(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ワイヤーハーネスをインサート部品としてインサート成形する必要が有る。
【0005】
そこで、本発明は、サイレンサに対して別体として形成されたワイヤーハーネスを容易に固定可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、車両においてフロアマットとボディとの間に配設されるサイレンサと、前記サイレンサの主面に沿って配設されたワイヤーハーネスと、前記サイレンサに厚み方向に貫通する態様で形成された貫通孔に通された状態で前記ワイヤーハーネスを前記サイレンサに固定している固定用部材と、を備え、前記サイレンサのうち前記貫通孔の内周面が前記固定用部材に密着している。
【0007】
また第1の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造
において、前記固定用部材は、前記サイレンサの両主面のどちらか一方の外側に係止している第1係止部および第2係止部と、前記第1係止部および前記第2係止部を繋ぎつつ少なくとも一部が前記サイレンサを貫通している連結部とを有するタグピン状部材を含む。
【0008】
第
2の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第
1の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記タグピン状部材における前記連結部のうち前記第1係止部側の一端部と前記第2係止部側の他端部とが相互に離れた位置で共に前記サイレンサを貫通しており、前記サイレンサと露出する前記連結部の中間部との間に前記ワイヤーハーネスが挟まれている。
【0009】
第
3の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第
1の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記第1係止部が前記サイレンサに対して前記ワイヤーハーネスが配設される主面の外側に位置すると共に、前記第2係止部が前記サイレンサに対して前記ワイヤーハーネスが配設される主面とは反対側の主面の外側に位置しており、前記ワイヤーハーネスにおける電線が固定されたシート材が前記第1係止部と前記サイレンサとの間に位置している。
【0010】
第
4の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第
1から第
3のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記サイレンサのうち前記ワイヤーハーネスが配設されている主面とは反対側の主面において、前記タグピン状部材の前記第1係止部と前記第2係止部とのうち少なくとも一方が係止している部分が、その周囲の部分に対して厚み方向に凹んでいる。
【0011】
第
5の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第1から第
4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記固定用部材は、支柱部と前記支柱部の先端に形成された係止片とを有し、穴部に挿入係止可能に形成されたクリップを含み、前記クリップの前記係止片が前記貫通孔の中間部の位置に係止している。
【0012】
第
6の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第1から第
5のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記固定用部材は、前記サイレンサよりも高剛性の材料によって形成されて前記貫通孔の周縁部を挟み込みつつ固定された第1部材と、前記第1部材に形成された有底穴に挿入係止されている第2部材とを含む。
【0013】
第
7の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第1から第
6のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記ワイヤーハーネスは、電線と、前記電線が固定されると共に前記固定用部材と前記サイレンサとの間に挟まれているシート材とを含む。
【0014】
第
8の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第1から第
7のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記ワイヤーハーネスは、丸断面形状を呈する態様に束ねられた複数の電線を含む。
【発明の効果】
【0015】
第1から第
8の態様によると、固定用部材によってサイレンサに対して別体として形成されたワイヤーハーネスを容易に固定することができる。このとき、サイレンサのうち貫通孔の内周面が固定用部材に密着しているため、貫通孔があけられることによる防音性の低下を抑制できる。
【0016】
また第1から第8の態様によると、サイレンサに貫通孔が予めあけられていなくても、タグガン等を用いることによって簡易にタグピン状部材をサイレンサに打ち込むことができる。また、タグピン状部材を打ち込むときに形成される貫通孔は、サイレンサの切除を伴わないため、貫通孔の内周面が連結部に密着しやすくなり、貫通孔があけられることによる防音性の低下を抑制できる。
【0017】
特に、第
2の態様によると、ワイヤーハーネスの固定状態が安定し、ワイヤーハーネスが振動等の影響を受けにくくなる。
【0018】
特に、第
3の態様によると、比較的短いタグピン状部材によってワイヤーハーネスをサイレンサに固定できる。
【0019】
特に、第
4の態様によると、タグピン状部材がサイレンサのうちワイヤーハーネスが配設される主面とは反対側の主面の外方に突出することを抑制できる。
【0020】
特に、第
5の態様によると、クリップを用いてワイヤーハーネスを固定できる。この際、クリップがサイレンサのうちワイヤーハーネスが配設される主面とは反対側の主面の外方に突出することを抑制できる。
【0021】
特に、第
6の態様によると、サイレンサの貫通孔に直接第2部材を係止させる場合に比べて、係止状態が安定する。
【0022】
特に、第
7の態様によると、固定用部材とサイレンサとによってシート材部分を挟むことによって容易にワイヤーハーネスを固定できる。
【0023】
特に、第
8の態様によると、丸断面のワイヤーハーネスをサイレンサに固定できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造について説明する。
図1は、第1実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1を示す概略断面図である。
