(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態:
図1および
図2を参照して、本発明の第1実施形態としての吸収性物品10Aを説明する。
図1は、第1実施形態の吸収性物品10Aを示す概略平面図である。
図2は、
図1に示されている2−2切断における吸収性物品10Aの概略断面図である。
図1および
図2には、吸収性物品10Aを基準とする互いに直交する三方向を示す矢印X,Y,Zが図示されている。吸収性物品10Aと各矢印X,Y,Zが示す方向との対応については後述する。なお、矢印X,Y,Zは、他の図においても対応するように適宜、図示されている。
図1には、展開した状態にある吸収性物品10Aの使用時に装着者に対向する面側を図示してある。
図2の概略断面図では、便宜上、吸収性物品10Aを構成する各部材を分離させた状態で図示してある。本明細書において参照される概略断面図はいずれも同様に図示してある。
【0015】
本実施形態の吸収性物品10Aは、いわゆるテープ型の紙おむつであり、帯状の形状を有している(
図1)。吸収性物品10Aは、着用者に装着されるときには、着用者の股下部を覆うように、着用者の腹側から背側にわたって当てられて、テープによって留められる。説明の便宜上、吸収性物品10Aを、着用者に着用されたときの配置位置に応じて、長手方向に、順に、前部11と、中部12と、後部13と、に区分ける。前部11、中部12、後部13は、吸収性物品10Aの部位ごとの名称を示しており、吸収性物品10Aを構成する部材の名称を示すものではない。紙面下側に図示した前部11は、着用者の腹部側に配置される部位である。紙面中央あたりに図示した中部12は、着用者の股下あたりに配置される部位である。紙面上側に図示した後部13は、着用者の背中側に配置される部位である。
【0016】
ここで、矢印X,Y,Zの示す方向を説明する。矢印Xは、展開された状態の吸収性物品10Aにおける長手方向に沿った方向を示しており、後部13から前部11に向かう方向を示している。以下では、矢印Xの方向に平行な方向を「長さ方向」とも呼ぶ。矢印Yは、展開された状態の吸収性物品10Aにおける短手方向に沿った方向を示しており、吸収性物品10Aが着用者に着用されたときに着用者の右側から左側に向かう方向を示している。以下では、矢印Yの方向に平行な方向を「幅方向」とも呼ぶ。矢印Zは、吸収性物品10Aの厚み方向に沿った方向を示しており、吸収性物品10Aが着用者に着用されたときに、吸収性物品10Aから着用者に向かう方向を示している。以下の説明において、吸収性物品10Aに関して「上」と言うときは、矢印Zが示す方向側を意味し、「下」と言うときは、その逆方向側を意味している。
【0017】
吸収性物品10Aは、トップシート20と、バックシート30と、吸収体40と、を備える(
図2)。トップシート20は、着用者に着用されたときに、着用者の肌に直接的に接触するシート状の部材である。トップシート20は、吸収体40の全体を覆うように、吸収体40の上に配置されている。トップシート20は、少なくとも、着用者の肌に接する表面に親水性を有している。また、トップシート20は、少なくともその厚み方向に液体を透過する液透過性を有している。吸収性物品10Aの使用時には、トップシート20上に排泄された排泄物の液体成分である液体がトップシート20を透過する。トップシート20は、本発明における第1シートの下位概念に相当する。
【0018】
トップシート20は、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム、網目を有するネット状シートなどによって構成される。液透過性や肌触りの良さを考慮すると、トップシート20は不織布によって構成されることが好ましい。不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布などを採用することができる。
【0019】
バックシート30は、吸収体40を挟んで、トップシート20に重なるように積層されるシート状の部材である。バックシート30は、液不透過性を有し、吸収体40によって吸収された液体が外部に漏洩することを抑制する防水シートとして機能する。バックシート30は、トップシート20とは反対側において、吸収体40の下側の面全体を覆うように配置されている。バックシート30は、本発明における第2シートの下位概念に相当する。
【0020】
バックシート30は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂フィルム、液不透過性フィルムなどによって構成することができる。液不透過性フィルムは、例えば、スパンボンド等の不織布に、通気性の合成樹脂フィルムが挟まれたシートなど、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シートによって構成されてもよい。なお、バックシート30は、液水の透過を許容せず、水蒸気の透過を許容する、いわゆる透湿性を有することが望ましい。バックシート30は、例えば、0.1〜0.5μmの微細な孔を有する微多孔性ポリエチレンフィルムなどの透湿性を有する液不透過性フィルムによって構成されてもよい。
【0021】
吸収体40は、上述したように、トップシート20とバックシート30とに挟まれている。吸収体40は、トップシート20を透過した液体を内部に吸収して保持する。本実施形態では、吸収体40は、平板なシート状であり、少なくとも、吸収性物品10Aが着用者に着用されたときに着用者の股下部を覆うことができる位置に配置されている。
