特許第6840987号(P6840987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840987
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】ハブユニットの製造装置
(51)【国際特許分類】
   B21J 9/02 20060101AFI20210301BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20210301BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20210301BHJP
   B21K 1/05 20060101ALI20210301BHJP
   B21D 39/00 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   B21J9/02 A
   B60B35/02 L
   F16C19/18
   B21K1/05
   B21D39/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-207523(P2016-207523)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-69246(P2018-69246A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100195903
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】米道 淳
【審査官】 大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−060267(JP,A)
【文献】 特開2016−074024(JP,A)
【文献】 特開平10−309612(JP,A)
【文献】 特表平10−512201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 9/02
B21D 39/00
B21K 1/05
B60B 35/02
F16C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブユニットの内軸の端部を押圧変形させて前記ハブユニットを製造する装置であって、
軸方向の一端部に雄ねじ部を有する回転軸、を含む主軸と、
前記雄ねじ部に対応する雌ねじ部を有し、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との締結によって前記主軸に取り付けられるヘッドと、
前記主軸と前記ヘッドとの間に配置され、前記雄ねじ部の周りに並ぶ複数のスペーサユニットと前記複数のスペーサユニットが内周にそれぞれ着脱可能に取り付けられる円環部材とを有するスペーサと、を備える、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記複数のスペーサユニットは、前記円環部材の径方向外方にそれぞれ取り外し可能に構成される、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記回転軸は、さらに、
前記雄ねじ部に隣接して設けられ、前記円環部材の外径と等しい外径を有する台座部、を有する、装置。
【請求項4】
請求項1から3にいずれか1項に記載の装置であって、
前記複数のスペーサユニットは、等間隔に配置されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハブユニットの製造装置に関し、より詳細には、ハブユニットの内軸の端部を押圧及び変形させてハブユニットを製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の軸受装置であるハブユニットは、内軸と、外輪と、複数の転動体とを備える。内軸の端部には内輪が固定される。内軸及び内輪は、外周に軌道面を有する。外輪は、内軸及び内輪の軌道面に対応する軌道面を内周に有する。複数の転動体は、各軌道面上に配置される。
【0003】
内輪を内軸に固定する方法として、例えば、かしめ固定が挙げられる。すなわち、内軸の端部を押圧して径方向外方に塑性変形させ、内輪の端面に接触させることにより、内軸に内輪を固定することができる。かしめ固定は、下記の各特許文献に記載されているような装置を使用して行われる。
