特許第6841281号(P6841281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841281
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】身体清拭シート
(51)【国際特許分類】
   A47K 7/00 20060101AFI20210301BHJP
   D04H 13/00 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   A47K7/00 Z
   D04H13/00
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-525230(P2018-525230)
(86)(22)【出願日】2017年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2017023820
(87)【国際公開番号】WO2018003885
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-128481(P2016-128481)
(32)【優先日】2016年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-8531(P2017-8531)
(32)【優先日】2017年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 瑞江
(72)【発明者】
【氏名】川口 麻実
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亜矢子
【審査官】 下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−250714(JP,A)
【文献】 特開平09−215648(JP,A)
【文献】 特開2004−073529(JP,A)
【文献】 特開2000−107067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00〜 7/08
A47K10/00〜10/48
D04H 1/00〜18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布から構成された2つの表面層と、2つの表面層の間に配置され、吸水性ポリマーを含有する吸水性ポリマー層とが積層された身体清拭シートであって、水性洗浄剤を含有しない身体清拭シート。
【請求項2】
水を含ませて使用される乾式シートである請求項1に記載の身体清拭シート。
【請求項3】
前記吸水性ポリマー層は、繊維材料中に吸水性ポリマーを含有させたシート、繊維材料の上に吸水性ポリマーを分散して固めたシート、又は繊維状に加工された吸水性ポリマーを含むシートから構成される請求項1又は2に記載の身体清拭シート。
【請求項4】
前記吸水性ポリマー層中の吸水性ポリマーの量が、ポリマーが十分膨潤する時間水に浸した身体清拭シートを60℃に加熱した後、20〜25℃、湿度40〜80%の環境下で10分保存した後の身体清拭シートの温度を30℃以上に保持し得る量である請求項1〜3のいずれかに記載の身体清拭シート。
【請求項5】
前記表面層と吸水性ポリマー層とが、少なくとも1点の固定部で固定されている請求項1〜4のいずれかに記載の身体清拭シート。
【請求項6】
前記固定部が略直線状である請求項5に記載の身体清拭シート。
【請求項7】
前記略直線状の固定部が前記身体清拭シートの端から端に跨る請求項6に記載の身体清拭シート。
【請求項8】
前記身体清拭シートが略矩形であり、前記略直線状の固定部が、少なくとも一方向に2本設けられている請求項6又は7に記載の身体清拭シート。
【請求項9】
前記固定部が、身体清拭シートの両端に設けられており、前記2つの表面層を接合する際に同時に設けられた略直線状の2本の固定部である請求項5〜8のいずれかに記載の身体清拭シート。
【請求項10】
前記固定部が熱溶着による接合部である請求項5〜9のいずれかに記載の身体清拭シート。
【請求項11】
前記吸水性ポリマー層が、身体清拭シートの幅方向の中心位置を長手方向に沿って略直線状に延びる凹部により2つの部分に分離されている請求項1〜10のいずれかに記載の身体清拭シート。
【請求項12】
前記身体清拭シートは略矩形であり、前記身体清拭シートの幅方向の中心を通って前記身体清拭シートの長手方向に延びる線における前記身体清拭シートの長手方向の中心位置から等距離の位置から、前記身体清拭シートの長辺までの間を、前記身体清拭シートの長手方向に沿って互いに離れるように延びる仮想線に沿って延びる2つのガイド線をさらに備える請求項1〜11のいずれかに記載の身体清拭シート。
【請求項13】
前記2つの表面層のうちの一方の角部に取り付けられ、該2つの表面層のうちの一つとの間に前記身体清拭シートを収容するためのポケットを画成する小片をさらに備える請求項1〜12のいずれかに記載の身体清拭シート。
【請求項14】
不織布から構成された2つの表面層と、2つの表面層の間に配置され、吸水性ポリマーを含有する吸水性ポリマー層とが積層された身体清拭シートであって、水性洗浄剤を含有しない身体清拭シートに、水性洗浄剤を含有せず水を含有する水溶液又は水のみを含ませて、身体拭くことを含む身体清拭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体清拭シートに関する。
【背景技術】
【0002】
保水性を有する身体用の清拭シートが知られており、例えば特許文献1,2には、吸水性ポリマー及び水性洗浄剤を含む湿式の身体用清拭シートが開示されている。また、特許文献3には布タオルの間に吸水樹脂を挟んだ蒸しタオルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2004−313557
