(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
離して立設される前記一対の風路形成部材の前記交差方向における離隔距離の平均値は、前記送風方向における前記一対の風路形成部材の上流側の上流側端部における前記離隔距離よりも大きい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の冷媒回収システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における冷媒回収システムの概略構成を示す図である。本実施の形態における冷媒回収システムは、空調機の冷媒を回収ボンベに回収するためのシステムである。
図1には、空調機1と、回収ボンベ2と、回収装置3と、送風装置4と、一対の風路形成部材5と、重量計6と、が示されている。
【0015】
空調機1は、冷媒を用いて対象空間の冷却または加熱を行う装置である。対象空間は、例えばビル、家屋等の建築物や車両、エレベータ等の移動体等の内部空間である。冷媒は、例えばフロン類である。本実施の形態では、冷媒を用いる装置の一例として空調機1を例示している。
【0016】
回収ボンベ2は、冷媒を回収する作業者によって空調機1のある空間に持ち込まれる冷媒回収用の耐圧容器である。回収ボンベ2は、冷媒回収時には重量計6の上に載置される。回収ボンベ2は、様々なサイズのものを用いることができる。例えば、回収ボンベ2は、持ち運びが容易な20kg用のものを用いることができる。また他の例としては、小容量の10kg用、あるいは、大容量の40kg用、100kg用などが挙げられる。空調機1で使用されていた冷媒量に比べて回収ボンベ2の容量が小さいときは、複数の回収ボンベ2を交換しながら冷媒を回収することになる。回収ボンベ2は、図示しない内部の圧力を測定する圧力センサと、充填された冷媒の液面高さを測定するフロートセンサと、を備えている。各センサの出力値は、作業者が直接読み取ることもできるし、有線または無線により回収装置3に送信することもできる。回収ボンベ2は、さらに充填された冷媒の温度を測定する温度センサなどを備えてもよい。
【0017】
図2は、本実施の形態における回収装置3のブロック構成を示す図である。回収装置3には、コンピュータが内蔵されている。すなわち、回収装置3は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶手段、さらに外部装置との通信手段を備えている。また、必要により作業者が操作し、作業者に情報を提供するためのユーザインタフェースを備えてもよい。
【0018】
回収装置3は、空調機1から冷媒を回収し、回収ボンベ2に充填するための装置である。回収装置3は、チューブ32a,32bを備えている。チューブ32aは、冷媒回収ポンプ38と空調機1とを接続する中空形状の部品である。チューブ32aは、空調機1の内部の冷媒を、冷媒回収ポンプ38に向けて送出する経路となる。チューブ32aを流れる冷媒は、通常、気体の状態である。チューブ32bは、の熱交換器39と回収ボンベ2とを接続する中空形状の部品である。チューブ32bは、熱交換器39から流れ出る冷媒を回収ボンベ2に送出する経路となる。チューブ32bを流れる冷媒は、通常、液体の状態である。
【0019】
作業者は、空調機1がビルなどに取り付けられた状態で冷媒の回収を行う場合、空調機1の室外機にチューブ32aを、回収ボンベ2にチューブ32bを、それぞれ接続して空調機1で使用されていた冷媒を回収する。回収装置3は、さらに圧力センサ34、温度センサ36、冷媒回収ポンプ38、熱交換器39、外気温センサ40、ファン41、通信部42、充填状態データ取得部44及び制御部46を備えている。
【0020】
なお、回収装置3から回収ボンベ2へ送出する冷媒の圧力及び温度は、回収ボンベ2内における冷媒の圧力及び温度と密接に関係しているため、回収装置3は、チューブ32bを通じて送出する冷媒の圧力を測定するセンサを備えてもよい。また、回収装置3は、チューブ32bを通じて送出する冷媒の温度を測定するセンサを備えてもよい。制御部46は、センサにより測定された冷媒の圧力と温度の一方または両方を参照して冷媒回収を制御するのが好適である。あるいは、回収ボンベ2内の内圧及び温度を測定するセンサを設け、制御部46は、センサにより測定された回収ボンベ2内の内圧と温度の一方または両方を参照して冷媒回収を制御するようにしてもよい。
