特許第6840917号(P6840917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840917
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】水洗式便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20210301BHJP
【FI】
   E03D11/08
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-31677(P2017-31677)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-135712(P2018-135712A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】灰田 周平
(72)【発明者】
【氏名】渡 光次郎
【審査官】 舟木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−054216(JP,A)
【文献】 特開平09−125504(JP,A)
【文献】 特開2008−025256(JP,A)
【文献】 特開2015−183484(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/082447(WO,A2)
【文献】 特開平06−299587(JP,A)
【文献】 特開2015−161117(JP,A)
【文献】 特開2017−020213(JP,A)
【文献】 特開2016−142100(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/143029(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−7/00、11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水が流れる便鉢面を有する便鉢と、
前記便鉢の上部に配置され、中央部に開口が形成されて、前記便鉢の周方向で斜め下方外側に向けて前記洗浄水を流すように吐水する第1吐水口を有する洗浄装置と、
を備え
前記第1吐水口から吐水された前記洗浄水は、前記洗浄装置の裏面に形成された傾斜面に当たり前記便鉢に近づくにつれて拡がって流れることを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】
前記洗浄装置は、複数の前記第1吐水口を有し、任意の前記第1吐水口から吐水された前記洗浄水が下流側に隣り合う前記第1吐水口が配置された位置の下方の前記便鉢面を流れることを特徴とする請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
複数の前記第1吐水口は、少なくとも一つの前記第1吐水口が吐水する前記洗浄水の流量が他の前記第1吐水口が吐水する前記洗浄水の流量と異なることを特徴とする請求項2に記載の水洗式便器。
【請求項4】
複数の前記第1吐水口は、少なくとも一つの前記第1吐水口が吐水する前記洗浄水の水平方向に対する下向きの角度が他の前記第1吐水口が吐水する前記洗浄水の水平方向に対する下向きの角度と異なることを特徴とする請求項2に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記洗浄装置は、前記第1吐水口から吐水された前記洗浄水が流れない非洗浄領域に前記洗浄水を吐水して前記非洗浄領域を洗浄する第2吐水口を有していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の水洗式便器は、便器本体と、便器本体への洗浄水の供給源と、便器本体のボウル部の上端部に載置される便座とを備えている。さらに、この水洗式便器は上端部よりも上方からボウル部のボウル内面に対して略水平方向に洗浄水を吐水する第1吐水手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−54216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この水洗式便器は、便座の裏面を洗浄水が流れた洗浄水が重力によって便鉢に向けて流下する。つまり、この水洗式便器は便座の裏面を流れた洗浄水が便鉢に到達して便鉢を流下する際、洗浄水の便鉢を流下する勢いが重力によるものであるため、洗浄水が流れる勢いが弱く、便鉢の表面を良好に洗浄することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、良好に便鉢を洗浄することができる水洗式便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水洗式便器は、
