特許第6841157号(P6841157)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6841157吸収性物品、該吸収性物品の製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841157
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】吸収性物品、該吸収性物品の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20210301BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20210301BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   A61F13/532 100
   A61F13/532 200
   A61F13/533 100
   A61F13/15 321
   A61F13/15 352
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-101916(P2017-101916)
(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公開番号】特開2018-196505(P2018-196505A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 竜祐
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−074281(JP,A)
【文献】 特開2015−181785(JP,A)
【文献】 特開2017−080243(JP,A)
【文献】 特開2012−130531(JP,A)
【文献】 特開2012−016584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性材料の堆積量を部分的に減少させた第1の薄化部分と、圧搾による第2の薄化部分とが設けられた吸収体を備え、
前記第2の薄化部分は、互いに交差する複数の溝として形成され、
前記第1の薄化部分は、前記複数の溝の交点部分に位置することを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記第1の薄化部分と前記第2の薄化部分とが部分一致した位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1の薄化部分と前記第2の薄化部分とが、前記部分一致した位置に形成された部位とは別の前記吸収体の部位であって重複しない位置にさらに形成されていることを特徴とする請求項に記載の吸収性物品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吸収性物品を製造する製造装置であって、
前記吸収性材料を吸引して堆積させる複数の通気性孔を有する通気性部材であって、前記吸収性材料の堆積量を位置に応じて調整可能な通気性部材を用いて前記第1の薄化部分を形成した吸収体母材を作製する第1の薄化手段と、
前記吸収体母材を圧搾する前記第2の薄化部分を形成した吸収体を作製する第2の薄化手段と、
を備えたことを特徴とする製造装置。
【請求項5】
前記第1の薄化手段は、前記通気性部材が外周面に取り付けられて回転軸を中心として周方向に回転する筒型の回転ドラムを有することを特徴とする請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
吸収性物品を製造する製造方法であって、
吸収性材料を吸引して堆積させる複数の通気性孔を有する通気性部材であって、前記吸収性材料の堆積量を位置に応じて調整可能な通気性部材を用いて、前記吸収性材料の堆積量を部分的に減少させる第1の薄化部分を形成した吸収体母材を作製する第1の薄化工程と、
前記吸収体母材の圧搾による第2の薄化部分を互いに交差する複数の溝として形成した吸収体を作製する第2の薄化工程と、
を備え、
前記通気性部材の表面には凸部が形成され、
前記第1の薄化工程は、前記凸部の通気性を前記凸部周辺の通気性よりも低くして前記吸収性材料を堆積させる工程を含み、
前記第1の薄化工程は、前記第1の薄化部分が前記複数の溝の交点部分に位置するように前記第1の薄化部分を形成した前記吸収体母材を作製することを特徴とする製造方法。
【請求項7】
前記通気性部材は、前記凸部には前記通気性孔をもたないことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品、該吸収性物品の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿および便等を吸収する吸収体を備えた使い捨ておむつ等の吸収性物品には、様々な改良が施され、その機能や着用感の向上が図られている。例えば、吸収体に溝または凹部などの薄化した部分を形成することにより、尿などの体液の吸収性能および漏れの抑制性能を向上しつつ、着用者の体型や姿勢の変化に追従した着用者の股間へのフィット性を高める工夫がなされている。
