(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を有し、該主溝により区画されるリブにタイヤ幅方向に延びるサイプを備え、車両に対する装着方向が指定され、タイヤ中心線の両側で非対称となるトレッドパターンを有する空気入りタイヤにおいて、
前記サイプは踏み込み側のエッジと蹴り出し側のエッジを有し、これら踏み込み側のエッジと蹴り出し側のエッジのそれぞれに前記サイプのサイプ長さよりも短い面取り部が形成されており、前記サイプにおける各面取り部に対向する部位には他の面取り部が存在しない非面取り領域があり、前記サイプの最大深さx(mm)と前記面取り部の最大深さy(mm)が下記式(1)の関係を満たし、前記面取り部のタイヤ径方向内側に位置する端部から前記サイプの溝底までの範囲において前記サイプのサイプ幅が一定であり、車両装着内側の接地領域に含まれる前記サイプと前記面取り部の溝面積が車両装着外側の接地領域に含まれる前記サイプと前記面取り部の溝面積より大きいことを特徴とする空気入りタイヤ。
x×0.1≦y≦x×0.3+1.0 (1)
車両装着内側の接地領域における前記サイプと前記面取り部の溝面積比率が車両装着外側の接地領域における前記サイプと前記面取り部の溝面積比率より3〜15%大きいことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
車両装着内側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数が車両装着外側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数より多いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
車両装着外側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数が車両装着内側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数の0.5〜0.9倍であることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
前記サイプの踏み込み側のエッジに形成された面取り部と前記サイプの蹴り出し側のエッジに形成された面取り部とのオーバーラップ長さが前記サイプ長さの−30%〜30%であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記面取り部が前記サイプの踏み込み側のエッジと蹴り出し側のエッジにそれぞれ1箇所ずつ配置されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、サイプの面取り形状を工夫することにより、車両装着方向が指定された非対称のトレッドパターンを有するタイヤにおいて、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上の両立を可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を有し、該主溝により区画されるリブにタイヤ幅方向に延びるサイプを備え、車両に対する装着方向が指定され、タイヤ中心線の両側で非対称となるトレッドパターンを有する空気入りタイヤにおいて、前記サイプは踏み込み側のエッジと蹴り出し側のエッジを有し、これら踏み込み側のエッジと蹴り出し側のエッジのそれぞれに前記サイプのサイプ長さよりも短い面取り部が形成されており、前記サイプにおける各面取り部に対向する部位には他の面取り部が存在しない非面取り領域があり、前記サイプの最大深さx(mm)と前記面取り部の最大深さy(mm)が下記式(1)の関係を満たし、前記面取り部のタイヤ径方向内側に位置する端部から前記サイプの溝底までの範囲において前記サイプのサイプ幅が一定であり、車両装着内側の接地領域に含まれる前記サイプと前記面取り部の溝面積が車両装着外側の接地領域に含まれる前記サイプと前記面取り部の溝面積より大きいことを特徴とする。
x×0.1≦y≦x×0.3+1.0 (1)
【発明の効果】
【0007】
本発明では、主溝により区画されたリブにタイヤ幅方向に延びるサイプを備え、車両に対する装着方向が指定され、タイヤ中心線の両側で非対称となるトレッドパターンを有する空気入りタイヤにおいて、サイプの踏み込み側のエッジと蹴り出し側のエッジのそれぞれにサイプのサイプ長さよりも短い面取り部を設ける一方で、該サイプにおける各面取り部に対向する部位には他の面取り部が存在しない非面取り領域があることで、面取り部に基づいて排水効果を改善すると同時に、非面取り領域ではエッジ効果により水膜を効果的に除去することができる。そのため、ウエット路面での操縦安定性能を大幅に向上させることが可能となる。しかも、踏み込み側のエッジと蹴り出し側のエッジのそれぞれに面取り部と非面取り領域が混在しているため、上述のようなウエット性能の改善効果を制動時及び駆動時において最大限に享受することができる。また、従来の面取りを施したサイプと比較して、面取りを施す面積を最小限とすることができるため、ドライ路面での操縦安定性能を向上させることが可能となる。その結果、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。更に、車両装着内側の接地領域に含まれるサイプと面取り部の溝面積を車両装着外側の接地領域に含まれるサイプと面取り部の溝面積より大きくすることで、ドライ路面での操縦安定性能とウエット路面での操縦安定性能をより効果的に向上させることができる。