洗浄水が流れる便鉢面を有する便鉢と、
前記便鉢の上部に配置され、中央部に開口が形成されて、前記便鉢の周方向で斜め下方外側に向けて前記洗浄水を流すように吐水する第1吐水口を有する洗浄装置とを備えている。
【0007】
この水洗式便器は、洗浄装置の第1吐水口から吐水される洗浄水の向きが、便鉢の周方向で斜め下方外側に向いている。このため、この水洗式便器は、便鉢面を流れる洗浄水が下方向への勢いを有している。つまり、この水洗式便器は下方向への勢いを有した洗浄水によって便鉢面をより良好に洗浄することができる。
また、この水洗式便器は、第1吐水口から吐水される洗浄水の向きが、便鉢の周方向であるため、洗浄水が便鉢面を旋回しながら流れる。これにより、この水洗式便器は洗浄水が便鉢面を満遍なく流れることができる。
【0008】
したがって、本発明の水洗式便器は良好に便鉢を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の水洗式便器の平面図である。
図2】実施例1の水洗式便器であって、(A)は図1における矢視A−A断面図であり、(B)は図1における矢視B−B断面図であり、(C)は図2(A)における矢視Cである。
図3】実施例1の水洗式便器の平面図であって、第1吐水口から吐水された洗浄水が便座、及び便鉢面を流れる状態を示す。
図4】実施例2の水洗式便器の平面図である。
図5】実施例2の水洗式便器であって、(A)は図4における矢視D−D断面図であり、(B)は図4における矢視E−E断面図であり、(C)は図5(A)における矢視Fである。
図6】実施例2の水洗式便器の平面図であって、複数の第1吐水口のそれぞれから吐水された洗浄水が便座、及び便鉢面を流れる状態を示す。
図7】実施例2の水洗式便器の平面図であって、一方の第1吐水口から吐水された洗浄水の流量が他方の第1吐水口から吐水された洗浄水の流量より大きい状態を示す。
図8】実施例2の水洗式便器の平面図であって、他方の第1吐水口から吐水された洗浄水の流量が一方の第1吐水口から吐水された洗浄水の流量より大きい状態を示す。
図9】実施例3の水洗式便器の平面図である。
図10】実施例3の水洗式便器であって、(A)は図9における矢視G−G断面図であり、(B)は図9における矢視H−H断面図であり、(C)は図10(A)における矢視Jである。
図11】実施例3の水洗式便器の平面図であって、複数の第1吐水口、及び複数の第2吐水口のそれぞれから吐水された洗浄水が便座、及び便鉢面を流れる状態を示す。
図12】他の実施例(1)の水洗式便器の便座34及び便器本体5の要部を拡大した部分断面図である。
図13】他の実施例(1)の水洗式便器の便座44及び便器本体5の要部を拡大した部分断面図である。
図14】他の実施例(1)の水洗式便器の便座54及び便器本体5の要部を拡大した部分断面図である。
図15】他の実施例(1)の水洗式便器の便座64及び便器本体5の要部を拡大した部分断面図である。
図16】他の実施例(2)の水洗式便器の第2吐水口を示す要部を拡大した部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0011】
本発明の水洗式便器の洗浄装置は、複数の第1吐水口を有し、任意の第1吐水口から吐水された洗浄水が下流側に隣り合う第1吐水口が配置された位置の下方の便鉢面を流れ得る。この場合、この水洗式便器は、第1吐水口が1つの場合に比べて、第1吐水口から吐水された洗浄水が便鉢を旋回して流れる距離を短くすることができる。これにより、この水洗式便器はそれぞれの第1吐水口から洗浄水を吐水する方向を便鉢の周方向でより斜め下方外側に向けることができるため、便鉢面を流れる洗浄水の下方向への勢いをより大きくすることができるため、便鉢をより良好に洗浄することができる。
【0012】
本発明の水洗式便器の複数の第1吐水口は、少なくとも一つの第1吐水口が吐水する洗浄水の流量が他の第1吐水口が吐水する洗浄水の流量と異なり得る。この場合、便鉢面の場所に応じて最適な流量の洗浄水を流すことができる。
【0013】
本発明の水洗式便器の複数の第1吐水口は、少なくとも一つの第1吐水口が吐水する洗浄水の水平方向に対する下向きの角度が他の第1吐水口が吐水する洗浄水の水平方向に対する下向きの角度と異なり得る。この場合、便鉢面の洗浄場所の調整や、便鉢面の場所に応じた最適な流量の洗浄水を流すことができる。
