(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の回転輪に掛けられている無端軌道体と、前記無端軌道体の一部に取り付けられていると共にワークを保持する移動保持体と、液体が流れる流路及び当該液体の流れにより一方向に回転する羽根車を内部に有する駆動ユニットと、前記羽根車の回転力を受けて前記一対の回転輪の内の一方である駆動輪を回転させる動力伝達部と、前記駆動輪の回転方向を切り替えるための切替機構と、を備え、
前記動力伝達部は、前記羽根車の回転に基づいて回転する入力歯車と、前記入力歯車の回転に基づいて前記駆動輪を一方向に回転させるための第一動力伝達経路に含まれる正転歯車と、前記入力歯車の回転に基づいて前記駆動輪を他方向に回転させるための第二動力伝達経路に含まれる逆転歯車と、を少なくとも有する複数の歯車により構成されており、
前記切替機構は、前記複数の歯車の一部を変位させるためのリンク部材を有し、移動する前記移動保持体又は前記ワークに押されて前記リンク部材を介して前記歯車の一部を変位させることにより、前記第一動力伝達経路と前記第二動力伝達経路とを切り替える、搬送装置。
前記動力伝達部は、更に、前記入力歯車と前記逆転歯車との間に設けられている中間歯車と、前記逆転歯車と噛み合い状態にあり前記駆動輪と共に回転する駆動歯車と、を更に有し、
前記リンク部材は、前記正転歯車及び前記中間歯車を搭載し第一位置と第二位置との間を位置変化可能として設けられているベース部を有し、
前記ベース部が前記第一位置にある状態で、前記正転歯車が前記入力歯車及び前記駆動歯車の双方に噛み合い他の歯車とは噛み合わない第一状態となり、
前記ベース部が前記第二位置にある状態で、前記中間歯車が前記入力歯車及び前記逆転歯車の双方に噛み合い他の歯車とは噛み合わない第二状態となる、請求項1に記載の搬送装置。
前記ベース部が前記第一位置から前記第二位置に移動する間において、前記正転歯車が変位して前記駆動歯車及び前記入力歯車との噛み合いが解除される動作が行われると同時に、前記中間歯車が変位して前記逆転歯車及び前記入力歯車と噛み合う動作が行われ、
前記ベース部が前記第二位置から前記第一位置に移動する間において、前記中間歯車が変位することで前記逆転歯車及び前記入力歯車との噛み合いが解除される動作が行われると同時に、前記正転歯車が変位することで前記駆動歯車及び前記入力歯車と噛み合う動作が行われる、請求項2に記載の搬送装置。
前記切替機構は、更に、前記移動保持体が一方側に移動すると当該移動保持体又は前記ワークの一部が接触して前記リンク部材を変位させるための第一レバー部材と、前記移動保持体が他方側に移動すると当該移動保持体又は前記ワークの一部が接触して前記リンク部材を変位させるための第二レバー部材と、を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、移動保持体91を上下移動させるための動力源となるギヤードモータ94の回転方向を切り替えることで、移動保持体91の移動方向を切り替えることが可能であるが、この場合、切り替え毎に大きな始動電流が生じ、特に切り替え動作が頻繁に行われると効率が悪く電力消費が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、動力源における回転方向を切り替えることなく、移動保持体の移動方向の切り替えが可能となる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一対の回転輪に掛けられている無端軌道体と、前記無端軌道体の一部に取り付けられていると共にワークを保持する移動保持体と、液体が流れる流路及び当該液体の流れにより一方向に回転する羽根車を内部に有する駆動ユニットと、前記羽根車の回転力を受けて前記一対の回転輪の内の一方である駆動輪を回転させる動力伝達部と、前記駆動輪の回転方向を切り替えるための切替機構と、を備え、前記動力伝達部は、前記羽根車の回転に基づいて回転する入力歯車と、前記入力歯車の回転に基づいて前記駆動輪を一方向に回転させるための第一動力伝達経路に含まれる正転歯車と、前記入力歯車の回転に基づいて前記駆動輪を他方向に回転させるための第二動力伝達経路に含まれる逆転歯車と、を少なくとも有する複数の歯車により構成されており、前記切替機構は、前記複数の歯車の一部を変位させるためのリンク部材を有し、移動する前記移動保持体又は前記ワークに押されて前記リンク部材を介して前記歯車の一部を変位させることにより、前記第一動力伝達経路と前記第二動力伝達経路とを切り替える。
【0008】
