【文献】
Lo, M. et al.,"Effector-attenuating Substitutions That Maintain Antibody Stability and Reduce Toxicity in Mice",J. Biol. Chem.,2017年,Vol. 292,pp. 3900-3908
【文献】
GONG, Q. et al.,"Importance of cellular microenvironment and circulatory dynamics in B cell immunotherapy",J. Immunol.,2005年,Vol. 174,pp. 817-826
【文献】
Shields, R. L. et al.,"High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for Fc gamma RI, Fc gamma RII, Fc gamma RIII, and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the Fc gamma R",J. Biol. Chem.,2001年,Vol. 276,pp. 6591-6604
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分子が、265位でD、297位でN及び329位でPを含む野生型ヒトIgG1 Fc含有分子と比較して、C1q及び少なくとも1つのFcγRに対する少なくとも50倍の結合の低減を有する、請求項1に記載の分子。
少なくとも1つのFcγRが、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、及びFcγRIIIbから選択される、請求項1又は2に記載の分子。
前記分子が、配列番号43、52、53、54、55、56、57、又は58のいずれか1つによる配列を含むFc領域を含み、265位のアミノ酸D、297位のN及び329位のPが、他のアミノ酸により置き換えられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分子。
前記少なくとも1つの結合ドメインが、抗体の結合部位、フィノマー、酵素、ホルモン、受容体の細胞外ドメイン、サイトカイン、免疫細胞表面抗原、リガンド、及び接着分子からなる群から選択される、請求項12に記載の組換え体ポリペプチド。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本出願がより完全に理解され得るように、いくつかの定義を下に記載する。このような定義は、文法的同義語を包含するものとする。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって、Fc領域における残基の番号付けは、参照により本明細書に明示的に組み込まれるKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)の場合のようなEUインデックスに従う免疫グロブリン重鎖のものである。本明細書で「Kabatの場合のようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。この番号付けは、当業者によく知られており、当該分野において使用されることが多い。
【0031】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド及びペプチドを含む少なくとも2個の共有結合したアミノ酸を意味する。
【0032】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」は、20個の天然に存在するアミノ酸のうちの1個又は特定の限定された位置で存在し得る任意の非天然アナログを意味する。
【0033】
「265位、297位及び329位で置換(又は「変異」、若しくは「置き換え」)を有するFc含有分子」は、265位のアミノ酸がアスパラギン酸(D)と異なり、297位のアミノ酸がアスパラギン(N)と異なり、且つ329位のアミノ酸がプロリン(P)と異なる分子を意味し、Fc領域における全ての番号付けは、Kabat et al.におけるEUインデックスに従う。
【0034】
本明細書の「アミノ酸変化」は、ポリペプチド配列における置換、挿入、及び/又は欠失などのアミノ酸変異を含む。本明細書の「アミノ酸置換」又は「置換」は、親ポリペプチド配列における特定の位置のアミノ酸の別のアミノ酸による置き換えを意味する。例えば、置換P329Aは、この場合、変異体ポリペプチドのFc変異体を指し、ここで329位のプロリンは、アラニンで置き換えられる。
【0035】
アミノ酸変異の組合せの場合、好ましい形式は、次の:D265A/N297A/P329Aである。それは、親ポリペプチドと比較して変異体のFc領域において3個のアミノ酸変異:265位のもの(アラニン(A)で置き換えられたアスパラギン酸(D))、297位のもの(アラニンで置き換えられたアスパラギン(N))、及び329位のもの(アラニンで置き換えられたプロリン(P))が存在することを意味する。
【0036】
用語「抗体」は、本明細書において最も広い意味で使用される。「抗体」は、(i)Fc領域及び(ii)免疫グロブリンの可変領域に由来する結合ポリペプチドドメインを少なくとも含む任意のポリペプチドを指す。したがって、抗体としては、全長免疫グロブリン、多重特異性抗体、少なくとも1つの可変領域を含むFc融合タンパク質、合成抗体(本明細書で「抗体ミメティック」と称される場合がある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト型抗体、ヘテロ二量体抗体、抗体融合タンパク質、抗体コンジュゲート及びそれぞれ各々の断片が挙げられるが、これらに限定されない。下により詳細に記載されるとおりの「FynomAb」はまた、抗体を含む。
【0037】
本明細書で使用する場合、「全長抗体」又は「免疫グロブリン」は、可変領域及び定常領域を含む、抗体の天然の生物学的形態を構成する構造を意味する。「全長抗体」は、モノクローナル全長抗体、野生型全長抗体、キメラ全長抗体、ヒト化全長抗体、完全ヒト全長抗体を包含し、このリストは限定的なものではない。
【0038】
ヒト及びマウスを含む大部分の哺乳動物において、全長抗体の構造は一般に四量体である。前記四量体は、各対が1つの「軽」鎖(通常、約25kDaの分子量を有する)及び1つの「重」鎖(通常、約50〜70kDaの分子量を有する)を有する2つの同一のポリペプチド鎖の対で構成される。一部の哺乳動物、例えば、ラクダ及びラマでは、全長抗体は、各重鎖がFc領域に連結された可変ドメインを含む2つの重鎖のみからなり得る。
【0039】
各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与し且ついわゆる相補性決定領域(CDR)を含む約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を含む。
【0040】
各鎖のカルボキシ末端部分は、通常主にエフェクター機能に関与する定常領域を規定する。
【0041】
ヒト免疫グロブリンの場合、軽鎖は、カッパ及びラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ又はイプシロンに分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして抗体のアイソタイプを規定する。
【0042】
本明細書で使用する場合、「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、且つヒト免疫グロブリンライブラリー又は1つ以上のヒト免疫グロブリンに関して遺伝子導入し且つ内在性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を含む。
【0043】
本明細書で使用する場合、「IgG」は、認識される免疫グロブリンガンマ遺伝子により実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。ヒトにおいて、IgGは、サブクラス又はアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む。マウスにおいて、IgGは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3を含む。全長IgGは、2つの免疫グロブリン鎖の2つの同一の対からなり、各対は、1つの軽鎖及び1つの重鎖を有し、各軽鎖は、免疫グロブリンドメインVL及びCLを含み、且つ各重鎖は、免疫グロブリンドメインVH、Cγ1(CH1とも呼ばれる)、Cγ2(CH2とも呼ばれる)、及びCγ3(CH3とも呼ばれる)を含む。ヒトIgG1の文脈において、Kabatの場合のようなEUインデックスに従って、「CH1」は118〜215位を指し、CH2ドメインは231〜340位を指し、且つCH3ドメインは341〜447位を指す。IgG1はまた、IgG1の場合において216〜230位を指すヒンジドメインを含む。
【0044】
本明細書で使用する場合、「Fc」又は「Fc領域」は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く全長免疫グロブリンの定常領域を意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメインを指し、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメインを指し、且つこれらのドメインの可動性ヒンジN末端を指す。IgA及びIgMに関して、Fcは、J鎖を含んでもよい。IgGに関して、Fcは、免疫グロブリンドメインCH2、CH3、及びCH1とCH2の間の下方ヒンジ領域を含む。IgG1のFc領域は、アミノ酸C226からカルボキシ末端のドメインを含み、番号付けは、Kabatの場合のようなEUインデックスに従う。例えば、「Fc」又は「Fc領域」は、限定されないが、配列番号43及び52〜58(これらの各々は、ヒト野生型IgG1 Fcアミノ酸配列の例である)のうちのいずれか1つを含むか、又は配列番号43若しくは配列番号52〜58のいずれかと少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一な配列を含むIgG1のFc領域を含み得る。好ましい実施形態では、226位(Kabat番号付け)以降の本発明によるFc領域は、配列番号43と少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%同一な配列を含み、265位のアミノ酸はアスパラギン酸(D)と異なり、297位のアミノ酸はアスパラギン(N)と異なり、且つ329位のアミノ酸はプロリン(P)と異なる。他のIgGサブクラスに関する類似のドメインは、前記IgGサブクラスの重鎖又は重鎖断片とヒトIgG1のそれとのアミノ酸配列アラインメントから決定され得る。
【0045】
本明細書で使用する場合、「CH2ドメイン」は、好ましくは、ヒトIgG1のFc領域にあり、且つ配列番号60と少なくとも80%、85%、90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一なアミノ酸配列を含む。本明細書で記載されるとおりのヒトIgG1のFc領域の「CH3ドメイン」は、配列番号61と少なくとも80%、85%、90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%、又は100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0046】
本明細書で使用する場合、「Fc含有分子」は、Fc領域を含むポリペプチドを意味する。Fc含有分子としては、抗体、Fc融合体、単離Fc、Fcコンジュゲート、抗体融合体、FynomAbなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書の「野生型」又は「WT」は、天然に見出される、すなわち、対立遺伝子の変異を含んで天然に存在するアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を意味する。WTタンパク質、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリン、IgGなどは、変異誘発などの分子生物学的手法によって意図的に改変されていないアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を有する。例えば、「野生型Fc領域」は、限定されないが、配列番号43の配列を含むIgG1のFc領域を含んでもよく、これはヒト野生型IgG1 Fcアミノ酸配列、又は配列番号52〜58の配列のいずれか1つを含むIgGのFc領域の例であり、これらの各々はまた、ヒト野生型IgG1 Fcアミノ酸配列の例でもある。
【0048】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、Fc領域(例えば、抗体のFc領域)に結合する受容体を記載するために使用される。
【0049】
用語「Fcガンマ受容体」、「Fcγ受容体」又は「FcγR」は、IgG抗体のFc領域に結合するヒト受容体を指す。本明細書で使用する場合、FcγRは、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)サブクラスであって、これらの受容体の対立遺伝子変異体及び選択的にスプライシングされた形態を含むサブクラスを含む。
【0050】
これらのFcγRはまた、それらが免疫機能を誘発するか又は抑制するため、活性化受容体(FcγRI、FcγRIIa/c、FcγRIIIa/b)又は抑制性受容体(FcγRIIb)のいずれかとして定義される。
【0051】
FcγRIファミリーは、3つの遺伝子(FCGRIA、FCGRIB及びFCGRIC)から構成されるが、FCGRIAの産物のみが全長表面受容体として同定されている。前記産物、すなわちFcγRIは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、また活性化好中球によって発現される。
