(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示における1つの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る光断層像撮影装置(以下、「撮影装置」と省略する)1の概略構成について説明する。撮影装置1は、被検体内の組織の断層画像(Bスキャン画像)を、被検体内に挿入されるプローブ2を利用して撮影する。
【0014】
以下、具体例として、撮影装置1は、眼科撮影装置であるものとする。即ち、被検眼Eの内部組織(例えば、網膜)の断層画像が、撮影装置1によって撮影される。しかし、本開示は、眼以外の被検体(例えば、内臓、耳等)の断層画像を撮影する装置にも適用できる。撮影装置1は、測定部10と制御部30を備える。
【0015】
測定部10は、光断層干渉計(OCT:Optical Coherence Tomography)の構成(例えば、干渉光学系)を備える。本実施形態の測定部10は、測定光源11、エイミング光源12、カップラー13、カップラー14、参照光学系15、装着部16、ファイバ回転モータ18、検出器(受光素子)19および光路長変更ユニット20を備える。
【0016】
測定光源11は、断層画像を取得するための光を出射する。一例として、本実施形態の撮影装置1は、出射するレーザ光の波長を高速で変化させることが可能な測定光源11を備えることで、Swept−source OCT(SS−OCT)計測によって断層画像を取得する。本実施形態の測定光源11は、レーザ媒体、共振器、および波長選択フィルタ等によって構成される。波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、または、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタ等を採用できる。
【0017】
エイミング光源12は、測定光の照射位置(つまり、断層画像の撮影位置。)を示すための可視光であるエイミング光を出射する。
【0018】
カップラー13は、測定光源11から出射された光と、エイミング光源12から出射されたエイミング光と、の2つの光の光軸を一致させる。カップラー14は、カップラー13から入射された光を、測定光(試料光)と参照光に分割する。測定光は、装着部16に装着されたプローブ2に導光される。参照光は、参照光学系15に導光される。また、カップラー14は、被検眼Eによって反射された測定光(反射測定光)と、参照光学系15によって生成された参照光とを合成して干渉光を生成する。カップラー14は、生成した干渉光を検出器19に受光させる。
【0019】
参照光学系15は、カップラー14から導光された参照光を再びカップラー14に戻す。参照光学系15は、反射光学系であってもよいし(特開2014−188276号公報)、透過光学系であってもよい(特開2010−220774号公報等)。
【0020】
また、測定部10は、測定光と参照光の光路長差を変更する光路長変更ユニット20を有する。
【0021】
検出器19は、反射測定光と参照光の干渉状態を検出する。換言すると、検出器19は、カップラー14によって生成された干渉光の干渉信号を検出する。より詳細には、フーリエドメインOCTの場合には、干渉光のスペクトル強度が検出器19によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって、所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。また、走査位置毎に深さプロファイルを収集し、深さプロファイルを並べることで、断層画像(Bスキャン画像
図3参照)が形成される。
【0022】
前述したように、本実施形態の撮影装置1には、SS−OCTが採用されている。しかし、撮影装置1には、種々のOCTを採用できる。例えば、Spectral−domain OCT(SD−OCT)、Time−domain OCT(TD−OCT)等のいずれを撮影装置1に採用してもよい。SS−OCTを採用する場合、複数の受光素子を有する平衡検出器を検出器19として採用することが望ましい。平衡検出器を用いる場合、撮影装置1は、複数の受光素子からの干渉信号の差分を得て、干渉信号に含まれる不要なノイズを削減することができる。その結果、断層画像の品質が向上する。
【0023】
装着部(例えばコネクタ)16には、プローブ2におけるファイバ4の後端部(基端部)が着脱可能に装着される。装着部16に対してプローブ2が装着されることによって、カップラー14によって分割された測定光の導光路(例えば、測定部10内のファイバ4)と、プローブ2とが接続される。
【0024】