【0021】
圧力センサ34は、チューブ32aを通じて空調機1から吸引される気体状態の冷媒の圧力を測定するセンサである。温度センサ36は、チューブ32aを通じて空調機1から吸引される気体状態の冷媒の温度を測定するセンサである。吸引した冷媒の温度及び圧力は、冷媒回収ポンプ38による冷媒の圧縮と、熱交換器39による冷媒の液化に関係している。そこで、制御部46が測定された圧力と温度とを参照して冷媒回収を制御するのが好適である。
【0022】
冷媒回収ポンプ38は、冷媒の輸送を行う装置である。冷媒回収ポンプ38の例としては、電動モータを駆動源とする装置が挙げられる。冷媒回収ポンプ38は、チューブ32aを通じて空調機1から気体の冷媒を吸引するとともに、吸引した冷媒を圧縮して、熱交換器39に送出する。冷媒回収ポンプ38が冷媒を圧縮した場合、冷媒は高温高圧化する。一部の冷媒が液化することもある。
【0023】
熱交換器39は、冷媒を冷却して液化する装置である。熱交換器39は、冷媒回収ポンプ38から流れ込む高温高圧の冷媒の熱を外部に放出することによって冷媒を冷却して液化する。
【0024】
外気温センサ40は、回収装置3の周囲の気温を測定するセンサである。冷媒の回収効率は、外気温にも依存する。そこで、制御部46が外気温を参照して冷媒回収を制御するのが好適である。
【0025】
ファン41は、熱交換器39に外気を送風する装置である。ファン41の例としては、電動モータの動力を受けて回転するプロペラタイプのものが挙げられる。ファン41は、熱交換器39に送風を行い、熱交換器39を冷却して、熱交換器39における冷媒の液化を促進する。
【0026】
通信部42、充填状態データ取得部44及び制御部46は、回収装置3に内蔵されたコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。通信部42は、有線または無線での通信により、送風装置4や重量計6などの外部装置との通信を行う。通信部42は、さらに、作業者が所属する組織のサーバなどとも通信することが可能である。充填状態データ取得部44は、回収ボンベ2における冷媒の充填状態に関するデータ(「充填状態データ」という)を取得する。充填状態データの例としては、冷媒の充填量、充填速度、圧力、温度などが挙げられる。充填状態データ取得部44は、回収ボンベ2のセンサ類から充填状態データを取得してもよいし、重量計6が計測する回収ボンベ2の重量を充填状態データとして取得してもよい。また、取得した充填状態データに基づいて適当な演算(一例としては流量を積算することで充填量を求める態様が挙げられる)を行うことで、充填状態データを取得することも可能である。
【0027】
制御部46は、回収装置3の各種制御を行っている。制御部46の制御対象の一つは冷媒回収ポンプ38である。制御部46は、作業者の指示によって、または、所定のプログラムに従って冷媒回収ポンプ38の起動、停止、出力変更等の制御を行う。また、例えば、回収ボンベ2から入力された圧力やフロート高さが所定の基準値を超えた場合に、安全性確保の観点から冷媒回収ポンプ38を停止するなどの制御も行う。制御部46は、さらに作業者の指示によって、または所定のプログラムに従って送風装置4の起動、停止、出力変更等の制御を行うようにしてもよい。
本実施の形態では、
図2に示すように制御部46等を回収装置3に設けたが、冷媒回収の制御機能を別装置にて実現してもよい。例えば、回収装置3が冷媒回収ポンプ38、熱交換器39及びファン41のみを備え、回収装置3とは別個に設けた制御装置に、圧力センサ34、温度センサ36、外気温センサ40、通信部42、充填状態データ取得部44及び制御部46を備えるよう構成してもよい。あるいは、回収装置3が圧力センサ34、温度センサ36、外気温センサ40、冷媒回収ポンプ38、熱交換器39及びファン41を備え、その他の構成を制御装置に持たせてもよい。
【0028】