図2は、
図1の部分拡大図である。
【0026】
ワイヤーハーネスの固定構造1は、サイレンサ10と、サイレンサ10の主面11aに沿って配設されたワイヤーハーネス20と、ワイヤーハーネス20をサイレンサ10に固定している固定用部材30と、を備える。本実施形態では固定用部材30としてタグピン状部材32が用いられている事例について説明する。
【0027】
サイレンサ10は、車両においてフロアマット80とボディ82との間に配設される部材である。サイレンサ10には、厚み方向に貫通する態様で貫通孔12が形成されている。
【0028】
サイレンサ10は、防音性を有する材料によって板状に形成されている。ここでは、サイレンサ10は、発泡ポリウレタン等の樹脂発泡体のチップに、接着剤(バインダ)を塗布するなどして混在させたものを蒸気雰囲気下で圧縮させつつ一体に固着させることによって形成されるものとして説明する。かかる接着剤としてはウレタンチップ用接着剤などチップの素材に応じた周知の接着剤を用いることができる。もっとも、サイレンサ10の製造方法は上記したものに限られない。例えば、サイレンサ10は、ポリウレタン等の樹脂材料を発泡させつつモールド成形して形成されるものであってもよいし、不織布を材料として形成されるものであってもよい。また例えばサイレンサ本体部12は、無数の繊維状部材が圧縮されて形成されるものであってもよい。この場合、無数の繊維状部材は絡み合って結合されていてもよいし、接着剤等によって固着されていてもよい。係る繊維状部材は、天然繊維であってもよいし、化学繊維であってもよい。
図1に示す例ではサイレンサ10は平坦に形成されているが、フロアマット80或いはボディ82の形状に沿わせること、又は部分的にかさ上げすること等を目的として厚み方向に凹凸を呈する部分を有していてもよい。
【0029】
貫通孔12は、固定用部材30をサイレンサ10に対して厚み方向に通すために形成される。サイレンサ10のうち貫通孔12の内周面が固定用部材30に密着している。上述したようにここではサイレンサ10は、樹脂発泡体を主成分としている。つまり、サイレンサ10は多孔質であり、無数の気泡を有している。このため、サイレンサ10のうち貫通孔12の内周面が固定用部材30に密着している場合でも、表面に気泡が現れた部分など部分的に見ると固定用部材30に密着していない部分が存在している場合もあり得る。なお、無数の気泡は連続していてもよいし、独立していてもよい。
【0030】
図3は、第1実施形態に係るワイヤーハーネス20を示す斜視図である。
図4は、変形例にかかるワイヤーハーネス20Aを示す斜視図である。
【0031】
ワイヤーハーネス20、20Aは、電線22を含み、偏平に形成されている。ここでは、ワイヤーハーネス20、20Aは、電線22がシート材24に固定されていることによって偏平に形成されている。係るシート材24を構成する原料は特に限定されるものではなく、樹脂、金属、天然繊維等を用いることができる、また、係るシート材24は、押出成形等によって一様な充実断面を有するものであってもよい。また、係るシート材24は、織布、編み布、不織布等であってもよい。また、係る電線22は、芯線とその周囲に形成された絶縁被覆とを有する絶縁電線であってもよいし、芯線のみのいわゆる裸電線であってもよい。また係る芯線は単芯線であってもよいし、撚線であってもよい。もっとも、ワイヤーハーネスは、例えば、平行に延びる複数の芯線の周囲に一括被覆が施されたFFC(フレキシブルフラットケーブル)のようにシート材24とは別の手段によって偏平に形成されていてもよい。ここでワイヤーハーネス20と、ワイヤーハーネス20Aとは、電線22とシート材24との固定方法が異なっている。
【0032】
具体的にはワイヤーハーネス20では、電線22は、糸26によってシート材24に縫い付けられて固定されている。この場合、ミシンを用いて電線22をシート材24に縫い付けることができる。このとき電線22とは別にミシン糸26としての上糸及び下糸が設けられていてもよいし、電線22をミシン糸26としての上糸及び下糸の一方として用いてもよい。もちろん手縫いで縫い付けられていてもよい。
【0033】
またワイヤーハーネス20Aにおいては、電線22は、シート材24に溶着されて固定されている。この場合、電線22の被覆がシート材24に溶着されているとよい。溶着方法としては、例えば、超音波溶着、レーザ溶着、熱溶着等を用いることができる。
【0034】
もっとも、電線22がシート材24に縫付又は溶着により固定されていることは必須ではない。電線22は、シート材24に対して縫付、溶着とは別の手段によって固定されていてもよい。例えば、電線22とシート材24とは、接着剤、両面テープ等によって固定されていることも考えられる。
【0035】
なお、ワイヤーハーネス20、20Aにおいて、複数の電線22がフラットな状態に配設されているが、このことは必須の構成ではない。例えば、複数の電線22は束の状態にされていてもよい。また電線22の端部がシート材24から延出した状態で、電線22の端部にコネクタ23が設けられているが、このことは必須の構成ではない。例えば、コネクタ23がシート材24と重なる位置に設けられていてもよい。
【0036】
本実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1においては、ワイヤーハーネス20(20A)は、シート材24がタグピン状部材32とサイレンサ10との間に挟まれていることによってサイレンサ10に固定されている。シート材24は、タグピン状部材32の後述する第1係止部34とサイレンサ10との間に位置している。
【0037】
なお、
図1に示す例では、ワイヤーハーネス20がサイレンサ10に対してフロアマット80側を向く主面11aに配設されているが、このことは必須の構成ではない。ワイヤーハーネス20は、サイレンサ10に対してボディ82側を向く主面11bに配設されている場合もあり得る。
【0038】
固定用部材30は、貫通孔12に通された状態でワイヤーハーネス20をサイレンサ10に固定している。上述したようにここでは固定用部材30としてタグピン状部材32が用いられている。タグピン状部材32は、第1係止部34および第2係止部36と、第1係止部34および第2係止部36を繋ぐ連結部38とを有する。タグピン状部材32は、例えば、樹脂等を材料とした一体成形品であることが考えられる。このときタグピン状部材32は、サイレンサ10よりも高い剛性を有していることが考えられる。
【0039】
