(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
昇降路内を走行するエレベータのかごの位置を検出する装置として、昇降路内に多数の位置センサを配置し、かごには前記位置センサを操作するカムを設置した構成のものがある。この装置は、かごが位置センサの設置箇所を通過する度に、カムが位置センサをオン・オフすることによって、かごの位置を検出するものである。
しかしこの装置だと、位置センサの数が多くなり、位置センサの配線ケーブルも増加してしまう。
【0003】
そこで、この問題を解決する手段として、かごに光電センサを設け、昇降路には前記光電センサの光軸を遮断する遮蔽板(プレート)を配置したもの(例えば特願2016−209263号参照)が考えられている。
【0004】
この装置を図により説明する。
図4は全体構成を示す概略図、
図5はかご天井部の要部を示す図である。
【0005】
図において、1はかご2が昇降する昇降路、P1〜P6は昇降路1の壁に配置されたプレートであり、それぞれ上下方向の長さが異なっている。3はかご2の上部に設置された光電センサであり、プレートP1〜P6を検出するものである。4はかご2の昇降を案内する一対のガイドレールである。
【0006】
10は一端がかご2に連結された主ロープであり、機械室11に配置された巻上機12、そらせ車13に巻き掛けられ、他端がカウンターウェイト14に連結されている。15は機械室11に配置されたガバナ、16は昇降路1の下部に配置されたテンションプーリ、17はガバナ15とテンションプーリ16とに巻き掛けられたガバナロープであり、中間部がかご2に連結されている。
【0007】
20は機械室11に配置された制御装置、21はかご2と制御装置20との間で信号や電力を授受するトラベリングケーブルである。22はガバナ15に設けられたエンコーダで、一般的なインクリメンタル形エンコーダと同じく、その回転量に応じて、制御装置20にA相及びB相信号を出力することにより、かご2の移動距離及び移動方向を検出する。
【0008】
この技術は、エンコーダ22の信号(パルス)により、かご2の移動距離を常時検出している。またプレートP1〜P6の長さの検出は、エンコーダ22の信号と光電センサ3の信号とを利用して行なう。
【0009】
即ち、光電センサ3がプレートを検出して、光電センサ3の信号がプレートによって遮蔽されている区間の、エンコーダ22の信号をカウントすることにより、かご2が通過したプレートの長さが、エンコーダ22の信号、即ちパルス数で表される。
このパルス数を、予め記憶してあるプレートP1〜P6の長さと比較することにより、かご2の光電センサ3がどのプレートを通過したかを特定することができる。更にかご1の運転方向の検出はエンコーダ22により行なえる。
【0010】
従って、前記の処理から、かご2がどのプレートP1〜P6をどの方向に通過したかを検出することができる。これにより、かご2の位置を検出することができる。
【0011】
前記の技術は、光電センサ3は1個でよいというメリットがあるが、プレートP1〜P6の上下方向の長さを検出するものであるため、プレートの種類が増加すると、プレートの長さも長くならざるを得ないという問題がある。
【0012】
そこで、この問題を解決するために、プレートの長さではなく、プレートの色を判定するもの(例えば特許文献1参照)が考えられている。この技術は、各プレートをそれぞれ異なる色とし、かごに搭載したCCDカメラで、各プレートの色を判別することにより、かご2がどのプレートを通過したかを検出するものである。
この構成なら、プレートの種類が増加しても、プレートの色の種類を増やせば対応できるため、プレートの長さを長くする必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図により説明する。
図1は本実施の形態によるプレート(被検出体)の詳細説明図である。
【0021】
図1のプレートPAは、上下方向に5つの領域(被検出部)PA1〜PA5を有しており、これらの領域は、白W、黒B、濃灰G1、淡灰G2の何れかの色に塗られている。