【0003】
そのような吸収体の製造方法として、薄化部分を圧搾により形成するものがある。また、例えば特許文献1に開示されているように、回転ドラムの外周面に形成された、通気性のある吸収体成形型の底面の一部に非通気性の凸部材を配置する構成を用いるものもある。すなわち同文献では、回転ドラムの内側から吸引力を作用させて、凸部材以外の部分に吸収性材料を堆積させることで、凸部材に対応した凹部が吸収体に形成されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−240792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、薄化した部分を有する新規な構成の吸収体を有する吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の吸収性物品は、吸収性材料の堆積量を部分的に減少させた第1の薄化部分と、圧搾による第2の薄化部分とが設けられた吸収体を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、薄化した部分を有する新規な構成の吸収体を有する吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)および(b)は、一実施形態による吸収体の薄化部分の形成原理を説明するための模式的断面図である。
図2】実施形態によって製造された吸収体を適用した展開型使い捨ておむつを一部破断して示す平面図である。
図3図2に示した展開型使い捨ておむつのIII−III線断面図である。
図4】吸収性物品の製造装置の構成を模式的に示すとともに、同じく製造方法における製造工程を説明するための模式的側面図である。
図5】一実施形態に係る吸収体母材を作製する図3の回転ドラムの構成を示す模式的に示す斜視図である。
図6図5に示した回転ドラムの分解斜視図である。
図7】吸収体母材を作製するのに適用可能な通気性部材の一例を示す斜視図である。
図8】(a)および(b)は、吸収体の薄化部分の他の2例を示す模式的平面図である。
図9】(a)および(b)は、吸収体の薄化部分のさらに他の2例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態のみに限らず、本発明の概念に帰属する他の吸収性物品に用いられる吸収体の製造装置および製造方法も包含するものである。
【0010】
[吸収体の薄化部分の形成原理]
図1(a)に示すように、力Pを作用させ、破線で示す位置まで吸収体母材215を圧搾して凹部Rを形成する場合を考える。圧搾によって凹部を形成する場合、凹部の形状が維持されるためには、吸収体母材215の表面からある程度の深さDまで圧搾を行う必要があり、したがって凹部Rの形成による薄化部分Tの密度が高くなる。圧搾を行うことには、吸収体の剛性を高める効果がある一方、圧搾によって密度が高くなりすぎると剛性が過剰となり、吸収性物品の柔軟性を低下させたり、着用者のフィット感が損なわれたりする。また、比較的硬質の高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」と言う)などを吸収性材料が含む場合、吸収体の表面に配されるコアラップやトップシートなどをSAPが突き破って露出する、所謂「SAP漏れ」が生じることもあり得る。
【0011】
そこで実施形態では、図1(b)に示すように、吸収性材料の堆積によって深さD1の凹部R1を有する吸収体母材213を予め形成しておき、その凹部R1に対し、さらに深さD2の分の圧搾を行うことで、最終的な凹部Rを形成する。これによれば、薄化部分Tの密度の増加は深さD2の分の吸収性材料の量に対応したものとなるので、圧搾のみによって凹部Rを形成する場合に比して、柔軟性が低下したり、着用者のフィット感が損なわれたりすることがなく、また「SAP漏れ」も生じにくいものとなる。
【0012】
なお、深さD1およびD2の関係は、用いる吸収性材料の組成や、求められる柔軟性などの条件に応じて適宜定め得る。パルプを減らす部分の重量は、パルプを減らしていない部分の重量に対して60重量%〜80重量%とすることが好ましい。60重量%より少なくすると、パルプが積層されない箇所が生じてしまうためである。80重量%よりも多くすると十分な作用を奏しないためである。
【0013】
[吸収性物品の例]
図2は、後述する実施形態によって製造された吸収体を適用した展開型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」と記述する場合がある)を一部破断して示す平面図であり、着用者の肌に接する面を示している。また、図3図2のIII−III線断面図である。