ファイバ回転モータ(以下、「モータ」と省略する)18は、ファイバ4が装着された装着部16を、ファイバ4の軸を中心として回転させることができる。つまり、モータ18は、装着部16を回転させることでファイバ4を回転させる。その結果として、本実施形態では、測定光およびエイミング光が走査される(詳細は後述する)。モータ18には、回転検出センサ18aが設けられている。回転検出センサ18aは、後端部におけるファイバ4の回転を1回転毎に検出すると共に、検出毎(つまり、1回転毎)に信号を制御部30へ出力する。回転検出センサ18aからの信号は、各々の断層画像(Bスキャン画像)の生成開始のタイミングを決定するために利用される。
【0025】
ここで、
図1および
図2を参照して、装着部16に装着されるプローブ2について説明する。本実施形態のプローブ2は、プローブ本体3と、ファイバ4と、を備える。また、プローブ本体3は、ハンドピース5、およびニードル6を有する。
【0026】
ファイバ4は、プローブ本体3に挿入されており,プローブ本体3の外部からのニードル6の先端部まで、測定部10のカップラー14から導かれた測定光とエイミング光を導光する。
【0027】
ファイバ4は、図示無きトルクコイルによって被覆されている。トルクコイルは、トルク伝達部の一例であり、モータ18からのトルクをファイバ4に伝達する。これにより、ファイバ4がトルクコイルと共に回転される。本実施形態において、ファイバ4およびトルクコイル7は、ハンドピース5に対して自在に回転する。
【0028】
ハンドピース5は、作業者(例えば、検者、術者等)によって把持される略筒状の部材である。ニードル6は、ハンドピース5の先端に設けられており、ハンドピース5の外径よりも小さい外径を有する。ニードル6の先端部は、被検体(例えば、被検眼E)の内部に挿入される。ファイバ4は、ハンドピース5の後端部に接続し、ニードル6の先端部まで延びている。プローブ2は、ファイバ4によって導光された測定光およびエイミング光を走査させながら、それぞれの光を先端部から出射することができる。
【0029】
ここで、
図2を参照して、プローブ2における先端部の構造を、より詳細に説明する。ニードル6の先端部には、遮光部材61、外筒66、保持部68、および偏向部71等が設けられている。
【0030】
遮光部材61は、ファイバ4の先端側の周囲(特に、保持部68および偏向部71の周囲)を囲む。本実施形態では、遮光部材61の形状は、略筒状である。遮光部材61は、測定光およびエイミング光を遮光する材質によって形成されている。遮光部材61のうち、軸線方向において偏向部71が位置する部位の近傍には、測定光およびエイミング光の走査方向(軸周りの方向)に所定の幅を有する切欠き62(又は、開口)が形成されている。偏向部71から照射された光は、切欠き62の内側の領域63(以下、「透過領域63」という。)では外部に透過されるが、切欠き62が形成されていない領域64(以下、「遮光領域64」という。)では遮光部材61によって遮光される。
【0031】
本実施形態では、遮光部材61の内側の面には粗面加工が施されている。つまり、遮光部材61の内側の面には、微細な多数の凹凸が形成されている。この場合、遮光領域64では、遮光部材61の内側の面に照射された光が散乱する。従って、遮光部材61の内側が光を散乱させにくい場合(例えば、内側の面に鏡面加工が施されている場合)に比べて、遮光領域64で反射された反射光が偏向部71に戻らない可能性が低下する。つまり、鏡面加工等が施されている場合には、偏向部71とは異なる方向に光が反射すると、偏向部71には反射光は入射しない。反射光が散乱すると、反射光は偏向部71に戻りやすい。よって、撮影装置1は、測定光が遮光領域64に照射されていることを検出する場合に、遮光領域64で反射された反射光を用いてより確実な検出を行うことができる。
【0032】
なお、本実施形態の透過領域63の形状は略矩形であるが、透過領域63の大きさ、形状、数等を変更できることは言うまでもない。また、透過領域63と遮光領域64を形成するための具体的な方法も変更できる。例えば、測定光およびエイミング光を透過する材質と、遮光する材質とを組み合わせて遮光部材61を製造することで、透過領域63と遮光領域64を形成してもよい。
【0033】
外筒66は、測定光およびエイミング光を透過する材質によって形成されており、遮光部材61の外側を閉塞する。従って、外筒66は、血液、硝子体の組織等が内側に侵入することを防止しつつ、透過領域63の内側と外側との間における光の透過を許容する。なお、外筒66は遮光部材61の内側に位置してもよい。
【0034】
保持部68は、外形略円柱状の部材であり、遮光部材61に対して固定されている。保持部68の軸心部分には、ファイバ4を回転可能な状態で挿通する挿通孔69が形成されている。保持部68は、遮光部材61に対するファイバ4の軸の位置を一定にした状態で、ファイバ4を回転可能に保持する。
【0035】
