特許第6841165号(P6841165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841165
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20210301BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20210301BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20210301BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   G03G21/00 370
   G03G21/14
   B41J29/38 202
   G03G15/00 446
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-106786(P2017-106786)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-205346(P2018-205346A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】島本 邦彦
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−332954(JP,A)
【文献】 特開平10−058798(JP,A)
【文献】 特開平11−058888(JP,A)
【文献】 特開平01−308332(JP,A)
【文献】 特開平09−030079(JP,A)
【文献】 特開2004−318695(JP,A)
【文献】 特開平01−109422(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0130037(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0009791(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B41J 29/38
G03G 15/00
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ページ記述言語で記述された印刷データを受信する通信部と、
前記印刷データを解析してラスタライズするRIP処理を行う画像処理部と、
給紙位置、レジスト位置および印刷位置の順番で用紙を搬送するための用紙搬送路と、
前記給紙位置から前記用紙搬送路に用紙を給紙する給紙部と、
前記レジスト位置に到達した用紙の進行を一旦停止させた後、前記レジスト位置に到達した用紙を前記印刷位置に搬送するレジスト部と、
前記RIP処理により得られた画像データに基づく画像を前記印刷位置に搬送されてくる用紙に印刷する画像形成部と、
前記給紙部による給紙を制御する制御部と、
前記制御部により算出される給紙制御時間と前記印刷データに係るファイル名とを対応付けて記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記通信部が前記印刷データを新規に受信すると、前記通信部が新規に受信した前記印刷データである新規受信印刷データに係るファイル名を認識し、前記新規受信印刷データに係るファイル名が前記記憶部に記憶されていなければ、前記新規受信印刷データの1ページ目のデータに対する前記RIP処理の開始から終了までの時間である1ページ目処理時間を計測するとともに、前記給紙位置と前記レジスト位置との間の用紙搬送距離を用紙搬送速度で除することにより得られる時間を前記1ページ目処理時間から減算した時間を前記給紙制御時間として算出し、当該算出した前記給紙制御時間と前記新規受信印刷データに係るファイル名とを対応付けて前記記憶部に記憶させ、
前記制御部は、前記新規受信印刷データに係るファイル名が前記記憶部に記憶されていれば、前記新規受信印刷データの1ページ目のデータに対する前記RIP処理が開始されてから、前記新規受信印刷データに係るファイル名に対応付けられた前記給紙制御時間が経過したタイミングで、前記給紙部に1枚目の給紙を開始させ
前記通信部は、ユーザーにより使用されるユーザー端末と通信可能に接続され、前記ユーザー端末から前記印刷データを受信し、
前記ユーザー端末では、前記印刷データに固有ファイル名とは別に給紙制御用ファイル名を付加するか否かの設定が行われるとともに、前記印刷データに付加する前記給紙制御用ファイル名の設定が行われ、
前記制御部は、前記ユーザー端末にて設定された前記給紙制御用ファイル名が前記固有ファイル名とは別に前記新規受信印刷データに付加されていれば、前記新規受信印刷データに付加されている前記給紙制御用ファイル名を前記新規受信印刷データに係るファイル名と認識する一方、前記新規受信印刷データに前記給紙制御用ファイル名が付加されていなければ、前記新規受信印刷データに割り当てられた前記固有ファイル名を前記新規受信印刷データに係るファイル名と認識することを特徴とする画像形成装置
