特許第6840907号(P6840907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840907
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】FGFR3結合分子lkokok
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20210301BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20210301BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20210301BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20210301BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20210301BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20210301BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20210301BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   C12N15/12ZNA
   C07K19/00
   C07K16/28
   C07K14/47
   C12N15/62
   C12N15/13
   A61K38/17
   A61P1/04
   A61P3/10
   A61P17/06
   A61P21/04
   A61P25/00
   A61P35/00
   A61P37/02
   A61P19/02
   A61P43/00 111
   A61P29/00 101
   A61K48/00
   A61K45/00
   A61K47/55
   A61K47/68
   A61K39/395 L
   A61K39/395 C
【請求項の数】12
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2019-569749(P2019-569749)
(86)(22)【出願日】2018年4月3日
(65)【公表番号】特表2020-518279(P2020-518279A)
(43)【公表日】2020年6月25日
(86)【国際出願番号】EP2018058390
(87)【国際公開番号】WO2018185050
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】17164482.6
(32)【優先日】2017年4月3日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】シラッチ メルコ,ミカエラ
(72)【発明者】
【氏名】ウッズ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ヘンネ,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ズブラー,バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】カゲ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】グラブロブスキ,ドラガン
(72)【発明者】
【氏名】バーツシンガー,ジュリアン
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−500875(JP,A)
【文献】 特表2012−521759(JP,A)
【文献】 特表2015−516801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
A61P
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞増殖因子受容体3のアイソフォーム3b及び3c(FGFR3b及びFGFR3c)に結合するポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、配列番号3〜8及び22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、
配列番号4、
配列番号5、
配列番号6、
配列番号7、
配列番号8、及び
配列番号22
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項に記載のポリペプチド。
【請求項3】
さらなる化合物に融合した請求項1又は2に記載のポリペプチドを含む融合構築物。
【請求項4】
前記さらなる化合物が毒性化合物である、請求項に記載の融合構築物。
【請求項5】
前記さらなる化合物が、抗体軽鎖、抗体重鎖、抗体のFcドメイン、抗体、又はこれらの組み合わせを含む、請求項に記載の融合構築物。
【請求項6】
前記抗体が、GM−2、CD38、ICAM−1、SLAMF7、CD45、CD40、CD74、IGFR−1、CD20、BAFF、BCMA、CD66、GRP78、CXCR4、EGFR、EPCAM、TROP−2、B7H3及びCEACAM−1からなる群から選択される標的に対して特異的である、請求項に記載の融合構築物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のポリペプチド、又は請求項に記載の融合構築物をコードする核酸分子、又は請求項5若しくは6に記載の融合構築物をコードする1つ以上の核酸分子。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のポリペプチド、請求項3〜6のいずれか一項に記載の融合構築物、請求項に記載の核酸分子、又はこれらの任意の組み合わせを含む医薬組成物又は診断用組成物。
【請求項9】
癌又はT細胞介在性疾患の治療における使用のための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記癌が、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、神経膠腫、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、多発性骨髄腫、膀胱癌、卵巣癌、膵臓癌、皮膚癌、精巣癌及び尿路上皮癌から選択される、請求項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記癌が、多発性骨髄腫、膀胱癌、子宮頸癌、膵臓癌、肺扁平上皮癌、及び結腸直腸癌から選択される、請求項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記T細胞介在性疾患が、関節リウマチ(RA)、II型コラーゲン関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、乾癬、若年発症糖尿病、シェーグレン病、甲状腺疾患、類肉腫症、自己免疫ぶどう膜炎、炎症性腸疾患(クローン及び潰瘍性大腸炎)、セリアック病及び重症筋無力症から選択される、請求項に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
FGFR3は、細胞内シグナル伝達経路に関与する膜貫通チロシンキナーゼ受容体のFGFRファミリーの4つのメンバーのうちの1つである。線維芽細胞増殖因子(FGF)との相互作用を介するFGFRの活性化は、細胞増殖及び生存、遊走、分化並びに増殖停止を含む、多面的な範囲の後遺症を有する胚形成及び成体の両方において重要な役割を有すると示されている[1]。
【0002】
FGFRは、2つ又は3つの免疫グロブリン様ドメイン(IgD1−3)を有する細胞外リガンド結合領域、1回膜貫通領域、及び細胞質のスプリットチロシンキナーゼドメインからなる。
【0003】
ヒトでは、シグナル伝達は22個のFGFリガンドのうちの1つによって媒介され、リガンド受容体特異性は、受容体の差次的な細胞発現、相互作用を調節する細胞表面タンパク質の分泌及び受容体の選択的スプライシングによって制御される[1]。FGFR1、2及び3の各々は、IIIb及びIIIcと称される、2つの主要な選択的にスプライシングされたアイソフォームを有する。これらのアイソフォームは、IgD3の後半の約50アミノ酸が異なり、異なった組織分布及びリガンド特異性を有する。FGFリガンドは、FGFRの二量体化をもたらし、それにより細胞内チロシンキナーゼドメインの活性化及びリン酸化が引き起こされる。これは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)及びPI3K−AKT経路を含む発癌シグナル伝達に関連するいくつかの重要な経路の活性化をもたらす。
【0004】
異常に活性化されたFGFRは、特定のヒトの悪性腫瘍と関連づけられてきた[2]。特に、t(4;14)(p16.3;p32)染色体転座は、多発性骨髄腫患者の約15〜20%において発生して、FGFR3の過剰発現をもたらし、全生存期間の短縮と相関する[2]。FGFR3はまた、培養液中の骨髄腫細胞株への化学療法抵抗性の付与と関連づけられており[3]、t(4;14)患者が従来の化学療法に対して臨床効果が乏しいことと一致している[4]。変異により活性化されたFGFR3の過剰発現は、造血細胞及び線維芽細胞[5〜8]、トランスジェニックマウスモデル[9]、並びにマウス骨髄移植モデル[9,10]における癌化を誘導するのに十分である。
【0005】
したがって、FGFR3は、多発性骨髄腫において有望な治療標的として提案されてきた。実際に、FGFRを標的化するいくつかの小分子阻害剤は、FGFR3に対して選択的ではなく、ある種の他のキナーゼに対する交差阻害活性を有するが、培養液及びマウスモデルにおけるFGFR3陽性骨髄腫細胞に対する細胞傷害性を実証した[11〜15]。
【0006】
FGFR3の過剰発現はまた、大部分の膀胱癌において実証されている[16,17]。さらに、FGFR3の体細胞活性化変異が、乳頭癌の60〜70%及び筋肉浸潤性膀胱癌の16〜20%において同定された[17,18]。細胞培養実験において、RNA干渉[19]又はFGFR3単鎖Fv抗体断片は、膀胱癌の細胞増殖を阻害した[20]。最近の研究は、FGFR3抗体−毒素コンジュゲートが、腫瘍へのFGFR3媒介性の毒素送達により膀胱癌細胞株の異種移植片増殖を減弱することを実証した[21]。FGFR3及び抗FGFR3抗体に関する刊行物としては、米国特許出願公開第2005/0147612号明細書;国際公開第2010/111367号パンフレット;Rauchenberger et al,J Biol Chem 278(40):38194−38205(2003)[22];国際公開第2006/048877号パンフレット;Martinez−Torrecuadrada et al,(2008)Mol Cancer Ther 7(4):862−873;国際公開第2007/144893号パンフレット;Trudel et al.(2006)107(10):4039−4046;Martinez−Torrecuadrada et al(2005)Clin Cancer Res 11(17):6280−6290;Gomez−Roman et al(2005)Clin Cancer Res 11:459−465;及び国際公開第2010/002862号パンフレットが挙げられる。
【0007】
これらの抗体は、次の欠点の1つ以上を有する:それらは当該アイソフォームのただ1つのみを認識する能力を有するか、又は異なるアイソフォームに対する親和性の間で著しい相違を示す。
【0008】
したがって、FGFR3b及びFGFR3cの両方のスプライスバリアントに高い親和性及び特異性を有して結合することができ、且つ同時に細胞内へと順調に内部移行することができる分子の必要性が依然として存在している。
【0009】
この必要性は本発明によって対処される。
【発明の概要】
【0010】
いくつかの異なるスクリーニングから、FGFR3b及びFGFR3cの両方に対する高い親和性、並びに細胞内への順調な内部移行の能力を含む特性の驚くべき組み合わせを有するフィノマーポリペプチドのセットが同定され、このポリペプチドのセットはこれらの特性の組み合わせのための多数の他の候補を凌駕した。これらのポリペプチドの配列が本明細書で開示される。これらのポリペプチド自体に加えて、本発明はまた、抗体へのその融合物を含む、そのようなポリペプチドを含む融合構築物を提供する。本発明はさらに、本発明のポリペプチド又は融合構築物をコードする核酸分子を提供する。さらに、本発明のポリペプチド又は融合構築物を含む医薬組成物又は診断用組成物、並びに癌又はT細胞介在性疾患の治療における使用のためのそのような医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】配列番号3〜8の抗FGFR3フィノマーのアラインメント。
図2】抗FGFR3フィノマーの内部移行特性。
図3-1】図3:Fyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドのサイズ排除プロファイル:A)FF2L4C3−配列番号3;B)FF44L65G12−配列番号4;C)FF44L65G7−配列番号5;D)FF48L66G7−配列番号6;E)FF43L65D5−配列番号7;F)FF44L65B7−配列番号8。
図3-2】(上記の通り。)
図3-3】(上記の通り。)
