特許第6841168号(P6841168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6841168音声到達確認システムおよび音声到達確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841168
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】音声到達確認システムおよび音声到達確認方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20210301BHJP
   H04R 27/00 20060101ALI20210301BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20210301BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20210301BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   G08B27/00 C
   H04R27/00 Z
   B64C27/08
   B64C39/02
   G08B21/02
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-119012(P2017-119012)
(22)【出願日】2017年6月16日
(65)【公開番号】特開2019-3507(P2019-3507A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】福本 直紀
(72)【発明者】
【氏名】乙吉 清司
(72)【発明者】
【氏名】明神 正典
(72)【発明者】
【氏名】大山 茂
(72)【発明者】
【氏名】西迫 康隆
(72)【発明者】
【氏名】東 孝生
(72)【発明者】
【氏名】原田 勉
(72)【発明者】
【氏名】秋山 広行
(72)【発明者】
【氏名】岩田 裕貴
【審査官】 大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−085681(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/171160(WO,A1)
【文献】 特開2012−194818(JP,A)
【文献】 特開2006−268667(JP,A)
【文献】 特開2012−198618(JP,A)
【文献】 特開2006−072767(JP,A)
【文献】 特開2017−091064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00−29/00
B64C 27/00
B64C 39/00
H04R 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験用の音声を出力する試験用スピーカーを搭載し、放流警報音を出力する警報用スピーカーの設置予定位置において前記試験用の音声を出力する第1の無人航空機と、
マイクを搭載し、前記設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲において当該マイクによる前記試験用の音声の検出をおこない、当該音声到達予定範囲における検出結果に関する情報を出力する第2の無人航空機と、
を備えたことを特徴とする音声到達確認システム。
【請求項2】
前記第2の無人航空機は、前記音声到達予定範囲において前記試験用の音声を検出できない位置がある場合、前記マイクの高さを変更して、再度、前記検出をおこなうことを特徴とする請求項1に記載の音声到達確認システム。
【請求項3】
前記第1の無人航空機は、前記試験用の音声の検出結果に基づいて、前記音声到達予定範囲において前記試験用の音声を検出できない位置がある場合、前記試験用スピーカーの高さを変更して、再度、前記試験用の音声を出力することを特徴とする請求項1に記載の音声到達確認システム。
【請求項4】
前記第1の無人航空機は、前記第2の無人航空機から出力された情報に基づいて、つぎの設置予定位置を決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の音声到達確認システム。
【請求項5】
前記第2の無人航空機は、前記試験用の音声の検出結果に基づいて、つぎの設置予定位置を決定し、決定されたつぎの設置予定位置に関する情報を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の音声到達確認システム。
【請求項6】
前記第1の無人航空機は、前記第2の無人航空機から出力された情報に基づいて、決定されたつぎの設置予定位置において前記試験用の音声を出力し、
前記第2の無人航空機は、つぎの設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲における前記試験用の音声の検出結果に関する情報を出力することを特徴とする請求項4または5に記載の音声到達確認システム。
【請求項7】
前記第2の無人航空機は、前記音声到達予定範囲において検出された前記試験用の音声が、所定の基準値に満たない場合に録音をおこなう録音装置を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の音声到達確認システム。
【請求項8】
放流警報音を出力する警報用スピーカーの設置予定位置において、試験用の音声を出力する試験用スピーカーを搭載した第1の無人航空機から前記試験用の音声を出力し、
マイクを搭載した第2の無人航空機により、前記設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲において当該マイクによる前記試験用の音声の検出をおこない、当該音声到達予定範囲における検出結果に関する情報に基づいて、つぎの設置予定位置を決定し、
決定されたつぎの設置予定位置において、前記第1の無人航空機から前記試験用の音声を出力し、
前記第2の無人航空機により、前記つぎの設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲において当該マイクによる前記試験用の音声の検出をおこなう、
ことを特徴とする音声到達確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカーから出力される音声の到達状況の確認に用いる音声到達確認システムおよび音声到達確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムが放流する際、ダムの下流にいる人に避難してもらうために、河川が増水することを警告する放流警報装置がある。放流警報装置は、複数のスピーカーを備え、各スピーカーから警告用の音声を発することによって河川が増水することを警告する。このため、複数のスピーカーは、河川の全域に音声が到達するよう設置する必要がある。従来、放流警報装置が備えるスピーカーの設置場所は、机上設計の後、現地において実際に作業者が河川に入り、音声が必要な範囲全域に到達しているかを確認していた。