なお、作業者が、回収装置3の図示しないユーザインタフェースを利用せずに、例えば作業者が携帯する端末装置(PC、タブレット、スマートフォンなど)を通じて指示を出すように構成することも可能である。
【0029】
重量計6は、回収ボンベ2の重量を計測する装置である。重量計6は、計測した重量を重量計6の表示部(図示せず)に表示する。また、重量計6は、計測した重量を回収装置3に送信することもできる。重量計6を用いることで、フロン類等の回収の際に、回収冷媒量を明確にすることができる。
【0030】
図3は、
図1に示す冷媒回収システムと回収ボンベ2との位置関係を上方から見たときの模式図である。
【0031】
送風装置4は、回収ボンベ2に対して一方向から空気を送風する。
図3において、風路形成部材5間の空気の流れは、矢印で示している。送風装置4は、例えば、1又は複数のファン4aを内蔵する。ファンは、電動モータの動力を受けて回転するプロペラタイプのファンを用いてもよい。送風装置4は、搭載したバッテリまたは商用電源を駆動源とする。
【0032】
一対の風路形成部材5は、送風装置4が送風した空気を回収ボンベ2に導く風路を形成する風路形成部として設けられている。一対の風路形成部材5は、それぞれ板状に形成され、送風装置4が空気を送風する送風方向に交差する交差方向で離して立設される。回収ボンベ2を挟んで送風装置4の反対側には、送風装置4から送風された空気を外部に導く風路の出口となる開口部7が形成される。つまり、送風装置4の送風方向における一対の風路形成部材5の下流側の下流端部が開口部7を構成する。なお、一対の風路形成部材5は、それぞれ同等の構造で形成され、相互に区別する必要はないので、以降の説明において単に「風路形成部材5」というのは、一対の風路形成部材5を指す。
【0033】
風路形成部材5は、立設方向に沿って折り曲げ可能な折り曲げ部5aを備える。本実施の形態では、回収ボンベ2と風路形成部材5の内壁との間の風路の幅及び開口部7の幅を調整可能とするために折り曲げ部5aを設けている。従って、風路形成部材5を設置したときに、折り曲げ部5aを回収ボンベ2と対向する位置近傍に設けるのが好適である。折り曲げ部5aを蝶番の構造にて形成し、風路形成部材5を2つに折り畳むことができるように構成すれば、持ち運びにも便利である。
【0034】
風路形成部材5の素材は、特に限定する必要はない。ただ、風路形成部材5は、作業者によって持ち運ばれるので軽量の素材の方が好ましい。その一方、風路形成部材5は、送風装置4の風量に負けて倒れてしまう可能性があるので、重量を適度に持たせておくようにしてもよい。ただ、重量のある素材で構成せずに脚などの転倒防止部材を風路形成部材5に設けて風量に負けないような構造としてもよい。また、風路形成部材5は、屋外で使用される場合が多いので、耐久性のある金属で形成してもよい。
【0035】
次に、冷媒回収システムを用いた冷媒の回収手順について
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0036】
空調機1からの冷媒の回収は、通常、空調機1の室外機を通じて行われる。作業者は、回収ボンベ2、回収装置3、送風装置4、風路形成部材5及び重量計6を持ち込んで室外機が設置された屋上などの作業場所に向かう。そして、作業車は、次の手順にて冷媒回収システムを設置する(ステップ110)。
【0037】
作業者は、室外機の近くに重量計6を設置し、重量計6の上に回収ボンベ2を載置する。冷媒の回収を始める前の段階では、回収ボンベ2は空の状態なので、回収ボンベ2のみの重量が計測される。続いて、作業者は、回収装置3のチューブ32aを室外機に接続し、チューブ32bを回収ボンベ2に接続する。さらに、作業者は、有線による通信の場合、回収ボンベ2の圧力センサやフロートセンサ、重量計6の測定データが回収装置3に入力されるようにケーブルを接続するなど通信の設定を行う。
【0038】
作業者は、回収ボンベ2の近傍に送風装置4を設置する。送風装置4は、空気が回収ボンベ2に向けて送られるように設置される。そして、風路形成部材5は、送風装置4から回収ボンベ2に向けて送風される空気が回収ボンベ2に効率的に当たるように送風装置4及び回収ボンベ2を挟む位置に立設される。