この搬送装置によれば、正転歯車を用いて駆動輪を一方向に回転させると、無端軌道体が一方向に回転して移動保持体を一方向に移動させ、逆転歯車を用いて駆動輪を他方向に回転(逆転)させると、無端軌道体が他方向に回転して移動保持体を他方向に移動させる。そして、前記切替機構における動力伝達経路の切り替えによれば、移動保持体を一方向に移動させる場合も、他方向に移動させる場合も、羽根車の回転方向を変化させないで済み、しかも、移動保持体が移動する方向の切り替え(つまり、駆動輪の回転方向の切り替え)は、移動する移動保持体又はワークに押されてリンク部材を介して歯車の一部を変位させることで行われる。この結果、動力源となる駆動ユニット(羽根車)の回転方向を切り替えることなく、移動保持体の移動方向の切り替えが可能となる。
【0009】
また、前記動力伝達部は、更に、前記入力歯車と前記逆転歯車との間に設けられている中間歯車と、前記逆転歯車と噛み合い状態にあり前記駆動輪と共に回転する駆動歯車と、を更に有し、前記リンク部材は、前記正転歯車及び前記中間歯車を搭載し第一位置と第二位置との間を位置変化可能として設けられているベース部を有し、前記ベース部が前記第一位置にある状態で、前記正転歯車が前記入力歯車及び前記駆動歯車の双方に噛み合い他の歯車とは噛み合わない第一状態となり、前記ベース部が前記第二位置にある状態で、前記中間歯車が前記入力歯車及び前記逆転歯車の双方に噛み合い他の歯車とは噛み合わない第二状態となるのが好ましい。
この構成によれば、移動する移動保持体又はワークに押されてリンク部材を介してベース部に搭載されている正転歯車及び中間歯車が変位し、これにより、駆動輪の回転方向が切り替えられ、移動保持体の移動方向が切り替えられる。
【0010】
また、前記ベース部が前記第一位置から前記第二位置に移動する間において、前記正転歯車が変位して前記駆動歯車及び前記入力歯車との噛み合いが解除される動作が行われると同時に、前記中間歯車が変位して前記逆転歯車及び前記入力歯車と噛み合う動作が行われ、前記ベース部が前記第二位置から前記第一位置に移動する間において、前記中間歯車が変位することで前記逆転歯車及び前記入力歯車との噛み合いが解除される動作が行われると同時に、前記正転歯車が変位することで前記駆動歯車及び前記入力歯車と噛み合う動作が行われるのが好ましい。
この構成によれば、移動保持体の移動方向の切り替えの際に、各歯車が空転しない。このため、歯車同士が異常接触せず摩耗を抑制することができる。
【0011】
また、前記切替機構は、更に、前記移動保持体が一方側に移動すると当該移動保持体又は前記ワークの一部が接触して前記リンク部材を変位させるための第一レバー部材と、前記移動保持体が他方側に移動すると当該移動保持体又は前記ワークの一部が接触して前記リンク部材を変位させるための第二レバー部材と、を有しているのが好ましい。
この構成によれば、移動保持体が一方側の所定位置に移動すると、駆動歯車の回転方向を切り替え、移動保持体を他方側へ移動させることができ、そして、移動保持体が他方側の所定位置に移動すると、駆動歯車の回転方向を切り替え、移動保持体を一方側へ移動させることができる。
【0012】
また、前記駆動ユニットは、前記羽根車を収容する内部空間を有し当該内部空間が前記流体で充満状態となるケースを備え、前記ケースは、前記流体を前記内部空間へと取り入れるための一次側流路と、当該一次側流路よりも流路断面積が大きく前記内部空間の前記流体を流出させるための二次側流路と、を有しているのが好ましい。
この駆動ユニットによれば、内部空間で充満となる流体によって羽根車を回転させることで、ある程度の大きさの出力で羽根車を回転させることができる。また、一次側流路と比較して二次側流路の方が、流路断面積が大きいことから、内部空間は過度に内圧が高くならず、ケースにおいて流体が漏れ難い構成となる。
【0013】
また、前記駆動ユニットは、前記羽根車を収容する内部空間を有し当該内部空間が前記流体で充満状態となるケースを備え、前記羽根車の外周と前記内部空間の内周との間に前記流体を通過可能とさせる隙間が形成されているのが好ましい。
この駆動ユニットによれば、羽根車の回転が拘束されても流体は前記隙間を(通常時よりも多く)流れることができる。なお、羽根車の回転が拘束される場合としては、例えば、移動保持体が移動途中で他に接触して移動不能となる場合がある。このような場合であっても、駆動ユニットにおいて流体が前記隙間を流れることで、移動保持体、無端軌道体、動力伝達部等に過負荷が働かず、これらの損傷を防止することが可能となり、また、安全である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、動力源となる駆動ユニットの回転方向を切り替えることなく、移動保持体の移動方向の切り替えが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の搬送装置の一例を示す側面図である。