【0003】
関連する技術として、従来、たとえば、警報音を発信した親局が、最下流に設置された子局における警報音の発信を示す吹鳴情報を受信したか否かに応じて警報音の伝達の正常/異常を表示するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。また、従来、たとえば、集音マイクによって集音されたサイレンおよびスピーカの出力音を取り込み、規定値と比較して正常/異常を検出するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−198618号公報
【特許文献2】特開2001−236587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術は、広範囲にわたる河川流域において、複数の作業員が移動しながら音声の到達や到達音量の確認をおこなう必要があるため、作業時間が長くなり、また、多くの作業員が必要となるという問題があった。また、上述した従来の技術は、作業者が河川に入って作業する必要があるため、作業者の安全性の確保が求められていた。
【0006】
また、上述した従来の技術は、スピーカーの高さや位置の変更が容易ではないため、現地において音声の到達や到達音量の確認をおこなう際に細かい調整をおこなうことが難しく、小規模な見直しをおこなう場合にも作業時間が長くなってしまうという問題があった。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、音声到達確認作業に関わる作業者の安全性を確保するとともに、作業時間の短縮および作業者数の低減を図ることができる音声到達確認システムおよび音声到達確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる音声到達確認システムは、試験用の音声を出力する試験用スピーカーを搭載し、放流警報音を出力する警報用スピーカーの設置予定位置において前記試験用の音声を出力する第1の無人航空機と、マイクを搭載し、前記設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲において当該マイクによる前記試験用の音声の検出をおこない、当該音声到達予定範囲における検出結果に関する情報を出力する第2の無人航空機と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる音声到達確認システムは、上記の発明において、前記第2の無人航空機が、前記音声到達予定範囲において前記試験用の音声を検出できない位置がある場合、前記マイクの高さを変更して、再度、前記検出をおこなうことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる音声到達確認システムは、上記の発明において、前記第1の無人航空機が、前記試験用の音声の検出結果に基づいて、前記音声到達予定範囲において前記試験用の音声を検出できない位置がある場合、前記試験用スピーカーの高さを変更して、再度、前記試験用の音声を出力することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる音声到達確認システムは、上記の発明において、前記第1の無人航空機が、前記第2の無人航空機から出力された情報に基づいて、つぎの設置予定位置を決定することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる音声到達確認システムは、上記の発明において、前記第2の無人航空機が、前記試験用の音声の検出結果に基づいて、つぎの設置予定位置を決定し、決定されたつぎの設置予定位置に関する情報を出力することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる音声到達確認システムは、上記の発明において、前記第1の無人航空機が、前記第2の無人航空機から出力された情報に基づいて、決定されたつぎの設置予定位置において前記試験用の音声を出力し、前記第2の無人航空機が、つぎの設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲における前記試験用の音声の検出結果に関する情報を出力することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる音声到達確認システムは、上記の発明において、前記第2の無人航空機が、前記音声到達予定範囲において検出された前記試験用の音声が、所定の基準値に満たない場合に録音をおこなう録音装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる音声到達確認方法は、放流警報音を出力する警報用スピーカーの設置予定位置において、試験用の音声を出力する試験用スピーカーを搭載した第1の無人航空機から前記試験用の音声を出力し、マイクを搭載した第2の無人航空機により、前記設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲において当該マイクによる前記試験用の音声の検出をおこない、当該音声到達予定範囲における検出結果に関する情報に基づいて、つぎの設置予定位置を決定し、決定されたつぎの設置予定位置において、前記第1の無人航空機から前記試験用の音声を出力し、前記第2の無人航空機により、前記つぎの設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲において当該マイクによる前記試験用の音声の検出をおこなう、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明にかかる音声到達確認システムおよび音声到達確認方法によれば、音声到達確認作業に関わる作業者の安全性を確保するとともに、作業時間の短縮および作業者数の低減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システムのシステム構成を示す説明図である。
図2】無人航空機のハードウエア構成を示す説明図である。
図3】音声到達確認システムの機能的構成を示す説明図である。
図4】音声到達確認システムの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる音声到達確認システムおよび音声到達確認方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
(音声到達確認システムのシステム構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システムのシステム構成について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システムのシステム構成を示す説明図である。
