特許第6841233号(P6841233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特許6841233感光性樹脂組成物、導電性パターンの製造方法、基板、タッチパネル及びディスプレイ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841233
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、導電性パターンの製造方法、基板、タッチパネル及びディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20210301BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210301BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210301BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20210301BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20210301BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210301BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20210301BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20210301BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20210301BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20210301BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20210301BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   H05B33/26 Z
   H05B33/02
   G03F7/20 501
   G06F3/041 400
   G06F3/041 495
   G06F3/041 660
   G06F3/044 122
   H01L21/288 M
   H01B1/22 A
   H01B13/00 503D
   H01L31/04 264
【請求項の数】18
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-557153(P2017-557153)
(86)(22)【出願日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】JP2017024787
(87)【国際公開番号】WO2018061384
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-193152(P2016-193152)
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】此島 陽平
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 充史
(72)【発明者】
【氏名】山舖 有香
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−161869(JP,A)
【文献】 特開2013−196997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/20
G06F 3/041
G06F 3/044
H01B 1/22
H01B 13/00
H01L 21/288
H01L 31/0224
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/10
H05B 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)、空気下、100〜300℃で熱酸化分解及び脱離する基、ならびに、カルボキシル基および/またはその酸無水物の構造を有するアルカリ可溶性樹脂(B)および中心金属としてAl、Zrおよび/またはBi、キレート化剤としてβ−ジケトンまたはβ−ケトエステル、を含む金属キレート化合物(C)を含有する、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記金属キレート化合物(C)が、2以上の配位子を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記導電性粒子(A)が、銀を含む、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記導電性粒子(A)の1次粒子径が1〜700nmである、請求項1〜3のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗布膜を得る、塗布工程と、
前記塗布膜を乾燥して乾燥膜を得る、乾燥工程と、
前記乾燥膜を露光及び現像してパターンを形成する、露光現像工程と、
前記パターンをポストベークして導電性パターンを得る、ポストベーク工程と、を備える、導電性パターンの製造方法。
【請求項6】
前記導電性パターンの幅が、5μm以下である、請求項5記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項7】
少なくとも基材側から、請求項1〜4のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる導電性パターン、有機成分を含む膜、および請求項1〜4のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる導電性パターンの積層体を具備する基板。
【請求項8】
前記有機成分を含む膜が、アルカリ可溶性樹脂を含有する、請求項記載の基板。
【請求項9】
前記有機成分を含む膜中のアルカリ可溶性樹脂が、極性基を含有する、請求項記載の基板。
【請求項10】
前記有機成分を含む膜中のアルカリ可溶性樹脂が、カルド系樹脂を含有する、請求項記載の基板。
【請求項11】
前記有機成分を含む膜中のアルカリ可溶性樹脂が、さらにアクリル樹脂を含み、カルド系樹脂とアクリル樹脂の含有量比(重量比)が1:10〜10:1である、請求項10記載の基板。
【請求項12】
前記有機成分を含む膜が、ポリイミド樹脂、ポリイミドシロキサン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、アラミド樹脂、エポキシ樹脂および/またはスルホンアミド樹脂を含有する、請求項7〜11のいずれか一項記載の基板。
【請求項13】
前記有機成分を含む膜が、ポリイミド樹脂、ポリイミドシロキサン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂および/またはアラミド樹脂を含有する、請求項12記載の基板。
【請求項14】
少なくとも請求項1〜4のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して得られた膜を露光、現像する工程を備える、タッチパネルの製造方法。
【請求項15】
少なくとも請求項1〜4のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を現像する工程を備える、ディスプレイの製造方法。
【請求項16】
少なくとも請求項1〜4のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を現像する工程を備える、イメージセンサの製造方法。
【請求項17】
少なくとも請求項1〜4のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を現像する工程を備える、有機エレクトロルミネッセンス照明の製造方法。
【請求項18】
少なくとも請求項1〜4のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を現像する工程を備える、太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、導電性パターンの製造方法、基板、タッチパネル及びディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの高精細化、電子部品の小型化又は高密度化等に伴い、電子配線の微細化に対する要求が高まっている。電子配線に用いられる導電性パターンを、導電性粒子を含有する樹脂組成物を用いて作製する方法としては、パターンを基板上に形成した後、加熱することにより導電性粒子を接触させ、導電性パターンを得る方法が一般的である。基板上にパターンを形成する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット法又はフォトリソグラフィー法が挙げられる。中でもスクリーン印刷法やインクジェット法は、微細パターンを形成するには不向きであり、微細パターンの形成にはフォトリソグラフィー法が適しているとされている。
【0003】
フォトリソグラフィー法は、感光性組成物の塗布及び乾燥後、微細配線パターンの形状が描かれたフォトマスクを介して紫外線等を照射することで、塗膜に露光部及び未露光部を形成する。次いで、それを現像液により現像することで、基板上に微細パターンを形成する。そして、その後の導電化処理によって、微細の導電性パターンを形成する方法である。この方法に用いられる感光性組成物は、導電性粒子、感光剤及び樹脂等で構成される(特許文献1〜4)。
【0004】
さらに5μm以下の超微細パターンを形成するためには、導電性粒子としてより微小な粒径を有する粒子を使用することと、凝集粒子の発生を抑制する必要がある。その場合、前者ではパターンの表面平滑性及び側面直線性の観点から、求められる配線幅に対し、粒子径が十分に小さい微粒子を用いなければならない。後者では導電性粒子の分散安定性を得るため、粒子表面が被覆された粒子を用いなければならない。ここで粒子径が十分に小さく表面被覆された微粒子を用いた感光性樹脂組成物としては、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された銀微粒子(特許文献5〜6)を用いた感光性樹脂組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−199954号公報
【特許文献2】特開2014−142587号公報
【特許文献3】特開2002−82428号公報
【特許文献4】特開2013−101861号公報
【特許文献5】特開2013−196997号公報
【特許文献6】WO2016/158864
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された銀微粒子を用いた感光性樹脂組成物においては、パターン形成の際に基板上、特に有機成分を含む膜上で残渣が生じやすい。そのため、この感光性樹脂組成物をパターン形成したものは、外観不良又は信頼性低下良等の問題を有していた。
【0007】