【特許文献2】日本国特開2003−250714
【特許文献3】日本国特開平9−252994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の清拭シートは湿式のシートであるため、使用前に乾いた状態で保管できない。また、特許文献1及び2に記載の清拭シートには、アレルギー体質の人や皮膚疾患を有する人に適用する場合、身体に接触することが好ましくない場合もある。
【0005】
特許文献3に記載の蒸しタオルの場合、繰り返し用いると雑菌の繁殖の恐れがある。そのため、衛生的に用いるには布タオルを吸水樹脂から外して洗濯する必要があり、使用者にとって煩雑である。
【0006】
本発明の目的は、使い捨て可能で、使用前に乾いた状態で保管でき、かつ使用時の保水性が良好で、加温して使用した場合の保温性に優れる不織布タイプの身体清拭シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、2つの表面層を不織布から構成し、2つの表面層の間に吸水性ポリマーを含有する吸水性ポリマー層を配置した身体清拭シートを用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一態様によれば、不織布から構成された2つの表面層と、2つの表面層の間に配置され、吸水性ポリマーを含有する吸水性ポリマー層とが積層された身体清拭シートが提供される。
一実施形態において、上記身体清拭シートは、水を含ませて使用される乾式シートである。
別の実施形態において、上記吸水性ポリマー層は、繊維材料中に吸水性ポリマーを含有させたシート、繊維材料の上に吸水性ポリマーを分散して固めたシート、又は繊維状に加工された吸水性ポリマーを含むシートから構成される。
別の実施形態において、上記吸水性ポリマー層中の吸水性ポリマーの量が、ポリマーが十分膨潤する時間水に浸した身体清拭シートを60℃に加熱した後、20〜25℃、湿度40〜80%の環境下で10分保存した後の身体清拭シートの温度を30℃以上に保持し得る量である。
別の実施形態において、上記身体清拭シートは水性洗浄剤を含有しない。
別の実施形態において、上記表面層と上記吸水性ポリマー層とが、少なくとも1点で固定されている。
別の実施形態において、上記固定部が略直線状である。
別の実施形態において、上記略直線状の固定部が上記身体清拭シートの端から端に跨る。
別の実施形態において、上記身体清拭シートが略矩形であり、上記略直線状の固定部が、少なくとも一方向に2本設けられている。
別の実施形態において、上記固定部が、身体清拭シートの両端に設けられており、上記2つの表面層を接合する際に同時に設けられた略直線状の2本の固定部である。
別の実施形態において、上記固定部が熱溶着による接合部である。
別の実施形態において、上記吸水性ポリマー層が、身体清拭シートの幅方向の中心位置を長手方向に沿って略直線状に延びる凹部により2つの部分に分離されている。
別の実施形態において、上記身体清拭シートは略矩形であり、上記身体清拭シートの幅方向の中心を通って上記身体清拭シートの長手方向に延びる線における上記身体清拭シートの長手方向の中心位置から等距離の位置から、上記身体清拭シートの長辺までの間を、上記身体清拭シートの長手方向に沿って互いに離れるように延びる仮想線に沿って延びる2つのガイド線をさらに備える。
別の実施形態において、上記2つの表面層のうちの一方の角部に取り付けられ、該2つの表面層のうちの一つとの間に上記身体清拭シートを収容するためのポケットを画成する小片をさらに備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用前には身体清拭シートを乾いた状態で保管でき、かつ使用時には良好な保水性を発揮し、加温した場合の保温性に優れる。また、使用後には身体清拭シートを使い捨てることができて衛生的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の身体清拭シートの平面図。
図2図1のII−II線における断面図。
図3図1の身体清拭シートの各部材の接合を説明する身体清拭シートの模式的平面図。
図4】本発明の第2実施形態の身体清拭シートの平面図。
図5】(A)〜(H)本発明の第3〜10実施形態の身体清拭シートの平面図。
図6】本発明の第11実施形態の身体清拭シートの模式的平面図。
図7図6のVII−VII線における断面図。
図8】本発明の第12実施形態の身体清拭シートの平面図。
図9図8の身体清拭シートの使用状態の略図。
図10】本発明の第13実施形態の身体清拭シートの平面図。
図11図10の身体清拭シートが折り畳まれた状態を示す平面図。
図12】身体清拭シートの保温試験の結果を示すグラフ。
図13】実施例5の身体清拭シートの略平面図。
図14】実施例6の身体清拭シートの略平面図。
図15】実施例7の身体清拭シートの略平面図。
図16】実施例8の身体清拭シートの略平面図。
図17】実施例9の身体清拭シートの略平面図。
図18】実施例10の身体清拭シートの略平面図。
図19】実施例11の身体清拭シートの略平面図。
図20】実施例12の身体清拭シートの略平面図。
図21】実施例13の身体清拭シートの略平面図。
図22】実施例14の身体清拭シートの略平面図。
図23】実施例27の身体清拭シートの略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1〜第13実施形態の身体清拭シートについて図1〜11を参照しながら説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態の身体清拭シート1は、不織布から構成された2つの表面層2,3と、2つの表面層2,3の間に配置され、吸水性ポリマーを含有する1つまたは複数の吸水性ポリマー層4とが積層された略矩形の積層シートである。表面層2及び表面層3のいずれの面でも、身体の清拭を行うことができる。