【請求項2】
前記制御部は、前記新規受信印刷データに係るファイル名が前記記憶部に記憶されていなければ、前記新規受信印刷データの1ページ目のデータに対する前記RIP処理が終了したタイミングで、前記給紙部に1枚目の給紙を開始させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に画像を印刷する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙を搬送し、搬送中の用紙に画像を印刷する画像形成装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。このような画像形成装置は、給紙位置から印刷位置に用紙を搬送するための用紙搬送路を備える。給紙位置には給紙部が設置され、印刷位置には画像形成部が設置される。給紙部は、給紙位置から用紙搬送路に用紙を給紙する。画像形成部は、給紙位置から印刷位置に搬送されてくる用紙に画像を印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−64219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置にユーザー端末(パーソナルコンピューターなど)を接続した場合には、ユーザー端末から画像形成装置に印刷データを送信し、当該送信した印刷データに基づく印刷を画像形成装置に実行させることができる。たとえば、ユーザー端末から画像形成装置へは、ページ記述言語で記述された印刷データが送信される。印刷データを受信した画像形成装置は、ページ記述言語を解析し、画像データ(ラスターデータ)を生成するRIP処理を行う。そして、画像形成装置は、RIP処理により得られた画像データに基づく画像を用紙に印刷する。
【0005】
画像形成装置によっては、印刷データの1ページ目のRIP処理が終了する前に1枚目の給紙を開始する場合がある。この場合には、1ページ目のRIP処理が終了したときに1枚目の給紙を開始する場合に比べて、ファーストプリントタイム(画像形成装置が印刷データを受信してから1枚目の印刷が終了するまでの時間)を短くすることができる。
【0006】
しかし、1ページ目のRIP処理にかかる時間は印刷データの内容によって異なる。1ページ目のRIP処理が終了する前に1枚目の給紙を開始する構成において、仮に、1ページ目のRIP処理にかかる時間が想定以上に長くなると、1枚目の用紙が印刷位置に到達するまでに1ページ目のRIP処理を終了させることができないという不都合が発生する。1枚目の用紙が印刷位置に到達するまでに1ページ目のRIP処理を終了させることができなければ、印刷を正常に行うことができない。
【0007】
このような不都合は、1ページ目のRIP処理が終了したときに1枚目の給紙を開始する構成においては発生しない。しかし、この構成では、ファーストプリントタイムを短くすることはできない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、印刷を正常に行うことができないという不都合が発生するのを抑制しつつ、ファーストプリントタイムを短くすることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、ページ記述言語で記述された印刷データを受信する通信部と、印刷データを解析してラスタライズするRIP処理を行う画像処理部と、給紙位置、レジスト位置および印刷位置の順番で用紙を搬送するための用紙搬送路と、給紙位置から用紙搬送路に用紙を給紙する給紙部と、レジスト位置に到達した用紙の進行を一旦停止させた後、レジスト位置に到達した用紙を印刷位置に搬送するレジスト部と、RIP処理により得られた画像データに基づく画像を印刷位置に搬送されてくる用紙に印刷する画像形成部と、給紙部による給紙を制御する制御部と、制御部により算出される給紙制御時間と印刷データに係るファイル名とを対応付けて記憶する記憶部と、を備える。制御部は、通信部が印刷データを新規に受信すると、通信部が新規に受信した印刷データである新規受信印刷データに係るファイル名を認識し、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部に記憶されていなければ、新規受信印刷データの1ページ目のデータに対するRIP処理の開始から終了までの時間である1ページ目処理時間を計測するとともに、給紙位置とレジスト位置との間の用紙搬送距離を用紙搬送速度で除することにより得られる時間を1ページ目処理時間から減算した時間を給紙制御時間として算出し、当該算出した給紙制御時間と新規受信印刷データに係るファイル名とを対応付けて記憶部に記憶させる。制御部は、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部に記憶されていれば、新規受信印刷データの1ページ目のデータに対するRIP処理が開始されてから、新規受信印刷データに係るファイル名に対応付けられた給紙制御時間が経過したタイミングで、給紙部に1枚目の給紙を開始させる。