本発明は、係る従来技術の欠点に鑑み創案されたもので、その目的とするところは、有機成分を含む膜上においても、微細パターンの解像性と基板上の残渣抑制とを両立させることが可能な、感光性樹脂組成物を提供することにある。このような感光性樹脂組成物を用いることにより、外観が極めて良好で信頼性の高い、微細な導電性パターンを得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)および金属キレート化合物(C)を含有する、感光性樹脂組成物が、上記課題の解決に極めて有効であることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)および金属キレート化合物(C)を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、外観が良好でかつ信頼性が高い、微細な導電パターンを得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)および金属キレート化合物(C)を含有することを特徴とする。なお、この感光性樹脂組成物における感光性はポジ型感光性でもネガ型感光性でも構わないが、ネガ型感光性であることが好ましい。
【0012】
(炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A))
炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)は、表面を被覆する層(以下、「表面被覆層」)が存在することにより、低温での導電性粒子同士の融着を抑制することができる。
【0013】
粒子表面を炭素単体物および/または炭素化合物で被覆する方法としては、例えば、熱プラズマ法により導電性粒子を作製する際に、反応性ガスと接触させる方法(特開2007−138287号公報)が挙げられる。導電性粒子の表面は、完全に被覆されていることが好ましいが、本目的が達成される限りにおいては、一部に被覆が不完全な粒子が存在することは許容される。
【0014】
炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)又はモリブデン(Mo)等の金属微粒子が挙げられる。中でも金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウム及び炭素からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含有する金属微粒子であることが好ましく、銀の金属微粒子であることがより好ましい。
【0015】
炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の1次粒子径は、所望の導電性を有する微細な導電パターンを形成するため、1〜700nmであることが好ましい。ここで炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の1次粒子径とは、走査型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した100個の1次粒子の粒子径の平均値により算出することができる。それぞれの1次粒子の粒子径は、1次粒子における長径と短径を測定し、その平均値から算出することができる。炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の1次粒子径は、10〜200nmが好ましく、10〜60nmがより好ましい。
【0016】
表面被覆層の平均厚みは、0.1〜10nmが好ましい。この範囲であれば、導電性微細粒子同士の融着を抑制することで、微細パターン加工性を向上させ、かつ300℃以下の温度で熱処理することにより所望の導電性を発現することができる。
【0017】
表面被覆層の平均厚みは、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の熱天秤による質量減少を測定し、その値がすべて炭素の燃焼によるものと仮定し、粒子径から表面被覆層の平均厚みを炭素の密度を2.0として算出することができる。粒子径(Dp)が分かっている導電性粒子に炭素を平均厚みA(μm)で被覆したとする。炭素被覆した粒子の個数をnとする。熱天秤測定で最初に秤取した質量をW(g)、完全に炭素を飛ばした質量をW(g)、導電性粒子の密度をρとすると、以下の式からDpとWとが分かればnを算出することができる。
=π/6×Dpρ×n
そして、以下の式から表面被覆層の平均厚みAを算出することができる。
−W={4/3×π(Dp/2+A)−π/6×Dp}×2.0×n
感光性樹脂組成物中の炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の含有量としては、65〜95質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることがさらに好ましい。その範囲内で含有することで、パターン加工性と導電性の発現とを両立させることができる。ここで全固形分とは、感光性樹脂組成物が含有する成分の内、溶剤を除く全成分をいう。
【0018】
全固形分に占める炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の割合は、感光性樹脂組成物の全成分を定量分析することにより算出することができる。なお、後述する各成分の割合も同様の方法で算出することができる。
【0019】
感光性樹脂組成物の全成分分析方法は以下のとおりである。
(i) 感光性樹脂組成物を有機溶媒で希釈し、H−NMR測定、GC測定及びGC/MS測定をしてその概要を調べる。
(ii) 感光性樹脂組成物を有機溶媒抽出した後に遠心分離を行い、可溶分と不溶分とを分離する。
(iii) 上記不溶分について、高極性有機溶媒で抽出した後に遠心分離を行い、可溶分と不溶分とをさらに分離する。
(iv) 上記(ii)及び(iii)で得られた可溶分の混合液について、IR測定、H−NMR測定及びGC/MS測定を行う。さらに、上記混合液をGPC分取する。得られた分取物についてIR測定及びH−NMR測定を行う。また、該分取物については、必要に応じてGC測定、GC/MS測定、熱分解GC/MS測定及びMALDI/MS測定を行う。
(v) 上記(iii)で得られた不溶分についてIR測定又はTOF−SIMS測定を行う。有機物が存在することが確認された場合には、熱分解GC/MS又はTPD/MS測定を行う。
(vi) 上記(i)、(iv)及び(v)の測定結果を総合的に判断することで、感光性樹脂組成物が含有する各成分の含有率を求めることができる。なお、上記(iii)で用いる高極性有機溶媒としては、クロロホルム又はメタノール等が好ましい。
【0020】
(酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B))
アルカリ可溶性樹脂に酸解離性基を含有させることで、パターン形成後の熱処理で酸解離性基が脱離分解、気化し、パターンが収縮する。これにより、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)同士の接触を促進し、導電性を向上させると共に、微細なパターンを形成することが可能である。
酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)は、一般的に、カルボキシル基を含有する化合物と酸解離性基を有する化合物および他モノマーとを共重合させることにより得られる。酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)は、(メタ)アクリル系共重合体であることが好ましい。ここで(メタ)アクリル系共重合体とは、共重合成分に少なくとも(メタ)アクリル系モノマーを含む共重合体をいう。ここで(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、チオフェノール(メタ)アクリレート又はベンジルメルカプタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル系モノマー以外の共重合成分としては、炭素−炭素二重結合を有する化合物が使用可能である。そのような化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン若しくはα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド若しくはN−ビニルピロリドン等のアミド系不飽和化合物、(メタ)アクリロニトリル、アリルアルコール、酢酸ビニル、シクロヘキシルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル又は4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが挙げられる。
【0022】
酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)にアルカリ可溶性を付与する共重合成分であるカルボキシル基を含有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸若しくはフマル酸又はこれらの酸無水物が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリル系共重合体を用いる場合、感光性樹脂組成物の露光による硬化反応の速度を大きくするためには、側鎖又は分子末端に炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系共重合体とすることが好ましい。炭素−炭素二重結合を有する官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基又は(メタ)アクリル基が挙げられる。このような官能基を(メタ)アクリル系共重合体に付加させるには、(メタ)アクリル系共重合体中のメルカプト基、アミノ基、水酸基又はカルボキシル基に対して、グリシジル基若しくはイソシアネート基と、炭素−炭素二重結合とを有する化合物又は(メタ)アクリル酸クロライド若しくはアリルクロライドを付加反応させる方法がある。
【0024】
グリシジル基と炭素−炭素二重結合とを有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル又はグリシジルエチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、グリシジルクロトネート又はグリシジルイソクロトネートが挙げられる。イソシアネート基と炭素−炭素二重結合とを有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート又は(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
酸解離性基を有する化合物としては、酸解離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0025】
酸解離性基が脱離後分解や気化するためには、酸解離性基が炭素数4〜15の有機基であることが好ましく、6〜15の有機基であることがより好ましい。酸解離性基の炭素数が4未満であると、脱離後、低温で気化するため、膜中に大きな気泡が発生して炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)同士の接触を妨げ、導電性が悪化する場合がある。一方で、酸解離性基の炭素数が15を超えると、脱離後、解離性基が膜中に残存して炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)同士の接触を妨げ、やはり導電性が悪化する場合がある。なお、酸解離性基の酸解離性基が炭素数6〜15の有機基である場合には、膜中に気泡が発生してもポストベークによって消失させることが容易であり、導電性が良好な導電性パターンを形成可能である。
【0026】
酸解離性基としては、例えば、tert−ブチル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジル基、メチルアダマンチル基又はテトラヒドロピラニル基が挙げられる。
【0027】