【0004】
特許文献1に記載の装置は、かしめ治具が固定されるヘッドを備える。当該装置を使用する際には、ヘッドを所定のストローク量だけ下降させ、受け台に載置されたハブユニットにかしめ治具を接触させる。
【0005】
特許文献2に記載の装置では、スピンドルのヘッドに金型が保持されている。金型は、スピンドルの軸線に対して所定角度傾いている。当該装置を使用する際には、金型によって内軸の端部を押圧しながら、スピンドルを軸線周りに回転させて金型を揺動回転させる。
【0006】
特許文献3に記載の装置は、軸部及びパンチホルダを有するヘッドを備える。軸部及びパンチホルダは、ヘッドの軸線に対して所定角度だけ傾斜した軸線の周りに回転自在に支持されている。パンチホルダには、パンチが取り付けられる。当該装置を使用する際には、ヘッドを降下させて内軸の端部にパンチを押し付ける。このとき、ヘッドは軸線を中心に回転している。パンチは、軸部及びパンチホルダとともにヘッドの軸線の周囲を旋回する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−206191号公報
【特許文献2】特開2015−77616号公報
【特許文献3】特開2016−60267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記各特許文献の装置において、ヘッドは、主軸に取り付けられる。ヘッドは、ねじによって主軸の回転軸と締結される。ヘッドと回転軸とを締結するねじは、一般に、締まる方向が回転軸の回転方向と一致する。すなわち、当該ねじは、いわゆる締まり勝手の構造となっている。このため、装置を使用するほどねじが強く締まってしまい、装置のメンテナンスの際、ヘッドの交換作業に時間を要するという問題がある。
【0009】
ハブユニットが大型になると、内軸の端部の寸法も当然大きくなる。この場合、内軸の端部を塑性変形させる装置では、内軸の端部への加圧力や、主軸の回転軸を回転させるトルクを大きくする必要がある。その結果、ねじの締まりがより強くなってしまい、装置のメンテナンス時にヘッドを主軸から取り外すことができないという事態が生じ得る。
【0010】
本開示は、ハブユニットの内軸の端部を押圧変形させてハブユニットを製造する装置のメンテナンス性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る装置は、ハブユニットの内軸の端部を押圧変形させてハブユニットを製造する装置である。装置は、主軸と、ヘッドと、スペーサとを備える。主軸は、回転軸を含む。回転軸は、軸方向の一端部に雄ねじ部を有する。ヘッドは、雌ねじ部を有する。雌ねじ部は、雄ねじ部に対応する。ヘッドは、雄ねじ部と雌ねじ部との締結によって主軸に取り付けられる。スペーサは、主軸とヘッドとの間に配置される。スペーサは、複数のスペーサユニットを有する。複数のスペーサユニットは、雄ねじ部の周りに並ぶ。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ハブユニットの内軸の端部を押圧変形させてハブユニットを製造する装置のメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係るハブユニットの製造装置の概略構成を示す分解図である。
図2図2は、図1に示す製造装置が備えるスペーサの斜視図である。
図3図3は、図2に示すスペーサの平面図である。
図4図4は、図2に示すスペーサの側面図である。
図5図5は、図1に示す製造装置の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態に係る装置は、ハブユニットの内軸の端部を押圧変形させてハブユニットを製造する装置である。装置は、主軸と、ヘッドと、スペーサとを備える。主軸は、回転軸を含む。回転軸は、軸方向の一端部に雄ねじ部を有する。ヘッドは、雌ねじ部を有する。雌ねじ部は、雄ねじ部に対応する。ヘッドは、雄ねじ部と雌ねじ部との締結によって主軸に取り付けられる。スペーサは、主軸とヘッドとの間に配置される。スペーサは、複数のスペーサユニットを有する。複数のスペーサユニットは、雄ねじ部の周りに並ぶ(第1の構成)。
【0015】
第1の構成によれば、主軸とヘッドとの間にスペーサが配置されている。このスペーサによって、主軸の雄ねじ部とヘッドの雌ねじ部との締まりが抑制される。よって、雄ねじ部と雌ねじ部との締結が解除されやすく、主軸からヘッドを容易に取り外すことができる。
