(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である脈波測定装置100Aの構成を示す図である。
この脈波測定装置100Aにおいて、圧電センサ1は、シート状のセンサであり、被測定者の左手首8の橈骨動脈8aの上にある肌表面領域に貼り付けられる。この圧電センサ1は、橈骨動脈8aから伝達される脈波(圧力波)を電圧に変換する。
【0013】
圧電センサ1は、インピーダンス変換装置2を介してアンプ3に接続されている。インピーダンス変換装置2は、圧電センサ1の出力インピーダンスと、アンプ3の入力インピーダンスとの不整合を解消するためのインピーダンス変換を行う装置である。アンプ3は、インピーダンス変換装置2を介して供給される圧電センサ1の出力電圧を増幅してオシロスコープ4と圧力設定装置5に供給する。
【0014】
オシロスコープ4は、アンプ3の出力電圧波形を表示する装置である。このアンプ3の出力電圧波形は、圧電センサ1により測定された脈波形を示す。
【0015】
圧力設定装置5は加圧装置6に接続され、加圧装置6は中空のチューブ7aを介してカフ帯7に接続されている。
【0016】
本実施形態では、圧電センサ1と押圧部であるカフ帯7が脈波測定部位に対向して並べられる。さらに詳述すると、本実施形態におけるカフ帯7は、被測定者の左手首8において、圧電センサ1よりも橈骨動脈8aの下流側の位置に巻かれ、同位置に対して圧力を与える押圧部である。このカフ帯7は、ゴム等の弾性体からなる中空の帯である。このカフ帯7の中空領域は、中空のチューブ7aの内部と繋がっている。
【0017】
加圧装置6と圧力設定装置5は、押圧部であるカフ帯7の圧力を調整する圧力調整手段である。加圧装置6は、チューブ7aを介してカフ帯7内に空気を供給し、カフ帯7内の空気圧を増加させる加圧機能と、チューブ7aを介してカフ帯7内から空気を取り出し、カフ帯7内の空気圧を減少させる減圧機能とを備えている。また、加圧装置6は、カフ帯7内の空気圧を測定し、この空気圧が圧力設定装置5から与えられる圧力設定値よりも低い場合には加圧機能によりカフ帯7内の空気圧を増加させ、この空気圧が圧力設定値よりも高い場合には減圧機能によりカフ帯7内の空気圧を減少させる圧力制御機能を有している。
【0018】
圧力設定装置5は、加圧装置6に対して圧力設定値を与える装置である。この加圧装置6に対して与える圧力設定値を決定する動作モードには、手動モードと自動モードがある。手動モードにおいて、圧力設定装置5は、同圧力設定装置5に設けられた操作子(例えば増加指示ボタンと減少指示ボタン)の操作に応じて圧力設定値の増減を行う。自動モードにおいて、圧力設定装置5は、アンプ3の出力電圧波形に基づいて圧力設定値を制御する。
【0019】
この圧力設定値の制御に関しては、各種の態様が考えられるが、例えば圧力設定装置5は、圧力設定値を変化させつつアンプ3の出力電圧が示す脈波形を解析することにより、1拍分の脈波形の拍間の歪が所定限度内に収まる圧力設定値の範囲を求め、その範囲の例えば中心値を圧力設定値とする。
【0020】
図2は本実施形態における圧電センサ1の構成例を示す断面図である。この圧電センサ1は、薄板状の圧電体10の両面に電極11および12を貼り付けた構成となっている。
圧電体10は、圧力を電圧に変換する圧電材料から形成され、被測定者からの脈波によって応力を受け、この応力変化の加速度に応じて電位差を生じる。
【0021】
この圧電体10を形成する圧電材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛等の無機材料であってもよいが、生体の表面に密着できるよう可撓性を有する高分子圧電材料であることが好ましい。
【0022】
この高分子圧電材料としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体(P(VDF/TrFE))、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体(P(VDCN/VAc))等を挙げることができる。
【0023】