図1に示す搬送装置7は、製品の生産ラインの途中に設置されており、図外の前工程のための装置から下部位置P1に供給された半製品であるワーク8を、上部位置P2(
図2参照)へ搬送するための装置である。
図2は、ワーク8を上部位置P2へ搬送した状態を示している。上部位置P2に搬送されたワーク8は、図外の後工程のための装置へ搬出される。そして、ワーク8を載せていた移動保持体10は上部位置P2から下部位置P1へ降下する。
【0017】
本実施形態の搬送装置7は、無端軌道体9と、移動保持体10と、駆動ユニット11と、動力伝達部12と、切替機構13と、装置フレーム32とを備えている。装着フレーム32は、床面に設置されており、搬送装置7が備えている各機構を搭載している。
【0018】
無端軌道体9は、環状であるベルト(無端ベルト)により構成されている。以下、無端軌道体9を無端ベルト9として説明する。無端ベルト9は、一対の回転輪(プーリ)14,15に掛けられている。一方の回転輪(第一回転輪)14は、下部位置P1に近い低位置において装置フレーム32の下ブラケット67に支持されており、他方の回転輪(第二回転輪)15は、上部位置P2に近い高位置において装置フレーム32の上ブラケット68に支持されている。第一回転輪14は、駆動軸40を介して動力伝達部12(
図5参照)が有する駆動歯車39と連結されており、回転駆動することから、この第一回転輪14が駆動輪となり、第二回転輪15が従動輪となる。以下において、第一回転輪14を駆動輪14と呼ぶ。駆動軸40は、下ブラケット67が有する軸受によって回転可能として支持されている。なお、無端ベルト9及びプーリ14,15の代わりに、無端軌道体として無端チェーンを採用し、及び、一対の回転輪としてスプロケットを採用してもよい。
【0019】
無端ベルト9の一部9aに固定部材16を介して移動保持体10が取り付けられている。本実施形態の移動保持体10は、床部材17と壁部材18とを有し、床部材17上にワーク8が載る載置台により構成されている。以上より、移動保持体10は、無端ベルト9の一部9aに取り付けられており、ワーク8を載せた状態として保持することができる。なお、移動保持体10は、図示する形態以外であってもよく、かご形等としてもよい。後にも説明するが、
図1に示す状態から、無端ベルト9が反時計回り方向に回転することで下部位置P1にあった移動保持体10は上部位置P2まで上昇し、無端ベルト9が時計回り方向に回転することで上部位置P2の移動保持体10は下部位置P1へ下降する。装置フレーム32には、上下方向に長い直線ガイド34が設けられており、移動保持体10はこの直線ガイド34によりガイドされながら、上下方向に安定して移動する。
【0020】
本実施形態の搬送装置7は、更に、バランスウエイト54を備えている。装置フレーム32の上部にプーリ65a,65bが設けられており、このプーリ65a,65bにワイヤ等の線状部材66が掛けられており、線状部材66の一端側にバランスウエイト54が接続され、線状部材66の他端部に移動保持体10が接続されている。バランスウエイト54(の重量)は、移動保持体10及びワーク8とバランスするように設定されており、これにより、ワーク8を搬送するために要する動力(駆動ユニット11の出力)が小さくて済む。
【0021】
搬送装置7は、更に流体ユニット19を備えている。流体ユニット19は、水等の流体(クーラント)を溜めるタンク19aと、タンク19aの流体を加圧して送り出すポンプ19bとを有している。ポンプ19bは、配管69(
図3参照)を通じて駆動ユニット11と接続されており、加圧した流体を駆動ユニット11へ供給する。搬送装置7はこの流体の力により移動保持体10を移動させる。
【0022】
図3は、駆動ユニット11の断面図である。駆動ユニット11は、ケース20を備えており、このケース20内に、前記液体が流れる流路21及び内部空間22が形成されている。内部空間22には羽根車23が設けられており、羽根車23は流路21の液体の流れにより一方向(
図3では矢印R1で示す時計回り方向)にのみ回転する。ケース20は、流体を内部空間22へと取り入れるための一次側流路24と、内部空間22の流体を流出させるための二次側流路25,26とを有している、これら一次側流路24及び二次側流路25,26により、前記流路21が構成されている。
【0023】
本実施形態では、一本の一次側流路24に対して、二本の二次側流路25,26が形成されており、二次側流路25,26の流路断面積の合計は、一次側流路24の流路断面積よりも大きくなっている。例えば、二次側流路25,26の流路断面積の合計を、一次側流路24の流路断面積の1.5倍以上とすることができ、2倍以下とすることができる。本実施形態では、一方の二次側流路25と他方の二次側流路26との流路断面積は同じである。なお、二次側流路の本数は二本に限らず、三本以上であってもよい。二次側流路25,26は戻り配管33a,33bを介して