【0016】
第1の構成によれば、スペーサは、複数のスペーサユニットを有する。スペーサユニットは、主軸とヘッドとの間からそれぞれ単独で取り出すことができる。スペーサユニットの少なくとも一部を取り出せば、主軸及びヘッドとスペーサとの接触のバランスが崩れる。これにより、主軸の雄ねじ部とヘッドの雌ねじ部との間に緩みが生じ、雄ねじ部と雌ねじ部との締結を容易に解除することができる。よって、主軸からヘッドを容易に取り外すことができる。
【0017】
このように、第1の構成によれば、ヘッドの取外しが容易になり、装置のメンテナンス性を向上させることができる。
【0018】
スペーサは、さらに、円環部材を有していてもよい。円環部材の内周には、複数のスペーサユニットが取り付けられる(第2の構成)。
【0019】
第2の構成によれば、スペーサユニットが円環部材の内周に取り付けられている。すなわち、スペーサユニットが円環部材によってまとめられ、スペーサの形状が全体として円環状になる。このため、スペーサの軸心と主軸及びヘッドの軸心との位置合わせをしやすくなり、スペーサの位置決めを容易に行うことができる。
【0020】
回転軸は、さらに、台座部を有していてもよい。台座部は、雄ねじ部に隣接して設けられる。台座部は、円環部材の外径と等しい外径を有する(第3の構成)。
【0021】
第3の構成によれば、スペーサの円環部材の外径が、主軸の回転軸の台座部の外径と等しい。このため、円環部材の外周と台座部の外周を一致させるだけで、主軸に対するスペーサの位置を定めることができる。よって、スペーサの位置決めをより容易且つ正確に行うことができる。
【0022】
複数のスペーサユニットは、等間隔に配置されていてもよい(第4の構成)。
【0023】
第4の構成によれば、スペーサユニットが等間隔に配置されているため、主軸及びヘッドとスペーサとを安定して接触させることができる。よって、主軸及びヘッドがスペーサによって傾くのを防止することができる。このため、主軸とヘッドとの間にスペーサを介在させた場合であっても、高い加工精度を維持することができる。
【0024】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。説明の便宜上、各図において、構成を簡略化又は模式化して示したり、一部の構成を省略して示したりする場合がある。
【0025】
[製造装置の構成]
図1は、実施形態に係るハブユニットの製造装置10の分解図である。図10には、直線Xを含む平面で切断した製造装置10の断面(縦断面)を示している。直線Xは、製造装置10の軸心である。
【0026】
図1に示すように、製造装置10は、主軸1と、ヘッド2と、スペーサ3とを備える。以下、説明の便宜上、製造装置10において、主軸1側を上、ヘッド2側を下という。また、直線Xが延びる方向を軸方向又は上下方向、直線Xに直交する各方向を径方向という。
【0027】
主軸1は、例えば、鋼等の金属で形成される。主軸1は、ハウジング11と、回転軸12とを有する。ハウジング11は、直線Xを軸心とする概略円筒状をなす。回転軸12は、直線Xを軸心とする概略円柱状をなす。ハウジング11内には、回転軸12が配置される。ハウジング11と回転軸12との間には、玉軸受13a,13b,13c等が設けられる。回転軸12は、軸心Xを中心として回転するよう構成される。回転軸12は、例えば流体圧やボールねじ等を利用して、ハウジング11に対して相対的に上下動するよう構成される。
【0028】
回転軸12は、軸本体121と、台座部122と、雄ねじ部123とを有する。軸本体121、台座部122、及び雄ねじ部123は、回転軸12の上から下に向かってこの順で配置されている。
【0029】
軸本体121は、ハウジング11内で上下方向に延びている。軸本体121の上端は、回転軸12に回転力を与えるためのモータ(図示略)に、直接又は間接的に接続されている。
【0030】
台座部122は、軸本体121の下端に接続されている。台座部122は、回転軸12において、雄ねじ部123に隣接して設けられる。台座部122は、軸本体121と雄ねじ部123との間に配置されている。台座部122及び雄ねじ部123は、ハウジング11から下方に突出している。
【0031】
台座部122は、軸本体121から径方向外方に突出している。台座部122は、直線Xを軸心とする円柱状をなす。すなわち、台座部122は、下面視で、実質的に円形をなす。