また、圧電体10として、圧電特性を有しない例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等に多数の扁平な気孔を形成し、例えばコロナ放電等によって扁平な気孔の対向面を分極して帯電させることによって圧電特性を付与したものを使用することもできる。
【0024】
圧電体10の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、圧電体10の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、200μmがより好ましい。圧電体10の平均厚さが前記下限に満たない場合、圧電体10の強度が不十分となるおそれがある。逆に、圧電体10の平均厚さが前記上限を超える場合、圧電体10の変形能が小さくなり、検出感度が不十分となるおそれがある。
【0025】
電極11、12は、圧電体10の両面に積層され、圧電体10の表裏の電位差を検出するために用いられる。この電極11、12には、インピーダンス変換装置2に接続するための配線が接続される。
【0026】
電極11、12の材質としては、導電性を有するものであればよく、例えばアルミニウム、銅、ニッケル等の金属や、カーボン等を挙げることができる。
【0027】
電極11、12の平均厚さとしては、特に限定されず、積層方法にもよるが、例えば0.1μm以上30μm以下とすることができる。電極11、12の平均厚さが前記下限に満たない場合、電極11、12の強度が不十分となるおそれがある。逆に、電極11、12の平均厚さが前記上限を超える場合、圧電体10への振動の伝達を阻害するおそれがある。
【0028】
電極11、12の圧電体10への積層方法としては、特に限定されず、例えば金属の蒸着、カーボン導電インクの印刷、銀ペーストの塗布乾燥等が挙げられる。
【0029】
次に本実施形態の動作について説明する。測定者は、
図1に示すようにカフ帯7を被測定者の左手首8に巻く。また、測定者は、圧電センサ1の電極11の表面にゲルを塗り、この圧電センサ1をカフ帯7よりも橈骨動脈8aの上流側の肌表面領域に貼り付ける。そして、圧力設定装置5に測定開始の指示を与える。これにより圧力設定装置5は、アンプ3の出力電圧波形(すなわち、橈骨動脈の脈波形)に基づいて、加圧装置6に対する圧力設定値を制御する動作を開始する。
【0030】
図3はこの状態における被測定者の左手首8内の橈骨動脈8a、カフ帯7および圧電センサ1を示している。
図3に示すように、圧電センサ1は、ゲル13により被測定者の左手首8の肌表面に貼り付けられており、橈骨動脈8aに対向している。橈骨動脈8aには、
図3における左側から右側に向かう方向に血流が流れる。この血流を送り出す脈動により橈骨動脈8aが膨張および収縮を繰り返し、圧電センサ1が貼り付けられた左手首8の肌表面に圧電センサ1の厚さ方向の振動が発生する。そして、左手首8の表面からの駆動力により圧電センサ1の厚さ方向の圧力が変化して、この圧力に応じた電圧が圧電センサ1から出力される。このようにして橈骨動脈8aからの脈波(圧力波)を反映した電圧波形が圧電センサ1から出力され、インピーダンス変換装置2およびアンプ3を介してオシロスコープ4および圧力設定装置5に供給される。
【0031】
カフ帯7は、
図3に示すように、橈骨動脈8aにおいて圧電センサ1よりも下流側の区間と対向している。加圧装置6によりカフ帯7の加圧が行われると、カフ帯7は、この下流側の区間の橈骨動脈8aを圧迫し、同区間の血流を妨げる。この結果、橈骨動脈8aにおいてカフ帯7よりも上流側にある圧電センサ1との対向区間の血管が膨張し、当該区間において発生する脈波の振幅が大きくなる。この結果、圧電センサ1により測定され、オシロスコープ4および圧力設定装置5に供給される電圧波形(脈波形)の振幅が大きくなる。
【0032】
ここで、圧電センサ1により測定される脈波形は、カフ帯7の圧力に依存する。
図4(a)〜(c)は、カフ帯7の圧力に依存して変化する脈波形を例示している。これらの図において、横軸は時間、縦軸は圧力である。
【0033】
カフ帯7の圧力を高めると、それに応じて脈波形は
図4(a)→
図4(b)→
図4(c)というように変化する。
図4(a)では、カフ帯7の圧力が不十分であるため、測定される脈波形の振幅が小さく、波形も不安定である。