【0052】
FcγRIIファミリーは、FcγRIIa、FCγRIIb及びFcγRIIcタンパク質をコードする3つの遺伝子(FCGR2A、FCGR2B及びFCGR2C)から構成される。FcγRIIaは、単球、ある種の樹状細胞及び好中球上で発現される。FcγRIIcは、ナチュラルキラー(NK)細胞上で発現される。FcγRIIbは、広く発現されるFcγRである。FcγRIIbは、NK細胞及びT細胞を除く全ての白血球上に実質的に存在する。
【0053】
FcγRIIIファミリーは、FcγRIIIa及びFcγRIIIbをコードする2つの遺伝子FCGR3A及びFCGR3Bから構成される。FcγRIIIaタンパク質は、単球、組織特異的マクロファージ、樹状細胞、γδT細胞、及びナチュラルキラー細胞上の幕貫通タンパク質として発現される。FcγRIIIbは、好中球及び好塩基球の表面上で発現されるGPIアンカー型受容体である。
【0054】
FcγRIIaをコードする遺伝子の2つの対立遺伝子は、131位で異なる2つの変異体(低応答物FcγRIIaR131及び高応答物FcγRIIaH131)を生成する。同様に、FcγRIIIaをコードする遺伝子の2つの対立遺伝子は、158位で異なる2つの変異体(低応答物FcγRIIIaF158及び高応答物FcγRIIIaV158)を生成する。
【0055】
顕著には、抗体依存性細胞障害の非常に重要なメディエーターであると考えられるNK細胞は、FcγRIIIa及びFcγRIIcのみを発現し、他のFcγR、特に、抑制性FcγRIIbを発現しない。
【0056】
各FcγRタンパク質は、IgGサブクラスに対する異なるリガンド結合の優先度及びIgGサブクラスに対する異なる親和性を有する。
【0057】
活性化FcγRは、抗原提示細胞(APC)による貪食、呼吸性バースト及びサイトカイン産生(TNF−α、IL−6)、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)並びに好中球及びNK細胞による脱顆粒などの種々の免疫応答を誘発する。活性化FcγRはまた、免疫複合体のクリアランスにおいて重要な役割を果たす。他方では、抑制性受容体FcγRIIbは、B細胞恒常性における非常に重要な調節要素である。それは、細胞活性化の閾値及び程度を制御する。
【0058】
Fcガンマ受容体及びそれらの機能は、Nimmerjahn and Ravetch,Nature Reviews Immunology,2008,8,34−47において概説される。
【0059】
本明細書で使用する場合、「C1q」は、およそ460,000の分子量を有し、6つのコラーゲン性の「軸」が6つの球状ヘッド領域に連結されているチューリップの花束に例えられる構造を有する六価分子である。C1qと2つのセリンプロテアーゼであるC1r及びC1sは、補体カスケード経路の第1成分である複合体C1を形成する。
【0060】
C1q及びその機能は、例えば、Kishore et al., Immunopharmacology, 2000, 49:159-170及びSjoberg et al., Trends Immunol. 2009 30(2):83-90において概説される。
【0061】
本明細書で使用する場合、「FcRn」又は「新生児Fc受容体」は、IgG抗体Fc領域に結合し、且つFCRN遺伝子によって少なくとも部分的にコードされるタンパク質を意味する。当該技術分野で知られるとおり、機能的FcRnタンパク質は、重鎖及び軽鎖と呼ばれる場合が多い2つのポリペプチドを含む。軽鎖はベータ−2−ミクログロブリンであり、重鎖はFCRN遺伝子によってコードされる。FcRn又はFcRnタンパク質は、α−鎖のベータ−2−ミクログロブリンとの複合体を指す。ヒトにおいて、FcRnをコードする遺伝子は、FCGRTと呼ばれる。FcRnは、母親から胎児への受動液性免疫の移送に関与し、またIgGのクリアランスの制御にも関与する。
【0062】
FcRn及びその機能は、例えば、Roopenian,Nature Reviews Immunology,2007,7,715−725において概説される。
【0063】
本明細書で使用する場合、分子は、それが、KDがpH6.0で測定される表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して測定される際に5倍より低い、好ましくは4倍より低い、より好ましくは3倍より低い、さらにより好ましくは2倍より低い、アミノ酸置換を有しない親Fc含有分子(例えば、野生型IgG1)のKDであるKDでFcRnに結合するとき、「FcRnに対する結合を保持する」。特定の実施形態では、KDは、親分子のKDの約1〜2倍、例えば、約1.5倍、又は親分子のKDとほぼ同じ(すなわち、1倍)であり、また特定の実施形態では、KDはまた、親分子のKDより低い場合もある。
【0064】
「結合の低減」は、アミノ酸置換を有しない親Fc含有分子の結合と比較したとき、例えばC1q及び/又はFcγR受容体に対する、本明細書に記載されるFc領域において少なくとも1つのアミノ酸置換を有する本発明のFc含有分子の結合の低減を指す。「結合の低減」は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、又は少なくとも約100倍の結合の低減であり得る。Fc含有分子の結合は、表面プラズモン共鳴(SPR)を含むがこれに限定されない当該技術分野で知られる種々の手法を用いてアッセイされ得る。SPR測定は、BIAcore(登録商標)機器を用いて実施され得る。実際に、特定のFcγRに対して「結合の低減」を呈するFc含有分子は、特定のFcγRによって媒介されるエフェクター機能を著しく低減又は抑制したFc含有分子を指す。
【0065】
本明細書で使用する場合、「組換え体」は、組換え手段によって作製、発現、創出又は単離される抗体及び他のタンパク質を含む。
【0066】
「ベクター」は、生物システム内で複製することができ、且つそのようなシステム間で移動できるポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは通常、生物システムにおいてこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持を促進するために機能する複製開始点、ポリアデニル化シグナル又は選択マーカーなどの要素を含有する。このような生物システムの例としては、ベクターを複製できる生物学的構成要素を利用する細胞、ウイルス、動物、植物、及び再構成された生物システムを挙げてもよい。ベクターを含むポリヌクレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はこれらのハイブリッドであってもよい。
【0067】
「ポリヌクレオチド」は、糖リン酸骨格又は他の同等の共有結合性の化学によって共有結合されたヌクレオチドの鎖を含む分子を意味する。二本鎖及び一本鎖DNA及びRNAがポリヌクレオチドの典型的な例である。
【0068】
C1q及びFcγRに対する結合が低減したFc変異体
本発明は、Kabatの場合のようなEUインデックスに従うIgG1定常領域(Fc)の265位、297位、及び329位における組み合わされた置換の最初の実証である。複数の残基置換の特異的な選択は予想外に、抗体操作における使用及び融合ポリペプチドとしての使用のための機能的Fcドメイン並びに測定可能なエフェクター機能を欠く治療薬の実体をもたらす可能性を提供した。
【0069】
したがって、本発明は、Kabatの場合のようなEUインデックスにより示される265位のアミノ酸D、297位のアミノ酸N、及び329位のアミノ酸Pが他のアミノ酸により置き換えられるCH2ドメインを含む、組換え体IgG1 Fc含有分子を提供する。
【0070】
好ましいIgG1 Fc含有分子としては、265位、297位及び329位でアミノ酸置換を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。下で述べられるとおり、このようなポリペプチドは、Fc領域内で1つ以上の追加の欠失、付加、又は置換を有し得る。したがって、265位でのアミノ酸置換(すなわち、この位置でDとは異なるアミノ酸を有する)、297位でのアミノ酸置換(すなわち、この位置でNとは異なるアミノ酸を有する)及び329位でのアミノ酸置換(すなわち、この位置でPとは異なるアミノ酸を有する)を有するIgG1 Fc含有分子は本発明の範囲内であり、同時に226位(Kabat番号付け)以降のFc領域は、配列番号43と少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%同一である。
【0071】
用語「配列同一性のパーセント(%)」又は「%同一性」は、アミノ酸配列の全長を構成するアミノ酸残基の数と比較して、2つ以上の整列させたアミノ酸配列の同一のアミノ酸の一致する(「ヒットする」)数を指す。言い換えると、配列が当該技術分野において既知である配列比較アルゴリズムを使用して測定される際に最大限の一致に対して比較され整列させる場合、又は手動で整列させ視覚的に検証される場合、アラインメントを使用して、2つ以上の配列について、同一のものである(例えば、90%、95%、97%又は98%の同一性)アミノ酸残基の百分率が決定されてもよい。したがって、配列同一性を決定するために比較される配列は、アミノ酸の置換、付加又は欠失によって異なってもよい。タンパク質配列を整列させるための好適なプログラムは、当業者に知られている。タンパク質配列のパーセント配列同一性は、例えば、CLUSTALW、Clustal Omega、FASTA、又は例えば、NCBI BLASTアルゴリズムを使用するBLASTなどのプログラムにより決定することができる(Altschul SF,et al(1997),Nucleic Acids Res.25:3389−3402)。
【0072】
例えば、アミノ酸配列に関して、配列同一性及び/又は類似性は、当該術分野で知られる標準的な技術、例えば、限定されないが、Smith and Waterman,1981,Adv.Appl.Math.2:482の局所的配列同一性アルゴリズム、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443の配列同一性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman,1988,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.85:2444の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WisのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、Devereux et al,1984,Nucl.Acid Res.12:387−395により記載されている、好ましくはデフォルト設定を用いたBest Fit配列プログラムを使用することにより、又は目視により決定され得る。特定の実施形態では、同一性のパーセントは、以下のパラメータに基づきFastDBによって算出される:ミスマッチペナルティが1;ギャップペナルティが1;ギャップサイズペナルティが0.33;及び結合ペナルティが30、「Current Methods in Sequence Comparison and Analysis」,Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp 127−149(1988),Alan R.Liss,Inc。
【0073】
有用なアルゴリズムの別の例はPILEUPである。PILEUPは、プログレッシブ法によるペアワイズアラインメントを使用して関連配列群から多重配列アラインメントを生成する。これにより、アラインメントの生成に使用されたクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることもできる。有用なPILEUPパラメータは、デフォルトのギャップ加重が3.00、デフォルトのギャップ長加重が0.10であり、加重エンドギャップを含む。
【0074】
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al,1990,J.Mol.Biol.215:403−410;Altschul et al,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402;及びKarin et al,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873−5787において記載されるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschul et al,1996,Methods in Enzymology 266:460−480から入手したWU−BLAST−2プログラムである。WU−BLAST−2は、いくつかの検索パラメータを使用しており、その大部分がデフォルト値に設定される。
【0075】
その他の有用なアルゴリズムは、Altschul et al,1993,Nucl.Acids Res.25:3389−3402によって報告されたギャップ付きBLASTである。
【0076】
多置換IgG1変異体は、AlphaScreen(商標)競合アッセイ及びSPR/Biacore分析によって評価されるヒトFcR(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa及びFcRn)に対するそれらの相対的な親和性に基づいて選択された。これらの変異体はさらに、PBMCによりサイトカイン放出を誘導するそれらの能力に関して適切な細胞系において試験され、且つ分類された。本明細書で提供される実験データのセットにおいて、IgG1 Fc変異体は、野生型IgG1 Fc含有分子と比較された。いくつかのインビトロでのバイオアッセイにおけるこれらの変異体のさらなる分析は、軽微から検出限界以下のレベルの活性及び著しく除去されたFcγRに対する結合親和性を実証した。これらの選別に基づいて、組み合わされた3つ全てのアミノ酸265位、297位及び329位での置換を含むIgG1 Fc変異体は、驚くべきことに、FcγRに対して親和性がないか又は最小の検出可能な親和性を有することが同定され、且つ種々の前述のエフェクター/免疫賦活性バイオアッセイにおける活性を大部分又は完全に欠く。本発明のIgG1 Fc変異体は、FcγRに結合するか、エフェクター機能を媒介するか、又はFc媒介性サイトカイン放出を保証する能力がないか又はその最小の能力を有する点で実際に「サイレンシングされた」Fcと考えられ得る。
