(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献で提案された燃料バルブは、通気経路の拡張により燃料蒸気の通気不足を回避できるものの、次のような改善が求められるに至った。燃料は、フロート収容域に入り込んでフロートの浮上をもたらすが、その際に、フロートの浮沈案内用のリブが燃料に浸漬するため、リブの膨潤を起こし得る。また、通気経路の拡張部分の膨潤も起き得る。フロートの浮沈案内用の複数筋の各リブにおいて膨潤の程度が一律であれば、フロート浮沈に影響は起きないとは言える。しかしながら、各リブにおける膨潤の程度はリブの突出長により相違し得るので、フロートの浮沈動作の不安定化を来しかねない。フロートの浮沈動作が不安定であると、燃料蒸気の通気や遮断の信頼性が低下する。こうしたことから、燃料蒸気の通気経路の拡張を図った上で、フロートの浮沈動作の安定化をもたらす燃料バルブが求められるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を踏まえてなされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)燃料バルブの一形態は、燃料タンクの内部との間の連通および遮断を行う燃料バルブであって、前記燃料タンクの外部と接続する第1接続孔に連通する筒状領域を形成すると共に、該筒状領域の形成壁に通気窓を有する円筒状の第1ケーシングと、該第1ケーシングの内部の前記筒状領域を移動可能に前記第1ケーシングに組み込まれ、前記筒状領域における燃料液位に応じて前記筒状領域を浮沈移動して前記第1接続孔を開閉するフロート弁と、前記第1ケーシングを前記第1接続孔の側から取り囲み、前記燃料タンクの燃料蒸気を前記第1ケーシングの取り囲み領域を経て前記通気窓に導く通気経路を前記第1ケーシングの周回りに形成する第2ケーシングとを備え、該第2ケーシングは、前記第1ケーシングの周回りの前記通気経路の一部領域を、径方向外側に前記取り囲み領域に亘って拡径した拡径通気経路として形成する。
【0007】
この形態の燃料バルブは、第1ケーシングの筒状領域をフロートの移動領域、即ち浮沈領域とするので、この筒状領域に燃料が入り込んでも、内周壁側の膨潤は、ほぼ一律となる。これにより、フロート弁の浮沈移動の動作の安定化が可能となる。その上で、この形態の燃料バルブによれば、第1ケーシングの周回りの通気経路の一部領域を径方向外側に拡径した拡径通気経路とすることで、燃料蒸気の通気経路の拡張をもたらすことができる。
【0008】
(2)上記形態の燃料バルブにおいて、前記第1ケーシングは、前記第2ケーシングの係合用の被係合部を有し、前記第2ケーシングは、前記第1ケーシングを取り囲んだ組み付け状態において前記被係合部に係合する係合部を有するようにしてもよい。こうすれば、第1ケーシングを取り囲むよう第2ケーシングを組み付けることで、両ケーシングの係合が完了するので、組み付け作業が簡略化する。
【0009】
(3)上記形態の燃料バルブにおいて、前記第2ケーシングは、前記第1ケーシングを取り囲んだ組み付け状態において前記フロート弁を保持する保持座面部位を有するようにしてもよい。こうすれば、第1ケーシングを取り囲むよう第2ケーシングを組み付けることで、フロート弁を保持できるので、組み付け作業の簡略化と、部品数の削減が可能となる。
【0010】
(4)上記形態の燃料バルブにおいて、前記管体部と接続する第2接続孔の開閉を経て該第2接続孔から前記管体部への前記燃料蒸気の通気を図るバルブ機構を、前記第2ケーシングに並べて備え、前記第2ケーシングは、前記拡径通気経路を、前記第2ケーシングと前記バルブ機構とを結ぶ直線経路を避けて前記第2ケーシングと前記バルブ機構との間に形成するようにしてもよい。こうすれば、次の利点がある。バルブ機構と第2ケーシングとをできるだけ近接して並ばせた場合でも、バルブ機構と第2ケーシングとを結ぶ直線経路を避けて拡径通気経路を形成することで、この両者のデッドスペースを拡径通気経路の形成箇所として有効利用できる。これにより、省スペース化や機器の小型化を図ることができる。
【0011】
本発明は、燃料バルブ以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料バルブを備えた燃料タンクや、燃料バルブの製造方法、燃料バルブを用いた給油方法等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.装置構成:
