(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係るイヤホンを、実施例1のイヤホン51及び実施例2のイヤホン52により説明する。
(実施例1)
実施例1のイヤホン51を
図1〜
図3を参照して説明する。以下の説明において、前後方向を
図1に矢印で示される方向に規定する。前方は、イヤホン51の使用状態における頭部側である。
【0014】
イヤホン51は、振動板SPaを有し放音面が前方側となる姿勢で配置されたスピーカユニットSPと、スピーカユニットSPを内部に収容したハウジング1と、を有する。
ハウジング1は、スピーカユニットSPを支持するためのリブ2cを有する前ハウジング2と、前ハウジング2の後方側に組み付けられ、前ハウジング2と共にスピーカユニットSPの後方側にバックキャビティVbを形成する後ハウジング3と、スピーカユニットSPを支持するためのリブ5cを有し前ハウジング2の内面に取り付けられたサポータ5と、を含んで構成される。
【0015】
前ハウジング2は、底板としての前壁2aを有する有底円筒状に形成されている。
前壁2aには、貫通孔2b1を有する筒状にて前方突出する音筒部2bが形成されている。
【0016】
音筒部2bには、シリコーンゴムなどの材料で柔軟性を有するよう形成されたイヤーピース4が、着脱自在に取り付けられている。
すなわち、ハウジング1は、イヤーピースが装着される音筒部2bを有する。
【0017】
また、前壁2aには、後方に向け延びる既述のリブ2cが形成されている。
リブ2cは、所定の角度範囲を欠いた円弧状に形成されており、この欠落した部分を補完する円弧状のリブ5cを有するサポータ5が、前ハウジング2の内面に固定されている。
リブ2c及びリブ5cにより円形のリブRbが構成され、リブRbの先端部分には、スピーカユニットSPが接着等により実質的に密着状態で取り付けられている。
これにより、前ハウジング2の音筒部2bを除く部分におけるスピーカユニットSPの前方側の空間Vhfと音筒部2bの内部の空間Vtとが連通した前方空間Vfが形成されている。すなわち、イヤホン51は、前方空間Vfを形成する前方気室R1を備えている。
【0018】
前ハウジング2,後ハウジング3,及びサポータ5は、硬質の樹脂又は金属で形成される。
【0019】
図2は、イヤーピース4を装着していない状態の音筒部2bを、前方から見た前面図である。
図1及び
図2に示されるように、音筒部2bには、その先端面2b2に開口し、貫通孔2b1と平行に延びる孔として通気路6aが形成されている。通気路6aの内径φaは限定されるものではないが、貫通孔2b1の内径φbの半分よりも小さく設定される。例えば、φb/φa=5とし、φa=0.5mm、φb=2.5mmとする。
図1〜
図3には、φb/φaの値が5よりも小さい場合をイメージして示されている。
【0020】
サポータ5と前ハウジング2との間には、通気路6aと同様の孔状空間となる通気路6bが、前ハウジング2の内面に沿って、前ハウジング2の前後方向に延びるように形成されている。
通気路6bの前端は、接続点Paにおいて、通気路6aの後端に接続している。通気路6bは通気路6aと同じ内径φaで形成されている。
通気路6bの後端側は、前ハウジング2の後端面2dに開口している。
【0021】
図1において、後ハウジング3は、底板として後壁3aを有する有底円筒状に形成されている。
後ハウジング3の開放された前端部と前ハウジング2の開放された後端部とが接着或いは容着などにより連結されて、ハウジング1が形成されている。
イヤホン51では、スピーカユニットSPの後面及び側面と、前ハウジング2の内面と、後ハウジングの内面と、により、後方気室R2が形成されている。後方気室R2の内部空間が既述のバックキャビティVbである。
【0022】
後ハウジング3の後端部には、全周にわたり後方に突出し、円板部材を係合支持する支持環部3bが形成されている。
【0023】
後ハウジング3には、前端が通気路6bと接続点Pbで連通すると共に後端が後壁3aの後面3a1に開口するよう前後方向に延びる通気路6cが形成されている。
通気路6cは、通気路6bと同じ内径φaで形成されている。
【0024】
これにより、イヤホン51には、通気路6aと通気路6bと通気路6cとにより、前方端が音筒部2bの先端面2b2に開口し、後方端が後面3a1に開口部6c1として開口する一本の通気路6が形成されている。
通気路6は、ハウジング1の内部空間である前方空間Vf及びバックキャビティVbに連通することなく独立に形成されている。