【0032】
台座部122は、外径D122を有する。外径D122は、台座部122の下面の直径である。台座部122の外径D122は、軸本体121の外径D121よりも大きい。外径D121は、軸本体121と台座部122との境界位置における軸本体121の直径とする。
【0033】
雄ねじ部123は、回転軸12の軸方向の一端部(下端部)に配置されている。雄ねじ部123は、回転軸12の下端部の外周面に形成される。雄ねじ部123は、回転軸12において、台座部122よりも下方に配置される。雄ねじ部123は、直線Xを軸線とするねじである。
【0034】
雄ねじ部123は、外径D123を有する。外径D123は、雄ねじ部123の最大外径(直径)である。雄ねじ部123の外径D123は、台座部122の外径D122よりも小さい。
【0035】
主軸1には、ヘッド2が着脱可能に取り付けられる。ヘッド2は、鋼等の金属で形成することができる。ヘッド2は、ハウジング21と、軸部22と、雌ねじ部23とを有する。
【0036】
ハウジング21は、軸部22を支持している。ハウジング21は、その内周面において、玉軸受24a及び針状ころ軸受24b,24c等を介して軸部22を支持する。ハウジング21は、雌ねじ部23用の穴211を有する。穴211は、ハウジング21の上面に開口している。穴211は、直線Xを軸心とする円筒状をなす。
【0037】
軸部22は、直線Yを軸心とする円柱状又は円筒状をなす。軸部22は、製造装置10の軸心Xに対して所定角度θ22だけ傾斜している。すなわち、軸部22の軸心Yは、製造装置の軸心Xと角度θ22をなす。軸部22は、軸心Yを中心として回転可能なようハウジング21に支持される。
【0038】
軸部22の下端部には、金型4が取り付けられる。金型4は、軸部22に対し、ボルト等によって着脱可能に取り付けられる。金型4は、軸部22に取り付けられた状態で、直線Yを軸心とする概略円柱状又は円筒状をなす。金型4の下面には、例えば、凹状の押圧部41が設けられる。押圧部41は、例えば、直線X及びYを含む断面視で、概略円弧状である。
【0039】
雌ねじ部23は、ハウジング21の穴211の側壁に形成される。雌ねじ部23は、主軸1の雄ねじ部123に対応する。すなわち、雌ねじ部23は、雄ねじ部123とかみ合うねじである。雄ねじ部123及び雌ねじ部23は、例えば、M60ねじである。回転軸12の下端部を穴211に挿入し、雄ねじ部123と雌ねじ部23とを締結することにより、ヘッド2が主軸1に取り付けられる。
【0040】
スペーサ3は、主軸1とヘッド2との間に配置される。スペーサ3は、主軸1及びヘッド2と同軸に配置される。主軸1とヘッド2との間にスペーサ3を挟んだ状態で、主軸1の雄ねじ部123とヘッド2の雌ねじ部23とが締結される。
【0041】
以下、スペーサ3の構造について詳細に説明する。図2は、スペーサ3の斜視図である。
【0042】
図2に示すように、スペーサ3は、複数のスペーサユニット31と、円環部材32とを有する。本実施形態において、スペーサ3は、8つのスペーサユニット31を有する。しかしながら、スペーサユニット31の数は、8つ未満であってもよいし、9つ以上であってもよい。スペーサユニット31の数は、スペーサ3のサイズ等に応じて適宜決定すればよい。
【0043】
複数のスペーサユニット31は、直線Xの周りに並んでいる。スペーサユニット31は、直線Xを軸心とする仮想円上に並んでいる。図1に示す製造装置10を組み立てた状態では、スペーサユニット31は、主軸1の雄ねじ部123の周りに並ぶ。
【0044】
円環部材32は、直線Xを軸心とする円環状をなす。円環部材32の内周には、スペーサユニット31が取り付けられている。各スペーサユニット31は、着脱可能に取り付けられる。各スペーサユニット31は、例えば、少なくとも1つのノックピン33によって円環部材32に取り付けられる。
【0045】
円環部材32は、複数部分に分割されている。本実施形態では、円環部材32は、それぞれ半円状の第1部分321と第2部分322とで構成されている。円環部材32は、3つ以上の部分に分割されていてもよい。
【0046】
スペーサユニット31の材質は、特に限定されるものではないが、鉄又は鉄合金(鋼)等の金属であることが好ましい。円環部材32の材質も、特に限定されるものではない。円環部材32の材質は、スペーサユニット31と同様に鉄又は鋼等の金属であってもよいが、樹脂等とすることもできる。
【0047】