【0013】
また、図2に示すように、吸水性ポリマー層4の端部が2つの表面層2,3により封止されている。具体的には、吸水性ポリマー層4の幅が2つの表面層2,3の幅よりも短く、また吸水性ポリマー層4の長さが2つの表面層2,3の長さよりも短くなっており、吸水性ポリマー層4が2つの表面層2,3により囲繞され、吸水性ポリマー層4の周端部が2つの表面層2,3により封止されている。封止は、例えば表面層2,3の2層の超音波融着並びに熱融着等の溶着、接着剤による接着、糸による縫い合わせ、エンボス加工による接合、溶断機による溶断、溶接機による溶接等により行うことができる。吸水性ポリマー層4を2つの表面層2,3により封止することで、吸水性ポリマー層4の身体清拭シート1からの脱落が防止される。また、吸水性ポリマー層4を2つの表面層2,3により画成される空間内に閉じ込めて、吸水性ポリマーが身体清拭シート1の外に漏出するのを防止することができる。
【0014】
表面層2及び表面層3の片方又は両方と、吸水性ポリマー層4とは、少なくとも一点で固定されていることが好ましい。各表面層2,3と吸水性ポリマー層4とを固定することにより、互いの層間のズレを解消あるいは低減することができる。図3に示すように、本実施形態では、吸水性ポリマー層4の長手方向に沿った対をなす端部(言い換えると長辺)において表面層2,3の両方と吸水性ポリマー層4との3層が矩形の仮想線で囲った固定部20の領域または範囲で固定されており、固定部20は身体清拭シート1、表面層2,3、吸水性ポリマー層4の長手方向に沿って、略直線状に互いに平行に2本設けられている。各固定部20は、身体清拭シート1の端から端に跨っている。ここで、「端から端に跨る」とは、身体清拭シート1の全長に渡って固定部20が設けられていてもよいが、必ずしも身体清拭シート1の全長に渡って固定部20が設けられていなくてもよく、固定部20の端が該端に最も近い身体清拭シート1の辺から0mm〜30mm離れていることを指す。また、「端から端に跨る」には、身体清拭シート1の長手方向の端から端に跨る場合と、身体清拭シート1の長手方向に垂直な短手方向(すなわち幅方向)の端から端に跨る場合とが含まれる。表面層2,3と吸水性ポリマー層4の固定方法は特に限定されず、例えば、超音波融着並びに熱融着等の溶着、接着剤による接着、糸による縫い合わせ、エンボス加工による接合、溶接機による溶接等により行うことができる。例えば、第1実施形態の固定部20は、表面層2及び表面層3の2層の4辺を網掛けで示した部分で互いに接合する際に、表面層2及び表面層3の間の吸水性ポリマー層4も同時に固定部20の位置で接合することにより、一度に接合することができる。
【0015】
本実施形態の身体清拭シート1は、水を含ませて使用される乾式シートである。このため、衛生的に長期間保管することができる。また、本実施形態の身体清拭シート1は乾式で軽量であるため、多数量の運搬及び輸送にも適している。
【0016】
身体清拭シート1は、使用時に水を含ませることで、身体清拭シート1を身体の清拭に使用することができる。
【0017】
また、吸水性ポリマー層4の吸水性ポリマーが水を保持するため、身体清拭シート1を、身体清拭シート1を適用した身体部位の冷却又は加温に使用することができる。冷却用の身体清拭シート1は、例えば乾燥した身体清拭シート1を氷水、冷却水、又は水道水等に浸したり、水で濡らした身体清拭シート1を冷蔵庫に保存することにより準備でき、加温用の身体清拭シート1は、例えば乾燥した身体清拭シート1を温水に浸したり、水又は湯で濡らした身体清拭シート1を電子レンジで加熱したり、保温庫又は清拭車に入れることにより準備することもできる。
【0018】
さらには、身体清拭シート1に水を含ませることで、吸水性ポリマー層4の吸水性ポリマーが膨張するため、不織布のみから構成したシートと比較して身体清拭シート1の厚みが増大すると共にクッション性も増大する。
【0019】
また、本実施形態の身体清拭シート1の表面層2,3と吸水性ポリマー層4に適量の水を保持させると、清拭を行うときに肌への水残りを少なくでき、清拭されている人が感じる局所的な寒さ又は冷感を回避又は低減することができる。
【0020】
また、本実施形態の身体清拭シート1は、使い捨ての物品である。特に、身体清拭用の物品を加温して使用する場合は雑菌が繁殖しやすいが、本発明の身体清拭シート1は使い捨てであるため、衛生的に使用することができる。
【0021】
さらに、本実施形態の身体清拭シート1は、水性洗浄剤を含有しない。水性洗浄剤は水を媒体とし洗浄成分を含有するものであり、界面活性剤が挙げられる。このため、身体に直接接触するときの水性洗浄剤の影響が排除される。水性洗浄剤については日本国特開2003−250714及び日本国特開2004−313557にも記載されている。
【0022】
次に、身体清拭シート1を構成する各層について詳しく説明する。
【0023】