【0020】
図1において、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100は、複数の無人航空機110によって構成される。無人航空機110は、複数のプロペラ111を備えた、いわゆるドローンと称される飛行体によって実現することができる。具体的には、無人航空機110は、4つのプロペラ111を備えたクアッドコプター、6つのプロペラ111を備えたヘキサコプター、8つのプロペラ111を備えたオクトコプターなど、各種のマルチコプターによって実現することができる。
【0021】
複数の無人航空機110のうち、少なくとも1機は、試験用の音声を出力する試験用スピーカー112を搭載している。この実施の形態においては、試験用スピーカー112を搭載した無人航空機110によって、この発明にかかる第1の無人航空機が実現される。
【0022】
試験用スピーカー112を搭載した無人航空機110は、音声到達確認作業に際して、警報用スピーカー101の設置予定位置から試験用の音声を出力する。試験用の音声は、ダム貯水池102内に貯留された水を下流に流す、いわゆる放流に際しての放流警報音とは異なる音声であって、具体的には、サイレン音、あるいは「ただ今放流警報のテスト中です」などのガイダンス音声などによって実現することができる。
【0023】
警報用スピーカー101は、音声到達必要範囲103の全域に放流警報音が到達するように、音声到達必要範囲103内あるいは音声到達必要範囲103の周辺に複数設置する必要がある。警報用スピーカー101のうち、もっとも上流側(ダム側)に設定される警報用スピーカー101aの設置予定位置は、机上の設計によってあらかじめ決定されている。
【0024】
警報用スピーカー101のうち、警報用スピーカー101a以外の警報用スピーカー101bの設置予定位置は、音声到達確認システム100を用いて決定することができる。警報用スピーカー101bの設置予定位置は、机上の設計によっておおよその位置があらかじめ決定されていてもよい。
【0025】
複数の無人航空機110のうち、第1の無人航空機を実現する無人航空機110とは別の無人航空機110は、マイク113を搭載している。この実施の形態においては、マイク113を搭載した無人航空機110によって、この発明にかかる第2の無人航空機が実現される。マイク113を搭載した無人航空機110は、音声到達確認作業に際して、あらかじめ設定された音声到達予定範囲104を飛行し、当該音声到達予定範囲104において試験用の音声の検出をおこなう。
【0026】
音声到達予定範囲104は、警報用スピーカー101から出力される音声が到達すると予定される範囲であって、警報用スピーカー101の設置位置や設置状態(音声の出力方向)などによって定まる。音声到達予定範囲104は、各所に設置される警報用スピーカー101ごとに、机上の設計によっておおよその位置や広さを求めることができる。音声到達予定範囲104は、各警報用スピーカー101の前方に広がる。
【0027】
複数の警報用スピーカー101は、すべての警報用スピーカー101から放流警告音を出力した場合に、当該放流警告音が音声到達必要範囲103の全域に到達するように設置されていればよく、それぞれの音声到達予定範囲104は、たとえば隣り合う音声到達予定範囲104と重複していてもよい。
【0028】
また、複数の警報用スピーカー101は、音声到達必要範囲103の全域に到達するように設置する必要がある一方で、河川105の流域の住民などに対する騒音問題を回避するため、河川105における河川敷(低水路および高水敷)など限定された範囲にのみ放流警報が到達するように設置することが好ましい。このような背景から、音声到達必要範囲103は、河川敷、あるいは、河川敷に堤防敷を加えた河川区域などに限定される。このため、各警報用スピーカー101は、各音声到達予定範囲104が、音声到達必要範囲103の外郭を大きく逸脱しないように設置する必要がある。
【0029】
音声到達確認作業に際して、第2の無人航空機を実現する無人航空機110が試験用の音声の到達確認をおこなう範囲は、机上の設計によって求められる音声到達予定範囲104と重複する範囲であってもよく、当該音声到達予定範囲104と重複し当該音声到達予定範囲104よりも若干広い範囲であってもよい。音声到達予定範囲104よりも若干広い範囲において試験用の音声の到達確認をおこなうことにより、音声が到達していることに加えて、放流警報音が音声到達必要範囲103の外郭を大きく逸脱しないかを確認することができる。
【0030】
マイク113は、無人航空機110のプロペラ111から所定距離以上離れた位置に設けられていることが好ましい。具体的には、たとえば、無人航空機110の本体にワイヤー113aなどを取り付け、このワイヤー113aによってマイク113を吊り下げることにより、マイク113をプロペラ111から所定距離以上離すことができる。これにより、試験用の音声の検出に際して、プロペラ111が回転することによる風切り音などの雑音をマイク113が検出することを回避し、試験用の音声を高精度に検出することができる。
【0031】
ワイヤー113aは、図示を省略する電動リールなどを介して無人航空機110の本体に取り付けられるように構成してもよい。これにより、無人航空機110が音声到達確認作業の現場まで移動する間はワイヤー113aを巻き上げてマイク113を無人航空機110の本体に近づけておくことができ、移動中にワイヤー113aが周囲に引っかかって無人航空機110が破損したりすることを回避できる。
【0032】
第2の無人航空機を実現する無人航空機110は、音声到達予定範囲104における、試験用の音声の検出結果に関する情報を出力する。試験用の音声の検出結果は、たとえば、音声到達予定範囲104の全域において所定の基準値以上の大きさの試験用の音声を検出したか否かを示す。所定の基準値は、人間が聞いたときに、放流警報音を放流警報であると認識できる程度の大きさに設定される。
【0033】
あるいは、試験用の音声の検出結果は、たとえば、試験用の音声の検出位置と、当該検出位置において検出した試験用の音声の大きさと、を示してもよい。試験用の音声の検出位置は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)データと、海抜と、を含む。GNSSデータは、たとえば、GPS座標によって実現することができる。GPS座標は、緯度経度を示す。海抜は、GPS座標によって特定される位置の近傍の港湾における平均海面を基準(海抜0メートル)とした高さを示す。
【0034】
また、あるいは、試験用の音声の検出結果は、たとえば、音声到達予定範囲104において、基準値以上の大きさの試験用の音声が検出できなかった検出位置(GNSSデータ)と、当該検出位置において検出した試験用の音声の大きさと、を示してもよい。
【0035】