図3に示すように、風路形成部材5は、風路形成部材5の折り曲げ部5aの位置が回収ボンベ2の設置位置に合うように、風路形成部材5の一端側が送風装置4の設置位置に合うように設置される、そして、風路形成部材5の他端側で風路の出口となる開口部7が形成される。風路形成部材5は、このように送風装置4が送風する空気が回収ボンベ2の一方向側から他方向側に抜けるよう風路を形成する。
【0039】
以上のように冷媒回収システムを設置した後、作業者は、回収装置3の電源を入れて起動する。これにより、回収装置3は冷媒の回収を開始する(ステップ120)。回収過程では、冷媒回収ポンプ38は、チューブ32aを介して冷媒を気体の状態で冷媒回収ポンプ38に吸い込み、冷媒を加圧して熱交換器39に送り出す。熱交換器39は、ファン41の送風を受けて、冷媒を低温下し、液化して、回収ボンベ2に送り込む。このようにして、冷媒は、回収ボンベ2に充填され、回収される。気体状態の冷媒に圧力をかけた場合、冷媒は、圧縮されることで温度が上昇する。また、温度上昇による冷媒の膨張と、液化状態の冷媒の蒸発とにより、さらに圧力が上昇する。こうして、冷媒を回収している間、回収ボンベ2の温度が上昇することになる。
【0040】
回収ボンベ2の温度が高くなると、回収ボンベ2内の圧力が上昇する。このため、冷媒の回収ボンベ2への充填を継続することが困難になり、充填速度が低下する。そこで、作業者は、送風装置4の電源を入れることで起動し、回収ボンベ2の冷却を開始する(ステップ120)。
【0041】
送風装置4は、電源が投入されると送風を開始する。送風装置4から送り出される空気は、回収ボンベ2に向かい、回収ボンベ2の外壁に当たる。なお、送風装置4と風路形成部材5との間に隙間を開け、空気の巻き込み効果を利用して風量を増加させるように送風装置4及び風路形成部材5を設置してもよい。あるいは、送風装置4の筐体の底部に空洞を設けるようにしてもよい。回収ボンベ2に当たる空気は、回収ボンベ2の表面から熱を奪うことで回収ボンベ2の温度上昇を抑制し、また、温度を低下させる。
【0042】
設置した回収ボンベ2の容量より大量の冷媒が空調機1で用いられている場合、回収ボンベ2は、適宜取り換えられる。そして、空調機1の冷媒が回収された段階で回収作業は終了される(ステップ140)。作業者は、回収装置3及び送風装置4の電源を切断する。また、回収ボンベ2の閉栓を行い、チューブ32a,32bをそれぞれ回収装置3及び回収ボンベ2から取り外す。そして、作業者は、回収ボンベ2の最終的な重量を記録する。これにより、回収された冷媒の重量が求められることになる。作業者は、回収ボンベ2、回収装置3、送風装置4、風路形成部材5及び重量計6を持って作業場所から撤収する(ステップ150)。
本実施の形態では、以上のようにして空調機1から冷媒を回収するが、冷媒の回収手順は、これに限る必要はない。
図5は、
図4と異なる冷媒の回収手順を示すフローチャートである。なお、同じ手順には同じステップ番号を付け、説明を適宜省略する。
例えば、冷媒の回収開始と同時に、圧縮された液体冷媒は、回収ボンベ2に充填される。そのため、回収ボンベ2の温度は、冷媒回収開始と同時に上昇しはじめる。温度が低い場合は冷媒の回収速度が速いため、冷媒回収システムを設置すると(ステップ110)、回収装置3に合わせて送風装置4の電源を入れて起動する。このようにして、冷媒の回収と同時に回収ボンベ2の冷却を開始する(ステップ160)。あるいは、冷媒回収以前に送風装置4の電源を入れて回収ボンベ2の冷却を開始させてもよい。このように、回収ボンベ2を低温化しておくことで、回収ボンベ2内における冷媒の圧力及び温度の上昇を抑制し、冷媒回収速度の低下を事前に防止するようにしてもよい。
【0043】
ここで、本実施の形態において使用する送風装置4及び風路形成部材5と、回収ボンベ2に対する送風装置4及び風路形成部材5の位置関係についてさらに説明する。
【0044】
前述したように、本実施の形態では、送風装置4から送風される空気を回収ボンベ2に当てることによって回収ボンベ2の温度上昇を抑制する。この抑制効果を高めるためには、回収ボンベ2に当てる空気の風量及び風速を大きくすることが望ましい。
【0045】
まず、風量を大きくするための方法として、送風装置4に搭載するファンの数を増やすことが考えられる。