【0014】
本発明の水洗式便器の第1吐水口から吐水された洗浄水は、洗浄装置の裏面に当たり前記便鉢に近づくにつれて拡がって便鉢面に向けて流れ得る。この場合、この水洗式便器は、予め洗浄水の流れる幅を便座の裏面に当てて拡げることによって、洗浄水を便鉢の露出した部分に満遍なく流すことができる。
【0015】
本発明の水洗式便器の洗浄装置は、第1吐水口から吐水された洗浄水が流れない非洗浄領域に洗浄水を吐水して非洗浄領域を洗浄する第2吐水口を有し得る。この場合、この水洗式便器は第2吐水口から吐水される洗浄水によって便座を満遍なく洗浄することができる。
【0016】
次に、本発明の水洗式便器を具体化した実施例1〜3について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<実施例1>
実施例1の水洗式便器1は、図1図2(A)〜(C)に示すように、便器本体5、及び洗浄装置である便座4を備えている。便器本体5は、洗浄水が流れる便鉢面5Bを有する便鉢5A、便鉢5Aの下流側に形成された排出孔5Fに連通する便器排水路(図示せず)、及び便鉢5Aと便器排水路との前後左右(前後は、図1における下側上側であり、左右は図1のおける左側右側である。)を覆う側面5Cを有している。便器排水路の下流側は便器排水路の上流側より後側に位置している(図示せず。)。便座4は、便器本体5の上部(上下は、図1における、手前側奥側である。)に配置されている。便座4の中央部には、前後方向に長いほぼ楕円形状の開口7が形成されている。また、便座4は開口7の周縁から外方向に向けて伸びる座部4Fを有している。座部4Fはこの水洗式便器1を使用する使用者が着座する。また、便座4の後方にはケーシング12が備えられている。ケーシング12には給水バルブ装置13等が収納されている。ケーシング12はメンテナンスを行うために開閉自在な構成とされている。
【0018】
また、図2(B)に示すように、便座4の裏面には傾斜面4Dが形成されている。具体的には、傾斜面4Dは開口7の周縁から便座4の外周に向けて拡がりつつ下り傾斜している。また、傾斜面4Dは上方に窪んで形成されている。また、傾斜面4Dの下端から便座4の外周に水平方向に拡がるように下端部4Eが形成されている。下端部4Eは便器本体5の上面5Dに当接している。
【0019】
また、傾斜面4Dは便鉢面5Bに段差無く連続している。これにより、傾斜面4Dから便鉢5Aに洗浄水をスムーズに流すことができ、さらに、傾斜面4Dと便鉢面5Bとが連続する部分には汚れが付着し難い。
【0020】
また、便座4の開口7の近傍の傾斜面4Dには、第1吐水口6が設けられている。具体的には、第1吐水口6は便座4の開口7の左側に位置する傾斜面4Dの前後中央より後側に設けられている。第1吐水口6は給水バルブ装置13から供給された洗浄水を吐水する。第1吐水口6は、図2(A)〜(C)に示すように、便鉢5Aの周方向で斜め下方外側に向けて洗浄水を流すように吐水する。ここで、外側とは、上方からの平面視において、便鉢5Aの中央から遠い側である。第1吐水口6から洗浄水が吐水される方向が水平方向に対してなす角度はθ1(以降、吐水角度θ1という)である(図2(A)参照。)。第1吐水口6から吐水された洗浄水は、傾斜面4Dに当たると便鉢5Aに近づくにつれて傾斜面4Dを覆うように拡がり、第1吐水口6から下方に遠ざかるに従いさらに傾斜面4Dを覆うように拡がる。また、傾斜面4Dは当たった洗浄水を下方に誘導する誘導部としても機能する。そして、こうして拡がった洗浄水が傾斜面4Dから傾斜面4Dに連続した便鉢面5B(すなわち、便鉢5Aの露出した部分)に到達する。そして、洗浄水は便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる(図3参照。)。
【0021】
このように、この水洗式便器1は、便座4の第1吐水口6から吐水される洗浄水の向きが、便鉢5Aの周方向で斜め下方外側に向いている。このため、この水洗式便器1は、便鉢面5Bを流れる洗浄水が下方向への勢いを有している。つまり、この水洗式便器1は下方向への勢いを有した洗浄水によって便鉢面5Bをより良好に洗浄することができる。
また、この水洗式便器1は、第1吐水口6から吐水される洗浄水の向きが、便鉢5Aの周方向であるため、洗浄水が便鉢面5Bを旋回しながら流れる。これにより、この水洗式便器1は洗浄水が便鉢面5Bを満遍なく流れることができる。
【0022】
したがって、本発明の水洗式便器1は良好に便鉢5Aを洗浄することができる。
【0023】