複数の無人航空機110は、それぞれが、試験用スピーカー112とマイク113とを搭載していてもよい。この場合、試験用の音声を出力する無人航空機110によって第1の無人航空機が実現され、当該試験用の音声を検出する無人航空機110によって第2の無人航空機が実現される。この実施の形態においては、以降、複数の無人航空機110のそれぞれが、試験用スピーカー112とマイク113とを搭載している例について説明する。
【0036】
音声到達確認システム100は、無人航空機110と通信をおこなう端末装置を備えている(図3を参照)。端末装置は、無人航空機110との通信をおこなう通信手段や、通信手段による通信結果に基づく情報を表示するディスプレイ、および、操作端末に対する入力操作を受け付ける入力手段などを備えている。端末装置は、具体的には、たとえば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンなどによって実現することができる。
【0037】
端末装置は、インターネットなどのネットワークを介して無人航空機110と通信をおこなってもよく、無人航空機110と直接通信をおこなってもよい。端末装置は、無人航空機110と通信をおこなうことにより、無人航空機110に対して制御信号を出力したり、無人航空機110から出力される各種の情報を受信したりする。
【0038】
(無人航空機110のハードウエア構成)
つぎに、無人航空機110のハードウエア構成について説明する。図2は、無人航空機110のハードウエア構成を示す説明図である。図2において、無人航空機110は、モータ211、マイク113、試験用スピーカー112、GPS(Global Positioning System)受信機212、無線機213、制御回路214、によって構成される。
【0039】
モータ211は、制御回路214によって制御され、回転することによってプロペラ111を回転させる。モータ211は、具体的には、たとえば、回転子が永久磁石であって、固定子がコイルによって構成されるブラシレスモータを使用することができる。
【0040】
無人航空機110が電動リールを備える場合、制御回路214は、当該電動リールを正逆回転させるモータの制御もつかさどる。電動リールは、たとえば、正回転するように制御された場合にワイヤー113aを繰り出す方向に回転し、逆回転するように制御された場合にワイヤー113aを巻き取る方向に回転する。
【0041】
試験用スピーカー112は、たとえば、デジタル形式の試験用の音声データをデジタル/アナログ変換し、アナログ形式の音声データに基づいてスピーカーコーンにおけるコイルに通電するなどして試験用の音声を出力する。
【0042】
マイク113は、アナログデータとして入力された音声を電気信号に変換する。具体的に、マイク113は、アナログデータとして入力されたアナログの音声信号を、アナログ/デジタル変換し、デジタル形式の音声データを生成する。
【0043】
GPS受信機212は、GPSアンテナ、RF(Radio Frequency)部、ベースバンド部などを備えている。GPSアンテナは、GPS衛星が放送する電波を受信する。RF部は、GPSアンテナが受信した変調前の信号をベースバンド信号に復調する。ベースバンド部は、RF部が復調したベースバンド信号に基づいて無人航空機110の現在位置を算出する。
【0044】
無人航空機110の現在位置は、複数のGPS衛星から送信される電波に基づく測位によって特定することができる。ベースバンド部は、4機のGPS衛星との距離をそれぞれ算出し、それぞれの距離が一つに交わる位置を算出することによって測位をおこなう。GPS衛星から受信した電波に基づいて、GPS衛星と無人航空機110との幾何学的位置を求めるGPSに代えて、みちびき、グローナス(GLONASS)、ガリレオ(Galileo)などの衛星測位システムを用いて無人航空機110の現在位置を特定してもよい。
【0045】
無線機213は、アンテナと、RF部と、ベースバンド部と、を備えている。アンテナは、電磁波を受信して電気信号に変換する。また、アンテナは、制御回路214から出力される電気信号を電磁波に変換する。RF部は、アンテナが受信した変調前のアナログ信号をベースバンド信号に復調する。また、RF部は、ベースバンド部からD/A変換されて出力されたアナログ信号の信号処理をおこないアンテナに出力する。
【0046】
ベースバンド部は、RF部が復調したベースバンド信号を制御回路に出力する。また、ベースバンド部は、制御回路から出力された各種の情報を、RF部に出力する。無線機213は、さらに、不要成分を除去するフィルタや、LNA(Low Noise Amplifier)やパワーアンプPA(Power Amplifier)などの増幅器を備えていてもよい。
【0047】
制御回路214は、CPUやメモリなどによって構成され、無人航空機110が備える各部を駆動制御する。制御回路214は、具体的には、たとえば、フライトコントローラやESC(Electronic Speed Controller)などを備えている。制御回路214は、さらに、BEC(Battery Elimination Circuit)やUBEC(Universal BEC)を備えていてもよい。
【0048】
フライトコントローラは、モータ211の回転制御にかかる演算をおこない、制御信号を出力する。ESCは、フライトコントローラから出力された制御信号に基づきモータ211を回転制御する。フライトコントローラは、無人航空機110の飛行中、無人航空機110の傾きなどを検知して演算を繰り返しおこない、モータ211に対する制御信号を再帰的に出力する。
【0049】
フライトコントローラは、ESCに対して、プロペラ111(プロペラ111のモータ211)の回転方向や回転数を制御する制御信号を出力する。具体的には、たとえば、隣り合うプロペラ111どうしを逆回転させるように制御する制御信号を出力することによって無人航空機110の回転を防止する。また、たとえば、前方のプロペラ111を後方のプロペラ111よりも遅く回転させるように制御することによって無人航空機110を前進させる。また、たとえば、右側のプロペラ111を左側のプロペラ111よりも遅く回転させるように制御することによって無人航空機110を右方向に旋回させる。
【0050】
無人航空機110は、端末装置との間で定期的に通信をおこなう。これにより、音声到達確認作業に際して端末装置を操作して音声の到達状況の確認作業をおこなう作業者は、河川105がある現場から離れた位置においても、各無人航空機110の位置を把握し、各無人航空機110が正常に動作していることを確認することができる。
【0051】
無人航空機110は、端末装置との通信が不能になった場合、自機を、あらかじめ定められた基準地点に自動帰還させるように制御信号を出力する。基準地点は、たとえば、作業者が所属する事業所の位置であって、基準地点に関する情報は、たとえば、制御回路214を構成するメモリに記憶されている。
【0052】