【0010】
本発明の構成では、或る印刷データ(ここでは第1印刷データと称する)に基づく印刷を行って以降、第1印刷データと内容が略同じ印刷データに基づく印刷を行うとき、すなわち、第1印刷データと1ページ目処理時間が略同じになる印刷データ(ここでは第2印刷データと称する)に基づく印刷を行うとき、第2印刷データに係るファイル名を第1印刷データに係るファイル名と同じに設定しておけば、第2印刷データに基づく印刷の実行時に、第2印刷データの1ページ目のデータに対するRIP処理が開始されてから、第1印刷データに係るファイル名に対応付けられた給紙制御時間が経過したタイミングで、1枚目の給紙が開始される。すなわち、第2印刷データの1ページ目のデータに対するRIP処理が終了する前に1枚目の給紙が開始される。
【0011】
ここで、第2印刷データの1ページ目処理時間は第1印刷データの1ページ目処理時間と略同じになるので、第2印刷データに基づく印刷の実行時に、前記タイミングで1枚目の給紙が開始されると、第2印刷データの1ページ目のデータに対するRIP処理の終了タイミングが1枚目の用紙のレジスト位置への到達タイミングと略一致する。すなわち、第2印刷データの1ページ目のデータに対するRIP処理は1枚目の用紙が印刷位置に到達するまでに終了する。これにより、印刷を正常に行うことができないという不都合が発生するのを抑制しつつ、ファーストプリントタイムを短くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成では、印刷を正常に行うことができないという不都合が発生するのを抑制しつつ、ファーストプリントタイムを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による画像形成装置の構成を示す概略図
図2】本発明の一実施形態による画像形成装置の構成を示すブロック図
図3】本発明の一実施形態による画像形成装置の記憶部に記憶される給紙情報(給紙制御時間とファイル名とを対応付けた情報)について説明するための図
図4】本発明の一実施形態による画像形成装置の制御部が行う登録処理の流れを示すフローチャート
図5】本発明の一実施形態による画像形成装置の制御部が行うタイミング補正処理の流れを示すフローチャート
図6】本発明の一実施形態による画像形成装置の制御部が行うタイミング制御について説明するための図
図7】本発明の一実施形態による画像形成装置の制御部が行う登録処理について説明するための図
図8】本発明の一実施形態による画像形成装置の制御部が行うタイミング補正処理について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<画像形成装置の構成>
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、用紙Pを搬送するための用紙搬送路PP(破線で示す)を備える。用紙搬送路PPは、給紙位置P1から、レジスト位置P2、印刷位置P3および定着位置P4をこの順番で経由し、排出位置P5に至る。給紙位置P1には、印刷前の用紙Pを収容する用紙カセットCAが設置される。排出位置P5には、印刷後の用紙Pを貯留する排出トレイETが設置される。
【0015】
また、画像形成装置100は、用紙搬送路PPに用紙Pを給紙するとともに用紙搬送路PPに沿って用紙Pを搬送し、搬送中の用紙Pに画像を印刷する印刷部1を備える。印刷部1は、給紙部2、搬送部3、画像形成部4および定着部5を備える。
【0016】
給紙部2は、給紙位置P1に設置され、用紙カセットCAに収容された用紙Pを用紙搬送路PPに給紙する。給紙部2は、給紙ローラー21を含む。給紙ローラー21は、用紙カセットCAに収容された用紙Pに当接し、その状態で回転することにより、用紙カセットCAから用紙Pを引き出す。そして、給紙部2は、用紙カセットCAから引き出した用紙Pの用紙搬送路PPへの給紙(1次給紙)を行う。
【0017】
搬送部3は、用紙Pの搬送経路上に設置された複数の搬送ローラー対31を含む。複数の搬送ローラー対31は、それぞれ、用紙Pをニップするための搬送ニップを形成し、回転することにより、用紙搬送路PPに沿って用紙Pを搬送する。用紙搬送路PPに給紙された用紙Pは、給紙位置P1、レジスト位置P2、印刷位置P3、定着位置P4および排出位置P5の順番で搬送される。
【0018】
複数の搬送ローラー対31のうち1つはレジストローラー対32であり、レジストローラー対32はレジスト位置P2に設置される。レジストローラー対32の搬送ニップ(レジストニップ)の位置がレジスト位置P2となる。レジストローラー対32は「レジスト部」に相当する。
【0019】