また、この水洗式便器1の第1吐水口6から吐水された洗浄水は、便座4の傾斜面4Dに当たり便鉢5Aに近づくにつれて拡がって便鉢面5Bに向けて流れる。このため、この水洗式便器1は、予め洗浄水の流れる幅を便座4の傾斜面4Dに当てて拡げることによって、洗浄水を便鉢5Aの露出した部分である便鉢面5Bに満遍なく流すことができる。
【0024】
<実施例2>
実施例2の水洗式便器11は、図4に示すように、第1吐水口6が複数設けられている点が実施例1と相違する。他の構成は実施例1と同一であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0025】
便座14の開口7近傍の傾斜面4Dには、複数である2つの第1吐水口6が設けられている。具体的には、一方の第1吐水口6が便座14の開口7の左側に位置する傾斜面4Dの前後中央より後側に設けられ、他方の第1吐水口6が便座14の開口7の右側に位置する傾斜面4Dの前後中央より前側に設けられている。これら第1吐水口6から洗浄水が吐水される方向は、図5(A)〜(C)に示すように、便鉢5Aの周方向で斜め下方外側を向いている。これら第1吐水口6から洗浄水が吐水される方向が水平方向に対してなす角度はθ2(以降、吐水角度θ2という)である。
【0026】
これら第1吐水口6から吐水された洗浄水は、図5(A)に示すように、傾斜面4Dに当たると便鉢5Aに近づくにつれて傾斜面4Dを覆うように拡がり、第1吐水口6から下方に遠ざかるに従いさらに傾斜面4Dを覆うように拡がる。また、傾斜面4Dは当たった洗浄水を下方に誘導する誘導部としても機能する。そして、こうして拡がった洗浄水が傾斜面4Dから傾斜面4Dに連続した便鉢面5B(すなわち、便鉢5Aの露出した部分)に到達する。そして、洗浄水は便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる(図6参照。)。
【0027】
具体的には、図6に示すように、一方の第1吐水口6から吐水された洗浄水は、便鉢面5Bの前側の便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる。また、一方の第1吐水口6から吐水された洗浄水の一部は、便鉢面5Bの前側から排出孔5Fに向けて流れて、便器排水路に流入する。また、他方の第1吐水口6から吐水された洗浄水は、便鉢面5Bの後側の便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる。
【0028】
そして、一方の第1吐水口6から吐水された洗浄水は便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に便鉢面5Bを旋回して流れ、下流側に隣り合う他方の第1吐水口6が配置された位置の下方の便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる。また、他方の第1吐水口6から吐水された洗浄水は便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れ、下流側に隣り合う一方の第1吐水口6が配置された位置の下方の便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる。こうして、便鉢5Aは周方向のほぼ全周、すなわち、便鉢5Aの露出した部分のほぼ全ての領域に洗浄水が流れる。つまり、便鉢5Aには第1吐水口6から吐水された洗浄水が流れない非洗浄領域が形成されない。また、実施例2の水洗式便器11は実施例1の水洗式便器1に比べて、1つの第1吐水口6から吐水された洗浄水が便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる距離が小さい。これにより、実施例2の水洗式便器11は吐水角度θ2を吐水角度θ1に比べて大きくすることができる(図2(A)、図3図5(A)、図6参照。)。これにより、実施例2の水洗式便器11は、洗浄水が便鉢面5Bを流れる洗浄水の下方向への勢いをより大きくすることができるため、便鉢5Aをより良好に洗浄することができる。
【0029】
ここで、一方の第1吐水口6が吐水する洗浄水の流量が他方の第1吐水口6が吐水する洗浄水の流量と異なる場合について説明する。流量とは、任意の場所において単位時間当たりに通過する洗浄水の量である。具体的には、第1吐水口6から吐水される単位時間当たりの洗浄水の量が増加することを第1吐水口6からの洗浄水の流量が大きくなるといい、第1吐水口6から吐水される単位時間当たりの洗浄水の量が減少することを第1吐水口6からの洗浄水の流量が小さくなるという。