図1は本発明の一実施形態としての燃料バルブ10が取り付けられた状態の燃料タンクFTおよび燃料給油装置200を示す概略構成図である。
図1以降の各図において、図における下方は、鉛直下方GDに一致する。
【0014】
燃料タンクFTには、燃料給油装置200と燃料バルブ10とが接続されている。燃料タンクFTは、自動車等の車両に搭載されており、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)から形成されたバリア層と、ポリエチレン(PE)から形成された外層とにより構成されている。燃料給油装置200は、燃料注入管IPを有する。燃料注入管IPの一方の端部には、注入口IPaが形成されており、かかる注入口IPaに給油ノズルFNが挿入される。燃料注入管IPの他方の端部は、燃料タンクFT内に配置されている。給油ノズルFNから供給される燃料は、燃料注入管IPを介して燃料タンクFT内に注入される。なお、給油ノズルFNの先端部の内側には、図示しない燃料センサが配置されている。
【0015】
燃料バルブ10は、燃料タンクFTの上壁FTaに設けられた取付孔FTcに装着され、下部を燃料タンクFT内部に位置させる。なお、燃料バルブ10を、その全体が燃料タンクFTに内蔵されるようにしてもよい。燃料バルブ10は、外部のキャニスタCTに取り付けられているキャニスタ接続管CPと接続されている。キャニスタ接続管CPは、本発明における接続管に該当する。キャニスタCTは、活性炭を有し、燃料バルブ10およびキャニスタ接続管CPを介して供給される燃料の蒸発ガス(燃料蒸気)の吸着および脱着を行なう。燃料バルブ10は、燃料タンクFTの内部とキャニスタ接続管CPとの間の連通および遮断を行なうための弁装置である。また、燃料バルブ10は、給油時に燃料タンクFT内の燃料が所定液位まで上昇したときにキャニスタCTへの燃料(燃料蒸気)の流出を規制すると共に、給油を自動停止させるための機能を有する。以下、燃料バルブ10の各部の構成および作用について説明する。
【0016】
図2は本実施形態の燃料バルブ10の外観を示す斜視図である。
図3は燃料バルブ10を
図2における3−3線に沿って断面視して示す説明図である。
図4は燃料バルブ10の組み付けの様子を示す斜視図である。
図5は
図4における矢印A方向からケーシングを斜視して示す説明図である。
図6は燃料バルブ10の要部を
図3における6−6線に沿って断面視して示す説明図である。
図7は燃料バルブ10の要部を
図6における7−7線に沿って断面視して示す説明図である。なお、各図においては、部材構成の理解を助けるため、適宜、部材線図の省略がなされている。
【0017】
燃料バルブ10は、燃料タンクFTへの固定対象部材である蓋体20に、第1フロート弁30と第2フロート弁50とを隣接して有する。両フロート弁の後述のフロートとスプリングを除くフロート弁構成部材と蓋体20は、本実施形態では、例えば、ポリアセタール(POM)を用いた樹脂成形品である。なお、用いる樹脂としては、ポリアセタールに限らず、ポリアミド(PA)など他の耐油性を有する任意のエンジニアリング・プラスチックを用いてもよい。また、エンジニアリング・プラスチックに限らず、耐油性を有する任意の種類の樹脂を用いてもよい。
【0018】
蓋体20は、蓋本体21と、蓋本体21の中央から側方へ突出しキャニスタ接続管CPが装着される管体部22と、蓋本体21の外周に形成されたフランジ23とを備え、これらを一体に形成している。蓋体20は、後述の第1フロート弁30と第2フロート弁50の組み付け対象部材であり、フランジ23を、燃料タンクFT(
図1参照)への燃料バルブ10の溶着固定部位とする。また、蓋体20は、蓋本体21で覆われた側において、管体部22の内部に第1ガス流入室22bと第2ガス流入室22cを連通して備え、両ガス流入室を通路22aに連続させている。第1ガス流入室22bは、第1フロート弁30の組み付け側に第1ガス流入孔24を備え、孔周囲を環状の第1弁座25とする。第1ガス流入孔24は、本発明における第1接続孔に該当する。第2ガス流入室22cは、第2フロート弁50の組み付け側に位置して、後述の第2フロート弁50を通過した燃料蒸気を、第2フロート弁50の上方に位置するガス案内路機構28を経て、第1ガス流入室22bに送り込む。
【0019】