酸解離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸1−メチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル又は(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラニルが挙げられる。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物において、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)の含有量は、感光性発現を考慮した場合、全固形分に対し5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
【0029】
酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)は、酸解離性基を有する化合物を20〜80モル%ラジカル共重合したアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。特に、酸解離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルをアルカリ可溶性樹脂中にモノマー成分として20〜80モル%含有することが好ましい。酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)を用いることで、空気下、100〜300℃で、酸解離性基が容易に熱酸化分解及び脱離し、膜が大きく収縮して、全固形分中の炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)濃度を容易に上昇させることができる。そしてその結果として、比抵抗10〜1,000μΩ・cmの所望の導電性を得ることが容易となる。この場合、後述する熱酸発生剤および/または光酸発生剤を併用すると、その効果はさらに顕著となる。
【0030】
酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)のカルボン酸当量は、200〜1,400g/molが好ましく、400〜1,000g/molがより好ましい。アクリル樹脂のカルボン酸当量は、酸価を測定することで算出することができる。また、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)の二重結合当量は、硬度と耐クラック性とを高いレベルで両立できるため、150〜10,000g/molであることが好ましい。アクリル樹脂の二重結合当量は、ヨウ素価を測定することで算出することができる。
【0031】
酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算で、1,000〜100,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることで、良好な塗布特性が得られ、パターン形成する際の現像液への溶解性も良好となる。
【0032】
(金属キレート化合物(C))
金属キレート化合物(C)は、中心金属と、該中心金属に二以上の部位で配位した配位子と、を有する化合物のことであり、配位子が容易に脱離し、アルカリ可溶性官能基と錯形成が可能である。アルカリ可溶性樹脂と錯形成することにより、樹脂成分の現像性を制御可能とし、パターン剥がれ抑制効果が顕著なものとなる。
【0033】
金属キレート化合物(C)の金属元素としては、例えば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Bi(ビスマス)、Sn(スズ)、Pb(鉛)、Zn(亜鉛)、Pd(パラジウム)、In(インジウム)、Pt(白金)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)が挙げられる。配位子の脱離容易性の観点から、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Bi(ビスマス)が好ましく、アルカリ可溶性官能基との錯体安定性の観点から、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)、Bi(ビスマス)がより好ましい。金属キレート化合物(C)は、金属アルコキシドにキレート化剤を反応させることにより容易に得ることができる。キレート化剤としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン若しくはジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン又はアセト酢酸エチル若しくはベンゾイル酢酸エチルなどのβ−ケトエステルが挙げられる。
【0034】
金属キレート化合物(C)としては、例えば、ビス(アセチルアセトナート)マグネシウム、ビス(エチルアセトアセタート)マグネシウム、イソプロポキシモノ(アセチルアセトナート)マグネシウム若しくはイソプロポキシモノ(エチルアセトアセタート)マグネシウムなどのマグネシウムキレート化合物、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などのアルミニウムキレート化合物、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセタート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−オクチロキシビス(オクチレングリコラート)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナート)チタン、ジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオナート)チタン若しくはジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオナート)チタンアンモニウム塩などのチタンキレート化合物、ジルコニウムテトラセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレートなどのジルコニウムキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)金若しくはビス(エチルアセトアセタート)金などの金キレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)銀若しくはビス(エチルアセトアセタート)銀などの銀キレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)銅若しくはビス(エチルアセトアセタート)銅などの銅キレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)クロム若しくはビス(エチルアセトアセタート)クロムなどのクロムキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)鉄若しくはビス(エチルアセトアセタート)鉄などの鉄キレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)コバルト若しくはビス(エチルアセトアセタート)コバルトなどのコバルトキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル若しくはビス(エチルアセトアセタート)ニッケルなどのニッケルキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)ビスマス若しくはビス(エチルアセトアセタート)ビスマスなどのビスマスキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)スズ若しくはビス(エチルアセトアセタート)スズなどのスズキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)鉛若しくはビス(エチルアセトアセタート)鉛などの鉛キレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛若しくはビス(エチルアセトアセタート)亜鉛などの亜鉛キレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)パラジウム若しくはビス(エチルアセトアセタート)パラジウムなどのパラジウムキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)インジウム若しくはビス(エチルアセトアセタート)インジウムなどのインジウムキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)白金若しくはビス(エチルアセトアセタート)白金などの白金キレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)タングステン若しくはビス(エチルアセトアセタート)タングステンなどのタングステンキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)モリブデン若しくはビス(エチルアセトアセタート)モリブデンなどのモリブデンキレート化合物が挙げられる。
【0035】
金属キレート化合物(C)としては、例えば、一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化1】
【0037】
(Mは、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウムまたはビスマスを表し、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜15のアリール基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はヒドロキシ基を表し、n及びmは、0〜4の整数を表し、n+m=2〜4である。)
は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基が好ましく、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシ基が好ましい。上記のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルコキシ基は、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。Mは、アルミニウム、ジルコニウムまたはビスマスが好ましい。
【0038】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、ビス(アセチルアセトナート)マグネシウム、ビス(エチルアセトアセタート)マグネシウム、イソプロポキシモノ(アセチルアセトナート)マグネシウム若しくはイソプロポキシモノ(エチルアセトアセタート)マグネシウムなどのマグネシウムキレート化合物、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などのアルミニウムキレート化合物、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセタート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−オクチロキシビス(オクチレングリコラート)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナート)チタン、ジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオナート)チタン若しくはジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオナート)チタンアンモニウム塩などのチタンキレート化合物、ジルコニウムテトラセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレートなどのジルコニウムキレート化合物、ビス(アセチルアセトナート)ビスマス若しくはビス(エチルアセトアセタート)ビスマスなどのビスマスキレート化合物が挙げられる。