図1に示す流体ユニット19(タンク19a)と接続されており、流体は駆動ユニット11と流体ユニット19とを循環する。流体が流れる抵抗を小さくするために、戻り配管33a,33bは立ち上がり部分が無いように流体ユニット19まで設置されている。
【0024】
ケース20は、流路21及び内部空間22が形成されているブロック状の本体部20aと、この本体部20aの一面を覆う蓋部20b(
図4参照)とを有している。
図4は、駆動ユニット11の一部断面図であり、
図3の矢視X1における断面を示している。本体部20aと蓋部20bとの間には(図示していないが)シール部材が設けられており、ケース20は密閉された状態にある。このため、加圧された流体は駆動ユニット11内の密閉流路を流れる。なお、羽根車23の中心に設けられている回転軸28(
図3参照)は、水密性が確保された状態でケース20の一部を貫通している。以上より、ケース20は、羽根車23を収容する内部空間22を有しており、この内部空間22は流体で充満状態となる。流体ユニット19からケース20に供給された流体が、羽根車23(羽根部材27)に当たることにより、羽根車23を回転軸28と共に回転させる。回転軸28は、動力伝達部12(
図5参照)が有する入力歯車35に連結されており、羽根車23が一方向(
図3において、矢印R1方向)に回転すると、入力歯車35も同方向(
図5において、矢印G1方向)に回転する。本実施形態の搬送装置7では、流体ユニット19から駆動ユニット11へ流れかつこの駆動ユニット11内の流路を流れる流体の方向は変化せず、羽根車23及び回転軸28は一方向(矢印R1方向)にのみ回転し、反対方向には回転しない。
【0025】
羽根車23は複数(
図3では六枚)の羽根部材27を有している。羽根車23は環状の内周壁29を有しており、本実施形態の羽根部材27は、内周壁29の接線に対して90度の角度を成して設けられている。なお、羽根部材27の角度は、変更可能であり、
図3に示す状態を基準として−90度〜+90度に変更することができる。また、羽根部材27の数も変更可能であり、例えば四枚〜十六枚とすることができる。また、羽根部材27の形状を曲面としてもよい。
【0026】
図3及び
図4に示すように、羽根車23の外周と、内部空間22の内周30との間に隙間31が形成されている。
図3及び
図4では、隙間31の半径方向の寸法をKとしている。隙間31は、比較的広くなっており、流体を通過可能とさせる寸法に設定されている。つまり、流体ユニット19から供給された流体は羽根車23を主に回転させるが、その流体の一部は隙間31を通過して二次側流路25,26から排出される。
図4において、半径方向の寸法がKである範囲の隙間31の断面積(流路断面積)は、一次側流路24の断面積(流路断面積)の50%未満とすることができる。なお、
図4において、一次側流路24を二点鎖線で示している。隙間31の断面積は、0よりも大きく(好ましくは、一次側流路24の断面積の5%以上であり)、一次側流路24の断面積の50%未満とすることができる。
【0027】
図5は、動力伝達部12及び切替機構13の一部を示す側面図である。動力伝達部12は、羽根車23(
図3参照)と一体回転する入力歯車35、及び、無端ベルト9(
図1参照)を回転させる駆動輪14と一体回転する駆動歯車39の他に、正転歯車36、中間歯車37、及び逆転歯車38を含む、複数の歯車により構成されている。正転歯車36は、入力歯車35と駆動歯車39との間に設けられている。逆転歯車38と駆動歯車39とは常に噛み合い状態にある。中間歯車37は、入力歯車35と逆転歯車38との間に設けられている。入力歯車35、逆転歯車38、及び駆動歯車39はそれぞれ装置フレーム32に設けられている図外のブラケットによって回転可能に支持されており、装置フレーム32上において位置変化不能となっている。これに対して、正転歯車36及び中間歯車37は、切替機構13が有しているリンク部材41のベース部42に搭載されており、リンク部材41が変位することで、これら正転歯車36及び中間歯車37は位置変化する。
【0028】
前記のとおり、羽根車23(
図3参照)の回転軸28が入力歯車35と連結されており、羽根車23の回転に基づいて入力歯車35が回転する。
図5は、位置変化する中間歯車37が入力歯車35及び逆転歯車38の双方に噛み合った状態(動力伝達状態)を示している。
図5において、各歯車の回転方向を矢印G1,G2,G3,G4として示している。
図5に示す状態では、駆動歯車39が反時計回り方向(矢印G4)に回転することで、駆動輪14も同方向に回転し、
図1から
図2に示すように移動保持体10を上昇させる。
【0029】
これに対して、