第1係止部34および第2係止部36は棒状に形成されている。そして、第1係止部34および第2係止部36は、サイレンサ10の両主面11a、11bのどちらか一方の外側に係止している。ここでは、第1係止部34がサイレンサ10に対してワイヤーハーネス20が配設される主面11aの外側に位置する。また、第2係止部36がサイレンサ10に対してワイヤーハーネス20が配設される主面11aとは反対側の主面11bの外側に位置している。従ってここでは第1係止部34および第2係止部36は、相互にサイレンサ10を挟んで反対側に位置している。なおここでは、第1係止部34および第2係止部36は同一形状に形成されているが、このことは必須の構成ではない。一方が例えば板片状等の棒状以外の形状に形成されていてもよい。この場合、棒状以外の形状に形成される係止部が主面11a側に係止してもよいし、主面11b側に係止してもよい。
【0040】
連結部38は、棒状に形成されている。連結部38は、第1係止部34および第2係止部36の中間部を連結している。連結部38は、第1係止部34および第2係止部36の延在方向と交差する方向(ここでは直交する方向)に延びている。このとき連結部38は、サイレンサ10を貫通している。さらにここでは連結部38は、シート材24を貫通している。ここでは、連結部38はサイレンサ10の主面11a、11bに対して法線方向に沿って延びているものとして説明するが、連結部38はサイレンサ10の主面11a、11bに対して法線方向から傾斜した方向に沿って延びている場合もあり得る。
【0041】
ここでサイレンサ10において、連結部38が貫通している部分が上記貫通孔12とされる。当該貫通孔12は、タグピン状部材32が打ち込まれる際に形成される。これについて詳しくは後述する。
【0042】
サイレンサ10のうちワイヤーハーネス20が配設されている主面11aとは反対側の主面11bにおいて、タグピン状部材32の第1係止部34と第2係止部36とのうち少なくとも一方が係止している部分が、その周囲の部分に対して厚み方向に凹んでいる。ここではサイレンサ10のうち主面11bにおいて第2係止部36が係止している部分が、その周囲の部分に対して厚み方向に凹んでいる。当該凹みについて以下では凹部16と称する。凹部16は予め形成されるものであってもよいし、タグピン状部材32を係止させる際にタグピン状部材によってサイレンサ10が圧縮されることによって形成されるものであってもよい。以下では凹部16は、タグピン状部材32を係止させる際にタグピン状部材によってサイレンサ10が圧縮されることによって形成されるものとして説明する。
【0043】
例えば、連結部38の長さ寸法がサイレンサ10の厚み寸法とシート材24の厚み寸法との和よりも小さいことによって、凹部16を形成することができる。また、連結部38の長さ寸法がサイレンサ10の厚み寸法とシート材24の厚み寸法との和以上であっても、連結部38がサイレンサ10の主面11a、11bに対して法線方向から傾斜した方向に沿って延びることによってその経路長が連結部38の長さ寸法より大きくなれば、凹部16を形成することが可能となる。
【0044】
なお、ここではシート材24のうち第1係止部34が係止している部分についても、その周囲の部分に対して厚み方向に凹んでいる。当該凹みについて以下では凹部25と称する。もっとも、凹部25は生じていなくてもよい。例えば、シート材24の剛性がサイレンサ10の剛性よりも高くなるほど、凹部25が生じにくくなる(凹部25の深さ寸法が小さくなる)と考えられる。
【0045】
凹部16の深さ寸法(サイレンサ10の厚み方向に沿った寸法)は、第2係止部36の厚み寸法よりも大きいことが好ましい。これにより、
図2に示すように第2係止部36が凹部16に完全に収まることによって、サイレンサ10の周囲部分から突出することを抑制でき、もって第2係止部36が周囲の部材に接触しにくくなる。凹部16の深さ寸法は、サイレンサ10の厚み寸法、シート材24の厚み寸法、連結部38の長さ寸法、連結部38の延在方向、および凹部25の深さ寸法等によって決定される。
【0046】
図5は、タグピン状部材32が打ち込まれる様子を示す説明図である。
【0047】
タグピン状部材32は、例えば特開平6−263127号公報に記載の係止片取付機のような周知の装置によって係止対象となる部材に打ち込み可能である。
図5にはこのような装置の一例として手持ち式のタグガン90が示されている。係るタグガン90は、例えば、タグピン状部材32を案内可能な溝を有する針92を備えている。そして、
図5に示すように当該針92を係止対象となる部材に貫通させた状態で、トリガー94を引く。これによりタグピン状部材32の一端部が溝に沿って移動するように打ち出される。打ち出されたタグピン状部材32の一端部が、係止対象となる部材の一方主面の外側に係止する。このとき、タグピン状部材32の他端部は、係止対象となる部材の他方主面の外側に留まる。あとは、係止対象となる部材から針92を抜くことによってタグピン状部材32の打ち込み作業が完了となる。
【0048】
従ってここではタグガン90の針92が挿し込まれることによって貫通孔12が形成される。このため、サイレンサ10に貫通孔12が予めあけられていなくても、タグガン90等を用いることによって簡易にタグピン状部材32をサイレンサ10に打ち込むことができる。
【0049】
また、タグガン90の針92をサイレンサ10に挿し込む際、サイレンサ10の切除を伴うことなく、挿し込み可能である。このため、針92が抜かれた後に連結部38が通された状態となることによって生じる貫通孔12の内周面が連結部38に密着しやすくなり、貫通孔12があけられることによる防音性の低下を抑制できる。
【0050】
なお、上記タグガン90は手持タイプであるが、据え置きタイプの装置が用いられていてもよい。また、タグガン90は手動タイプであるが、モータ等の駆動源を有するタイプの装置が用いられていてもよい。
【0051】
以上に示された態様によると、固定用部材30によってサイレンサ10に対して別体として形成されたワイヤーハーネス20を容易に固定することができる。このとき、サイレンサ10のうち貫通孔12の内周面が固定用部材30に密着しているため、貫通孔12があけられることによる防音性の低下を抑制できる。
【0052】
また、サイレンサ10に貫通孔12が予めあけられていなくても、タグガン90等を用いることによって簡易にタグピン状部材32をサイレンサ10に打ち込むことができる。特に、タグピン状部材32を用いる場合、一方の面から固定作業ができるため、サイレンサ10のように大きな部材でも裏面からの作業がなく、作業を容易に行うことができる。また、タグピン状部材32を打ち込むときに形成される貫通孔12は、サイレンサ10の切除を伴わないため、貫通孔12の内周面が連結部38に密着しやすくなり、貫通孔12があけられることによる防音性の低下を抑制できる。
【0053】
また、第1係止部34と第2係止部36とがサイレンサ10に対して相互に反対側に係止しているため、比較的短いタグピン状部材32によってワイヤーハーネス20をサイレンサ10に固定できる。
【0054】
また、凹部16が形成されていることにより、タグピン状部材32がサイレンサ10のうちワイヤーハーネス20が配設される主面11aとは反対側の主面11bの外方に突出することを抑制できる。