【0008】
本発明では、車両装着内側の接地領域におけるサイプと面取り部の溝面積比率は車両装着外側の接地領域におけるサイプと面取り部の溝面積比率より3〜15%大きいことが好ましい。これにより、効果的にドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。より好ましくは、5〜10%が良い。
【0009】
本発明では、車両装着内側の接地領域での溝面積比率は車両装着外側の接地領域での溝面積比率より5〜20%大きいことが好ましい。これにより、効果的にドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。より好ましくは、8〜15%が良い。
【0010】
本発明では、車両装着内側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数は車両装着外側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数より多いことが好ましい。これにより、車両装着外側のブロックの大きさを大きくすることができるため、ドライ路面での操縦安定性能を効果的に向上させることが可能となる。
【0011】
本発明では、車両装着外側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数は車両装着内側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数の0.5〜0.9倍であることが好ましい。これにより、効果的にドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。より好ましくは、0.6〜0.8倍が良い。
【0012】
本発明では、サイプはタイヤ周方向に対して傾斜していることが好ましい。このようにサイプを傾斜させることで、パターン剛性を向上させることができ、ドライ路面での操縦安定性能をより一層向上させることが可能となる。
【0013】
本発明では、サイプのタイヤ周方向に対する鋭角側の傾斜角度は40°〜80°であることが好ましい。このようにサイプのタイヤ周方向に対する鋭角側の傾斜角度を設定することで、ドライ路面での操縦安定性能をより効果的に向上させることが可能となる。より好ましくは、50°〜70°であると良い。
【0014】
本発明では、面取り部はサイプの鋭角側に配置されていることが好ましい。これにより、耐偏摩耗性能をより一層改善することが可能となる。或いは、面取り部はサイプの鈍角側に配置されていることが好ましい。これにより、エッジ効果が大きくなり、ウエット路面での操縦安定性能をより一層向上させることが可能となる。
【0015】
本発明では、サイプの少なくとも一部は平面視において湾曲或いは屈曲していることが好ましい。このようにサイプの少なくとも一部が形成されていることで、各サイプにおけるエッジの総量が増大し、ウエット路面での操縦安定性能を向上させることが可能となる。サイプ全体が弧状であっても良い。
【0016】
本発明では、面取り部は主溝に開口していることが好ましい。これにより、ウエット路面での操縦安定性能をより一層向上させることが可能となる。或いは、面取り部はリブ内で終端していることが好ましい。これにより、ドライ路面での操縦安定性能をより一層向上させることが可能となる。
【0017】
本発明では、サイプの踏み込み側のエッジに形成された面取り部とサイプの蹴り出し側のエッジに形成された面取り部とのオーバーラップ長さはサイプ長さの−30%〜30%であることが好ましい。このように面取り部におけるオーバーラップ長さをサイプ長さに対して適度に設定することで、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。より好ましくは、−15%〜15%であると良い。
【0018】
本発明では、面取り部はサイプの踏み込み側のエッジと蹴り出し側のエッジにそれぞれ1箇所ずつ配置されていることが好ましい。このように面取り部を配置することで、耐偏摩耗性能を向上させることが可能となる。
【0019】