図3は、スペーサ3の平面図である。図3に示すように、複数のスペーサユニット31は、全体として円環状を形成する。スペーサユニット31の各々は、概略扇状をなす。
【0048】
スペーサユニット31は、実質的に等間隔に配置されている。本実施形態では、スペーサ3の平面視において、スペーサ3の軸心X及び各スペーサユニット31の中心を通る直線を各スペーサユニット31の中心線L31として、隣り合うスペーサユニット31の中心線L31間の角度θ31をスペーサユニット31の間隔と定義する。スペーサユニット31が等間隔に配置されている場合、角度θは、(360°/スペーサユニット31の数)で求められる。本実施形態では、8つのスペーサユニット31が等間隔に設けられているため、角度θ31は45°である。
【0049】
スペーサユニット31は、円環部材32の内周面に取り付けられている。円環部材32の内周面のうち、スペーサユニット31が取り付けられる部分の面積は、スペーサユニット31が取り付けられない部分の面積と実質的に同じであるか、スペーサユニット31が取り付けられない部分の面積よりも大きいことが好ましい。
【0050】
複数のスペーサユニット31によって構成される円環の内径D31は、主軸1の雄ねじ部123の外径D123(図1)よりも大きい。すなわち、製造装置10を組み立てたときに、スペーサ3が雄ねじ部123に接触しない。
【0051】
図4は、スペーサ3の側面図である。図4に示すように、各スペーサユニット31の厚みT31は、円環部材32の厚みT32よりもわずかに大きい。円環部材32の外径D32は、主軸1の台座部122の外径D122(図1)と実質的に等しい。
【0052】
スペーサユニット31の厚みT31は、例えば、10〜15mm程度とすることができる。円環部材32の厚みT32は、スペーサユニット31の厚みT31よりも1〜3mm程度小さくすることができる。
【0053】
[製造装置の使用方法]
次に、製造装置10の使用方法について説明する。図5は、製造装置10の使用状態を示す図である。製造装置10は、ハブユニット20の内軸の端部を押圧変形させるために使用される。
【0054】
図5に示すように、加工対象のハブユニット20は、外輪5と、内軸6と、内輪7と、複数列の転動体81,82とを備える。
【0055】
外輪5は、外輪本体51と、外輪フランジ52とを有する。外輪本体51は、概略円筒状をなす。外輪フランジ52は、外輪本体51の外周面から径方向外方に突出する。
【0056】
内軸6は、外輪5に挿入される。内軸6は、外輪5と同軸に配置される。内軸6は、内軸本体61と、内軸フランジ62とを有する。内軸本体61は、概略円柱状をなす。内軸フランジ62は、内軸本体61の外周面から径方向外方に突出する。内軸本体61の軸方向の一端側には、内輪7が装着される。
【0057】
外輪5と内軸6及び内輪7との間には、転動体81,82が配置される。
【0058】
ハブユニット20のうち、内軸6の軸方向の一端部、つまり内輪7が装着されている側の内軸本体61の端部611が、製造装置10によって加工される。加工に際し、内軸本体61の端部611が上側になるように、ハブユニット20を支持台等に載置する。図5において二点鎖線で示すように、製造装置10による加工の前には、内軸本体61の端部611は、ハブユニット20の軸方向に沿って延びる円筒状となっている。
【0059】
製造装置10は、ハブユニット20の上方に配置される。製造装置10は、その軸心Xがハブユニット20の軸心と一致するように配置される。内軸本体61の端部611の加工時には、主軸1の回転軸12及びヘッド2が降下し、金型4の押圧部41によって端部611が押圧される。
【0060】
加工の間、回転軸12は軸心Xを中心に回転する。ヘッド2は、回転軸12とともに軸心Xを中心に回転する。ヘッド2の軸部22が軸心Xに対して傾斜していることにより、軸部22及び金型4は、軸心Xの周りを旋回する。
【0061】
内軸本体61の端部611は、金型4によって押し広げられる。端部611は、径方向外方に塑性変形して内輪7の端面に接触する。すなわち、端部611がかしめられ、内軸6にかしめ部612が形成される。かしめ部612により、内輪7が内軸61に固定される。
【0062】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る製造装置10では、主軸1とヘッド2との間にスペーサ3が配置されている。このスペーサ3によって、回転軸12の雄ねじ部123とヘッド1の雌ねじ部23との締まりが抑制される。よって、雄ねじ部123と雌ねじ部23との締結が解除されやすく、主軸1からヘッド2を容易に取り外すことができる。