【0055】
また、タグピン状部材32とサイレンサ10とによってシート材24部分を挟むことによって容易にワイヤーハーネス20を固定できる。
【0056】
{第2実施形態}
第2実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造について説明する。
図6は、第2実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Aを示す概略断面図である。なお、本実施の形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。以下の各実施形態及び各変形例の説明においても同様である。
【0057】
第2実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Aにおいて、タグピン状部材32の固定態様が第1実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1におけるタグピン状部材32の固定態様とは異なる。具体的には、ワイヤーハーネスの固定構造1Aにおいて第1係止部34及び第2係止部36がサイレンサ10に対して同じ主面11b側に係止している。従って、連結部38のうち第1係止部34側の一端部38aと第2係止部36側の他端部38bとが相互に離れた位置で共にサイレンサ10を貫通している。このため、連結部38の一端部38aと他端部38bとの間の中間部38cがサイレンサ10の外方に露出している。
【0058】
このとき第1係止部34及び第2係止部36がサイレンサ10に対してワイヤーハーネス20が配設される主面11aとは反対側の主面11b側に係止している。そして、サイレンサ10と、露出する連結部38の中間部38cとの間にワイヤーハーネス20が挟まれている。このとき、ワイヤーハーネス20のうち電線22を含む部分がサイレンサ10と露出する連結部38の中間部38cとの間に挟まれている。特にここでは、サイレンサ10と中間部38cとの間にすべての電線22が挟まれている。
【0059】
このようにタグピン状部材32をU字状に曲げた状態でサイレンサ10に係止させる装置としては、例えば、特開平10−59338号公報に記載の係止片取付装置等のように上記タグガン90における針92を2つ有する周知の2針式の装置を用いることができる。この場合でも、一方の面から固定作業ができるため、サイレンサ10のように大きな部材でも裏面からの作業がなく、作業を容易に行うことができる。
【0060】
ここで、第1係止部34及び第2係止部36がサイレンサ10に対してワイヤーハーネス20が配設される主面11aとは反対側の主面11b側に係止している場合でも、サイレンサ10と露出する連結部38の中間部38cとの間にワイヤーハーネス20のうち電線22を含む部分が挟まれていない場合もあり得る。このような場合としては例えばサイレンサ10と露出する連結部38の中間部38cとの間にワイヤーハーネス20のうちシート材24のみが挟まれている場合が考えられる。また、電線22を含む部分が挟まれている場合でも、一部の電線22のみが挟まれている場合もあり得る。
【0061】
本態様によると、ワイヤーハーネス20の固定状態が安定し、ワイヤーハーネス20が振動等の影響を受けにくくなる。特にタグピン状部材32はシンプルな構成であるため、影響が少なくて済む。
【0062】
{第3実施形態}
第3実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造について説明する。
図7は、第3実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Bを示す概略断面図である。
【0063】
第3実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Bにおいて、ワイヤーハーネス20Bの形状が第2実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Aにおけるワイヤーハーネス20の形状とは異なる。
【0064】
具体的には、ワイヤーハーネスの固定構造1Bにおいてワイヤーハーネス20Bの複数の電線22は、丸断面形状を呈する態様に束ねられて電線束22aをなしている。複数の電線22は、例えば図示省略の粘着テープ又は結束バンドなどの結束部材が巻き付けられることによって、丸断面形状を呈する態様に束ねられる。粘着テープは、例えば螺旋状に巻付けられたり、間隔をあけて部分的に巻付けられたりする。また例えば、複数の電線22は、コルゲートチューブなどの筒状部材が外装される、又はシート材が巻付けられることなどによって丸断面形状を呈する態様に束ねられる。
【0065】
そして、丸断面形状を呈する態様に束ねられた電線束22aがタグピン状部材32によってサイレンサ10に固定されている。このとき、第2実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Aと同様に、第1係止部34及び第2係止部36がサイレンサ10に対してワイヤーハーネス20が配設される主面11aとは反対側の主面11b側に係止している。そして、電線束22aがサイレンサ10と露出する連結部38の中間部38cとの間に挟まれている。
【0066】
本態様によると、丸断面のワイヤーハーネス20Bをサイレンサ10に固定できる。
【0067】
{第4実施形態}
第4実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造について説明する。
図8は、第4実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Cを示す概略断面図である。
図9は、第4実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Cを示す概略分解断面図である。
図10は、第4実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Cを示す概略分解側面図である。
【0068】
第4実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Cにおいて、固定用部材30Cの形状が第3実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Bにおける固定用部材30の形状とは異なる。
【0069】
具体的には、ここでは固定用部材30Cとしてクリップ40が用いられている。クリップ40は、サイレンサ10に形成された貫通孔12Cに挿入係止している。ここで、貫通孔12Cはサイレンサ10に予め形成されるものとして説明する。また貫通孔12Cは、サイレンサ10の一部が切除される、又は切除されないで形成された孔が広げられるなどして