偏向部71は、ファイバ4の先端部に設けられている。偏向部71は、ファイバ4の先端部から出射された光を偏向させる。偏向部71によって偏向された光は、透過領域63を通過したときに被検体の組織に照射される。なお、本実施形態において、偏向部71によって偏向された光は、所定の距離で集光される。偏向部71は、例えば、ボールレンズであってもよいし、プリズムであってもよい。また、偏向部71は、組織で反射された反射測定光を受光し、ファイバ4に入射させる。本実施形態の偏向部71は、ファイバ4の軸方向に対して約70度の角度で光を偏向させるが、偏向の角度は適宜変更できる。なお、ファイバ4のうち、保持部68よりも後端側の部分の外周には、トルクコイル73が設けられている。トルクコイル73は、モータ18の回転をファイバ4に伝達するために利用される。
【0036】
なお、撮影装置1は、測定光のフォーカス調整を行うための光学系等の種々の構成を、測定部10またはプローブ2に備えてもよい。これらの詳細な説明は省略する。
【0037】
次に、
図1を参照して、装置の制御系を説明する。制御部30は、CPU(プロセッサ)31、RAM32、ROM33、および不揮発性メモリ34等を備える。CPU31は、撮影装置1、および周辺機器の制御を司る。RAM32は、各種情報を一時的に記憶する。ROM33には、各種プログラム、初期値等が記憶されている。不揮発性メモリ34は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、撮影装置1に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を、不揮発性メモリ34として使用することができる。不揮発性メモリ34には、後述するメイン処理(
図6参照)を制御するための撮影制御プログラムが記憶されている。また、不揮発性メモリ34には、撮影された断層画像等の各種情報が記憶される。
【0038】
本実施形態では、測定部10に接続されたパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)が制御部30として用いられる。しかし、PCを用いずに、測定部10と制御部30を1つのデバイスとして一体化させてもよい。また、制御部30は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。例えば、PCに設けられた第一制御部と、測定部10内に設けられた第二制御部とによって、撮影装置1の制御部30が構成されてもよい。この場合、例えば、PCの第一制御部は、PCに接続された操作部の操作に基づいて、撮影の開始および終了等を第二制御部に対して指示すればよい。第二制御部は、第一制御部からの指示に従って、測定光源11、エイミング光源12、モータ18等の動作を制御すればよい。また、干渉信号に基づく画像の生成処理等は、第一制御部および第二制御部のいずれで行ってもよい。
【0039】
制御部30には、表示部41(モニタ)、操作部42、および手術顕微鏡46等の周辺機器が電気的に接続される。表示部41には、後述する断層画像等が表示される。表示部41は、PCのディスプレイであってもよいし、撮影装置1専用のディスプレイであってもよい。また、表示部41は、複数のディスプレイが併用されてもよい。操作部42は、作業者による各種操作指示を認識するためのデバイスである。操作部42には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いてもよい。
【0040】
なお、本実施形態では、検出器19からの信号に基づいて断層画像を形成する画像形成部を、制御部30が兼用する。この場合、例えば、制御部30は、検出器19からの信号をフーリエ変換することで、深さプロファイル(Aスキャン)を取得し、走査位置毎に取得された深さプロファイルを並べることで、断層画像(Bスキャン画像)を生成する。本実施形態において、プローブ2の軸周りに走査されるため、各々の深さプロファイルは、プローブ2の軸に原点が置かれる極座標系によって表現されている。制御部30は、この極座標系によって表現された被検体の断層画像データを取得してもよい。より詳細には、
図3に示すような、画像の横軸が角度に対応し,且つ,縦軸が深さに対応する極座標系での断層画像が取得されてもよい。
【0041】
また、極座標系によって表現される断層画像ではなく、直交座標によって表現された断層画像が取得されてもよい。ここでいう、直交座標によって表現された断層画像では、
図4に示すように、実空間において互いに直交する軸(例えば、X軸(水平方向の軸)とZ軸(深さ方向の軸))が、画像上でも直交するように表現される。このような直交座標によって表現された断層画像は、例えば、極座標系によって表現された断層画像から変換されたものであってもよい(例えば、本出願人による特開2015−104582号公報参照)。