図1では、吸収体40の外周輪郭線を一点鎖線で図示してある。なお、トップシート20とバックシート30とは、吸収体40の外周において互いに接合されている。トップシート20とバックシート30との接合部(図示は省略)は、吸収体40が吸収性物品10Aの内部において封止されるように、吸収体40の外周を囲んでいる。
【0022】
吸収体40は、液体を吸収することができる繊維材料である吸収性繊維と、液体を吸収し保持する性質を有する樹脂材料である吸収性樹脂と、を含んで構成される。吸収性樹脂は、吸収性繊維の繊維間の隙間に保持されている。吸収体40が液体を吸収するときには、吸収性繊維における繊維間の微細な隙間に液体が入り込むとともに、当該隙間に存在する吸収性樹脂によっても液体が吸収されて保持される。なお、吸収体40は、吸収性繊維の繊維間に吸収性樹脂が配置されている構成に限定されることはない。吸収体40は、吸収性繊維によって構成された繊維部材と、吸収性樹脂によって構成された樹脂部材と、が組み合わされて構成されてもよい。例えば、吸収体40は、吸収性樹脂をシート状に成形した樹脂シートと、吸収性繊維をシート状に成形した繊維シートの積層体として構成されてもよい。
【0023】
本実施形態では、吸収性繊維は、フラッフパルプ(綿状パルプ)によって構成される。吸収性繊維は、フラッフパルプ以外のパルプ繊維や、レーヨン繊維またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維(繊維長5mm以下のもの)、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維(繊維長5mm以下のもの)によって構成されてもよい。これらの繊維は、単独で用いることもでき、複数種類の繊維を組み合わせて用いることもできる。
【0024】
吸収性樹脂は、例えば、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーによって構成される。吸収性樹脂は、高吸収性ポリマー(SAP:Super Absorbent Polymer)によって構成されることが望ましい。吸収性樹脂は、デンプン系、セルロース系、または合成ポリマー系の樹脂によって構成されてもよい。より具体的には、吸収性樹脂は、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリル酸エチルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−メタクリル酸メチルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−アクリルアミドグラフト共重合体のケン化物、ポリアクリル酸(塩)、アクリル酸で架橋されたポリエチレンオキシド、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、ポリビニルアルコール−無水マレイン酸反応物の架橋物などによって構成されてもよい。
【0025】
本実施形態では、吸収体40は、コアラップシート41によって全体が包まれている。コアラップシート41は、吸収体40の形状を保持する機能を有する。
図2では、便宜上、吸収体40とコアラップシート41とを離間して図示してあるが、コアラップシート41は、吸収体40の表面に密着して一体化されている。コアラップシート41は、親水性および液透過性を有するシート状の部材によって構成される。コアラップシート41は単一のシート状の部材によって構成してもよいし、複数枚のシート状の部材を組み合わせて構成してもよい。
【0026】
コアラップシート41は、例えば、ティッシュペーパなどの紙部材によって構成される。ティッシュペーパとしては、坪量が10〜30g/m
2のものが採用されてもよい。コアラップシート41は、不織布によって構成されてもよい。不織布としては、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布などが採用されてもよい。不織布としては、例えば、メルトブローンをスパンレース不織布で挟んだSMS不織布のように、複数種類の不織布を積層した多層構造のものが採用されてもよい。
【0027】
吸収体40の上側の面であるトップシート20側の面には、溝部42が設けられている。溝部42は、吸収体40をその厚み方向に押圧して圧縮することによって形成されている。そのため、吸収体40では、溝部42の下方の部位である溝下部位43が圧搾されて、その密度が他の部位よりも高められている。溝部42は、例えば、エンボス加工によって形成される。
【0028】
本実施形態では、吸収体40がコアラップシート41に包まれ、その上にトップシート20が配置された状態のときに、トップシート20とともに、吸収体40を押圧することによって、溝部42が形成される。これによって、
図2に示されているように、トップシート20およびコアラップシート41の一部が溝部42内に入り込み、トップシート20と吸収体40とが一体化される。また、
図1および
図2に示されているように、トップシート20の表面に、吸収体40の溝部42に重なる表面溝部22が形成される。以下では、トップシート20の表面溝部22および吸収体40の溝部42の両方を指す場合には、「溝部22,42」とも表記する。
【0029】