図6Aは、ファン4aを横方向に2つ並べて搭載した場合の図である。
図6Bは、ファン4aを横方向に3つ並べて搭載した場合の図である。また、
図6Cは、ファン4aを縦方向に3つ並べて搭載した場合の図である。このように、ファン4aを縦又は横の少なくとも一方向に複数並べて搭載することで、送風装置4の風量を増加させてもよい。また、
図6Cに示すように、回収ボンベ2の肩2aの位置から上方に位置するファン4a−1は、送風する空気が回収ボンベ2の肩2aの位置に極力直角に当たるように設置する。これは、ファン4a−1の位置を傾けた状態の送風装置4を用意してもよいし、送風装置4のファン4a−1の部分を可倒式としてもよい。このように、送風装置4の上方から下方に向けて空気を回収ボンベ2に当てるようにすることで冷却効果を高めるとともに開口部7からではなく風路形成部材5の上方から抜けようとする空気を抑えることが可能となる。
図6A〜
図6Cには、複数のファンを備える送風装置4を示したが、
図6Dに示すように、送風装置4を、筐体を別にした複数のファン4aで構成し、複数のファン4aを並べて配置して、送風する構造としてもよい。ファン4a個々の重量は、複数のファン4aをまとめた重量より軽量であるため、複数のファン4aを一体化した送風装置4に比べ、持ち運びに便利である。また、冷媒回収作業は、室外機がビル(家も含む)の屋上やビル間の狭小部等十分にスペースが確保できない場所に配置されている場合が少なくない。このため、複数のファン4aを別筐体にて形成することによって狭い場所等冷媒回収システムを設置する場所の状況に柔軟に対応することができる。
【0046】
ところで、回収ボンベ2に当てる風量を増やすために回収ボンベ2の四方に送風装置4を設置することも考えられる。しかしながら、回収ボンベ2の一方向側以外からも空気を当てようとすると、送風装置4から送風される空気の流れが相殺されてしまう。つまり、一方向側以外からも空気を当てようとするファンの配置は、冷却効果を向上できないことは、実験により実証済みである。なお、
図6Cは、上方から下方に向けて送風しているが、
図6Cに示す送風装置4は、図面の左側から右側への一方向の送風に該当し、
図6Cに示すファン4a−1の配置によって冷却効果を向上できることは、実験により実証済みである。
【0047】
また、回収ボンベ2に当てる風速を大きくするための方法としては、前述したように一方向から空気を当てることで、回収ボンベ2の外周にコアンダ効果の現象を発生させることが有効である。また、風路における空気の流れをスムーズにし、風路形成部材5の間で空気が対流しにくいようにするために、風路形成部材5と回収ボンベ2との間に形成される風路の幅d1,d2の和が開口部7の幅と同じ若しくは狭くなるように風路形成部材5を設置するのが好ましい。より具体的には、風路形成部材5の、送風装置4からの送風方向に交差する交差方向における離隔距離の平均値が、下流側端部、すなわち開口部7における離隔距離よりも大きくなるよう設置する。また、風路形成部材5の、上記交差方向における離隔距離の平均値が、上記送風方向における風路形成部材5の上流側の上流側端部(すなわち、送風装置4側端)における離隔距離よりも大きくなるよう設置する。あるいは、送風装置4を回収ボンベ2に極力近づけて設置してもよい。この場合、回収ボンベ2から開口部7までの距離が十分にとれるように折り曲げ部5aより開口部7側の風路形成部材5を送風装置4側の長さより長く形成してもよい。
【0048】
例えば、回収ボンベ2に当たる風速が10m/秒以上となるように構成した場合、回収ボンベ2の周辺の温度と回収ボンベ2の温度との温度差が5度以上であれば、上記構成により送風だけでも十分な冷却効果が得られることは、実験により実証済である。なお、回収ボンベ2の周辺の温度は、回収装置3の外気温センサ40の測定温度を用いる。回収ボンベ2の温度は、回収ボンベ2に充填された冷媒の温度の測定温度を用いる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態によれば、送風装置4及び風路形成部材5という簡単な構成にて送風だけで回収ボンベ2を効率よく冷却することが可能となる。
【0050】
実施の形態2.