【0042】
ここで、
図3を参照し、撮影装置1において生成される断層画像の一例について説明する。
【0043】
図3に示すように、撮影装置1において生成される断層画像は、いくつかの領域に区分することができる。
図3における像101は、内部反射像である。ここでいう、内部反射像101は、プローブ2の内部での部材の反射に基づいて形成される。本実施形態において、内部反射像101は、遮光部材61(より詳細には、遮光領域64)による測定光の反射に基づいて形成される。以下の説明では、便宜上、内部反射像101を基準として、各領域の説明を行う。
【0044】
図3における閉口部エリアは、遮光部材61の外側(プローブ2の外側)であって、遮光部材61(遮光領域64)によって測定光が到達しない(換言すれば、遮ぎられる)領域である。断層画像において、閉口部エリアは、走査方向に関する位置が内部反射像101と略同一であって、内部反射像101よりも、プローブ2から離間する側(プローブ2の外側。深さ方向に関し,より深い側。
図3の例では、紙面下側)の領域である。
【0045】
図3における開口部エリアは、遮光部材61の外側であって、遮光部材61(より詳細には、透過領域(開口))を通過する測定光が照射される領域である。断層画像において、閉口部エリアは、走査方向に関する位置が内部反射像101と略同一であって、内部反射像101よりも、プローブ2から離間する側の領域である。開口部エリアに形成される像(被検体の像110等)は、遮光部材61を通過した測定光によって形成される。
【0046】
ところで、
図3では、内部反射像101よりもプローブ2から離間する側において、反射像120(第2の内部反射像)が現れる例が示されている。、反射像120の起因となる反射箇所としては、例えば、ファイバ4とプローブ2内の図示無きレンズとの接合部分等が考えられる。このように、反射像120は、光学系の設計、および、深さ方向に関する画像取得範囲等の装置設計に応じて生じるものである。例えば、反射像120と内部反射像101との相対的な位置関係は、プローブ2と被検体との位置関係に関わらず一定であってもよい。なお、当業者は、断層画像中に反射像120が含まれないように光学系などの装置設計を行ってもよい。
【0047】
なお、
図3に示すように、断層画像中に反射像120が現れる場合、開口部エリアおよび閉口部エリアからは、少なくとも反射像120およびその近傍領域が除外されているものとする。例えば、
図3の断層画像においては、内部反射像101と、反射像120と、の間に存在する領域が、開口部エリアおよび閉口部エリアとして利用される。
【0048】
図3に示すプローブ2の内側エリアは、深さ方向に関して、内部反射像101が配置される領域である。
図3に示す遮光部エリアは、深さ方向に関する内部反射像101の位置、または、内部反射像101を含む内部反射像101の近傍の範囲にて、走査方向に伸びる帯状の領域として示される。遮光部材61と、プローブ2の先端(ニードル6の先端,より具体的には、偏向部71)との距離は、既知であるので、内部反射像101,および/または,遮光部エリアは、撮影装置1において、断層画像における深さ方向の基準として利用可能である。
【0049】
以上説明した断層画像における各エリアは、制御部30による画像処理によって、個別に検出可能(識別可能)であってもよい。
【0050】
また、
図3では、OCT信号における信号強度の高い画素ほど高い輝度を持つように視覚化(画像化)された,断層画像を例示した。以下の説明においては、特段の断りが無い限り、OCT信号の信号強度と画素における輝度との対応関係が
図3と同様の断層画像が生成されるものとする。但し、断層画像として、例えば、
図3を白黒反転したような画像が生成されてもよい。この場合における断層画像は、深さプロファイルにおいて信号強度の低い画素ほど高い輝度を持つように視覚化(画像化)される。
【0051】
手術顕微鏡46は、被検体(本実施形態では被検眼E)の内部を、手術中、診断中、またはこれらの訓練中に拡大表示する。作業者は、手術顕微鏡46を覗き込みながら手術、診断、またはこれらの訓練(本実施形態では、これらをまとめて「作業」という。)を行う。また、本実施形態では、制御部30は、手術顕微鏡46によって撮影された画像を取得し、表示部41に表示させることができる。この場合、作業者は、観察光学系によって撮影された画像を確認しながら作業を行うことができる。なお、作業者が肉眼でプローブ2の先端部近傍を注視する場合でも、本開示は適用できる。
【0052】
本実施形態では、被検体表面において、断層画像が取得される位置にエイミング光が照射されるので、エイミング光による輝線301によって、作業者は、撮影位置を確認できる(
図5参照)。
【0053】
以下、
図6から
図9を参照して、撮影装置1の動作について説明する。ここでは、一実施例として示した