また、プレートPAは
図4のプレートP1〜P6と同様に昇降路に必要数だけ設置されるが、各プレートPAの各領域は、各プレートPA毎に異なる配色になっている。
【0022】
この実施の形態では、領域PA1、PA3、PA5を境界部、領域PA2、PA4を識別部としており、境界部PA1、PA3、PA5には白Wが配されている。識別部PA2、PA4には、黒B、濃灰G1、淡灰G2の何れかの色が配される。
図1に示した例では、識別部PA2に黒B、識別部PA4に濃灰G1を配している。
また、プレートPAの領域PA1〜PA5を検出する検出手段として、近接照度センサ(図示省略)をかご2に設置している。
【0023】
前記の識別部PA2、PA4の色の組み合わせは、各プレートPA毎に異なっており、また、境界部は各プレートPAとも白Wとしている。そして、各識別部PA2、PA4の色の組み合わせを、各プレートPA毎に予め記憶しておくことにより、各識別部PA2、PA4の色とその通過順によって、かご2がどのプレートPAを通過したかを特定することができるようにしている。
【0024】
例えば、かご2が
図1のプレートPAの箇所を上昇する場合には、かご2のセンサは、まず境界部PA5の白Wを検出することにより、センサが何れかのプレートPAの位置に達したことがわかる。
次に、かご2が上昇して識別部PA4の濃灰G1を検出し、記憶する。更に上昇してセンサが境界部PA3の白Wを検出することにより、識別部PA4の検出が終了する。
次に、かご2が上昇して識別部PA2の黒Bを検出し、記憶する。更に上昇してセンサが境界部PA1の白Wを検出することにより、識別部PA2の検出が終了する。
【0025】
これにより、かご2は、「濃灰G1⇒黒B」の順で識別部を通過したことがわかる。この「濃灰G1⇒黒B」の組み合わせを、予め記憶したデータと比較することにより、かご2のセンサがどのプレートPAを通過したかを特定することができる。
【0026】
ところで、プレートPAの中に、識別部PA2が濃灰G1、識別部PA4が黒BというプレートPAがあれば、前記の「濃灰G1⇒黒B」だけでは、識別部PA2が黒B、識別部PA4が濃灰G1のプレートPAをかご2が上昇したのか、識別部PA2が濃灰G1、識別部PA4が黒BのプレートPAをかご2が下降したのか、判別できない。
そこで、エンコーダ22によってかご2の運転方向を検出し、このかご2の運転方向信号と前記識別部の通過順とを組み合わせれば、かご2が何れのプレートPAを通過したかを判別することができる。
【0027】
例えば、かご2が上昇の場合に、「濃灰G1⇒黒B」の順で識別部を通過したのであれば、PA4が濃灰G1、PA2が黒BのプレートPAを通過したことがわかる。逆に、かご2が下降の場合に、「濃灰G1⇒黒B」の順で識別部を通過したのであれば、PA2が濃灰G1、PA4が黒BのプレートPAを通過したことがわかる。
【0028】
この実施の形態では、識別部PA2及びPA4は、それぞれ黒B、濃灰G1、淡灰G2の何れかの色が配されるため、プレートPAは3×3=9種類のバラエティが存在する。従って、センサは、白、黒、濃灰、淡灰の4色を識別できればよく、分解能の高い高性能のものを使用する必要がないので、コストを抑えることができる。
【0029】
また、各領域PA1〜PA5は色の識別ができればよいため、上下方向の長さを長くする必要がない。そのため、プレートPAの上下方向の長さを短くすることができる。
【0030】
更に、識別部の数をもう1段増やすと、3×3×3=27種類、色の数をもう1色増やす場合は、4×4=16種類、となるため、プレートPAの種類が多い場合にも容易に対応することができる。
また、各領域の上下方向の長さは短くてもよいため、色の数を減らして識別部の段数を増やすと、プレートPAの上下方向の長さは比較的短くしながら、より分解能の低いセンサを使用することができる。
【0031】
前記実施の形態において、エンコーダ22を使用せずにかご2の運転方向を検出することも可能である。
例えば、