図7は、本実施の形態における冷媒回収システムの概略構成を示す図である。本実施の形態においては、上記実施の形態1と同じ構成要素には同じ符号を付け、説明を省略する。本実施の形態における冷媒回収システムは、実施の形態1の構成に、保持している水分を回収ボンベ2の外壁に供給する水分保持部材8を備えることを特徴とする。
【0051】
本実施の形態における水分保持部材8は、シート形状であり、回収ボンベ2の外周に巻き回され、覆うように設置される。水分保持部材8は、ピン、ボタン、磁石、ファスナー、面ファスナー等の方法にて回収ボンベ2の外周に固定される。水分保持部材8は、水をはじく性質、すなわち撥水性を有する素材により形成される。例えばポリエステルである。水分保持部材8に含める水分は、水道水を想定しているが、その他の水分を含ませてもよい。
【0052】
本実施の形態における冷媒回収システムの利用態様は、基本的には実施の形態1と同じでよい。ただ、作業者は、実施の形態1に対し、水分保持部材8に水分を含ませ、回収ボンベ2の外周に巻き回す作業が追加される。水分保持部材8に水分を含ませる作業は、回収ボンベ2の外周に巻き回す前でも後でもよい。本実施の形態において、実施の形態1に対し追加する作業は、冷媒の回収を開始させる前まであればいつ実施してもよい。ただ、風路形成部材5を設置する前の方が水分保持部材8を回収ボンベ2に取り付けやすい。
【0053】
水分保持部材8に含まれる水分は、回収ボンベ2から熱を奪って、回収ボンベ2の温度上昇を抑制し、また温度を低下させる。送風装置4から回収ボンベ2に向けて送風される空気が水分保持部材8に当たることで、水分保持部材8に含まれる水分の気化は促進される。本実施の形態では、撥水性を有する素材を水分保持部材8に用いているので、水分保持部材8に保持されている水分が気化しやすく、よって気化速度をさらに向上させることが可能となる。
【0054】
本実施の形態によれば、実施の形態1に示す構成に水分保持部材8を併用することで、実施の形態1と比較して冷媒の回収時、換言すると回収ボンベ2の冷却開始時点における冷却効果を高めることができる。これにより、冷媒回収効率を向上させることができる。
【0055】
なお、水分保持部材8に保持されている水分が少なくなって冷却効果が期待できない状態になった場合、水分保持部材8を取り外してもよいし、水分保持部材8に水分を供給してもよい。
【0056】
実施の形態3.
図8は、本実施の形態における冷媒回収システムの概略構成を示す図である。本実施の形態においては、上記実施の形態1と同じ構成要素には同じ符号を付け、説明を省略する。本実施の形態における冷媒回収システムは、実施の形態1の構成に、送風装置4が送風する空気に水を噴霧する噴霧装置9を備えることを特徴とする。
【0057】
本実施の形態における噴霧装置9は、本体部に水を貯蔵する貯蔵タンク9aが内蔵されている。貯蔵タンク9aに貯める水は、水道水を想定しているが、その他の液体を貯めてもよい。貯蔵タンク9aに貯蔵されている水は、水の噴出口を形成する噴霧ノズル9bから噴霧される。噴霧ノズル9bは、送風装置4と回収ボンベ2との間に位置付けされる。噴霧装置9は、搭載したバッテリまたは商用電源を駆動源とする。また、噴霧装置9は、作業者による手動による操作のみならず、回収装置3と有線または無線により通信可能に接続され、回収装置3の制御部46により起動、停止、噴出量等の制御が行われるように構成されてもよい。
【0058】
本実施の形態における冷媒回収システムの利用態様は、基本的には実施の形態1と同じでよい。ただ、作業者は、実施の形態1に対し、噴霧装置9の貯蔵タンク9aに水を貯蔵し、噴霧ノズル9bを、送風装置4と回収ボンベ2との間に位置決めする作業が追加される。本実施の形態において、実施の形態1に対し追加する作業は、冷媒の回収を開始させる前まであればいつ実施してもよい。ただ、送風装置4と回収ボンベ2を設置した後の方が噴霧ノズル9bの位置決めは容易である。
【0059】
噴霧装置9に電源が投入されると、貯蔵タンク9aから吸引された水は、噴霧ノズル9bからミストにされ噴出される。これにより、送風装置4から送風される空気は、噴霧ノズル9b付近においてミストを含有したミスト含有空気となり、回収ボンベ2に向かう。そして、ミスト含有空気は、回収ボンベ2の冷却を行う。なお、ミスト含有空気が回収ボンベ2の外壁に均等に到達するように、噴霧ノズル9bは、送風装置4と回収ボンベ2の各中心を結ぶ直線上の送風装置4寄りに位置決めされるのが好ましい。