第1フロート弁30は、第1ケーシング31と、第2ケーシング32と、第1フロート33と、第1フロート弁体部34と、スプリング35とを備える。第1ケーシング31は、その上端側に装着プレート部31aを備える。装着プレート部31aは、蓋体20にシール部材を介在させて液密に組み付け装着され、第1ガス流入室22bにおける第1ガス流入孔24と第1弁座25、および第2ガス流入室22cにおけるガス案内路機構28の組み込み領域を形成する。
【0020】
第1ケーシング31は、装着プレート部31aから垂下して形成された円筒状の筒状体であって、その内部の筒状領域31bを第1ガス流入孔24に連通させる。第1ケーシング31は、
図1に示す燃料バルブ10の装着状態において、筒状領域31bを鉛直方向に沿って形成する。また、この第1ケーシング31は、筒状領域31bの形成壁に上端側通気窓31cと下端側通気窓31dとを備え、筒状領域31bを第1フロート33の収容、浮沈領域とする。上端側通気窓31cと下端側通気窓31dは、筒状領域31bの形成壁に軸回りに複数形成されており、上端側通気窓31cは、本発明における通気窓に相当する。
【0021】
この他、第1ケーシング31は、ケーシング下端に突出片31eを軸回りに等ピッチで備え、それぞれの突出片31eに、後述の第2ケーシング32の組み付けのための貫通孔31fを有する。本実施形態では、
図4に示すように、突出片31eは、等ピッチで4箇所に形成されている。この突出片31eと貫通孔31fは、第2ケーシング32の係合用の被係合部に相当する。
【0022】
第1フロート33は、耐油性を有する適宜な樹脂、例えばポリアセタールから形成され、
図6に示すように、外周に等ピッチで凸条33aを有する。この凸条33aは、フロート軸方向に筋状に形成され、筒状領域31bの内周壁面に向けて突出している。そして、この第1フロート33は、第1ケーシング31の筒状領域31bを移動可能に第1ケーシング31に組み込まれる。第1フロート弁体部34は、第1フロート33の先端に組み付け装着される樹脂製の弁体台座34aに、弁体34bを備える。弁体34bは、弾性ゴム等の弾性材から形成されたシール材である。この第1フロート弁体部34を有する第1フロート33は、後述の第2ケーシング32の組み付け状態(
図3参照)において、スプリング35の付勢力を鉛直上方側に受け、筒状領域31bに入り込んだ燃料の燃料液位に応じて筒状領域31bを鉛直方向に沿って浮沈移動して第1ガス流入孔24を開閉する。つまり、第1フロート33は、筒状領域31bに入り込んだ燃料から受ける浮力とスプリング35の付勢力が第1フロート33の自重に勝ると筒状領域31bにおいて鉛直上方に移動し、第1弁座25への弁体34bの押し付けにより、第1ガス流入孔24を閉鎖する。その一方、燃料液位が低くて筒状領域31bに燃料が入り込んでいなければ、第1フロート33は、自重により、筒状領域31bにおいて鉛直下方に移動し、第1弁座25への弁体34bの押し付けを解き、第1ガス流入孔24を開放する。なお、第1フロート33を、凸条33aを有しない形態としてもよい。
【0023】
第2ケーシング32は、
図4に示すように、第1ケーシング31の下端側から第1ケーシング31を取り囲むよう組み付けられる。この組み付けにより、第2ケーシング32は、ケーシング上端において、装着プレート部31aの下面、および第1ケーシング31の外周壁面にシール材を介在させて液密に固定される。
図2に示す組み付け状態において、第2ケーシング32は、第1ケーシング31を第1ガス流入孔24の側から取り囲み、第1ケーシング31の外周壁面との間の間隙を通気経路32aとする。通気経路32aは、
図2と
図6に示すように、ケーシング軸方向である鉛直方向および第1ケーシング31の周回りの取り囲み領域において形成され、リブ32bにより複数筋、本実施形態では五筋の通気経路として区画形成されている。第2ケーシング32は、
図2や
図4の他、
図5や
図6に示すように、ケーシング壁の一部領域を径方向外側に拡径した外方突出壁32cとして備え、この外方突出壁32cで取り囲んだ領域を二筋の拡径通気経路32awとする。この拡径通気経路32awは、第2ケーシング32による第1ケーシング31の取り囲み領域に亘って径方向外側に拡径した経路となる。本実施形態の燃料バルブ10は、第1フロート弁30において第2ケーシング32により形成した拡径通気経路32awを、第2ケーシング32と後述の第2フロート弁50とを結ぶ直線経路を避けて、第2ケーシング32と第2フロート弁50との間に形成する。なお、通気経路32aと拡径通気経路32awとが果たす機能については、第2ケーシング32の他の構成と関連付けて後述する。
【0024】