表面層2,3は不織布から構成されており、不織布を構成する繊維材料は天然繊維であっても化学繊維であってもよいし、それらの組み合わせでもよい。天然繊維としてはコットン、パルプ、羊毛等の天然繊維が挙げられる。化学繊維としては、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維及びポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維、及びポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン芯鞘型複合繊維、ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型複合繊維等の合成繊維並びにこれらを親水化処理したもの等が挙げられる。繊維材料は1種又は2種以上を用いることができる。例えば、表面層2,3を親水性繊維と熱溶着性繊維を含む複合材としてもよく、好ましくは、コットン、パルプ及びレーヨンやキュプラ等の再生セルロース繊維から選択された少なくとも一つと、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン芯鞘型複合繊維、及びポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型複合繊維から選択された少なくとも一つの合成繊維とを含む複合材とすることができる。また、表面層2,3に使用される合成繊維が非親水性の合成繊維であっても、親水性を示す構造にすること、あるいは親水化処理を施すこともできる。
【0024】
表面層2,3を構成する繊維シートは、例えば湿式抄造法、スパンレース法及びエアレイド法等の不織布製造法により製造することができる。表面層2,3を構成する繊維シートの坪量は、身体清拭シート1全体の構成にもよるが、風合い又は吸水性ポリマー層の成分の漏出防止等の観点から、坪量はそれぞれ例えば20〜100g/m2 であり、30〜70g/m2 であることが好ましい。
【0025】
表面層2及び表面層3はそれぞれ一枚に限定されず、例えば1つの身体清拭シート1中に複数の表面層2、複数の表面層3、又はこれらの組み合わせを積層させて使用してもよい。複数の表面層2を使用する場合、異種繊維から形成された2層以上の表面層2を重ね合わせてもよいし、同種の繊維から形成された2層以上の表面層2を重ね合わせてもよい。複数の表面層2を重ね合わせて一枚の不織布とすることができる。また、複数の表面層2を重ね合わせる部分は、表面層2の全体に限られず、一部の区画のみであってもよい。複数の表面層3の場合も複数の表面層2を使用する場合と同様である。
【0026】
吸水性ポリマー層4は吸水性ポリマーを含有する層である。吸水性ポリマー層4は、吸水性ポリマーの他に、繊維材料、バインダー等の添加剤をさらに含有してもよい。吸水性ポリマー層4は、繊維材料中に吸水性ポリマーを含有させたシート、繊維材料の上に吸水性ポリマーを分散して固めたシート、又は繊維状に加工された吸水性ポリマーを含むシートであり得る。
【0027】
吸水性ポリマー層4に使用される吸水性ポリマーとしては、液体を吸収及び保持できる任意の吸水性ポリマーを使用することができ、具体例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。吸水性ポリマー層4に使用される吸水性ポリマーは、1種単独であってもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
吸水性ポリマー層4に使用される繊維材料は天然繊維であっても化学繊維であってもよいし、それらの組み合わせでもよい。天然繊維としてはコットン、パルプ、羊毛等の天然繊維が挙げられる。化学繊維としては、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維及びポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維、及びポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン芯鞘型複合繊維等の合成繊維並びにこれらを親水化処理したもの等が挙げられる。繊維材料は1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
吸水性ポリマー層4を構成する繊維シートは、例えば湿式抄造法、スパンレース法及びエアレイド法等の不織布製造法により製造することができる。吸水性ポリマー層4を構成する繊維シートの坪量は、身体清拭シート1全体の坪量にもよるが、それぞれ例えば20〜400g/m2であり、30〜350g/m2であることが好ましい。また、吸水性ポリマー層4を構成する繊維シートは、単にパルプやコットン等の繊維を堆積したシートであってもよい。
【0030】
吸水性ポリマー層4の数は一枚に限定されない。例えば1つの身体清拭シート1中に複数の吸水性ポリマー層4を積層させて使用してもよい。複数の吸水性ポリマー層4を使用する場合、異種繊維から形成された2層以上の吸水性ポリマー層4を重ね合わせてもよいし、同種の繊維をから形成された2層以上の吸水性ポリマー層4を重ね合わせてもよい。また、複数の吸水性ポリマー層4を重ね合わせる部分は、吸水性ポリマー層4の全体に限られず、一部の区画のみであってもよい。
【0031】
好ましくは、吸水性ポリマー層4中の吸水性ポリマーの量は、吸水性ポリマーが十分膨潤する時間水に浸した身体清拭シート1を60℃に加熱した後、20〜25℃、湿度40〜80%の環境下で10分静置した後の身体清拭シート1の温度を30℃以上に保持し得る量である。追加的に又は代わりに、吸水性ポリマー層4中の吸水性ポリマーの量は、吸水性ポリマーが十分膨張する時間水に浸した身体清拭シート1を60℃に加熱した後、20〜25℃、湿度40〜80%の環境下で20分保存した後の身体清拭シート1の温度を25℃以上に保持し得る量である。この場合、身体清拭シート1は、加熱後に比較的長時間温かさを保持し得る。
【0032】
身体清拭シート1は、香料、保湿剤、抗菌剤、抗炎症剤、虫除け剤、及び清涼パウダーから選択される1つ又は2つ以上の成分をさらに含有してもよい。これらの成分は表面層2、表面層3、吸水性ポリマー層4及びその他の層のいずれに含有されてもよい。
【0033】