【0039】
全固形分に占める金属キレート化合物(C)の割合は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることがさらに好ましい。金属キレート化合物(C)含有量が0.01質量%以上であると、基板上の残渣抑制の効果がさらに顕著なものとなる。一方で、金属キレート化合物(C)の含有量が10質量%以下であると、導電性が高く、かつ微細なパターンを形成することができる。
【0040】
(分散剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、分散剤を含有しても構わない。分散剤を含有することで、感光性樹脂組成物中に炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)を安定的に存在させることができる。
【0041】
分散剤としては、アミン系のものが好ましい。市販のアミン系の分散剤としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)106、108、112、116、142、145、166、180、2001、2008、2022、2150、6919若しくは21116(以上、いずれもビックケミー・ジャパン製)又はEfka(登録商標)4300、4400、4401、4403、4406、4510、4570、4800、5054、5055若しくは5207(以上、いずれもBASF製)が挙げられる。
【0042】
さら分散性を向上させるため、分散剤は、アクリル系ブロック共重合体構造を有することが好ましい。アクリル系ブロック共重合体構造を有する市販のアミン系の分散剤としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)2001、2008、2022、2150、6919若しくは21116又はEfka(登録商標)4300が挙げられる。
【0043】
感光性樹脂組成物中の分散剤の含有量としては、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)と後述する他の粒子との合計100質量部に対し、1〜7質量部が好ましい。分散剤の含有量をこの範囲とすることにより、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の分散が良好で、より微細なパターン加工が可能で、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の接触及び融着が進み、より高い導電性を得ることができる。
【0044】
(光重合開始剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、光重合開始剤を含有しても構わない。光重合開始剤を含有することで、感光性樹脂組成物にネガ型感光性を付与することができる。
【0045】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、α−アミノアルキルフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、有機過酸化物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物、トリアジン系化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、キノン化合物又はオキシムエステル系化合物が挙げられる。少量の添加であっても感度の高い、オキシムエステル系化合物が好ましく、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系化合物がより好ましい。カルバゾール骨格を有さないオキシムエステル系化合物としては、例えば、イルガキュア(登録商標)OXE01(BASF社製)が挙げられ、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系化合物としては、例えば、イルガキュア(登録商標)OXE02(BASF社製)、アデカオプトマー(登録商標)N1919(株式会社ADEKA製)又はアデカアークルズ(登録商標)NCI−831(株式会社ADEKA製)が挙げられる。
【0046】
(溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有しても構わない。
溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、2−ヘプタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、t−ブタノール、ダイアセトンアルコール、α−テルピネオール、2−ヒドロキシイソイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソイソ酪酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、酢酸イソブチル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、アセチルアセトン、トリアセチン又は2−ヘプタノンが挙げられる。
【0047】
(他の粒子)
本発明の感光性樹脂組成物は、分散性向上や、導電性コントロールのため、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)以外の他の粒子を含有しても構わない。他の粒子としては、例えば、表面被覆されていない金属微粒子若しくは金属酸化物微粒子、有機顔料又は無機顔料が挙げられる。
【0048】
これら他の粒子の粒子径は、10〜100nmが好ましい。粒子径が10nm未満であると、分散安定化のための分散剤使用が多くなり、所望の導電性を得ることが難しくなる場合がある。一方で、粒子径が100nmを超えると、パターンの解像度が低下し、5μm以下の超微細パターン形成が難しくなる場合がある。
【0049】
これらその他の粒子としては、導電性コントロールに資する、カーボンブラックが好ましい。
【0050】
カーボンブラックとしては、例えば、MA77、7、8、11、100、100R、100S、230、220若しくは14(以上、いずれも三菱化学株式会社製)、#52、47、45、45L、44、40、33、32、30、25、20、10、5、95、85若しくは260(以上、いずれも三菱化学株式会社製)、Special Black100、250、350若しくは550(以上、いずれもエボニックデグサ社製)又はPrintex95、90、55、45、40、P、60、L6、L、300、30、ES23、9、ES22、35、25,200、A若しくはG(以上、いずれもエボニックデグサ社製)を挙げることができる。中でもpH値が4以下である、MA77、7、8、11、100、100R、100S、230、220若しくは14又はSpecial Black100、250、350若しくは550が好ましい。なお、カーボンブラックのpH値は、JIS K5101に準拠して測定することができる。
【0051】
(熱酸発生剤及び光酸発生剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、熱酸発生剤および/または光酸発生剤を含有しても構わない。発生した酸によって、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)中の酸解離性基の分解が促進され、空気下での熱処理温度を低下させることが可能となる。
【0052】
熱により酸を発生する化合物である熱酸発生剤としては、例えば、SI−60、SI−80、SI−100、SI−110、SI−145、SI−150、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−145L、SI−150L、SI−160L、SI−180L若しくはSI−200(以上、いずれも三新化学工業(株)製)、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム若しくは2−メチルベンジル−4−ベンゾイルオキシフェニルメチルスルホニウム又はこれらのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩若しくはp−トルエンスルホン酸塩が挙げられる。中でも4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム若しくは2−メチルベンジル−4−ベンゾイルオキシフェニルメチルスルホニウム又はこれらのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩若しくはp−トルエンスルホン酸塩が好ましく使用できる。
【0053】
感光性樹脂組成物中の熱酸発生剤の含有量としては、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましい。熱酸発生剤の含有量をこの範囲とすることにより、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)中の酸解離性基の分解が促進され、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)同士の接触が妨げられず、より高い導電性が得られるためである。
【0054】
光により酸を発生する化合物である光酸発生剤から発生する酸は、酸解離性基の分解を促進するため、パーフルオロアルキルスルホン酸又はp−トルエンスルホン酸等の強酸が好ましい。
【0055】
光酸発生剤としては、例えば、SI−101、SI−105、SI−106、SI−109、PI−105、PI−106、PI−109、NAI−100、NAI−1002、NAI−1003、NAI−1004、NAI−101、NAI−105、NAI−106、NAI−109、NDI−101、NDI−105、NDI−106、NDI−109、PAI−01、PAI−101、PAI−106若しくはPAI−1001(以上、いずれもみどり化学(株)製)、SP−077若しくはSP−082(以上、いずれも(株)ADEKA製)、TPS−PFBS(東洋合成工業(株)製)、CGI−MDT若しくはCGI−NIT(以上、いずれもチバジャパン(株)製)又はWPAG−281、WPAG−336、WPAG−339、WPAG−342、WPAG−344、WPAG−350、WPAG−370、WPAG−372、WPAG−449、WPAG−469、WPAG−505若しくはWPAG−506(以上、いずれも和光純薬工業(株)製)が挙げられる。
【0056】
感光性樹脂組成物中の光酸発生剤の含有量としては、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましい。光酸発生剤の含有量をこの範囲とすることにより、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)中の酸解離性基の分解が促進され、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)同士の接触が妨げられず、より高い導電性が得られるためである。また、酸解離性基の分解をより促進するために、熱酸発生剤と光酸発生剤とを併用しても構わない。