図4】FGFR3に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドのFACS結合:A)FGFR3陽性KMS−11細胞及びB)FGFR3陰性N87細胞。
図5-1】図5:Fyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドの特異性ELISA:A)FF2L4C3−配列番号3;B)FF44L65G12−配列番号4;C)FF44L65G7−配列番号5;D)FF48L66G7−配列番号6;E)FF43L65D5−配列番号7;F)FF44L65B7−配列番号8。試験された抗原:huFGFR3b=ヒトFGFR3スプライスバリアントb;huFGFR3c=ヒトFGFR3スプライスバリアントc;cyFGFR3c=カニクイザルFGFR3スプライスバリアントc;muFGFR3c=マウスFGFR3スプライスバリアントc;huFGFR3−D1=ヒトFGFR3のドメイン1;huFGFR3−D2=ヒトFGFR3のドメイン2;huFGFR3−D1D2=ヒトFGFR3のドメイン1及びドメイン2;IgG=ポリクローナルヒトIgG混合物;PBS=リン酸緩衝生理食塩水溶液。
図5-2】(上記の通り。)
図5-3】(上記の通り。)
図6】Fyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドの細胞障害効果を示す内部移行アッセイ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、第1の態様において、線維芽細胞増殖因子受容体3のアイソフォーム3b及び3c(FGFR3b及びFGFR3c)に結合するポリペプチドに関し、当該ポリペプチドは、(a)
【化1】

(アミノ酸位置(X)〜(X)は任意のアミノ酸配列であり得る);(b)(a)のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列(同一性判定ではアミノ酸位置(X)〜(X)を除外し、配列番号1のアミノ酸位置12〜19におけるアミノ酸配列EVYGPTPM(配列番号2)が保存され、且つ配列番号1のアミノ酸位置37及び38におけるアミノ酸P及びYが保存されることを条件とする);(c)
【化2】

(アミノ酸位置(X)は任意のアミノ酸であり得る);並びに(d)(c)のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列(同一性判定ではアミノ酸位置(X)を除外し、配列番号19のアミノ酸位置12〜18におけるアミノ酸配列EVMSTTA(配列番号20)及び配列番号19のアミノ酸位置31〜35におけるSQSPH(配列番号21)が保存され、且つ配列番号19のアミノ酸位置37及び38におけるアミノ酸Q及びYが保存されることを条件とする)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」は、約60個を超えるアミノ酸を含有する、単鎖タンパク質又はその断片を含むアミノ酸の線状の分子鎖を示す。ポリペプチドはさらに、少なくとも2つの同一又は異なる分子からなるマルチマー、例えばオリゴマーを形成してもよい。このようなマルチマーの対応する高次構造は、それに対応してホモ二量体又はヘテロ二量体、ホモ三量体又はヘテロ三量体などと呼ばれる。さらに、このようなポリペプチドのペプチド模倣体はまた、アミノ酸及び/又はペプチド結合が機能的アナログによって置き換えられる場合、本発明に包含される。そのような機能的アナログは、20種の遺伝子コードアミノ酸以外の全ての既知のアミノ酸、例えば、セレノシスチンを含む。用語「ポリペプチド」はまた、自然に修飾されたポリペプチドも指し、この修飾は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化及び当技術分野でよく知られる同様の修飾によってもたらされる。
【0014】
本発明のポリペプチドは、Fyn SH3由来ポリペプチド又はフィノマーである。Fyn SH3由来ポリペプチド又はフィノマーは当技術分野でよく知られており、例えば、Grabulovski et al.(2007)JBC,282,p.3196−3204;国際公開第2008/022759号パンフレット;Bertschinger et al(2007)Protein Eng Des Sel 20(2):57−68;及びGebauer and Skerra(2009)Curr Opinion in Chemical Biology 13:245−255に記載されている。本明細書で用語「フィノマー(Fynomer)」と互換的に使用される用語「Fyn SH3由来ポリペプチド」は、ヒトFyn SH3ドメインに由来する非免疫グロブリン由来結合ポリペプチド(例えば、Gebauer and Skerra(2009)Curr Opinion in Chemical Biology 13:245−255に記載されるとおり、いわゆる足場)を指す。フィノマーは約7kDaの小さな球状ポリペプチドである。ヒトFynキナーゼのSH3ドメインは、異なる標的タンパク質と高い親和性及び特異性で結合するタンパク質(フィノマーと呼ばれるFynSH3由来結合タンパク質)を操作するための足場として首尾よく使用された(国際公開第2008/022759号パンフレット、国際公開第2011/023685号パンフレット、国際公開第2013/135588号パンフレット、国際公開第2014/170063号パンフレット、Grabulovski D.et al.,(2007)J Biol Chem 282,p.3196−3204、Bertschinger J.et al.(2007)Protein Eng Des Sel,20,p.57−68、及びSchlatter et al.(2012)mAbs,4(4)p.497−50)。
【0015】
語句「線維芽細胞増殖因子受容体3のアイソフォーム3b及び3cに結合する」(FGFR3b及びFGFR3c又はFGFR3b及び3c)が使用される場合、本発明のポリペプチドがFGFR3b及びFGFR3cとの結合相互作用(インビボ及び/又はインビトロ)を形成することを必要とする。アイソフォーム3b(FGFR3b)及び3c(FGFR3c)は選択的スプライシングによって形成される。スプライスバリアントは、Igドメイン3のC末端側の半分をコードする2つの選択的エクソンである3b及び3cの使用によって生成される。上皮細胞は3b転写物のみを示す一方で、線維芽細胞は3b及び3c転写物の混合を示す。ヒトFGFR3bのアミノ酸配列は、配列番号9に示され、ヒトFGFR3cのアミノ酸配列は、配列番号10に示される。本発明のポリペプチドは、好ましくは、ヒト線維芽細胞増殖因子受容体3のアイソフォーム3b及び3cに結合する。好ましくは、本発明のポリペプチドは、10−7〜10−12M、より好ましくは10−8〜10−12M、最も好ましくは10−9〜10−12MのKでFGFR3b及びFGFR3cの両方のアイソフォームに結合する。この点に関して、本発明のポリペプチドがFGFR3に特異的に結合し、好ましくはアイソフォームFGFR3b及びFGFR3cの両方に特異的に結合し、したがって、FGFR1、FGFR2、又はFGFR4などの他の関連するタンパク質に有意に結合しないことが好ましい。この点に関して、有意に結合するとは、好ましくは>5×10−6MのKを有する結合を示す。
【0016】
本明細書中上記で示される配列番号1及び配列番号19は、ヒトFynキナーゼ(配列番号11;1986年にKawakamiら及びSembaらによって報告されたFynキナーゼのアミノ酸83〜145)のSH3ドメインのアミノ酸配列に由来する。配列番号11を示す:
【化3】

上記に示した配列番号11において、RT及びsrcループの配列は、それぞれ下線及び二重下線が引かれている。Grabulovski et al.(2007)JBC,282,p.3196−3204は、Fyn SH3ドメインのRT及びsrcループ中の変異の影響を検討し、疎水性表面に隣接しているこれらのループ中の変異が、このドメインの分子間会合に関与する能力を決定できることを実証した。さらに、欧州特許第2054432号明細書は、RT及び/又はsrcループ内の又はこれらに隣接する変異が、SH3ドメインの結合特異性を決定することを示す。Fyn SH3ドメインのアミノ酸配列は、ヒト、マウス、ラット及びサル(テナガザル)の間で完全に保存されている。ニワトリのFyn SH3は、1カ所、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の1種は、2カ所のアミノ酸位置において対応するヒトドメインと異なる。他のSH3ドメインとまったく同様に、Fyn SH3ドメインは、2つの逆平行βシートで構成され、他のタンパク質と相互作用するために2つのフレキシブルループ(RTループ及びsrcループと呼ばれる)を含有する。
【0017】
より詳細には、配列番号1は、配列番号3〜8のアラインメントからもたらされる配列である(図1を参照のこと)。図1から明らかなとおり、配列番号1の位置(X)〜(X)は、配列番号11のFynキナーゼSH3ドメインのsrc−ループに相当する。配列番号3〜8の間で、src−ループ内のアミノ酸は互いに異なる。他方では、src−ループのC末端から2つ目及び3つ目の位置は野生型配列では「DW」であるが、配列番号3〜8の全てにおいて対応するアミノ酸は「PY」である。図1からさらに明らかなとおり、配列番号11のFynキナーゼSH3ドメインのRT−ループに相当する位置(すなわち、下線の配列及び隣接しているD)は、野生型Fyn SH3配列と比較して変化しているが、配列番号3〜8の間で保存されており、配列「EVYGPTPM」(配列番号2)を有する。これらのループに隣接しているアミノ酸を含むRT及びsrc−ループ内のアミノ酸位置が、FGFR3b及び3cに対する結合特異性を決定する。
【0018】
配列番号1によれば、アミノ酸位置(X)〜(X)だけでなく、アミノ酸位置(X)及び(X)もまた任意のアミノ酸であってもよい。図1から理解できるとおり、位置(X)及び(X)のアミノ酸は、配列番号3〜8の間で、配列番号11の野生型Fyn SH3ドメインとは異なり得る。これらの位置におけるアミノ酸の相違は、配列番号3〜8の結合特異性に必須ではないと考えられる。したがって、アミノ酸位置(X)及び(X)は、実質的にFGFR3b及び3cに対する結合特異性を損なうことなく交換又は欠失されてもよいし、さらなるアミノ酸が付加されてもよい。配列番号1〜8のアミノ酸位置において見出すことができるアミノ酸と比較して、アミノ酸がアミノ酸位置(X)〜(X)において交換される場合、保存的交換が好ましい。
【0019】
配列番号19は、配列番号22の抗FGFR3b及びFGFR3cポリペプチドからもたらされる配列である。配列番号22のアミノ酸位置12〜18(EVMSTTA(配列番号20))は、配列番号11のFynキナーゼSH3ドメインのRT−ループに相当し、配列番号22のアミノ酸位置31〜35(SQSPH(配列番号21))は、配列番号11のFynキナーゼSH3ドメインのsrc−ループに相当する。src−ループのC末端から2つ目及び3つ目の位置は野生型配列では「DW」であるが、配列番号22において対応するアミノ酸は「QY」である。配列番号22においても、これらのループに隣接しているアミノ酸を含むRT及びsrc−ループ内のアミノ酸位置が、FGFR3b及び3cに対する結合特異性を決定する。
【0020】
配列番号19によれば、アミノ酸位置(X)は任意のアミノ酸であってもよい。配列番号19のアミノ酸位置(X)は、配列番号1のアミノ酸位置(X)に相当する。配列番号1及び19において、アミノ酸(X)は、配列番号11の野生型Fyn SH3ドメインとは異なる。対応するアミノ酸は、配列番号11においてはYであり、配列番号19においてはWであり、配列番号3〜8においてはLである。
【0021】
本発明によれば、用語「配列同一性の百分率(%)」は、鋳型核酸又はアミノ酸配列の全長を構成するヌクレオチド若しくはアミノ酸残基の数と比較して、2つ以上の整列させた核酸若しくはアミノ酸配列の同一なヌクレオチド/アミノ酸の一致する(「ヒットする」)数を指す。言い換えると、部分(配列)が比較用のウィンドウ全体にわたって、若しくは当技術分野において知られる配列比較アルゴリズムを使用して測定されるとおりの指定された領域全体にわたって最大限の一致に対して比較され、整列させる場合、又は手動で整列させ、視覚的に評価される場合、アラインメントを使用して、2つ以上の配列若しくは部分配列について、同一のものである(例えば、95%、97%又は98%の同一性)アミノ酸残基若しくはヌクレオチドの百分率が決定され得る。したがって、配列同一性を決定するために比較される配列は、ヌクレオチド若しくはアミノ酸の置換、付加又は欠失によって異なる場合がある。この定義は、試験配列の相補物にも適用する。
【0022】
当業者であれば、ポリペプチド配列を整列させるための好適なプログラムも認識している。ポリペプチド配列の配列同一性の百分率は、例えば、上記で説明したプログラムCLUSTLAW、FASTA及びBLASTのようなプログラムで決定することができる。BLASTプログラム、すなわち、NCBI BLASTアルゴリズムを使用することが好ましい(Stephen F.Altschul,Thomas L.Madden,Alejandro A.Schaeffer,Jinghui Zhang, Zheng Zhang,Webb Miller,及びDavid J.Lipman(1997),「Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs」,Nucleic Acids Res.25:3389−3402)。
【0023】