香料は、天然香料でも合成香料でもよく、特に限定されず、例えば香木、精油、樹脂、ムスク、シベット、カストリウム、アンバーグリス、メントール、レモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジ、ベルガモット、バラ、ジャスミン、スズラン、ライラック、バニリン、ヘリオトロピン、クマリン;ベンゾイン、乳香、没薬等が挙げられる。
【0034】
抗菌剤としては、特に限定されず、例えばメチルパラベン等が挙げられる。
【0035】
保湿剤は、軟膏、クリーム、ローション等のいずれの剤形の保湿剤であってもよく、特に限定されない。軟膏としては、例えば白色ワセリン、亜鉛華軟膏、セラミド、アズノール軟膏、ザーネ軟膏、クリームとしては、例えばウレパール、ケラチナミン、パスタロン(ソフト)、ワイドコール、ヒルドイドクリーム、ローションとしては、例えばヒルドイドローションが挙げられる。
【0036】
抗炎症剤としては、特に限定されず、例えばプレドニゾロン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、リン酸デキサメタゾンナトリウム等のステロイド系抗炎症薬、並びにアスピリン、メフェナム酸、イブプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、スリンダク、ピロキシカム等の非ステロイド系抗炎症薬が挙げられる。
【0037】
虫除け剤としては、特に限定されず、例えばN,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(DEET)、p−メンタン−3,8−ジオール、ユーカリオイルを初めとするアロマオイル等が挙げられる。
【0038】
清涼パウダーは、水と反応して吸熱反応を起こす冷却物質を含む粉体である。冷却物質としては、特に限定されず、糖類、アミノ酸、尿素、無機塩などが挙げられ、粉末としてはタルク、カオリン、雲母、炭酸金属塩、ケイ酸金属塩、クレイ、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、シリカビーズ、プラスチックビーズ、プラスチックパウダー、コーンスターチを初めとする食用粉末等が挙げられる。
【0039】
ここまで、本発明を第1実施形態を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。以下の第2〜13実施形態において、同じ符号は第1実施形態における符号と同じ部材を示し、説明は省略する。なお、第2〜13実施形態の各々だけでなく、第2〜13実施形態を組み合わせた態様も、本発明に含まれる。
【0040】
図4に示すように、第2実施形態の身体清拭シート1は、表面層2、表面層3、及び吸水性ポリマー層4に加えて、1または2層以上の追加の層5を備えていてもよい。例えば追加の層5は、表面層3と吸水性ポリマー層4の間に積層された、表面層3と吸水性ポリマー層4の接着を支援するための熱融着層であってもよい。かかる熱融着層は、例えば熱融着性繊維から構成される。熱融着性繊維としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂等、並びにこれらの組み合わせが用いられる。
【0041】
第1実施形態では、表面層2、表面層3、及び吸水性ポリマー層4の3層を固定するように固定部20が設けられていたが、固定部は表面層2と吸水性ポリマー層4の2層、又は表面層3と吸水性ポリマー層4の2層を固定するものであってもよい。また、表面層2及び表面層3の片方又は両方と、吸水性ポリマー層4とは少なくとも1点で固定されていればよい。
【0042】
さらに、固定部20の形状は、点状、線状、楕円状、螺旋状、格子状等であってよいが、これらに限定されない。例えば、図5(A)〜(H)はそれぞれ第3〜10実施形態の身体清拭シート1の模式的平面図である。
【0043】
図5(A)の第3実施形態の身体清拭シート1では、図3の第1実施形態の身体清拭シート1と同様に、表面層2,3の両方と吸水性ポリマー層4との3層が、身体清拭シート1の長手方向の端から端に跨る互いに平行な2本の略直線状の固定部20で固定されているが、固定部20は、身体清拭シート1の長手方向に垂直な短手方向において、表面層2及び表面層3の2層を接合している網掛けの部分とは離れており、固定部20は網掛けの部分よりも身体清拭シート1の内方に設けられている。
【0044】
図5(B)の第4実施形態の身体清拭シート1は、身体清拭シート1の長手方向の端から端に跨る第1の固定部20と、第1の固定部20と垂直な身体清拭シート1の短手方向の端から端に跨る第2の固定部20とを備えている。
【0045】
図5(C)の第5実施形態の身体清拭シート1は、固定部20は、各々が身体清拭シート1の対角線上に延びる、互いに交差する2本の略直線状の固定部20を備えている。
【0046】
図5(D)の第6実施形態の身体清拭シート1は、身体清拭シート1の中心に設けられた点状の固定部20を備えている。
【0047】
図5(E)の第7実施形態の身体清拭シート1は、身体清拭シート1の幅方向の中心を通って身体清拭シート1の長手方向に延びる1本の略直線状の固定部20を備えている。
【0048】
図5(F)の第8実施形態の身体清拭シート1は、身体清拭シート1内にランダムに分散して設けられた曲線状の複数(図では3つ)の固定部20を備えている。
【0049】
図5(G)の第9実施形態の身体清拭シート1は、身体清拭シート1内にランダムに分散して設けられた点状の複数(図では5つ)の固定部20を備えている。
【0050】
図5(H)の第10実施形態の身体清拭シート1は、身体清拭シート1の幅方向の中心を通って身体清拭シート1の長手方向に延びるが、吸水性ポリマー4の領域内に設けられた1本の略直線状の固定部20を備えている。
【0051】