レジストローラー対32は、用紙Pがレジスト位置P2に到達した時点では回転を停止している。これにより、レジスト位置P2に到達した用紙Pの進行は一旦停止される。このとき、レジスト位置P2よりも用紙搬送方向上流側の位置に設置された搬送ローラー対31(図1では図示せず)は回転を続行している。したがって、レジスト位置P2に到達した用紙Pの先端部分に撓みが形成される。このようにレジスト位置P2において用紙Pの進行を一旦停止させることにより、用紙Pの斜行が矯正される。そして、レジストローラー対32は、用紙Pの進行を停止させた後、回転を開始することにより、レジスト位置P2から印刷位置P3への用紙Pの搬送(2次給紙)を行う。
【0020】
画像形成部4は、用紙Pに印刷すべきトナー像(画像)を形成し、レジスト位置2から印刷位置P3に搬送されてくる用紙Pにトナー像を転写(印刷)する。画像形成部4は、感光体ドラム41、帯電装置42、露光装置43、現像装置44、転写ローラー45およびクリーニング装置46を含む。
【0021】
トナー像の形成時には、感光体ドラム41が回転し、感光体ドラム41の表面を帯電装置42が所定電位に帯電させる。露光装置43は、露光用の光ビームを発する発光素子(図示せず)を有しており、発光素子を点消灯させつつ感光体ドラム41の表面を走査露光する。これにより、感光体ドラム41の表面に静電潜像が形成される。現像装置44は、感光体ドラム41の表面に形成された静電潜像にトナーを供給し、静電潜像をトナー像に現像する。
【0022】
転写ローラー45は、感光体ドラム41の表面に圧接し、感光体ドラム41との間で転写ニップを形成する。当該転写ニップの位置が印刷位置P3となる。そして、用紙Pが印刷位置P3(転写ニップ)を通過するときに、感光体ドラム41の表面のトナー像が用紙Pに転写される。クリーニング装置46は、感光体ドラム41の表面に残留するトナーなどを除去する。
【0023】
定着部5は、定着ローラー対(加熱ローラーおよび加圧ローラー)を含む。加熱ローラーおよび加圧ローラーは、互いに圧接し、定着ニップを形成する。当該定着ニップの位置が定着位置P4となる。定着部5は、定着ニップを通過する用紙Pを加熱および加圧することにより、用紙Pに転写されたトナー像を用紙Pに定着させる。
【0024】
また、図2に示すように、画像形成装置100は、制御部6、通信部7、画像処理部8および記憶部9を備える。
【0025】
制御部6は、CPUを含む。制御部6は、印刷部1と接続される。制御部6は、制御用のプログラムおよびデータに基づき動作し、印刷部1による印刷を制御する印刷制御処理を行う。
【0026】
制御部6は、印刷制御処理の一処理として、用紙Pの搬送(給紙)を担う各種回転体を回転させるためのモーターの駆動を制御する処理を行う。当該モーターとしては、たとえば、給紙モーターM1や搬送モーターM2などがある。
【0027】
給紙モーターM1は、給紙部2の給紙ローラー21を回転させるモーターである。たとえば、給紙ローラー21は、図示しない給紙クラッチを介して、給紙モーターM1から駆動力を受け回転する。そして、制御部6は、給紙クラッチのオンオフを制御することにより、給紙ローラー21の回転と回転停止とを切り替える。
【0028】
搬送モーターM2は、搬送部3の複数の搬送ローラー対31を回転させるモーターである。たとえば、複数の搬送ローラー対31のうちレジストローラー対32は、図示しないレジストクラッチを介して、搬送モーターM2から駆動力を受け回転する。そして、制御部6は、レジストクラッチのオンオフを制御することにより、レジストローラー対32の回転と回転停止とを切り替える。
【0029】
また、制御部6は、用紙Pの搬送(給紙)を制御するためのセンサーと接続される。当該センサーとしては、たとえば、レジストセンサーRSなどがある。レジストセンサーRSは、発光部および受光部を有する透過型の光センサーであり、レジスト位置P2の手前の位置DP(図1参照)を検知位置とする。すなわち、給紙位置P1とレジスト位置P2との間の位置が検知位置DPとされる。なお、レジストセンサーRSは、検知位置DPにおける用紙Pの有無に応じて出力値を変化させる。
【0030】
制御部6は、レジストセンサーRSの出力値に基づき、検知位置DPにおける用紙Pの有無(用紙Pの先端到達および後端通過)を検知する。たとえば、制御部6は、検知結果に基づき、レジスト位置P2に用紙Pの先端が到達したか否かを判断する。
【0031】
通信部7は、画像形成装置100に外部機器を通信可能に接続するためのインターフェースであり、通信用回路や通信用メモリー、通信用コネクターなどを含む。制御部6は、通信部7を介して、外部機器と通信する。たとえば、画像形成装置100には、画像形成装置100のユーザーにより使用されるユーザー端末200が通信可能に接続される。なお、ユーザー端末200はパーソナルコンピューター(PC)などであり、ユーザー端末200にはプリンタードライバーがインストールされる。
【0032】