本明細書中の上記の項目(b)で記載した配列同一性に関して、配列同一性は少なくとも98%であることが好ましい。この点に関して、項目(b)で記載した少なくとも95%の配列同一性により、2つのアミノ酸の変更が可能になるが、少なくとも98%の好ましい同一性では1つのみのアミノ酸の変更が可能になることにさらに留意されたい。したがって、本明細書中の上記の項目(b)はまた、本明細書中の上記の項目(a)のアミノ酸配列とは2つのアミノ酸の変更、及び好ましくは1つのアミノ酸の変更によって異なるが、このアミノ酸の変更は、配列番号1の(X)〜(X)以外のアミノ酸位置、配列番号1のアミノ酸位置12〜19のアミノ酸配列EVYGPTPM(配列番号2)、及び配列番号1のアミノ酸位置37及び38におけるアミノ酸P及びYにおいて見出すことができる。配列番号1における(X)〜(X)以外のアミノ酸、配列番号1のアミノ酸位置12〜19のアミノ酸配列EVYGPTPM(配列番号2)、及び配列番号1のアミノ酸位置37及び38におけるアミノ酸P及びYは、配列番号3〜8の結合特異性に必須ではないと考えられる。したがって、これらのアミノ酸位置は、実質的にFGFR3b及び3cに対する結合特異性を損なうことなく交換又は欠失されてもよいし、アミノ酸が付加されてもよい。これらのアミノ酸位置は交換されることが好ましい。アミノ酸が交換される場合、保存的交換が好ましい。
【0024】
本明細書中の上記の項目(d)で記載した配列同一性に関して、配列同一性は少なくとも97%であることが好ましい。この点に関して、項目(d)で記載した少なくとも95%の配列同一性により、2つのアミノ酸の変更が可能になるが、少なくとも97%の好ましい同一性では1つのみのアミノ酸の変更が可能になることにさらに留意されたい。したがって、本明細書中の上記の項目(d)はまた、本明細書中の上記の項目(c)のアミノ酸配列とは2つのアミノ酸の変更、及び好ましくは1つのアミノ酸の変更によって異なるアミノ酸配列に関し、このアミノ酸の変更は、配列番号19のアミノ酸位置12〜18におけるアミノ酸配列EVMSTTA(配列番号20)及び配列番号19のアミノ酸位置31〜35におけるSQSPH(配列番号21)以外の配列番号19のアミノ酸位置、並びに配列番号19のアミノ酸位置37及び38におけるアミノ酸Q及びYにおいて見出すことができる。配列番号19のアミノ酸位置12〜18におけるアミノ酸配列EVMSTTA(配列番号20)及び配列番号19のアミノ酸位置31〜35におけるSQSPH(配列番号21)以外の配列番号19のアミノ酸、並びに配列番号19のアミノ酸位置37及び38におけるアミノ酸Q及びYは、配列番号22の結合特異性に必須ではないと考えられる。したがって、これらのアミノ酸位置は、実質的にFGFR3b及び3cに対する結合特異性を損なうことなく交換又は欠失されてもよいし、アミノ酸が付加されてもよい。これらのアミノ酸位置は交換されることが好ましい。アミノ酸が交換される場合、保存的交換が好ましい。
【0025】
配列番号1に関連して本明細書で使用する場合、語句「同一性判定ではアミノ酸位置(X)〜(X)を除外する」は、配列番号1に関する配列同一性の計算が、アミノ酸位置(X)〜(X)を考慮しないことを規定している。同様に、配列番号19に関連して本明細書で使用する場合、語句「同一性判定ではアミノ酸位置(X)を除外する」は、配列番号19に関する配列同一性の計算が、アミノ酸位置(X)を考慮しないことを規定している。
【0026】
本明細書で使用する場合、条件「配列番号1のアミノ酸位置12〜19におけるアミノ酸配列EVYGPTPM(配列番号2)が保存されることを条件とする」は、配列番号1のアミノ酸位置12〜19にアミノ酸の変更が導入され得ないことを規定する。同様に、本明細書で使用される場合、条件「配列番号1のアミノ酸位置37及び38におけるアミノ酸P及びYが保存されることを条件とする」は、配列番号1のアミノ酸位置37及び38にアミノ酸の変更が導入され得ないことを規定する。言い換えると、配列番号1のアミノ酸位置12〜19に相当するアミノ酸位置は、本発明の第1の実施形態の項目(a)及び(b)並びにその好ましい例の範囲に該当する全てのポリペプチドにおいて、配列EVYGPTPM(配列番号2)を有し、位置37及び38におけるアミノ酸はそれぞれP及びYである。
【0027】
本明細書で使用する場合、条件「配列番号19のアミノ酸位置12〜18におけるアミノ酸配列EVMSTTA(配列番号20)及び配列番号19のアミノ酸位置31〜35におけるSQSPH(配列番号21)が保存されることを条件とする」は、配列番号19のアミノ酸位置12〜18及び31〜35にアミノ酸の変更が導入され得ないことを規定する。同様に、本明細書で使用される場合、条件「配列番号19のアミノ酸位置37及び38におけるアミノ酸Q及びYが保存されることを条件とする」は、配列番号19のアミノ酸位置37及び38にアミノ酸の変更が導入され得ないことを規定する。言い換えると、配列番号19のアミノ酸位置12〜18に相当するアミノ酸位置は、本発明の第1の実施形態の項目(c)及び(d)並びにその好ましい例の範囲に該当する全てのポリペプチドにおいて、配列EVMSTTA(配列番号20)を有し、配列番号19のアミノ酸位置31〜35に相当するアミノ酸位置は配列SQSPH(配列番号21)を有し、且つ位置37及び38におけるアミノ酸はそれぞれQ及びYである。
【0028】
記載のとおり、配列番号1及び配列番号19におけるあらゆるアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換であることが好ましい。保存的置換は、置き換えられるアミノ酸に類似した化学的性質を有する別のアミノ酸によるアミノ酸の置換を規定している。好ましくは、本明細書で言及される保存的置換は、(i)異なる塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸の置換;(ii)異なる酸性アミノ酸による酸性アミノ酸の置換;(iii)異なる芳香族アミノ酸による芳香族アミノ酸の置換;(iv)異なる非極性脂肪族アミノ酸による非極性脂肪族アミノ酸の置換;及び(v)異なる極性非荷電アミノ酸による極性非荷電アミノ酸の置換からなる群から選択される置換である。塩基性アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンである。酸性アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸である。芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンである。非極性脂肪族アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン及びプロリンである。極性非荷電アミノ酸は、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン及びグルタミンである。保存的アミノ酸置換とは対照的に、非保存的アミノ酸置換は、以上に概説された保存的置換(i)〜(v)に分類されない任意のアミノ酸による1つのアミノ酸の交換である。
【0029】
本明細書で開示される抗FGFR3フィノマーは、有利なことに、FGFR3c及び3bに対して優れた結合親和性を有し、さらに細胞内に内部移行するのに特に好適であり、それらは診断及び治療効果を発揮することができる。本明細書中以下の実施例から理解できるとおり、配列番号3の抗FGFR3フィノマーは、フィノマーの大規模なライブラリーをスクリーニングした際に発見された。配列番号3及び19の抗FGFR3フィノマーは、それらのFGFR3アイソフォーム3b及び3cに対する結合親和性並びにそれらの細胞内部移行特性の観点から顕著な特性を有することが証明された(実施例1及び7を参照のこと)。したがって、配列番号19を有するフィノマーは、配列番号1のフィノマーの代替物である。予想外且つ有利なこととして、両フィノマーは同様の組み合わせの有利な特性を有する。配列番号3の抗FGFR3フィノマーは、親和性成熟のための鋳型として使用され、且つそれはFGFR3b及び3cに対する結合親和性をさらに向上させることすら可能であった。さらに詳細には、親和性成熟過程からもたらされたポリペプチドの大規模なプールの中で、配列番号4〜8の抗FGFR3フィノマーは、配列番号3の抗FGFR3フィノマーよりもFGFR3b及び3cに対してより一層強力に結合することが見出された。本明細書中以下の実施例はさらに、配列番号3〜8及び22の抗FGFR3フィノマーが、組換えにより生成することができ、且つ有利な製造性特性を有するため、例えば、治療及び診断用途のために、大規模に生成することができることを示す。加えて、配列番号3〜8及び22の抗FGFR3フィノマーは、ヒトFGFR3c及び3bに結合するだけでなく、マウス及びサルのFGFR3cに(及びおそらく3bにも)結合する。この異種間の結合は、前臨床試験に有利である。これらの分子であれば、診断目的のために使用できるであろうし、且つ例えば本明細書でさらに詳細に記載されるとおり、表面にFGFR3を発現する腫瘍細胞に対するさらなる治療薬の開発のための起点としても好適である。最初のスクリーニング又はその後の親和性成熟過程によって同定される他の抗FGFR3フィノマーは、配列番号3〜8及び22の抗FGFR3フィノマーと同様の特性の有利な組み合わせを有しなかった。配列番号3〜8及び22の抗FGFR3フィノマーの驚くべき且つ予想外の特性の有利な組み合わせはさらに、本明細書中以下の実施例から明らかになる。
【0030】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、(X)は、N、R、又はKであり、好ましくはR又はKであり;(X)は、S、G、K又はRであり、好ましくはG、K又はRであり;(X)はS又はGであり、好ましくはGであり;且つ(X)は、E、Q、D、S又はKであり、好ましくはQ、D、S又はKである。
【0031】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、(X)は、N、R、又はKであり、好ましくはR又はKであり;(X)は、S、G、K又はRであり、好ましくはG、K又はRであり;(X)はS又はGであり、好ましくはGであり;(X)は、E、Q、D、S又はKであり、好ましくはQ、D、S又はKであり;(X)は、T又はAであり;且つ(X)は、Y、W又はLであり、好ましくはL又はWである。
【0032】
配列番号1のアミノ酸位置(X)〜(X)は、ヒト野生型Fyn SH3ドメインのsrc−ループを形成するアミノ酸に相当するアミノ酸位置である。本明細書中以下の実施例は、アミノ酸位置(X)〜(X)に関して列記されるアミノ酸が、FGFR3b及びFGFR3c、特に、配列番号9を有するFGFR3b及び配列番号10を有するFGFR3cに対して結合特異性を付与することを示す。より詳細には、図1における本発明の配列番号3〜8の配列アラインメントは、配列番号3〜8の抗FGFR3フィノマーにおいて、上記の好ましい実施形態におけるアミノ酸位置(X)〜(X)に関して列記されるアミノ酸を見出すことができることを示す。上記の好ましい実施形態におけるアミノ酸位置(X)〜(X)に関して列記される好ましいアミノ酸は、配列番号4〜8の対応するアミノ酸位置において見出すことができ、配列番号4〜8は親和性成熟によって配列番号3から得られたと記載している。配列番号3〜8、好ましくは配列番号4〜8中に存在する(X)〜(X)に関する特定のアミノ酸の組み合わせ以外の、上に定義した(X)〜(X)から選択される他のアミノ酸配列も、FGFR3b及び3cに対する結合特異性を付与することが予想され得る。
【0033】
上述のとおり、配列番号1のアミノ酸位置(X)並びに配列番号1及び19のアミノ酸位置(X)は、ヒト野生型Fyn SH3ドメインのRT及びsrc−ループのアミノ酸にも、これらのループのうちの1つに隣接するアミノ酸にも相当しないアミノ酸位置である。したがって、これらの位置におけるアミノ酸は、実質的にFGFR3b及び3cに対する結合特異性を損なうことなく交換又は欠失されてもよいし、さらなるアミノ酸が付加されてもよいと考えられる。位置(X)及び(X)におけるアミノ酸は交換されることが好ましい。(X)は、T又はAであり;且つ(X)は、Y、W又はLであり、また最も好ましくはL又はWである。図1から理解できるとおり、配列番号1の(X)並びに配列番号1及び19の(X)に関するこれらのアミノ酸は、配列番号3〜8及び22又はヒトFyn SH3野生型ドメイン(配列番号11)又は別のFGFR3b及び3c結合フィノマーのいずれかにおいて見出すことができる。位置(X)に関する最も好ましいアミノ酸の場合、このアミノ酸は配列番号3〜8において見出すことができる。
【0034】
本発明の第1の態様のより好ましい実施形態によれば、ポリペプチドは、配列番号3〜8及び22のいずれか1つからなる群、好ましくは配列番号4〜8又は22のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0035】
本明細書中以下の実施例から理解できるとおり、配列番号3〜8及び22は、生成され、且つ試験された具体的な抗FGFR3b及び3cフィノマーの配列である。
【0036】
本発明の第1の態様のより一層好ましい実施形態によれば、ポリペプチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチドが特に好ましい。別の特に好ましい実施形態は、配列番号22のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0037】