【0060】
ミストは、単位質量あたりの表面積が大きいため、蒸発が起こりやすい。回収ボンベ2に到達する前にミストが蒸発する場合、周囲の空気から気化熱を奪うため、空気の温度が低下する。冷たくなった空気は、回収ボンベ2から大きな熱を奪って、回収ボンベ2の温度を低下させる。また、ミスト状態で回収ボンベ2に至った水は、回収ボンベ2の表面に付着する。そして、回収ボンベ2から熱を奪って高温化するとともに、周囲に流れる空気の作用も受けて気化する。気化の際、ミストは、回収ボンベ2から大きな気化熱を奪うことになる。このようにして、噴霧装置9は、回収ボンベ2の温度上昇を抑制し、また、温度を低下させる。なお、一部のミストは、回収ボンベ2の周囲に落下する。しかし、冷媒回収システムは、通常、屋外で使用されるため、特段問題とはならない。
【0061】
本実施の形態によれば、実施の形態1に示す構成に噴霧装置9を併用することで、実施の形態1と比較して回収ボンベ2の冷却効果を高めることができる。これにより、冷媒回収効率を向上させることができる。
【0062】
上記各実施の形態において、実施の形態1では送風装置4及び風路形成部材5を用いて回収ボンベ2の温度を低下させるようにした。そして、実施の形態1に示す構成に対して、実施の形態2では水分保持部材8を、実施の形態2では噴霧装置9を、それぞれ追加した構成を示している。ただ、各実施の形態2,3において説明した水分保持部材8と噴霧装置9を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
ところで、作業者が回収装置3を起動すると、しばらくの期間は、冷媒回収ポンプ38が十分に機能して、ほぼ一定の速度で回収ボンベ2に対する冷媒の充填が進む。このため、回収ボンベ2の重量が線形的に上昇する。そして、冷媒回収ポンプ38の出力にもよるが、回収を開始してからの10〜30分後くらいまでは、かなりの冷媒を回収することが可能である。
【0064】
回収ボンベ2の圧力は、回収が開始された直後に、冷媒の流入と流入した冷媒の蒸発とにより急速に上昇する。しかし、圧力が冷媒の飽和蒸気圧より高くなると、冷媒が凝縮して圧力が下がる。このため、以後は、圧力は冷媒の飽和蒸気圧に強く依存した値を示すことになる。回収ボンベ2の温度は、前述した圧力の変化と同様である。
【0065】
冷媒の回収が進むと、上述の通り冷媒の温度が上昇し、冷媒の飽和蒸気圧も上昇するため、回収ボンベ2の圧力は次第に上昇する。上昇の結果、冷媒回収ポンプ38による吐出圧が回収ボンベ2の圧力に近づき冷媒の圧縮効率が低下することで、回収ボンベ2の重量の増加比率が小さくなる。
【0066】
そこで、水分保持部材8と噴霧装置9を組み合わせて使用する場合、冷媒の回収が相対的に効率的な冷媒の回収開始時点から水分保持部材8を使用して回収効率をより一層高める。そして、水分保持部材8を使用しても冷媒の回収効率の低下が現れ、回収ボンベ2の重量の増加比率が小さくなる時点、例えば、冷媒の回収を開始してから10〜15分経過する頃から噴霧装置9の使用を開始して冷媒の回数効率の低下を抑制するように制御してもよい。このようにして、冷媒の回収効率を高めて冷媒の回収時間の短縮を図る。冷媒の回収中、噴霧装置9から水分を常時噴霧させてもよいが、噴霧装置9の使用開始を遅らせることで、冷媒の回収が終了するまでの水の使用量を抑えることができる。制御部46は、回収ボンベ2のセンサからの測定値を参照して、噴霧装置9の動作を制御することができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、送風装置4を設けて回収ボンベ2に対して一定方向から風を供給するようにした。ただ、一定方向から風を回収ボンベ2に供給する手段として、風路形成部材5が形成する風路の出口側において空気を吸い込む吸込装置で実現してもよい。
冷媒回収効率の更なる向上が可能な冷媒回収システム及び冷媒回収方法を実現する。冷媒回収システムは、空調機(1)から冷媒を回収する回収装置(3)と、回収された冷媒が充填される回収ボンベ(2)と、回収ボンベ(2)に対して一方向から空気を送風する送風装置(4)と、送風装置(4)から回収ボンベ(2)への風路を形成するよう送風装置(4)及び回収ボンベ(2)を挟むように立設される板状の一対の風路形成部材(5)と、を備える。冷媒回収システムは、送風装置(4)から回収ボンベ(2)に向けて空気を一方向から送風することで回収ボンベ(2)を冷却する。