【0063】
本実施形態に係る製造装置10によれば、スペーサ3は、複数のスペーサユニット31を有している。スペーサユニット31は、雄ねじ部123の周りに並んでいる。主軸1からヘッド2を取り外す際には、各スペーサユニット31を主軸1とヘッド2との間から法線方向(径方向外方)に引き抜くことができる。これにより、雄ねじ部123と雌ねじ部23との間に緩みが生じ、雄ねじ部123と雌ねじ部23との締結を容易に解除することができる。よって、主軸1からヘッド2を容易に取り外すことができる。
【0064】
ヘッド2の取外しに際しては、スペーサユニット31の少なくとも一部を主軸1とヘッド2との間から引き抜けばよい。これにより、主軸1及びヘッド2とスペーサ3との接触のバランスが崩れ、雄ねじ部123が雌ねじ部23から抜けやすくなる。このため、ヘッド2の取外しを簡単に行うことができる。
【0065】
このように、本実施形態によれば、ヘッド2の取外しが容易になり、製造装置10のメンテナンス性を向上させることができる。
【0066】
本実施形態に係る製造装置10では、スペーサユニット31が円環部材32の内周に取り付けられている。すなわち、複数のスペーサユニット31が円環部材32によってまとめられ、スペーサ3の形状が全体として円環状になっている。このため、スペーサ3の軸心と主軸1及びヘッド2の軸心とを位置合わせしやすくなり、スペーサ3の位置決めを容易に行うことができる。
【0067】
主軸1とヘッド2との間からスペーサユニット31を引き抜く際には、まず、スペーサユニット31から円環部材32を取り外せばよい。本実施形態の場合、公知のノックピン抜きを利用してノックピン33を取り外す。続いて、円環部材32の第1部分321又は第2部分322を取り外し、スペーサユニット31を法線方向に取り出す。スペーサユニット31は、円環部材32の締結用のねじ穴を利用して、ノックピン抜きで取り出すことができる。
【0068】
本実施形態に係る製造装置10では、スペーサ3の円環部材32の外径D32が、主軸1の台座部122の外径D122と等しい。このため、円環部材32の外周を台座部122の外周に一致させるだけで、主軸1に対するスペーサ3の位置を定めることができる。よって、スペーサ3の位置決めをより容易且つ正確に行うことができる。
【0069】
本実施形態に係る製造装置10では、スペーサユニット31が等間隔に配置されているため、主軸1及びヘッド2とスペーサ3とを安定して接触させることができる。よって、主軸1及びヘッド2がスペーサ3によって傾くのを防止することができる。このため、主軸1とヘッド2との間にスペーサ3を介在させた場合であっても、高い加工精度を維持することができる。
【0070】
本実施形態に係る製造装置10において、複数のスペーサユニット31は、互いに間隔を空けて配置されている。このようにすることで、各スペーサユニット31のサイズが小さくなる。よって、各スペーサユニット31と主軸1及びヘッド2との接地面積を小さくすることができる。このため、各スペーサユニット31を主軸1とヘッド2との間から取り出しやすくなり、主軸1からヘッド2を取り外す作業がより容易になる。
【0071】
以上、実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0072】
上記実施形態において、複数のスペーサユニットは、互いに間隔を空けて配置されている。しかしながら、スペーサユニットは、間隔を空けず、互いに接触した状態で配置されてもよい。
【0073】
上記実施形態において、円環部材の外径は台座部の外径と実質的に等しい。しかしながら、円環部材の外径が台座部の外径よりも大きくてもよいし、円環部材の外径が台座部の外径よりも小さくてもよい。
【0074】
上記実施形態では、複数のスペーサユニットが円環部材に取り付けられている。しかしながら、スペーサユニットは、円環部材に取り付けられていなくてもよい。すなわち、スペーサが円環部材を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10:製造装置
1:主軸
12:回転軸
122:台座部
123:雄ねじ部
2:ヘッド
23:雌ねじ部
3:スペーサ
31:スペーサユニット
32:円環部材
図1
図2
図3
図4
図5