最初のスクリーニングにおいてすでに低ナノモルの親和性を有するフィノマーを得たことは非常に驚くべきことであった。配列番号3を有するフィノマーは、最も顕著なFGFR3b及び3c結合親和性並びに内部移行特性を有するフィノマーとして、フィノマーのライブラリーから単離された。配列番号4〜8を有するフィノマーは、配列番号3に由来し、配列番号4〜8を有するフィノマーのFGFR3b及び3c結合親和性は、より一層向上する。
【0038】
驚くべきことに、配列番号22を有するフィノマーもまた、配列番号4〜8を有するものに匹敵する非常に良好な特性を有したが、それはフィノマーの異なるファミリーから最初に得られた。
【0039】
本発明は、第2の態様において、さらなる化合物に融合した本発明のポリペプチドを含む融合構築物に関する。
【0040】
本明細書で使用された「融合構築物」は、本発明のポリペプチドのさらなる化合物への融合物を定義する。その化合物は、タンパク質性化合物であっても、非タンパク質性化合物であってもよい。この場合、化合物はタンパク質性化合物(例えば、本明細書中以下で記載されるサイトカイン若しくはケモカイン、又は抗体若しくは抗体断片)であり、融合構築物はまた融合タンパク質と呼んでもよい。本明細書で使用する場合、用語「融合タンパク質」は、別々のポリペプチド及びペプチドをコードする2つ以上の遺伝子の連結及び発現を通して生成される、ポリペプチド構築物を対象とする一般的な用語である。言い換えると、この融合遺伝子の翻訳は、元のポリペプチドのそれぞれに由来する機能的特性を有する単一のポリペプチドを結果としてもたらす。このポリペプチドは、直接融合されるか、リンカー、すなわち短鎖ペプチド配列を介して融合されるかのどちらでもよい。一般的に、融合タンパク質は、当業者によく知られる組換えDNA技術によって人工的に生成される(例えば、Alberts et al.,Molecular Biology of the Cell,4th ed.Garland Science,p.518−519)。しかしながら、本発明のポリペプチド及び融合タンパク質は、平易な有機合成戦略、固相支持合成技術などの多くの従来的且つよく知られる技術のいずれかによって、又は市販の自動合成装置によって調製されてもよい。融合タンパク質は、生物学的研究、診断薬又は治療薬で使用されてもよい。
【0041】
さらなる化合物としての非タンパク質性化合物の例は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)又はAlexa Fluorなどの有機低分子、又は放射性核種である。さらなる非タンパク質性化合物のさらなる具体例は本明細書中以下に論じる。
【0042】
本発明の第2の態様のある種の実施形態によれば、さらなる化合物は、薬学的に活性な化合物、プロドラッグ、薬学的に許容される担体、診断上の活性がある化合物、細胞透過性増強剤、及び/又は血清半減期を調節する化合物である。
【0043】
薬学的に活性な化合物は、対象に投与される際に、対象に対して有益な効果をもたらす、生物活性を有する化合物である。プロドラッグは、不活性な(又は完全な活性よりも低い)形態で対象に投与され、その後対象の代謝プロセスを通して、薬学的に活性な又は薬学的に完全に活性な化合物に変換される化合物である。薬学的に(完全に)活性な化合物は、好ましくは、本明細書中以下に定義される特定の疾患のいずれかの予防の治療に好適な化合物である。
【0044】
診断上の活性がある化合物は、対象に投与される際に活性を有し、個体が罹患している場合に疾患又は障害の判定又は同定を可能にする(支援する)化合物である。診断上の活性がある化合物の例としては、蛍光色素、放射性核種又は医用画像化用造影剤などの検出可能なマーカーが挙げられる。蛍光色素、放射性核種及び医用画像化用造影剤の具体例が、本明細書中以下に記載される。本発明のポリペプチドに融合した診断上の活性がある化合物は、特に、原因及び/又は症状がFGFR3に関連する、特にFGFR3b及び3cに関連するということで共通している、本明細書中以下で定義される特定の疾患のいずれか1つを判定若しくは同定するために支援するか、又は判定若しくは同定するために使用することができる。対象の体内のそのような疾患の部位は、本発明の診断上の活性がある化合物に融合した本発明のポリペプチドによって検出又は同定することができる。
【0045】
細胞透過性増強剤は、本発明のポリペプチドの(インビトロ、エクスビボ又はインビボでの)細胞への送達を促進する化合物である。
【0046】
血清半減期を調節する化合物は、特に血液循環系において、本発明のポリペプチドのインビボ半減期の延長を可能にする化合物である。血清半減期を調節する成分は、ポリエチレングリコール(PEG)が好ましい。
【0047】
薬学的に許容される担体は、例えば、対象に投与する際の本発明のポリペプチドの送達及び/又は有効性を促進又は向上させる化合物である。好適な薬学的に許容される担体は当技術分野でよく知られており、例えば、安定化剤、抗酸化剤、pH調整物質などが挙げられる。
【0048】
本発明の第2の態様の一実施形態によれば、さらなる化合物は毒性化合物である。
【0049】
毒性化合物は、好ましくは、低分子有機化合物又はポリペプチド、例えば、カリケアマイシン、マイタンシノイド、ネオカルチノスタチン、エスペラマイシン、ダイネマイシン、ケダルシジン、マデュロペプチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、オーリスタチン、リシン−A鎖、モデクシン、短縮型緑膿菌外毒素A、ジフテリア毒素及び組換えゲロニンからなる群から選択される毒性化合物である。
【0050】
本発明の第2の態様の別の実施形態によれば、本発明のさらなる化合物は、(a)蛍光色素、(b)光増感剤、(c)放射性核種、(d)医用画像化用造影剤、(e)サイトカイン、(f)ケモカイン、(g)プロコアグラント因子、(h)プロドラッグ活性化酵素、(i)アルブミン結合体、(j)アルブミン、(k)IgG結合体、又は(l)ポリエチレングリコールからなる群から選択される。
【0051】
蛍光色素の例は、Alexa Fluor及びCy色素である。
【0052】
光増感剤の例は、光毒性赤色蛍光タンパク質のKillerRed及びヘマトポルフィリンである。
【0053】
放射性核種の例は、ガンマ放射同位体、例えば99mTc、123I、111In、ポジトロン放射体、例えば18F、64Cu、68Ga、86Y、124I、ベータ放射体、例えば131I、90Y、177Lu、67Cu、及びアルファ放射体、例えば213Bi、211Atである。
【0054】
本明細書で使用される造影剤は、医用画像化において体内の構造物又は液体のコントラストを増強するために使用される物質である。一般的な造影剤は、X線減衰及び磁気共鳴信号増強に基づいて機能する。
【0055】
サイトカインは、例えば、IL−2、IL−12、TNF−アルファ、IFNアルファ、IFNベータ、IFNガンマ、IL−10、IL−15、IL−24、GM−CSF、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−11、IL−13、LIF、CD80、B70、TNFベータ、LT−ベータ、CD−40リガンド、Fas−リガンド、TGF−ベータ、IL−1アルファ及びIL−1ベータからなる群から選択され得る。当技術分野においてよく知られるとおり、サイトカインは、免疫系の炎症誘発性応答又は抗炎症性応答に有利に働き得る。したがって、治療される疾患に応じて、炎症誘導性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインとの融合構築物のいずれかが有利であり得る。例えば、炎症性疾患の治療に対しては、一般的に、抗炎症性サイトカインを含む融合構築物が好ましいが、一方癌の治療に対しては、一般的に炎症誘発性サイトカインを含む融合構築物が好ましい。
【0056】
ケモカインは、例えば、IL−8、GROアルファ、GROベータ、GROガンマ、ENA−78、LDGF−PBP、GCP−2、PF4、Mig、IP−10、SDF−1アルファ/ベータ、BUNZO/STRC33、I−TAC、BLC/BCA−1、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MDC、TECK、TARC、RANTES、HCC−1、HCC−4、DC−CK1、MIP−3アルファ、MIP−3ベータ、MCP−1−5、エオタキシン、エオタキシン−2、I−309、MPIF−1、6Ckine、CTACK、MEC、リンホタクチン及びフラクタルカインからなる群から選択され得る。
【0057】
プロコアグラント因子の例は、組織因子(TF)及び癌プロコアグラント(CP)である。
【0058】
プロドラッグ活性化酵素の例は、カルボキシペプチダーゼ、グルクロニダーゼ又はグルコシダーゼなどの酵素である。
【0059】
アルブミン結合体、及びIgG結合体の例は、Gebauer and Skerra(2009),Curr Opin Chem Biol.,13(3):245−255において記載されている。したがって、アルブミン結合体及びIgG結合体の例は、ヒト単一Igドメイン(ダブルアルブミン Dab)、ナノボディ、連鎖球菌(streptococcal)のプロテインGに由来する天然に存在するアルブミン結合ドメイン(ABD)、及びIgGに結合するドメインである。このような融合構築物は、例えば、患者に投与する際に、特に血液循環系において、本発明のポリペプチドの半減期を増大させる。
【0060】
本発明の第2の態様の他の実施形態によれば、本発明のさらなる化合物は、抗体軽鎖、抗体重鎖、抗体のFcドメイン、抗体、又はこれらの組み合わせを含む。
【0061】
用語「抗体」は、モノクローナル抗体、単鎖抗体、又はこれらの断片を含み、また、二重特異性抗体、合成抗体、Fab、F(ab)’、Fv若しくはscFv断片などの重鎖及び軽鎖以外の結合能を保持する抗体断片、又は これらのいずれかの化学修飾された誘導体も含む。抗体又はそれらの断片は例えば、例えば、Harlow and Lane「Antibodies, A Laboratory Manual」,CSH Press,Cold Spring Harbor,1988において記載される方法を用いることによって得ることができる。前記抗体の誘導体をファージディスプレイ技術によって得るとき、BIAcoreシステムで利用される表面プラズモン共鳴を使用して、本発明のペプチド又はポリペプチドのエピトープに結合するファージ抗体の効率を高めることができる(Schier,Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97−105;Malmborg,J.Immunol.Methods 183(1995),7−13)。キメラ抗体の産生は、例えば、国際公開第89/09622号パンフレットに記載される。本発明に従って利用される抗体のさらなる供給源は、いわゆる異種抗体である。マウスにおけるヒト抗体などの異種抗体の産生に関する一般原則は、例えば国際公開第91/10741号パンフレット、国際公開第94/02602号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット及び国際公開第96/33735号パンフレットに記載される。本発明に従って利用される抗体又はそれらの対応する免疫グロブリン鎖は、当技術分野で知られる従来技術を使用して、例えばアミノ酸の欠失、挿入、置換、付加及び/若しくは組換え並びに/又は当技術分野で知られる任意の他の改変を、単独又は組み合わせて使用することによって、さらに改変することができる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基盤となるDNA配列においてこのような改変を導入するための方法は当業者によく知られている。例えば、Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1989を参照されたい。
【0062】
抗体という用語はまた、それらの結合特異性を保持するか、又は本質的に保持する前記抗体の誘導体に関する。前記誘導体の特に好ましい実施形態は、本明細書中以下にさらに規定されるが、そのような抗体の他の好ましい誘導体は、例えばマウス又はラットの可変領域及びヒトの定常領域を含むキメラ抗体である。
【0063】
抗体は、ヒト化抗体であってもよい。用語「ヒト化抗体」は、本発明によれば、非ヒト起源の抗体であり、そのタンパク質配列が、ヒトにおいて自然に産生される抗体変異体に対してその類似性を増大させるように改変されているものを意味する。ヒト化抗体の作製は、例えば、CDR3及び好ましくは全ての6つのCDRなどの適切なCDRコードセグメント(所望の結合特性に関与する)をヒト抗体の「足場」に挿入することによって行われ得る。ヒト化抗体の製造方法は、例えば、欧州特許出願公開第A10239400号明細書及び国際公開第90/07861号パンフレットに記載されている。
【0064】
用語「抗体軽鎖」は、抗体の小さいポリペプチドサブユニットを意味し、一方用語「抗体重鎖」は、抗体の大きいポリペプチドサブユニットを意味する。典型的な抗体は、2つの免疫グロブリン(Ig)重鎖及び2つのIg軽鎖から構成される。各軽鎖は2つのタンデムな免疫グロブリンドメイン(1つは定常(C)ドメインであり、もう1つは抗原への結合に重要である可変ドメイン(V)である)から構成される。重鎖は抗体のクラス又はアイソタイプを決定する。各重鎖は、2つの領域、すなわち、定常領域(これは同一のクラスの全ての免疫グロブリンに関して同一であるが、クラス間で異なる)及び各種B細胞間で異なるが、同一のB細胞又はB細胞クローンによって産生される全ての免疫グロブリンに関して同一である可変領域を有する。任意の重鎖の可変ドメインは、単一の免疫グロブリンドメインから構成される。
【0065】