【0077】
本発明に基づいて、アミノ酸265位、297位及び329位での置換は、他のアミノ酸変異と任意選択により組み合わされ得るか、又はその置換は、本明細書で教示されるとおりのエフェクター機能の類似の又は選択的なサイレンシングを達成するために別のIgGアイソタイプにおいて使用され、且つ当該技術分野で知られるものと組み合わされ得る。265位、297位及び329位での変異のこの組合せは、驚くべきことに、各々が最小の残留性のFcγR相互作用が望まれる臨床ステージの治療抗体/Fc含有タンパク質において使用されてきた以前に記載されたFc変異N297A、又はFc二重変異L234A/L235Aと比較して著しく向上したサイレンシングをもたらした(Herold KC,et al.(2005).Diabetes 54(6):1763−1769)。
【0078】
本発明によるD265、N297及びP329三重変異体は、その野生型対応物と比較して第1補体成分C1qに対する結合の低減を呈する。言い換えると、C1qに対する変異体の親和性は、野生型のものより低い。
【0079】
本発明によるD265、N297及びP329三重変異体はまた、その親ポリペプチドのものより低い少なくとも1つのFcγ受容体に対する親和性を呈する。本明細書で使用する場合、Fcγ受容体としては、FcγRI、FcγRII及びFcγRIII受容体が挙げられる。好ましくは、少なくとも1つのFcγRは、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaからなる群から選択される。
【0080】
D265、N297及びP329三重変異体は、その野生型対応物と比較してC1qとFcγ受容体の両方に対する結合の低減を呈する。
【0081】
特定の実施形態では、変異体IgG1 Fc含有分子は、その野生型対応物と比較してC1q、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、及びFcγRIIIaに対する結合の低減を呈する。
【0082】
C1q又はFc受容体のいずれか1つに対する結合は、AlphaScreen(商標)及び表面プラズモン共鳴(SPR)などの当該先行技術分野のよく知られた方法によって評価され得る。
【0083】
例えば、目的のタンパク質(C1q又はFcγRなど)に対する本発明の変異体の結合強度は、実施例4において記載されるとおりのAlphaScreen(商標)競合アッセイによって得られるそれらの特定のIC
50値の比を計算することによって、その野生型対応物のものと比較され得る。ハイスループットなスクリーニングにおいて使用されるAlphaScreen(商標)は、結合などの分子現象の検出を可能にするホモジニアスアッセイ技術である。コーティングされた「ドナー」及び「アクセプター」ビーズがこのアッセイ技術の基盤である。ビーズ系アッセイとして、AlphaScreen(商標)は、近接しているビーズの相互作用を通して機能して、非常に増幅されたシグナルを生成するように作用する化学反応のカスケードをもたらす。直接的又は間接的、例えば、競合的結合測定は、タンパク質間の相対的な親和性及び結合力を評価するために適用され得る。
【0084】
代替として、目的のタンパク質(例えば、C1q及び/又はFcγR)に対する変異体IgG1 Fc含有分子及びその野生型対応物の結合は、適切なELISAアッセイによるEC
50の測定を通して比較され得る。EC
50は、変異体の濃度の対数に対する結合された目的のタンパク質のパーセンテージに関する曲線の50%の飽和を表すシグナルをもたらす変異体の濃度を指す。一般的に、変異体IgG1 Fc含有分子は、そのEC
50が、その野生型対応物のそれより少なくとも1.5倍高い場合、その野生型対応物と比較して、目的のタンパク質(C1q及び/又はFcγRなど)に対する結合の低減を示すと考えられる。
【0085】
目的のタンパク質(例えば、C1q及び/又はFcγR)に対する変異体IgG1 Fc含有分子の結合親和性はまた、解離定数(Kd)の測定を通してSPRにより評価され得る。一般的に、変異体IgG1 Fc含有分子は、そのKdが、その親ポリペプチドのそれより少なくとも1.5倍高い場合、その野生型対応物と比較して、目的のタンパク質(例えば、C1q及び/又はFcγR)に対する結合の低減を示すと考えられる。
【0086】
C1q又はFcγRに対する変異体の親和性は、非常に弱いためAlphaScreen(商標)アッセイによる特定のシグナル及びSPRによるKd又はELISAアッセイによるEC
50でさえ、その結合シグナルがバックグラウンドノイズ中にあるか又は検出の閾値の下であるため正確に決定できない。そのような場合、変異体IgG1 Fc含有分子は、C1q及び/又は対応するFcγRに結合していないと考えられる。
【0087】
例えば、本発明による三重変異体IgG1 Fc含有分子は少なくとも1つのFcγRに結合しない場合があり、且つC1qに対する結合の低減を示すか又はそれに対する結合を示さない。そのような変異体IgG1 Fc含有分子は、本出願の実施例において明確に示される。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の変異体IgG1 Fc含有分子は、C1q及びFcγ受容体から選択される少なくとも1つのタンパク質に結合しない。
【0089】
本出願人は、D265、N297及びP329での変異の導入が、C1q及びFcγ受容体に対する結合を著しく減少させるのに十分であることを示した。言い換えると、D265、N297及びP329以外での変異は、C1q及び/又はFcγ受容体に対する適切な結合の低減を有する変異体IgG1 Fc含有分子を得るために、IgG1野生型対応物のIgG1 Fc領域内に導入される必要がない。それにもかかわらず、例えば、分子の他の機能性を変更するために、所望される場合には本発明のFc含有分子に対してさらなる変異を加えることが任意選択により可能であろう。
【0090】
いかなる理論によっても束縛されることなく、本出願人は、本発明によってもたらされるアミノ酸置換がIgG1 Fc領域における主要な構造的再編成を著しく引き起こすことはなく、その結果、いくつかの場合において、C1q及びFcγRに対する結合によって媒介されない他の機能が親ポリペプチドのものと比較して著しく変更されないと考えている。顕著には、本出願人は、IgG1 Fc領域における位置D265、N297及びP329での置換変異の導入が、新生児Fc受容体(FcRn)に対するそれらの親和性を著しく減少させないことを示した。例えば、D265A、N297A及びP329AのIgG1 Fc置換(DANAPA)を含むmAb1に関する解離定数、K
Dは500nMであり、その野生型対応物に関しては470nMである(実施例8を参照のこと)。言い換えると、野生型IgG1 Fc含有分子及び本発明による変異体IgG1 Fc含有分子は、FcRnに対して近い結合特性を示す。
【0091】
本明細書で上に言及されるとおり、野生型のFc領域は、ヒトIgGの野生型Fc領域、その断片及び変異体からなる群から選択され得る。
【0092】
本明細書で上に示されるとおり、本発明のFc領域は、IgG1 Fcにおける少なくとも3つのアミノ酸のアミノ酸置換を含み得る。注意のために、野生型Fc領域としては、配列番号43を有するヒトIgG1のFc領域が挙げられるが、これに限定されない。ヒトFc領域の対立遺伝子変異体が知られており、本発明による変異の組合せを導入するための親分子として使用することもできる。ヒトIgG1 Fcの対立遺伝子変異体は、356位(グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D))、及び/又は358位(メチオニン(M)又はロイシン(L))及び/又は431位(アラニン(A)又はグリシン(G))で互いに異なる。対立遺伝子変異体は、天然に存在する対立遺伝子変異体及び非天然の対立遺伝子変異体を含む。非天然の対立遺伝子変異体は、天然に存在する対立遺伝子変異体において発生するが、天然に見出されない組合せにおいて発生する残基を含有する。Jefferisらは、当業者が天然に存在し且つ非天然のFc配列の対立遺伝子変異体を導き出すことを可能にするヒトIgG対立遺伝子変異体に対する概要を提供する(Jefferis R and M−P Lefranc(2009)mAbs 1:1−7)。特定の実施形態では、本発明による変異の組合せ(すなわち、Kabatの番号付けによる265位、297位及び329位での変異)の導入のための親分子は、したがって、配列番号43、52、53、54、55、56、57、及び58からなる群から選択されるヒトIgG1 Fc配列を含む分子である。したがって、特定の実施形態における本発明は、配列番号43、52、53、54、55、56、57、及び58のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む組換え体IgG1 Fc含有ポリペプチドを提供し、これらは、(i)265位のアミノ酸Dが別のアミノ酸により置き換えられており、(ii)297位のアミノ酸Nが別のアミノ酸により置き換えられており、且つ(iii)329位のアミノ酸Pが別のアミノ酸により置き換えられていることを特徴とし、この番号付けは、Kabatの場合のようなEUインデックスにより示される。
【0093】
野生型又は親Fc領域と比較した本発明によるFc領域は、265位、297位及び329位のアミノ酸残基がそれぞれ、D、N及びPとは異なるような変異の組合せを有し、番号付けは、Kabat et al.におけるEUインデックスに従う。特定の実施形態では、265位のアミノ酸残基は、A、N又はEである。特定の実施形態では、297位のアミノ酸残基は、A、D又はQである。特定の実施形態では、329位のアミノ酸残基は、A、G又はSである。当業者は、他のアミノ酸がこれらの位置で置換されてもよく(例えば、265位でR、C、Q、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、又はV;297位でR、C、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、又はV;329位でR、C、Q、N、H、I、L、K、M、F、E、D、T、W、Y、又はV)、265位、297位及び329位で指定されたアミノ酸を有する得られたFc変異体を、Fc受容体及びC1qに対する結合において本明細書の実用的な実施例において例示される実施形態と実質的に同じ特性を有することに関して通例の方法によって試験することができ、且つそのような変異体が本発明に含まれることを理解することになる。
【0094】
いくつかの実施形態では、IgG1 Fc含有分子のアミノ酸置換は、アミノ酸置換D265A、N297A、P329Aを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、IgG1 Fc含有分子のアミノ酸置換は、アミノ酸置換D265N、N297D、P329Gを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、IgG1 Fc含有分子のアミノ酸置換は、アミノ酸置換D265E、N297Q、P329Sを含む。
【0097】
特定の実施形態では、変異体が野生型IgG1 Fc含有分子と比較してタンパク質C1q及び少なくとも1つの受容体FcγRに対する結合の低減を示す変異体IgG1 Fc含有分子は、
1.265位のアミノ酸が、アラニン、アスパラギン又はグルタミン酸で置き換えられ、
2.297位のアミノ酸が、アラニン、アスパラギン酸、又はグルタミンで置き換えられ、且つ
3.329位のアミノ酸が、アラニン、グリシン、又はセリンで置き換えられることを特徴とし、
アミノ酸の番号付けは、Kabatの場合のようなEUインデックスによって示される。
【0098】
いくつかの実施形態では、Kabatの場合のようなEUインデックスにより示される265位、297位、及び329位のアミノ酸が、それぞれD、N及びP以外のアミノ酸で置き換えられるCH2ドメインを含む組換え体IgG1 Fc含有分子を作製する方法は、
(a)親IgG1 Fc含有分子をコードする核酸を提供する工程、
(b)組換え体IgG1 Fc含有分子をコードする核酸を得るために工程(a)において提供される核酸を改変する工程であって、265位、297位、及び329位のアミノ酸のうちの少なくとも1つが、得られたコードされたFc含有分子において、これらの位置のアミノ酸がD(265位)、N(297位)及びP(329位)とは異なるように置き換えられる工程、及び
(c)宿主細胞において工程(b)において得る核酸を発現させ、前記変異体を回収する工程を含む。
【0099】
当然、親分子が既に265位でD、297位でN、又は329位でPとは異なるアミノ酸を含有する場合、これらの3つの位置のうちの他の1つ又は2つのみが依然として本発明によるFc含有分子を生成するために改変される必要がある。
【0100】
このような工程は、分子生物学の従来の慣例により実施され得る。本発明の組換え体IgG1 Fc含有分子を作製する方法を実行するために、当業者は、例えば、Molecular Cloning−A Laboratory Manual,3rd Ed.(Maniatis,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2001)、Molecular cloningから簡約したプロトコル:a laboratory manual(Sambrook,Russell,CSHL Press,2006)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,2004)において見出され得る当該先行技術分野において記載されたよく知られる手順を参照してもよい。
