁化率コントラストに関連する接近法は、GRE位相(または周波数)画像と定量的磁化率マッピング(QSM)であり、両方とも磁化率に対する感度に優れており、最近では広く適用されている。
【0035】
また、マグニチュード画像に対し、QSMから誘導された磁化率強調マスク(susceptibilityweighting mask)を用いた新たな方法が提案されている。
【0036】
この接近法は、SWIと類似するが、SWIのブルーミングアーチファクトを解決し、潜在的に磁化率変化の視覚化を向上させることができる。
【0037】
QSMマスク強調画像は、ニグロソーム1構造を視覚化するのに有用であることが立証されている。
【0038】
前記非特許文献1には、神経画像(neuroimaging)のためのSMWI技術が開示されており、前記非特許文献2には、3T MRIにおいて、マルチエコーSMWIを用いた黒質内ニグロソーム1のイメージング技術が開示されており、前記非特許文献3には、脳の鉄分を測定するためのQSM技術が開示されている。
【0039】
したがって、本発明は、脳における鉄分の濃度と磁化率の相関に応じてパーキンソン病に起因するニグロソーム1領域の変化に基盤してパーキンソン病を診断する。
【0040】
図2は、本発明の好ましい実施例によるパーキンソン病診断装置のブロック構成図である。
【0041】
本発明の好ましい実施例によるパーキンソン病診断装置10は、
図2に示すように、患者の脳を撮影したMRIにおいて、マルチエコーマグニチュード及び位相画像を取得する画像取得部20と、取得された画像からパーキンソン病の画像バイオマーカーとして提示された黒質とニグロソーム1領域のみを観察できるように後処理する画像処理部30と、処理された画像を解析してニグロソーム1領域が含まれた画像を分類し、分類された画像において、ニグロソーム1領域を検出する画像解析部40、及び分類された各画像において、ニグロソーム1領域が正常か否かを判断し、パーキンソン病気を診断する診断部50を含む。
【0042】
図3を参照して、画像取得部と画像処理部の構成を詳細に説明する。
【0043】
図3は、画像取得部と画像処理部の動作を説明する図である。
図3には、マルチエコー合成GREイメージからニグロソーム1構造に対するSMWI画像を生成する過程が示されている。
【0044】
画像取得部20は、
図3に示すように、MRI装置21またはMRI装置21で撮影されたMRIを保存し、管理するデータベース(図示しない)と通信可能に接続され、パーキンソン病を診断しようとする患者のMRIを取得する。
【0045】
画像処理部30は、
図3に示すように、ニグロソーム1構造の視覚化のために、QSMアルゴリズムを用いて、マルチエコーマグニチュード画像とマルチエコー位相画像(phase image)が複合されたマルチエコーGRE複合画像においてSMWI画像を生成する。
【0046】
例えば、画像処理部30は、マルチチャンネル複合画像からマルチチャンネルマグニチュード画像二乗平方根によってチャンネル結合されたマグニチュード画像を生成し、位相画像は、個別チャンネルのグローバル位相オフセットを補正した後 、複素平均で結合される(1段階)。
【0047】
また、画像処理部30は、六個のエコーマグニチュード画像二乗平方根によって単一イメージで結合される(2段階)。
【0048】
画像処理部30は、ラプラシアン・アンラッピング(Laplacian unwrapping)アルゴリズムを用いて、互いに異なるTEの位相画像を計算し、各ボクセルに結合された周波数(w)を計算する(3段階)。
【0049】
画像処理部30は、周波数画像において、ラプラシアン演算子(Laplacian operator)方法を用いた高調波背景位相除去を用いて、背景領域を除去する(4段階)。
【0050】
ここで、前記QSMは、向上されたスパース線形方程式(sparse linear equation)と最小二乗法(least−squares、iLSQR)を用いて再構成することができる。
【0051】
例えば、iLSQRの再構成パラメータにおいて、許容誤差=0.01、不完全なk−領域マスクに対する閾値D2、thres=0.1である。
【0052】
次いで、画像処理部30は、結果QSMを追加で処理して磁化率コントラスト重み付けのためのQSMマスク(Smask)を生成する(5段階)。
【0053】
前記マスクは、数式1を用いて生成することができる。
【数1】
ここで、Xは、前記4段階で計算された定量的磁化率値(ppm単位)であり、Xthは、常磁性限界値である。前記閾値は、後に好適なCNRに対するニグロソーム1イメージングデータを用いて決めることができる。
【0054】
最後に、画像処理部30は、下記の数式2を用いて、マルチエコー結合されたマグニチュード画像にQSMマスクを乗じてSMWI画像を生成することができる。
【数2】
ここで、mは、磁化率重み付け値に対する乗算の数であり、magは、前記2段階のマルチエコーマグニチュード結合画像である。
【0055】
次に、
図4及び
図5を参照して、画像解析部の動作を詳細に説明する。
【0056】
図4及び
図5は、画像解析部の動作を説明する図である。
図4には、ニグロソーム1領域が含まれた画像を分類する過程が示されており、