本実施形態では、溝部22,42は、長さ方向および幅方向に交差する斜め方向に延びて格子状に交差している(
図1)。溝部22,42は、少なくとも幅方向における中央領域において、前部11から後部13にわたって形成されていることが望ましい。溝部22,42は、着用者の肌に面する面全体にわたって形成されていてもよいし、吸収体40の全面にわたって形成されていてもよい。溝部22,42は、液体が吸収体40の上側の面に沿って拡散するように導く流路として機能する。また、溝部22,42は、吸収体40を撓みやすくし、着用者が吸収性物品10Aを着用したときのフィット感を良好にする機能も有する。表面溝部22は、着用者とトップシート20との間の空間における通気性を高める機能も果たす。
【0030】
吸収性物品10Aでは、バックシート30と吸収体40との間に拡散層50が設けられている。より具体的には、拡散層50は、バックシート30と、吸収体40の下に配置されているコアラップシート41と、の間に配置されている。拡散層50は、吸収体40から拡散層50に向かう方向である矢印Zの逆方向に見たときに、吸収体40の溝部42と重なる位置に配置されている。拡散層50は、吸収体40の溝部42が形成されている領域全体を覆うように設けられていることが望ましい。
図1では、拡散層50の配置領域を表す外周輪郭線が二点鎖線によって図示されている。本実施形態の吸収性物品10Aにおいては、吸収体40の溝部42と拡散層50との組み合わせによって、その液体吸収性能が高められているが、その詳細については後述する。
【0031】
拡散層50は、親水性を有するとともに、内部において液体を拡散させることができる液の拡散性を有するシート状の部材によって構成される。拡散層50は、面に沿った方向への液体の拡散性が高いことが望ましい。拡散層50は、例えば、ティッシュペーパなどの紙部材や、不織布などによって構成される。特に、嵩高のエアスルー不織布や、目付が15〜40g/m
2程度のケミカルボンド不織布によって構成されることが望ましい。拡散層50は、少なくとも、トップシート20を構成する部材よりも、液体の吸収・拡散を複数回繰り返しても、親水性や液の拡散性が低下しにくい部材によって構成されることが望ましい。この理由については後述する。なお、前述した嵩高のエアスルー不織布や、目付が15〜40g/m
2程度のケミカルボンド不織布であれば拡散層50において、そうした親水性や液の拡散性の耐久性を容易に得ることができる。
【0032】
本実施形態では、拡散層50を構成する基材の全体が、吸収体40とバックシート30とに挟まれた領域内に収まっている。これによって、吸収体40とバックシート30との間にシート状の部材を配置するのみで拡散層50を形成することができるため、吸収性物品10Aの製造が容易化される。なお、拡散層50を構成する基材は、吸収体40とバックシート30とに挟まれた領域内に収まっていなくてもよい。拡散層50を構成する基材の外周端部は、吸収体40の外周端部より外側に延び出ていてもよいし、吸収体40のトップシート20側の面の方に折り返されていてもよい。拡散層50を構成する基材は、吸収体40のトップシート20側の面の全体を完全に被覆しないように配置されていればよい。これによって、拡散層50まで到達した液体が、拡散層50を構成する基材を経て逆戻りし、吸収体40のトップシート20側の面全体に行き渡ってしまうことが抑制される。また、拡散層50を構成する基材が、拡散層50としての機能を奏しないような部位に無駄に配置されてしまうことが抑制される。なお、拡散層50を構成する基材は、少なくとも吸収体40のトップシート20側の面を被覆しないように配置される点において、コアラップシート41を構成している基材と区別され得る。
【0033】
本実施形態では、拡散層50は、吸収体40のコアラップシート41に対して部分的に接着されている。これによって、拡散層50には、吸収体40から離れる方向への移動が許容され、吸収体40から離間可能になっている部位が形成されている。そのため、拡散層50が液体を吸収したときには、当該部位において、拡散層50が吸収体40から離れて、液体が入り込める微小な隙間が形成され、吸収体40と拡散層50との間における液体の流通性や保持性が高められる。なお、拡散層50における吸収体40から離間可能な部位は、コアラップシート41に接した状態であってもよい。拡散層50における吸収体40から離間可能な部位は、コアラップシート41に接着されていなければよい。
【0034】
上記のように、拡散層50がコアラップシート41に部分的に接着されていれば、拡散層50の位置ずれを抑制することができる。拡散層50の接着方法としては、例えば、ホットメルト接着材による接着や、熱溶着(ヒートシール)、超音波熱溶着(ソニックシール)などを採用してもよい。また、吸収体40の溝部42を形成する際に拡散層50を、コアラップシート41に包まれた吸収体40の下に配置しておき、溝部42を形成するときの押圧力によって、拡散層50を、コアラップシート41を介して吸収体40に圧着するものとしてもよい。なお、拡散層50は、その位置ずれを抑制するために、バックシート30に対して部分的に、あるいは、全体的に接着されていてもよい。拡散層50は、コアラップシート41に接着されることなく、バックシート30にのみ接着されていてもよい。拡散層50のバックシート30に対する接着方法は、上述したいずれかの接着方法と同様な接着方法であってもよいし、異なる接着方法であってもよい。