【0014】
図2に示すように、おむつ10は、前身頃領域10Fと、後身頃領域10Rと、これら前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rをつなぐ股下領域10Cとを有する。なお、図2に示すおむつ10は、吸収体13が延在する、前身頃領域10Fから後身頃領域10Rの方向が長手方向になるものである。そして、長手方向に対して直交する方向を以下では幅方向と称する。おむつ10の長手方向と幅方向の比率は図示の例に限定されず、着用者の体型に応じてこの比率は適宜変更されるものである。
【0015】
おむつ10の着用時において、前身頃領域10Fは着用者の腹側に位置し、後身頃領域10Rは着用者の背側に位置する。おむつ10の外側に位置するカバーシート11の後身頃領域10Rの左右両端縁部には、着用時に前身頃領域10Fとつなぎ、脚周り開口部10Lを形成し得る左右一対のファスニングテープ10Aが接合されている。このファスニングテープ10Aは、前身頃領域10Fのカバーシート11上に接合されたフロントパッチシート10Bに対して繰り返し剥離可能に接合される。カバーシート11の後身頃領域10Rの上端部には、カバーシート11の幅方向に沿って延在し、着用者に対してウエスト周りに適度な着用感を与えるための弾性シート10Dが接合されている。
【0016】
図2および図3に示すように、おむつ10は、肌接触面と反対側の最外側に配されるカバーシート11と、液不透過性のバックシート12と、吸収体13と、吸収体13を被覆するコアラップ15と、肌接触面である液透過性のトップシート14とを順に重ねて接合した部分を有する。ここで、コアラップ15は、不織布またはティシュからなる、親水性を有する薄いシートであり、吸収体13を包み込むことで型崩れを防止する機能を果たす。なお、下着等に取り付けて体液を吸収する尿漏れパッドのような吸収性物品であれば、バックシート12、コアラップ15で包まれた吸収体13およびトップシート14の積層構造のみの構成とすることができる。コアラップ15による吸収体13の包み込み方はいかなる態様であってもよく、さらには、コアラップ15を使用しない態様であってもよい。
【0017】
カバーシート11の股下領域10Cの左右両側には、それぞれ脚周り開口部となる半円弧状をなす一対の切欠き部11Aが形成されている。液不透過性のバックシート12は、このカバーシート11に接合され、先の吸収体13は、このバックシート12と液透過性のトップシート14との間に配され、この吸収体13を介してトップシート14がバックシート12に接合される。バックシート12の幅方向の左右両側縁部の中央付近には、脚周りギャザーを形成するための糸ゴム16がそれぞれ伸長状態で接合されている。
【0018】
本実施形態における液透過性のトップシート14の幅方向の左右両側縁部には、立体ギャザーを形成する液不透過性の一対のサイドシート18が備えられている。一対のサイドシート18は、外側端縁部がカバーシート11の一対の切欠き部11Aと同様の形状に形成され、着用時に吸収体13の左右両側縁部に沿って起立し、着用者が排泄した尿の横漏れを防止するための部材である。一対のサイドシート18のそれぞれには、その内側端縁部を吸収体13側に折り返して把持させる形で立体ギャザー伸縮材としての糸ゴム19が伸張状態で配置され、糸ゴム19が収縮した際に、着用者の肌当接方向に向かって立ち上がる。立体ギャザーは従来の使い捨ておむつに用いられている公知の構成を採用することができる。例えば、撥水性シートの層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材を挟み込んで固定することにより、形成することができる。サイドシート18は、糸ゴム19の伸縮によって長手方向に引き寄せられ、図3に示されるように、内側端縁部が立ち上がった立体ギャザーとなる。
【0019】
次に本実施形態における吸収体部分の構造を説明する。
トップシート14の下に位置する本実施形態の吸収体13は、主にパルプとSAPとを含む吸収性材料からなる。吸収体13は、前身頃、股下および後身頃にわたるように、細長い形状をしている。股下領域10Cには、両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部に合わせて、円弧状をなす一対の切欠き部13Aが形成されている。なお、この切欠き部13Aは、吸収体13に必ずしも形成しなくてもよい。つまり、本実施形態の吸収体13は、切欠き部13Aが設けられていることで、中央部の幅が前後端に比べて狭い砂時計型のものであるが、吸収体の形状はこれに限られず、各種吸収性物品の形状に応じて様々な形状とすることができる。そして、これに応じて、後述する成形型プレート87の形状も適宜定め得るものである。
【0020】