上記の第3〜10実施形態のいずれの場合も、固定部20は、表面層2,3の片方又は両方と吸水性ポリマー層4とを固定することにより、互いの層間のズレを解消あるいは低減することができる。
【0052】
図6及び7に示すように、本発明の第11実施形態の身体清拭シート1は、身体清拭シート1の幅方向の中心位置を長手方向に沿って略直線状に延びる凹部6を備え、凹部6により吸収性ポリマー層4が2つの部分4aに分離されている。かかる凹部6を備えることで、矢印の方向に折り返すと、身体清拭シート1を容易に二つに折り畳むことができ、拭きやすい。
【0053】
なお、本実施形態では、表面層2及び表面層3の2層が接合した部分が、凹部6の底面を区画形成し、表面層2、表面層3、及び吸収性ポリマー層4の3層の部分よりも厚みが小さくなることで凹部6が画成されているが、凹部6の位置で凹部6の身体清拭シート1の幅方向における両側の部分よりも相対的に厚みが小さくなっていれば、身体清拭シート1の各層の図示された構成に限定されない。
【0054】
図8に示すように、本発明の第12実施形態の身体清拭シート1は、第11実施形態で示した凹部6に加えて、それぞれ一対のガイド線7a並びにガイド線7b、及びガイド線7c並びにガイド線7dを備えている。ガイド線7a並びにガイド線7bは、身体清拭シート1の幅方向の中心を通って身体清拭シート1の長手方向に延びる線Xにおける身体清拭シート1の長手方向の中心位置Cから等距離の位置から、身体清拭シート1の長辺1aまでの間を、身体清拭シート1の長手方向に沿って互いに離れるように延びる仮想線Y1,Y2に沿ってそれぞれ延びている。ガイド線7c並びにガイド線7dは、身体清拭シート1の幅方向の中心を通って身体清拭シート1の長手方向に延びる線Xにおける身体清拭シート1の長手方向の中心位置Cから等距離の位置から、身体清拭シート1の長辺1bまでの間を、上記身体清拭シートの長手方向に沿って互いに離れるように延びる仮想線Y3,Y4に沿ってそれぞれ延びている。ガイド線7a,7b,7c及び7dは、エンボス加工等により施された凹部、互いに離間して設けられた複数の孔、糸による縫い目、マーカー、テープ等であってよい。ガイド線7a,7b,7c及び7dは身体清拭シート1の片面または両面に設けられてもよく、好ましくは両面に設けられる。なお「仮想線に沿って」とは、仮想線上である場合と、仮想線と平行な場合とを含む。
【0055】
この構成によれば、図8において、(1)の矢印のように身体清拭シート1を線Xの位置で二つに折り畳み、(2)の矢印のように折り重なった一端部を内方に折り返し、(3)の矢印のように折り重なった他方の端部を内方に折り返すことにより、図9に示すように、ミトン様の形状に身体清拭シート1が折りたたまれる。ミトンの空間8に親指以外の4指を入れ、ミトンの長手方向の端部の折れ重なった部分を親指をミトンの外側から押さえることにより、使用者、つまり身体清拭シート1の着用者は手の操作を細かく反映しつつ清拭することができる。
【0056】
図10に示すように、本発明の第12実施形態の身体清拭シート1では、表面層2または表面層3の角部に、小片10が取り付けられている。小片10を構成する材料は限定されず、例えば表面層3と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。小片10の形状は限定されないが、例えば三角形であり、小片10の二辺11,12が表面層3の角部を形成する二辺と接合されている。接合としては、超音波融着並びに熱融着等の溶着、接着剤による接着、糸による縫い合わせ、エンボス加工による接合、溶断機による溶断、溶接機による溶接等により行うことができる。小片10は、表面層3との間に身体清拭シート1を収容するためのポケット13を画成する。
【0057】
このため、図10で矢印に示すように、身体清拭シート1をポケット13に向かって折り返し、図11に示すように身体清拭シート1をポケット13に収容することができる。このため、コンパクトに畳んで拭くことができ、また、使用後の身体清拭シート1をコンパクトに折り畳んで処分することができる。
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0059】
試験例1 身体清拭シートの製造
実施例1
(1)表面層の製造
繊維成分がレーヨン繊維80%及びポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維20%からなる坪量40g/m2 のスパンレース不織布を製造し、これを2枚の表面層として用いた。表面層の大きさは、長さ300mm×幅200〜400mm とした。
(2) 吸水性ポリマー層の製造
吸水性ポリマー含有シートを吸水性ポリマー層として用いた。このシートはエアレイド法によって製造されたものであり、シートに含まれる吸水性ポリマーは架橋されたポリアクリル酸ナトリウム塩であり、実施例1のシートではその坪量を230g /m2とした。このシートの繊維組成は、木材パルプからなる天然セルロース繊維であった。
(3)身体清拭シートの製造
2枚の表面層間には、吸水性ポリマー層と、さらに別途ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型繊維100%から構成された熱融着層とを配置し、熱融着で4層を接合し、清拭シートを製造した。
【0060】
実施例2の身体清拭シートは、吸水性ポリマー層の吸水性ポリマーの坪量を138g /m2として製造した。
【0061】
実施例3の身体清拭シートは、吸水性ポリマー層の吸水性ポリマーの坪量を50g /m2として製造した。
【0062】
実施例4の身体清拭シートは、吸水性ポリマー層の吸水性ポリマーを繊維状態に加工した上で、吸水性ポリマー層の坪量を68g /m2として製造した。
【0063】
比較例1には布タオルを用いた。
比較例2には市販の不織布からなる単層のシートを用いた。