【0101】
野生型IgG1 Fc含有分子の核酸は市販されている場合があるか、又は分子生物学又は化学合成の古典的な手順によって得てもよい。工程(b)において言及されるとおりの変異体IgG1 Fc含有分子をコードする核酸を、化学合成、又は当該先行技術分野で知られる種々の方法を用いて親ポリペプチドの核酸を改変することによって得てもよい。これらの方法としては、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、PCR変異誘発及びカセット変異誘発が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
変異体IgG1 Fc含有分子をコードする核酸分子は、宿主細胞中でのその発現のための発現ベクターに組み込まれ得る。
【0103】
発現ベクターは通常、作動可能に連結された、すなわち、プロモーターなどの制御又は調節配列との機能的関連性において置かれ、且つ選択可能マーカー、任意の融合パートナー、及び/又は追加の要素を任意選択により含む配列をコードするタンパク質を含む。本発明の変異体IgG1 Fc含有分子は、核酸、好ましくは、変異体IgG1 Fc含有分子をコードする核酸を含有する発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、適切な条件下で培養して、タンパク質の発現を誘導するか又は引き起こすことによって産生され得る。哺乳動物細胞、細菌、昆虫細胞、及び酵母を含むがこれらに限定されない多種多様な適切な宿主細胞株が使用され得る。
【0104】
例えば、使用され得る種々の哺乳動物細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手可能なATCC細胞株カタログにおいて記載される。宿主細胞は、YB2/0(YB2/3HL.P2.GII.IGAg.20細胞、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションへの寄託、ATCCn°CRL−1662)、SP2/0、YE2/0、1R983F、Namalwa、PER.C6、CHO細胞株、特に、CHO−K−1、CHO−Lecl0、CHO−Lecl、CHO−Lecl3、CHO Pro−5、CHO dhfr−、Wil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、COS−7、HEK293、BHK、Vero、MDCK、不死化羊膜細胞株(CAP)、EB66、KGH6、NSO、SP2/0−Ag 14、P3X63Ag8.653、C127、JC、LA7、ZR−45−30、hTERT、NM2C5、UACC−812などであり得るが、これらに限定されない。宿主細胞に外来性核酸を導入する方法は、当該技術分野でよく知られており、使用される宿主細胞により異なり得る。
【0105】
宿主細胞は、任意選択により、トランスジェニック非ヒト動物又はトランスジェニック植物に属し得る。したがって、この場合、変異体IgG1 Fc含有分子はトランスジェニック生物から得られる。
【0106】
トランスジェニック非ヒト動物は、所望の遺伝子を直接的に受精卵に注入することによって得ることができる(Gordon et al.,1980 Proc Natl Acad Sci U S A.;77:7380−4)。トランスジェニック非ヒト動物としては、マウス、ウサギ、ラット、ヤギ、雌ウシ、ウシ又は家禽などが挙げられる。所望の遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト動物は、所望の遺伝子を胚性幹細胞に導入し、アグリゲーションキメラ法又は注入キメラ法によって動物を作製することによって得ることができる(Manipulating the Mouse Embryo,A Laboratory Manual,second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1994);Gene Targeting,A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press(1993))。胚性幹細胞の例としては、マウス(Evans and Kaufman,1981,Nature;292:154−156)、ラット、ヤギ、ウサギ、サル、家禽、ウシなどの胚性幹細胞が挙げられる。加えて、トランスジェニック非ヒト動物はまた、所望の遺伝子が導入される核が除核卵に移植されるクローン技術を用いて作製され得る(Ryan et al.,1997 Science;278:873−876;Cibelli et al.,1998 Science,280:1256−1258)。変異体IgG1 Fc含有分子は、変異体IgG1 Fc含有分子をコードするDNAを上記の方法によって作製された動物に導入することによって、動物中において変異体分子を形成し且つ蓄積させた後、動物から変異体を回収することによって生成され得る。変異体IgG1 Fc含有分子は、動物の乳、卵などの中で形成され且つ蓄積されるように作製されてもよい。
【0107】
上記の全ての実施形態において、IgG1 Fc含有分子は、天然に存在するポリペプチド(野生型ポリペプチド)、天然に存在するポリペプチドの変異体若しくは操作された型、又は合成ポリペプチドであり得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、IgG1 Fc含有分子は、IgG1 Fc融合タンパク質、IgG1 Fcコンジュゲート、及び抗体からなる群から選択される。
【0109】
本明細書で使用する場合、Fc融合タンパク質及びFcコンジュゲートは、パートナーに連結されたFc領域からなる。Fc領域は、リンカーとも呼ばれるスペーサーにより又はそれによらずにそのパートナーに連結され得る。
【0110】
好適なリンカーは、当業者の裁量に委ねられる。リンカーは、例えば、1〜30個の炭素原子を有するアルキル、1〜20個のエチレン部分を有するポリエチレングリコール、1〜20個の残基を有するポリアラニン、カプロン酸、置換又は非置換のポリ−p−フェニレン及びトリアゾールからなる群から選択され得る。ペプチド性リンカー、より具体的には1〜30個のアミノ酸長を有するオリゴペプチドが好ましい。好ましい長さの範囲は5〜15個のアミノ酸である。
【0111】
少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%の、グリシン、セリン及びアラニンなどの小さいアミノ酸からなるペプチドであるリンカーが特に好ましい。グリシン及びセリンのみからなるリンカーが特に好ましい。好適なリンカーの非限定的な例は、(G4S)3リンカー(配列番号40)である。
【0112】
本発明によれば、Fc融合タンパク質は、Fc領域に共有結合されたタンパク質、ポリペプチド又は小ペプチドを含むタンパク質である。Fc融合タンパク質は、任意選択により、上記のとおりのペプチドリンカーを含む。実質的に任意のタンパク質又は小ペプチドがFc領域に結合されて、Fc融合体を生成し得る。タンパク質融合パートナーは、受容体の標的結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、又はいくつかの他のタンパク質若しくはタンパク質ドメインを含み得るが、これらに限定されない。Fc融合タンパク質のいくつかの非限定的な例としては、アレファセプト、アバタセプト、ベラタセプト、リロナセプト、エタネルセプト、ロミプロスチム、及びアブリフェルセプト(ablifercept)が挙げられる。
【0113】
特に、Fc融合タンパク質は、イムノアドヘシン、すなわち、異種「アドへシン」タンパク質(すなわち、受容体、リガンド又は酵素)の結合ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン(すなわち、Fc領域)の断片と組み合わせる抗体様タンパク質であり得る(イムノアドヘシンについての概説に関しては、Ashkenazi A,Chamow SM.1997,Curr Opin Immunol.9(2):195−200を参照のこと)。
【0114】
小ペプチドは、Fc融合体を治療標的に導く任意の治療剤を含み得るが、これに限定されない。
【0115】
本発明によれば、Fcコンジュゲートは、特定の実施形態において、Fc領域とコンジュゲートパートナーとの化学的カップリングから生じる場合があり、且つ任意選択により、Fc領域をコンジュゲートパートナーに結合するスペーサーを含む。コンジュゲートパートナーは、タンパク質性又は非タンパク質性であり得る。カップリング反応は一般に、Fc領域及びコンジュゲートパートナー上の官能基を使用する。
【0116】
好適なコンジュゲートパートナーとしては、治療用ポリペプチド、標識(標識の例に関しては、さらに下記を参照のこと)、薬物、細胞傷害性薬剤、細胞傷害性薬物(例えば、化学療法剤)、毒素及びそのような毒素の活性断片が挙げられるが、これらに限定されない。好適な毒素及びそれらの対応する断片としては、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖などが挙げられるが、これらに限定されない。細胞傷害性薬剤は、IgG1 Fc変異体に直接的にコンジュゲートされ得るか又はIgG1 Fc変異体に共有結合されるキレート剤によって隔離され得る任意の放射性核種であり得る。さらなる実施形態では、コンジュゲートパートナーは、カリチアマイシン、オーリスタチン、ゲルダナマイシン、マイタンシン、並びにデュオカルマイシン及びアナログからなる群から選択され得る。
【0117】
一実施形態では、IgG1 Fc含有分子は、「フィノマー」を含む。フィノマーは、ヒトFynキナーゼのSH3ドメイン(Fyn SH3、Fynキナーゼのaa 83〜145:
【化1】
)に由来する小型の7kDa球状タンパク質である。上記に示されるとおりの配列番号59において、RT及びsrcループの配列はそれぞれ下線及び二重の下線が引かれ、そのような分子は、Fyn SH3ドメインにおける他の選択された位置の変異と任意選択により組み合わされたFyn SH3ドメインの表面上の2つのループ(RT及びsrcループ)のランダムな変異を介する選択の任意の標的に対して実質的に抗体様親和性及び特異性を有して結合するために操作され得る(例えば、国際公開第2008/022759号パンフレットを参照のこと)。Fyn SH3由来ポリペプチド又はフィノマーは当該技術分野でよく知られており、例えば、Grabulovski et al.(2007)JBC,282,p.3196−3204;国際公開第2008/022759号パンフレット;Bertschinger et al(2007)Protein Eng Des Sel 20(2):57−68;及びGebauer and Skerra(2009)Curr Opinion in Chemical Biology 13:245−255に記載されている。本明細書で用語「フィノマー(Fynomer)」と互換的に使用される用語「Fyn SH3由来ポリペプチド」は、ヒトFyn SH3ドメインに由来する非免疫グロブリン由来結合ポリペプチド(例えば、Gebauer and Skerra(2009)Curr Opinion in Chemical Biology 13:245−255に記載されるとおり、いわゆる足場)を指す。フィノマーは、抗体などの他の分子に遺伝的に融合されて、二重特異性を有するように操作され得るいわゆるFynomAbを生成する(例えば、Silacci et al,2016,mAbs 8:1,141−149;Brack et al,2014,Mol Cancer Ther 13(8):p.2030−9;国際公開第2014/044758A1号パンフレット;国際公開第2014/170063A1号パンフレット;国際公開第2015/141862A1号パンフレット)。
【0118】
記載されるとおり、用語「抗体」は、本明細書において最も広い意味で使用される。本発明によれば、「抗体」は、(i)Fc領域及び(ii)免疫グロブリンの可変ドメインに由来する結合ポリペプチドドメインを少なくとも含む任意のポリペプチドを指す。前記結合ポリペプチドドメインは、所与の標的抗原又は標的抗原の群に特異的に結合できる。免疫グロブリンの可変領域に由来する結合ポリペプチドドメインは、少なくとも1つ以上のCDRを含む。本明細書において、抗体としては、全長抗体、多重特異性抗体、少なくとも1つの可変領域を含むFc融合タンパク質又は合成抗体(本明細書で「抗体ミメティック」と称される場合がある)、抗体融合タンパク質、抗体コンジュゲート及びそれぞれ各々の断片が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によるFynomAbはまた、Fc領域を有する抗体を含む。したがって、本発明はまた、FynomAb、すなわち、本発明による変異を有するFc領域を含む、すなわち、265位でDとは異なるアミノ酸、297位でNとは異なるアミノ酸、及び329位でPとは異なるアミノ酸を有する抗体に結合されたフィノマーの1つ以上の複製物を提供し、番号付けは、Kabat et alの場合のようなEUインデックスに従う。特定の実施形態におけるフィノマーは、抗体の重鎖のC末端の下流、又は抗体の重鎖のN末端の上流、又は抗体の軽鎖のC末端の下流、又は抗体の軽鎖のN末端の上流に置かれてもよい。好ましくは、フィノマーの2つの複製物は、抗体の2つの鎖における対応する末端に対して各々のうちの1つ、例えば、抗体の第1の片方の軽鎖のN末端で1つの複製物及び抗体の第2の片方の軽鎖のN末端で1つの複製物(抗体の「片方」は本明細書において結合領域をともに含む重鎖及び軽鎖を意味する)、又は抗体の第1の片方の重鎖のN末端で1つの複製物及び抗体の第2の片方の重鎖のN末端で1つの複製物、又は抗体の第1の片方の軽鎖のC末端で1つの複製物及び抗体の第2の片方の軽鎖のC末端で1つの複製物、又は抗体の第1の片方の重鎖のC末端で1つの複製物及び抗体の第2の片方の重鎖のC末端で1つの複製物が抗体に結合される(IgG抗体の4つの末端でのフィノマーの様々な位置の例については、例えば、Brack et al,2014,Mol Cancer Ther 13:2030−2039、及び国際公開第2013/135588号パンフレットの