【0025】
図3は、イヤホン51を後方から見た後面図である。また、
図1は、
図3におけるS1−S1位置での断面図に相当する。
図1及び
図3に示されるように、イヤホン51は、オーナメントプレート7を有する。
【0026】
オーナメントプレート7は、円板状であって、中心が後ハウジング3の軸線CL3の位置と合致して配置されている。
オーナメントプレート7は、後ハウジング3に形成された既述の支持環部3bにより、軸線CL3まわりに回動自在に支持されている。
支持環部3bは、オーナメントプレート7を指によって回動できるように支持している。
【0027】
オーナメントプレート7を、少なくとも一つの回動位置(以下、開位置とも称する)(
図3(a)参照)にしたときに、通気路6の開口部6c1を開放して外部空間Vgと連通させる開放部7aを有している。
この例において、開放部7aは、外周縁から中心に向け切り込まれたU字切り欠きとされている。
また、オーナメントプレート7は、少なくとも一つの他の回動位置(以下、閉位置とも称する)(
図3(b)参照)にしたときに、通気路6の開口部6c1を塞いで通気路6と外部空間Vgとを非連通にする。
【0028】
すなわち、オーナメントプレート7は、開位置と閉位置との間の回動により通気路6を開閉する開閉弁部Bとして機能する。
オーナメントプレート7には、使用者が、指によってその回動をより容易に行えるようにするための後方に突出する指掛かり7bが形成されている。
支持環部3bは、オーナメントプレート7の回動における開位置及び閉位置で回動負荷が増し、自然状態におけるそれぞれの位置で、オーナメントプレート7を維持するように形成されているとよい。
【0029】
図1に戻り、スピーカユニットSPの後面には、一対の端子SPbが形成されている。一対の端子SPbには、図示しないコードの一端側が電気接続されている。コードの他端側はハウジング1の外部に引き出されている。
コードの他端先端部はプラグ化処理され、音声再生装置に接続できるようになっている。
これにより、音声再生装置からの音声信号が、コードを介してスピーカユニットSPに入力された際に、スピーカユニットSPは放音面からイヤホン51の前方に向け音声を出力する。放音面から出力された音は、音筒部2bの貫通孔2b1を通り先端から外部空間に放出される。
【0030】
上述の構成を有するイヤホン51を使用する場合は、イヤーピース4を音筒部2bに装着した状態とし、次の手順で外耳道に対し挿抜する。
【0031】
(S1)オーナメントプレート7を回動して開状態にする。これにより、音筒部2bの前方の空間、すなわち、装着の際の外耳道の内部空間と、ハウジング1の外部空間Vgとが、通気路6を介して連通した状態となる。
【0032】
(S2)使用者は、ハウジング1を指で摘み、イヤーピース4を外耳道内に挿入する。この挿入の過程で、外耳道内の空間容積は減少する。空間内部の空気は圧縮されるように押し込まれるものの通気路6を通って外部空間Vgに流出するので、外耳道の内部空間及び前方空間Vfの圧力は外部空間の圧力と同じになる。
従って、イヤーピース4の外耳道への挿入過程で、鼓膜及びスピーカユニットSPの振動板SPaが空気に押されることはない。そのため、使用者が違和感を覚えることはなくスピーカユニットSPの駆動系に不具合が生じることはない。
【0033】
(S3)イヤーピース4が外耳道内に所定量挿入されてイヤホン51が耳介に装着されたら、使用者は、オーナメントプレート7を閉位置に回動させる。
これにより、通気路6が閉じられるので、前方空間Vfは、外耳道の内壁と鼓膜とイヤホン51とで密閉状態になる。そのため、音漏れがなく良好な再生音響特性が得られる。
【0034】
(S4)イヤホン51を使用後に取り外す際には、使用者は、まず、オーナメントプレート7を回動させて開位置とする。これにより、外耳道の内部空間及び前方空間Vfと、外部空間Vgとが、通気路6を介して連通した状態となる。
【0035】
(S5)次いで、使用者は、ハウジング1を指で摘み、イヤーピース4を外耳道から取り外す。この取り外しの過程で、外耳道の内部空間及び前方空間Vfの空間容積は拡張されるが、通気路6を介して外部空間Vgから空気が流入するので、外耳道の内部空間及び前方空間Vfの圧力は外部空間Vgの圧力と同じになる。
従って、イヤーピース4の外耳道からの抜去過程で、鼓膜及びスピーカユニットSPの振動板SPaが空気に引かれることはない。そのため、使用者が違和感を覚えることはなくスピーカユニットSPの駆動系に不具合が生じることはない。