【0035】
吸収性物品10Aは、さらに、カバーシート60と、サイドシート70と、を備える。カバーシート60は、バックシート30の下に配置されるシート状の部材である(
図2)。カバーシート60は、吸収性物品10Aが着用者によって着用されたときに、最も外側に位置し、吸収性物品10Aの外装を構成する。カバーシート60は、吸収性物品10Aの強度を高める機能を有する。カバーシート60は、吸収体40とは反対側の面に、手触りが良好になるような表面加工が施されていることが望ましい。
【0036】
カバーシート60は、例えば、織布や不織布によって構成される。不織布としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布などを採用することができる。なお、カバーシート60は、バックシート30と一体化されていてもよいし、カバーシート60の吸収体40側の面に、バックシート30として機能する防水層が形成されるものとしてもよい。この場合には、カバーシート60が本発明における第2シートの下位概念のひとつであると解釈してもよい。
【0037】
カバーシート60には、中部12を含む部位に、前部11側および後部13側よりも幅が小さくなっている括れ部61(
図1)が、幅方向における両側に設けられている。括れ部61は、着用者の大腿部の付け根に接する部位である。なお、本実施形態では、吸収体40の配置領域および溝部22,42の形成領域は、吸収性物品10Aの長さ方向において、括れ部61の形成領域よりも外側にまで延び出ている。
【0038】
吸収性物品10Aでは、両側の括れ部61に沿って、複数の弾性部材62が矢印Xの方向に張り渡されている。弾性部材62は内部に埋設されているため、
図1では、破線で図示されている。
図2において示すように、弾性部材62は、カバーシート60とサイドシート70との間に配置されている。弾性部材62は、糸ゴム、伸縮性不織布、伸縮性樹脂フィルムなどによって構成される。
図1の状態では、弾性部材62は伸長した状態である。弾性部材62が弾性収縮することによって、着用者の太腿部の付け根にフィットするギャザー部(いわゆるレグギャザー)が形成される。このレグギャザーによって、括れ部61から排泄物が漏洩することが抑制される。
【0039】
カバーシート60の後部13には、幅方向における両側の端部にそれぞれ、固定テープ63が矢印Xの方向に突出するように取付けられている(
図1)。また、カバーシート60の前部11における外側の面には、フロントパッチとも呼ばれる固定部64が設けられている。固定テープ63の接着面および固定部64の表面は面ファスナーによって構成される。吸収性物品10Aが着用者に着用されるときには、一対の固定テープ63はそれぞれ、着用者の背中側から腹部側へと取り回されて、固定部64に貼り付けられる。これによって、吸収性物品10Aが着用者に固定される。
【0040】
一対の固定テープ63の間には、弾性部材65が埋設されている。弾性部材65は、例えば、並列に配列された複数の糸ゴムによって構成される。弾性部材65は、トップシート20とカバーシート60との間において幅方向に弾性変形が可能なように、矢印Yの方向に張り渡されている。
図1では、埋設されている弾性部材65を破線で示してある。
図1の状態では、弾性部材65は伸長した状態である。弾性部材65が幅方向に弾性収縮することによって、着用者の腰まわりにフィットするいわゆるギャザー部(いわゆるウェストギャザー)が形成される。このウェストギャザーによって、着用者の背中側から排泄物が漏洩してしまうことが抑制される。
【0041】
吸収性物品10Aでは、一対のサイドシート70が、幅方向の両端部にそれぞれ設けられている(
図1,
図2)。各サイドシート70は、トップシート20より上側において、長さ方向の全体にわたって配置されている。一対のサイドシート70は、幅方向に間隔をあけて配置されており、一対のサイドシート70の間において、トップシート20の表面が外部に露出している。各サイドシート70は、液不透過性を有するシート状の部材によって構成される。各サイドシート70は、カバーシート60と同じ材料によって構成されてもよい。
【0042】
各サイドシート70は、幅方向の外側の端部71において、カバーシート60に接合されている(
図2)。各サイドシート70の端部72は、幅方向における中央側に位置しており、トップシート20の上に配置されている。当該端部72は、トップシート20から離れる方向への移動が可能である。当該端部72は二重に折り返されており、その二重構造の内部に複数の弾性部材73が配置されている。
図1では、弾性部材73は破線で図示されている。
【0043】
弾性部材73は、吸収性物品10Aの長さ方向に弾性変形可能なように、吸収体40の上において矢印Xの方向に張り渡されている。
図1では、弾性部材73は、伸長した状態である。吸収性物品10Aが着用者に着用されるときには、弾性部材62が弾性収縮することによって、サイドシート70の端部72側が、トップシート20の表面から立ち上がり、いわゆる立体ギャザーを形成する。立体ギャザーによって、吸収体40の外側の領域に排泄物が漏洩してしまうことが抑制される。
【0044】
図1,