図8を参照のこと)。このような融合体は、遺伝子改変、フィノマー部分をコードする核酸のクローニング及び単一の融合分子を形成するためのインフレームの対応する抗体鎖によって生成され得る。細胞内での抗体の他の鎖(例えば、フィノマーが重鎖に融合される場合の軽鎖、又はフィノマーが軽鎖に融合される場合の重鎖)との共発現は、機能的なFynomabの発現をもたらすことになる。フィノマー部分は、抗体部分とは異なる標的分子に結合し得るか(非限定的な例に関して、例えば、Silacci et al,2016,mAbs 8:1,141−149;国際公開第2014/044758A1号パンフレット;国際公開第2014/170063A1号パンフレット;国際公開第2015/141862A1号パンフレットを参照されたい)、又はフィノマー部分は、抗体部分と同じ標的分子上の異なるエピトープに結合し得る(非限定的な例に関して、Brack et al,2014,Mol Cancer Ther 13(8):p.2030−9;国際公開第2013/135588号パンフレットにおいて記載されるFynomAbを参照されたい)。
【0119】
少なくとも1つの可変領域を含むFc融合タンパク質は、(i)Fc領域及び(ii)免疫グロブリンの可変ドメインに由来する結合ポリペプチドドメインを含む操作されたタンパク質を意味する。特に興味深いのは、(a)本発明のIgG1 Fc変異体、及び(b)免疫グロブリンの可変領域に由来する以下の結合ポリペプチドドメイン(すなわち、少なくとも1つのCDRを含む):(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片;(iv)単離CDR領域;(v)連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(vi)VHドメイン及びVLドメインが、2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成することが可能となるペプチドリンカーにより連結される単鎖Fv分子(scFv);(vii)二重特異性単鎖Fv並びに(viii)遺伝子融合により構築された多価断片又は多重特異性断片である「ダイアボディ」又は「トリアボディ」(このリストは限定的なものではない)のうちの1つを含む抗体である。
【0120】
本明細書において「全長抗体」は、可変及び定常領域を含む抗体の天然に存在する生物学的形態を有する抗体を意味する。全長抗体は、野生型抗体、野生型抗体の変異体(例えば、既存の改変を含む)、野生型抗体の操作された型(例えば、キメラ、ヒト化抗体又は完全ヒト型抗体、下をさらに参照のこと)であってもよく、このリストは限定的なものではない。よく知られているとおり、全長抗体の構造は一般に、一部の免疫グロブリンが二量体であるラマ及びラクダなどの一部の哺乳動物を除いて、四量体である。
【0121】
全長抗体の足場部分は、異なる種からの混合物であってもよい。このような抗体変異体は、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体であり得る。一般に、「キメラ抗体」及び「ヒト化抗体」の両方は、2つ以上の種に由来する領域を組み合わせている抗体を指す。例えば、「キメラ抗体」は、慣例上、非ヒト動物、一般にマウス(又はいくつかの場合においてはラット)由来の可変領域及びヒト由来の定常領域を含む。ほとんどの部分に関して、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。一般的に、ヒト化抗体において、CDRを除く抗体の全体は、ヒト起源のポリヌクレオチドによってコードされるか、又はそのCDRの範囲内を除くヒト抗体と同一である。一部又は全てが非ヒト生物に起源をもつ核酸によってコードされるCDRがヒト抗体可変領域のβシートフレームワークに移植されて抗体を生成し、その特異性は、移植されたCDRによって決定される。このような抗体を作製するための方法はよく知られており、例えば、国際公開第92/11018号パンフレット;Jones,1986,Nature 321:522−525;Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534−1536,Tsurushita & Vasquez,2004,Humanization of Monoclonal Antibodies,Molecular Biology of B Cells,533−545,Elsevier Science(USA))において記載される。
【0122】
本明細書で使用する場合、「完全ヒト型抗体」又は「完全ヒト抗体」は、ヒト遺伝子に起源をもつ配列を全体的に含む抗体を指す。いくつかの場合において、これは、本明細書で概説された改変を有するヒト染色体に由来する抗体の遺伝子配列を有するヒト抗体であってもよい。或いは、抗体の構成要素はヒトであり得るが、1つの遺伝子に由来しない場合がある。したがって、例えば、1つの抗体に由来するヒトCDRは、1つ以上のヒト抗体からの足場配列などの配列と組み合わされ得る。例えば、種々の生殖系列配列が組み合わされて、ヒト抗体又はヒト足場を形成し得る。
【0123】
共有結合性の改変を含む全長抗体もまた、本発明の範囲内に含まれる。このような改変としては、グリコシル化、標識化及びコンジュゲーションが挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
標識化は、検出可能な標識と全長抗体の結合を指す。本明細書で使用する場合、標識としては、a)放射性又は重同位体であり得る同位体標識;b)磁性標識(例えば、磁性粒子);c)酸化還元活性のある部分;d)発色団、蛍光体及びフルオロフォアなどの光学色素;酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);e)ビオチン化基;及びf)第2のレポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
コンジュゲーションは、ポリペプチド、又は受容体の標識結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、薬物、細胞傷害性薬物(例えば、化学療法剤)又は毒素などの非ペプチド分子と全長抗体の結合を指す。
【0126】
特定の実施形態では、IgG1 Fc含有分子は、キメラ免疫グロブリン、ヒト化免疫グロブリン、完全ヒト型免疫グロブリン、好ましくはIgGの中から選択される免疫グロブリン、及び任意選択によりコンジュゲート又は標識化されたものからなる群から選択される。
【0127】
変異体IgG1 Fc含有分子の特性は一般に、変異体のC1q及びFcγRへの結合は265位、297位、及び329位でのアミノ酸改変により制御されるため、C1q及びFcγ受容体に対する結合に関するもの以外の野生型IgG1 Fc含有分子のものから推定され得る。これらの非常に関連する相違の他に、本発明のFc含有分子とそれらの対応する野生型の特性においては、わずかな相違、例えば、N結合グリコシル化の欠如による熱安定性の軽微な低下がある。
【0128】
本発明のさらなる対象は、本明細書において上で定義されるとおりの変異体IgG1 Fc含有分子をコードする単離核酸である。本発明はまた、変異体IgG1 Fc含有分子をコードする核酸を含むベクター及び前記ベクターを含む宿主細胞に関する。好ましい実施形態では、前記ベクターをコードする核酸は、宿主細胞のゲノムに安定して組み込まれている。本発明はまた、前記核酸又はゲノムに安定して組み込まれる前記ベクターを含む非ヒトトランスジェニック動物に関する。
【0129】
本発明による方法及び変異体の使用
本出願人は、IgG1 Fc領域のアミノ酸265、297、及び329の置換が、C1q並びにFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb及びFcγRIIaなどのFcγRに対するFc変異体の親和性を徹底的に減少させることを示した。これらのエフェクター分子に対する親和性の減少は非常に顕著であるため、いくつかの場合において、C1q及び/又は特定のFcγRに対するFc変異体の結合を、従来のAlphaScreen(商標)/SPRアッセイによってインビトロで観察することができない。C1qに対するIgG1 Fc領域の結合は、インビボでのCDCの誘導に必須である。同様に、FcγRIIa及びFcγRIIIaに対するIgG1 Fc領域の結合は、インビボでのADCC及びADCPの誘導のための重要なステップである。FcγRに対する結合は同種受容体のクラスター化を誘導することができ、これは、その受容体を介してアゴニストシグナルを標的細胞にもたらし得る。
【0130】
したがって、C1qに対する親和性が低いため、本発明の変異体IgG1 Fc含有分子は、CDC活性を有しないか、又はそれらの野生型対応物(すなわち、265位でアミノ酸D、297位でN、及び329位でPを有するIgG1 Fc領域を含むIgG1 Fc含有分子、ここで、番号付けは、Kabatの場合のようなEUインデックスを基準とする)と比較して著しく低いCDC応答をインビボで誘導すると予測される。同様に、特定のFcγR(特に、FcγRIIa及びFcγRIIIa)に対する親和性が低いため、本発明の変異体は、ADCC活性を有しないか、又はそれらの野生型対応物と比較して著しく低いADCC応答をインビボで誘導すると予測される。同様に、本発明の変異体は、インビボでのFcγR結合を介する受容体のクラスター化又はアゴニズムを誘導しないと予測される。同じ結果はまた、インビトロでのCDCアッセイ、ADCCアッセイ及び受容体クラスター化アッセイに関しても予想される。
【0131】
それらのエフェクター活性プロファイルのために、本発明の変異体は、広範な科学的分野において有用であり得る。特に、本発明の変異体は、研究用試薬、診断用薬又は治療薬として使用され得る。
【0132】
例えば、変異体は、フルオロフォア又はインジウム−111若しくはテクネチウム−99mなどの同位体により標識されてもよいし、またインビボイメージングのために使用されてもよいが、これは、そのような適用においてはADCC又はCDCの活性化が必要とされないためである。
【0133】
治療薬として使用されるとき、変異体は、標的細胞、例えば、癌細胞に放射性核種、毒素、サイトカイン又は酵素などの治療剤を運ぶために使用され得る。この場合、変異体は、抗体と細胞傷害性薬物の間のコンジュゲートであってもよく、その治療活性は、細胞傷害性薬物に依存する(例えば、Gilliland et al.,PNAS,1980,77,4539−4543)。
【0134】
本発明のIgG1 Fc含有分子はまた、標的分子の遮断薬又は中和薬として機能し得る。それはまた、標的分子を刺激するか、アンタゴナイズするか又は阻害する。
【0135】
本発明のIgG1 Fc含有分子は、FcγRを介する受容体のクラスター化又はアゴニズムを誘導することなく受容体を標的化するために使用され得る。
【0136】
標的分子は、任意の種類のものであってもよく、外来分子及び内在性分子の両方を含む。標的分子(ポリペプチド変異体が抗体であるか又は抗体を含む場合に抗原とも呼ばれる)としては、ウイルス、細菌及び真菌タンパク質、プリオン、毒素、酵素、膜受容体、薬物及び可溶性タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
膜受容体としては、RhD抗原、CD3、CD4、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD32B、CD33、CD38、CD40、CD44、CD52、CD71(トランスフェリン受容体)、CD80、CD86、CTLA−4、CD147、CD160、CD224、受容体のErbBファミリ−に属するもののような増殖因子受容体ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4(EGFR、HER2/neu、HER3、HER4)、PD1、VEGF−R1、VEGF−R2、IGF−R1、PIGF−R、MHCクラスI及びMHCクラスII分子、例えば、HLA−DR、I型インターフェロン受容体、インターロイキン受容体様IL−1R、IL−2Rアルファ、IL−2Rベータ及びIL−2Rガンマ、IL−6R、ホルモン受容体様ミュラー管抑制因子II型受容体、LDL受容体、NKp44L、ケモカイン受容体様CXCR4、CCR5、TNFR、CD137、インテグリン、接着分子様CD2、ICAM、EpCAM、Gタンパク質共役型受容体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
他の有望な標的タンパク質としては、GD2、GD3、CA125、MUC−1、MUC−16、癌胎児性抗原(CEA)、Tn、糖タンパク質72、PSMA、HMW−MAA、DC細胞に特異的なBDCA−2、グルカゴン様ペプチド(例えば、GLP−1など)、酵素(例えば、グルコセレブロシダーゼ、イズロン酸−2−スルファターゼ、アルファガラクトシダーゼ−A、アガルシダーゼアルファ及びベータ、アルファ−L−イズロニダーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ、キチナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、イミグルセラーゼ、リパーゼ、ウリカーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、中性エンドペプチダーゼ、ミエロペルオキシダーゼなど)、インターロイキン及びサイトカイン結合タンパク質(例えば、IL−18bp、TNF結合タンパク質など)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、プロテインA、アレルギー阻害剤、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子などの他のタンパク質などの腫瘍マーカーが挙げられる。
【0139】