第1の無人航空機110を実現する無人航空機110は、音声到達確認作業に際して、フライトコントローラにより制御されて、まず、警報用スピーカー101aの設置予定位置まで飛行する。警報用スピーカー101aの設置予定位置に関する情報は、音声到達確認作業をおこなう前に、たとえば、制御回路214を構成するメモリにあらかじめ記憶されている。
【0053】
第2の無人航空機を実現する無人航空機110は、フライトコントローラにより制御されて、音声到達予定範囲104の全域を順次飛行する。フライトコントローラは、制御回路214を構成するメモリにあらかじめ設定されたプログラムにしたがって、音声到達予定範囲104の全域を順次飛行するように、ESCに対して、プロペラ111(プロペラ111のモータ)の回転方向や回転数を制御する制御信号を出力する。
【0054】
制御回路214は、マイク113が検出する音声をメモリに記憶、すなわち録音することができる。具体的に、制御回路214は、音声到達確認作業に際してマイク113が検出する音声が、所定の基準値に満たない場合に、録音をおこなう。基準値は、一般的な人間が聞き取れる音の大きさに基づいて設定される。基準値は、たとえば、音声到達確認システム100の管理者などが任意に設定することができる。この実施の形態においては、制御回路やマイク113によって、この発明にかかる録音装置の機能を実現することができる。
【0055】
(音声到達確認システム100の機能的構成)
つぎに、音声到達確認システム100の機能的構成について説明する。図3は、音声到達確認システム100の機能的構成を示す説明図である。図3において、音声到達確認システム100の機能的構成は、第1の無人航空機110Aが実現する機能と、第2の無人航空機110Bが実現する機能と、によって実現される。
【0056】
第1の無人航空機110Aは、位置特定部311と、記憶部312と、試験用スピーカー112と、モータ211と、通信部313と、制御部314と、を備えている。位置特定部311は、第1の無人航空機110Aの現在位置を特定する。位置特定部311の機能は、具体的には、たとえば、第1の無人航空機110A(第1の無人航空機110Aを実現する無人航空機110)が備えるGPS受信機212や制御回路214によって実現することができる。
【0057】
記憶部312は、放流警報音を出力する警報用スピーカー101の設置予定位置に関する情報を記憶する。警報用スピーカー101の設置予定位置は、たとえば、緯度経度によってあらわすことができる。記憶部312は、警報用スピーカー101の設置予定位置のうち、少なくとも、もっとも上流側(ダム側)に設定される警報用スピーカー101aの設置予定位置は、音声到達確認作業の開始前に、あらかじめ記憶部312に記憶されている。
【0058】
また、記憶部312は、第1の無人航空機110Aを自動帰還させるための基準地点に関する情報を記憶する。記憶部312の機能は、具体的には、たとえば、制御回路を構成するCPUやメモリによって実現することができる。
【0059】
試験用スピーカー112は、制御部314によって制御されて、試験用の音声を出力する。試験用スピーカー112は、あらかじめ設定された所定の音量で試験用の音声を出力する。音声到達確認システム100において、1機の第1の無人航空機110Aが出力する音量が所定の音量に達しない場合、複数の第1の無人航空機110Aからそれぞれ試験用の音声を出力することによって、あらかじめ設定された所定の音量で試験用の音声を出力することができる。
【0060】
モータ211は、制御部314によって制御されて、プロペラ111を回転させる。モータ211は、各プロペラ111の回転数や回転方向をそれぞれ制御しながら回転させる。これにより、警報用スピーカー101の設置予定位置まで移動し、警報用スピーカー101の設置予定位置においてホバリングしながら試験用の音声を出力することができる。
【0061】
通信部313は、第2の無人航空機110Bとの間で通信をおこなう。通信部313は、具体的には、たとえば、第1の無人航空機110Aを実現する無人航空機110が備える無線機213や制御回路214によって実現することができる。通信部313は、第2の無人航空機110Bとの間で通信をおこなうことにより、たとえば、試験用の音声の検出結果を取得する。
【0062】
試験用の音声の検出結果は、たとえば、上記のように、音声到達予定範囲104の全域において、所定の基準値以上の大きさの試験用の音声を検出できたか否かを示す情報であってもよく、音声到達予定範囲104の全域における試験用の音声の検出位置と当該検出位置において検出した試験用の音声の大きさとを示す情報であってもよい。
【0063】
制御部314は、試験用の音声の検出結果に基づいて、設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲104において、試験用の音声を検出できない位置がある場合、試験用スピーカー112の高さを変更して、再度、試験用の音声を出力する。制御部314は、たとえば、試験用スピーカー112の高さが、前回の試験用の音声の出力時よりも高くなるように、試験用スピーカー112の高さを変更する。試験用スピーカー112の高さは、たとえば、第1の無人航空機110Aの飛行高度を調整することによって調整できる。
【0064】
試験用の音声の検出結果は、たとえば、第2の無人航空機110Bから出力される。あるいは、試験用の音声の検出結果は、たとえば、第2の無人航空機110Bから出力された情報を受信した端末装置301から出力されたものであってもよい。
【0065】
制御部314は、第2の無人航空機110Bから出力された情報に基づいて、つぎの設置予定位置を決定してもよい。第2の無人航空機110Bは、音声到達予定範囲104の全域を移動して、音声到達予定範囲104の全域において試験用の音声が検出できたか否かを確認する。このため、つぎの設置予定位置を第1の無人航空機110Aによって決定することにより、第2の無人航空機110Bにおける処理負担の軽減を図ることができる。
【0066】
また、制御部314は、決定されたつぎの設置予定位置に基づいて、当該つぎの設置予定位置において試験用の音声を出力するように、試験用スピーカー112やモータ211を制御する。具体的には、つぎの設置予定位置を示すGPS座標によって特定される位置へ、第2の無人航空機110Bが移動するように、記憶部312における目的地に関する情報を更新する。
【0067】
第2の無人航空機110Bは、位置特定部321と、記憶部322と、マイク113と、モータ211と、通信部323と、制御部324と、を備えている。位置特定部321は、第1の無人航空機110Aが備える位置特定部311と同様に、第2の無人航空機110Bの現在位置を特定する。位置特定部321の機能は、具体的には、たとえば、第2の無人航空機110B(第2の無人航空機110Bを実現する無人航空機110)が備えるGPS受信機212や制御回路214によって実現することができる。
【0068】
マイク113は、アナログデータとして入力された試験用の音声を電気信号に変換する。モータ211は、制御部324によって制御されて、プロペラ111を回転させる。また、第2の無人航空機110Bを実現する無人航空機110が電動リールを備える場合、制御部324によって制御されて、当該電動リールを正逆回転させるモータも含む。