図6は、位置変化する正転歯車36が、入力歯車35及び駆動歯車39の双方に噛み合った状態(動力伝達状態)を示している。
図6において、各歯車の回転方向を矢印G1,G5,G6として示している。
図6に示す状態では、駆動歯車39が時計回り方向(矢印G6)に回転することで、駆動輪14も同方向に回転し、
図2から
図1に示すように移動保持体10を下降させる。入力歯車35の回転方向(矢印G1)は、上昇中(
図5)及び下降中(
図6)それぞれの場合で同じである。
【0030】
図6に示すように、入力歯車35から回転力を受けて正転歯車36が回転し、駆動歯車39を通じて駆動輪14を回転させる動力伝達経路を「第一動力伝達経路Q1」とする。これに対して、
図5に示すように、入力歯車35から回転力を受けて中間歯車37及び逆転歯車38が回転し、駆動歯車39を通じて駆動輪14を回転させる動力伝達経路を「第二動力伝達経路Q2」とする。
【0031】
以上のように、本実施形態の動力伝達部12は、羽根車23の回転に基づいて回転する入力歯車35と、入力歯車35の回転に基づいて駆動輪14を一方向に回転させるための第一動力伝達経路Q1に含まれる正転歯車36と、入力歯車35の回転に基づいて駆動輪14を他方向(逆方向)に回転させるための第二動力伝達経路Q2に含まれる中間歯車37及び逆転歯車38とを有する、複数の歯車により構成されている。この動力伝達部12は、羽根車23の回転力を受けて、無端ベルト9を駆動するための一対の回転輪14,15の内の一方である駆動輪14を、一方向及びその反対の他方向に回転させることができる。また、第一動力伝達経路Q1及び第二動力伝達経路Q2それぞれは、出力する回転数が減速されるように各歯車の歯数比が設定されており、回転トルクを高めている。つまり、羽根車23(駆動ユニット11)の出力は小さくて済むように構成されている。
【0032】
以上のように、駆動ユニット11の羽根車23は一方向にのみ回転するのに対して、移動保持体10を往復移動させるために無端ベルト9が掛けられている駆動輪14を一方向及びその反対の他方向の両方向に(切り替えて)回転させることができる。そこで、この駆動輪14の回転方向の切り替えを切替機構13が行う。つまり、切替機構13によって、羽根車23による一方向の回転による入力から動力伝達部12を通じて一方向及び他方向の回転の出力が得られるように、搬送装置7は構成されている。以下、切替機構13の具体的構成の一例を説明する。
【0033】
切替機構13は(
図1及び
図2参照)、リンク部材41、第一レバー部材43、第二レバー部材44、及び線状部材50を有している。
図5及び
図6に示すように、リンク部材41は、ベース部42と、ベース部42と一体であるアーム部45とを有している。リンク部材41は、装置フレーム32に設置されている支軸46により、上下に揺動可能として支持されており、ベース部42に正転歯車36及び中間歯車37が搭載されている。このため、動力伝達部12に含まれる複数の歯車のうち、正転歯車36及び中間歯車37のみが変位し、残りの入力歯車35、逆転歯車38及び駆動歯車39は変位しない。
図5は、リンク部材41が支軸46を中心として時計回り方向に揺動することで、ベース部42が第二位置S2にある状態を示しており、
図6は、リンク部材41が支軸46を中心として反時計回り方向に揺動することで、ベース部42が(第二位置S2よりも低い)第一位置S1にある状態を示している。このように、リンク部材41は、正転歯車36及び中間歯車37を搭載しているベース部42を有しており、このベース部42は第一位置S1と第二位置S2との間を位置変化可能である。
【0034】
図5に示すように、ベース部42が第二位置S2にある状態で、中間歯車37が入力歯車35及び逆転歯車38の双方に噛み合い、他の歯車とは噛み合わない状態(第二状態)となる。この第二状態では、駆動ユニット11の一方向に回転する羽根車23によって回転軸28と共に入力歯車35が一方向(矢印G1方向)に回転すると、その回転力が中間歯車37、逆転歯車38及び駆動歯車39を伝わり(第二動力伝達経路Q2)、駆動輪14を
図5の矢印G4方向に回転させ、移動保持体10を上昇させる。
【0035】
これに対して、
図6に示すように、ベース部42が第一位置S1にある状態で、正転歯車36が入力歯車35及び駆動歯車39の双方に噛み合い、他の歯車とは噛み合わない状態(第一状態)となる。この第一状態では、駆動ユニット11の一方向に回転する羽根車23によって回転軸28と共に入力歯車35が一方向(矢印G1方向)に回転すると、その回転力が正転歯車36及び駆動歯車39を伝わり(第一動力伝達経路Q1)、駆動輪14を
図6の矢印G6方向に回転させ、移動保持体10を下降させる。
【0036】
図7は、前記第一レバー部材43の説明図である。第一レバー部材43は、搬送装置7(
図1及び