ユーザー端末200からは、ユーザー端末200にて生成された印刷データが送信される。なお、ユーザー端末200から送信される印刷データは、ページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述されたPDLデータである。制御部6は、通信部7が印刷データ(PDLデータ)を受信すると、印刷ジョブの実行要求を受けたと判断する。そして、制御部6は、印刷データに基づく印刷ジョブを実行する。
【0033】
画像処理部8は、画像処理用回路および画像処理用メモリーを含む。画像処理部8は、通信部7が受信した印刷データのページ記述言語を解析してラスタライズするRIP(Raster Image Processor)処理を行うことにより、印刷データを画像データ(ラスターデータ)に変換する。なお、画像処理部8は、印刷データに複数ページ分のページデータが含まれる場合、複数ページ分のページデータのそれぞれに対してRIP処理を行う(RIP処理を1ページごとに行う)。
【0034】
また、画像処理部8は、画像データに対して所定の画像処理(回転処理、拡大縮小処理および濃度変換処理など)を行う。その後、画像処理部8は、画像処理済みの画像データを露光用の画像データ(露光装置43の発光素子の点消灯を制御するためのデータ)に変換する。
【0035】
画像処理部8によって生成された画像データは、印刷部1(画像形成部4の露光装置43)に転送される。これにより、画像形成部4において、画像処理部8が生成した画像データに基づく静電潜像が形成され、当該形成された静電潜像がトナー像に現像される。そして、印刷位置P3に搬送されてくる用紙Pにトナー像が転写される。
【0036】
記憶部9は、不揮発性メモリー(ROM)および揮発性メモリー(RAM)を含む。制御部6は、記憶部9からの情報の読み出しを行うとともに、記憶部9への情報の書き込みを行う。たとえば、給紙部2により給紙される用紙Pの先端が給紙位置P1からレジスト位置P2に到達するまでにかかる時間(給紙位置P1とレジスト位置P2との間の用紙搬送時間)を示す情報が予め記憶部9に記憶される。給紙位置P1とレジスト位置P2との間の用紙搬送時間は、給紙位置P1とレジスト位置P2との間の用紙搬送距離(用紙搬送経路の長さ)を用紙搬送速度(線速)で除した時間である。また、記憶部9は、制御部6により算出される給紙制御時間と印刷データに係るファイル名と対応付けて記憶する。詳細は後述する。
【0037】
<登録処理>
記憶部9は、給紙部2による用紙搬送路PPへの用紙Pの給紙(1次給紙)を制御するためのデータベースDBを記憶する。データベースDBには、制御部6により算出される給紙制御時間と印刷データに係るファイル名とを対応付けた給紙情報90がファイル名ごとに格納される。給紙制御時間とファイル名との対応関係の一例を図3に示す。
【0038】
記憶部9に給紙情報90を記憶(登録)する登録処理は制御部6により行われる。具体的には、制御部6は、通信部7が印刷データを新規に受信すると、通信部7が新規に受信した印刷データ(以下の説明では、通信部7が新規に受信した印刷データを新規受信印刷データと称する)に係るファイル名を認識する。そして、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名と給紙制御時間とを対応付けた給紙情報90が記憶部9に記憶されていなければ、新規受信印刷データに係るファイル名を登録対象に設定し登録処理を行う。
【0039】
以下に、図4に示すフローチャートを参照し、制御部6により行われる登録処理の流れを説明する。図4に示すフローチャートは、通信部7が印刷データ(PDLデータ)を新規に受信したことを制御部6が検知したときにスタートする。
【0040】
ステップS1において、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名を認識するファイル名認識処理を行う。このとき、制御部6は、新規受信印刷データに割り当てられた固有ファイル名を新規受信印刷データに係るファイル名と認識する。あるいは、制御部6は、新規受信印刷データに固有ファイル名とは別に給紙制御用ファイル名が付加されていれば、新規受信印刷データに付加された給紙制御用ファイル名を新規受信印刷データに係るファイル名と認識する。たとえば、ユーザー端末200から画像形成装置100に印刷データを送信するときに、印刷データに給紙制御用ファイル名を付加するか否かの設定や、印刷データに付加する給紙制御用ファイル名の設定をユーザー端末200にて行うことができる。
【0041】
また、ステップS2において、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名(ステップS1の処理で認識したファイル名)をデータベースDBから検索するファイル名検索処理を行う。そして、ステップS3において、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名が見つかったか否かを判断する。言い換えると、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されているか否かを判断する。