【0069】
制御部324は、第2の無人航空機110Bの移動軌跡が、各音声到達予定範囲104の全域をくまなく網羅するように、たとえば、緯度と経度とを所定量ずつずらしながら試験用の音声の検出対象となる音声到達予定範囲104内を、蛇行ないし往復するように第2の無人航空機110Bを移動させる。
【0070】
第2の無人航空機110Bが移動したGPS座標に関する情報を端末装置301に送信することによって、第2の無人航空機110Bの移動軌跡を端末装置301のディスプレイに表示させるようにしてもよい。この場合、音声の到達状況の確認作業をおこなう作業者は、たとえば、第2の無人航空機110Bの移動軌跡が、音声到達必要範囲103の全域と重なったことを目視することによって、第2の無人航空機110Bが音声到達必要範囲103の全域において試験用の音声の検出をおこなったことを確認できる。
【0071】
制御部324は、音声到達予定範囲104において試験用の音声を検出できない位置がある場合、マイク113の高さを変更して、再度、検出をおこなう。マイク113の高さは、第1の無人航空機110Aにおいて試験用スピーカー112の高さ調整をおこなわない場合にのみおこなってもよく、第1の無人航空機110Aにおける試験用スピーカー112の高さ調整とあわせておこなってもよい。
【0072】
マイク113の高さは、第2の無人航空機110Bの飛行高度を調整することによって調整することができる。あるいは、無人航空機110が電動リールを備える場合、マイク113の高さは、繰り出すワイヤー113aの長さを調整することによって調整してもよい。
【0073】
制御部324は、試験用の音声の検出結果に基づいて、つぎの設置予定位置を決定し、決定されたつぎの設置予定位置に関する情報を出力する。第1の無人航空機110Aがつぎの設置予定位置の決定をおこなう場合、第2の無人航空機110Bは、つぎの設置予定位置の決定をおこなわなくてもよい。この場合、制御部324は、つぎの設置予定位置から試験用の音声が出力された場合、通信部323を制御して、当該つぎの設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲104における試験用の音声の検出結果に関する情報を出力する。
【0074】
また、制御部324は、音声到達予定範囲104において検出された試験用の音声が、基準値に満たない場合、当該試験用の音声に関する情報を録音してもよい。録音された試験用の音声に関する情報は、たとえば、通信部323を制御して、端末装置301に送信する。
【0075】
これにより、端末装置301を操作する作業者は、事業所など、現場の遠隔地にいる場合にも現場の音声を自身で聞いて確認することができる。制御部324の機能は、具体的には、たとえば、第2の無人航空機110B(第2の無人航空機110Bを実現する無人航空機110)が備える制御回路214によって実現することができる。
【0076】
(音声到達確認システム100の処理手順)
つぎに、音声到達確認システム100の処理手順について説明する。図4は、音声到達確認システム100の処理手順を示すフローチャートである。図4においては、音声到達確認システム100を構成する第1の無人航空機110Aおよび第2の無人航空機110Bのそれぞれの処理手順と、各処理手順の関係を示している。
【0077】
図4において、第1の無人航空機110Aは、モータ211を駆動して設置予定位置まで移動するまで待機する(ステップS411:No)。上記のように、第1の無人航空機110Aの移動先となる設置予定位置のうち、少なくとも、もっとも上流側に設定される警報用スピーカー101の設置予定位置はあらかじめ記憶部に記憶されているため、ステップS411においては、もっとも上流側に設定される警報用スピーカー101aの設置予定位置に移動したか否かを判断する。
【0078】
ステップS411において、設置予定位置まで移動した場合(ステップS411:Yes)、当該設置予定位置において試験用スピーカー112から試験用の音声を出力する(ステップS412)。複数の試験用スピーカー112を用いて試験用の音声を出力する場合、ステップS412においては、該当する第1の無人航空機110Aどうしが通信をおこない、試験用の音声の出力タイミングを調整する。
【0079】
つぎに、第2の無人航空機110Bから出力される検出結果に関する情報に基づいて、ステップS412において試験用の音声を出力した設置予定位置が、あらかじめ設定されている警報範囲における最後の(もっとも下流側)の設置予定位置であるか否かを判断する(ステップS413)。
【0080】
最後の設置予定位置であるか否かは、たとえば、警報用スピーカー101が出力する警報用音声の到達範囲が、警報範囲のもっとも下流側の位置を包含しているか否かによって判断することができる。警報範囲は、たとえば、ダムの下流につづく河川105における所定距離の間における堤外地などのように、河川法などに基づいて設定される。
【0081】
ステップS413において、最後の設置予定位置ではない場合(ステップS413:No)、つぎの設置予定位置を決定する(ステップS414)。つぎの設置予定位置は、警報用スピーカー101が出力する警報用音声の到達範囲や、河川区域の状況などに基づいて決定することができる。そして、第2の無人航空機110Bに対して、ステップS414において決定されたつぎの設置予定位置を通知して(ステップS415)、ステップS411へ移行する。
【0082】
一方、ステップS413において、最後の設置予定位置である場合(ステップS413:Yes)、第2の無人航空機110Bに対して、帰還命令を出力する(ステップS416)。また、自機を帰還制御して(ステップS417)、一連の処理を終了する。ステップS417においては、あらかじめ記憶された基準地点に関する情報に基づいて、当該基準地点に帰還するよう自機の各部を駆動制御する。
【0083】
図4において、第2の無人航空機110Bは、ステップS411:Yesにおいて設置予定位置まで移動する第1の無人航空機110Aとともに移動を開始し、当該設置予定位置に対応する音声到達予定範囲104あるいは音声到達予定範囲104近傍で待機する。そして、ステップS412において出力された試験用の音声を検出したか否かを判断する(ステップS421)。
【0084】
ステップS421において、第1の無人航空機110AからステップS412において試験用の音声が出力されたにもかかわらず、試験用の音声を検出していない場合(ステップS421:No)、当該位置を記憶して(ステップS422)、ステップS423へ移行する。ステップS422においては、試験用の音声の大きさが所定の基準値以上ではない場合に、位置を記憶する。
【0085】