図9に示すように幅を有しているものとして説明する。より具体的にはクリップ40は、支柱部42と係止片44とを有する。ここではクリップ40は、挿入規制部46及びハーネス固定部48をさらに有している。
【0070】
支柱部42は、貫通孔12Cよりも大きく(ここでは僅かに大きく)形成されている。支柱部42は貫通孔12Cに収まっている。支柱部42の基端に挿入規制部46が設けられ、挿入規制部46が延長されてハーネス固定部48が設けられている。
【0071】
係止片44は、支柱部42の先端に設けられている。係止片44は貫通孔12Cよりも大きく形成されている。そして係止片44がサイレンサ10に形成された貫通孔12Cに係止している。係止片44は、貫通孔12Cの中間部の位置に係止している。係止片44は支柱部42の基端に向けて徐々に外側に広がる形状に形成されている。ここでは、係止片44は支柱部42に対して両側に突出するように2つ形成されている。
【0072】
挿入規制部46は、支柱部42の基端に形成されている。挿入規制部46は、貫通孔12Cへの支柱部42のそれ以上の挿入を規制する。挿入規制部46は支柱部42よりも大きい板状に形成されている。このとき挿入規制部46は貫通孔12Cよりも大きい板状に形成されている。これにより、挿入規制部46は貫通孔12Cに挿入不可とされる。ここでは挿入規制部46は方形板状に形成されている。そして、挿入規制部46から延長する態様でハーネス固定部48が設けられている。
【0073】
ハーネス固定部48は、ワイヤーハーネスを固定する部分である。ここでは、挿入規制部46の一部が支柱部42の延びる方向と交差する方向に延長し、当該延長部分がハーネス固定部48とされている。そして、ハーネス固定部48とワイヤーハーネス20Bとの周囲に粘着テープ又は結束バンド等の結束部材70が巻付けられることによって、ワイヤーハーネス20Bがハーネス固定部48に固定されている。
【0074】
ワイヤーハーネス20Bをハーネス固定部48に固定する結束部材70は、複数の電線22を、丸断面形状を呈する態様に束ねる結束部材としての機能を兼ねるものであってもよい。この場合、ワイヤーハーネス20Bにおいてハーネス固定部48に固定される部分では、粘着テープが螺旋巻きされるなどした部分は省略されていることも考えられる。
【0075】
ここで、
図3に示す例では挿入規制部46に対して両側にそれぞれ延長する態様で2つのハーネス固定部48が設けられているが、このことは必須の構成ではない。例えば、挿入規制部46に対して片側のみに延長する態様でハーネス固定部48が1つのみ設けられていてもよい。
【0076】
また、ハーネス固定部48は、挿入規制部46に対してオフセット部を介してつながっていることも考えられる。オフセット部は、例えば支柱部42の延在方向から見てハーネス固定部48と支柱部42との位置をずらす部分である。例えばオフセット部は、挿入規制部46に対して支柱部42の延びる方向と交差する第1方向に延長する態様で設けられる。このとき、ハーネス固定部48は、オフセット部に対してオフセット部の延びる第1方向と交差する第2方向に延びる態様で、オフセット部の先端側に設けられる。
【0077】
例えば、クリップ40は、樹脂等を材料として金型を用いて一体成形された一体成形品であることが考えられる。
【0078】
なお、ここではクリップ40がサイレンサ10よりも高剛性を有する材料によって形成されているものとして説明する。この場合、クリップ40が貫通孔12Cに挿入される際、主としてサイレンサ10が弾性変形する。つまり、貫通孔12Cが係止片44と同じかそれ以上に大きくなるようにサイレンサ10が弾性変形する。このとき係止片44は、小さくなるように弾性変形容易に形成されていてもよいし、弾性変形しにくいように形成されていてもよい。
【0079】
図8に示す例では、係止片44の先端が貫通孔12Cの内周表面を突き破ってサイレンサ10の内部に達している。もっとも、係止片44の先端が貫通孔12Cの内周表面を突き破っていない場合もあり得る。この場合、貫通孔12Cの内周面が係止片44の先端に押圧されることによって、貫通孔12Cのうち係止片44の先端が位置する部分がそれより主面11a側に位置する部分と比べて外周側に広がる態様となっていることが考えられる。
【0080】
本態様によると、クリップ40を用いてワイヤーハーネス20を固定できる。この際、係止片44が貫通孔12Cの中間部の位置に係止しているため、クリップ40がサイレンサ10のうちワイヤーハーネス20Bが配設される主面11aとは反対側の主面11bの外方に突出することを抑制できる。
【0081】
{第5実施形態}
第5実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造について説明する。
図11は、第5実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Dを示す概略断面図である。
図12は、第1部材60をサイレンサ10に取付ける様子を示す説明図である。
図13は、第2部材65を第1部材60に係止させる様子を示す説明図である。
【0082】
本実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1は、固定用部材30Dが2部品構成とされている点で、第4実施形態に係るワイヤーハーネス20Cとは異なる。具体的には、固定用部材30は、第1部材60と第2部材65とを含む。第1部材60は、サイレンサ10に形成された貫通孔12Dに通された状態でサイレンサ10に固定されている。
【0083】
ここで貫通孔12Dについて先に説明する。貫通孔12Dは、予め形成されているものとして説明する。貫通孔12Dは、軸方向に沿って第1孔部13と第1孔部13よりも大きい第2孔部14とを有する形状に形成されている。ここでは第1孔部13が、第2孔部14よりもワイヤーハーネス20Bが配設される主面11a側に位置している。
【0084】
第1部材60は、例えば、非発泡の樹脂などサイレンサ10よりも高剛性の材料によって形成されている。第1部材60は、貫通孔12Dの周縁部(ここでは第1孔部13の周縁部)を挟み込みつつ固定されている。具体的には、第1部材60は、軸部61と、フランジ部62と、抜止部63とを含む。また第1部材60には、有底穴60hが形成されている。さらにここでは第1部材60には、係止突起部64が形成されている。係止突起部64は、第2部材65の後述する係止突起部68と係止し合う。
【0085】
軸部61は、棒状に形成されている。軸部61の一端部61aは、サイレンサ10のうちワイヤーハーネス20Bが配設される主面11a側に露出する。軸部61は、サイレンサ10の主面11a側に露出する一端部61aからサイレンサ10の内部に向けて延びている。軸部61は両端が開口した円筒状に形成されている。軸部61は、第1孔部13に通されている。このとき軸部61は第1孔部13よりも大きく形成されている。これにより、第1孔部13の内周面が軸部61に密着している。