本発明では、面取り部の最大幅はサイプのサイプ幅の0.8〜5.0倍とすることが好ましい。このように面取り部の最大幅をサイプ幅に対して適度に設定することで、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。より好ましくは、1.2倍〜3.0倍であると良い。
【0020】
本発明では、面取り部はサイプと平行に延在することが好ましい。これにより、耐偏摩耗性能を向上させるができると共に、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。
【0021】
本発明では、サイプに底上げ部を有することが好ましい。これにより、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。サイプの底上げはサイプの端部に施しても、端部以外に施しても良い。
【0022】
本発明では、サイプの端部以外に配置された底上げ部の高さはサイプの最大深さxの0.2〜0.5倍であることが好ましい。このようにサイプの端部以外に配置された底上げ部の高さを適度な高さに設定することで、ブロックの剛性を向上させることができると共に、排水効果を維持することができるため、ウエット路面での操縦安定性能を向上させることが可能となる。より好ましくは、0.3〜0.4倍が良い。
【0023】
本発明では、サイプの端部に配置された底上げ部の高さはサイプの最大深さxの0.6〜0.9倍であることが好ましい。このようにサイプの端部に配置された底上げ部の高さを適度な高さに設定することで、ブロックの剛性を向上させることができ、ドライ路面での操縦安定性能を向上させることが可能となる。より好ましくは、0.7〜0.8倍が良い。
【0024】
本発明では、底上げ部の長さがサイプ長さの0.3〜0.7倍であることが好ましい。このように底上げ部の長さを適度に設定することで、ブロックの剛性を向上させることができ、ドライ路面での操縦安定性能を向上させることが可能となる。
【0025】
なお、本発明において、接地領域とはタイヤが基づく規格(JATMA、TRA、ETRTO等)にてタイヤ毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧をタイヤに充填して静止した状態で平板上に垂直に置き、最大負荷能力の80%に相当する荷重を負荷させたときの平板上に形成される接地面におけるタイヤ幅方向の最大直線距離(タイヤ接地幅)に相当するタイヤ幅方向の領域をいう。また、車両装着外側の接地領域におけるサイプと面取り部の溝面積比率とは、トレッド部の車両装着外側の接地領域の総面積に対するトレッド部の車両装着外側の接地領域に含まれるサイプと面取り部の総面積の百分率(%)であり、車両装着内側の接地領域におけるサイプと面取り部の溝面積比率とは、トレッド部の車両装着内側の接地領域の総面積に対するトレッド部の車両装着内側の接地領域に含まれるサイプと面取り部の総面積の百分率(%)である。更に、車両装着外側の接地領域での溝面積比率とは、トレッド部の車両装着外側の接地領域の総面積に対するトレッド部の車両装着外側の接地領域に含まれる溝部の総面積の百分率(%)であり、車両装着内側の接地領域での溝面積比率とは、トレッド部の車両装着内側の接地領域の総面積に対するトレッド部の車両装着内側の接地領域に含まれる溝部の総面積の百分率(%)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、
図1,
図2において、CLはタイヤ中心線である。
【0028】
図1に示すように、本発明の実施形態からなる空気入りタイヤは、車両に対する装着方向が指定されており、INはタイヤを車両に装着したときに車両に対してタイヤ中心線CLよりも内側(以下、車両装着内側という)を示し、OUTはタイヤを車両に装着したときに車両に対してタイヤ中心線CLよりも外側(以下、車両装着外側という)を示している。
図1に示す空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0029】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0030】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0031】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0032】
図2はトレッド部1の一例を示す平面図であり、Eは接地端である。トレッド部1には、タイヤ周方向に延びる4本の主溝9が形成されている。主溝9は、タイヤ中心線CLに隣接する一対の内側主溝9A,9Aと、タイヤ幅方向最外側に位置する一対の外側主溝9B,9Bとを含んでいる。これら4本の主溝9により、トレッド部1には、リブ10が区画されている。リブ10は、タイヤ中心線CL上に位置するセンターリブ100Aと、センターリブ100Aのタイヤ幅方向外側に位置する一対の中間リブ100B,100Cと、各中間リブ100B,100Cのタイヤ幅方向外側に位置する一対のショルダーリブ100D,100Eとを含んでいる。