一方、ステップS421において、第1の無人航空機110AからステップS412において出力された試験用の音声を検出した場合(ステップS421:Yes)、音声到達予定範囲104の全域について確認をおこなったか否かを判断する(ステップS423)。ステップS423においては、たとえば、第2の無人航空機110Bの現在位置に基づいて、当該無人航空機110が移動した範囲が、該当する音声到達予定範囲104のすべての領域と重複したか否かを判断することによって、音声到達予定範囲104の全域について確認をおこなったか否かを判断することができる。
【0086】
ステップS423において、音声到達予定範囲104の全域について確認をおこなっていない場合(ステップS423:No)、ステップS421へ移行して、試験用の音声の検出を継続しておこなう。一方、ステップS423において、音声到達予定範囲104の全域について確認をおこなった場合(ステップS423:Yes)、メモリに記憶されている情報に基づいて、音声到達予定範囲104の中で試験用の音声を検出できない位置があったか否かを判断する(ステップS424)。
【0087】
ステップS424において、音声到達予定範囲104の中で試験用の音声を検出できない位置があった場合(ステップS424:Yes)、自機の飛行高度を変更して(ステップS425)、ステップS421へ移行する。ステップS425においては、たとえば、飛行高度が高くなるようにモータ211の回転数を増加させることによって自機の飛行高度を変更することができる。
【0088】
ステップS424において、音声到達予定範囲104の中で試験用の音声を検出できない位置がない場合(ステップS424:No)、第1の無人航空機110Aに対して検出結果を通知する(ステップS426)、ステップS426においては、ステップS421〜ステップS425の処理によって検出された検出結果に関する情報を出力することによって検出結果を通知する。
【0089】
そして、つぎの設置予定位置があるか否かを判断する(ステップS427)。ステップS427においては、たとえば、第1の無人航空機110Aとの通信結果に基づいて、つぎの設置予定位置があるか否かを判断する。つぎの設置予定位置がある場合(ステップS427:Yes)、ステップS421へ移行する。
【0090】
一方、ステップS427において、つぎの設置予定位置がない場合(ステップS427:No)、ステップS416において出力された帰還命令を受け付けるまで待機する(ステップS428:No)。そして、ステップS428において、第1の無人航空機110Aから出力された帰還命令を受け付けた場合(ステップS428:Yes)、自機を帰還制御して(ステップS429)、一連の処理を終了する。ステップS429においては、あらかじめ記憶された基準地点に関する情報に基づいて、当該基準地点に帰還するよう自機の各部を駆動制御する。
【0091】
このように、音声到達確認システム100は、試験用スピーカー112を搭載した第1の無人航空機110Aを警報用スピーカー101の設置予定位置に飛行させ、河川105の流域において第2の無人航空機110Bを飛行させながら音声到達状況を順次確認することによって、必要な範囲全域で音声が到達していることを確認することができる。
【0092】
また、音声到達確認システム100は、第2の無人航空機110Bによって音声到達が確認できなかった場合は、マイク113の位置や高さを修正してから、再度、音声到達状況を確認することができる。
【0093】
さらに、音声到達確認システム100は、1つ目の警報用スピーカー101の設置予定位置が決まった後、第2の無人航空機110Bが2つ目の警報用スピーカー101の設置予定位置へ飛行し、1つ目の警報用スピーカー101と同様に、2つ目の警報用スピーカー101から出力される警告用音声を仮想した試験用の音声の河川105の流域における音声到達確認をおこなうことができる。
【0094】
そして、音声到達確認システム100は、上記のように、第1の無人航空機110Aと第2の無人航空機110Bとが相互に無線通信しながら自律的に繰り返し、警告用音声の到達が必要な範囲全域で試験用の音声が到達することを確認することで、複数の警告用スピーカーの設置予定場所を決定することができる。
【0095】
これにより、作業者が河川105に入っておこなう音声到達確認の作業が不要になり、音声到達確認作業における作業者の危険性をなくすことができる。また、現地で作業員がおこなう作業が不要になるため、当該作業をおこなうための作業員を確保することが不要となるとともに、作業者の操作などを介することなく、第1の無人航空機110Aと第2の無人航空機110Bとの相互の無線通信によって自動的に作業を進めることができる。これにより、作業コストや作業時間を大幅に低減することができる。
【0096】
無人航空機110は、制御回路214を構成するメモリにおいて、GPS座標などのGNSSデータを書き換えることによって、繰り返しあらたな移動先を任意に設定することができる。これにより、ある河川105における音声到達確認作業に供した音声到達確認システム100を再利用することができる。
【0097】
なお、音声到達確認システム100は、警報用スピーカー101などのような固定式のスピーカーの設置前の確認作業、すなわち警報用スピーカー101の設置場所の調査にのみ用いられるものではなく、設置された後のメンテナンス時における音声到達確認作業にも用いることができる。既に警報用スピーカー101が設置されているため、設置された後のメンテナンス時における音声到達確認作業に用いる場合は、試験用スピーカー112を搭載せず、マイク113のみを搭載した無人航空機110を用いても音声到達確認作業をおこなうことができる。
【0098】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100は、試験用の音声を出力する試験用スピーカー112を搭載し、放流警報音を出力する警報用スピーカー101の設置予定位置において試験用の音声を出力する第1の無人航空機110Aと、マイク113を搭載し、設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲104において当該マイク113による試験用の音声の検出をおこない、当該音声到達予定範囲104における検出結果に関する情報を出力する第2の無人航空機110Bと、を備えたことを特徴としている。
【0099】
この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100によれば、第1の無人航空機110Aから出力した試験用の音声が、設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲104において検出されるか否かを第2の無人航空機110Bから出力される情報に基づいて判断することができるので、作業者が音声到達確認作業の現場に移動することなく音声到達確認をおこなうことができる。
【0100】
これにより、作業者が現場において河川105に入るなどの作業を不要とすることができ、作業者の安全性を確保することができる。また、河川105に入るなどの現地での作業を不要とすることにより、音声到達確認作業にかかる作業時間を短縮することができるとともに、当該作業にかかる作業者など、音声到達確認作業に関わる作業者の数を減らすことができる。