【0036】
以上詳述したように、イヤホン51は、前方空間Vf及び音筒部2bの前方の空間と、外部空間Vgと、を連通する通気路6と、通気路6を開閉する開閉弁部Bとしてのオーナメントプレート7と、を有している。
【0037】
これにより、使用者は、イヤホン51の耳介への装脱における、イヤーピース4の外耳道に対する挿抜で通気路6を開とし、イヤホン52の使用状態で通気路6を閉とすることができる。
そのため、イヤーピース4の外耳道に対する挿抜の際に、前方空間Vf及び外耳道内の空間の圧力変動をなくすことができ、使用者が鼓膜の違和感を覚えることはなく、スピーカユニットSPの駆動系に不具合を生じることはない。
【0038】
また、イヤーピース4を外耳道内に挿入した後のイヤホン51の使用時において、前方空間Vf及び外耳道内の空間を外部空間Vgに対して非連通にできるので、外部への音漏れを少なくできると共に良好な再生音響特性が得られる。
また、通気路6が、前方空間Vfに対し独立して形成されているので、ハウジング1を、スピーカユニットSPの特性に合わせた良好な再生音響特性が得られる形状に設計することが容易となる。これにより、イヤホン51を良好な再生音響特性を有するものとして得られる。
【0039】
次に、実施例2を説明する。
(実施例2)
実施例1のイヤホン51は、通気路6をハウジング1に一体形成しているのに対し、実施例2のイヤホン52は、通気路6を、ハウジング1とは別の部材によりダクトとして備えたものである。以下、別の部材を通気部材と称する。
そこで、次に、通気部材の例としてパイプ28を用い、パイプ28における両端を繋ぐ孔を、ダクトである通気路6としたものを説明する。
以下、
図4〜
図6を参照し、イヤホン52についてイヤホン51と異なる構成を主に説明する。
【0040】
図4に示されるように、イヤホン52におけるハウジング21は、前ハウジング22と、後ハウジング23と、サポータ25と、パイプ28と、を有して構成されている。
【0041】
前ハウジング22には、音筒部22bが形成され、音筒部22bには、着脱自在にイヤーピース4が装着される。
前ハウジング22は、イヤホン51の前ハウジング2に対し、通気路6aが形成されていないものである。
【0042】
後ハウジング23は、イヤホン51の後ハウジング3に対し、通気路6bが形成されていないものである。
後ハウジング23には、イヤホン51のサポータ5に対応する部材として、スピーカユニットSPをリブ22cと共に支持するリブ25cを有し、前方の空間VhfとバックキャビティVbとをリブ22cと共に非連通に分離する既述のサポータ25が取り付けられている。
【0043】
パイプ28は、両端を通気可能に繋ぐ孔28aを有する金属又は樹脂の管として形成されている。以下、孔28aを通気路28aとも称する。
通気路28aの内径は、例えば0.5mm程度とされる。
図4に示されるように、パイプ28は、音筒部22bの貫通孔22b1内から、前ハウジング22の内壁及び後ハウジング23の内壁に沿って後方に延び、後ハウジング23の後壁23aに至る前後に延びる姿勢で配置されている。
【0044】
詳しくは、パイプ28は、前方端が音筒部22bの先端面22b2と同じ前後方向位置にあって、通気路28aは前方に向け開口している。
図5は、音筒部22bを前方から見た前面図である。
図5に示されるように、音筒部22bの貫通孔22b1内に、パイプ28が配置されている。径方向の配置位置は限定されない。この例では、貫通孔22b1の内壁に近い位置に配置されているが、例えば、貫通孔22b1の中心位置であってもよい。
【0045】
図4に戻り、パイプ28は、後方部が後ハウジング23の後壁23aに形成された保持部23a2の保持孔23a3に通されて保持されている。
パイプ28の後方端は、後面23a1と同じ前後方向位置にあり、通気路28aが後方に向け開口している。
従って、パイプ28の孔である通気路28aを介して、音筒部22bの前方の空間、すなわち、装着の際の外耳道の内部空間と、ハウジング21の外部空間Vgとが、連通可能となる。
イヤホン52は、パイプ28を備えることで、通気路28aが、前方空間Vf及びバックキャビティVbに連通することなく独立に形成されている。
【0046】
イヤホン52は、イヤホン51におけるオーナメントプレート7に対応する部材として、開位置と閉位置との間の回動によって通気路28aを開閉するオーナメントプレート27を、開閉弁部Bとして備えている。