図4(c)では、カフ帯7の圧力が過剰であり、脈波形の振幅は大きいが、脈波形の歪が大きい。
図4(a)および(c)に示す各状態では、脈波形を解析して正確な生体情報を得るのに支障が生じる。
図4(b)では、カフ帯7の圧力が適正値であり、振幅が十分で、歪が少なく、安定した脈波形が得られている。このように正確な生体情報の得られる脈波形を測定するためには、カフ帯7の圧力を適正値に制御する必要がある。
【0034】
そこで、本実施形態において、圧力設定装置5には、圧力設定値を制御するための2つの機能が設けられている。1つは上述した手動モードの機能である。この手動モードにおいて、測定者は、オシロスコープ4に適切な脈波電圧波形が表示されるように、圧力設定装置5が出力する圧力設定値の増減操作を行う。もう1つは上述した自動モードの機能である。この自動モードにおいて、圧力設定装置5は、圧力設定値を変化させつつ脈波電圧波形を解析することにより、1拍分の脈波電圧波形の拍間の歪が所定限度内に収まる圧力設定値の範囲を求め、その範囲の例えば中心値を圧力設定値とする。このような手動モードまたは自動モードでの圧力設定値の調整を行うことにより、正確な脈波測定が可能になる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、脈波測定部位に対向して並べられた圧電センサ1と押圧部であるカフ帯7とを有するので、圧電センサ1に対向した領域の動脈を圧迫することなく、当該領域における動脈から適正な振幅の脈波を圧電センサ1により測定することができる。また、本実施形態によれば、橈骨動脈の脈波を圧電センサ1により測定する際に、この測定箇所よりも橈骨動脈の下流側の箇所をカフ帯7により加圧するので、測定箇所における橈骨動脈を膨張させ、測定される脈波形の振幅を大きくすることができる。従って、脈波形を正確に測定することができる。
【0036】
<第2実施形態>
図5はこの発明の第2実施形態である脈波測定装置100Bの構成を示す図である。本実施形態による脈波測定装置100Bは、
図5に示す圧電センサ1およびリストバンド7Bの他、上記第1実施形態におけるインピーダンス変換装置2、アンプ3およびオシロスコープ4の各装置を含むが、
図5においてそれらの装置の図示は省略されている。
【0037】
圧電センサ1は、上記第1実施形態の圧電センサ1と同様な構成を有している。この圧電センサ1は、被測定者の左手首8の橈骨動脈8aの上の肌表面領域にゲルにより貼り付けられる。
【0038】
リストバンド7Bは、被測定者の左手首8において圧電センサ1よりも橈骨動脈8aの下流側の肌表面領域に装着される。このリストバンド7Bは、ゴム等の弾性体により構成されている。
【0039】
図6はリストバンド7Bの構成例を示す断面図である。リストバンド7Bにおいて、その内周面の橈骨動脈と対向する領域には、円弧上に突出した凸部71が設けられている。この凸部71は、リストバンド7Bが被測定者の左手首8に装着された状態において、橈骨動脈8aの上の肌表面領域を局所的に圧迫する。リストバンド7Bは、その内周面の凸部71が脈波測定に適した圧力を被測定者の肌表面領域に与えるように、弾性体の弾性係数、形状、幅と厚さ等が決定されている。本実施形態では、圧電センサ1およびリストバンド7Bの内側の凸部71が、脈波測定部位に対向して並べられた圧電センサと押圧部である。
【0040】
本実施形態によれば、脈波測定時に被測定者の左手首8の表面における橈骨動脈8a上の領域に局所的に圧力が与えられる。このため、橈骨動脈8aにおいて凸部71により圧力を与える箇所の上流側の領域を上記第1実施形態よりも効果的に膨張させ、測定される脈波形の振幅を大きくすることができる。また、本実施形態によれば、上記第1実施形態における圧力設定装置5、加圧装置6およびカフ帯7が不要であるため、小規模で低コストな脈波測定装置を実現することができる。
【0041】
<第3実施形態>
図7はこの発明の第2実施形態である脈波測定装置100Cの構成を示す図である。本実施形態による脈波測定装置100Cは、圧電センサ1C1および1C2と、リストバンド7C1および7C2とを有する。
【0042】
圧電センサ1C1および1C2は、上記第1実施形態の圧電センサ1と同様な構成のセンサである。本実施形態では、