【0042】
ステップS3において、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されていると制御部6が判断した場合には、本フローは終了する(制御部6による登録処理は行われない)。一方で、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されていないと制御部6が判断した場合には、制御部6による登録処理が行われる。この場合には、ステップS4に移行する。
【0043】
ステップS4に移行すると、制御部6は、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理の開始から終了までの時間(以下の説明では、1ページ目処理時間と称する)を計測する。また、ステップS5において、制御部6は、1ページ目処理時間から給紙位置P1とレジスト位置P2との間の用紙搬送時間(給紙部2により給紙される用紙Pの先端が給紙位置P1からレジスト位置P2に到達するまでにかかる時間)を減算した時間を給紙制御時間として算出する。ここで算出される給紙制御時間は、1ページ目処理時間よりも短い時間となる。
【0044】
そして、ステップS6において、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名と給紙制御時間(ステップS5の処理で算出した時間)とを対応付けて記憶部9に記憶させる。これにより、新規受信印刷データに係るファイル名と給紙制御時間とを対応付けた給紙情報90がデータベースDBに追加登録される。
【0045】
<タイミング補正処理>
制御部6は、通信部7が印刷データを新規に受信すると、通信部7が新規に受信した印刷データ(以下の説明では、通信部7が新規に受信した印刷データを新規受信印刷データと称する)に係るファイル名を認識する。そして、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名に基づき、給紙部2による1枚目の給紙の開始タイミングを調整するタイミング補正処理を行う。
【0046】
以下に、図5に示すフローチャートを参照し、制御部6により行われるタイミング補正処理の流れを説明する。図5に示すフローチャートは、通信部7が印刷データ(PDLデータ)を新規に受信したことを制御部6が検知したときにスタートする。
【0047】
ステップS11において、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名を認識するファイル名認識処理を行う。このときに制御部6が行うファイル名認識処理は、図4に示したステップS1の処理と同じである。すなわち、新規受信印刷データに給紙制御用ファイル名が付加されていない場合、制御部6は、新規受信印刷データに割り当てられた固有ファイル名を新規受信印刷データに係るファイル名と認識する。一方で、新規受信印刷データに給紙制御用ファイル名が付加されている場合、制御部6は、新規受信印刷データに付加された給紙制御用ファイル名を新規受信印刷データに係るファイル名と認識する。
【0048】
また、ステップS12において、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名(ステップS11の処理で認識したファイル名)をデータベースDBから検索するファイル名検索処理を行う。このときに制御部6が行うファイル名検索処理は、図4に示したステップS2の処理と同じである。そして、ステップS13において、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名が見つかったか否か(新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されているか否か)を判断する。
【0049】
ステップS13において、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されていない(ファイル名が未登録である)と制御部6が判断した場合には、ステップS14に移行する。ステップS14に移行すると、制御部6は、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が終了したか否かを判断する。その結果、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が終了したと制御部6が判断した場合には、ステップS15に移行し、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が終了していないと制御部6が判断した場合には、ステップS14の処理(制御部6による判断)が繰り返される。
【0050】