抗体の「機能的Fcドメイン」は、当業者によく知られる用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて定義される。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンはクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分けられ、これらのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、IgA1、及びIgA2に分けられ得る。重鎖定常領域に従って、異なるクラスの免疫グロブリンは、それぞれ、[α]、[δ]、[ε]、[γ]、及び[μ]と呼ばれる。抗体の機能的Fcドメインは、補体活性化、C1q結合及びFc受容体結合に基づいて、ADCC(抗体依存性細胞傷害)及びCDC(補体依存性細胞傷害)に直接関与する。4つのヒトIgGアイソタイプは、新生児型Fc受容体、活性化Fcガンマ受容体(FcγRI、FcγRIIa、及びFcγRIIIa)、抑制性受容体FcγRIIb、及び異なる親和性を有するC1qなどの各種受容体と結合して、非常に異なる活性をもたらす。ヒト抗体のFcドメインの活性化及び抑制性受容体に対する親和性は、操作され且つ改変できることが知られている(Strohl W.(2009)Curr Opin Biotechnol,20,p.685−691を参照のこと)。
【0066】
Fcドメインは、本発明のポリペプチドのインビボ半減期の延長を可能にする1つ以上のヒト機能的Fcドメインであり、そのいくつかは、例えば本明細書中以下に記載する治療、予防及び/又は診断用途において、本発明の融合タンパク質のポリペプチド成分の特異的な標的結合部位に、哺乳動物の免疫応答を誘導することが好ましい。このようなヒト機能的Fcドメインは、IgG1抗体のドメインであることがより好ましい。本発明のポリペプチドは、1つ以上の機能的FcドメインのN−若しくはC−末端のいずれか、又は1つ以上のFcドメインのN−及びC−末端の両方に融合され得る。ある種の実施形態では、本発明の融合タンパク質はまた、少なくとも一方、例えばFcドメインのN末端に融合した本発明のポリペプチドの多量体、例えば四量体、三量体又は二量体を含み得る。
【0067】
Fcドメインは、活性化又は抑制性エフェクター機能を有するIgG1の1つ以上の操作されたヒト機能的Fcドメイン、例えば、抑制性エフェクター機能を有するIgG1の1つ以上の操作されたヒト機能的Fcドメイン、例えばKabatのEUインデックスに従うナンバリング(Johnson G.and Wu T.T.(2000)Nucleic Acids Res.28,p.214−218を参照のこと)でL234及びL235に変異を伴い(例えば、変異L234A及びL235Aを伴い)抑制性エフェクター機能を有するIgG1の1つ以上の操作されたヒト機能的Fcドメインであり得る。
【0068】
本発明のポリペプチドは、抗体軽鎖、抗体重鎖、抗体のFドメイン、抗体、又はこれらの組み合わせを含む前記さらなる化合物のC末端の下流に位置してもよい。或いは、本発明のポリペプチドは、抗体軽鎖、抗体重鎖、抗体のFドメイン、抗体、又はこれらの組み合わせを含む前記さらなる化合物のN末端の下流に位置してもよい。
【0069】
本発明の融合構築物が抗体に融合された本発明のポリペプチドを含む場合、本発明の融合構築物は、本発明のポリペプチドの2つのコピーを含むことが好ましい。2つのコピーは、本発明の同じポリペプチドの2つのコピーであっても、本発明の異なるポリペプチドの2つのコピーであってもよく、本発明の同じポリペプチドの2つのコピーであることが好ましい。より好ましくは、本発明のポリペプチドの2つのコピーは、抗体の2つの軽鎖のN末端、抗体の2つの軽鎖のC末端、抗体の2つの重鎖のN末端、又は抗体の2つの重鎖のC末端に融合され得る。二重特異性を有するいわゆるフィノマブをもたらすモノクローナル抗体に融合されたフィノマー及びその調製物の例は、例えば(例えばSilacci et al,2016,mAbs 8:1,141−149;Brack et al,2014,Mol Cancer Ther 13(8):p.2030−9;国際公開第2014/044758A1号パンフレット;国際公開第2014/170063A1号パンフレット;国際公開第2015/141862A1号パンフレット)において十分に記載されている。
【0070】
抗体に融合した本発明のポリペプチドを含む本発明による融合構築物は、好適な条件下で、抗体の軽鎖及び抗体重鎖を、本発明のポリペプチドがこれらの鎖の少なくとも1つに融合されることに留意しながら接触させることによって、エクスビボ又はインビトロにおいて得てもよい。当業者は好適な条件を認識している。好適な条件下でこのように接触させることにより、抗体軽鎖と抗体重鎖の間の相互作用によって誘発される非共有結合性の会合が可能になる。好ましくは、一般に抗体において見出されるジスルフィド結合が、このような本発明の構築物中に存在する。ジスルフィド結合は通常、ヒンジ領域付近に存在し、2つの重鎖並びに/又は軽鎖及び重鎖を連結する。例えば、このような構築物は、哺乳動物細胞における標準的な組換え発現によって作製することができ、通常、対になったインタクトな抗体を含む本発明のインタクトな融合タンパク質が続いて細胞から分泌される。
【0071】
本発明の第2の態様のある種の非限定的な実施形態によれば、抗体は、GM−2、CD38、ICAM−1、SLAMF7、CD45、CD40、CD74、IGFR−1、CD20、BAFF、BCMA、CD66、GRP78、CXCR4、EGFR、EPCAM、TROP−2、B7H3及びCEACAM−1からなる群から選択される標的に対して特異的である。
【0072】
したがって、本発明のさらなる化合物はまた、GM−2、CD38、ICAM−1、SLAMF7、CD45、CD40、CD74、IGFR−1、CD20、BAFF、BCMA、CD66、GRP78、CXCR4、EGFR、EPCAM、TROP−2、B7H3又はCEACAM−1からなる群から選択される標的に対して特異的である抗体軽鎖、抗体重鎖、又は抗体を含み得る。
【0073】
本明細書において上述のとおり、FGFR3の過剰発現は、いくつかの癌種において実証されている。GM−2、CD38、ICAM−1、SLAMF7、CD45、CD40、CD74、IGFR−1、CD20、BAFF、BCMA、CD66、GRP78、CXCR4、EGFR、EPCAM、TROP−2、B7H3及びCEACAM−1の過剰発現もまた、いくつかの癌種において実証されている。この理由のため、第1の標的としてのFGFR3b/3c並びにGM−2、CD38、ICAM−1、SLAMF7、CD45、CD40、CD74、IGFR−1、CD20、BAFF、BCMA、CD66、GRP78、CXCR4、EGFR、EPCAM、TROP−2、B7H3及びCEACAM−1から選択される化合物である第2の標的に結合可能な二重特異性融合構築物が、癌及び関連疾患を治療するために特に好適であると予想される。
【0074】
本明細書中上記のさらなる化合物は、本発明のポリペプチドに直接融合されても、リンカーを介してもよい。したがって、ポリペプチドは、例えば、さらなる化合物のC末端に、より具体的には、C末端アミノ酸のカルボキシ基とN末端アミノ酸のアミノ基の間のペプチド結合の形成によって、(直接)融合されてもよく、或いはリンカーを介してさらなる化合物鎖のC末端に連結されてもよい。
【0075】
好適なリンカーは、当業者の裁量に委ねられる。本発明によるリンカーは、例えば、1〜30個の炭素原子を有するアルキル、1〜20個のエチレン部分を有するポリエチレングリコール、1〜20個の残基を有するポリアラニン、カプロン酸、置換された又は非置換のポリ−p−フェニレン及びトリアゾールからなる群から選択され得る。ペプチド性リンカー、より具体的には1〜30個のアミノ酸長を有するオリゴペプチドが好ましい。好ましい長さの範囲は5〜15個のアミノ酸である。
【0076】
少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%の、グリシン、セリン及びアラニンなどの小さいアミノ酸からなるペプチドであるリンカーが特に好ましい。グリシン及びセリンのみからなるリンカーが特に好ましい。好適なリンカーの非限定的な例は、(GS)リンカー(Gly−Gly−Gly−Gly−Serの3回の繰り返し)である。
【0077】
第3の態様では、本発明は、本発明のポリペプチド、若しくは本発明の融合構築物をコードする核酸分子、又は本発明の融合構築物をコードする1つ以上の核酸分子に関する。
【0078】
本発明の構築物をコードする1つ以上の核酸分子は、例えば、2つの核酸分子であってもよく、一方の核酸分子が抗体の軽鎖をコードし、もう一方の核酸分子が抗体の重鎖をコードする。上記のとおり、本発明のポリペプチドは、この場合、軽鎖又は重鎖のC末端又はN末端のいずれかに融合され得る。
【0079】
本発明による核酸分子は、cDNAなどのDNA、及びmRNA並びにPNAを含む。さらに、DNA又はRNA並びにセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方の混合ポリマーの合成又は半合成誘導体などの当技術分野で知られる核酸模倣分子が含まれる。当業者に容易に理解されるとおり、それらは、追加の非天然の又は誘導体化ヌクレオチド塩基を含有してもよい。好ましい実施形態では、ポリヌクレオチド又は核酸分子は、DNAである。本発明によるこのような核酸模倣分子又は核酸誘導体としては、ホスホロチオエート核酸、ホスホロアミデート核酸、2’−O−メトキシエチルリボ核酸、モルホリノ核酸、ヘキシトール核酸(HNA)及びロックド核酸(LNA)が挙げられる(例えば、Braasch and Corey,Chemistry & Biology 8,1−7(2001)を参照のこと)。LNAは、リボース環が2’−酸素と4’−炭素の間のメチレン結合によって拘束されているRNA誘導体である。
【0080】
核酸分子が記載された配列(からなるではなく)を含むこれらの実施形態では、追加のヌクレオチドは、5’末端上若しくは3’末端上のいずれか又はこの両方の特定の配列を超えて伸びている。
【0081】
追加の異種配列は、上記分子のコード配列に作動可能に連結された異種プロモーターを含んでもよい。したがって、核酸分子はプロモーターに作動可能に連結されてもよい。プロモーターは当業者によく知られており、当技術分野で日常的に使用されている。非限定的な例は、典型的に哺乳動物細胞において強力な発現を駆動するCMV最初期プロモーターである。
【0082】
本発明はまた、本発明の1つ以上の核酸分子を含む1つ以上のベクター及び本発明の1つ以上の核酸分子又は本発明の1つ以上のベクターを含む1つ以上の宿主細胞に関する。
【0083】
加えて、本発明は、本発明の核酸又はベクターを含む細胞、好ましくは単離細胞に関する。この細胞はまた宿主細胞とも呼ばれる。
【0084】
ベクター及び単離細胞、特に宿主細胞は、目的、例えば本発明のポリペプチド及び/若しくは融合構築物の製造に適する任意の従来型、並びに/又は治療上有用なベクター及び宿主細胞であり得る。当業者であれば、それらのベクター及び宿主細胞を技術から選択し、所望の目的に対するそれらの特定の適合性を、過度な負担なしに通例の方法によって確認することが可能であろう。
【0085】
本発明の1つ以上のベクターは、本発明の1つ以上の核酸を含み、好ましくは、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質を生成する能力を有する。ある種の実施形態では、そのようなベクターは、pQEベクター、pETベクター、pFUSEベクター、pUCベクター、YACベクター、ファージミドベクター、ファージベクター、遺伝子治療に使用されるベクター、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスからなる群から選択される。ベクター改変技術については、Sambrook and Russel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001を参照されたい。一般に、ベクターは、クローニング若しくは発現のための1つ以上の複製開始点(ori)及び遺伝形質、宿主における選択、例えば抗生物質耐性のための1つ以上のマーカー、並びに1つ以上の発現カセットを含有することができる。好適な複製開始点(ori)としては、例えば、Col E1、SV40ウイルス及びM13複製開始点が挙げられる。
【0086】
本発明の1つ以上の核酸分子はまた、別の核酸分子との翻訳融合物が生成されるように1つ以上のベクターに挿入されてもよい。他の核酸分子は、例えば、抗体の軽鎖及び/若しくは重鎖、並びに/又はリンカーをコードすることができ、その好ましい例は本明細書で上述されている。
【0087】
1つ以上の宿主細胞は、本発明の1つ以上の核酸分子又は1つ以上のベクターを、それらの存在時に、前記核酸分子又はベクターによってコードされるポリペプチドの発現を媒介する1つ以上の宿主細胞に導入することによって作製されてもよい。宿主細胞は、単離された宿主細胞であることが好ましく、これは細胞が生存する生物の状態にないことを意味する。宿主は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。好適な真核細胞宿主は、哺乳動物細胞、両生類細胞、魚類細胞、昆虫細胞、真菌細胞又は植物細胞であってもよい。真核細胞は、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞などの昆虫細胞、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)若しくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母細胞、アスペルギルス属(Aspergillus)細胞などの真核細胞、又は脊椎動物細胞であってもよい。後者に関して、細胞は、例えばヒト細胞、ハムスター細胞又はサル細胞などの哺乳動物細胞であることが好ましい。細胞は、細胞株の一部であってもよい。