【0033】
センターリブ100Aと中間リブ100B,100Cには、それぞれ一対の面取り部12を有するサイプ11が形成されている。サイプ11は、センターリブ100Aに配置されたサイプ110Aと、中間リブ100B,100Cのそれぞれに配置されたサイプ110B,110Cとを含んでいる。面取り部12は、サイプ110Aに形成された面取り部120Aと、サイプ110Bに形成された面取り部120Bと、サイプ110Cに形成された面取り部120Cとを含んでいる。
【0034】
センターリブ100Aには、タイヤ幅方向に対して同一方向に傾斜する複数本のサイプ110Aがタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。これらサイプ110Aは一端が内側主溝9Aに対して連通する一方で他端がセンターリブ100A内で終端している。即ち、サイプ110Aはセミクローズドサイプである。
【0035】
中間リブ100Bには、タイヤ幅方向に対して同一方向に傾斜する複数本のサイプ110Bがタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。これらサイプ110Bは一端が内側主溝9Aに対して連通する一方で他端が外側主溝9Bに対して連通している。即ち、サイプ110Bはオープンサイプである。中間リブ100Cには、タイヤ幅方向に対して同一方向に傾斜する複数本のサイプ110Cがタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。これらサイプ110Cは一端が中間リブ100C内で終端している一方で他端が外側主溝9Bに対して連通している。即ち、サイプ110Cはセミクローズドサイプである。
【0036】
ショルダーリブ100D,100Eには、タイヤ幅方向に延在し、接地領域内においてタイヤ幅方向に対して同一方向に傾斜し、外側主溝9Bに対して非連通となる複数本のラグ溝200がタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。ラグ溝200は、ショルダーリブ100Dに形成されたラグ溝200Aと、ショルダーリブ100Eに形成されたラグ溝200Bを含んでいる。
【0037】
車両装着内側の接地領域に含まれるサイプ11と面取り部12のそれぞれをタイヤ径方向に投影した投影面積を合計したものを溝面積S
Aとし、車両装着外側の接地領域に含まれるサイプ11と面取り部12のそれぞれをタイヤ径方向に投影した投影面積を合計したものを溝面積S
Bとする。即ち、溝面積S
Aは、タイヤ中心線CLと車両装着内側の接地端Eで囲まれる領域に位置する全てのサイプ110A、面取り部120A、サイプ110B及び面取り部120Bの溝面積を合計したものである。他方、溝面積S
Bは、タイヤ中心線CLと車両装着外側の接地端Eで囲まれる領域に位置する全てのサイプ110C及び面取り部120Cの溝面積を合計したものである。このとき、車両装着内側の溝面積S
Aは、車両装着外側の溝面積S
Bよりが大きくなる。
【0038】
図3〜5はトレッド部1の一部を示すものであり、Tcはタイヤ周方向、Twはタイヤ幅方向を示している。
図3に示すように、リブ10はタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ11と、複数本のサイプ11により区画されたブロック101を含んでいる。複数のブロック101はタイヤ周方向に並ぶように配置されている。サイプ11とは溝幅が1.5mm以下の細溝である。
【0039】
図4に示すように、サイプ11は全体の形状が湾曲状を有し、リブ10内においてタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。また、サイプ11は、回転方向Rに対して踏み込み側となるエッジ11Aと、回転方向Rに対して蹴り出し側となるエッジ11Bとを有している。踏み込み側のエッジ11Aと蹴り出し側のエッジ11Bのそれぞれに面取り部12が形成されている。
【0040】
面取り部12は、回転方向Rに対して踏み込み側となる面取り部12Aと、回転方向Rに対して蹴り出し側となる面取り部12Bとを有している。これら面取り部12に対向する部位には他の面取り部が存在しない非面取り領域13が存在している。即ち、面取り部12Aに対向する部位に回転方向Rに対して蹴り出し側となる非面取り領域13Bがあり、面取り部12Bに対向する部位に回転方向Rに対して踏み込み側となる非面取り領域13Aがある。このようにサイプ11の踏み込み側のエッジ11Aと蹴り出し側のエッジ11Bのそれぞれに面取り部12と他の面取り部が存在しない非面取り領域13が隣接するように配置されている。
【0041】
図5に示すように、サイプ11及び面取り部12A,12Bにおいて、タイヤ幅方向の長さをそれぞれサイプ長さL、面取り長さL