図2を参照して、溝部22,42を介した液体の吸収について説明する。本実施形態の吸収性物品10Aでは、上述したように、吸収体40のトップシート20側の面に溝部42が形成されている。また、その上に、トップシート20が溝部42に入り込むことによって形成された表面溝部22が形成されている。これによって、着用者から排泄された液体は、吸収体40のトップシート20側の面において溝部22,42に沿って広がりつつ、トップシート20を透過して吸収体40に吸収される(
図1)。このように、本実施形態の吸収性物品10Aでは、溝部22,42によって、トップシート20側における液体成分の拡散範囲が広げられている。
【0045】
また、本実施形態の吸収性物品10Aでは、吸収体40の溝部42は、吸収体40の厚み方向に圧縮されて形成されている(
図2)。そのため、溝部42の下の溝下部位43では、繊維の密度が局所的に高められて繊維間の隙間が小さくなっている。これにより、溝下部位43における毛管力が高められて、溝部42を介した液体の吸収速度が高められている。よって、トップシート20の表面に存在する排泄物の液体成分が短時間で低減され、着用者が不快感を感じることや、かぶれの発生などの着用者の肌荒れの発生が抑制される。
【0046】
図3を参照して、吸収体40と拡散層50との間における液体の挙動を説明する。
図3には、
図2に示された溝部42の近傍領域を抜き出して図示してある。
図3には、液体の移動経路を模式的に示す破線矢印が図示されている。
【0047】
本実施形態の吸収性物品10Aにおける吸収体40の内部では、毛管力が高い溝下部位43に液体が集まりやすい。溝下部位43に集まった液体は、その下に配置されている親水性を有する拡散層50へと導かれ、拡散層50の内部において、拡散層50の厚み方向および吸収体40の下面に沿った方向へと拡散される。拡散層50において拡散した液体の一部は、吸収体40における溝下部位43以外の含有する液体量が少ない部位へと導かれる。このように、本実施形態の吸収性物品10Aによれば、吸収体40の溝下部位43に集められた液体を、拡散層50を介して他の部位へと導くことができる。よって、バックシート30側において液体成分の拡散範囲が広げられている。また、溝下部位43に集まった液体が、トップシート20側へと染み出して逆戻りしてしまうことが抑制される。
【0048】
吸収体40の液体を拡散層50へと移動しやすくするために、拡散層50は、コアラップシート41よりも親水性が高い部材によって構成されていることが望ましい。また、上述したように、拡散層50は、少なくとも、トップシート20を構成する部材よりも、液体の吸収・拡散を複数回繰り返しても、親水性や液の拡散性が低下しにくい部材によって構成されることが望ましい。このような構成であれば、トップシート20において局所的に液体の吸収が繰り返された場合には、トップシート20における当該液体の吸収が繰り返された部位の親水性が、拡散層50の親水性が低下してしまう前に低下する。そのため、その後の液体吸収の際には、トップシート20の表面上において、液体を、親水性が低下している部位以外の親水性が高いままの部位へと導いて吸収することができる。そして、親水性が依然として保持されている拡散層50によって、液体を広い範囲に拡散させることができるとともに保持することができる。従って、着用者による排泄が繰り返された場合に、液体が吸収・保持される領域をさらに広げることができる。なお、トップシート20および拡散層50の親水性は、同じ部位に対して複数回、液体の滴下をおこない、当該液体が内部に浸透して表面から消失するまでの時間が長くなりはじめたときに、低下したと判別することができる。
【0049】
溝部22,42は、以下のような工程によって形成されることが望ましい。
・工程1:溝部42が形成されていない吸収体40を準備し、コアラップシート41で包む。
・工程2:トップシート20、吸収体40、拡散層50、バックシート30を、この順で積層する。このとき、バックシート30の下にカバーシート60が配置されていてもよいし、トップシート20の上にサイドシート70が配置されていてもよい。
・工程3:トップシート20の上から吸収体40を押圧することによって溝部22,42を形成する。
この工程によれば、押圧によって溝部22,42が形成されるときに、拡散層50がクッションとして機能するため、トップシート20やバックシート30の劣化が抑制される。また、表面溝部22と溝部42とを同時に形成していることによって、製造工程において、吸収体40に形成されるプレスパターンの視認による検査が可能である。
【0050】
以上のように、本実施形態の吸収性物品10Aによれば、少なくとも、吸収体40の溝部42と拡散層50の両方を有することによって、液体の吸収性能および保持性能が高められている。その他に、本実施形態の吸収性物品10Aによれば、本実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することが可能である。
【0051】
B.第2実施形態:
図4は、本発明の第2実施形態としての吸収性物品10Bの概略断面図である。第2実施形態の吸収性物品10Bは、吸収体40Bの構成が異なっている点以外は、第1実施形態の吸収性物品10Aとほぼ同じ構成を有している。
図4では、吸収体40Bに含まれる吸収性樹脂の分布状態をドットによって模式的に表してある。
【0052】