【0086】
ここで、軸部61の一端部61aの先端はサイレンサ10の主面11aより外側に突出している。そして、当該突出部分の周縁にフランジ部62が設けられている。従ってフランジ部62はサイレンサ10に対してワイヤーハーネス20Bが配設される主面11a側に位置している。当該フランジ部62は、軸部61がサイレンサ10から抜けるのを規制する部分であり、抜止部63と共に相互に反対側からサイレンサ10を挟んでいる。
【0087】
抜止部63は、フランジ部62と同様に軸部61がサイレンサ10から抜けるのを規制する部分である。具体的には、抜止部63は、軸部61の他端部61bにつらなる。抜止部63は軸部61よりも大きく形成されている。抜止部63はフランジ部62よりも大きく形成されているが、フランジ部62と同じかそれより小さくてもよい。抜止部63は、例えば円板状又は角板状などの板状に形成されている。抜止部63は、サイレンサ10のうち主面11bの外側に突出していない。このため、抜止部63は、第2孔部14に完全に収容された状態となっている。これにより、抜止部63が周囲の部材に接触することを抑制することができる。例えば、抜止部63の厚み寸法が、第2孔部14の深さ寸法よりも小さく設定されることなどによって、抜止部63が第2孔部14に完全に収容された状態となることができる。
【0088】
有底穴60hは、ここでは軸部61と、抜止部63とで構成されている。より詳細には、円筒状の軸部61の内部の中空部61cが、有底穴60hの穴部を構成している。このとき軸部61の他端部61bにおける中空部61cの開口は抜止部63によって塞がれている。従ってここでは抜止部63が有底穴60hの底部を構成している。このとき軸部61の一端部61aがサイレンサ10の主面側に露出することによって、軸部61の一端部61aにおける中空部61cの開口が外部に露出し、有底穴60hの開口をなしている。そして当該開口から第2部材65が挿入されている。
【0089】
もっとも、軸部61が、他端部61bが閉口した筒状に形成されるなどして、有底穴60hの底部が軸部61の中間部に位置していることも考えられる。
【0090】
係止突起部64は、軸部61の内周面から内向きに突出する態様で形成されている。係止突起部64は、少なくとも1つ(ここでは複数)の突起64aを含む。突起64aは、有底穴60hの開口側から底部側に行くに向けて徐々に突出寸法が大きくなるように形成されている。より詳細には突起64aは軸方向に対して傾斜した傾斜面64bと、軸方向に対して垂直な垂直面64cとを有している。突起64aにおいて、傾斜面64bが有底穴60hの開口側を向いていると共に垂直面64cが有底穴60hの底部側を向いている。複数の突起64aは軸方向に並んで形成されている。突起64aは周方向全体に亘って形成されている。もっとも、突起64aは、周方向に沿った一部の領域のみに形成されていてもよい。この場合、周方向に沿った寸法が半周より小さい突起が複数、周方向に並んでいることも考えられる。
【0091】
かかる第1部材60は、例えば、樹脂等を材料として金型を用いて一体成形された一体成形品であることが考えられる。そして、第1部材60は、第1部材60とは別に形成されたサイレンサ10の貫通孔12に嵌め込まれることによってサイレンサ10に固定されている。ここで、第1部材60を貫通孔12に嵌め込む工程は、第1部材60と第2部材65とを係止させる工程の前に行われることが好ましい。
【0092】
第2部材65は、第1部材60に形成された有底穴60hに挿入係止されている。第2部材65は、有底穴60hに係止することによってワイヤーハーネス20Bをサイレンサ10に固定している。具体的には、第2部材65は、挿入部66を含む。ここでは第2部材65には、係止突起部68が形成されている。係止突起部68は、第1部材60に形成された係止突起部64と係止し合う。またここでは第2部材65は上記挿入規制部46とハーネス固定部48とをさらに含む。
【0093】
挿入部66は、棒状に形成されている。挿入部66は、軸部61に形成された有底穴60hに挿入係止されている。挿入部66は、挿入本体部67と、係止突起部68とを有する。
【0094】
挿入本体部67は、有底穴60hと同じかそれよりも小さい(ここでは若干小さい)棒状に形成されている。ここでは挿入本体部67は、柱状(ここでは円柱状)に形成されている。もっとも挿入本体部67は、筒状に形成されていてもよい。また挿入本体部67は、弾性変形容易とするために、延在方向に平行な平面に沿って分割されていてもよい。この場合、分割態様は特に限定されず、2分割、3分割、4分割又はそれ以上に分割されていてもよい。
【0095】
係止突起部68は、挿入本体部67の外周面から外向きに突出する態様で形成されている。係止突起部68は、少なくとも1つ(ここでは複数)の突起68aを含む。突起68aは、挿入本体部67の先端側から基端側に行くに向けて徐々に突出寸法が大きくなるように形成されている。ここでは突起68aは軸方向に対して傾斜した傾斜面68bと、軸方向に対して垂直な垂直面68cとを有している。そして突起68aは、傾斜面68bを先端側に向けていると共に垂直面68cを基端側に向けている。複数の突起68aは軸方向に並んで形成されている。突起68aは周方向全体に亘って形成されている。もっとも、突起68aは、周方向に沿った一部の領域のみに形成されていてもよい。この場合、周方向沿った寸法が半周よりも小さい突起が複数、周方向に並んでいることも考えられる。
【0096】
ここで、有底穴60hと挿入部66との係止態様について説明する。
【0097】
有底穴60hに挿入本体部67が挿し込まれていくとやがて突起64a、68aの傾斜面64b、68b同士が接する。そのまま力を加えると、相互に接する突起64a、68aが弾性変形しつつ相手側を挿入方向奥側に案内する。これにより、有底穴60hに挿入部66が挿入されていく。そして、挿入規制部46が有底穴60hの開口周縁(軸部61の先端)に当接することによってそれ以上の挿入が不可となり、挿入完了とされる。これに対して、有底穴60hに挿入係止している挿入部66に有底穴60hから抜く方向に力がかけられた場合、突起64a、68aの垂直面64c、68c同士が接するため弾性変形しにくい。これにより、有底穴60hに挿入係止している挿入部66を抜くことが困難とされる。
【0098】
なお、突起64aが軸部61の先端にないこと、及び突起68aが挿入本体部67の先端にないことの少なくとも一方の態様を有していることが好ましい。これにより、挿入部66が有底穴60hに挿入された後すぐに突起64a、68aが接触することを抑制できる。この結果、挿入部66が有底穴60hにある程度挿入された後に、突起64a、68aを弾性変形させるための力をかける工程に移ることができるため、突起64a、68aを弾性変形させるための力を軸方向に沿ってかけやすくなり、もって有底穴60hへの挿入部66の挿入が容易となる。ここでは、突起64aが軸部61の先端にないこと、及び突起68aが挿入本体部67の先端にないことの両方の態様を有している。これにより、突起64a、68aが接触するまでの挿入寸法を大きくできる。