A,L
Bとする。これらサイプ長さL、面取り長さL
A,L
Bは、サイプ11又は面取り部12A,12Bのそれぞれの一方の端部から他方の端部までのタイヤ幅方向の長さである。面取り部12A,12Bの面取り長さL
A,L
Bはいずれもサイプ11のサイプ長さLよりも短く形成されている。
【0042】
図6は、サイプ11に対して直交しかつトレッド部1を鉛直方向に切り欠いた断面図である。
図5に示すように、サイプ11の最大深さをx(mm)、面取り部12の最大深さをy(mm)とするとき、最大深さx(mm)と最大深さy(mm)が下記式(1)の関係を満たすようにサイプ11と面取り部12は形成されている。サイプ11の最大深さxは3mm〜8mmが好ましい。面取り部12のタイヤ径方向内側に位置する端部121からサイプ11の溝底までの範囲においてサイプ11のサイプ幅Wが実質的に一定である。このサイプ幅Wは、例えば、サイプ11の溝壁に突条が存在する場合にはその突条の高さをサイプ幅に含めないものとし、或いはサイプ11のサイプ幅が溝底に向かうにしたがって徐々に狭くなっている場合には狭くなっている部分はサイプ幅に含めないものとして、実質的に測定されるサイプ11の幅とする。
x×0.1≦y≦x×0.3+1.0 (1)
【0043】
上述した空気入りタイヤにおいて、サイプ11の踏み込み側のエッジ11Aと蹴り出し側のエッジ11Bのそれぞれにサイプ11のサイプ長さLよりも短い面取り部12を設け、サイプ11における各面取り部12に対向する部位には他の面取り部が存在しない非面取り領域13があることで、面取り部12に基づいて排水効果を改善すると同時に、面取り部12を設けていない非面取り領域13ではエッジ効果により水膜を効果的に除去することができる。そのため、ウエット路面での操縦安定性能を大幅に向上させることが可能となる。しかも、踏み込み側のエッジ11Aと蹴り出し側のエッジ11Bのそれぞれに面取り部12と面取り部が存在しない非面取り領域13が混在しているため、上述のようなウエット性能の改善効果を制動時及び駆動時において最大限に享受することができる。更に、車両装着内側の接地領域に含まれるサイプ11と面取り部12の溝面積S
Aを車両装着外側の接地領域に含まれるサイプ11と面取り部12の溝面積S
Bより大きくすることで、ドライ路面での操縦安定性能とウエット路面での操縦安定性能をより効果的に向上させることができる。
【0044】
また、上記空気入りタイヤでは、最大深さx(mm)と最大深さy(mm)が上記式(1)の関係を満たすことが必要である。上述する式(1)の関係を満たすようにサイプ11と面取り部12を設けることで、従来の面取りを施したサイプと比較して、面取りを施す面積を最小限とすることができるため、ドライ路面での操縦安定性能を向上させることが可能となる。その結果、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。ここで、y<x×0.1であると面取り部12に基づく排水効果が不十分になり、逆にy>x×0.3+1.0であるとリブ10の剛性低下によりドライ路面での操縦安定性能が低下することになる。特に、y≦x×0.3+0.5の関係を満足すると良い。
【0045】
車両装着内側の接地領域におけるサイプ11と面取り部12の溝面積比率をM1
Aとし、車両装着外側の接地領域におけるサイプ11と面取り部12の溝面積比率をM1
Bとする。このとき、車両装着内側の接地領域におけるサイプ11と面取り部12の溝面積比率M1
Aは、車両装着外側の接地領域におけるサイプ11と面取り部12の溝面積比率M1
Bより3〜15%大きい。即ち、溝面積比率M1
Aは溝面積比率M1
Bより大きく、かつ溝面積比率M1
Aと溝面積比率M1
Bとの差が3〜15%となることを意味する。特に、溝面積比率M1
Aは、溝面積比率M1
Bより5〜10%大きいことがより好ましい。このように溝面積比率M1
Aを溝面積比率M1
Bに対して適度に設定することで、効果的にドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。
【0046】
また、車両装着内側の接地領域での溝面積比率をM2
Aとし、車両装着外側の接地領域での溝面積比率をM2
Bとする。このとき、車両装着内側の接地領域での溝面積比率M2
Aは、車両装着外側の接地領域での溝面積比率M2
Bより5〜20%大きい。即ち、溝面積比率M2
Aは溝面積比率M2
Bより大きく、かつ溝面積比率M2
Aと溝面積比率M2
Bとの差が5〜20%となることを意味する。特に、溝面積比率M2
Aは、溝面積比率M2
Bより8〜15%大きいことがより好ましい。このように溝面積比率M2
Aを溝面積比率M2
Bに対して適度に設定することで、効果的にドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。
【0047】