【0101】
このように、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100によれば、音声到達確認作業に関わる作業者の安全性を確保するとともに、作業時間の短縮および作業者数の低減を図ることができる。
【0102】
また、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100によれば、音声到達予定範囲104に含まれるすべての位置において、試験用の音声の到達確認および到達した音声の大きさを検出することができる。また、試験用スピーカー112の位置や高さの調整を容易におこなうことができる。
【0103】
このため、警報用スピーカー101から出力する音声の大きさや方向の細かな調整を容易におこなうことができる。これにより、音声到達必要範囲103の全域に放流警報を到達させるとともに、音声到達必要範囲103の外側には極力放流警報が到達しないように、放流警報の到達範囲を調整することが可能になる。そして、これにより、河川105の流域の住民などに対する騒音問題を回避し、河川105の流域の住民を不快にすることなく、放流により増水する河川105の周辺にいる人の安全を確保することができる。
【0104】
また、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100は、第2の無人航空機110Bが、音声到達予定範囲104において試験用の音声を検出できない位置がある場合、マイク113の高さを変更して、再度、検出をおこなうようにしたことを特徴としている。
【0105】
あるいは、第1の無人航空機110Aが、試験用の音声の検出結果に基づいて、音声到達予定範囲104において試験用の音声を検出できない位置がある場合、試験用スピーカー112の高さを変更して、再度、試験用の音声を出力するようにしてもよい。
【0106】
この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100によれば、音声到達予定範囲104において試験用の音声を検出できない位置がある場合は、マイク113の高さあるいは試験用スピーカー112の高さを変更して再度検出をおこなうことにより、たとえば、河川105の水音や、第1の無人航空機110Aと第2の無人航空機110Bとの間に位置する樹木や岩などによって試験用の音声の検出が妨げられている場合などに、これらの影響のない高さでの検出をやり直すことができる。これにより、作業者に負担をかけることなく、音声到達確認作業に際しての細かい調整を容易におこなうことができる。
【0107】
また、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100は、第1の無人航空機110Aは、第2の無人航空機110Bから出力された情報に基づいて、つぎの設置予定位置を決定することを特徴としている。あるいは、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100は、第2の無人航空機110Bが、試験用の音声の検出結果に基づいて、つぎの設置予定位置を決定し、決定されたつぎの設置予定位置に関する情報を出力するようにしてもよい。
【0108】
この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100によれば、作業者の作業を介することなく、無人航空機110によって、つぎの設置予定位置を順次決定し、決定されたつぎの設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲104において試験用の音声の確認を順次おこなうことができる。
【0109】
これにより、音声到達確認作業に関わる作業者の負担軽減を図り、音声到達確認作業に関わる作業者の安全性を確保するとともに、作業時間の短縮および作業者数の低減を図ることができる。
【0110】
また、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100は、第1の無人航空機110Aが、第2の無人航空機110Bから出力された情報に基づいて、決定されたつぎの設置予定位置において試験用の音声を出力し、第2の無人航空機110Bが、つぎの設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲104における試験用の音声の検出結果に関する情報を出力するようにしたことを特徴としている。
【0111】
この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100によれば、つぎの設置予定位置を決定するごとに、決定されたつぎの設置予定位置から試験用の音声を出力し、つぎの設置予定位置ごとに決定される音声到達予定範囲104において試験用の音声の到達状況を確認する作業を、同じ第1の無人航空機110Aと第2の無人航空機110Bとを用いて繰り返しておこなうことができる。これにより、音声到達確認作業に用いる無人航空機110の数を少なく抑えることができ、作業にかかるコストの低減を図ることができる。
【0112】
また、この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100は、音声到達予定範囲104において検出された試験用の音声が、基準値に満たない場合に当該試験用の音声に関する情報を録音するようにしたことを特徴としている。
【0113】
この発明にかかる実施の形態の音声到達確認システム100によれば、無人航空機110では判断がつかない状況が生じた場合など、画一的な判断が難しい場合は、作業者の判断を介入させることができる。これにより、実使用に即した設置予定位置を決定することができ、河川105流域における安全性の確保に貢献することができる。
【0114】
なお、この実施の形態で説明した音声到達確認方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、SSDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上のように、この発明にかかる音声到達確認システムおよび音声到達確認方法は、スピーカーから出力される音声の到達状況の確認に用いる音声到達確認システムおよび音声到達確認方法に有用であり、特に、河川沿岸から出力された音声の河川内での到達状況の確認に用いる音声到達確認システムおよび音声到達確認方法に適している。
【符号の説明】
【0116】
100 音声到達確認システム
101、101a、101b 警報用スピーカー
102 ダム貯水池
103 音声到達必要範囲
104 音声到達予定範囲
105 河川
110 無人航空機
110A 第1の無人航空機
110B 第2の無人航空機
112 試験用スピーカー
113 マイク
図1
図2
図3
図4