例えば、一方の第1吐水口6からの洗浄水の流量が大きくなると、図7に示すように、便鉢面5Bの前側を便鉢5Aの周方向に旋回して流れる洗浄水の単位時間当たりの量が増加する。すると、便鉢面5Bの前側から排出孔5Fに向けて流れて、便器排水路に流入する洗浄水の量が増加するため、便鉢5Aから便器排水路に汚物等をより良好に押し込むことができる。
また、他方の第1吐水口6からの洗浄水の流量が大きくなると、図8に示すように、便鉢面5Bの後側を便鉢5Aの周方向に旋回して流れる洗浄水の単位時間当たりの量が増加する。便鉢面5Bの後側は便鉢面5Bの前側に比べて汚れが付着する機会が多い。つまり、便鉢面5Bの後側を流れる洗浄水の流量が増加することによって、汚れが付着する機会が多い便鉢面5Bの後側をより良好に洗浄することができる。
【0030】
また、これら第1吐水口6のそれぞれにおいて、吐水する洗浄水の水平方向に対する下向きの角度を個別に変更する(つまり、一方の第1吐水口6が吐水する洗浄水の水平方向に対する下向きの角度が他方の第1吐水口6が吐水する洗浄水の水平方向に対する下向きの角度と異なる)ことによって、便鉢面5Bの前側から排出孔5Fに向けて流れて、便器排水路に流入する洗浄水の流量や、便鉢面5Bの後側を便鉢5Aの周方向に旋回して流れる洗浄水の流量を調整することもできる。
【0031】
このように、この水洗式便器11は、便座4の2つの第1吐水口6から吐水される洗浄水の向きが、便鉢5Aの周方向で斜め下方外側に向いている。このため、この水洗式便器11は、便鉢面5Bを流れる洗浄水が下方向への勢いを有している。つまり、この水洗式便器11は下方向への勢いを有した洗浄水によって便鉢面5Bをより良好に洗浄することができる。
また、この水洗式便器11は、2つ第1吐水口6から吐水される洗浄水の向きが、便鉢5Aの周方向であるため、洗浄水が便鉢面5Bを旋回しながら流れる。これにより、この水洗式便器11は洗浄水が便鉢面5Bを満遍なく流れることができる。
【0032】
したがって、本発明の水洗式便器11も良好に便鉢5Aを洗浄することができる。
【0033】
また、この水洗式便器11の便座14は、2つの第1吐水口6を有し、任意の第1吐水口6から吐水された洗浄水が下流側に隣り合う第1吐水口6が配置された位置の下方の便鉢面5Bを流れる。これにより、この水洗式便器11は、第1吐水口6が1つの場合に比べて、第1吐水口6から吐水された洗浄水が便鉢5Aを旋回して流れる距離を短くすることができる。つまり、この水洗式便器11はそれぞれの第1吐水口6から洗浄水を吐水する方向を便鉢5Aの周方向でより斜め下方外側に向けることができるため、便鉢面5Bを流れる洗浄水の下方向への勢いをより大きくすることができるため、便鉢5Aをより良好に洗浄することができる。
【0034】
また、この水洗式便器11の2つの第1吐水口6は、一方の第1吐水口6が吐水する洗浄水の流量が他方の第1吐水口6が吐水する洗浄水の流量と異なる。このため、便鉢面5Bの場所に応じて最適な流量の洗浄水を流すことができる。
【0035】
また、この水洗式便器11の2つの第1吐水口6は、一方の第1吐水口6が吐水する洗浄水の水平方向に対する下向きの角度が他方の第1吐水口6が吐水する洗浄水の水平方向に対する下向きの角度と異なる。このため、便鉢面5Bの洗浄場所の調整や、便鉢面5Bの場所に応じた最適な流量の洗浄水を流すことができる。
【0036】
<実施例3>
実施例3の水洗式便器21は、図9に示すように、第1吐水口6の数、及び第2吐水口8が設けられている点が実施例1及び2と相違する。他の構成は実施例1及び2と同一であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0037】
便座24の開口7の近傍の傾斜面4Dには、複数である6つの第1吐水口6が設けられている。これら第1吐水口6は、便座24の開口7の左側に位置する傾斜面4Dの前後中央より後側と前側とに1つずつ、便座24の開口7の左側に位置する傾斜面4Dの前後中央より前側と後側とに1つずつ、便座24の開口7の前側と後側とに位置する傾斜面4Dに1つずつ設けられている。これら第1吐水口6から洗浄水が吐水される方向は、図10(A)〜(C)に示すように、便鉢5Aの周方向で斜め下方外側を向いている。これら第1吐水口6から洗浄水が吐水される方向が水平方向に対してなす角度はθ3(以降、吐水角度θ3という)である。吐水角度θ3は吐水角度θ2及び吐水角度θ1より大きい。
【0038】