(重合禁止剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤を適量含有することで、現像後の解像度が向上する。重合禁止剤としては特に限定はなく公知のものが使用できる。たとえば、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ハイドロキノン、4−メトキシフェノール、1,4−ベンゾキノン、t−ブチルカテコールが挙げられる。また、市販の重合禁止剤としては、「IRGANOX1010」、「IRGANOX 1035」、「IRGANOX 1076」、「IRGANOX 1098」、「IRGANOX 1135」、「IRGANOX 1330」、「IRGANOX1726」、「IRGANOX 1425」、「IRGANOX 1520」、「IRGANOX 245」、「IRGANOX 259」、「IRGANOX 3114」、「IRGANOX565」、「IRGANOX 295」(以上、BASF製)等が挙げられる。
(増感剤)
本発明の感光性樹脂組成物が光酸発生剤を含有する場合、感光性樹脂組成物はさらに増感剤を含有しても構わない。増感剤は、熱処理により気化するもの、又は、硬化膜に残存した場合においても、光照射によって退色するものが好ましい。パターン加工における高解像性の観点から、増感剤は光照射によって退色するものがより好ましい。
【0057】
熱処理により気化する、又は、光照射によって退色する増感剤としては、例えば、3,3’−カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)等のクマリン、9,10−アントラキノン等のアントラキノン、ベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン若しくはベンズアルデヒド等の芳香族ケトン又はビフェニル、1,4−ジメチルナフタレン、9−フルオレノン、フルオレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、アントラセン、9−フェニルアントラセン、9−メトキシアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(4−メトキシフェニル)アントラセン、9,10−ビス(トリフェニルシリル)アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン(DPA;川崎化成(株)製)、9,10−ジブトキシアントラセン(DBA;川崎化成(株)製)、9,10−ジペンタオキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジブトキシアントラセン若しくは9,10−ビス(トリメチルシリルエチニル)アントラセン等の縮合芳香族が挙げられる。
【0058】
熱処理により気化する増感剤としては、熱処理により昇華、蒸発又は熱分解による熱分解物が昇華若しくは蒸発するものが好ましい。増感剤の気化温度としては、プリベーク温度では気化せず、熱硬化時に分解及び気化して炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)を接触及び融着させるため、150〜300℃が好ましい。
【0059】
また、増感剤は高感度及び高解像度を達成できるという点、並びに、光照射によって二量化して退色するという点から、アントラセン系化合物が好ましい。特に熱に安定である、9,10−二置換アントラセン系化合物であることが好ましく、増感剤の溶解性の向上と光二量化反応の反応性の観点から、一般式(2)で表される9,10−ジアルコキシアントラセン系化合物であることがさらに好ましい。
【0060】
【化2】
【0061】
(R〜R11はそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、エチニル基、アリール基若しくはアシル基又はそれらが置換された有機基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルコキシ基又はその他の有機基で置換されたアルコキシ基を表す。)
〜R11におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基又はn−プロピル基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基又はペンチルオキシ基が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アクリロキシプロピル基又はメタクリロキシプロピル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基又はナフチル基が挙げられる。アシル基としては、例えば、アセチル基が挙げられる。なお、化合物の気化性及び光二量化の反応性の観点から、R〜R11は水素又は炭素数は1〜6の有機基であることが好ましく、R、R、R及びR11は水素であることがより好ましい。
【0062】
12及びR13においてアルコキシ基を置換する置換基としては、例えば、アルコキシ基又はアシル基が挙げられる。この場合のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、メトキシエトキシ基、1−メトキシ−2−プロポキシ基又は1−アセチル−2−プロポキシ基が挙げられるが、化合物の溶解性及び光二量化による退色反応の観点から、プロポキシ基又はブトキシ基が好ましい。
【0063】
感光性樹脂組成物中の増感剤含有量としては、アルカリ可溶性樹脂(B)100質量部に対し、0.001〜20質量部が好ましく、0.005〜15質量部がより好ましい。増感剤の含有量をこの範囲とすることにより、光酸発生剤を感光するための増感効果が十分となり、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)同士の接触が妨げられず、より高い導電性が得られるためである。
【0064】
(可視光に吸収を有する顔料及び/又は染料)
本発明の感光性樹脂組成物は、可視光に吸収を有する顔料及び/又は染料を、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)同士の接触及び融着を阻害しない範囲で含有しても構わない。感光性樹脂組成物が可視光に吸収を有する顔料および/または染料を含有することより、ポストベーク後の導電性パターンの可視光反射を抑制できる。
【0065】
可視光に吸収を有する顔料としては、例えば、ラクタム系顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、ジアミノアントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インダントロン系顔料、カーボンブラック又は無機顔料が挙げられる。
【0066】
青色の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(以下、「PB」)15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB15:5、PB15:6、PB16又はPB60が挙げられる。紫色の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(以下、「PV」)19、PV23又はPV37が挙げられる。赤色の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(以下、「PR」)149、PR166、PR177、PR179、PR209又はPR254が挙げられる。緑色の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン(以下、「PG」)7、PG36又はPG58が挙げられる。黄色の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(以下、「PY」)150、PY138、PY139又はPY185が挙げられる。黒色の顔料としては、例えば、HCF、MCF、LFF、RCF、SAF、ISAF、HAF、XCF、FEF、GPF若しくはSRF等のファーネスブラック、FT若しくはMT等のサーマルブラック、チャンネルブラック又はアセチレンブラック等のカーボンブラックあるいはラクタム系顔料(例えば、“Irgaphor”(登録商標)ブラックS0100CF;BASF社製)が挙げられる。中でも、耐熱性、耐光性及び可視光の吸収性に優れるカーボンブラックが好ましく、導電性及び分散性の観点から、ファーネスブラック又はラクタム系顔料がより好ましい。
【0067】
カーボンブラックとしては、例えば、MA77、7、8、11、100、100R、100S、230、220若しくは14(以上、いずれも三菱化学株式会社製)、#52、47、45、45L、44、40、33、32、30、25、20、10、5、95、85若しくは260(以上、いずれも三菱化学株式会社製)、Special Black100、250、350若しくは550(以上、いずれもエボニックデグサ社製)、又は、Printex95、90、55、45、40、P、60、L6、L、300、30、ES23、9、ES22、35、25,200、A若しくはGが挙げられる。中でもpH値が4以下である、MA77、7、8、11、100、100R、100S、230、220若しくは14、又は、Special Black100、250、350若しくは550が好ましい。カーボンブラックのpH値は、JIS K5101に準拠して測定することができる。
【0068】
感光性樹脂組成物中の可視光に吸収を有する顔料の添加量としては、組成物中の全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましい。
【0069】
可視光に吸収を有する染料としては、例えば、フェロセン系染料、フルオレノン系染料、ペリレン系染料、トリフェニルメタン系染料、クマリン系染料、ジフェニルアミン系染料、キナクリドン系染料、キノフタロン系染料、フタロシアニン系染料又はキサンテン系染料が挙げられるが、耐熱性、耐光性及び可視光の吸収性に優れる黒色染料が好ましく、VALIFAST(登録商標) Black 1888、VALIFAST(登録商標) Black 3830、NUBIAN(登録商標) Black PA−2802又はOIL Black 860が好ましい。
【0070】
感光性樹脂組成物中の可視光に吸収を有する染料の添加量としては、組成物中の全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましい。
【0071】
(その他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性能を調整し、パターン加工性を向上する観点から、アクリルモノマーを、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)同士の接触及び融着を阻害しない範囲内で含有しても構わない。
【0072】
アクリルモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート若しくはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート又はこれらのアルキル変性物、アルキルエーテル変性物若しくはアルキルエステル変性物が挙げられる。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、密着改良剤、界面活性剤又は重合禁止剤等を含有しても構わない。
【0074】