【0099】
かかる第2部材65は、例えば、樹脂等を材料として金型を用いて一体成形された一体成形品であることが考えられる。この際、第2部材65は、サイレンサ10よりも高い剛性を有していることが考えられる。
【0100】
本態様によると、サイレンサ10の貫通孔に直接第2部材65を係止させる場合に比べて、係止状態が安定する。また、タグピン状部材32による係止と比べた場合でも、剛性が大きくなるため、しっかり固定できる。
【0101】
{変形例}
図14は、第4実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Cの変形例を示す概略断面図である。
図15は、第5実施形態に係るワイヤーハーネスの固定構造1Dの変形例を示す概略断面図である。
【0102】
図14および
図15に示す例では、電線22がシート材24に固定されたワイヤーハーネス20(20A)を用いたワイヤーハーネスの固定構造1E、1Fを示している。例えば
図14に示す例では、シート材24がサイレンサ10とクリップ40(より詳細には、挿入規制部46)との間に挟まれていることによって、ワイヤーハーネス20(20A)がサイレンサ10に固定されている。特にここでは、支柱部42がシート材24を貫通している。この場合、ワイヤーハーネス20(20A)のシート材24に先にクリップ40が取付けられ、クリップ40が取付けられたワイヤーハーネス20(20A)がサイレンサ10への組付工場に搬送されるものであってもよい。
図10に示す例でも同様である。なお、クリップ40において結束部材70を巻き付けるための上記ハーネス固定部48は省略されていてもよいし、されていなくてもよい。ハーネス固定部48は省略されていない場合、上記ハーネス固定部48は例えばシート材24に固定されていてもよい。ハーネス固定48とシート材24との固定方法は、シート材24の一部をハーネス固定部48に巻付けるものであってもよいし、当接面同士を接着剤、両面粘着テープ、又は溶着等の手段によって接合するものであってもよい。
【0103】
図16は、ハーネス固定部48の変形例を示す概略断面図である。
【0104】
上記第4、第5実施形態において、電線22とクリップ40又は第2部材65とを固定するため、ハーネス固定部48は、板状に形成されて電線22と共にその周囲に別体の結束部材70が巻付けられるものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。例えば、固定用部材とハーネス固定部としての結束部材とが一体成形されていてもよい。
図16に示す例では、このようなハーネス固定部として結束バンド構造部50が採用された固定用部材30Gを示している。固定用部材30Gは、上記クリップ40における支柱部42および係止片44と、結束バンド構造部50とが一体成形された事例である。
【0105】
結束バンド構造部50は、バンド部52と、バンド部52の基端に連なるバンド固定部54とを有する。バンド固定部54は、結束対象に巻付けられたバンド部52の先端を固定可能である。より詳細には、バンド固定部54は、直方体状に形成されている。バンド固定部54には、その一対の主面を貫通するバンド挿通孔55が形成されている。バンド挿通孔55の内周面からは、バンド部52に形成された複数の凹部に選択的に係止可能な係止突片56が突出している。
【0106】
固定用部材30Gにおいて、バンド固定部54に対してバンド部52が突出する主面とは別主面から上記支柱部42が突出している。また、バンド固定部54のうち支柱部42が突出する側が上記挿入規制部46を兼ねている。別の見方をすると、薄肉の挿入規制部46が厚み方向に延長された態様でハーネス固定部としての結束バンド構造部50が形成されているととらえることができる。そして、支柱部42と一体成形された結束バンド構造部50によってワイヤーハーネス20Bが固定用部材30Gに固定されている。もちろん結束バンド構造部50は、第5実施形態に係る第2部材65における挿入部66と一体に設けられていてもよい。
【0107】
図17は、係止片44の変形例を示す概略側面図である。
【0108】
上記第4、第5実施形態において、係止片44は支柱部42に対して両側に突出するように2つ形成されているものとして説明したが、係止片42の形状はこれに限られるものではない。
【0109】
例えば、
図17に示すクリップ40Aにおいては、支柱部42から四方にそれぞれ延びるように4つの係止片44が形成されている。このときクリップ40Aを支柱部42の延在方向から見ると、一対の係止部44aは、支柱部42に対して相互に逆側に延びている。同様に他の一対の係止部44bも、支柱部42に対して相互に逆側に延びている。そして、一対の係止部44aの延びる方向と、一対の係止部44bの延びる方向とが交差(ここでは、直交)している。従って、クリップ40Aにおいて4つの係止部44は、十字状を呈している。
【0110】
また例えば、係止片は、支柱部42の周囲に全周に亘って形成されていることも考えられる。この場合、係止片は円錐の側面状(傘状)を呈する。
【0111】
そのほか、第1実施形態において、タグピン状部材32がシート材24の幅方向に沿って2つ設けられているものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。タグピン状部材32がシート材24の幅方向に沿って1つ又は3つ以上設けられる場合もあり得る。また、タグピン状部材32が電線22よりもシート材24の縁部側に配置されているが、タグピン状部材32が電線22と電線22との間に配置されている場合もあり得る。
【0112】
第2実施形態において、第1係止部34及び第2係止部36がサイレンサ10に対してワイヤーハーネス20が配設される主面11a側(シート材24)に係止している場合もあり得る。
【0113】
第5実施形態において、軸部61が円筒状に形成されているものとして説明したが、軸部61の形状はこれに限られない。例えば、相互に離れつつ平行に延びる複数の平板が形成されて軸部とされていてもよい。この場合、複数の平板の間の部分に有底穴が形成される。当該有底穴の周方向の一部(平板に覆われていない部分)は、サイレンサ10に覆われる。また、2つの平板の対向する各主面に係止突起部が形成される。またこのとき上記有底穴に挿入される挿入部の挿入本体部も長方形平板状に形成される。そして、長方形平板状の挿入本体部の両主面に外向きに係止突起部が突出形成される。
【0114】
また各実施形態において、サイレンサ10がフロアマット80と別体とされているものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。サイレンサ10は、接合等によってフロアマット80と一体となっている場合もあり得る。この場合、一体品において、車室内に露出する部材がフロアマットである。