【0088】
原核生物/細菌の好適な例は、大腸菌(E.coli)(例えば、大腸菌(E.coli株のHB101、DH5a、XL1 Blue、Y1090及びJM101)のような一般にクローニングのために使用されるものである。
【0089】
第4の態様では、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明の融合構築物、本発明の核酸、又はこれらの任意の組み合わせを含む、医薬組成物又は診断用組成物に関する。
【0090】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。「薬学的に許容される担体又は賦形剤」とは、非毒性の固体、半固体若しくは液体の充填剤、希釈剤、封入材料又は任意のタイプの製剤助剤を意味する。薬学的に許容される担体又は賦形剤の例は、例えば、Ansel et al.,「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」,7th edition,Lippincott Williams & Wilkins Publishers,1999に記載されている。
【0091】
本明細書中上記でより詳細に論じられるとおり、FGFR3は多くの疾患及び特に癌に関与する。したがって、本発明のポリペプチド、融合構築物、核酸分子、ベクター、又はこれらの任意の組み合わせは、薬剤として有用である。前記医薬組成物内で、本発明のポリペプチド、融合構築物、核酸分子、ベクター、又はこれらの任意の組み合わせが、唯一の活性薬剤であってもよいが、一方でそれらは、例えば組み合わせ製品において、他の活性薬剤と組み合わせることもできる。医薬組成物は、例えば、家畜並びに愛玩動物、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長動物などの哺乳動物に投与することができる。好ましくは、それはヒトに投与される。本明細書に記載される医薬組成物は、好適な用量で対象に投与されることになる。
【0092】
本発明に従う使用のための医薬組成物は、1つ以上の生理学的担体又は賦形剤を使用して、当技術分野において認められる方法に従う従来の方法で製剤化することができ、例えば、Ansel et al.,「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」,7th edition,Lippincott Williams & Wilkins Publishers,1999を参照されたい。したがって、医薬組成物は、従来の薬学的に許容される賦形剤を任意選択で含む投与単位形態で、経口的に、非経口的に、例えば、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、くも膜下腔内に、経皮的に、経粘膜的に、硬膜下に、イオン導入法を介して局部若しくは局所的に、舌下に、吸入スプレーにより、エアロゾルで又は直腸からなどで投与されてもよい。また本発明の診断用組成物は、任意の従来の方法で製造されてもよい。
【0093】
本発明の医薬組成物は、例えば、上述の疾患の治療又は予防のために、唯一の活性成分として、又は免疫抑制剤若しくは免疫調節剤若しくは他の抗炎症剤などの別の活性成分と組み合わせて投与されてもよい。例えば、本発明のポリペプチド、融合構築物及び構築物が、モノクローナル抗体、例えば、GM−2、CD38、ICAM−1、SLAMF7、CD45、CD40、CD74、IGFR−1、CD20、BAFF、BCMA、CD66、GRP78、CXCR4、EGFR、EPCAM、TROP−2、B7H3又はCEACAM−1に親和性を有するモノクローナル抗体と組み合わせて使用されてもよい。
【0094】
本発明の診断用組成物は、特にFGFR3の不要な過剰発現に起因する望ましくない生理学的FGFR3レベルの検出に有用である。前記検出は通常、試料を本発明のポリペプチド、融合構築物、構築物、核酸分子、ベクター、宿主細胞又はこれらの任意の組み合わせと接触させること、及び試料中におけるFGFR3b及び3c、特に配列番号9及び10のFGFR3b及び3cの存在を検出することを含む。したがって、本発明の診断用組成物は、発症又は疾患状態、及び特にFGFR3の過剰発現に関連する癌又は関連疾患を評価するために使用され得る。
【0095】
本明細書中上記の本発明の一実施形態では、本発明のポリペプチドは、蛍光色素、光増感剤、放射性核種、又は医用画像化用造影剤に連結される。このような融合構築物は特に診断用途に好適である。これは、FGFR3が、例えば、癌において過剰発現され、その結果、検出できるほどに標識された本発明のポリペプチドを使用して、疾患部位を画像化して、癌を有するような対象を診断できるためである。
【0096】
本発明の診断用組成物及び医薬組成物の投与量は、本発明の特定のペプチド、融合構築物、構築物、1つ以上の核酸分子、1つ以上のベクター又はこれらの任意の組み合わせ、個々の患者集団又は患者、さらなる診断用の又は医学的に活性な化合物の任意選択的な存在、並びに診断又は治療される疾患の性質及び重症度に応じて変動することになる。通常、診断用組成物及び医薬組成物は、約0.01mg〜約20mg/キログラム体重、例えば、約0.1mg〜約5mg/キログラム体重の投与量で使用される。診断用組成物又は医薬組成物は、2回以上投与されて、例えば、診断用組成物の場合は疾患の経過をモニターするか、又は医薬組成物の場合は治療を延長し得る。例えば、診断用組成物又は医薬組成物の投与の頻度は、毎日から約3ヶ月毎に1回まで、例えば、約2週間毎に1回から約10週間毎に1回まで、例えば4〜8週間毎に1回の範囲であり得る。ある種の実施形態では、投与計画は、1ヶ月に1回から2〜3ヶ月毎に1回、又はそれより少ない頻度での本発明の診断用組成物又は医薬組成物の投与を含む。
【0097】
ある種の実施形態によれば、本発明の第4の態様の医薬組成物又は診断用組成物は、癌又はT細胞介在性疾患の治療における使用のためのものである。
【0098】
本明細書において上述のとおり、FGFR3の過剰発現は、いくつかの癌種において報告されており、その結果、医薬組成物又は診断用組成物は、癌の治療及び診断に特に好適である。したがって、癌細胞がそれらの表面上にFGFR3を発現するか、又は癌がFGFR3の過剰発現と関連する癌が好ましい癌である。
【0099】
癌におけるFGFR3発現の既知の役割のために、本発明の医薬組成物又は診断用組成物はまた、良性及び悪性腫瘍を含む新生物の治療においても一般に使用され得る。
【0100】
FGFR3活性の阻害が、T細胞媒介性疾患、特にT細胞介在性炎症性疾患及び自己免疫疾患を治療する手段であることは、米国特許出願公開第2008/044419号明細書において報告されている。
【0101】
本発明の第4の態様のある種の実施形態によれば、癌は、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、神経膠腫、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、皮膚癌、精巣癌及び尿路上皮癌から選択される。
【0102】
「The human protein Atlas」(http://www.proteinatlas.org/ENSG00000068078−FGFR3/cancerを参照のこと)によれば、FGFR3の発現は、次の癌種:乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、神経膠腫、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、皮膚癌、精巣癌及び尿路上皮癌において見出された。したがって、FGFR3の発現は、これらの癌種の発生において関連があると予想することができる。
【0103】
本発明の第4の態様のある種の実施形態によれば、癌は、多発性骨髄腫、膀胱癌、子宮頸癌、膵臓癌、肺扁平上皮癌、及び結腸直腸癌から選択される。
【0104】
FGFR3の過剰発現が、多発性骨髄腫及び膀胱癌において報告されていることは、本明細書において上述されている。FGFR3の発現はまた、子宮頸癌(Capellen et al.,Nat Genet.1999 Sep;23(1):18−20.)、膵臓癌(Lafitte et al.,Mol Cancer,2013,12:83)、及び結腸直腸癌(Sonvilla et al.,Br J Cancer,2010;102(7):1145−1156)と関連づけられている。さらに、FGFR3の発現は、肺扁平上皮癌(Liao et al(2013),Cancer Research,73(16):5195−5205)において観察された。
【0105】
本発明の第4の態様のある種の実施形態によれば、T細胞介在性疾患は、関節リウマチ(RA)、II型コラーゲン関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、乾癬、若年発症糖尿病、シェーグレン病、甲状腺疾患、類肉腫症、自己免疫ぶどう膜炎、炎症性腸疾患(クローン及び潰瘍性大腸炎)、セリアック病及び重症筋無力症から選択される。
【0106】
上に列挙された疾患は、FGFR3の阻害によって治療され得る特定のT細胞媒介性疾患の非限定的な例である。
【0107】
本明細書には、特許出願及び製造業者のマニュアルを含めて、いくつかの文献が引用されている。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連するとみなされるものではないが、これをもってその全体が参照により組み込まれる。より具体的には、全ての参照された文献は、あたかもそれぞれの個々の文献が具体的且つ個別に参照により組み込まれることを指示されるのと同程度まで、参照により組み込まれる。
【0108】
本発明の全体にわたって、用語「含む」は、列挙される全ての要素が包含されることを意味する。この用語が用いられるとき、追加の不特定の要素もまた任意選択的に存在する場合がある。したがって、「含む」は、「〜からなる」を意味する場合があるか(すなわち、列挙された要素のみが存在する)、又は「含有する」を意味する場合がある(すなわち、列挙された全ての要素以外の他の要素もまた存在する)。したがって、配列番号xを含むポリペプチドは、配列番号xのみからなる場合があるか、又は他の実施形態において、例えば、配列番号xが抗体重鎖又は軽鎖に融合されている実施形態では、例えば融合タンパク質におけるものなど、追加のアミノ酸を含む場合がある。
【0109】
別途定義しない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本特許明細書が優先する。
【0110】
本明細書で、特に、特許請求の範囲で特徴づけられた実施形態に関して、従属請求項に記載される各実施形態は、前記従属請求項が従属する各請求項(独立又は従属)の各実施形態と組み合わされることが意図される。例えば、独立請求項1が3つの選択肢A、B、及びCを挙げ、従属請求項2が3つの選択肢D、E及びFを挙げ、且つ請求項1及び2に従属する請求項3が3つの選択肢をG、H及びIを挙げる場合、別途具体的な記載がない限り、明細書では、組み合わせ、すなわち、A、D、G;A、D、H;A、D、I;A、E、G;A、E、H;A、E、I;A、F、G;A、F、H;A、F、I;B、D、G;B、D、H;B、D、I;B、E、G;B、E、H;B、E、I;B、F、G;B、F、H;B、F、I;C、D、G;C、D、H;C、D、I;C、E、G;C、E、H;C、E、I;C、F、G;C、F、H;C、F、Iに対応する実施形態が一義的に開示されると理解すべきである。
【0111】
同様にまた、独立及び/又は従属請求項が選択肢を挙げない場合、従属請求項が大部分の先行請求項に戻って参照するとき、それにより包含される主題の任意の組み合わせが明示的に開示されるものとみなされると理解される。例えば、独立請求項1、請求項1に戻って参照する従属請求項2、及び請求項2及び1の両方に戻って参照する従属請求項3の場合、請求項3及び1の主題の組み合わせは、請求項3、2、及び1の主題の組み合わせとして、明確に且つ一義的に開示されることになる。請求項1〜3のいずれか一項を参照するさらなる従属請求項4が存在する場合、請求項4及び1、請求項4、2、及び1、請求項4、3、及び1、さらには請求項4、3、2、及び1の主題の組み合わせが明確に且つ一義的に開示されることになる。
【0112】
上記の考慮を、必要な変更を加えて全ての添付の特許請求の範囲に適用する。
【実施例】
【0113】
実施例は本発明を説明する。
【0114】
実施例1:FGFR3b及びFGFR3cに結合するFyn SH3由来ポリペプチド。
FGFR3の標的化を可能にするために、本発明者らは設計して、それに対する特異的なFyn SH3由来結合分子を得た。各種腫瘍細胞上における2つの異なるスプライスバリアント(FGFR3b及びFGFR3c)の分布及び発現は完全に理解されていないため、Fyn SH3由来ポリペプチドがその両方に結合できることは重要である。
【0115】
組換えヒトFGFR3b−Fc(配列番号12)及びFGFR3c−Fc(配列番号13)を標的として使用して、本発明者らは、ヒトFGFR3の両方のスプライスバリアント(配列番号9及び10)に結合することができるFyn SH3由来結合タンパク質のいくつかのファミリーを首尾よく選択し、且つ単離した。本発明者らは、さらなる試験のために最も有望な候補ファミリーで続けた。