第2実施形態の吸収体40Bでは、その厚み方向において、単位体積あたりに含まれる吸収性樹脂の重量が変化しており、それに応じて、単位体積あたりに含まれる吸収性繊維の重量も変化している。吸収体40Bでは、単位体積あたりに含まれる吸収性樹脂の重量は、バックシート30側の方が、トップシート20側よりも大きくなっている。また、単位体積あたりに含まれる吸収性繊維の重量は、トップシート20側の方が、バックシート30側よりも大きくなっている。吸収体40Bでは、トップシート20側の上側半分の領域に、全体の40重量%以下の吸収性樹脂が含まれ、バックシート30側の下側半分の領域に、全体の60重量%以上の吸収性樹脂が含まれていることが望ましい。また、吸収体40Bでは、トップシート20側の上側半分の領域に、全体の60重量%以上の吸収性繊維が含まれ、バックシート30側の下側半分の領域に、全体の60重量%以下の吸収性繊維が含まれていることが望ましい。
【0053】
吸収体40Bは、細かく粉砕された吸収性繊維と吸収性樹脂とを、吸引ドラムに向かって開口しているチャンバー内に供給し、当該チャンバーから、回転している吸引ドラムの表面にそれらを吹き付けて吸着・堆積させてシート状に成形することによって作製される。材料の堆積途中に、チャンバーにおける吸収性繊維の供給口と吸収性樹脂の供給口の少なくとも一方の開口面積を変えて、それらの混合割合を変化させれば、吸収体40Bの厚み方向において、それぞれの単位体積あたりに含まれる重量を変えることができる。供給口の開口面積は、例えば、チャンバー内、あるいは、各供給口内に設けられた可動式の仕切り板などを用いて変更することができる。また、材料の堆積途中において、チャンバー内における各材料の供給口の位置を吸引ドラムに対して相対的に変位させていくことによっても同様な作用を得ることができる。その他にも、複数のチャンバーを吸引ドラムの回転方向に配列し、各チャンバーから吸収性繊維と吸収性樹脂の混合割合が異なる材料を供給させて、吸収性繊維と吸収性樹脂の混合割合が異なる複数の層を積層してもよい。
【0054】
吸収体40Bにおいて、バックシート30側ほど吸収性樹脂の含有量を大きくすることによって、バックシート30側に液体を誘導することができ、拡散層50への液体の移動が促進される。従って、拡散層50を介した液体の拡散移動が促進される。また、吸収体40Bにおいて液体が保持される領域をトップシート20から離すことができ、トップシート20側への液体の逆戻りを抑制することができる。
【0055】
以上のように、第2実施形態の吸収性物品10Bによれば、吸収体40Bに、トップシート20側からバックシート30側へと液体を誘導する構造を持たせることができ、その液体の吸収性能や保持性能をより高めることができる。その他に、第2実施形態の吸収性物品10Bによれば、上記の第1実施形態において説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0056】
C.第3実施形態:
図5は、本発明の第3実施形態としての吸収性物品10Cの構成を示す概略断面図である。第3実施形態の吸収性物品10Cは、拡散層50Cの構成が異なっている点以外は、第1実施形態の吸収性物品10Aとほぼ同じ構成を有している。
【0057】
第3実施形態の拡散層50Cは、幅方向(矢印Yの方向)において、厚み方向への隆起と沈降とを繰り返す波板状の凹凸構造を有している。この凹凸構造によって、拡散層50Cの両側の面には、厚み方向に窪んだ拡散層凹部51,52が形成される。拡散層凹部51は、拡散層50Cの吸収体40側の面においてバックシート30側に窪んでいる凹部である。拡散層凹部52は、拡散層50Cのバックシート30側の面において、吸収体40側に窪んでいる凹部である。拡散層50Cの凹凸構造は、エンボス加工や、プレス加工、ソニック加工によって形成することができる。また、拡散層50Cを構成する基材を、そうした凹凸構造を有するように予め成形して作製してもよい。拡散層50Cは、長さ方向(矢印Xの方向)において、厚み方向への隆起と沈降とを繰り返す波板状の凹凸構造を有していてもよい。拡散層50Cは、吸収体40に向かって隆起している部位においてコアラップシート41に接着される。
【0058】
図5において図示されている拡散層50Cの凹凸構造は、拡散層50Cの製造時における形状である。拡散層50Cが、吸収性物品10Cに組み付けられた後には、拡散層50Cの凹凸構造は潰れた状態になる。それでも、拡散層50Cの吸収体40側の面に拡散層凹部51が形成されていることによって、吸収体40との間には、流路抵抗が小さく、液体が入り込みやすい隙間が形成されるため、拡散層50Cと吸収体40との間における液体の流通性が高められる。また、第3実施形態の拡散層50Cでは、上述したように、バックシート30側の面にも拡散層凹部52が形成されており、その拡散層凹部52によって生じる隙間によっても、拡散層50Cとバックシート30との間における液体の流通性が高められている。
【0059】
第3実施形態の吸収性物品10Cによれば、少なくとも、拡散層凹部51によって、吸収体40と拡散層50Cとの間に形成される隙間空間が、吸収体40の下面に沿った方向に液体を移動させる流路として機能する。そのため、吸収体40において液体が吸収される領域を、さらに広げることができる。その他に、第3実施形態の吸収性物品10Cによれば、上記の第1実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0060】
D.第4実施形態:
図6および
図7を参照して、本発明の第4実施形態としての吸収性物品10Dを説明する。
図6は、第4実施形態の吸収性物品10Dの構成を示す概略平面図である。
図7は、