図1のプレートPAにおいて、「濃灰G1⇒黒B」の順でかご2が識別部を通過した場合には、かご2はプレートPAを上昇したと判断し、「黒B⇒濃灰G1」の順でかご2が識別部を通過した場合には、かご2はプレートPAを下降したというように判断させることもできる。
【0032】
この場合、プレートPAの中に、PA2が濃灰G1、PA4が黒BというプレートPAがあれば、前記の「濃灰G1⇒黒B」だけでは、かご2はどちらのプレートを通過したのか判別できない。そこで、PA2が濃灰G1、PA4が黒BというプレートPAは使用しないようにする、つまり、上下方向に反転した構成のプレートがある場合は、どちらか一方のプレートのみを使用することにより、かご2が通過したプレートPAを判別できるようにする。
そうすると、プレートPAのバラエティが限られることになるが、プレートPAのバラエティを増やす必要がある場合は、識別部の段数を増やしたり、色の数を増やせばよい。
【0033】
更に、プレートの上下端の境界部は省略することもできる。
図2は下端の境界部を省略した例である。この実施の形態では、プレートPBは、上下方向に4つの領域PB1〜PB4を有しており、
図1の実施の形態と同様に、各領域は、白W、黒B、濃灰G1、淡灰G2の何れかの色が塗られている。
【0034】
この実施の形態では、領域PB1、PB3を境界部、領域PB2、PB4を識別部としており、境界部PB1、PB3には白Wが配されている。
また、識別部PB2、PB4には、黒B、濃灰G1、淡灰G2の何れかの色が配される。
図2に示した例では、識別部PB2に濃灰G1、識別部PB4に淡灰G2を配している。
【0035】
次に、かご2がプレートPBの箇所を上昇する場合について説明すると、かご2の近接照度センサ(図示省略)は、まず識別部PB4の淡灰G2を検出することにより、センサが何れかのプレートPBに達したことがわかる。そして、識別部PB4の淡灰G2を記憶する。更に上昇して境界部PB3の白Wを検出することにより、識別部PB4の検出が終了する。
次に、かご2が上昇して識別部PB2の濃灰G1を検出し、記憶する。更に上昇して境界部PB1の白Wを検出することにより、識別部PB2の検出が終了する。
【0036】
これにより、かご2は、「淡灰G2⇒濃灰G1」の順で識別部を通過したことがわかる。この「淡灰G2⇒濃灰G1」の組み合わせを、予め記憶したデータと比較することにより、かご2のセンサがどのプレートPBを通過したかを特定することができる。
【0037】
更に、かご2のセンサが、最初に白Wを検出しなかったことにより、かご2が上昇していることがわかる。逆に、かご2のセンサが、最初に白Wを検出すれば、かご2が下降していることがわかる。従って、この実施の形態では、かご2の位置のみならず、かご2の運転方向も検出することができる。
【0038】
前記
図2の実施の形態では、プレートの下端の境界部を省略しているが、上端の境界部を省略しても同様である。
更に、上端の境界部を省略したプレートと下端の境界部を省略したプレートを混在して使用することも可能である。
この場合、
図1の実施の形態のところで説明したように、上下方向に反転した構成のプレートがあれば、かごはどちらのプレートを通過したのか判別できないので、上下方向に反転した構成のプレートがある場合には、どちらか一方のプレートのみを使用するようにする必要がある。
【0039】
図3は上下両端の境界部を省略した例である。この実施の形態では、プレートPCは、上下方向に3つの領域PC1〜PC3を有しており、
図1の実施の形態と同様に、各領域は、白W、黒B、濃灰G1、淡灰G2の何れかの色が塗られている。
【0040】
この実施の形態では、領域PC2を境界部、領域PC1、PC3を識別部としており、境界部PC2には白Wが配されている。
また、識別部PC1、PC3には、黒B、濃灰G1、淡灰G2の何れかの色が配される。
図3に示した例では、識別部PC1に黒B、識別部PC3に淡灰G2を配している。
【0041】