図2および図3に示すように、吸収体13ないしおむつ10には、長手方向に向かって、凹部である溝22が形成されており、その溝22の底面にも厚み方向に吸収性材料が存在している。図示の例では、互いに所定の間隔をおいて3本の溝22が平行に延在している。以下では、かかる吸収体13およびおむつ10を製造する構成を説明する。しかし溝の数はこれに限られず、凹部の形状も平行に延在する複数の溝に限られない。そして、これに応じて、通気性部材の形状も適宜定め得るものである。
【0021】
[吸収性物品の製造工程の概要]
図4は、吸収性物品の製造装置の構成を模式的に示すとともに、同じく製造方法における製造工程を説明するための模式的側面図である。以下、図4を用いて吸収性物品および吸収体の製造の態様を説明するが、この図はあくまでも説明のための模式図であって、実際の形状や寸法などに正確に対応させたものではない。
【0022】
吸収性物品であるおむつ10の製造方法は、第1の薄化工程である第1の薄化手段である製造装置40(後に詳述する)を用いて、第1の薄化部分である複数の予備溝122を一方の面に有する吸収体母材113を作製する工程を含む。作製された吸収体母材113は、ロール56から巻き出されるコアラップ15用の長尺のウエブ41上に配置され、Y方向に搬送される。そして、例えば、コアラップ用ウエブ41の左右両側部分を吸収体母材113の上に折り返してこれを包み込み、その後、吸収体母材113を包んだ長尺のコアラップ用ウエブ41を、搬送方向に直交する方向に沿って切断する処理を施す(当該処理を行うための構成は不図示)。このように折り返されて吸収体母材113の上面を被覆しているコアラップ15を被覆するようにして、トップシート14用の長尺のウエブ44を配置する。ここで、トップシート用ウエブ44には、予め接着剤塗布部47によって適宜の部位に接着剤を塗布しておくことで、接合用ロール対48を通過する過程で、これらのコアラップ15およびトップシート用ウエブ44が互いに接着される。
【0023】
次に、コアラップ15およびトップシート用ウエブ44で包み込まれた吸収体母材113を、第2の薄化工程を実施する第2の薄化手段である圧搾ローラ140およびアンビルローラ141の間を通過させる。圧搾ローラ140は、吸収体母材113の予備溝122に対応した位置に凸部(不図示)を有し、その凸部をトップシート用ウエブ44およびコアラップ15ごと予備溝122の部位に突入させることで、最終的には図3に示したような所望の柔軟性を呈する溝22を有する吸収体13を形成することができるものであればよい。
【0024】
なお、本実施形態では、トップシート用ウエブ44を配置してから圧搾を行っているので、トップシート用ウエブ44およびコアラップ15も吸収体13の表面の形状に倣ったものとなっている。しかしトップシート用ウエブ44を吸収体13の表面の形状に倣ったものとする必要がなければ、圧搾ローラ140およびアンビルローラ141による圧搾部位は、トップシート用ウエブ44が配置される部位より上流側であってもよい。コアラップ15を使用しない形態であれば、ロール56から巻き出されるコアラップ15用のウエブ41上に吸収体母材113が配置された直後にその圧搾が行われるようにしてもよい。
【0025】
次に、吸収体13の背面側に位置するコアラップ15の面を被覆するとともに、その面の周囲においてトップシート用ウエブ44と接するようにして、長尺のバックシート12用のウエブ43を配置する。バックシート用ウエブ43にも適宜の部位に予め接着剤を塗布しておくことで、接合用ロール対49を通過する過程で、バックシート用ウエブ43と、コアラップ15およびトップシート用ウエブ44とが互いに接着されるようにすることができる。
【0026】
バックシート用ウエブ43の外側の面を被覆するようにして、長尺のカバーシート用ウエブ29を配置する。ここで、カバーシート用ウエブ29にも適宜の部位に予め接着剤を塗布しておくことで、接合用ロール対30を通過する過程で、カバーシート用ウエブ29およびバックシート用ウエブ43が互いに接着されるようにすることができる。このようにして得られた吸収性物品の連続体に対し、さらに所要の部分(サイドシート18等)の取り付けおよび所要の裁断を行う工程を付加することによって、図2および図3に示したような吸収性物品であるおむつ10を得ることができる。
【0027】
[吸収体の製造装置および製造方法の実施形態]
図5および図6を用い、吸収体母材113の製造装置40および製造方法を説明する。図5は特に図4の回転ドラム50の部位を示す模式的に示す斜視図、図6はその部位の分解斜視図であるが、これらの図はあくまでも説明のための模式図であって、実際の形状や寸法、あるいは各部の配置に正確に対応するものではない。
【0028】
本実施形態の製造装置40は、外周面33に複数(図示の例では4つ)の成形型プレート87が取り付けられ、回転軸Cを中心として回転する筒型の回転ドラム50と、回転ドラム50の外周面の一部を覆うように対向して配置される吸収性材料供給装置51と、を備えている。