【0064】
試験例2 保温性試験
試験例1で製造した実施例1〜4及び比較例1,2の身体清拭シートを約10cm ×約30cmに折りたたみ、吸水性ポリマーが十分膨潤する時間、水を含水させ、電子レンジを用いて加熱した。次いで放射温度計(タスコ製TA−410NH)を用いて、折りたたんだ状態の清拭シート表面の中央部温度が60℃まで下がった後、2分毎に20分間、清拭シート表面の中央部温度を測定した。
【0065】
結果を表1及び図12に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
試験例3 身体清拭シートの製造
実施例5
(1)表面層の製造
AL045TCDP−H(金星製紙株式会社製)(繊維成分がパルプ及びポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維からなる坪量45g/m2 のエアレイド不織布)を表面層とした。
(2)吸水性ポリマー層の製造
吸水性ポリマー9g/m2を含有し、パルプおよびバインダーからなる総坪量89g/m2の不織布をエアレイド法により製造し、吸水性ポリマー層を得た。
(3)身体清拭シートの製造
幅20cmの表面層不織布ロールの上に、幅18.2cmの吸水性ポリマー層を長さ27cmに断裁しながら該吸水性ポリマー層の長さ方向に約3cm間隔で配置し、吸水性ポリマー層の上から幅20cmの表面層不織布ロールを挟み合わせて3層とした。3層からなるシートの各々を移動装置により移動させ、シートの幅方向の両端の各々から1.5cmまでの幅1.5cmの領域をシートの移動方向に沿って、シートの上方に配置した加熱ローラーによって溶着した。シートの移動方向はシートの長さ方向と一致する。続いて、シートにおける幅方向に吸水性ポリマー層が挟まっていない箇所を幅2.5cmの加熱ローラーにより溶着し、隣り合う3層からなるシートの間の2つの表面層の接合部の中央を幅方向に切断して、実施例5の身体清拭シートを得た(図13)。
以下、図13〜22において、符号1は身体清拭シート、符号2は表面層、符号4は吸水性ポリマー層、符号22は溶着部を示す。図16,18において、符号24は身体清拭シート1の下方の加熱ローラーによる溶着部を示す。
【0068】
実施例6
シートの幅方向中央部の上方に幅1cmの加熱ローラーを追加して、身体清拭シートの幅方向の中心を通りシートの長手方向に沿ってシートがさらに溶着されるようにした以外は実施例5と同様にして実施例6の身体清拭シートを得た(図14)。
【0069】
実施例7
実施例5においてシートの幅方向の両端の各々から1.5cmまでの幅1.5cmの領域をシートの移動方向に沿って加熱ローラーによって溶着する代わりに、シートの幅方向の両端の各々から8mmまでの幅8mmの領域をシートの移動方向に沿って加熱ローラーによって溶着した。また、シートの幅方向中央部の上方に幅1cmの加熱ローラーを配置し、シートの幅方向の中心を通りシートの移動方向に沿ってシートを溶着し、実施例7の身体清拭シートを得た(図15)。
【0070】
実施例8
シートの幅方向中央部の下方に幅2cmの加熱ローラーを追加して、身体清拭シートの長手方向の中心を通りシートの幅方向に沿って幅方向における一端から他端までシートがさらに溶着されるようにした以外は実施例7と同様にして実施例8の身体清拭シートを得た(図16)。
【0071】
実施例9
実施例5においてシートの幅方向の両端の各々から1.5cmまでの幅1.5cmの領域をシートの移動方向に沿って加熱ローラーによって溶着する代わりに、シートの幅方向の両端の各々から8mmまでの幅8mmの領域をシートの移動方向に沿って加熱ローラーによって溶着した。また、シートの幅方向の両端の各々から5cm離れた位置の上方に幅2cmの加熱ローラーを配置しシートの移動方向に沿ってシートを溶着し、身体清拭シートの長手方向に沿った端部の接合部以外に、当該端部の接合部から離れて長手方向に延びる追加の二本の接合部を形成し、実施例9の身体清拭シートを得た(図17)。
【0072】
実施例10
実施例9における、シートの幅方向の両端の各々から5cm離れた位置に幅2cmでシートの移動方向に沿って設けた接合部を、シートの下方に配置した加熱ローラーにより形成した以外は、実施例9と同様にして実施例10の身体清拭シートを得た(図18)。
【0073】
実施例11
実施例5においてシートの幅方向の両端の各々から1.5cmまでの幅1.5cmの領域をシートの移動方向に沿って加熱ローラーによって溶着する代わりに、シートの幅方向の両端の各々から8mmまでの幅8mmの領域をシートの移動方向に沿って加熱ローラーによって溶着した。また、シートの長手方向中央部の上方に幅1cmの加熱ローラーを配置し、シートの長手方向の中心を通りシートの幅方向に沿ってシートを溶着し、実施例11の身体清拭シートを得た(図19)。
【0074】
実施例12
実施例5においてシートの幅方向の両端の各々から1.5cmまでの幅1.5cmの領域をシートの移動方向に沿って加熱ローラーによって溶着する代わりに、シートの幅方向の両端の各々から8mmまでの幅8mmの領域をシートの移動方向に沿って加熱ローラーによって溶着し、実施例12の身体清拭シートを得た(図20)。
【0075】
試験例4
ヨレの評価 実施例5〜12の身体清拭シートを2分間60℃のお湯に浸けたあと、広げた状態で一辺を持ち上げ、中身がよれるか否かを評価した。結果、実施例5〜11の身体清拭シートでは実施例12と比べてヨレが解消あるいは改善されており、実施例12の身体清拭シートではヨレが発生した。
【0076】
実施例13
実施例5において、吸水性ポリマー層の断裁長さ12cmとし、シートにおける幅方向の溶着部分の切断を2回に1回として、実施例13の身体清拭シートを得た(図21)。
【0077】
実施例14