図5には分類された画像からニグロソーム1領域を検出する過程が示されている。
【0057】
画像処理部30の後処理過程を通じて
図4に示すように、多数のSWMI画像を取得することができる。
【0058】
一般に、パーキンソン病診断のために撮影されたMRIは、患者1名当たり約40〜70余枚程であり、この中から、パーキンソン病診断に用いられるニグロソーム1領域が含まれる画像は、約3〜6枚以内である。
【0059】
画像解析部40は、
図4に示すように、機械学習(machine learning)を通じて全体のMRIの中からニグロソーム1領域が含まれた画像を解析してニグロソーム1領域が含まれた画像と含まれていない画像を分類(classification)することができる。
【0060】
例えば、画像解析部40は、機械学習のディープラーニングニューラルネットワーク(deep learnig neuralnetwork)を利用した方式の中から領域畳み込みニューラルネットワーク(Region−ConvolutionalNeural Network、以下「RCNN」という)を利用し、ニグロソーム1領域が含まれた領域を分類することができる。
【0061】
すなわち、画像解析部40は、取得した画像を畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional NeuralNetwork、以下「CNN」という)を利用し、特徴マップ(feature map)を検出し、領域提案ネットワーク(Region Proposal Network、以下「RPN」という)を利用し、検出された特徴マップに約2000個の関心領域(Region of Interest、RoI)を選定し、選定された関心領域を同一のマグニチュードでリサイジング(resizing)させた後、CNNに入力される関心領域における位置の正確度を高めるために、ニューラルネットワークで構成されたサポートベクトルマシン(Support Vector Machine、SVM)を用いて、各関心領域に対してCNNを実行して分類し、分類結果に対して分類ロス(classification loss)と矩形回帰ロス(bounding−box regression loss)処理して、最終的にニグロソーム1領域が含まれた画像だけに最小限に抑えることができる。
【0062】
また、画像解析部40は、
図5に示すように、機械学習を通じて分類されたニグロソーム1領域を含む各画像において、ニグロソーム1領域が存在する位置を指定し、指定されたニグロソーム1領域を検出することができる。
【0063】
次に、
図6及び
図7を参照し、診断部の動作を説明する。
【0064】
図6は、診断部の動作を説明する図であり、
図7は、入力画像に診断結果を適用した状態を示す図である。
【0065】
診断部50は、
図6に示すように、機械学習を通じて画像解析部40から検出されたニグロソーム1領域に対して正常か否かを解析して、パーキンソン病であるか否かを診断することができる。
【0066】
例えば、
図7の(a)〜(d)の入力画像において、パーキンソン病であるか否かの診断結果に応じて、
図7の(e)〜(h)に示すように、診断結果が適用されることができる。
【0067】
次に、
図8を参照して、本発明の好ましい実施例によるパーキンソン病診断方法を詳細に説明する。
【0068】
図8は、本発明の好ましい実施例によるパーキンソン病診断方法を段階的に説明する工程図である。
【0069】
図8のS10の段階において、画像取得部20は、MRI装置21またはデータベースとの通信を介してパーキンソン病を診断しようとする患者の多数のMRIを取得する。
ここで、画像取得部20は、3T MRIにおいて、マルチエコーマグニチュード画像とマルチエコーの位相画像(phase image)が複合されたマルチエコーGRE複合画像を取得することができる。
【0070】
S12段階において、画像処理部30は、ニグロソーム1構造の視覚化のために、QSMアルゴリズムを用いて、マルチエコーマグニチュード画像とマルチエコーの位相画像(phase image)が複合されたマルチエコーGRE複合画像を後処理してSMWI画像を生成する。
【0071】
S14段階において、画像解析部40は、機械学習(machine learning)を全体のMRIの中からニグロソーム1領域が含まれた画像を解析してニグロソーム1領域が含まれた画像と含まれていない画像を分類(classification)する。
【0072】
また、画像解析部40は、機械学習を通じて分類されたニグロソーム1領域を含む各画像において、ニグロソーム1領域が存在する場所を指定し、指定されニグロソーム1領域を検出する(S16)。
【0073】
最後に、診断部50は、画像解析部40において、ニグロソーム1領域を含む画像に分類された各画像から検出されたニグロソーム1領域の正常か否かを判断し、パーキンソン病であるか否かを診断する。
【0074】
前記のような過程を経て、本発明は、MRIにおいて、ニグロソーム1領域が含まれた画像のみを分類し、分類された画像においてニグロソーム1領域を解析してパーキンソン病であるか否かを診断することができる。
【0075】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能なものである。