ステップS14からステップS15に移行すると、制御部6は、給紙部2に1枚目の給紙を開始させる。すなわち、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されていない場合には、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が終了したタイミングで、給紙部2による1枚目の給紙が開始される。なお、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されていない場合には、並行して、制御部6による登録処理(図4に示したステップS4〜S6の各処理)が行われる。
【0051】
ステップS13において、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されている(ファイル名が登録済みである)と制御部6が判断した場合には、制御部6によるタイミング補正処理が行われる。この場合には、ステップS16に移行する。新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されているということは、新規受信印刷データに係るファイル名と給紙制御時間とを対応付けた給紙情報90がデータベースDBに格納されている(新規受信印刷データに係るファイル名に対応付けられた給紙制御時間が存在する)ということである。
【0052】
ステップS16に移行すると、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名に対応付けられた給紙制御時間を認識する。そして、制御部6は、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が開始されてからの経過時間が新規受信印刷データに係るファイル名に対応付けられた給紙制御時間に到達したか否かを判断する。その結果、経過時間が給紙制御時間に到達したと制御部6が判断した場合には、ステップS15に移行し、経過時間が給紙制御時間に到達していないと制御部6が判断した場合には、ステップS16の処理(制御部6による判断)が繰り返される。
【0053】
ステップS16からステップS15に移行すると、制御部6は、給紙部2に1枚目の給紙を開始させる。すなわち、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されている場合には、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理の開始から、新規受信印刷データに係るファイル名に対応付けられた給紙制御時間が経過したタイミングで、給紙部2による1枚目の給紙が開始される。
【0054】
本実施形態の画像形成装置100は、上記のように、ページ記述言語で記述された印刷データを受信する通信部7と、印刷データを解析してラスタライズするRIP処理を行う画像処理部8と、給紙位置P1、レジスト位置P2および印刷位置P3の順番で用紙Pを搬送するための用紙搬送路PPと、給紙位置P1から用紙搬送路PPに用紙Pを給紙する給紙部2と、レジスト位置P2に到達した用紙Pの進行を一旦停止させた後、レジスト位置P2に到達した用紙Pを印刷位置P3に搬送するレジストローラー対32(レジスト部)と、RIP処理により得られた画像データに基づく画像を印刷位置P3に搬送されてくる用紙Pに印刷する画像形成部4と、給紙部2による給紙を制御する制御部4と、制御部6により算出される給紙制御時間と印刷データに係るファイル名とを対応付けて記憶する記憶部9と、を備える。制御部6は、通信部7が印刷データを新規に受信すると、通信部7が新規に受信した印刷データである新規受信印刷データに係るファイル名を認識し、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されていなければ、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理の開始から終了までの時間である1ページ目処理時間を計測するとともに、給紙位置P1とレジスト位置P2との間の用紙搬送距離を用紙搬送速度で除することにより得られる時間を1ページ目処理時間から減算した時間を給紙制御時間として算出し、当該算出した給紙制御時間と新規受信印刷データに係るファイル名とを対応付けて記憶部9に記憶させる。
【0055】
制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されていれば、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が開始されてから、新規受信印刷データに係るファイル名に対応付けられた給紙制御時間が経過したタイミングで、給紙部2に1枚目の給紙を開始させる。なお、制御部6は、新規受信印刷データに係るファイル名が記憶部9に記憶されていなければ、新規受信印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が終了したタイミングで、給紙部2に1枚目の給紙を開始させる。