次に、かご2がプレートPCの箇所を上昇する場合について説明すると、かご2の近接照度センサ(図示省略)は、まず識別部PC3の淡灰G2を検出することにより、センサが何れかのプレートPCに達したことがわかる。そして、識別部PC3の淡灰G2を記憶する。更に上昇して境界部PC2の白Wを検出することにより、識別部PC3の検出が終了する。
次に、かご2が上昇して識別部PC1の黒Bを検出し、記憶する。
【0042】
これにより、かご2は、「淡灰G2⇒黒B」の順で識別部を通過したことがわかる。この「淡灰G2⇒黒B」の組み合わせを、予め記憶したデータと比較することにより、かご2のセンサがどのプレートPCを通過したかを特定することができる。
【0043】
この実施の形態は、
図1の実施の形態と同じく、そのままではかご2の運転方向を検出することはできない。そのため、
図1の実施の形態と同様に、エンコーダ22を使用したり、上下方向に反転した構成のプレートがある場合には、どちらか一方のプレートのみを使用するようにする必要がある。
尚、前記各実施の形態において、境界部に白Wを配しているが、白W以外の色を使用してもよい。
【0044】
更に他の実施の形態として、プレートから全ての境界部を省略して、識別部のみとすることもできる。この場合、隣接する識別部を区別するために、隣接する識別部には同一色を使わないという限定が必要になる。
【0045】
更にまた、プレートから全ての境界部を省略して、識別部のみとするとともに、隣接する識別部に同一色を使用することもできる。この方法は、各識別部の上下方向の長さを同一にするとともに、エンコーダ22の信号(パルス)を利用するものである。
【0046】
例えば、各識別部の上下方向の長さをエンコーダ22のパルスn個分に設定しておく。そして、かご2のセンサが識別部をパルスn個分通過すると、その識別部の色を記憶する。更に次の識別部をパルスn個分通過すると、その識別部の色を記憶していくものである。
このとき、隣接する識別部が同一色であった場合、センサは同一色の識別部をパルス2n個分通過することになるため、同一色の識別部が隣接していることを判別することができる。同一色の識別部が更に連続していても同様である。
このような構成にすれば、前記の実施の形態で、境界部の色として使用していた白Wも識別部の色として使用することができる。
【0047】
例えば、
図3のプレートPCの場合、各領域PC1、PC2、PC3に、それぞれ白W、黒B、濃灰G1、淡灰G2の4色を配することができるため、エンコーダ22によるかご2の運転方向信号を併用すれば、4×4×4=64種類のバラエティを実現することができる。
また、色の種類を3色に減らしたとしても、3×3×3=27種類のバラエティを実現することができるため、分解能の低い安価なセンサを使用することができる。
【0048】
以上のように、
図2、
図3などの各実施の形態においても、
図1の実施の形態と同じく、プレートの上下方向の長さを短くできるとともに、センサは分解能の高い高性能のものを使用する必要がないので、コストを抑えることができる。また、識別部や色の数の増減も容易に行なえるため、プレートの種類も容易に増減できる。
【0049】
以上の各実施の形態においては、プレートの領域に白、黒、濃灰、淡灰の各色を使用しているが、これに限ることはない。また、領域の反射率を変えたり、他の色を使用してもよい。
【0050】
また、前記の各実施の形態は、機械室有りなしの何れのエレベータにも適用できることはもちろんであり、また、エンコーダも、ガバナのテンションプーリや、巻上機のシーブやモータに設けることもできる。更にエンコーダに限らず、かごの運転方向を検出できるものであればよい。
【0051】
更に、前記プレートは昇降路の上下両端部のみならず、昇降路の上下部の何れか一方のみに配置することも可能である。また、センサで検出される被検出体としてプレートを使用しているが、被検出体に設けられた領域を識別できる構造のものであればプレートに限ることはない。例えば、昇降路の壁やガイドレールに直接被検出体や被検出部を設けてもよい。
更にまた、センサとして近接照度センサを用いているが、CCDカメラなど、他のものを使用することもできる。また、本発明はETS用に限定されるものでもない。