図6のフローチャートに基づいて、動作説明を行う。例えば、
図6に示す各処理は、撮影装置1の電源がオンとされた際に、不揮発性メモリ34に記憶された制御プログラムに従って、制御部30によって実行されてもよい。
【0054】
本実施形態において、制御部30は、光路長調節処理(S1)を実行することで、測定光と参照光との光路長差を調節する。光路長調節処理(S1)では、偏向部71との距離が既知である所定の反射物の像が、断層画像において予め定められた深さ位置の領域に形成されるように、測定光または参照光の光路中に配置された光学部材を駆動させて測定光と参照光との光路長差が調整される。例えば、ファイバ4(又は、ファイバ4を含むプローブ2)の交換等により、光路長差が前回撮影時から変更されている場合であっても、S1の処理の結果、深さ方向に関する断層画像の撮影範囲が、所定の反射物の位置を基準にして、一定の範囲に調整される。なお、S1の処理において、制御部30は、光路長差の調整を、例えば、検出器19からの信号であって、偏向部71との距離が既知である所定の反射物に関する信号に基づいて行ってもよい。具体例として、反射物として遮光部材61が利用される場合、
図6に示すように、断層画像の上部に遮光部材61の像が形成されるように光路長調整が行われる。なお、断層画像における反射物の像の目標位置は、偏向部71と反射物との距離(既知の値)に応じて、適宜設定されるべきである。
【0055】
なお、S1の処理は、装置の電源投入毎に実行される必要はなく、ファイバ4の交換毎に実行される処理であってもよいし、操作部42を介して作業者または補助者からの指示に応じた任意のタイミングで実行される処理であってもよい。
【0056】
光路長調整処理(S1)の完了後、制御部30は、ファイバ4の回転動作と、測定光源11およびエイミング光源12の点灯とを開始する(S2)。なお、これらの動作のうち、光路長調節処理(S1)において既に開始されている動作については、そのまま引き続き行われてもよい。又は、光路長調節処理(S1)の完了時に、一端動作を停止し、S2の処理において改めて開始されるようにしてもよい。
【0057】
その後、S3〜S10の処理(便宜上、S3〜S10をまとめて「ループ処理」という)が繰り返し実行される。このループ処理によって、同一の横断位置での断層画像が連続的に取得され、連続的に取得された断層画像に基づいて、断層画像によるライブ画像が表示部41に表示される。本実施形態においてライブ画像の各フレームは、連続して取得された、複数枚の断層画像を合成することによって得られる合成画像(合成断層画像ともいう)である。以下、本実施形態では、合成画像として、複数枚の断層画像による加算平均画像が得られるものとして説明する。
【0058】
なお、
図6の例では、S3〜S10の処理が一通り実行されることで、加算平均画像による1フレーム分のライブ画像の生成および表示がなされる。各フレームの画像が、加算平均画像であることにより、ライブ画像におけるノイズの影響が抑制される。結果、作業者は、リアルタイムな被検体の構造を、良好に観察することができる。
【0059】
ループ処理では、まず、断層画像取得処理(S3)が制御部30によって実行される。断層画像取得処理(S3)では、制御部30が、検出器19からの信号に基づいて断層画像を新たに少なくとも1枚生成し、断層画像をメモリ(例えば、RAM32)に格納する。この一連の動作を、「断層画像の取得」と称す。なお、少なくともS3の処理が一度実行されることで、加算平均画像に必要とされる一定枚数の断層画像が、メモリ(例えば、RAM32)に蓄積されるものとする。このメモリは、画像用のバッファメモリ(例えば、リングバッファ等)であってもよい。このようなメモリの記憶領域のうち、特に、新たな1フレーム分のライブ画像を描画するために処理される断層画像が複数枚分格納される領域を、便宜上、『描画用領域』と称する。描画用領域には、『最新画像』と、1枚以上の『過去画像』と、が同時に格納される。ここでいう、『最新画像』は、直近に取得される1枚の断層画像である。また、『過去画像』は、『最新画像』よりも過去に取得された断層画像であって、時系列にて『最新画像』と連続する1枚または複数枚の断層画像である。以下の説明において、描画用領域は、M枚分の断層画像を記憶するだけの容量を持つ。M枚は、加算平均画像を生成するうえで必要とされる枚数(N枚)以上の範囲で、適宜設定されうる(但し、M,Nは、いずれも一定)。なお、以下の説明において、M>Nの関係であるものとする。なお、新たな断層画像の取得毎に(換言すれば、『最新画像』が更新される度に)、最新画像の格納位置を示すポインタが移動され、それに応じて、描画用領域のアドレスが適宜スライドされるようになっている。例えば、描画用領域にM枚が格納されるまで、断層画像が繰り返し取得される。一方、描画用領域にM枚が格納されている場合には、S4の処理が実行される。