【0056】
本実施形態の構成では、印刷を正常に行うことができないという不都合が発生するのを抑制しつつ、ファーストプリントタイムを短くすることができる。
【0057】
たとえば、ユーザーがユーザー端末200から画像形成装置100に対して、第1印刷データ(PDLデータ)を送信したとする。また、第1印刷データに係るファイル名が未登録であったとする。ここでは、ユーザーが第1印刷データに係るファイル名を「ddd」に設定したとする。
【0058】
この場合、図6に示すように、制御部6は、第1印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が終了したとき、給紙部2による1枚目の給紙(1次給紙)を開始させる。すなわち、第1印刷データに基づく印刷ジョブの実行時には、第1印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が終了してから、給紙位置P1とレジスト位置P2との間の用紙搬送時間(給紙部2により給紙される用紙Pの先端が給紙位置P1からレジスト位置P2に到達するまでにかかる時間)が経過したタイミングで、1枚目の用紙Pがレジスト位置P2に到達する。このため、第1印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理が終了する前に1枚目の用紙Pが印刷位置P3に到達するという不都合は発生しない。
【0059】
また、制御部6は、第1印刷データに基づく印刷ジョブの実行時に、1ページ目処理時間(第1印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理の開始から終了までの時間)を計測し、1ページ目処理時間から給紙位置P1とレジスト位置P2との間の用紙搬送時間を減算することによって給紙制御時間(ここでは「2.5秒」とする)を算出する。そして、図7に示すように、制御部6は、給紙制御時間「2.5秒」とファイル名「ddd」とを対応付けた給紙情報90をデータベースDBに追加登録する。
【0060】
それ以降、ユーザーがユーザー端末200から画像形成装置100に対して、第1印刷データと内容が略同じ第2印刷データ(PDLデータ)を送信したとする。また、ユーザーが第2印刷データに係るファイル名を第1印刷データに係るファイル名と同じ「ddd」に設定したとする。
【0061】
この場合、図8に示すように、制御部6は、第2印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理の開始から、ファイル名「ddd」に対応付けられた給紙制御時間「2.5秒」が経過したタイミングで、給紙部2による1枚目の給紙(1次給紙)を開始させる。これにより、第2印刷データに基づく印刷ジョブでは、第1印刷データに基づく印刷ジョブに比べて、1枚目の用紙Pのレジスト位置P2への到達が早まる。すなわち、ファーストプリントタイムが短くなる。
【0062】
ここで、第2印刷データの内容は第1印刷データの内容と略同じであるので、1ページ目のページデータに対するRIP処理にかかる時間(1ページ目処理時間)は第1印刷データと第2印刷データとで略同じとなる。したがって、第2印刷データに基づく印刷ジョブの実行時に、第2印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理の開始からファイル名「ddd」に対応付けられた給紙制御時間「2.5秒」が経過したタイミングで1枚目の給紙を開始すると、第2印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理の終了タイミングと1枚目の用紙Pのレジスト位置P2への到達タイミングとが略一致する。すなわち、第2印刷データの1ページ目のページデータに対するRIP処理は1枚目の用紙Pが印刷位置P3に到達するまでに終了する。これにより、印刷を正常に行うことができないという不都合は発生しない。
【0063】
また、前記例の場合、ユーザー端末200から画像形成装置100に第2印刷データを送信するときに、第2印刷データに固有ファイル名として第1印刷データに係るファイル名を割り当てるだけで、印刷を正常に行うことができないという不都合が発生するのを抑制しつつ、ファーストプリントタイムを短くすることができる。第2印刷データに割り当てた固有ファイル名を変えたくない場合には、第2印刷データに給紙制御用ファイル名として第1印刷データに係るファイル名を付加すればよい。
【0064】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0065】
2 給紙部
4 画像形成部
6 制御部
7 通信部
8 画像処理部
9 記憶部
32 レジストローラー対(レジスト部)
100 画像形成装置
PP 用紙搬送路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8