これら第1吐水口6から吐水された洗浄水は、図10(A)に示すように、傾斜面4Dに当たると便鉢5Aに近づくにつれて傾斜面4Dを覆うように拡がり、第1吐水口6から下方に遠ざかるに従いさらに傾斜面4Dを覆うように拡がる。また、傾斜面4Dは当たった洗浄水を下方に誘導する誘導部としても機能する。そして、こうして拡がった洗浄水が傾斜面4Dから傾斜面4Dに連続した便鉢面5B(すなわち、便鉢5Aの露出した部分)に到達する。そして、洗浄水は便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる(図11参照。)。
【0039】
具体的には、図11に示すように、任意の第1吐水口6から吐水された洗浄水は、便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる。
【0040】
そして、任意の第1吐水口6から吐水された洗浄水は便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に便鉢面5Bを旋回して流れ、下流側に隣り合う第1吐水口6が配置された位置の下方の便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる。こうして、便鉢5Aは周方向のほぼ全周、すなわち、便鉢5Aの露出した部分のほぼ全ての領域に洗浄水が流れる。つまり、便鉢5Aには第1吐水口6から吐水された洗浄水が流れない非洗浄領域が形成されない。
【0041】
また、実施例3の水洗式便器21は実施例1、2の水洗式便器1,11に比べて、1つの第1吐水口6から吐水された洗浄水が便鉢面5Bを便鉢5Aの周方向に旋回して流れる距離が小さく、吐水角度θ3が吐水角度θ1,θ2に比べて大きい(図2(A)、図3図5(A)、図6図10(A)、図11参照。)。これにより、実施例3の水洗式便器21は実施例1、2の水洗式便器1,11に比べて、洗浄水が便鉢面5Bを流れる下方向への勢いをより大きくすることができるため、便鉢5Aをより良好に洗浄することができる。
【0042】
また、便座24の開口7の近傍の傾斜面4Dには、複数である6つの第2吐水口8が設けられている。これら第2吐水口8は第1吐水口6と同様の形態をなしている。これら第2吐水口8は複数の第1吐水口6の洗浄水を吐水する側に隣り合い設けられている。これら第2吐水口8から洗浄水が吐水される方向は、便鉢5Aの周方向でほぼ水平方向である(図10(A)参照。)。
【0043】
これら第2吐水口8から吐水された洗浄水は、図10(A)、(C)に示すように、隣り合う第1吐水口6の間に形成され、第1吐水口6から吐水された洗浄水が流れない非洗浄領域Rに当たると非洗浄領域Rを覆うように拡がり、第2吐水口8から遠ざかるに従いさらに非洗浄領域Rを覆うように拡がる。こうして、第2吐水口8は非洗浄領域Rに洗浄水を吐水して、第1吐水口6から吐水された洗浄水が流れない非洗浄領域Rを洗浄する。そして、非洗浄領域Rを流れた洗浄水は傾斜面4Dから傾斜面4Dに連続した便鉢面5B(すなわち、便鉢5Aの露出した部分)に到達して、便鉢面5Bを流下する。
【0044】
このように、この水洗式便器21は、便座24の6つの第1吐水口6から吐水される洗浄水の向きが、便鉢5Aの周方向で斜め下方外側に向いている。このため、この水洗式便器21は、便鉢面5Bを流れる洗浄水が下方向への勢いを有している。つまり、この水洗式便器21は下方向への勢いを有した洗浄水によって便鉢面5Bをより良好に洗浄することができる。
また、この水洗式便器21は、6つ第1吐水口6から吐水される洗浄水の向きが、便鉢5Aの周方向であるため、洗浄水が便鉢面5Bを旋回しながら流れる。これにより、この水洗式便器21は洗浄水が便鉢面5Bを満遍なく流れることができる。
【0045】
したがって、本発明の水洗式便器21も良好に便鉢5Aを洗浄することができる。
【0046】
また、この水洗式便器21の便座24は、第1吐水口6から吐水された洗浄水が流れない非洗浄領域Rに洗浄水を吐水して非洗浄領域Rを洗浄する第2吐水口8を有している。このため、この水洗式便器21は第2吐水口8から吐水される洗浄水によって便座24を満遍なく洗浄することができる。
【0047】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
(1)実施例1〜3では、便座4,14,24の裏面に傾斜面4Dを有しており、下端部4Eが便器本体5の上面5Dに当接しているが、図12図15に示す便座34,44,54,64等の形態であっても良い。
具体的には、便座34の裏面の外周縁部には開口7側に向けて窪んだ凹部14Aが形成されている。凹部14Aは便器本体5の上面5Dに当接する面14Bと、便鉢5Aの便鉢面5Bに隙間を設けて対向した立面14Cとを有している。また、便座34の裏面には開口7の周縁と立面14Cの下端とを繋ぎ、開口7の周縁から立面14Cの下端に向けて下り傾斜した傾斜面14Dが形成されている。傾斜面14Dは上方に窪んで形成されている。