第2ケーシング32は、
図4および
図5に示すように、ケーシング下端側に、係合腕32dを軸回りに等ピッチで備え、この係合腕32dを底面プレート32eから突出させている。つまり、第2ケーシング32は、複数のブリッジ32fで底面プレート32eを保持した上で、ブリッジ間から係合腕32dを底面プレート32eより下方側に突出させている。そして、第2ケーシング32は、係合腕32dを第1ケーシング31の突出片31eと同じピッチで形成した上で、係合腕32dと底面プレート32eとの間に、第1ケーシング31の突出片31eが入り込む突出片挿入孔32gを備える。よって、
図2および
図3に示すように、第2ケーシング32が第1ケーシング31に組み付けられると、第2ケーシング32の係合腕32dは、突出片挿入孔32gから突出した第1ケーシング31の突出片31eの貫通孔31fに入り込んで突出片31eと係合し、本発明における係合部として機能する。
【0025】
第2ケーシング32は、係合腕32dが形成されていないブリッジ32fとブリッジ32fとの間を、通気経路32aに経路下端で連通した連通窓部32hとする。この連通窓部32hは、第2ケーシング32が第1ケーシング31に組み付けられた状態において、第1ケーシング31の下端側通気窓31dを、外気に臨ませる。
【0026】
この他、第2ケーシング32は、底面プレート32eに等ピッチでコの字状の貫通孔32iを備え、この貫通孔32iから第1ケーシング31の筒状領域31bに、直接、タンク内蒸気、および液位上昇した燃料を導き入れる。また、第2ケーシング32は、底面プレート32eに、ケーシング内部側に筒状突起32jを有し、スプリング35を介在させた状態で、この筒状突起32jと底面プレート32eで第1フロート33を保持する。よって、底面プレート32eは、筒状突起32jと協働して、本発明における保持座面部位として機能する。
【0027】
第1フロート弁30の組み付けに当たっては、まず、第1ケーシング31を装着プレート部31aに装着・固定する。次いで、筒状突起32jにスプリング35をセットした状態の第2ケーシング32に、第1フロート弁体部34を装着済みの第1フロート33を組み込む。こうしてフロート組み込み済みの第2ケーシング32を、第1ケーシング31の下端側から第1ケーシング31を取り囲むよう組み付け、装着プレート部31aに装着・固定する。これにより、蓋体20への第1フロート弁30の組み付けが完了する。または、
図4に示す装着プレート部31aに装着・固定された第1ケーシング31を開口側が鉛直上方側となるように天地逆に配置し、その第1ケーシング31に対し、第1フロート33とスプリング35をケーシング開口から組み込み、第2ケーシング32を上方側から組み付けて装着プレート部31aに装着・固定してもよい。
【0028】
第2フロート弁50は、既述した第1フロート弁30と並んで蓋体20から下方に延び、第1フロート弁30とは別に燃料蒸気の通気を図るバルブ機構であり、第3ケーシング51と、第2フロート52と、スプリング53と、フロート保持体54とを備える。第3ケーシング51は、その上端側に装着プレート部51aを備える。装着プレート部51aは、第1フロート弁30の装着プレート部31aにシール部材を介在させて液密に組み付け固定される。
【0029】
第3ケーシング51は、装着プレート部51aから垂下して形成された円筒状の筒状体であって、その内部の筒状領域51bの上端側に第2ガス流入室22cと連通する第2ガス流入孔51cを備え、孔周囲を環状の第2弁座51dとする。第2ガス流入孔51cから流入した燃料蒸気は、第2ガス流入孔51cの上方に位置するガス案内路機構28を経て第2ガス流入室22cに流れ込んだ後、第1ガス流入室22bに流れ込む。第2ガス流入孔51cは、本発明における第2接続孔に該当する。
【0030】
第3ケーシング51は、
図1に示す燃料バルブ10の装着状態において、筒状領域51bを鉛直方向に沿って形成し、第1フロート弁30の第1ケーシング31より下方側に延びている。第3ケーシング51は、
図6に示すように、筒状領域51bの内周壁に外周に等ピッチで凸条51gを有する。この凸条51gは、後述の第2フロート52のフロート軸方向に筋状に形成され、第2フロート52の浮沈を案内する。なお、第3ケーシング51を、凸条51gを有しない形態としてもよい。
【0031】