図7に示すように、被測定者の左手首8の表面において、橈骨動脈8a上の左掌近傍の位置に圧電センサ1C1が貼り付けられ、この位置よりも橈骨動脈8aに沿って所定距離だけ上流側の位置に圧電センサ1C2が貼り付けられる。
【0043】
リストバンド7C1および7C2は、上記第2実施形態のリストバンド7Bと同様な構成のリストバンドである。リストバンド7C1は、被測定者の左手首8において圧電センサ1C1よりも橈骨動脈8aの下流側の領域に装着され、その内周面に設けられた凸部(図示略)が橈骨動脈8a上の肌表面領域を局所的に圧迫する。リストバンド7C2は、被測定者の左手首8において圧電センサ1C2よりも橈骨動脈8aの下流側にあり、かつ、圧電センサ1C1よりも上流側にある肌表面領域に装着され、その内周面に設けられた凸部(図示略)が橈骨動脈8a上の肌表面領域を局所的に圧迫する。
【0044】
圧電センサ1C1は、上記第1実施形態のインピーダンス変換装置2およびアンプ3に相当するものを介して脈波観測装置が接続され、圧電センサ1C2は、上記第1実施形態のインピーダンス変換装置2およびアンプ3に相当するものを介して同脈波観測装置が接続されているが、その図示は省略されている。
【0045】
脈波観測装置は、例えば圧電センサ1C1および1C2により得られる2チャネルの脈波形を表示可能なオシロスコープである。好ましい態様において、この脈波観測装置は、2チャネルの脈波形の相対的な遅延時間を測定する機能を備えている。
【0046】
本実施形態においても上記第2実施形態と同様な効果が得られる。また、本実施形態によれば、圧電センサ1C1および1C2により得られる2チャネルの脈波形の相対的な遅延時間を測定することができるので、脈波が圧電センサ1C2の位置から圧電センサ1C1の位置まで橈骨動脈8aを介して伝播する伝播速度を求めることができる。
【0047】
<第4実施形態>
図8はこの発明の第4実施形態である脈波測定装置100Dの構成を示す断面図である。本実施形態による脈波測定装置100Dは、
図8に示す圧電センサ1、布帛21および押圧部31の他、上記第1実施形態におけるインピーダンス変換装置2、アンプ3およびオシロスコープ4の各装置を含むが、
図8においてそれらの装置の図示は省略されている。本実施形態では、圧電センサ1と押圧部31が、脈波測定部位に対向して並べられた圧電センサと押圧部である。
【0048】
さらに詳述すると、本実施形態では、布帛21の一方の面21aに圧電センサ1と押圧部31が並べて固定されている。圧電センサ1は、上記第1実施形態の圧電センサ1と同様な構成を有している。押圧部31は、圧電センサ1よりも厚みのある板状の部材である。
【0049】
脈波測定時には、圧電センサ1を被測定者の橈骨動脈上の所望の位置に対向させ、押圧部31をその位置よりも下流側の橈骨動脈上の位置に対向させた状態で、布帛21の面21aがゲル等により被測定者の手首の肌表面に貼り付けられる。その際に布帛21に発生する張力により押圧部31が被測定者の橈骨動脈に適度な押圧力で押し当てられ、その押圧箇所の上流側の位置にある橈骨動脈が膨張する。この膨張した橈骨動脈から圧電センサ1に対して脈波が伝達される。この脈波の振幅は、膨張していない橈骨動脈から伝達される脈波の振幅に比べて大きなものとなる。従って、本実施形態においても上記第2実施形態と同様な効果が得られる。
【0050】
<第5実施形態>
図9はこの発明の第5実施形態である脈波測定装置100Eの構成を示す断面図である。本実施形態による脈波測定装置100Eは、
図9に示す圧電センサ1および押圧部31の他、上記第1実施形態におけるインピーダンス変換装置2、アンプ3およびオシロスコープ4の各装置を含むが、
図9においてそれらの装置の図示は省略されている。
【0051】
本実施形態において、圧電センサ1は、基本的に上記第1実施形態の圧電センサ1と同様な構成を有するが、上記第1実施形態のものよりも面積が広いシート状のセンサである。押圧部31は、板状の部材であり、圧電センサ1の一方の面の一部の領域に固定されている。
【0052】
脈波測定時には、圧電センサ1において押圧部31が固定されている面の反対側の面が被測定者の左手首の橈骨動脈の上の肌表面領域に押し当てられる。その際、圧電センサ1の向きは、