可溶性タンパク質としては、例えば、IL−1ベータ、IL−2、IL−6、IL−12、IL−23、TGFベータ、TNFアルファ、IFNガンマ、ケモカイン、増殖因子様VEGF、G−CSF、GM−CSF、EGF、PIGF、PDGF、IGF、ホルモンなどのサイトカイン及びFVIII抑制性などの抑制性抗体、転移増殖因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、アルファ−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、エリスロポエチン、高度にグリコシル化されたエリスロポエチン、アンジオポエチン、ヘモグロビン、トロンビン、抗トロンビンIII、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、因子VII、因子VIIa、因子VIII、因子IX、因子XIII、プラスミノーゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、プロテインC、C反応性タンパク質、B細胞活性化因子受容体、受容体アンタゴニスト(例えば、IL1−Ra)、補体タンパク質、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、因子H、因子I、因子P、CSAP、CD137リガンド、レクチン、シアル酸付加タンパク質などの他のタンパク質が挙げられるがこれらに限定されない。
【0140】
いくつかの例示的且つ非限定的な実施形態では、IgG1 Fc含有分子は、抗CD3、抗HER2、及び抗PD1抗体又はそのような抗体を含む分子から選択され得る。
【0141】
特定の実施形態では、IgG1 Fc含有分子は、抗CD3抗体を含む。特定の実施形態では、本発明の分子は、CD3に結合する抗体、及び別の標的に結合するフィノマーなどの別の結合部分を含み、すなわち、それは二重特異性結合活性を有する。このような分子は、癌を標的化するために使用されるアゴニストmAbであってもよく、例えば、本明細書の実施例においてより詳細に記載される。
【0142】
いくつかの実施形態では、変異体IgG1 Fc含有分子は、膜受容体、ヒト可溶性タンパク質、毒素、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質及び真菌タンパク質の群から選択される標的分子に特異的な中和抗体であるか、又はそれを含む。
【0143】
C1q及びいくつかのFcγRに対する低い結合のために、本発明の変異体は、ADCC若しくはCDCを介する免疫系の動員、又は同種受容体のクラスター化若しくはFcγRを介するアゴニズムが治療効率のために非常に重要でない状態の治療のために使用されることに特に適切である。
【0144】
いくつかの場合、本発明の変異体IgG1 Fc含有分子の投与は、それらのIgG1 Fc領域におけるアミノ酸265位、297位、及び329位で変異を含まない大部分の抗体及びイムノアドヘシンより少ない副作用及びIgG媒介性細胞障害を誘導すると予測される。
【0145】
したがって、本発明のさらなる対象は、ADCC及び/又はCDC応答の誘導を含むFcR媒介性作用、又はFcγRを介する同種受容体のクラスター化が望ましくない病態を予防又は治療するための本発明の変異体IgG1 Fc含有分子の使用である。
【0146】
ADCC及びCDC応答の誘導は、変異体の治療効果がエフェクター細胞の活性化又はCDC活性化を必要としないときには望ましくない。このような変異体としては、例えば、遮断抗体又は中和抗体が挙げられる。
【0147】
治療及び予防がCDC及びADCCの誘導を必要としない病態としては、移植片拒絶、自己免疫疾患、炎症性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
FcγRを介する受容体のクラスター化の誘導は、変異体の治療効果が治療効果のためのFcγR媒介性の受容体のクラスター化を必要としないときには望ましくない。このような変異体としては、例えば、厳密に腫瘍抗原依存的な様式においてCD3受容体のクラスター化を必要とするが、FcγR依存的な様式においてはそれを必要としない、CD3/腫瘍抗原二重特異性分子が挙げられる。
【0149】
特定の実施形態では、本発明は、CD3に結合する抗体部分及びCD33に結合するフィノマー部分を有する本発明によるFynomAb(すなわち、265位のアミノ酸がDではなく、297位のアミノ酸がNではなく、且つ329位のアミノ酸がPではないCH2ドメインを有するIgG1 Fc領域を含み、番号付けはKabatの場合のようなEUインデックスに従う)を提供する。
【0150】
本発明の別の対象は、医薬組成物を調製するための本発明の変異体の使用である。
【0151】
本発明のさらなる対象は、前記変異体を含む医薬組成物を提供することである。変異体IgG1 Fc含有分子が抗体であるとき、変異体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体の形態で存在し得る。医薬組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態において、所望の純度を有するポリペプチド変異体と任意選択の生理的に許容される担体、賦形剤又は安定剤を混合することによって調製される。
【0152】
本発明の医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (Lippincott Williams & Wilkins;Twenty first Edition,2005)において記載されるものなどの標準的な方法に従って製剤化され得る。
【0153】
使用され得る薬学的に許容される賦形剤は、特に、Handbook of Pharmaceuticals Excipients,American Pharmaceutical Association(Pharmaceutical Press;6th revised edition,2009)において記載される。
【0154】
必要とする患者を治療するために、治療有効用量の本発明の変異体IgG1 Fc含有分子が投与され得る。本明細書における「治療有効用量」は、投与の目的となる効果をもたらす用量を意味する。正確な用量は、治療の目的に依存することになり、既知の技術を使用して当業者によって確認可能である。投与量は、0.0001〜100mg/kg体重以上の範囲であり得るが、例えば、0.001、0.01、0.1、1.0、10、又は50mg/kg体重であり、0.001〜10mg/kgが好ましい。当該技術分野において知られるとおり、タンパク質分解、全身対局所送達、及び新たなプロテアーゼ合成の速度、並びに年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、薬物相互作用、及び状態の重症度に対する調整が必要となる場合があり、これは、当業者によって慣習的な実験を用いて確認可能となる。
【0155】
本発明の変異体IgG1 Fc含有分子を含む医薬組成物の投与は、経口、皮下、静脈内、非経口、鼻腔内、皮質内(intraortically)、眼内、直腸、膣、経皮、局所(例えば、ゲル)、腹腔内、筋肉内、肺内を含むがこれらに限定されない種々の方法においてなされ得る。
【0156】
本明細書に記載される変異体IgG1 Fc含有分子は、任意選択により、他の治療薬と同時に投与されてもよく、すなわち、本明細書に記載される治療薬は、任意選択により、例えば小分子、他の生物製剤、放射線療法、外科手術などを含む他の療法又は治療薬と同時投与されてもよい。
【0157】
記載される主題の例示的な実施形態
本明細書における主題をより十分に且つより完全に説明するために、本節は、示される主題の列挙された例示的な実施形態を提供する。
【0158】
列挙された実施形態:
実施形態
1.番号付けがKabatの場合のようなEUインデックスにより示される、265位のアミノ酸がアスパラギン酸(D)と異なり、297位のアミノ酸がアスパラギン(N)と異なり、且つ329位のアミノ酸がプロリン(P)と異なるCH2ドメインを含む組換え体IgG1 Fc含有分子。
【0159】
2.分子が、265位でD、297位でN及び329位でPを含む野生型CH2ドメインを有するIgG1 Fc含有分子と比較して、C1q及び少なくとも1つのFcγ受容体(FcγR)に対する結合の低減を有する、実施形態1の分子。
【0160】
3.分子がFcRnに対する結合を保持する、実施形態1又は2の分子。
【0161】
4.少なくとも1つのFcγRが、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、及びFcγRIIIbである、実施形態2〜3のいずれか1つの分子。
【0162】
5.
i.265位のアミノ酸が、アラニン(A)、アスパラギン(N)又はグルタミン酸(E)であり、
ii.297位のアミノ酸が、アラニン(A)、アスパラギン酸(D)、又はグルタミン(Q)であり、且つ
iii.329位のアミノ酸が、アラニン(A)、グリシン(G)、又はセリン(S)で置き換えられる、実施形態1〜4のいずれか1つの分子。
【0163】
6.Fcドメインアミノ酸配列が、ヒトIgG1 Fcドメインのアミノ酸配列(配列番号43)と少なくとも90%同一である、実施形態1〜5のいずれか1つの分子。
【0164】
7.分子が、抗体、Fc領域、Fc融合タンパク質、又はFynomAbなどの抗体融合タンパク質である、実施形態1〜6のいずれか1つの分子。
【0165】
8.分子が抗体である、実施形態1〜7のいずれか1つによる分子。
【0166】
9.分子が抗体融合タンパク質である、実施形態1〜7のいずれか1つによる分子。
【0167】
10.分子がFynomAbである、実施形態1〜7のいずれか1つによる分子。
【0168】
11.分子が、配列番号43、52、53、54、55、56、57、又は58のいずれか1つによる配列を含むFc領域を含み、265位のアミノ酸D、297位のN及び329位のPが、他のアミノ酸により置き換えられる、実施形態1〜10のいずれか1つの分子。
【0169】
12.実施形態1〜11のいずれか1つの分子をコードする組換え体ポリヌクレオチド。
【0170】
13.実施形態12のポリヌクレオチドを含むベクター。
【0171】
14.実施形態12の組換え体ポリヌクレオチド又は実施形態13のベクターを含む宿主細胞。
【0172】
15.Kabatの場合のようなEUインデックスにより示される265位、297位、及び329位のアミノ酸が、他のアミノ酸で置き換えられるCH2ドメインを含む組換え体IgG1 Fc含有分子を作製する方法であって、
a.野生型IgG1 Fc含有分子をコードする核酸を提供する工程、
b.組換え体IgG1 Fc含有分子をコードする核酸を得るために工程(a)において提供される核酸を改変する工程であって、265位、297位、及び329位のアミノ酸が、それぞれD、N及びP以外のアミノ酸で置き換えられる工程、及び
c.宿主細胞において工程(b)において得る核酸を発現させ、前記変異体を回収する工程を含む、方法。
【0173】
16.
a.標的分子に結合することができる少なくとも1つの結合ドメイン;及び
b.Kabatの場合のようなEUインデックスによる265位、297位、及び329位のアミノ酸が、それぞれD、N、及びPと異なるIgG1 Fcドメイン
を含む組換え体ポリペプチドであって、
ポリペプチドが、著しいリンパ球活性化、補体依存性溶解、並びに/又は標的分子及び/若しくはその表面上に標的分子を提示する細胞の細胞媒介性破壊を誘発することなく標的分子に結合することができる、組換え体ポリペプチド。
【0174】
17.少なくとも1つの結合ドメインが、抗体の結合部位、フィノマー、酵素、ホルモン、受容体の細胞外ドメイン、サイトカイン、免疫細胞表面抗原、リガンド、及び接着分子からなる群から選択される、実施形態16の組換え体ポリペプチド。
【0175】
18.Fcドメインが、ヒトIgG1 Fcドメインのアミノ酸配列(配列番号43)と少なくとも90%同一である、実施形態16又は17の組換え体ポリペプチド。
【0176】
19.結合ドメインが抗体の結合部位である、実施形態16〜18のいずれか1つの組換え体ポリペプチド。
【0177】
20.実施形態1〜11のいずれか1つのIgG1 Fc含有分子、実施形態12の組換え体ポリヌクレオチド、実施形態13のベクター、又は実施形態16〜19のいずれか1つの組換え体ポリペプチド、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【0178】
21.対象又は患者に、実施形態1〜11のいずれか1つのIgG1 Fc含有分子、実施形態12の組換え体ポリヌクレオチド、実施形態13のベクター、実施形態16〜19のいずれか1つの組換え体ポリペプチド、又は実施形態20による医薬組成物を投与することを含む、疾患又は障害を治療する方法。
【0179】
22.疾患又は障害が癌である、実施形態21の方法。
【0180】
23.疾患又は障害を治療する際の使用のための実施形態1〜11のいずれか1つのIgG1 Fc含有分子、実施形態12の組換え体ポリヌクレオチド、実施形態13のベクター、実施形態16〜19のいずれか1つの組換え体ポリペプチド、又は実施形態20による医薬組成物。
【0181】
24.疾患又は障害が癌である、実施形態23のIgG1 Fc含有分子、組換え体ポリヌクレオチド、ベクター、又は組換え体ポリペプチド。
【0182】
25.疾患又は障害を治療するための医薬品の製造のための実施形態1〜11のいずれか1つのIgG1 Fc含有分子、実施形態12の組換え体ポリヌクレオチド、実施形態13のベクター、実施形態16〜19のいずれか1つの組換え体ポリペプチド、又は実施形態20による医薬組成物の使用。
【0183】
26.疾患又は障害が癌である、実施形態25による使用。
【0184】
27.組換え体IgG1 Fc含有分子を作製するための方法であって、宿主細胞中で実施形態12の組換え体ポリヌクレオチドを発現させること及び組換え体ポリペプチドを回収することを含む方法。
【実施例】
【0185】