図6に示す7−7切断における吸収性物品10Dの概略断面図である。
図7には、液体の移動方向の一例を模式的に示す破線矢印を図示してある。第4実施形態の吸収性物品10Dは、吸収体40Dの構成が異なっている点以外は、第1実施形態の吸収性物品10Aとほぼ同じ構成を有している。
【0061】
図7に示すように、第4実施形態の吸収体40Dは、トップシート20側の面に形成された溝部42に加えて、バックシート30側の面に、吸収体40Dを厚み方向に圧縮して形成された裏面側凹部45を備えている。裏面側凹部45は、例えば、エンボス加工によって形成される。吸収体40Dにおける裏面側凹部45の上の部位である圧縮部位46は圧搾されていることによって、当該圧縮部位46および溝下部位43以外の部位よりもその密度が高められている。そのため、圧縮部位46には、溝下部位43と同様に、液体が集まりやすくなっている。
【0062】
裏面側凹部45は、吸収体40Dに重ねて配置されたコアラップシート41の上から吸収体40Dを押圧することによって形成されている。そのため、裏面側凹部45には、コアラップシート41の一部が入り込んでいる。これによって、吸収体40Dとコアラップシート41との密着性が高められている。
【0063】
図6では、便宜上、裏面側凹部45の形成位置を破線によって図示してある。裏面側凹部45は、吸収体40Dから拡散層50の方に見たときに、拡散層50と重なる領域内に形成されている。裏面側凹部45は、複数の並列な直線状の溝部として形成されている。裏面側凹部45を構成する各溝部は、格子状に交差している。裏面側凹部45を構成する各溝部は、吸収体40Dから拡散層50に向かう方向に見たときに、各溝部42からずれた位置に設けられており、溝部42と交差するように延びている。より具体的には、裏面側凹部45を構成する各溝部は、2本の隣り合って延びている溝部42の間において、それら2本の溝部42にほぼ平行に延びている。
【0064】
第4実施形態の吸収性物品10Dによれば、吸収体40Dの溝部42の周りの領域において、液体が、トップシート20側の表面から圧搾により毛管力が高められている圧縮部位46の方へと導かれる。そして、圧縮部位46から裏面側凹部45へと染み出した液体は、裏面側凹部45によって形成される吸収体40と拡散層50との間の流路空間へと流入し、裏面側凹部45に沿って拡散されるとともに、裏面側凹部45内に保持される。このように、裏面側凹部45によって吸収性物品10Dの液体の吸収性能および保持性能が高められている。裏面側凹部45は、
図6および
図7に示されている溝状の構成に限定されることはなく、例えば、次のような構成を採用することもできる。
【0065】
図8および
図9を参照して、他の構成例としての裏面側凹部45aの構成を説明する。
図8は、裏面側凹部45aが設けられた吸収体40Daを備える吸収性物品10Daの概略正面図である。
図9は、
図8に示す9−9切断における吸収性物品10Daの概略断面図である。
図8および
図9はそれぞれ、異なる構成の裏面側凹部45aが図示されている点以外は、
図6および
図7とほぼ同じである。
【0066】
この構成例では、裏面側凹部45aは、矢印Yの方向に直線状に延びる複数の並列な溝部として構成されている。
図8に示すように、裏面側凹部45aを構成する各溝部は、吸収体40から拡散層50に向かう方向に見たときに、吸収体40のトップシート20側の面において格子状に交差している溝部42の各交点を通っている。裏面側凹部45aの構成であっても、
図6および
図7で説明した裏面側凹部45と同様な効果を奏することができる。
【0067】
図10および
図11を参照して、もう一つの他の構成例としての裏面側凹部45bの構成を説明する。
図10は、裏面側凹部45bが設けられた吸収体40Dbを備える吸収性物品10Dbの概略正面図である。
図11は、
図10に示す11−11切断における吸収性物品10Dbの概略断面図である。
図10および
図11はそれぞれ、構成が異なる裏面側凹部45bが図示されている点以外は、
図6および
図7とほぼ同じである。
【0068】
この構成例では、裏面側凹部45bは、複数の点在する窪み部として形成されている。
図10に示されているように、裏面側凹部45bを構成する各窪み部は、吸収体40から拡散層50に向かう方向に見たときに、吸収体40のトップシート20側の面において格子状に交差している溝部42に囲まれたマス目内に形成されている。裏面側凹部45bの構成であれば、毛細管現象によって裏面側凹部45b内への液体の移動が促進されるとともに、裏面側凹部45b内に液体を保持させることができる。
【0069】
以上のように、第4実施形態の吸収性物品10Dによれば、吸収体40Dのバックシート30側の面に形成された裏面側凹部45,45a,45bによって、液体の吸収性能および保持性能が高められる。その他に、第4実施形態の吸収性物品10Dによれば、第1実施形態で説明したのと同様な種々の作用効果を奏することができる。
【0070】
E.変形例:
上記の各実施形態で説明した構成は、以下のように変形することも可能である。なお、以下の説明では、特に断らない限り、上記の各実施形態で説明した吸収性物品10A〜10D,10Da,10Dbを区別することなく、「吸収性物品10」と呼ぶ。また、同様に、吸収体40,40B,40D,40Da,40Dbについても、区別することなく、「吸収体40」と呼び、拡散層50,50Cを区別することなく、「拡散層50」と呼ぶ。
【0071】