傾斜面14Dと立面14Cとが連続する下端部14Eは、便座34を便器本体5に載置した状態において、便器本体5の上面5Dより下側に位置している。また、下端部14Eは便器本体5の上面5Dより内側に位置している。これにより、傾斜面14Dを流下する洗浄水は便器本体5の外側に食み出すことなく便鉢面5Bに流れることができる。また、傾斜面14Dの下端部14Eは、便鉢面5Bの近傍に位置している。これにより、傾斜面14Dを流下する洗浄水は、傾斜面14Dから便器本体5の便鉢面5Bに良好に流れることができる。ここで、内側とは、上方からの平面視において、便鉢5Aの中央に近い側である。
また、便座44の下端部24Eのように、上面5Dよりも内側に位置していてもよい。これにより、便座44は傾斜面24Dを流下した洗浄水が便器本体5の外側に食み出すことを抑えることができる。
また、便座54,64の傾斜面34D,44Dのような形態であってもよい。具体的には、傾斜面34Dのように開口7の周縁から便座4の外周に向けて拡がりつつ上方や下方に湾曲せず下り傾斜していてもよく、傾斜面44Dのように開口7の周縁から便座4の外周に向けて下方に膨らみ下り傾斜していてもよい。
【0049】
(2)実施例3では、第2吐水口8の外形の形態が第1吐水口6と同様の外形の形態である例が開示されているが、これに限らず、例えば、第2吐水口18外形の形態が図16に示すように第1吐水口6と異なる外形の形態でもよい。具体的には、第2吐水口18は上下方向に厚みを有し、且つ便座74の開口7の周縁に沿う方向に帯状をなして伸びており、隣り合う第1吐水口6の間に設けられている。また、第2吐水口18の便座74の開口7の周縁から離れた側には、上下方向に厚みを有し、且つ便座74の開口7の周縁に沿う方向に伸びたスリットが形成されている(図示せず。)。第2吐水口18は給水バルブ装置(図示せず)と連結されている。第2吐水口18は給水バルブ装置から洗浄水が供給されると、スリットから便座74の内側から外側へ向かう方向であって、非洗浄領域Rに向けて洗浄水が吐水される。スリットから吐水される洗浄水は、非洗浄領域Rを覆うように薄膜状をなして非洗浄領域Rを流下することができる。また、実施例1、2のように第1吐水口6の数がより少ない場合、第2吐水口18を便座の開口の周縁に沿う方向により長く形成して、開口の周縁に設けてもよい。
【0050】
(3)実施例1〜3のそれぞれにおいて、第1吐水口6の数が1つ、2つ、及び6つである場合を例示しているが、第1吐水口6の数はこれに限らない。また、実施例3において、第2吐水口8の数が6つである場合を例示しているが、第2吐水口8の数はこれに限らない。
(4)実施例3では、第2吐水口8と第1吐水口6とが個別に設けられていることが開示されているが、これに限らず、例えば、第2吐水口と第1吐水口とが一体的に形成されていてもよい。
(5)実施例1〜3では、第1吐水口6から洗浄水が吐水される方向は便鉢5Aの周方向であることが開示されているが、これに限らず、例えば、便座に便座から真下に吐水する吐水口を併設してもよい。また、便鉢の上部に便鉢の周方向に洗浄水を吐水するリム吐水口を併設したり、便鉢の下部に便器排水路に向けて洗浄水を吐水するジェット吐水口を併設したりしてもよい。
(6)実施例1〜3では、第1吐水口6から洗浄水が吐水される方向は下方外側を向いているが、これに限らず、例えば、第1吐水口から洗浄水を水平方向に吐水し、洗浄水を便座の裏面に当てて下方に向けて流してもよい。
(7)実施例3では、第2吐水口8から洗浄水が吐水される方向は、便鉢5Aの周方向でほぼ水平方向であるが、例えば、第1吐水口に比べて、開口の周縁に沿う方向に向き、且つ水平方向で下方外側を向いていてもよい。
(8)実施例1〜3では、第1吐水口6や第2吐水口8が便座4,14,24の傾斜面4Dに設けられているが、例えば、便座の開口の周縁に沿うように便座と別体に形成され、第1吐水口や第2吐水口が設けられた洗浄装置を便座と便鉢との間に設けてもよい。また、この洗浄装置を温水洗浄便座の洗浄水を吐水する洗浄ノズル等が設けられた本体部等に設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
4,14,24,34,44,54,64,74…便座(洗浄装置)
4D,14D,24D,34D,44D…傾斜面(裏面)
5A…便鉢
5B…便鉢面
6…第1吐水口
8,18…第2吐水口
R…非洗浄領域
図1
図2
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