【0029】
図6に示すように、回転ドラム50の本体は、回転ドラム50の軸方向の両端に配置された一対のリング部材83と、それらの軸方向の間隔を保った状態でリング部材83同士を連結する複数の連結プレート85と、を有している。そして、一対のリング部材83と連結プレート85とによって、通気性部材90および成形型プレート87が支持される。一対のリング部材83は、互いに同径の正円形状の環状体である。回転ドラム50の両端面にはリング部材83と相似形状の円形壁54が設けられて閉塞されており、これにより回転ドラム50の内側には実質的に閉塞された空間が画成される。
【0030】
成形型プレート87は、回転ドラム50の周長を、設けるべき成形型の個数(本実施形態では4つ)で等分した長さの円弧状プレートを本体とし、吸収体13の外周形状(本実施形態の場合、切欠き部13Aを含んだ形状)に一致する形状の成形型開口部88が形成されている。この成形型開口部88は、図5に示すように、通気性部材90を露出させることで、通気性部材90が吸収性材料を堆積すべき成形型の底面をなすものとなる。通気性部材90は、吸収性材料の堆積量を第1の薄化部分の形成位置に応じて調整可能とするために、吸収体母材113の一方の面(トップシート14が配置される側の面)の形状と相補的な形状の凸部45および平坦部32を有している。吸収体母材113には、最終的には図2に示したように厚み方向に窄まってゆく横断面台形状の溝22すなわち第2の薄化部分に対応した位置に、第1の薄化部分である予備溝122が間隔を置いて形成される。
【0031】
通気性部材90は、成形型開口部88の周縁部分に対して封止状態で固定される。連結プレート85は、例えば、回転ドラム50の軸に平行に延在する帯状の部材であり、成形型プレート87の成形型開口部88と重ならないように配置されている。これにより、通気性部材90は通気性を阻害されることなく保持される。
【0032】
なお、本実施形態では周囲が閉じた成形型開口部88を形成する成形型プレート87を用いたが、円周方向に分割され且つ長手方向に離隔して配置された一対のプレート要素で構成される成形型を用い、連続体形状の吸収体母材が形成されるようにしてもよい。そして、後工程、例えば図4について説明した加工を経た後に裁断を行うことによって個々のおむつを得ることができる。
【0033】
吸収性材料供給装置51は、例えば、終端が回転ドラム50の外周面の一部を覆うように対向して配置されて気流を搬送するダクトと、ダクト内に吸収性材料の原料であるパルプおよびSAPをそれぞれ供給する供給部と、を備えた構造とすることができる。したがって、吸収性材料は気流中に分散し、回転ドラム50との対向部位に移送される。
【0034】
成形型開口部88の内側すなわち通気性部材90上に吸収性材料を堆積させるには、例えば、回転ドラム50をX方向に連続的に回転させながら、吸収性材料供給装置51から通気性部材90上に吸収性材料を供給する。一方、回転ドラム50の内部を、例えば吸引ポンプなどによって負圧にすることによって、通気性部材90に貫通して設けられた開孔を介して吸収性材料を吸引しつつ、通気性部材90上に吸収性材料を堆積させることができる。
【0035】
図7は、通気性部材90を拡大して示す模式的斜視図である。図7に示されるように、本実施形態に係る通気性部材90は、全体が回転ドラム50の円周面に倣うように湾曲し、通気性部材90の長手方向、すなわち回転ドラム50の周方向に延在する山形の凸部45と凸部周辺の平坦部32とで形成されている。凸部45および平坦部32は、それぞれ、吸収性材料を吸引して堆積させる複数の網目状の通気孔91および通気孔92をそれぞれ有している。
【0036】
複数の通気孔を有する通気性部材90の表面に設けられる凸部は、その通気性を凸部周辺の通気性よりも低くして吸収性材料を堆積させることで、凸部に対応する吸収体の凹部の底面にも吸収性材料が堆積され、吸収体母材113を貫通しない予備溝122すなわち第1の薄化部分が形成されるようにするものである。その場合、通気性の高低は、通気孔を通る流量の大小に関連し、流量の大小は通気孔の開孔面積(より正確には、通気孔を通る気流の有効断面積)に関連する。したがって、凸部には、凸部の周辺の通気孔の開孔面積よりも小さい開孔面積を有する通気孔が少なくとも1つ設けられることが前提となる。本実施形態の場合、凸部45に形成された通気孔91の開孔面積は、平坦部32に形成された通気孔92の開孔面積より小となるように設定される。それを前提とした上で、凸部45の開孔率が平坦部32の開孔率より小さくなるように両者の関係が規定される。これによって、吸収体13の溝22の底面側にも吸収性材料が好ましく堆積され、且つ、バックシート12に接合する吸収体13の面の平坦化に資することができる。
【0037】