以下の実施例は、前の開示を補い、且つ本明細書に記載される主題のより適切な理解をもたらすために提供される。これらの実施例は、記載される主題を限定するものと考えられるべきではない。本明細書に記載される実施例及び実施形態は、例示のみを目的としており、それを考慮した様々な変形形態又は変更が、当業者に明らかであり、且つ本発明の真の範囲に含まれ、且つ本発明の真の範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解される。
【0186】
実施例1. Fc変異抗体の発現及び精製
ヒトCD3に特異的なmAb、ヒトIgG1抗体に基づくいくつかの抗体は、CH2ドメインにおける各種変異を有して産生された。変異は:
− i)N297A、
− ii)D265とP329A(DAPA)
− iii)D265とN297AとP329A(DANAPA)、及び
− iv)L234AとL235A(LALA)
であった
(Kabat(Kabat,E.A.(1991).Sequences of proteins of immunological interest,Bethesda,MD:U.S.Dept.of Health and Human Services,Public Health Service,National Institutes of Health,1991に従うEU番号付け)。
【0187】
抗体の発現に関して、切断され且つ分泌産物においてもはや存在しないリーダー配列が通常存在する。本明細書に記載される実施例における発現のために使用されるリーダー配列の例は、配列番号42において提供され、それをコードするヌクレオチド配列の例は、配列番号41において提供される。
【0188】
各種Fc変異を有する抗体をコードする発現ベクターは、FreeStyle CHO−S細胞に一過的にトランスフェクトされ、無血清/動物成分不含培地中で6日間発現された。AKTA Purifier装置(GE Healthcare)を用いてプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(GE−Healthcare、カタログ番号89928)により、抗CD3抗体を上清から精製し、PBSに対して透析した。280nmでの吸光度測定により濃度を決定した。
【0189】
SECは、Agilent HPLC 1260システム上でSEC−5カラム(Agilent、5μm粒径、300Å)を用いて実施された。10μlの精製タンパク質をカラムにロードし、溶出をOD280測定によって記録した。
【0190】
Fc変異抗体変異体を、シングルステップのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって良好な収量及び高純度で精製できた。収量を表1に列挙する。
SECによって見出されるとおり、全てのタンパク質はおよそ95%単量体であった。mAb1 IgG1及びmAb1 DANAPA IgG1のSECプロファイルを
図1に示す。
これらの結果は、ヒトIgG1配列に挿入されたDANAPA三重変異が、両者が医薬品の重要な判定基準である良好な発現及び単分散度を保持することを実証している。
【0191】
【表1】
【0192】
実施例2:Fc変異抗体は、非改変抗体と同一の親和性でCD3発現細胞に結合する
各種Fc変異mAb1を、CD3
+ジャーカット細胞(ATCC(登録商標)TIB−152(商標))に対してタイトレーションして、ヒトCD3に対する結合親和性を評価した。50nMと0.13pM濃度の間でのFc変異抗体の段階希釈物を、ジャーカット細胞に加え、結合した抗体を、抗ヒトIgG−Alexa488コンジュゲート抗体で検出した。サイトメーター上で測定された平均蛍光強度(MFI)を、対数目盛上の抗体濃度に対してプロットした。
【0193】
CD3
+ジャーカット細胞に対して得られた結合曲線を
図2に示す。
【0194】
Fc変異抗体変異体は、同一の親和性でCD3に結合したが、これは、Fc変異が標的細胞結合に対してなんら影響を及ぼさないことを示している。
【0195】
実施例3:mAb1 DANAPA IgG1はリンパ球活性化を誘導しない
免疫細胞活性化に対するFc変異mAb1の効果を調査するために、新鮮な単離ヒトPBMCを、Fc変異mAb1の存在下でインキュベートした。免疫細胞活性化を、i)14時間のインキュベーション後のCD69表面染色、又はii)3日のインキュベーション後の上清におけるIFNγの定量化によって検出した。ヒトPBMCを、PBMC単離の1日前にBlutspende Bern、Switzerlandによって収集されたバフィーコート調製物から単離した。PBMCを、Pancollチューブ(Pan−BioTech)を用いて、製造業者の指示書に従って密度遠心分離により単離した。PBMC単離の後、残留している赤血球細胞を1×RBC溶解緩衝液(Miltenyi)で溶解した。
【0196】
100,000個の新鮮な単離PBMCを、96ウェルU底プレートのウェル中において10%熱不活性化FBSで補充された200μlの総量のRPMI1640中で段階希釈(300nMと0.15pMの間の濃度)のmAb1の種々のFc変異体と混合した。陽性対照として、PBMCを、Miltenyiから購入したヒトT細胞活性化/増殖キットに含有される抗CD2/CD3/CD28活性化MACSibeadsの存在下でインキュベートした。
【0197】
CD69の表面発現は、14時間のインキュベーション後に測定された。アッセイウェルの内容物を混合し、各ウェルの100μlを、後のCD69染色のために96ウェルU底プレートに移した。細胞をペレット化し、1%FBS及び0.2%アジ化ナトリウムを含有するFACS緩衝液中の40μlの抗CD69−FITCコンジュゲート抗体(BD Biosciences)中で再懸濁した。氷上での45分のインキュベーションの後、未結合抗体を洗い落とし、試料を、50μlの1.8%ホルマリン中において氷上で15分間固定し、Guava easeCyte 8HTフローサイトメーター(Millipore)上で分析した。CD69陽性のリンパ球のパーセンテージを、対数目盛上の抗体濃度に対してプロットした。
【0198】
上清中のIFNγレベルは、3日間のインキュベーション後、BD OptEIAヒトIFNγ ELISAセット(BD Biosciences)を用いて、製造業者の指示書に従ってサンドウィッチELISAにより測定された。IFNγ濃度を、対数目盛上の抗体濃度に対してプロットした。
【0199】
予想外に、mAb1 DANAPA IgG1は、PBMC上のCD69発現の誘導(
図3A)、及び培養上清中のIFNγ(
図3B)の欠如によって示されるとおり、リンパ球活性化を誘導しなかった唯一のコンストラクトであった。対照的に、以前にFcR結合を低減すると報告された単一又は組合せのFc変異を含有する他の全ての変異体は、依然として著しいリンパ球活性化を誘導した。重要なこととして、DANAPA Fc配列は、最小限のFcR相互作用が望ましいいくつかの臨床ステージの治療薬であるFc含有タンパク質において使用される両方ともにサイレンシングされたFc配列である、N297A Fc配列又はLALA Fc配列より良好なサイレンシングをもたらした。これらの結果は、DANAPA Fc配列が、ヒトPBMCアッセイにおいてT細胞活性化及びサイトカイン放出を誘導するための潜在力を強力に低減することを示唆する。
【0200】
実施例4:DANAPA IgG1はヒトFcγ受容体に対して最小の結合を示す
FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)及びFcγRIIIA(CD16A)に対する結合は、AlphaScreen(商標)競合アッセイによって特徴付けられた(Vafa,O.,G.L.Gilliland,R.J.Brezski,B.Strake,T.Wilkinson,E.R.Lacy,B.Scallon,A.Teplyakov,T.J.Malia and W.R.Strohl(2014).Methods 65(1):114−126)。このアッセイを、
図4Aにおいて概略的に示す。ビオチン化対照抗体は、ストレプトアビジンドナービーズ上で捕捉され;Hisタグ付きFcγ受容体は、Ni
2+アクセプタービーズ上で捕捉され;目的のFcを有する非標識抗体の段階希釈物が競合物としてアプライされる。この形式は、競合物の受容体結合が起こるときにシグナルの低減をもたらす。
【0201】
呼吸器多核体ウイルスに特異的であり且つ健常哺乳動物における任意の標的に特異的に結合しないと考えられるB21M、ヒトIgG1対照抗体(Vafa,O.,G.L.Gilliland,R.J.Brezski,B.Strake,T.Wilkinson,E.R.Lacy,B.Scallon,A.Teplyakov,T.J.Malia and W.R.Strohl (2014).Methods 65(1):114−126)は、ビオチンで標識化された(SureLINK発色団ビオチン標識化キット、KPL)。0.2μg/mlのビオチン化B21M IgG1対照抗体、Fc変異試験抗体(400μg/ml、及びその8段階3倍希釈)、Hisタグ付きヒトFcγ受容体(R&D、無担体製剤)、Ni
2+−アクセプタービーズ(Perkin Elmer、1:250希釈)、及びストレプトアビジンドナービーズ(Perkin Elmer、1:250希釈)を、アッセイ緩衝液(PBS、0.05%BSA、0.01%Tween 20、pH7.2)中において上に示される順に混合した。ヒトFcγ受容体は、次の濃度で使用された:200ng/mlのFcγRI及びFcγRIIIA;10ng/mlのFcγRIIA;14ng/mlのFcγRIIB。
【0202】
FcγRIに対する結合評価に関して、ビオチン化B21M LALA IgG1を、アッセイの感受性を増大させるためにB21M IgG1(重鎖配列番号18;軽鎖配列番号32)の代わりに使用した。B21M LALA IgG1(重鎖配列番号30;軽鎖配列番号32)は、L234及びL235で2つのアラニン置換を有し(実施例1もまた参照のこと)、これはFcγRIに対する結合親和性を低減する。
【0203】
30分のインキュベーション後、プレートを、EnVisionプレートリーダーにおいて分析した。
%最大シグナルは、以下の式を使用する最小及び最大シグナルに対する標準化により未加工のEnVisionデータから得た:
%最大=(Exp−最小)/(最大−最小)*100
式中、
Exp=EnVisionの未加工のウェルシグナル
最小=プレート上の全ての試験競合物の中で最高の競合物濃度で得られた最小のシグナル。
最大=最大シグナル(すなわち、通常、競合物の非存在下)。
【0204】
%最大値を、y軸上の平均±標準偏差(n=3)、及びx軸上の対数(阻害剤)としてGraphPad Prismにおいてプロットした。データを、可変ヒル勾配による応答モデルに対する4つのパラメータ対数(阻害剤)を用いて、非線形回帰によってフィットさせた。
【0205】
AlphaScreen(商標)競合アッセイの結果を確認するために、高親和性FcγRI(CD64)及び低親和性FcγRIIIA(CD16A)に対するFc変異mAb1変異体の結合を、表面プラズモン共鳴(SPR)により分析した。BIAcore CM5チップを、BIAcoreアミンカップリングキット(GE healthcare)を使用して、1400RUのヒト組換え体FcγRIIIA(158F;R&D Systems)又は1500RUのヒト組換え体FcγRI(Sino Biological)でコーティングした。2000nMと31nMの間の濃度の段階2倍希釈のFc変異mAb1を調製し、0.05%Tween−20で補充されたPBS pH7.4中において30μl/分でFcRでコーティングされたチップ表面及びコーティングされていない基準表面上に注入した。注入と注入の間に、10mM NaOHでチップ表面を再生した。得られた結合曲線は、リファレンスが差し引かれ、続いて緩衝液が差し引かれ、得られた二重リファレンスの曲線を、動力学的結合定数及び解離定数、k
on及びk
offを得て、それから熱力学的解離定数K
Dがk
off/k
onとして計算される1:1のラングミュア動力学モデル、又は熱力学的解離定数、K
Dを直接的に得るための定常状態親和性モデルのいずれかを用いるBIAcore評価ソフトウェアを使用して評価した。
【0206】
AlphaScreen(商標)競合アッセイの結果を、
図4B及び表2に示す。mAb1 DANAPA IgG1は、非改変IgG1と比較して400倍を超えて低減されるFcγRIに対する最小の競合(IC
50>1000nM)を示したが、これは、このFc配列が、最小の残留性のFcγR結合活性を有することを示している。予想外に、DANAPA Fcは、最小のFcR相互作用が望ましい臨床ステージの抗体において使用されるLALA Fc又はN297A Fc配列と比較してFcγRIに対して結合の著しい低減を示した。mAb1 LALA IgG1、mAb1 N297A IgG1及びmAb1 DAPA IgG1は、mAb1 DANAPA IgG1よりもヒトFcγRIに対して低減されるが依然として37倍を超えて強力な結合を示した(IC
50=27nM、24nM及び18nM)。
【0207】
いずれの他のヒトFcγRに対する結合も、mAb1 DANAPA IgG1、mAb1 DAPA IgG1、及びmAb1 N297A IgG1に関して見出されなかった。mAb1 LALA IgG1は、FcγRIIIAに結合し、且つFcγRIIBに対して非常に弱く結合することが観察された。
【0208】
BIAcore結合アッセイの結果を、
図4C及び表3(FcγRI結合)、並びに
図4D及び表4(FcγRIIIA結合)に示す。予想外に、mAb1 DANAPA IgG1は、FcγRIに対して完全に抑制された結合を示す。mAb1 DAPA IgG1、mAb1 N297A IgG1及びmAb1 LALA IgG1は、FcγRIに対する残留性の結合活性を保持するが、mAb1 IgG1と比較して低減した親和性を有する。mAb1 DANAPA IgG1は、ヒトFcγRIIIAに対する結合を示さない。同様に、mAb1 DAPA IgG1及びmAb1 N297A IgG1はFcγRIIIAに対する結合を示さない一方で、mAb1 LALA IgG1は、FcγRIIIAに対する残留性の結合を示すが、mAb1 IgG1と比較して低減した活性を有する。
【0209】