【0060】
また、本実施形態では、断層画像を、RAW画像の形式からビットマップデータ等の汎用フォーマットの形式に変換する処理(画像形式の変換処理)が、制御部30によって実行されてもよい。また、断層画像のコントラストを調整するコントラスト調整処理が、制御部30によって実行されてもよい。この場合、各々についてのコントラストが調整された複数枚の断層画像から、加算平均画像が生成される(詳細は後述する)。コントラストが調整されていることで、良好な加算平均画像が得られやすくなる。なお、
図6のフローチャートにおいて、コントラストの調整等の各処理は、S3の処理の一部として実行されてもよい。
【0061】
次に、制御部30は、1フレーム分のライブ画像を描画するために処理される断層画像を選択する(S4)。ここでは、描画用領域に格納されているM枚の断層画像が選択される。
【0062】
ところで、プローブ型の装置では、プローブ2が手で把持された状態で撮影が行われるので、撮影時(断層画像の取得時)に手ブレが生じることが考えられる。また、撮影時に被検体側が動くことも考えられる。例えば、眼球内部が撮影される場合、撮影時に眼球運動が生じることが想定される。このような、撮影時におけるプローブ2と被検体との相対的な動きの影響で、描画用領域に記憶される複数の断層画像の間で、例えば、被検体の像110の出現位置が互いに異なってしまう可能性がある。また、描画用領域に記憶される複数の断層画像の間で、互いに異なる「せん断ひずみ」が生じてしまう可能性がある。
【0063】
また、測定光の走査速度にムラがある場合も考えらえる。特に、本実施形態の撮影装置1は、測定部10(又は、干渉光学系)とプローブ本体3とがファイバ4によって結ばれ、ファイバ4の回転に伴って測定光が走査される構造である。このような構造では、ファイバ4の回転運動に対する抵抗がファイバ4の屈曲状態に応じて変化するので、測定光の走査速度が均一になりにくい(走査速度にムラが生じやすい)。各断層画像を取得する際の測定光の走査速度にムラがあることで、断層画像の走査方向に関する縮尺が、画像毎に異なってしまう可能性がある。
【0064】
このため、描画用領域に格納された複数の断層画像を、単純に加算等して、加算平均画像を得る場合には、ゴーストのような像が描画されてしまう。
【0065】
これに対し、本実施形態では、手振れ,及び,走査速度の非均一性の影響を抑制するための補正処理が実行される。断層画像間における位置ずれ及び歪みの少なくともいずれかを補正するための処理である。この補正処理は、
図6のフローチャートにおいて、位置補正処理(S5),および,アフィン変換(S6)として例示する。但し、補正処理は、加算平均画像におけるゴーストを低減する処理であればよく、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0066】
位置補正処理(S5)では、S4の処理で選択された複数(M枚)の断層画像が相互に位置補正される。位置補正処理は、例えば、複数の断層画像をパターンマッチングさせることにより行われてもよい。この場合、複数の断層画像のうち1枚をテンプレートとして、各断層画像を移動(平行移動、および、回転移動、のうち少なくともいずれかの移動を含む)させることにより行われる。以下の説明では、具体例として、最新画像がテンプレートとして利用されるものとする。換言すれば、最新画像を基準として、各々の過去画像が移動されることにより、位置補正が行われる。なお、各々の断層画像における画像全体(全領域)同士のマッチング結果に基づいて位置補正が行われてもよいし、各々の断層画像における一部の領域同士のマッチング結果に基づいて位置補正が行われてもよい。但し、位置補正が画像全体でのマッチング結果に基づいて行われる場合に対し、一部の領域同士のマッチング結果に基づいて行われる場合の方が、処理時間が短縮されるので、各フレームのライブ画像がスムーズに描画されやすくなる。結果、より高いフレームレートで、ライブ画像を良好に表示しやすくなる。
【0067】
ここで、
図7のフローチャートを参照し、位置補正処理(S5)の具体例を示す。この具体例では、まず、S4の処理で選択された複数の断層画像が、遮光部エリア内の画像情報に基づいて互いに位置補正される第1位置補正処理が実行される(S31)。
【0068】
第1位置補正処理(S31)では、より詳細には、各々の断層画像における遮光部エリアが制御部30によって特定され、特定された遮光部エリア内の画像情報(例えば、内部反射像101の画像情報)に基づいて各断層画像が互いに位置補正される。つまり、第1位置補正処理は、断層画像の一部分についての情報だけを利用した位置補正であるので、比較的低精度ではあるものの、高速に各画像を処理することができる。
【0069】