図2参照)において、移動保持体10の移動方向一方側の上部位置P2に設けられている。
図8は、前記第二レバー部材44の説明図である。第二レバー部材44は、搬送装置7(
図1及び
図2参照)において、移動保持体10の移動方向他方側の下部位置P1に設けられている。
図7及び
図8に示すように、移動保持体10には第一接触部材47及び第二接触部材48が設けられている。
【0037】
図7において、第一レバー部材43の一端部43a側は、装置フレーム32の一部に設けられているピン49により支持されており、第一レバー部材43はピン49を中心として上下揺動可能である。第一レバー部材43は、コイルばねにより構成されている弾性部材51によって持ち上げられた状態にある。第一レバー部材43の中間部43cに第一接触部材47が下から接触可能である。
図8において、第二レバー部材44は、リンク部材41が有するアーム部45に取り付けられており、第二レバー部材44の一部44cに第二接触部材48が上から接触可能である。
【0038】
上昇する移動保持体10が上部位置P2(上昇位置)に到達すると(
図2及び
図7参照)、第一接触部材47が第一レバー部材43に接触し、第一レバー部材43は持ち上げられる。
図7に示すように、第一レバー部材43の他端部43bには、ワイヤにより構成されている(バランスウエイト54用とは別の)線状部材50の一端が接続されており、
図5及び
図6に示すように、この線状部材50の他端はリンク部材41が有するアーム部45に接続されている。このため、第一レバー部材43が持ち上げられると、線状部材50を通じて、
図5から
図6に示すようにアーム部45が引き上げられ、リンク部材41は反時計回り方向に揺動して変位する。これにより、入力歯車35から駆動輪14へ動力が伝わる動力伝達経路が、第二動力伝達経路Q2(
図5参照)から第一動力伝達経路Q1(
図6参照)に切り替わる。このように、上昇していた移動保持体10の一部(第一接触部材47)が第一レバー部材43を押し上げると、この移動保持体10の移動方向が切り替わり、移動保持体10は下降を開始する。
【0039】
下降する移動保持体10が下部位置P1(下降位置)に到達すると(
図1及び
図8参照)、第二接触部材48が第二レバー部材44に接触し、第二レバー部材44を押し下げる。すると、第二レバー部材44はリンク部材41と一体であることから、
図6から
図5に示すようにリンク部材41は時計回り方向に変位する。これにより、入力歯車35から駆動輪14へ動力が伝わる動力伝達経路が、第一動力伝達経路Q1(
図6参照)から第二動力伝達経路Q2(
図5参照)に切り替わる。このように、下降していた移動保持体10の一部(第二接触部材48)が第二レバー部材44を押し下げると、この移動保持体10の移動方向が切り替わり、移動保持体10は上昇を開始する。
【0040】
前記のように、移動保持体10が上部位置P2(
図2参照)に到達すると、リンク部材41が変位することで動力伝達部12に含まれる歯車の噛み合いが変化し、無端ベルト9の回転方向が移動保持体10を上昇させる方向から下降させる方向に切り替わる。そして、移動保持体10が下部位置P1(
図1参照)に到達すると、リンク部材41が(反対側に)変位することで動力伝達部12に含まれる歯車の噛み合いを変化させ、無端ベルト9の回転方向が移動保持体10を下降させる方向から上昇させる方向に切り替わる。これにより、駆動ユニット11の羽根車23の回転方向は変わらないが、移動保持体10の移動方向が交互に切り替わる。
【0041】
以上のように、切替機構13は、リンク部材41の他に、第一レバー部材43及び第二レバー部材44を有しており、移動保持体10が、その移動方向の一方側である上部位置P2に移動すると、その一部である第一接触部材47が第一レバー部材43に接触し、この第一レバー部材43は線状部材50を通じてリンク部材41を変位させる。そして、移動保持体10が、その移動方向の他方側である下部位置P1に移動すると、その一部である第二接触部材48が第二レバー部材44に接触し、この第二レバー部材44はリンク部材41を変位させる。
【0042】
以上の構成を備えている本実施形態の搬送装置7によれば、切替機構13はリンク部材41を有しており、上下移動する移動保持体10に押されてリンク部材41を介して、動力伝達部12に含まれる歯車の一部(本実施形態では、正転歯車36と中間歯車37)を変位させる。特に本実施形態では、上下移動する移動保持体10にレバー部材43(44)が押されてこのレバー部材43(44)と繋がるリンク部材41を介して、動力伝達部12に含まれる歯車の一部を変位させる。このように歯車の一部を変位させることにより、第一動力伝達経路Q1と第二動力伝達経路Q2とが切り替えられる。この構成によれば、正転歯車36を用いて駆動輪14を一方向(