更に、車両装着内側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素、即ち、サイプ110A、サイプ110B及びラグ溝200Aのピッチ数をP
Aとし、車両装着外側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素、即ち、サイプ110C及びラグ溝200Bのピッチ数をP
Bとする。このとき、車両装着内側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数P
Aは、車両装着外側の接地領域においてタイヤ幅方向に延在する溝要素のピッチ数P
Bより多くなっている。このようにピッチ数P
Aをピッチ数P
Bより多く設定することで、車両装着外側のブロックの大きさを大きくすることができるため、ドライ路面での操縦安定性能を効果的に向上させることが可能となる。
【0048】
特に、ピッチ数P
Bは、ピッチ数P
Aの0.5〜0.9倍であることが好ましく、より好ましくは0.6〜0.8倍が良い。このようにピッチ数P
Bをピッチ数P
Aに対して適度に設定することで、効果的にドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。
【0049】
サイプ11は、
図7に示すように、タイヤ周方向に対して傾斜角度θを有するように形成されている。この傾斜角度θは、サイプ11の両端部を結ぶ仮想線(
図7で示す点線)とブロック101の側面がなす角度をいい、傾斜角度θには鋭角側の傾斜角度と鈍角側の傾斜角度が存在し、
図7においては鋭角側の傾斜角度θを示している。また、傾斜角度θは、リブ10内の中間ピッチにおけるサイプ11の傾斜角度を対象とする。このとき、鋭角側の傾斜角度θは、40°〜80°であることが好ましく、より好ましくは50°〜70°であると良い。このようにサイプ11をタイヤ周方向に対して傾斜させることで、パターン剛性を向上させることができ、ドライ路面での操縦安定性能をより一層向上させることが可能となる。ここで、傾斜角度θが40°より小さいと耐偏摩耗性能が悪化し、80°を超えるとパターン剛性を十分に向上させることができない。
【0050】
本発明では、サイプ11の鋭角側の傾斜角度θを有する側を鋭角側とし、サイプ11の鈍角側の傾斜角度θを有する側を鈍角側とする。サイプ11のエッジ11A,11Bにそれぞれ形成された面取り部12A,12Bはサイプ11の鋭角側に形成されている。このようにサイプ11の鋭角側に面取りが施されていることで、耐偏摩耗性能をより一層改善することが可能となる。或いは、面取り部12A,12Bがサイプ11の鈍角側に形成されていても良い。このように面取り部12A,12Bがサイプ11の鈍角側に形成されていることで、エッジ効果が大きくなり、ウエット路面での操縦安定性能をより一層向上させることが可能となる。
【0051】
本発明では、上述するサイプ11の全体の形状が湾曲状であることによって、ウエット路面での操縦安定性能を向上させることが可能となるが、更に、サイプ11の一部が平面視において湾曲或いは屈曲する形状を有していても良い。このようにサイプ11が形成されていることで、各サイプ11におけるエッジ11A,11Bの総量が増大し、ウエット路面での操縦安定性能を向上させることが可能となる。
【0052】
面取り部12A,12Bの主溝9寄りに位置する端部は、
図7に示すように、リブ10の両側に位置する主溝9にそれぞれ連通している。このように面取り部12A,12Bが形成されていることで、ウエット路面での操縦安定性能をより一層向上させることが可能となる。或いは、面取り部12A,12Bの主溝9寄りに位置する端部が、主溝9に連通せずにリブ10内で終端していてもよい。このように面取り部12A,12Bが形成されていることで、ドライ路面での操縦安定性能をより一層向上させることが可能となる。
【0053】
面取り部12は、
図7に示すように、サイプ11の踏み込み側のエッジ11Aと蹴り出し側のエッジ11Bにそれぞれ1箇所ずつ配置されている。このように面取り部12を配置することで、耐偏摩耗性能を向上させることが可能となる。ここで、面取り部12が、サイプ11の踏み込み側のエッジ11Aと蹴り出し側のエッジ11Bにそれぞれ2箇所以上形成されると節が多くなり、耐偏摩耗性能を悪化させてしまう傾向がある。
【0054】
また、サイプ11に直交する方向に沿って測定される面取り部12の幅の最大値を幅W1とする。このとき、面取り部12の最大幅W1がサイプ11のサイプ幅Wの0.8〜5.0倍とすることが好ましく、より好ましくは1.2倍〜3.0倍であると良い。このように面取り部12の最大幅W1をサイプ幅Wに対して適度に設定することで、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。ここで、面取り部12の最大幅W1が、サイプ11のサイプ幅Wの0.8倍より小さいとウエット路面での操縦安定性能の向上が不十分となり、5.0倍より大きいとドライ路面での操縦安定性能の向上が不十分となる。