密着改良剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン又は3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0075】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等の陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート若しくはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド若しくはラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル若しくはソルビタンモノステアレート等の非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤が挙げられる。
【0076】
感光性樹脂組成物中の界面活性剤の添加量としては、塗布性及び塗膜表面の均一性を良好にするため、組成物全体に対し、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%より少ないと、塗布性及び塗膜表面の均一性の効果が不十分となる場合がある。一方で、添加量が10質量%を超えると、ハジキや凹み等の塗膜欠陥や、粒子の凝集が起こる場合がある。
【0077】
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン系、カテコール系、リン系、イオウ系、アミン系又はヒンダードフェノール系の化合物が挙げられる。これらの中でもヒドロキノン系とカテコール系のものが、溶剤への溶解性や顔料の分散安定性を阻害しない、ヒドロキノン系又はカテコール系の化合物が好ましく、ヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ヒドロキノン、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ヒドロキノンやカテコール又はtert−ブチルカテコールがより好ましい。
【0078】
(感光性樹脂組成物の製造方法)
本発明の感光性樹脂組成物は、ボールミルや、サンドグラインダー、3本ロールミル、マイルド分散機、メディアレス分散機等の分散機を用いて製造される。炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)を均一に分散したい場合は、分散剤を用いて、予め有機溶剤中に炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)を分散させた分散液を調製し、この分散液を、モノマ、ポリマー、密着改良剤、界面活性剤及び重合禁止剤等を含有する溶液と混合する方法により製造しても良い。炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の分散液は、表面被覆層が損傷を受けるのを防ぐために、マイルド分散機又はメディアレス分散機を用いて分散させることが好ましく、メディアレス分散機を用いて分散させることがより好ましい。炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)の分散液は、例えば、マイルド分散機ナノゲッター(登録商標)(アシザワファインテック(株))又は高圧湿式メディアレス微粒化装置ナノマイザー(ナノマイザー(株))等の分散機を用いて、有機溶剤中に炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)を分散させて製造される。
【0079】
(導電性パターンの製造方法)
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いた、フォトリソ法による導電性パターンの製造方法について説明する。
【0080】
本発明の導電性パターンの製造方法は、本発明の感光性樹脂組成物を基板面上に塗布する塗布工程、それを乾燥するプリベーク工程、それを露光及び現像してパターンを形成する工程(露光工程、現像工程)、及び、それをポストベークするポストベーク工程を備えるプロセスにより行われる。
【0081】
塗布工程で用いる基板としては、例えば、シリコンウエハー、セラミックス基板又は有機系基板が挙げられる。セラミックス基板としては、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス若しくは石英ガラス等のガラス基板、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板又は炭化ケイ素基板が挙げられる。有機系基板としては、例えば、エポキシ基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板、ポリイミドフィルム又はポリエステルフィルムが挙げられる。
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物を基板面上に塗布する方法としては、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、カレンダーコーター若しくはメニスカスコーターを用いた塗布、スクリーン印刷、スプレー塗布又はディップコートが挙げられる。
【0083】
プリベーク工程における乾燥方法としては、例えば、ホットプレート、熱風乾燥機(オーブン)、減圧乾燥、真空乾燥又は赤外線照射による乾燥が挙げられる。
【0084】
プリベークの温度及び時間は、感光性樹脂組成物の組成や、乾燥する塗布膜の膜厚によって適宜決定すればよいが、50〜150℃の温度範囲で10秒〜30分加熱することが好ましい。
【0085】
中でも、ホットプレート又は熱風乾燥機(オーブン)での加熱と、減圧乾燥とを併用することが、塗布膜が含有する樹脂の熱硬化を抑制しながら、溶剤を乾燥除去できるため、好ましい。減圧乾燥の到達圧力としては、10〜200Paが好ましく、30〜100Paがより好ましい。
【0086】
露光工程で用いる光源としては、例えば、水銀灯のj線、i線、h線又はg線が好ましい。
【0087】
現像工程でアルカリ性現像液に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム若しくはアンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン若しくはn−プロピルアミン等の1級アミン類、ジエチルアミン若しくはジ−n−プロピルアミン等の2級アミン類、トリエチルアミン若しくはメチルジエチルアミン等の3級アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン等の4級アンモニウム塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール若しくはジエチルアミノエタノール等のアルコールアミン類又はピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナン若しくはモルホリン等の環状アミン類等の有機アルカリ類が挙げられる。これらのアルカリ性現像液にエタノール、γーブチロラクトン、ジメチルホルムアミド又はN−メチル−2−ピロリドン等の水溶性有機溶剤を適宜加えても構わない。
【0088】
また、より良好な導電性パターンを得るため、これらのアルカリ性現像液にさらに非イオン系界面活性剤等の界面活性剤を0.01〜1質量%添加することも好ましい。
【0089】
ポストベーク工程における乾燥方法としては、プリベーク工程と同様のものが挙げられる。ポストベークの雰囲気、温度及び時間は、感光性樹脂組成物の組成や、乾燥する塗布膜の膜厚によって適宜決定すればよいが、空気中、100〜300℃の温度範囲で、5〜120分加熱することが好ましい。
【0090】
導電性パターンを基板上にメッシュ状に形成すれば、タッチパネル、液晶若しくは有機EL等のディスプレイパネル又はウェアラブル端末等が具備する、透明導電配線として使用することができる。
【0091】
上記導電性パターンは透明ではないので、パターンの幅が大きいと機器のユーザーに配線を視認されてしまう。このため、導電性パターンの幅は、5μm以下であることが好ましい。
【0092】
(有機成分を含む膜)
本発明中で使用される有機成分を含む膜について説明する。
本発明で使用される有機成分を含む膜を構成する成分として、アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。アルカリ可溶性基を有することで、本発明の感光性樹脂組成物中の金属キレート化合物(C)と錯形成が可能となる。金属キレート(C)は本発明の感光性樹脂組成物中の酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)とも錯形成可能であるため、現像密着性が向上する。これにより、厳しい現像条件での処理が可能となり、現像残渣を低減させることができる。
【0093】
有機成分を含む膜中のアルカリ可溶性樹脂は極性基を有することが好ましい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられるが、アルカリ現像性の観点から、カルボキシル基であることが好ましい。
【0094】
また、有機成分を含む膜中のアルカリ可溶性樹脂として、信頼性の観点から、硬化後に高膜密度となるカルド樹脂であることが好ましい。さらに、カルド樹脂に加え、アクリルポリマーを含有し、カルド系樹脂とアクリルポリマーの含有量が重量比で1:10〜10:1であることが好ましく、1:8〜7:1であることがより好ましい。
【0095】
有機成分を含む膜中のカルド系樹脂としては、市販品を好ましく用いることができ、「WR−301(商品名)」((株)ADEKA製)、「V−259ME(商品名)」(新日鉄住金化学(株)製)、「オグゾールCR−TR1(商品名)」、「オグゾールCR−TR2(商品名)」、「オグゾールCR−TR3(商品名)」、「オグゾールCR−TR4(商品名)」、「オグゾールCR−TR5(商品名)」、「オグゾールCR−TR6(商品名)」(以上、大阪ガスケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0096】
また、アクリルポリマーとしては、例えば脂環式骨格を側鎖に有するアクリルポリマーを用いることができる。
アクリルポリマーは、カルボキシル基及び/または酸無水物基含有(メタ)アクリル化合物、及び(メタ)アクリル酸エステル、及び/またはマレイミドまたはマレイミド誘導をラジカル共重合したのち、エチレン性不飽和二重結合基を有するエポキシ化合物を付加反応して得られるものが好ましい。
【0097】
ラジカル重合の触媒に特に制限はなく、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等が一般的に用いられる。
【0098】
エチレン性不飽和二重結合基を有するエポキシ化合物の付加反応に用いる触媒に特に制限はなく、公知の触媒を用いることが出来るが、例えば、ジメチルアニリン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルベンジルアミン等のアミノ系触媒、2−エチルヘキサン酸すず(II)、ラウリン酸ジブチルすず等のすず系触媒、2−エチルヘキサン酸チタン(IV)等のチタン系触媒、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒及びアセチルアセトネートクロム、塩化クロム等のクロム系触媒等が用いられる。
【0099】
カルボキシル基及び/または酸無水物基含有(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、イタコン酸、イタコン酸無水物、こはく酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、テトラヒドロフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)等が用いられる。