【0116】
興味深いことに、RT−ループ「EVYGPTP」(配列番号2)を有し、FF2L4C3(配列番号3)と称されるFyn SH3由来ポリペプチドは、選択過程中に濃縮され、29個の試験された抗FGFR3フィノマーの中で最も有望な内部移行特性を示した(図2を参照のこと)。より詳細には、5個の他の配列ファミリーが、さらなる分析から除外された。最も有望な配列ファミリーに属するフィノマーは、最も高い親和性及び内部移行特性を示した。
【0117】
より高い親和性及び向上した内部移行特性を有するFyn SH3由来FGFR3結合体を得るために、FF2L4C3(配列番号3)を、親和性成熟のための鋳型として使用した。RT−ループ配列「EVYGPTP」(配列番号2)は不変のままとし、無作為抽出のn−src−ループレパートリーと組み合わせた(一続きの4〜6個の無作為抽出のアミノ酸残基が、配列番号1における位置(X)〜(X)に導入された)。親和性成熟ライブラリーの生成の過程は、無作為抽出のn−src−ループによるナイーブライブラリーのクローニングについて記載されたものと本質的に同じである([25]において記載される「ライブラリー0」)。
【0118】
ナイーブ及び親和性成熟選択の後、濃縮されたFyn SH3由来ポリペプチドを、ライセートELISAによってFGFR3への結合についてスクリーニングした。Grabulovski et al.[26]に記載されるとおりに、得られた構築物がC末端myc−ヘキサヒスチジンタグを有するように、Fyn SH3由来結合タンパク質をコードするDNAを、細菌発現ベクターpQE12(Qiagen)にクローン化した。ポリペプチドを、96ウェルフォーマットにおいて大腸菌(E.coli)細菌の細胞質ゾル中で発現させて、Bertschinger et al.[27]に記載されるとおりに、ウェル当たり200μlの透明なライセートを調製した。簡単に言うと、形質転換された細菌コロニーを、寒天プレートから拾い上げ、100μg/mlのアンピシリン及び0.1%(w/v)のグルコースを含有する200μlの2xYT培地中で、丸底96ウェルプレート(Nunc、カタログ番号163320)において増殖させた。37℃及び200r.p.m.で回転させながら3時間振盪して増殖させた後、1mMのIPTG(Applichem、Germany)を添加することによってタンパク質発現を誘導した。回転式振盪機(200r.p.m.、30℃)中でタンパク質を一晩発現させた。引き続いて、96ウェルプレートを1800gで10分間遠心分離し、上清を捨てた。BugBuster(登録商標)とBenzonase(登録商標)(Millipore 70750−3)を使用して細菌ペレットを溶解し、続いてライセートを1800×gでの10分間の遠心分離によって清澄化した。60μlのライセートを170μlのPBSと混合し、残留している細菌の残骸を除去するために、0.45μmのマルチスクリーンフィルタープレート(Millipore MSHVN4510)に通して濾過した。
【0119】
単クローンの細菌ライセートをELISAに使用した。ELISAのために、Maxisorpプレートを、5μg/mlのhuFGFR3b−Fc(配列番号12)、5μg/mlのhuFGFR3c−Fc(配列番号13)又は5μg/mlポリIgGのいずれかで一晩コーティングし、2%のMPBSで少なくとも1時間ブロックした。C末端myc及びヘキサヒスチジンペプチドタグを有する可溶性フィノマーを含有する清澄化されたライセートを、マウスモノクローナル抗mycタグ抗体、クローン9E10(Roche Applied Science 11 667 203 001)を含有する2%MPBS中において、maxisorpプレートに添加した。結合されたフィノマーを、抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma−Aldrich A2554)によって9E10を介して検出した。BM blue POD基質(Roche)を添加することによりペルオキシダーゼ活性の検出を行い、1M HSOを添加することにより反応を停止させた。
【0120】
特異的な結合体のDNA配列を、DNA配列決定によって確認した。
【0121】
結果
FGFR3b及びFGFR3cに結合するELISA陽性のFyn SH3由来の好ましいポリペプチドのアミノ酸配列は、配列リスト中に添付されるとおり配列番号3〜8において示される。Fyn−SH3由来ポリペプチド 配列番号4〜8は、FF2L4C3(配列番号3)の親和性成熟の後に得られた分子の大規模なプールに由来する結合体の選択物であり、それらの親和性及び内部移行特性は向上しているため(実施例2及び5において示される)ここに示す。
【0122】
より詳細には、配列番号3に由来する80個を超えるフィノマーが、それらの生物物理学的特性、親和性及び内部移行特性に関して特徴づけられた。配列番号4〜8は、生物物理、親和性及び内部移行の観点における特性の最良のセットを有する結合体である。
【0123】
実施例2:本発明のFyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドの発現
本実施例は、好ましいFyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドの発現収量及びサイズ排除クロマトグラフィーによるこれらのポリペプチドの特徴づけを示す。
【0124】
方法
a)Fyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドの発現収量
Fyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドを、TG1大腸菌(E.coli)細菌の細胞質ゾルにおいて発現させ、Grabulovski et al.[2]に記載されるとおりに精製した。
【0125】
b)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
試料をサイズ排除クロマトグラフィー(TOSOH TSKgel PW G3000PWxL;Agilent 1260 Infinity HPLC;PBS pH7.4移動相)によって分析した。10μlの未希釈の試料をカラムに注入し、得られたプロファイルを分析した。
【0126】
結果
a)発現収量
本発明の単量体Fyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドの発現収量は、振盪フラスコにおいて最適化されていない条件下で15〜51mg/1リットルの細菌培養液の範囲であり(表1)、Fyn SH3由来ポリペプチドに関する典型的な範囲である。
【0127】
【表1】
【0128】
b)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)プロファイルは、全ての構築物が主に単一の単量体ピークとして溶出されることを実証した(図3)。これは一般に良好な生物物理学的特性を示し、これはフィノマー(抗体との融合タンパク質であるフィノマブを含むFyn SH3由来結合分子)の製造上の観点から有利であり、Fyn SH3由来分子の以前の観測結果と一致する。
【0129】
実施例3:本発明のFyn SH3由来ポリペプチドは、高い親和性を有してヒトFGFR3b及びFGFR3cに結合する。
本実施例は、表面プラズモン共鳴及びフローサイトメトリー実験による好ましいFyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドの特徴づけを示す。
【0130】
方法
a)BIAcoreによる親和性測定
親和性を、BIAcore T200機器を使用して測定した。CM5シリーズSチップ(GE Healthcare BR−1005−30)上の1つのフローセルを、アミンカップリングキット(GE Healthcare BR100633)を使用して、抗myc抗体9E10(Roche 11 667 203 001;6000と8000RUの間の範囲のコーティング密度)でコーティングした。
【0131】
500nMの濃度の親フィノマーFF2L4C3(配列番号3)、及び100nMの濃度の配列番号4〜8を有するフィノマーを、9E10表面上で捕捉した後、様々な濃度のhuFGFR3b−Fc(配列番号12)、huFGFR3c−Fc(配列番号13)又はcynoFGFR3c−Fc(配列番号14)を注入した(親フィノマーFF2L4C3の測定のために0nM、3.9nM、7.8nM、15.6nM、31.25nM、62.5nM、125nM、250nM及び500nM、配列番号4〜8を有するフィノマーのために0nM、0.046nM、0.14nM、0.41nM、1.2nM、3.7nM、11.1nM、33.3nM及び100nM)。センサーグラムを記録し、BIAevaluation 2.1ソフトウェアにおける1.1ラングミュア相互作用モデルを用いたカーブフィッティングによって、見かけの動力学定数を決定した。
【0132】
b)フローサイトメトリーによる親和性測定
細胞上のhuFGFR3に対するフィノマーの結合を、FGFR3陽性細胞としてのKMS−11細胞(JCRB1179)及びFGFR3陰性対照細胞株としてのN87(ATCC、CRL−5822)を使用して、フローサイトメトリーによって分析した。KMS−11細胞及びN87細胞の両方を、RPMI1640培地(Invitrogen 52400−25)中で維持した。全ての培地に、25U/mlのペニシリン、25μg/mlのストレプトマイシン及び10%のFCSを補充した。T150フラスコから半付着性のKMS−11細胞を回収するために、上清を50mlファルコンチューブに取り出し、細胞を10mlのPBSで洗浄し、これもまたファルコンチューブに加えた。2mlのAccutase(Sigma A6964)をフラスコに加え、37℃で10分間インキュベートした。10mlの培地の添加によりAccutaseを不活性化し、ファルコンチューブに加え、続いてこれを遠心分離(250×g、5分)して細胞をペレットにした。細胞をFACS緩衝液(PBS+1%FCS+0.2%アジ化ナトリウム)中で再懸濁して、1×10細胞/mlの細胞濃度にし、96ウェル丸底プレート(Nunc 163320)中でのフローサイトメトリー染色のために、1ウェル(1×10細胞/ウェル)当たり100μlを使用した。付着性のN87細胞については、上清及び洗浄液を捨て、Accutaseにより剥離した細胞のみを回収し、調製した。
【0133】
フィノマーをマウス抗myc抗体(クローン9E10;Roche 11667149001)とコインキュベーションして、細胞結合の前にmycタグ付きフィノマーの架橋を行った。フィノマーを希釈して1μMにし、およそ10分間氷上でFACS緩衝液中において667nMの9E10抗myc抗体とコインキュベーションした(3:2モル比)。
【0134】
この混合物を4分の1ずつ段階希釈して、0.06nMのフィノマー濃度にした(全体で8種の濃度)。対照は、二次抗体9E10のみ(フィノマーなし;667nM 9E10)、細胞のみ(FACS緩衝液のみ)、及び10nMの濃度の抗FGFR3抗体(R&D systems;カタログ番号MAB766)を含んだ。細胞を96ウェルプレート中で遠心分離し(250×g、5分)、上に示される試料とともに再懸濁した後、氷上で1時間インキュベーションした。プレートを遠心分離し、洗浄(PBS+0.2%アジ化ナトリウム)した後、再度遠心分離した。次に、50μlの二次抗体である抗mIgG Alexa488(Life Technologies A21202)を、4μg/mlの濃度で細胞に加えた後、暗室の氷上において45分間インキュベートした。プレートを遠心分離し、PBS+0.2%アジ化ナトリウムで2回洗浄した後、FACS緩衝液中で再懸濁し、FACS分析を行った(Millipore Guava easyCyte 8HT)。
【0135】
FACSデータ分析をPrism 6を使用して実施した。データを変換し(X=logX)、非線形フィット、log(アゴニスト)vs.反応−可変勾配(4つのパラメーター)を用いて分析した。
【0136】
結果
a)BIAcoreによる親和性測定
結合特性を、BIAcoreチップ上のリアルタイム相互作用分析によって分析して、選択されたFGFR3結合ポリペプチドについて以下の解離定数(KD)を明らかにした。
【0137】
【表2】
【0138】
FGFR3b及びFGFR3c(配列番号9及び10)に結合するFyn SH3由来ポリペプチド(配列番号3〜8)の測定された見かけの親和性(表2)は、nM以下の値がただ1ラウンドの親和性成熟後に得られたという事実を考慮すると、驚くほど高い。さらに、これらの測定値は、両方のFGFR3のヒトアイソフォーム(FGFR3b及びFGFR3c;配列番号9及び10)、並びにカニクイザルFGFR3c(カニクイザルFGFR3bへの結合は試験されなかった)に対するFyn SH3由来ポリペプチド(配列番号3〜8)の同等の結合特性を確証した。
【0139】
b)フローサイトメトリーによる親和性測定
結合特性を、FGFR3陽性KMS−11細胞及び陰性対照としてのFGFR3陰性N87細胞を用いて、フローサイトメトリーによって分析した。選択されたFGFR3結合ポリペプチドに関する以下のEC50値は、表3及び図4において示されるとおりに測定された。
【0140】
【表3】
【0141】
FGFR3を発現する細胞株上で測定された低ナノモル濃度範囲(表3)のEC50値(図4A、KMS−11)は、表面プラズモン共鳴によって測定された高い見かけの親和性(表2)を確証し、細胞表面の自然な状態におけるFGFR3への結合を実証している。FGFR3に結合する全てのFyn SH3由来ポリペプチド(配列番号3〜8)は、FGFR3を発現しない細胞株に対して非特異的な結合を示さなかった(図4B)。