結論的に、これらの結果は、DANAPA Fc配列が、ヒトFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB及びFcγRIIIAに対して結合の著しい低減を有することを実証している。DANAPA Fc配列がFcR結合活性を低減した程度は、FcγR結合活性の低減をもたらす以前に知られる他の単一又は組み合わさされたFc変異と比較して格段に優れている。これらの結果はさらに、本明細書で試験されたDANAPA Fcと他のFcの間の主な相違が、FcγRIに対する結合の著しい低減にあることを示唆している。
【0210】
【表2】
【0211】
【表3】
【0212】
【表4】
【0213】
実施例5:DANAPA IgG1 Fcは、異なる抗体配列の文脈においてFcγR結合の低減を示す
前の上記実施例において提示されるmAb1 DANAPA IgG1に加えて、異なるFab配列及び異なる同種標的を有する3種類の抗体が、mAb1に関して実施例1に記載されるとおりのDANAPA IgG1形式において作製された:抗CD3抗体mAb2(重鎖配列番号14;軽鎖配列番号16)、抗HER2抗体(重鎖配列番号10;軽鎖配列番号12)、及び抗PD1抗体(重鎖配列番号6;軽鎖配列番号8)。FcγR結合活性は、実施例4に記載されるとおりのAlphaScreen(商標)競合アッセイにおいてmAb1 DANAPA IgG1と比較された。
【0214】
結果を
図5に示す。DANAPA IgG1形式におけるCD3特異的抗体mAb2、HER2特異的抗体及びPD−1特異的抗体は全て、FcγRIに対して最小限の結合を示し(IC
50=600nM以上)、他の試験FcRに対しては結合しない。これらのデータは、DANAPA IgG1配列が、Fab配列又は同種標的とは無関係にFcR結合を強力に低減し、且つ実質的にいずれの抗体に対しても最小限のFcγR結合を潜在的に付与することを示す。
【0215】
実施例6:D265、N297、及びP329で置換を有するmAb1はヒトFcγR1に対する結合の低減を示す
DANAPA FcのFc受容体に対して結合する能力の強力な低減が、アラニンとは異なるアミノ酸により同じセットの残基(すなわち、D265、N297及びP329)を置換することによって反映され得るかどうかを決定するために、以下の置換を有するmAb1を実施例1に記載されるとおりに作製した:
a)D265N、N297D、P329G(DNNDPGと称される)
(重鎖配列番号18;軽鎖配列番号4)
b)D265E、N297Q、P329S(DENQPSと称される)
(重鎖配列番号20;軽鎖配列番号4)。
FcγRI結合活性は、実施例4に記載されるとおりのAlphaScreen(商標)競合アッセイにおいてmAb1 DANAPA IgG1と比較された。
【0216】
結果を
図6に示す。3種類全ての抗体が、FcγRIに対する最小限の結合を示し、その相互作用は明らかに、Fc操作により抑制する最大の課題である(実施例4を参照のこと)。これらの結果は、FcγRI相互作用が、3つの残基D265、N297、及びP329を、単にアラニンによる置換ではなく異なるアミノ酸残基で置換することにより低減され得ることを示す。
【0217】
実施例7:DANAPA IgG1はC1q結合を抑制する
抗体Fcに対するC1qの結合は、抗体媒介性補体活性化及びその後の補体媒介性標的細胞溶解の誘導における第1段階である。ヒトC1qに対するmAb1 DANAPA IgG1結合は、BIAcore T100装置上でのSPR結合アッセイにおいて測定された。抗体は、アミンカップリングを介して5000RUのコーティング密度でCM5チップ上にコーティングされた。ヒトC1q(EMD Millipore)は、ランニング緩衝液(PBS pH7.4、0.05%TWEEN−20)中において200nM及びその3倍段階希釈にて30μl/分の流速で注入された。結合が記録され、K
Dが、定常状態親和性モデルを用いるBIAcoreソフトウェアを使用してカーブフィッティングすることによって決定された。
【0218】
実験の結果を
図7に示す。mAb1 IgG1は、見かけ上30nMのK
Dを有してC1qに対する強力な結合を示し、このことは、この相互作用に関する公開された親和性値と一致し、アッセイ機構を確証する(Moore GL,et al.(2010),Mabs 2(2):181−189)。
【0219】
mAb1 DANAPA IgG1は、C1qに対する任意の検出可能な結合を示さなかった。
【0220】
注目すべきことに、DANAPA Fcγ1中に存在するD265AとN297A変異を組み合わせるがP329A変異を欠く、類似のFcγ1配列であるDANA Fcγ1は、文献中に記載されており、残留性のC1q結合を示す(Gong,Q,et al.(2005),J Immunol 174(2):817−826)。
【0221】
DANA Fcγ1と対照的に、mAb1 DANAPA IgG1は、C1qに対する結合の完全な消失を著しく実証した。
【0222】
実施例8:DANAPA変異はヒトFCRNに対する結合を減少させない
IgG FcのFcRnとの相互作用は、抗体の代謝回転において重要な役割を果たす(Kuo TT and VG Aveson(2011),MAbs 3(5):422−430)。ピノサイトーシスを介して細胞により吸収されたIgGは、エンドソームの酸性環境中においてFcRn受容体と結合する。FcRnはIgGを再循環させて細胞表面に戻し、そこで抗体は、中性又は塩基性pHでFcRnから解離することにより、リソソームによる分解から救出される。この機構は、IgGの長い血清半減期に関する説明を与える。したがって、長い血中半減期を有するために、Fc中に置換を有する抗体は、酸性pHでFcRnと十分な結合を保持し、中性pHで容易に解離することが重要である。
【0223】
ヒトFcγRは、IgG抗体の下方ヒンジ中の残基及びCH2ドメインに結合するが(Woof JM and DR Burton(2004),Nat Rev Immunol 4(2):89−99)、ヒトFcRnは、CH2−CH3界面中のいくつかの残基と相互作用する(Martin WL, et al.(2001),Mol Cell 7(4):867−877)。したがって、FcR結合を低減するために導入される変異は、Fc−FcRn相互作用に影響を及ぼし得る。例えば、Shieldsらは、FcγR結合の低減をもたらした下方ヒンジ又はCH2ドメイン中のいくつかの変異はまた、FcRn結合の低減も引き起こしたことを観察した(例えば、E233P、Q295A)。したがって、FcRn結合に対するDANAPA変異の影響を評価することが特に重要である。
【0224】
DANAPA IgG1のFcRnに対する結合は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって分析された。BIAcore CM5チップを、BIAcoreアミンカップリングキット(GE healthcare)を用いて600RUのヒト組換え体FcRn(Sino Biological)でコーティングした。2000nMと31nMの間の濃度の段階2倍希釈のDANAPA Fc変異mAb1及び未変異のmAb1 IgG1を調製し、0.05%Tween−20で補充されたPBS pH6.0中において30μl/分でFcRnでコーティングされた表面及びコーティングされていない基準表面上に注入した。注入と注入の間に、PBS pH7.4でチップ表面を再生した。得られた結合曲線は、リファレンスが差し引かれ、続いて緩衝液が差し引かれ、得られた二重リファレンスの曲線を、定常状態親和性モデルを用いるBIAcore評価ソフトウェアを使用して評価して、熱力学的解離定数K
Dを得た。
【0225】
ヒトFcRnに対する結合アッセイの結果を
図8に示す。解離定数K
Dは、mAb1 DANAPA IgG1に関しては500nM、及びmAb1 IgG1に関しては470nMであったが、このことは、ヒトFcRnに対する結合において差がないことを示している。mAb1 DANAPA IgG1は、mAb1 IgG1と本質的に同一の解離動態を有して中性pHで迅速な解離を示す。これらの結果は、mAb1 DANAPA IgG1が、FcγRに対する結合の抑制にも関わらずFcRnに対するIgG1様結合を保持することを示唆する。
【0226】
実施例9:mAb1 DANAPA IgG1は、IgG1様薬物動態プロファイルを呈する
良好な薬物動態特性、すなわち、血中の長い半減期は、抗体に基づく医薬品が満たさなければならない重要な判定基準の1つである。抗体Fc配列の操作は、薬物動態プロファイルに対して予想外の効果を有する場合がある。例えば、Fc受容体結合を低減する5つの変異を含有するFc配列を有する抗体(「LFLEDANQPS」[注記:最後のPからSまでの変異はKabat番号付けによる331位であり、すなわち、本開示における変異とは異なる位置])は、野生型IgG1と比較して3〜5倍増大したクリアランスを有し、対応する野生型IgG1より短い終末半減期をもたらした(国際公開第2014108483号パンフレット)。
【0227】
C57BL/6マウス(Charles River)におけるmAb1 DANAPA IgG1の薬物動態プロファイルを調査し、mAb1 IgG1と比較した。5頭のC57BL/6マウスを、10mg/kgのmAb1 DANAPA IgG1又はmAb1 IgG1で静脈内注射した。10分、6、24、48、96、120、144、及び216時間後、EDTAでコーティングしたmicrovette(Sarstedt)中に血液を回収し、9300gで10分間遠心分離し、mAb1 DANAPA IgG1及びmAb1 IgG1の血清レベルをFc特異的サンドウィッチELISAにより決定した。透明なマキシソープマイクロタイタープレート(Nunc)を、440倍希釈したFc特異的抗ヒトIgG1捕捉抗体(I2134 Sigma)でコーティングした。PBS中2%BSA(Sigma)でブロッキングした後、40μlのPBS及び適切な希釈度の10μlの血漿をアプライした。1時間のインキュベーション後、ウェルをPBSで洗浄し、結合したmAb1 DANAPA IgG1又はmAb1 IgG1を、10,000倍希釈されたFc特異的HRPコンジュゲート抗ヒトIgG1検出抗体(A0170、Sigma)で検出した。アッセイをQuantaRed蛍光発生基質(Pierce)で発色させ、544nm(励起)及び590nm(発光)で2〜4分後に蛍光強度を測定した。mAb1 DANAPA IgG1及びmAb1 IgG1の血漿レベルを、対応する抗体の検量線を用いて決定した。血漿中の抗体暴露量は、216時間にわたる片対数プロットにおいて示される。
【0228】
mAb1 DANAPA IgG1及びmAb1 IgG1の薬物動態プロファイルを
図9に示す。本発明に対して重要であり且つ予想外なこととして、mAb1 DANAPA IgG1は、mAb1 IgG1と本質的に同一である薬物動態特性を有する。
【0229】
実施例10:DANAPA IgG1 Fcを有するCD33×CD3二重特異性FynomAbは、FcγR結合の低減を示す
Fc受容体発現細胞と相互作用すると、腫瘍抗原に特異的な第1の結合部位及びT細胞に特異的な第2の結合部位を有するFc含有二重特異性T細胞エンゲージング分子は、腫瘍非依存性T細胞活性化及びサイトカイン放出を誘導し得る(off−tumor効果)(国際公開第2012143524号パンフレットを参照のこと)。このリスクを軽減するために、このような分子は、最小の固有のFcγR親和性を有する操作されたFc配列を備え得る。
【0230】
CD3/CD33二重特異性FynomAbは、可動性(G
4S)
3リンカー(配列番号40)を用いるCD33特異的フィノマーG1(配列番号36)又はCD33特異的フィノマーD5(配列番号38)のヒト化CD3特異的抗体mAb2(重鎖配列番号14;軽鎖配列番号16)の軽鎖のC末端への融合によって作製された。これらのFynomAbのFcγR結合は、実施例4に記載されるとおりのAlphaScreen(商標)競合アッセイにおいて決定された。
【0231】
CD3/CD33 FynomAbのFcγR結合は、COVA467(重鎖配列番号26;軽鎖配列番号28)であって、CD33特異的フィノマーB3をCD3特異的抗体mAb3軽鎖のC末端に融合することによって作製された、LALA IgG1 Fc(すなわち、L234A及びL235A変異を有するIgG1 Fc)を有する以前に記載されたCD3/CD33 FynomAbと比較された(国際公開第2014170063号パンフレットを参照のこと)。B21M IgG1は、陽性対照として機能した(実施例4を参照のこと)。
【0232】
結果を
図10に示す。COVA467が、ヒトFcγRIIIA及びFcγRIに対して残留性の結合を示した一方で(それぞれ、IC
50=390nM及び29nM)、DANAPA IgG1 Fcを有する2種類のFynomAbは、COVA467と比較して、FcγRIIIAに対していかなる結合も示さず、且つFcγRIに対する結合を強力に低減した(それぞれ、IC
50=206nM又は800nM)。FcγRIIA及びBに対する著しい結合は、これらのコンストラクトについては見出されなかった。これらの結果は、DANAPA IgG1 Fcを有するCD3/CD33二重特異性FynomAbが、COVA467と比較してFcγR結合の低減を示すことを実証する。したがって、それらは、望ましくないoff−tumor T細胞活性化及びサイトカイン放出を誘導する可能性を低減し、CD3/CD33二重特異性FynomAbの改善された変異体となる。
【0233】
【表5】
【0234】
【表6】
【0235】
【表7】
【0236】
【表8】
【0237】
【表9】
【0238】
【表10】
【0239】
【表11】
【0240】
【表12】
【0241】
【表13】
【0242】
【表14】
【0243】
【表15】
【0244】
【表16】
【0245】
【表17】
【0246】
【表18】
【0247】
【表19】
【0248】
【表20】
【0249】
【表21】
様々な疾患及び障害の治療において使用され得る、C1q及びFcガンマ受容体に対する結合の低減を有するFc領域における変異を有する抗体及び他のFc含有分子が提供される。