オーナメントプレート27は、オーナメントプレート7においてU字状の切り欠きで形成されていた開放部7aの替わりに、パイプ28の通気路28aの後端部を開放する円形の開放部27aを有する。
また、オーナメントプレート27は、回動を指で容易に行えるようにするために、後方へ突出する指掛かり27bを有する。
【0047】
図6(a)に示されるオーナメントプレート27の開位置で、通気路28aは開放部27aを通して外部空間Vgと連通し、
図6(b)に示されるオーナメントプレート27の閉位置で、通気路28aはオーナメントプレート27に塞がれて外部空間Vgと非連通となる。
【0048】
イヤホン52を使用する場合の、音筒部22bに装着されたイヤーピース4の外耳道に対する挿抜手順は、イヤホン51で説明した(S1)〜(S5)と同様であり、同様の効果が得られる。
【0049】
上述のように、イヤホン52は、前方空間Vf及び音筒部22bの前方の空間と、外部空間Vgと、を連通する通気路28aと、通気路28aを開閉する開閉弁部Bとしてのオーナメントプレート27と、を有している。
【0050】
これにより、使用者は、イヤホン52の耳介への装脱における、イヤーピース4の外耳道に対する挿抜で通気路28aを開とし、イヤホン52の使用状態で通気路28aを閉とすることができる。
そのため、イヤーピース4の外耳道に対する挿抜の際に、前方空間Vf及び外耳道内の空間の圧力変動をなくすことができ、使用者が鼓膜の違和感を覚えることはなく、スピーカユニットSPの駆動系に不具合を生じることはない。
【0051】
また、イヤーピース4を外耳道内に挿入した後のイヤホン52の使用時において、前方空間Vf及び外耳道内の空間を外部空間Vgに対して非連通にできるので、外部への音漏れが少なくできると共に良好な再生音響特性が得られる。
また、通気路28aが、前方空間Vfに対し独立して形成されているので、ハウジング21を、スピーカユニットSPの特性に合わせた良好な再生音響特性が得られる形状に設計することが容易となり、イヤホン52を良好な再生音響特性を有するものとして得られる。
【0052】
以上詳述した実施例は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0053】
イヤホン52におけるパイプ28の前方端の前後方向位置は、音筒部22bの先端面22b2と一致していてもしていなくてもよい。先端面22b2の位置に近い位置であれば、
図7(a)に示されるように前方に突出した位置であっても、
図7(b)に示されるように後方にずれた位置であってもよい。
すなわち、パイプ28の前方端の前後方向位置は、先端面22b2の近傍位置であればよい。
近傍位置であって、後方にずれた位置とする場合は、再生音響特性への影響を無視できる程度に抑制して、通気路28aの空間を前方空間Vfに含める必要がないようにするために、ずれ量Laは、スピーカユニットSPの振動板SPaから先端面22b2迄の距離の20%以下とすることが望ましい。
【0054】
イヤホン51における通気路6及びイヤホン52における通気路28aは、一つに限定されず、例えば、
図8(a)及び
図8(b)に示されるように複数であってもよい。
図8(a),(b)では、3つとした例が示されている。
【0055】
開閉弁部Bであるオーナメントプレート7,27の開閉動作は、軸線CL3,CL23まわりの回動によるものに限定されない。
例えば、直動によって通気路6,28aを開閉するものであってもよいが、移動のために指で付与された力によってハウジング1,21が前後動しにくいものが好ましい。
これは、ハウジング1,21が前後動するとイヤーピース4も前後動し、閉状態のまま外耳道内の空間容積を増減させる虞があることによる。
従って、直動の場合は、軸線CL3,CL23に直交する方向の移動で開閉するよう構成されていることが望ましい。
【0056】
通気路6,28aが外部空間Vgと連通する部位(外部連通部位)は、上述のハウジング1における後ハウジング3,23の後面3a1,23a1でなくてもよい。
外部連通部位を音筒部2b,22bの外面に設定すると、イヤーピース4との係合構造と干渉し、開閉弁部Bを設けた場合に構造が複雑になるため、ハウジング1,21における音筒部2b,22b以外の外面で外部空間Vgと連通させることが望ましい。
上述のように、ハウジング1,21における音筒部2b,22bとは反対側の部位(後面3a1,23a1)に設けると、耳介から遠い位置となるため、耳介の影響を受けずに良好に通気でき、さらに開閉弁部Bを設けた場合に、指での開閉作業が容易になるので好ましい。