この他、第3ケーシング51は、筒状領域51bの形成壁に通気窓51eと係合孔51fを備え、筒状領域51bを第2フロート52の収容、浮沈領域とする。通気窓51eは、筒状領域51bの形成壁に軸回りに複数形成されており、第1フロート弁30の第2ケーシング32の下端より下方側に位置する。係合孔51fは、後述するフロート保持体54の係合に用いられる。
【0032】
第2フロート52は、第1フロート33と同様、耐油性を有する適宜な軽量樹脂、或いは発泡樹脂から形成され、第3ケーシング51の筒状領域51bを移動可能に第3ケーシング51に組み込まれる。フロート保持体54は、図示しない係合腕を係合孔51fに係合させて第3ケーシング51の下端開口に組み付け固定され、筒状突起54aにスプリング53を介在させた状態で、この筒状突起54aと共に第2フロート52を保持する。そして、第2フロート52は、スプリング53の付勢力を鉛直下方側に受け、筒状領域51bに入り込んだ燃料の燃料液位に応じて筒状領域51bを鉛直方向に沿って浮沈移動して第2ガス流入孔51cを開閉する。つまり、第2フロート52は、筒状領域51bに入り込んだ燃料から受ける浮力がスプリング53の付勢力に勝ると筒状領域51bにおいて鉛直上方に移動して第2ガス流入孔51cを閉鎖する。その一方、燃料液位が低くて筒状領域51bに燃料が入り込んでいなければ、スプリング53の付勢力と自重により、筒状領域51bにおいて鉛直下方に移動して第2ガス流入孔51cを開放する。
【0033】
第2フロート弁50の組み付けに当たっては、第3ケーシング51に第2フロート52を組み込んだ上で、スプリング53を筒状突起54aに保持済みのフロート保持体54を、第3ケーシング51に係合固定する。その後、フロート組み込み済みの第3ケーシング51を、装着プレート部51aを介して装着プレート部31aに装着・固定する。これにより、蓋体20への第2フロート弁50の組み付けが完了する。
【0034】
2.作動状況:
上記した第1フロート弁30と第2フロート弁50とを備える燃料バルブ10は、
図1に示すように燃料タンクFTの燃料液位が低いときには、第1フロート弁30では、第1フロート33にスプリング35の付勢力を及ぼして、第1フロート33を底面プレート32eの側に位置させる。また、燃料バルブ10は、第2フロート弁50においても、第2フロート52にスプリング53の付勢力を及ぼして、第2フロート52をフロート保持体54の側に位置させる。燃料バルブ10は、第1フロート弁30における第1ガス流入孔24と第2フロート弁50における第2ガス流入孔51cとをいずれも開放状態とし、通路22aに対して第1フロート弁30の筒状領域31bと第2フロート弁50の筒状領域51bとを連通させる。
【0035】
この状況において、第1フロート弁30では、燃料タンクFTの燃料蒸気は、底面プレート32eの貫通孔32iを経て第1ケーシング31の筒状領域31bに入り込む他、第2ケーシング32の通気経路32aと拡径通気経路32awとを経て第1ケーシング31の上端側通気窓31cから筒状領域31bに入り込むと共に、第2ケーシング32の連通窓部32hから外気に臨んだ第1ケーシング31の下端側通気窓31dを経ても筒状領域31bに入り込む。この場合、通気経路32aには、第1ケーシング31の連通窓部32hや突出片挿入孔32gから燃料蒸気が入り込み、拡径通気経路32awには、当該経路下端側の開口から燃料蒸気が入り込む。こうして筒状領域31bに入り込んだ燃料蒸気は、第1ガス流入孔24から管体部22の通路22aに流れ込み、キャニスタ接続管CPによりキャニスタCTに導かれる。拡径通気経路32awは、他の通気経路32aより開口断面積が大きいことから、多くの燃料蒸気を上端側通気窓31cに導く。また、第2フロート弁50では、燃料タンクFTの燃料蒸気は、第3ケーシング51の通気窓51eを経て筒状領域51bに入り込む。こうして筒状領域51bに入り込んだ燃料蒸気は、第2ガス流入孔51cからガス案内路機構28を経て第2ガス流入室22cに流れ込んだ後、第1ガス流入室22bを経て通路22aに達し、キャニスタ接続管CPによりキャニスタCTに導かれる。
【0036】
燃料タンクFTへの燃料給油により、燃料液位が上昇し、燃料液位が本実施形態において最も上方に配置される通気径路である通気経路32aと拡径通気径路32awを形成する第1ケーシング31の下端側まで達すると、燃料給油の通気の大部分が遮断される。これにより、第1フロート弁30内部と燃料タンクFT内部との差圧によって、第1フロート弁30内に燃料が流入する。第1ケーシング31内の燃料液位が上昇することで、第1フロート33が浮上し第1フロート弁体部34により、第1ガス流入孔24を閉鎖する。これにより、燃料タンクFTの圧力が更に上昇し、給油ノズルFNが燃料注入管IPを介して上昇する燃料を検知することで燃料給油を停止させる。つまり、第1フロート弁30は満タン検知バルブとして機能する。