E1.変形例1:
上記の各実施形態において、各吸収体40には、略格子状に交差する複数の並列な直線状の溝部42が形成されているが、溝部42の構成は、上記の各実施形態の構成に限定されることはない。溝部42は、直線状に形成されていなくてもよく、例えば、曲線状に形成されていてもよい。また、溝部42の幅は一定でなくてもよく、部位ごとに変化してもよい。溝部42は、格子状に交差していなくてもよく、例えば、網目状に交差していてもよいし、全ての溝部42が一点で交差して放射状に延びていてもよい。また、溝部42は、互いに交差しないように形成されていてもよく、例えば、全ての溝部42が互いに平行に延びていてもよいし、全ての溝部42が互いに交差することなく放射状に延びていてもよい。複数の溝部42は、それぞれ深さが異なっていてもよいし、場所ごとに深さが変化していてもよい。上記の各実施形態において溝部42は、吸収体40をその厚み方向に圧縮して形成されており、密度が局所的に高められている部位を下方に有している。これに対して、溝部42は、吸収体40を厚み方向に圧縮して形成されたものでなくてもよく、密度が局所的に高められた部位を下方に有していなくてもよい。溝部42は、吸収体40を構成材料の量を他の部位よりも低減させることによって形成されてもよい。このような構成であっても、溝部42の下方部位に透過した液体を、拡散層50によって、溝部42の下方以外の部位に拡散することができる。
【0072】
E2.変形例2:
上記の各実施形態では、拡散層50は、吸収体40のコアラップシート41に対して、部分的に接着されている。これに対して、拡散層50は、コアラップシート41に対して、全体が接着されていない状態で、つまり、吸収体40に対して拘束されていない状態で、配置されていてもよい。これによって、拡散層50をより簡易に形成することが可能になる。
【0073】
E3.変形例3:
上記の各実施形態において、吸収体40は、コアラップシート41に包まれている。これに対して、吸収体40は、コアラップシート41に包まれていなくてもよい。コアラップシート41は省略されてもよい。この場合には、拡散層50は、吸収体40に直接的に接触するように配置されていてもよい。
【0074】
E4.変形例4:
上記の各実施形態において、コアラップシート41は一枚のシート状部材によって構成されている。これに対して、コアラップシート41は、複数枚のシート状部材を重ねて構成されてもよい。この構成において、吸収体40の下方においてコアラップシート41が二重に重ねられた構成になっており、下側の層を構成するシート状部材が、吸収体40のトップシート20側の面を被覆しないように配置されている場合には、そのシートは、拡散層50であると解釈できる。
【0075】
E5.変形例5:
上記の各実施形態の吸収性物品10においては、トップシート20の一部が溝部42に入り込んで形成された表面溝部22が形成されている。これに対して、吸収性物品10には、表面溝部22が形成されていなくてもよい。こうした構成は、吸収体40に溝部42を形成した後に、トップシート20を吸収体40の上に積層する工程によって実現することができる。
【0076】
E6.変形例6:
上記第2実施形態における吸収体40Bでは、単位体積あたりに含まれる吸収性樹脂の重量が厚み方向に変化している。吸収体40Bは、例えば、単位体積あたりに含まれる吸収性樹脂の重量が異なる複数のシート状の吸収体を積層した多層構造によって構成されていてもよい。
【0077】
E7.変形例7:
上記第3実施形態では、拡散層50Cが波板状に凹凸している凹凸構造を有することによって、拡散層50Cの吸収体40側の面に、バックシート30側に窪んでいる拡散層凹部51が形成されている。これに対して、拡散層50Cを波板状にすることなく、拡散層凹部51を形成してもよい。例えば、拡散層50Cをプレスして局所的に厚みを薄くすることによって拡散層凹部51を形成してもよい。また、切削や溶融によって、拡散層50Cを局所的に薄型化することによって拡散層凹部51を形成してもよい。また、上記の第3実施形態では、拡散層50Cのバックシート30側の面に、拡散層凹部51とは反対側に窪んでいる拡散層凹部52が形成されている。拡散層50Cには、吸収体40側の拡散層凹部51が省略されて、前述のバックシート30側の拡散層凹部52のみが形成されていてもよい。
【0078】
E8.変形例8:
上記第4実施形態では、3種類の裏面側凹部45,45a,45bの構成が説明されている。これに対して、吸収体40の拡散層50側の面には、他の構成を有する裏面側凹部が形成されてもよい。例えば、裏面側凹部は、上記の変形例2において溝部42の変形例として説明したような種々の構成の溝部として形成されてもよい。裏面側凹部は、略四角形状の開口形状を有する凹部や、他の多角形の開口形状を有する凹部として形成されてもよい。
【0079】
E9.変形例9:
上記各実施形態の吸収性物品10は、テープ型の紙おむつとして構成されている。これに対して、吸収性物品10は、テープ型の紙おむつとして構成されていなくてもよく、例えば、パンツ型の紙おむつとして構成されていてもよい。吸収性物品10は、紙おむつに限定されることはなく、紙おむつ以外にも、尿取りパッドやナプキン、その他の生理用品として構成されてもよいし、汚水を吸収する清掃用品として構成されてもよい。
【0080】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。