【0100】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキセニル、(メタ)アクリル酸4−メトキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−シクロプロピルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2−シクロペンチルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2−シクロヘキシルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2−シクロヘキセニルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2−(4−メトキシシクロヘキシル)オキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アダマンチルメチル、(メタ)アクリル酸1−メチルアダマンチル等が用いられる。また、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物を、上記の(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルと共重合してもよい。
【0101】
マレイミドまたはマレイミド誘導体としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−(2,4−ジメチルシクロヘキシル)マレイミド、N−ビニルマレイミド、N−(メタ)アクリルマレイミド、N−メトキシメチルマレイミド、N−(2−エトキシエチル)マレイミド、N−[3−(メタ)アクリロキシプロピル]マレイミド、N−メトキシカルボニルマレイミド、N−(3−メトキシカルボニルプロピル)マレイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシ−n−ブチル)マレイミド、N−(2−カルボキシエチル)マレイミド、N−(3−カルボキシプロピル)マレイミド、N−(5−カルボキシペンチル)マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(3−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(4−スチリル)マレイミド、N−(4−メトキシフェニル)マレイミド、N−(3−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−カルボキシフェニル)マレイミド、N−(1−ナフチル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(2−フェニルエチル)マレイミド等が挙げられる。
【0102】
エチレン性不飽和二重結合基を有するエポキシ化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸α−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸α−n−プロピルグリシジル、(メタ)アクリル酸α−n−ブチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、(メタ)アクリル酸α−エチル−6,7−エポキシヘプチル、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,4−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,5−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,6−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,4−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,6−トリグリシジルオキシメチルスチレン、3,4,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,4,6−トリグリシジルオキシメチルスチレン等が挙げられる。
【0103】
アクリルポリマーは、多官能(メタ)アクリレート化合物と多価メルカプト化合物とを、マイケル付加(カルボニル基に関しβ位)により重合したものを用いることもできる。
【0104】
多官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロバントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロバントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロバントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコールテトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコールテトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アルコキシ変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
多価メルカプト化合物としては、1,2−ジメルカプトエタン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、ビスジメルカプトエタンチオール(HS−CHCH−S−CHCH−SH)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0106】
以下、本発明の実施例について説明する。まず、実施例及び比較例で用いた材料について説明する。
【0107】
[炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A)]
(A−1)表面炭素被覆層の平均厚みが1nmで、1次粒子径が50nmの銀粒子(日清エンジニアリング株式会社製)。
【0108】
[酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)]
(B−1)
500mLのフラスコに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を2g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を15.69g、スチレンを37.45g、ジシクロペンタニルメタクリレートを46.86g仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを10.46g、ジメチルベンジルアミンを1g、p−メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、アクリル樹脂(B−1)の溶液を得た。得られたアクリル樹脂(B−1)の溶液に固形分濃度が40質量%になるようにPGMEAを加えた。アクリル樹脂(B−1)の重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
【0109】
(B−2)
500mLのフラスコに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を2g、PGMEA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)を50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を23.26g、ベンジルメタクリレートを31.46g、ジシクロペンタニルメタクリレートを32.80g仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを12.69g、ジメチルベンジルアミンを1g、p−メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、アクリル樹脂(B−2)の溶液を得た。得られたアクリル樹脂(B−2)の溶液に固形分濃度が40質量%になるようにPGMEAを加えた。アクリル樹脂(B−2)の重量平均分子量(Mw)は24,000であった。
【0110】
[金属キレート化合物(C)]
(C−1)ALCH:エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル(株)製)
(C−2)ALCH−TR:アルミニウムトリスエチルアセトアセテート(川研ファインケミカル(株)製)
(C−3)アルミキレートM:アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル(株)製)
(C−4)アルミキレートD:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)(川研ファインケミカル(株)製)
(C−5)アルミキレートA(W):アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)(川研ファインケミカル(株)製)
(C−6)ZC−150:ジルコニウムテトラセチルアセトネート(マツモトファインケミカル(株)製)
(C−7)ZC−540:ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル(株)製)
(C−8)ネオスタンU−600:ビスマストリオクテート/2−エチルヘキサン酸(日東化成(株)製)
[分散剤]
DISPERBYK(登録商標)21116(ビックケミー・ジャパン株式会社製)。
【0111】
[溶剤]
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(三協化学(株)製)
DPM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(東邦化学工業(株)製)。
【0112】
[光重合開始剤]
NCI−831(登録商標)(オキシムエステル系化合物;ADEKA(株)製)。
【0113】
[アクリルモノマー]
ライトアクリレート(登録商標)PE−3A(共栄社化学(株)製)。
【0114】
[有機成分を含む膜]
(X−1)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を38.6g、メタクリル酸メチルを16.4g、スチレンを16.4g仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを28.6g、ジメチルベンジルアミンを1g、p−メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、アクリルポリマーの溶液を得た。得られたアクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)は29,000であった。
黄色灯下にて、OXE−02:0.25g、LA−87:0.50g、10wt%PGMEA溶液としたTBC:0.50gをPGMEA:14.19g、DAA:30.00gに溶解させ、10wt%PGMEA溶液としたBYK−333:0.30g(濃度300ppmに相当)を加え、撹拌した。そこへ、50wt%PGMEA溶液としたTEPIC−VL:6.49g、20wt%PGMEA溶液としたEG−200:12.49g、DPHA:6.19g、得られたアクリルポリマー:9.36g、「V−259ME(商品名)」(新日鉄住金化学(株)製):18.73g、及びKBM−403:1.00gを加え、撹拌した。次いで0.45μmのフィルターでろ過を行い、組成物(X−1)を得た。
【0115】
(X−2)
「スミカエクセルPES 4100P(商品名)」(住友化学(株)製)10gにシクロヘキサノンを40g添加攪拌した。このようにして固形分濃度が20wt%の組成物(X−2)を得た。
【0116】