【0037】
また、通気径路32aより拡径通気径路32awを上方に配置することで、燃料液位を上述した燃料液位よりも上側で設計することも可能となる。
【0038】
第2フロート弁50は、上述したように、燃料給油時の通気を確保すると共に、車両が急旋回等をした際に、燃料タンクTF内の燃料が上昇し、キャニスタ接続管CPを通してキャニスタCTに流出させないように配置されたカットオフバルブとして機能する。つまり燃料バルブ10は満タン検知バルブとカットオフバルブを並列して備えている。
【0039】
以上説明した本実施形態の燃料バルブ10は、第1フロート弁30における第1フロート33の浮沈領域を第1ケーシング31の筒状領域31bとする。よって、この筒状領域31bに燃料が入り込んでも、第1ケーシング31の内周壁側の膨潤は、ほぼ一律となるので、第1フロート33の浮沈移動の動作を安定化させることができる。その上で、本実施形態の燃料バルブ10によれば、第1ガス流入孔24を介した燃料ガス通気を、複数筋の通気経路32aと径方向外側に拡径して通気経路32aより経路断面積が広い二筋の拡径通気経路32awとで起こすので、燃料蒸気の通気経路の拡張により、燃料蒸気の通気不足を抑制できる。
【0040】
本実施形態の燃料バルブ10は、第1フロート弁30の第1ケーシング31に貫通孔31fを設け、第1ケーシング31を第2ケーシング32で取り囲んだ組み付け状態において、第2ケーシング32の突出片31eを貫通孔31fに係合させる。よって、本実施形態の燃料バルブ10によれば、第1ケーシング31を取り囲むよう第2ケーシング32を組み付けることで、両ケーシングの係合を図り、組み付け作業の簡略化を図ることができる。
【0041】
本実施形態の燃料バルブ10は、第2ケーシング32の下端に底面プレート32eを設け、第1ケーシング31を第2ケーシング32が取り囲んだ組み付け状態において、底面プレート32eにより第1フロート33を保持する。よって、本実施形態の燃料バルブ10によれば、第1フロート33が組み付け済みの第1ケーシング31を取り囲むよう第2ケーシング32を組み付けることで、第1フロート33を保持できるので、組み付け作業の簡略化と、部品数の削減を図ることができる。また、本実施形態の燃料バルブ10は、底面プレート32eにフロート保持用の筒状突起32jを有するので、スプリング35と第1フロート33とを第2ケーシング32に組み付けた状態で、この第2ケーシング32を第1ケーシング31組み付けることもできる。つまり、ケーシング組み付けに当たってスプリング35を仮止め等の作業が不要となり、簡便となる。
【0042】
本実施形態の燃料バルブ10は、第1フロート弁30に並べて第2フロート弁50を備え、この第2フロート弁50における第2ガス流入孔51cの第2フロート52による開閉によっても、管体部22からキャニスタ接続管CPへの燃料蒸気の通気を図る。その上で、本実施形態の燃料バルブ10は、拡径通気経路32awを、第2ケーシング32と第2フロート弁50とを結ぶ直線経路を避けて第2ケーシング32と第2フロート弁50との間に形成した。よって、第1フロート弁30と第2フロート弁50とをできるだけ近接して並ばせても、この両者のデッドスペースを拡径通気経路32awの形成箇所として有効利用できる。これにより、燃料バルブ10の省スペース化や機器の小型化を図ることができる。
【0043】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0044】
既述した実施形態では、燃料バルブ10を、第1フロート弁30に第2フロート弁50を並べて備える形態としたが、第1フロート弁30のみを有する形態であってもよい。
【0045】
既述した実施形態では、第2ケーシング32の突出片31eを第1ケーシング31の貫通孔31fに係合させるようにしたが、突出片31eを有しない第2ケーシング32を、装着プレート部31aにて蓋体20に液密に固定しただけの形態であってもよい。
【0046】
既述した実施形態では、第2ケーシング32に底面プレート32eを設け、この底面プレート32eで第1フロート33を保持したが、第2フロート弁50のように、第2ケーシング32に、フロート保持用の底面プレートを後付け装着するようにしてもよい。