特に、本実施形態では、光路長調節処理(S1)の結果として、各断層画像の間で、遮光部エリアは略一定の位置に形成される。例えば、
図3に示すように、遮光部エリアが断層画像上部の予め定められた位置に、形成されるようになる。このため、遮光部エリア内の画像情報の取得に要する時間に短縮されやすく、結果として、第1位置補正処理(S31)が高速化されやすくなっている。
【0070】
次に、第1位置補正処理が施された各断層画像が、極座標系で表現される断層画像から、直交座標系で表現される断層画像へと各々変換される(S32)。この変換処理(S32)によって、被検体の像110の形状が、撮影対象(ここでは、網膜)の実際の形状に近づけられる。
【0071】
次に、第2位置補正処理(S33)が行われる。第1位置補正処理(S31)によって位置補正された状態の複数の断層画像が、第2位置補正処理によって、更に詳細に位置補正される。第2位置補正処理では、各断層画像における開口部エリア内の画像情報に基づいて、各断層画像が互いに位置補正される。
【0072】
第2位置補正処理(S33)では、より詳細には、各々の断層画像における開口部エリアが制御部30によって特定され、特定された開口部エリア内の画像情報(例えば、被検体の像110の画像情報)に基づいて各断層画像が互いに位置補正される。これにより、各断層画像における被検体の像の位置が、各断層画像の間で、より精度よく一致するようになる。
【0073】
特に、ここでは、直交座標系で表現される断層画像同士において、開口部エリア内の画像情報を利用した位置補正が行われる。直交座標系で表現される断層画像では、被検体の像110の形状が実際の形状に近づけられている。このような被検体の像110を利用することで、より高精度の位置補正が可能となる。
【0074】
第2位置補正処理(S33)の完了後、
図7に示す位置補正処理は完了する。そして、
図6のフローチャートに戻って、引き続き、S6の処理が実行される。
【0075】
S6の処理では、テンプレートを基準とするアフィン変換が、複数の断層画像に対して実行される。一般に、アフィン変換には、線形変換(拡大縮小、せん断、回転)、および平行移動が含まれる。S6の処理では、最新画像をテンプレートとして、変形量および変位量を算出し、算出した値に基づいて、それぞれの過去画像が線形変換されてもよい。
【0076】
ここで、線形変換としては、拡大縮小、および、せん断の少なくともいずれかが含まれてもよい。S6の処理において,せん断による線形変換が含まれる場合、撮影時におけるプローブ2と被検体との相対的な動きの影響による断層画像の「せん断ひずみ」が補正される。また、S6の処理において,拡大縮小による線形変換が含まれる場合、走査速度の非均一性による各断層画像の間における縮尺の違いが補正される。つまり、
図6では、アフィン変換(S6)が、各断層画像の間における走査方向に関する縮尺の違いを補正する処理,走査速度の非均一性による各断層画像の間における縮尺の違いを補正する処理,の一例として示されている。
【0077】
次に、ライブ画像生成処理(S7)が実行される。ライブ画像生成処理(S7)では、ライブ画像として表示される加算平均画像が、位置補正後の複数の断層画像(M枚)に基づいて生成される。
【0078】
ここで、本実施形態におけるライブ画像生成処理のより詳細な内容を、
図8に示す。ライブ画像生成処理(S7)では、まず、互いに位置補正された複数枚(M枚)の断層画像の中から、加算平均処理の対象となるN枚が選択される(S41)。選択されるN枚の中には、必ず、最新画像が含まれる。残りN−1枚は、複数の過去画像の中から選択される。
【0079】
例えば、
図9に、S41の処理に対して適用可能な選択方法の概要を示す。
図9の例では、次の(1),(2)の条件に基づいてN−1枚の断層画像が選択される。
(1)取得タイミングが最新画像により近い過去画像ほど優先的に選択される。
(2)各過去画像と最新画像とのパターンマッチングの結果に基づいて、過去画像が選択される。例えば、パターンマッチングの結果は、2種類の画像の相関係数(類似度)を導出する処理であってもよい。この場合、相関係数が予め定められた閾値に満たない過去画像は、加算平均処理の対象から除外される。
【0080】
(1),(2)の条件に基づいてN−1枚の過去画像が選択される場合(S42:Yes)、制御部30は、選択された過去画像と、最新画像と、で加算平均処理を行う。その結果得られる加算平均画像が、新たな1フレーム分のライブ画像として得られる(S43,S44)。
【0081】
一方、位置補正後の複数の断層画像(M枚)の中に、最新画像との相関係数(類似度)が閾値に満たない画像が多く含まれることで、N−1枚の過去画像を選択することができなかった場合は(S42:No)、最新画像が、新たな1フレーム分のライブ画像として得られる(S45)。
【0082】