【0055】
更に、面取り部12の長手方向の外縁部はサイプ11の延在方向と平行に形成されている。このように面取り部12がサイプ11と平行に延在することで、耐偏摩耗性能を向上させるができると共に、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。
【0056】
面取り部12Aと面取り部12Bは、
図8(a)に示すように、サイプ11の中央部において面取り部12A,12Bの双方の一部が重なり合うように形成されている。ここで、面取り部12Aと面取り部12Bが重なり合った部分であるオーバーラップ部のタイヤ幅方向の長さをオーバーラップ長さL1とする。一方、
図8(b)に示すように、面取り部12Aと面取り部12Bの双方の一部が重ならず、一定の間隔をあけて離間している場合、オーバーラップ長さL1のサイプ長さLに対する割合はマイナス値で表す。オーバーラップ部のオーバーラップ長さL1は、サイプ長さLの−30%〜30%であることが好ましく、より好ましくは−15%〜15%であると良い。このように面取り部12A,12Bにおけるオーバーラップ長さL1をサイプ長さLに対して適度に設定することで、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。ここで、オーバーラップ長さL1が30%より大きいとドライ路面での操縦安定性能の向上が不十分となり、−30%より小さいとウエット路面での操縦安定性能の向上が不十分となる。
【0057】
図9に示すように、サイプ11はその長さ方向の一部に底上げ部14を有している。底上げ部14としては、サイプ11の中央部に位置する底上げ部14Aと、サイプ11の両端部に位置する底上げ部14Bが存在する。このようにサイプ11に底上げ部14を設けることで、ドライ路面での操縦安定性能の向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。サイプ11の底上げ部14はサイプ11の端部及び/又は端部以外に形成しても良い。
【0058】
サイプ11の端部以外に形成された底上げ部14Aにおいて、サイプ11の溝底から底上げ部14Aの上面までの高さの最大値を高さH
14Aとする。この高さH
14Aは、サイプ11の最大深さxの0.2〜0.5倍であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.4倍が良い。このようにサイプ11の端部以外に配置された底上げ部14Aの高さH
14Aが適度な高さに設定されることで、ブロック101の剛性を向上させることができると共に、排水効果を維持することができるため、ウエット路面での操縦安定性能を向上させることが可能となる。ここで、高さH
14Aが、サイプ11の最大深さxの0.2倍より小さいとブロック101の剛性を十分に向上させることができず、0.5倍より大きいとウエット路面での操縦安定性能を十分に向上させることができない。
【0059】
サイプ11の両端部に形成された底上げ部14Bにおいて、サイプ11の溝底から底上げ部14Bの上面までの高さの最大値を高さH
14Bとする。この高さH
14Bは、サイプ11の最大深さxの0.6〜0.9倍であることが好ましく、より好ましくは0.7〜0.8倍が良い。このようにサイプ11の端部に形成された底上げ部14Bの高さH
14Bが適度な高さに設定されることで、ブロック101の剛性を向上させることができ、ドライ路面での操縦安定性能を向上させることが可能となる。ここで、高さH
14Bが、サイプ11の最大深さxの0.6倍より小さいとブロック101の剛性を十分に向上させることができず、0.9倍より大きいとウエット路面での操縦安定性能を十分に向上させることができない。
【0060】
また、サイプ11の底上げ部14A,14Bにおいて、タイヤ幅方向の投影長さをそれぞれ長さL
14A,L
14Bとする。底上げ部14A,14Bのそれぞれの長さL
14A,L
14Bを全て合計したものを底上げ部14の長さL
14とする。この底上げ部14の長さL
14は、サイプ長さLに対して0.3〜0.7倍であることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.6倍が良い。このように底上げ部14の長さL
14を適度に設定することで、ドライ路面での操縦安定性能を向上とウエット路面での操縦安定性能の向上を両立させることが可能となる。ここで、底上げ部14の長さL
14が、サイプ11のサイプ長さLの0.3倍より小さいとブロック101の剛性を十分に向上させることができず、0.7倍より大きいとウエット路面での操縦安定性能を十分に向上させることができない。
【0061】
サイプ11の面取り部12A,12Bとしては、
図2〜
図5,
図7,
図8(a),(b)に示す他に、
図10(a)に示すようにサイプ11の鈍角側に面取りが施された場合や