【0115】
本明細書及び図面は下記の各態様を開示する。
第1の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、車両においてフロアマットとボディとの間に配設されるサイレンサと、前記サイレンサの主面に沿って配設されたワイヤーハーネスと、前記サイレンサに厚み方向に貫通する態様で形成された貫通孔に通された状態で前記ワイヤーハーネスを前記サイレンサに固定している固定用部材と、を備え、前記サイレンサのうち前記貫通孔の内周面が前記固定用部材に密着している。
第2の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第1の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記固定用部材は、前記サイレンサの両主面のどちらか一方の外側に係止している第1係止部および第2係止部と、前記第1係止部および前記第2係止部を繋ぎつつ少なくとも一部が前記サイレンサを貫通している連結部とを有するタグピン状部材を含む。
第3の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第2の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記タグピン状部材における前記連結部のうち前記第1係止部側の一端部と前記第2係止部側の他端部とが相互に離れた位置で共に前記サイレンサを貫通しており、前記サイレンサと露出する前記連結部の中間部との間に前記ワイヤーハーネスが挟まれている。
第4の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第2の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記第1係止部が前記サイレンサに対して前記ワイヤーハーネスが配設される主面の外側に位置すると共に、前記第2係止部が前記サイレンサに対して前記ワイヤーハーネスが配設される主面とは反対側の主面の外側に位置しており、前記ワイヤーハーネスにおける電線が固定されたシート材が前記第1係止部と前記サイレンサとの間に位置している。
第5の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第2から第4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記サイレンサのうち前記ワイヤーハーネスが配設されている主面とは反対側の主面において、前記タグピン状部材の前記第1係止部と前記第2係止部とのうち少なくとも一方が係止している部分が、その周囲の部分に対して厚み方向に凹んでいる。
第6の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第1から第5のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記固定用部材は、支柱部と前記支柱部の先端に形成された係止片とを有し、穴部に挿入係止可能に形成されたクリップを含み、前記クリップの前記係止片が前記貫通孔の中間部の位置に係止している。
第7の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第1から第6のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記固定用部材は、前記サイレンサよりも高剛性の材料によって形成されて前記貫通孔の周縁部を挟み込みつつ固定された第1部材と、前記第1部材に形成された有底穴に挿入係止されている第2部材とを含む。
第8の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第1から第7のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記ワイヤーハーネスは、電線と、前記電線が固定されると共に前記固定用部材と前記サイレンサとの間に挟まれているシート材とを含む。
第9の態様に係るワイヤーハーネスの固定構造は、第1から第8のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの固定構造であって、前記ワイヤーハーネスは、丸断面形状を呈する態様に束ねられた複数の電線を含む。
第1から第9の態様によると、固定用部材によってサイレンサに対して別体として形成されたワイヤーハーネスを容易に固定することができる。このとき、サイレンサのうち貫通孔の内周面が固定用部材に密着しているため、貫通孔があけられることによる防音性の低下を抑制できる。
特に、第2の態様によると、サイレンサに貫通孔が予めあけられていなくても、タグガン等を用いることによって簡易にタグピン状部材をサイレンサに打ち込むことができる。また、タグピン状部材を打ち込むときに形成される貫通孔は、サイレンサの切除を伴わないため、貫通孔の内周面が連結部に密着しやすくなり、貫通孔があけられることによる防音性の低下を抑制できる。
特に、第3の態様によると、ワイヤーハーネスの固定状態が安定し、ワイヤーハーネスが振動等の影響を受けにくくなる。
特に、第4の態様によると、比較的短いタグピン状部材によってワイヤーハーネスをサイレンサに固定できる。
特に、第5の態様によると、タグピン状部材がサイレンサのうちワイヤーハーネスが配設される主面とは反対側の主面の外方に突出することを抑制できる。
特に、第6の態様によると、クリップを用いてワイヤーハーネスを固定できる。この際、クリップがサイレンサのうちワイヤーハーネスが配設される主面とは反対側の主面の外方に突出することを抑制できる。
特に、第7の態様によると、サイレンサの貫通孔に直接第2部材を係止させる場合に比べて、係止状態が安定する。
特に、第8の態様によると、固定用部材とサイレンサとによってシート材部分を挟むことによって容易にワイヤーハーネスを固定できる。
特に、第9の態様によると、丸断面のワイヤーハーネスをサイレンサに固定できる。
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。例えば、タグピン状部材32およびクリップ40など、複数種類の固定用部材30が1つのサイレンサ10に対して異なる位置に係止していることもあり得る。また、例えば1つのサイレンサ10に固定されている1つのワイヤーハーネス20が、電線22がシート材24に固定された部分と、電線22が丸断面を呈する態様に束ねられた部分との両方を含む場合もあり得る。
【0116】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。