【0142】
実施例4:FGFR3に特異的な本発明のFyn SH3由来ポリペプチドは、リガンド結合を妨げない。
リガンド結合部位は、FGFR3b又はFGFR3cのいずれかを生じるスプライス部位に近接して位置するため、両方のアイソフォームFGFR3b及びFGFR3cに結合するためのFyn SH3由来ポリペプチドが、リガンド(例えば、FGF1)結合を妨げなければ好ましいであろう。
【0143】
リガンドのうちの1つの存在下で、Fyn SH3由来ポリペプチドのFGFR3に結合する能力を検証する目的で、BIAcore実験を設計して、FGF1の存在下又は非存在下でのフィノマーのFGFR3に対する親和性を測定した(線維芽細胞増殖因子1は、FGFR3の主要なリガンドの1つである)。
【0144】
親和性を測定するために使用される方法と同様に、100nMの濃度のフィノマー(500nMの濃度で使用されるFF2L4C3−配列番号3を除いて)を9E10表面上で捕捉した後、様々な濃度のhuFGFR3c−Fc(配列番号13)(0nM、11nM、33nM、100nM)を、200nMのFGF1(R&D systems 232−FA−025/CF)の存在下又は非存在下において注入した。センサーグラムを記録し、BIAevaluation 2.1ソフトウェアを用いて見かけの動力学定数を計算した。
【0145】
結果
溶液中における200nMのFGF1の有無に関わらず、huFGFR3cに対するFyn SH3由来ポリペプチドの結合は変化しなかったが、これは、FGFR3に対するフィノマーの結合がリガンド結合を妨げなかったことを示している。
【0146】
【表4】
【0147】
アッセイの変動性によって、FGF1の非存在下でのKDappの値は、実施例2に示される実験において得られた値(表2)とはわずかに異なるものの、この実験は、Fyn SH3由来ポリペプチドが、たとえリガンド(この場合FGF1)がリガンド結合部位に結合しているとしても、FGFR3に結合できることを示す。
【0148】
これより、本発明者らは、本明細書に記載されるFyn SH3由来ポリペプチドにより結合されるエピトープは、FGFR3の定常領域に位置すると結論する。
【0149】
実施例5:本発明のFyn SH3由来ポリペプチドは、FGFR3のドメインD1〜D2に結合する。
FGFR3に対するFyn−SH3由来ポリペプチド結合の特異性をELISAによって試験した。
【0150】
各種抗原をプレート(Maxisorpプレート;Nunc 439454)上にコーティングした:huFGFR3b−Fc(配列番号12)、huFGFR3c−Fc(配列番号13)、cyFGFR3c−Fc(配列番号14)、muFGFR3c−His(配列番号15)、huD1−Fc(配列番号16)、huD2−Fc(配列番号17)、huD1−D2−Fc(配列番号18)。
【0151】
プレートを5μg/ml(0.5μg/ウェル)の100ul抗原でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。ウェルをPBSで3回洗浄した後、200μlの4%PBSにより室温で1時間ブロックした。ウェルを再度洗浄し、15μg/mlの9E10を含有する20μlの10%MPBSを加えた後、80μlの250nMフィノマーを加えた(200nMの最終フィノマー濃度)。ウェルを室温で45分間インキュベートした後、洗浄し、2%MPBS中で1:1000に希釈された100μlの抗マウスIgG−HRP(Sigma A2554)を加えた。ウェルを室温で30分間インキュベートした後、PBS中の0.1%Tween−20で3回、続いてPBSで3回洗浄した。100μlのBM POD Blue基質(Roche 11 484 281 001)を各ウェルに加えた後、50μlの1M HSOを加えて反応を停止した。吸光度450nm〜650nmを、Tecan M1000機器を使用して記録した。
【0152】
結果
図5A〜Fにおいて示されるとおり、Fyn SH3由来ポリペプチドは全て、カニクイザル及びマウスFGFR3cに対して交差反応性を示す。興味深いことに、全ての結合体は、ドメインD1及びD2が物理的に連結しているときにのみ存在するエピトープに対して特異的であり(図5A〜FのバーhuFGFR3−D1D2)、実際に、単一のドメインD1又はD2(hFGFR3−D1又はhuFGFR3−D2)がELISAプレート上に固定化されている場合には結合は観察されない。
【0153】
実施例6:本発明のFyn SH3由来ポリペプチドはFGFR3の効率的な内部移行をもたらす。
内部移行は、本明細書で記載されるFyn SH3由来ポリペプチドの中心的な特性であり、毒性ペイロード及び/又は抗体などの融合されたタンパク質を細胞内に送達するためにこれらの結合体を使用する機会を提供する。
【0154】
FGFR3に結合しているFyn SH3由来ポリペプチドが標的に結合しているときに内部移行する能力を評価するために、細胞傷害性薬剤の細胞内送達に基づく内部移行アッセイを確立した。
【0155】
本アッセイは、KMS−11細胞上でMMAF(モノメチルオーリスタチンF)コンジュゲート9E10と架橋した抗FGFR3フィノマーの細胞障害効果を測定する。MMAFは、有糸分裂阻害剤(チューブリンの重合を遮断する)であり、細胞内に内部移行したときにのみ活性である。したがって、このアッセイは、フィノマーがどの程度MMAFの内部移行を促進するかを示す。50μlの2×10細胞/ml KMS−11を、96ウェル平底プレート(Corning Costar 3610)に播種し、ウェル当たり10,000細胞を得た。細胞を4時間インキュベートして、細胞を付着させた(37℃、5%CO2)。フィノマー及び9E10−MMAFを3:1の比で混合した。フィノマー(4μM)の4×原液及び9E10−MMAF(1.33μM)の4×原液を、RPMI培地中で調製し(節5.4.1を参照のこと)、1:1(40μl+40μl)で混合した。次に、この混合物を3分の1ずつ段階希釈して、1000nM〜50pMの濃度範囲を得た。50μlの試料を50μlの細胞(上で播種された)に加え、5日間インキュベートした(37℃、5%CO2)。適切な対照、野生型フィノマーFynSH3、フィノマーを伴わないMMAF−9E10及びいかなる試薬の添加もない細胞が含まれた。全ての試料を複製して調製した。5日後、100μlのCell titer glo(Promega G7573)を各ウェルに加え、暗室中で緩やかに振盪させながら10分間インキュベートした。細胞生存率のための読み出し情報として、輝度を、Tecan M1000機器を使用して測定した。分析をPrism 6を使用して実施した。データを変換し(X=logX)、非線形フィット、log(阻害剤)vs.反応−可変勾配(4つのパラメーター)を用いて分析した。
【0156】
結果
本明細書で記載される全てのFyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドは、MMAF標識二次抗体のみ(図6Aにおける9E10)、又はおそらくMMAF自体の細胞傷害性に起因して、試験された最高の濃度でのみ細胞障害性を示す、3つ全ての実験において示されるMMAF標識9E10と組み合わせた野生型フィノマーFynSH3(FynSH3として示される図6A〜C)で処理された細胞と比較して、細胞傷害性の上昇を示す。図6は、異なる実験において得られた細胞障害性プロファイルを示し、表5は、異なるFyn SH3由来FGFR3結合ポリペプチドについて得られたEC50を示す。
【0157】
【表5】
【0158】
図6及び表5において示されるデータは、親和性の上昇が、より効率的な内部移行にもつながることを示す。
【0159】
実施例7:優れた結合特性及び内部移行特性を示し、且つ異なるファミリーに由来する代替のFyn−SH3由来ポリペプチド
配列(配列番号1)の好ましいファミリーに加えて、本発明者らは1つの代替のフィノマー、FF40L54A5(配列番号22)を同定したが、これはまた驚くべきことに、優れた結合特性及び内部移行特性を示し、配列番号1に由来するフィノマーと製造性及び交差反応特性を共有している(表6を参照のこと)。フィノマーFF40L54A5は、その配列が、非常に乏しい内部移行特性のみを示したフィノマーに由来したため、優れた内部移行特性を有すると予想されなかった。
【0160】
表6には、フィノマーFF40L54A5の特性をまとめる。
【0161】
【表6】
【0162】
【表7】
【0163】
【表8】
本発明は以下を提供する。
[1]
線維芽細胞増殖因子受容体3のアイソフォーム3b及び3c(FGFR3b及びFGFR3c)に結合するポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、
(a)アミノ酸位置(X)〜(X)が任意のアミノ酸配列であり得る、
【化1】
(b)同一性判定ではアミノ酸位置(X)〜(X)を除外し、配列番号1のアミノ酸位置12〜19における前記アミノ酸配列EVYGPTPM(配列番号2)が保存され、且つ配列番号1のアミノ酸位置37及び38における前記アミノ酸P及びYが保存されることを条件とする、(a)の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列;
(c)前記アミノ酸位置(X)が任意のアミノ酸であり得る、
【化2】
並びに
(d)同一性判定ではアミノ酸位置(X)を除外し、配列番号19のアミノ酸位置12〜18における前記アミノ酸配列EVMSTTA(配列番号20)及び配列番号19のアミノ酸位置31〜35におけるSQSPH(配列番号21)が保存され、且つ配列番号19のアミノ酸位置37及び38におけるアミノ酸Q及びYが保存されることを条件とする、(c)の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
[2]
(X)が、N、R、又はKであり、好ましくはR又はKであり;
(X)が、S、G、K又はRであり、好ましくはG、K又はRであり;
(X)がS又はGであり、好ましくはGであり;
(X)が、E、Q、D、S又はKであり、好ましくはQ、D、S又はKであり;
(X)が、T又はAであり;且つ
(X)が、Y、W又はLであり、好ましくはL又はWである、
上記[1]に記載のポリペプチド。
[3]
前記ポリペプチドが、配列番号3〜8又は22のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[1]又は[2]に記載のポリペプチド。
[4]
前記ポリペプチドが、
配列番号4、
配列番号5、
配列番号6、
配列番号7、
配列番号8、及び
配列番号22
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[3]に記載のポリペプチド。
[5]
さらなる化合物に融合した上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリペプチドを含む融合構築物。
[6]
前記さらなる化合物が毒性化合物である、上記[5]に記載の融合構築物。
[7]
前記さらなる化合物が、抗体軽鎖、抗体重鎖、抗体のFcドメイン、抗体、又はこれらの組み合わせを含む、上記[5]に記載の融合構築物。
[8]
前記抗体が、GM−2、CD38、ICAM−1、SLAMF7、CD45、CD40、CD74、IGFR−1、CD20、BAFF、BCMA、CD66、GRP78、CXCR4、EGFR、EPCAM、TROP−2、B7H3及びCEACAM−1からなる群から選択される標的に対して特異的である、上記[7]に記載の融合構築物。
[9]
上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリペプチド、又は上記[5]若しくは[7]に記載の融合構築物をコードする核酸分子、又は上記[7]若しくは[8]に記載の融合構築物をコードする1つ以上の核酸分子。
[10]
上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリペプチド、上記[5]〜[8]のいずれかに記載の融合構築物、上記[9]に記載の核酸分子、又はこれらの任意の組み合わせを含む医薬組成物又は診断用組成物。
[11]
癌又はT細胞介在性疾患の治療における使用のための、上記[10]に記載の医薬組成物。
[12]
前記癌が、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、神経膠腫、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、多発性骨髄腫、膀胱癌、卵巣癌、膵臓癌、皮膚癌、精巣癌及び尿路上皮癌から選択される、上記[11]に記載の使用のための医薬組成物。
[13]
前記癌が、多発性骨髄腫、膀胱癌、子宮頸癌、膵臓癌、肺扁平上皮癌、及び結腸直腸癌から選択される、上記[11]に記載の使用のための医薬組成物。
[14]
前記T細胞介在性疾患が、関節リウマチ(RA)、II型コラーゲン関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、乾癬、若年発症糖尿病、シェーグレン病、甲状腺疾患、類肉腫症、自己免疫ぶどう膜炎、炎症性腸疾患(クローン及び潰瘍性大腸炎)、セリアック病及び重症筋無力症から選択される、上記[11]に記載の使用のための医薬組成物。
【0164】
参考文献
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図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]