図10(b)に示すようにサイプ11の一部が屈曲している場合、
図10(c)に示すように面取り部12A,12Bのそれぞれの主溝9寄りに位置する端部が主溝9に開口することなくリブ10内で終端している場合を例示することができる。また、
図10(d)に示すようにサイプ11及び面取り部12A,12Bがタイヤ幅方向と平行に形成されている場合、
図10(e)に示すように面取り部12Aと面取り部12Bとのタイヤ幅方向の境界線がサイプ11の中心から大幅にずれている場合を例示することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態(
図2)ではタイヤ中心線CL上にサイプ110A及び面取り部120Aが配置されていない場合について説明したが、タイヤ中心線CL上にサイプ110A又は面取り部120Aが配置されている場合、これらサイプ110A又は面取り部120Aにおける車両装着内側或いは車両装着外側に位置する各部分を対象として、溝面積S
A,S
B、溝面積比率M1
A,M1
B及び溝面積比率M2
A,M2
Bをそれぞれ規定する。
【実施例】
【0063】
タイヤサイズ245/40R19で、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を有し、主溝により区画されるリブにタイヤ幅方向に延びるサイプを備え、車両に対する装着方向が指定され、タイヤ中心線の両側で非対称となるトレッドパターンを有する空気入りタイヤにおいて、面取りの配置(両側又は片側)、サイプ長さLと面取り長さL
A,L
Bの長短、面取り部に対向する部位の面取りの有無、サイプの最大深さx(mm)、面取り部の最大深さy(mm)、車両内側のサイプと面取り部の溝面積S
Aと車両外側のサイプと面取り部の溝面積S
Bとの大小、サイプのタイヤ周方向に対する鋭角側の傾斜角度、サイプの面取り箇所(鈍角側又は鋭角側)、サイプ全体の形状(直線又は湾曲)、面取り部の主溝への開口の有無、面取り部のオーバーラップ長さL1のサイプ長さLに対する割合、面取り箇所の個数(1箇所又は2箇所)、サイプ幅Wに対する面取り部の最大幅W1(W1/W)、面取りの形状(平行又は平行でない)、サイプの底上げ部の有無(中央、端部又は無し)、サイプの最大深さxに対するサイプの底上げ部の高さH
14(H
14/x)、サイプ長さLに対する底上げ部の長さL
14(L
14/L)、車両内側のサイプと面取り部の溝面積比率M1
Aと車両外側のサイプと面取り部の溝面積比率M1
Bとの差(M1
A−M1
B)、車両内側の溝面積比率M2
Aと車両外側の溝面積比率M2
Bとの差(M2
A−M2
B)、車両内側のピッチ数P
Aと車両外側のピッチ数P
Bとの大小及び車両内側のピッチ数P
Aに対する車両外側のピッチ数P
B(P
B/P
A)を表1及び表2のように設定した従来例1,2、比較例1,2及び実施例1〜19のタイヤを製作した。
【0064】
なお、従来例1、比較例1,2及び実施例1〜19のタイヤでは面取り部のタイヤ径方向内側に位置する端部からサイプの溝底までの範囲においてサイプ幅が一定である。
【0065】
これら試験タイヤについて、テストドライバーによるドライ路面での操縦安定性能及びウエット路面での操縦安定性能に関する官能評価並びに耐偏摩耗性能に関する視覚評価を実施し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0066】
ドライ路面での操縦安定性能及びウエット路面での操縦安定性能に関する官能評価は、各試験タイヤをリムサイズ19×8.5Jホイールに組み付けて車両に装着し、空気圧260kPaの条件にて行った。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどドライ路面での操縦安定性能及びウエット路面での操縦安定性能が優れていることを意味する。
【0067】
耐偏摩耗性能に関する視覚評価は、各試験タイヤをリムサイズ19×8.5Jホイールに組み付けて車両に装着し、空気圧260kPaの条件で4,000km走行後にタイヤの外観を視覚的に評価した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐偏摩耗性能が優れていることを意味する。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
これら表1及び表2から判るように、サイプに形成された面取り部の形状を工夫することで、実施例1〜19のタイヤは耐偏摩耗性能が改善されると共に、ドライ路面での操縦安定性能とウエット路面での操縦安定性能が同時に改善されていた。
【0071】
一方、比較例1においては、面取り部の最大深さyを非常に浅く設けたため、ウエット路面での操縦安定性能の改善効果は得られなかった。また、比較例2においては、面取り部の最大深さyを非常に深く設けたため、ドライ路面での操縦安定性能の改善効果は得られなかった。