位置補正後の複数の断層画像(M枚)の中に、最新画像との相関係数(類似度)が閾値に満たない画像が多く含まれる場合の典型例としては、プローブ2と被検体とが相対的に移動している場合が挙げられる。このため、換言すれば、本実施形態におけるライブ画像生成処理では、動画像撮影中における被検体とプローブ2との相対的な移動(の有無)が、複数の断層画像の間のパターンマッチング結果(或いは、相関係数)に基づいて制御部30によって検出される。そして、移動が検出される間、加算平均画像の代わりに最新画像が、ライブ画像として表示部に表示される。このため、プローブ2と被検体との現在の位置関係が、表示部に随時表示されるライブ画像を介して、速やかに作業者に把握されやすいと考えられる。なお、本実施形態では、被検体とプローブ2との相対的な移動が検出されなくなった場合には、表示部に表示させる動画像が最新画像から加算平均画像へと、制御部30によって、切り替えられる。
【0083】
本実施形態では、動画像撮影中における被検体とプローブ2との相対的な移動(の有無)を、撮影装置1が検出するが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、手術顕微鏡等、撮影装置1とは別体の装置で得られる画像に基づいて、被検体とプローブ2との相対的な移動(の有無)が検出されてもよい。例えば、手術顕微鏡の場合、例えば、エイミング光を利用した移動検出が行われてもよい。また、撮影装置1とは別体の装置で得られる画像に基づいて移動検出が行われる場合、移動検出の処理は、撮影装置1とは別体の処理装置(例えば、PC)で行われてもよい。この場合、その処理装置での検出処理の結果が制御部30に入力されることで、加算平均画像と、最新画像とから、ライブ画像として選択的に表示させる処理が、制御部30によって行われてもよい。なお、被検体とプローブ2との相対的な移動(の有無)を検出する検出手段は、必ずしも画像に基づいて移動検出を行うものに限定されるものではなく、種々のセンサでの検出結果に基づくものであってもよい。
【0084】
図6に戻って説明を続ける。ライブ画像生成処理の結果として、ライブ画像における1フレーム分の画像として得られる加算平均画像、又は、最新画像は、位置補正に際した座標変換によって、直交座標系で表現される画像となっている。そのまま、直交座標系でライブ画像が表現されてもよいし、極座標系で表現されるようにライブ画像が座標変換され、座標変換後のライブ画像が表示されてもよい(S8,S9)。このようにして、1フレーム分のライブ画像が、生成、および、表示される。
【0085】
次に、制御部30は、終了指示の有無を判定する(S10)。終了指示が入力されていなければ、S3の処理に戻って、ライブ画像の生成および表示を継続する。一方、終了指示の入力があった時は、
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0086】
以上、実施形態に基づいて本開示に関する説明を行ったが、本開示に含まれる技術は、上記実施形態に限定されることなく様々に変形できる。
【0087】
例えば、上記実施形態において、同一の横断位置での断層画像からなる,最新画像と過去画像とが、加算平均処理によって合成され、合成画像として、1枚の断層画像が得られる場合を例示した。しかし、必ずしもこれに限られるものではない。加算平均以外の種々の合成処理が利用されてもよい。合成処理としては、例えば、単に、加算処理であってもよい。また、加算平均画像では、合成後の画素の輝度が、合成前における対応位置の画素の平均値となるが、これに代えて、最頻値、中央値等の値を用いる合成処理が行われてもよい。
【0088】
なお、
図6の例では、各電源投入時に、必ず光路長差の調節が行われるが、必ずしもこれに限られるものではない。但し、光路長差の調節処理は、ファイバ4(ケーブル4)が交換されてから、断層画像の取得が開始されるまで(または、走査不良の監視が始まるまで)の間に少なくとも1回以上行われることが好ましい。
【0089】
また、上記実施形態においてプローブ2の偏向部71は、ファイバ4と共に回転する構成として説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、より詳細には、偏向部71として、ガルバノミラーおよびAOM(音響光学素子)等、一定の範囲でレーザ光を揺動させる構成が使用されてもよい。
【0090】
なお、上記実施形態で示した各処理(主に
図6に示す処理)のうち一部が、プローブ型の装置ではなく、例えば、据え置き型の装置に適用されてもよい。ここでいう据え置き型の装置は、干渉光学系が設けられた装置本体に、被検体(例えば、被検眼)に対して測定光を照射するための対物光学系が固定配置された装置である。このような装置に対し、上記処理を適用しても、従来技術に対して優れた効果を享受できる。