図6において矢印G6)に回転(正転)させると、無端ベルト9が一方向に回転して移動保持体10を下降させる。これに対して、逆転歯車38を用いて駆動輪14を他方向(
図5において矢印G4)に回転(逆転)させると、無端ベルト9が他方向に回転して移動保持体10を上昇させる。そして、前記の切替機構13における動力伝達経路の切り替えによれば、移動保持体10を上昇させる場合も、下降させる場合も、羽根車23の回転方向を変化させないで済む(
図3において矢印R1)。そして、移動保持体10が移動する方向の切り替え(つまり、駆動輪14の回転方向の切り替え)は、移動する移動保持体10に押されてリンク部材41を介して正転歯車36と中間歯車37とを変位させることで行われる。この結果、動力源となる駆動ユニット11(羽根車23)の回転方向を切り替えることなく、移動保持体10の移動方向の切り替えが可能となる。また、本実施形態の構成によれば、移動保持体10の移動方向の切り替えのために電力を使用せず、省電力化が可能となる。
【0043】
本実施形態の切替機構13に関して更に説明する。
図7において、第一レバー部材43は、コイルばねにより構成されている弾性部材51によって、持ち上げた状態とされている。つまり、弾性部材51は第一レバー43の他端部43b側を持ち上げる方向に付勢している。これは、移動保持体10の移動方向の切り替えのための動作が行われない状態であっても、前記線状部材50に張力を付与するためである。これにより、線状部材50の伸び代(余長)によって前記の移動方向の切り替え時におけるタイムラグが発生するのを防ぐことができる。また、弾性部材51によれば、第一レバー部材43の動作の遊び(揺動の余裕代)を小さくすることができ、これにより、前記切り替え時におけるタイムラグが発生するのを防ぐことができる。
【0044】
切替機構13は(
図5及び
図6参照)、リンク部材41の揺動範囲を制限するストッパ53を有している。ベース部42には正転歯車36中間歯車37が搭載されていることから、リンク部材41(ベース部42)は、低い第一位置S1となりやすい。そこで、ストッパ53は、装置フレーム32の一部に取り付けられており、揺動するリンク部材41の一部(アーム部45)が下から接触する。アーム部45がストッパ53に接触することで、リンク部材41(ベース部42)を第一位置S1で停止させ、それ以上の揺動を制限している。これにより、正転歯車36が駆動歯車39を強く押すのを防止することができ、相互の噛み合い状態を正常に保つことができ、また、駆動軸40を支持する(図示しない)軸受に大きな回転抵抗が働くのを防ぐことができる。
【0045】
また、本実施形態の搬送装置7は、揺動可能であるリンク部材41(
図5及び
図6参照)の位置を保持するための保持機構55を有している。
図9は、保持機構55の平面図である。保持機構55は、リンク部材41(アーム部45)の端部45aに接触可能である短円筒状の当接子56と、この当接子56を先端に取り付けているロッド57と、ロッド57をその長手方向(本実施形態では水平方向)に移動可能として支持している支持体58と、当接子56及びロッド57をリンク部材41側に付勢しているばね59とを有している。
図5及び
図6に示すように、アーム部45の端部45aは、中央領域に保持機構55(当接子56)側に突出している凸面部60を有している。この凸面部60の上側の領域が第一接触面部61であり、凸面部60の下側の領域が第二接触面部62である。
【0046】
図5に示すように、リンク部材41のベース部42が上側の第二位置S2にある状態で、当接子56は第一接触面部61に接触し、ばね59(
図9参照)によって当接子56は第一接触面部61に押し付けられた状態にある。この状態では、当接子56による押し付け力により、凸面部60が当接子56を越えず、ベース部42を第二位置S2とする状態が保たれる。
【0047】
この状態から、移動保持体10の第一レバー部材43(
図7参照)への接触力により線状部材50を介してアーム部45が引き上げられると、その力によって前記ばね59に抗して凸面部60が当接子56を越えることができ、
図6に示すように、ベース部42が下側となる第一位置S1にある状態となる。そして、当接子56は第二接触面部62に接触し、ばね59によって当接子56は第二接触面部62に押し付けられた状態にある。また、前記のとおり、アーム部45がストッパ53に接触する。以上より、ベース部42を第一位置S1とする状態が保たれる。
【0048】
図6に示す状態から、更に、移動保持体10の第二接触部材48(
図8参照)が第二レバー部材44に接触すると、その接触力によりアーム部45が押し下げられ、凸面部60が当接子56を越えることができ、ベース部42が上側の第二位置S2にある状態となる(