しかし吸収体母材113を貫通しない第1の薄化部分である予備溝122が形成できるのであれば、凸部45には通気孔91をもたない通気性部材が用いられてもよい。その場合、その通気性部材が吸収性材料供給装置51のダクト終端と対向する初期の位置では、通気孔92を有する平坦部32に吸収性材料が選択的に堆積する。その後の位置では、吸収性材料の堆積が進むにつれて、各平坦部の吸収性材料の堆積部同士が連結し、最終的には、吸収体母材113を貫通しない予備溝122が形成されるような装置構成とすればよい。
【0038】
[その他]
なお、以上述べた実施形態および随所に述べた変形例は、あくまでも例示であり、特許請求の範囲の記載の限定を企図したものではなく、他の実施形態、変更または変形が可能であることは勿論である。
【0039】
例えば、吸収体に形成する凹部は、上述したような平行に延在する複数の溝に限られない。例えば、図8(a)に示すように、格子状の溝23として形成されるものでもよい。この場合において、成形型への吸収性材料の堆積によって形成される第1の薄化部分は、格子状の溝全体としてもよい。しかし、格子点部分23Cは特に吸収性材料が強く圧搾され、柔軟性が低下したり、「SAP漏れ」が生じ易くなったりするので、格子点部分のみ、または格子点部分およびその近傍の部位が第1の薄化部分となるようにしてもよい。凹部は連続した線状の溝で形成されるものでなくてもよく、図8(b)に示すように、点在した凹部として形成されるものでもよい。
【0040】
加えて、以上の実施形態では、成形型によって予備的な凹部(予備溝)を形成し、圧搾によってそれをさらに深くした凹部を形成するようにした。すなわち、上述の実施形態は、第1の薄化部分と第2の薄化部分との形成位置が実質的に完全に一致するものである。しかしこれらは、一部重複して設けられるものであっても、あるいは吸収体の別の部位に設けられるものであってもよい。
【0041】
図9(a)および(b)の左側部分は、長手方向に交差する幅方向に沿って破断した吸収体母材113の断面を示しており、上面の両端部には長手方向(図面に直交する方向)に沿って延在する第1の薄化部分を形成する切欠き溝が設けられている。図9(a)の切欠き溝113aは、吸収体母材113を圧搾して、同図右側部分に示すような最終的な厚さtを有する吸収体13を形成するための圧搾量PM1よりも、少ない圧搾量PM2を実現するように形成されている。したがって、圧搾後の吸収体13は、比較的密度が大きく剛性の高い中央部分13bと、比較的密度が小さく柔軟な両端部分13aと、を有するものとなる。一方、図9(b)の切欠き溝113a’は、吸収体母材113を圧搾して、同図右側部分に示すような最終的な厚さtを有する吸収体13を形成するための圧搾に対して、実質的な圧搾が生じないように形成されている。したがって、圧搾後の吸収体13は、比較的密度が大きく剛性の高い中央部分13bと、元の吸収体母材113と同じ等しい密度を有した柔軟な両端部分13aと、を有するものとなる。吸収体13の幅方向の両端部には、おむつに適用される場合、両脚の太股部分を取り囲む部分(例えば、図2について説明した切欠き部13A)が形成される。したがって、この部分は、柔軟性やフィット感が求められる部位であるので、第1の薄化部分として切欠き溝113a,113a’を設けることは好ましい。
【0042】
上述の実施形態では、回転ドラムの周方向に、4つの通気性部材を等ピッチで1列に配列する構成としたが、通気性部材の個数、配列ピッチおよび回転軸に平行な方向の配列数はこれに限られず、適宜定め得るものである。さらに、上述の実施形態では、個々に分離した吸収体を製造するものとしたが、回転ドラムの周方向に沿って連続した形状の成形型プレートと通気性部材とを設けて長尺の吸収体シートを形成し、その後所定長さに切断して個々の吸収体を形成するものであってもよい。
【0043】
各成形型は、それぞれが別部材から構成されていても良いが、ドラムの円周上に亘る一の部材の中を区画に区切ることによって構成されていてもよい。さらに、上述の実施形態では、成形型を回転ドラムに担持させて吸収体材料の堆積を行うものとしたが、成型を行うための担持体はドラムの形態でなくてもよく、成形型の全体的な形状は、使用する担持体の形状に倣うものであればよい。
【0044】
上述の実施形態は、吸収体13を展開型おむつ10である吸収性物品に適用した場合について例示したが、パンツ型おむつ用の吸収体の作製にも適用可能であるのはいうまでもない。さらに吸収体の適用対象はそれらのようなおむつのみに限定されるものではなく、吸収パッドや尿漏れパッド等、他の一般的な各種吸収性物品全般に適用されるものである。
【符号の説明】
【0045】
10 おむつ
13 吸収体
14 トップシート
15 コアラップ
22 溝
45 凸部
50 回転ドラム
51 吸収性材料供給装置
87 成形型プレート
90 通気性部材
113 吸収体母材
113a,113a’ 切欠き溝
122 予備溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9