図9における左側が橈骨動脈の下流側に、
図9における右側が橈骨動脈の上流側となるように調整される。また、何等かの押圧手段により押圧部31が圧電センサ1側に押圧される。この押圧手段は、測定者の指であってもよいし、カフ帯等であってもよい。
【0053】
押圧部31の押圧が行われると、この押圧力が圧電センサ1を介して橈骨動脈に伝達される。ここで、橈骨動脈における押圧部31の直下の領域に比べると、この領域外の領域に伝達される押圧力は小さい。このため、橈骨動脈における押圧部31の直下の領域よりも上流側の領域の橈骨動脈が膨張する。そして、圧電センサ1において押圧部31が固定されていない領域よりも橈骨動脈の上流側の領域には、膨張した橈骨動脈からの脈波が伝達される。この脈波の振幅は、膨張していない橈骨動脈から伝達される脈波の振幅に比べて大きなものとなる。従って、本実施形態においても上記第2実施形態と同様な効果が得られる。
【0054】
<第6実施形態>
図10はこの発明の第6実施形態である脈波測定装置100Fの構成を示す断面図である。上記第5実施形態では、押圧部31を圧電センサ1の一方の面の一部の領域に固定した。これに対し、本実施形態において、押圧部31は、圧電センサ1の一方の面を取り囲む縁上の位置に、当該面に対して傾けた状態で固定されている。他の点については、上記第5実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態において、押圧部31が押圧されると、その押圧力は、被測定者の橈骨動脈において、圧電センサ1の縁の直下の狭い領域に局所的に伝達される。そして、橈骨動脈において、この押圧力の伝達領域の上流側の領域が膨張する。そして、圧電センサ1には、膨張した橈骨動脈からの脈波が伝達される。この脈波の振幅は、膨張していない橈骨動脈から伝達される脈波の振幅に比べて大きなものとなる。従って、本実施形態においても上記第2実施形態と同様な効果が得られる。
【0056】
<第7実施形態>
図11はこの発明の第7実施形態である脈波測定装置100Gの構成を示す図である。
図11には被測定者の左手首に装着されるリストバンド22の内周面に配置された押圧部32と圧電センサ1が示されている。本実施形態による脈波測定装置100Gは、
図11に示す圧電センサ1、押圧部31およびリストバンド22の他、上記第1実施形態におけるインピーダンス変換装置2、アンプ3、オシロスコープ4、圧力設定装置5および加圧装置6の各装置を含むが、
図11においてそれらの装置の図示は省略されている。
【0057】
圧電センサ1は、上記第1実施形態の圧電センサ1と同様な構成を有しており、インピーダンス変換装置2(
図1参照)に接続されている。押圧部32は、リストバンド22の内周面に固定された中空環状の空気袋であり、
図1に示す加圧装置6に接続されている。上記第1実施形態と同様、加圧装置6は、押圧部32の中空領域に与える空気の圧力の増減を行う。
【0058】
脈波測定時、押圧部32が橈骨動脈の下流側に位置し、圧電センサ1が橈骨動脈の上流側に位置するような向きに、リストバンド22を被測定者の左手首に装着する。この状態において、上記第1実施形態と同様に、橈骨動脈の下流側の位置に押圧部32から加える押圧力が調整され、橈骨動脈の上流側の圧電センサ1により脈波が測定される。従って、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
<他の実施形態>
以上、この発明の各実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0060】
(1)上記各実施形態では、この発明を橈骨動脈波の測定を行う装置に適用したが、この発明は橈骨動脈波以外の脈波を測定する装置にも適用可能である。
(2)上記第4実施形態における布帛21をリストバンドに置き換えてもよい。
(3)上記第4実施形態において、布帛21を弾性を有する粘着テープに置き換え、この粘着テープの弾性力により適度な押圧力で押圧部31を被測定者の肌表面に押し当ててもよい。
(4)上記第7実施形態では、リストバンド22の内周面に圧電センサ1と中空円環状の空気袋である押圧部32を設けたが、布帛に対して圧電センサ1と中空棒状の空気袋を設けてもよい。