(X−3)
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF;セントラル硝子(株)製)29.3g(0.08モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、3−アミノフェノール3.27g(0.03モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)150gに溶解した。ここに3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA;マナック(株)製)31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、20℃で1時間撹拌し、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリイミドポリマーを得た。このポリイミドポリマー7.5gにGBLを42.5g添加攪拌した。このようにして固形分濃度が15wt%の組成物(X−3)を得た。
【0117】
(X−4)
黄色灯下にて、「PBG−305(商品名)」(強力電子社製):0.25g、「LA−87(商品名)」(ADEKA(株)製):0.50g、10wt%PGMEA溶液としたTBC:0.50gをPGMEA:2.24g、DAA:30.00gに溶解させ、10wt%PGMEA溶液としたBYK−333:0.30g(濃度300ppmに相当)を加え、撹拌した。そこへ、「TAIC(商品名)」(日本化成(株)製):4.25g、10wt%PGMEA溶液とした「オグソールPG−100(商品名)」(大阪ガスケミカル(株)製):24.50g、「オグソールEA−0250P(商品名)」(大阪ガスケミカル(株)製):1.25g、「M−315(商品名)」(共栄社(株)製):2.75g、「SIRIUS−501(商品名)」(大阪有機工業(株)製):3.12g、「V−259ME(商品名)」(新日鉄住金化学(株)製):29.34g、及び「KBM−403(商品名)」(信越化学工業(株)製):1.00gを加え、撹拌した。次いで0.45μmのフィルターでろ過を行い、組成物(X−4)を得た。
【0118】
[有機成分を含む膜の作製]
(Y−1)
組成物(X−1)を、無アルカリガラス基板(OA−10G;日本電気硝子株式会社製)上に、スピンコーター(ミカサ(株)製「1H−360S(商品名)」)を用いて650rpmで5秒の条件でスピンコートし、基板をホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW−636(商品名)」)を用いて100℃で2分間プリベークし、膜厚2.5μmのプリベーク膜を得た。プリベーク膜をパラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製「PLA−501F(商品名)」)を用いて超高圧水銀灯を光源とし、所望のマスクを介して露光した。この後、自動現像装置(滝沢産業(株)製「AD−2000(商品名)」)を用いて、0.045wt%水酸化カリウム水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。その後、オーブン(「IHPS−222」;エスペック(株)製)を用いて、230℃で30分(空気中)ポストベークを施すことで、有機成分を含む膜(Y−1)を作製した。
【0119】
(Y−2)
組成物(X−2)を、無アルカリガラス基板(OA−10G;日本電気硝子株式会社製)上に、スピンコーター(ミカサ(株)製「1H−360S(商品名)」)を用いて650rpmで5秒の条件でスピンコートし、基板をホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW−636(商品名)」)を用いて100℃で2分間プリベークし、膜厚2.5μmのプリベーク膜を得たその後、オーブン(「IHPS−222」;エスペック(株)製)を用いて、230℃で30分(空気中)ポストベークを施すことで、有機成分を含む膜(Y−2)を作製した。
【0120】
(Y−3)
上記(Y−2)の作製方法と同様の手順により、(X−3)から(Y−3)を作製した。
【0121】
(Y−4)
上記(Y−1)の作製方法と同様の手順により、(X−4)から(Y−4)を作製した。
【0122】
[パターン加工性評価]
無アルカリガラス基板(OA−10;日本電気硝子株式会社製)または前記(Y−1)〜(Y−4)の塗布された基板を用い、感光性樹脂組成物のパターン加工性評価を行った。なお、膜厚をプリベーク後2.5μmとし、露光時は感度測定用のグレースケールマスクを用いた。
現像後、30μmのラインアンドスペースパターンを1対1の幅に形成する露光量(以下、これを最適露光量という)を感度とし、最適露光量における現像後の最小パターン寸法を解像度とした。
【0123】
解像度は5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。
【0124】
[導電性評価]
無アルカリガラス基板(OA−10;日本電気硝子株式会社製)または前記(Y−1)〜(Y−4)の塗布された基板を用い、体積抵抗率評価用導電パターンを作製した。なお、膜厚はプリベーク後0.6μmとし、長方形の透光パターン(10mm×15mm)を有するフォトマスクを介し露光した。
【0125】
得られた体積抵抗率評価パターンについて、表面抵抗測定機(三菱油化株式会社製「ロレスタ(登録商標)−FP」)で測定した表面抵抗値ρs(Ω/□)と、表面粗さ形状測定機((株)東京精密製「サーフコム(登録商標)1400D」)にて測定した膜厚t(cm)とを測定し、両値を乗算することで、体積抵抗率(μΩ・cm)を算出した。体積抵抗率は好ましくは100μΩ・cm未満、より好ましくは65μΩ・cm未満である。
【0126】
[基板上残渣評価]
上記の体積抵抗率評価パターンが形成された基板の未露光部分について、透過率評価により、基板上の残渣を評価した。具体的には、未露光部分について、膜形成前後の400nmにおける透過率を、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製「MultiSpec−1500(商品名)」)を用いて、測定した。そして、膜形成前の透過率をT0、膜形成後の透過率をTとしたときに、式(T0−T)/T0で表される透過率変化を算出した。透過率変化は好ましくは1.0%未満、より好ましくは0.7%未満である。
【0127】
(実施例1)
まず、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性粒子(A−1)80.00g、DISPERBYK21116を6.25g、PGMEA146.25g、DPM150.00gに対し、ホモジナイザーにて、1200rpm、30分の混合処理を施し、さらに、高圧湿式メディアレス微粒化装置ナノマイザー(ナノマイザー(株))を用いて分散して、銀粒子分散体を得た。この銀微粒子分散体382.50gに対し、酸解離性基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)を10.00g、金属キレート化合物(C−1)、0.3g、NCI−831を1.20g、PE−3Aを6.00g混合したものに、PGMEA50.00g、DPM50.00gを添加し撹拌することにより、感光性樹脂組成物1を得た。
【0128】
感光性樹脂組成物1を、有機成分を含む膜(Y−1)上に、スピンコーター(ミカサ(株)製「1H−360S(商品名)」)を用いて300rpmで10秒、500rpmで2秒の条件でスピンコートし、基板をホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW−636(商品名)」)を用いて100℃で2分間プリベークし、膜厚1μmのプリベーク膜を得た。プリベーク膜をパラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製「PLA−501F(商品名)」)を用いて超高圧水銀灯を光源とし、所望のマスクを介して露光した。この後、自動現像装置(滝沢産業(株)製「AD−2000(商品名)」)を用いて、0.045wt%水酸化カリウム水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。露光、現像後、5μmのラインアンドスペースパターンを1対1の幅に形成する露光量(以下、「最適露光量」)を感度とした。露光量はI線照度計で測定した。そして、最適露光量における現像後の最小パターン寸法を測定し、解像度とした。
【0129】
また、感光性樹脂組成物1を別途、有機成分を含む膜(Y−1)上に、スピンコーター(ミカサ(株)製「1H−360S(商品名)」)を用いて300rpmで10秒、500rpmで2秒の条件でスピンコートし、基板をホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW−636(商品名)」)を用いて100℃で2分間プリベークし、膜厚1μmのプリベーク膜を得た。プリベーク膜をパラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製「PLA−501F(商品名)」)を用いて超高圧水銀灯を光源とし、所望のマスクを介して露光した。この後、自動現像装置(滝沢産業(株)製「AD−2000(商品名)」)を用いて、0.045wt%水酸化カリウム水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。その後、オーブン(「IHPS−222」;エスペック(株)製)を用いて、230℃で30分(空気中)ポストベークを施すことで、体積抵抗率評価パターンを得た。
【0130】
得られた体積抵抗率評価パターンについて、表面抵抗測定機(ロレスタ(登録商標)−FP;三菱油化株式会社製)で測定した表面抵抗値ρs(Ω/□)と、表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400D;株式会社東京精密製)にて測定した膜厚t(cm)とを測定し、両値を乗算することで、体積抵抗率(μΩ・cm)を算出した。
【0131】
さらに、上記の体積抵抗率評価パターンが形成された基板の未露光部分について、透過率評価により、基板上の残渣を評価した。具体的には、未露光部分について、膜形成前後の400nmにおける透過率を、分光光度計(U−3410;日立製作所株式会社製)を用いて測定した。そして、膜形成前の透過率をT、膜形成後の透過率をTとしたときに、式(T−T)/Tで表される透過率変化を算出した。透過率変化が1%未満である場合は、残渣抑制の効果が十分であると判断可能である。測定した解像度並びに算出した体積抵抗率及び透過率変化の結果を、表1に示す。
【0132】
(実施例2〜21及び比較例1〜11)
実施例1と同様の方法で、表1記載の組成の感光性樹脂組成物を得て、それぞれの感光性樹脂組成物について表1〜3記載の基板上で実施例1と同様の評価をした。評価結果を、表1〜3に示す。なお、表中のガラス基板として無アルカリガラス基板(OA−10G;日本電気硝子株式会社製)を使用した。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
実施例1〜21は、金属キレート化合物添加による残渣抑制の効果が十分かつ、解像度が2μm以下であった。
【0137】
一方で、比較例1〜9は、アルカリ可溶性樹脂が酸解離性基を有していないため、微細パターンの形成が不十分であった。比較例10および11は、金属キレート化合物を添加していないため、残渣抑制の効果が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の感光性樹脂組成物は、タッチパネル、ディスプレイ、イメージセンサー、有機エレクトロルミネッセンス照明又は太陽電池等に用いられる導電性パターンの形成に、好適に利用できる。