図5)。この状態は、移動保持体10の第二接触部材48が第二レバー部材44から離れても、つまり、移動保持体10が上昇途中であっても、維持される。
【0049】
リンク部材41(アーム部45)の端部45aの形状は、第一接触面部61、凸面部60、及び第二接触面部62が滑らかに連続する形状となっており、当接子56と端部45aとは相互で滑らかに転がり接触(又は滑る)ことができる。以上のように、保持機構55により、揺動可能であるリンク部材41(
図5及び
図6参照)の位置が維持される。
【0050】
図10は、動力伝達部12において、入力歯車35から駆動輪14(駆動歯車39)へ動力を伝える動力伝達経路が、第一動力伝達経路Q1と第二動力伝達経路Q2との間で切り替わる遷移途中の状態を示す説明図である。
図6から
図5に示すように、ベース部42が第一位置S1から第二位置S2に移動する間において、
図10に示すように、正転歯車36が変位して駆動歯車39及び入力歯車35との噛み合いが解除される動作が行われると同時に、中間歯車37が変位して逆転歯車38及び入力歯車35と噛み合う動作が行われる。そして、
図5から
図6に示すように、ベース部42が第二位置S2から第一位置S1に移動する間において、
図10に示すように、中間歯車37が変位することで逆転歯車38及び入力歯車35との噛み合いが解除される動作が行われると同時に、正転歯車36が変位することで駆動歯車39及び入力歯車35と噛み合う動作が行われる。この構成によれば、移動保持体10の移動方向の切り替えの際に各歯車が空転しない。この結果、移動方向の切り替えの際、歯車同士が異常接触せず、各歯車の摩耗を抑制することができる。このように構成するために、リンク部材41の変位ストロークは必要最小限に設定されている。
【0051】
図3及び
図4により駆動ユニット11について更に説明する。本実施形態の駆動ユニット11のケース20は、羽根車23を収容する内部空間22が流体で充満状態となる。そして、このケース20では、前記のとおり、二次側流路25,26の流路断面積(総和)は一次側流路24の流路断面積よりも大きくなっている。この構成によれば、内部空間22で充満となる流体によって羽根車23を回転させることで、ある程度の大きさの出力で羽根車23を回転させることができる。そして、一次側流路24と比較して二次側流路25,26の方が、流路断面が大きいことから、内部空間22は過度に内圧が高くならない。このため、ケース20において流体が漏れ難い構成となる。
【0052】
そして、前記のとおり、羽根車23の外周と内部空間22の内周30との間に隙間31が形成されており、羽根車23の回転が拘束されても、ケース20内において流体は前記隙間31を(通常時よりも多く)流れることができる。羽根車23の回転が拘束される場合としては、例えば、移動保持体10が移動途中で他に接触して移動不能となる場合がある。このような場合であっても、駆動ユニット11において流体が前記隙間31を流れることで、ケース20の内圧を逃がすことができ、また、羽根車23が無理に回転しないことから、移動保持体10、無端ベルト9、動力伝達部12の各歯車等に過負荷が働かず、これらの損傷を防止することが可能となり、また、安全である。特に、本実施形態の搬送装置7では、バランスウエイト54(
図1及び
図2参照)を用いることで、駆動ユニット11は低推力で移動保持体10を移動させることできるので、より一層安全性が高い装置となる。
【0053】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の搬送装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では、装置フレーム32を上下方向に高く構成して、ワーク8の搬送方向を上下方向としたが、装置フレーム32を(図示しないが)水平方向や、上下方向と水平方向とが合成された傾斜方向に長く構成して、ワーク8を水平方向や傾斜方向に搬送するようにしてもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、移動保持体10の一部がレバー部材43,44に接触することでリンク部材41を変位させ、移動保持体10の移動方向が切り替えられる場合を説明したが、移動するワーク8が接触することでリンク部材41を変位させ、これにより移動保持体10の移動方向が切り替わるように構成してもよい。なお、移動するワーク8の接触により移動方向の切り替えを行う場合、そのワーク8は、移動保持体10上に載った状態であってもよいが、それ以外として、移動保持体10に乗り移る移動途中、及び、移動保持体10から離脱する移動途中であってもよい。つまり、移動保持体10との間で例えば転がって移動する途中のワーク8が接触することで、リンク部材41を変位させ、移動保持体10の移動方向が切り替わるように構成してもよい。