幅30cmの表面層不織布ロールに、幅方向に1cm離して2個配置した幅13.8cmの吸水性ポリマー層を長さ17cmに断裁しながら該吸水性ポリマー層の長さ方向に約3cm間隔で配置し、吸水性ポリマー層の上から幅30cmの表面層不織布ロールを挟み合わせて3層とした。3層からなるシートの各々を移動装置により移動させ、シートの幅方向の両端の各々から1.5cmまでの幅1.5cmの領域をシートの移動方向に沿って、シートの上方に配置した加熱ローラーによって溶着した。続いて、シートの幅方向の中央部の幅1cmの領域をシート上方に配置した加熱ローラーによって溶着した。シートの移動方向はシートの長さ方向と直交である。続いて、シートにおける幅方向に吸水性ポリマー層が挟まっていない箇所を幅2.5cmの加熱ローラーにより溶着し、隣り合う3層からなるシートの間の2つの表面層の接合部の中央を幅方向に切断して、実施例14の身体清拭シートを得た(図22)。
【0078】
実施例15
表面層をAL060UTHP−H−S(金星製紙株式会社製)(繊維成分がパルプ及びポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維からなる坪量60g/m2 のエアレイド不織布)とした以外は実施例5と同様にして実施例15の身体清拭シートを得た。
【0079】
実施例16
表面層をAL070UTHP−H−S(金星製紙株式会社製)(繊維成分がパルプ及びポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維からなる坪量70g/m2 のエアレイド不織布)とした以外は実施例5と同様にして実施例16の身体清拭シートを得た。
【0080】
実施例17
表面層を9570−O(シンワ株式会社製)(繊維成分がポリエチレン及びポリプロピレンからなる坪量70g/m2 の不織布)とした以外は実施例5と同様にして実施例17の身体清拭シートを得た。
【0081】
実施例18
表面層を7840Z+6515−1A(シンワ株式会社製)(繊維成分がポリエチレンテレフタレートからなる坪量40g/m2の不織布と、繊維成分がポリプロピレン/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維からなる坪量15g/m2 の不織布とを交錯させた不織布)とした以外は実施例5と同様にして実施例18の身体清拭シートを得た。
【0082】
実施例19
表面層を2ATEP2060(日清紡テキスタイル株式会社製)(繊維成分がコットン及びポリエチレンテレフタレートからなる坪量60g/m2 のスパンレース不織布)とした以外は実施例5と同様にして実施例19の身体清拭シートを得た。
【0083】
実施例20
表面層を3RTEP0080(日清紡テキスタイル株式会社製)(繊維成分がレーヨン及びポリエチレンテレフタレートからなる坪量80g/m2 のスパンレース不織布)とした以外は実施例5と同様にして実施例20の身体清拭シートを得た。
【0084】
実施例21
表面層をAL045TCDP−Hと6525−1A(シンワ株式会社)(繊維成分がポリプロピレン/ポリエチレンの芯鞘複合繊維からなる坪量25g/m2の不織布)の2層とし、6525−1Aを吸水性ポリマー層側に配置した以外は、実施例5と同様にして実施例21の身体清拭シートを得た。
【0085】
実施例22
表面層を2ATEP2060と6525−1A(シンワ株式会社製)(繊維成分がポリプロピレン/ポリエチレンの芯鞘複合繊維からなる坪量25g/m2の不織布)の2層とし、6525−1Aを吸水性ポリマー層側に配置した以外は、実施例5と同様にして実施例22の身体清拭シートを得た。
【0086】
実施例23
表面層を2ATEP2040(日清紡テキスタイル株式会社製)(繊維成分がコットン及びポリエチレンテレフタレートからなる坪量40g/m2 のスパンレース不織布)と6525−1Aの2層とし、6525−1Aを吸水性ポリマー層側に配置した以外は、実施例5と同様にして実施例23の身体清拭シートを得た。
【0087】
実施例24
表面層の一方を6525−1Aと2ATEP2040の2層とし、6525−1Aを吸水性ポリマー層側に配置し、表面層のもう一方を2ATEP2060とした以外は、実施例5と同様にして実施例24の身体清拭シートを得た。
【0088】
実施例25
表面層を、繊維成分がコットン16%、ポリエチレンテレフタレート47%、及びポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘繊維37%からなる坪量60g/m2のスパンレース不織布とし、22.5cmの表面層不織布ロールに、幅17.7cmの吸水性ポリマー層を長さ27cmに断裁しながら該吸水性ポリマー層の長さ方向に約3cm間隔で配置し、吸水性ポリマー層の上下から幅22.5cmの2つの表面層不織布ロールを挟み合わせて3層とした。3層からなるシートの各々を移動装置により移動させ、シートの幅方向の両端の各々から1.5cmまでの幅1.5cmの領域をシートの移動方向に沿って、シートの上方に配置した加熱ローラーによって溶着した。シートの移動方向はシートの長さ方向と一致する。続いて、シートにおける幅方向に吸水性ポリマー層が挟まっていない箇所を幅2.5cmの加熱ローラーにより溶着し、隣り合う3層からなるシートの間の2つの表面層の接合部の中央を幅方向に切断して、実施例25の身体清拭シートを得た。本実施形態の溶着部の配置は図20に示した実施例12と同様である。
【0089】
実施例26
表面層を、繊維成分がコットン17%、ポリエチレンテレフタレート41%、及びポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘繊維42%からなる坪量60g/m2のスパンレース不織布とした以外は実施例25と同様にして実施例26の身体清拭シートを得た。
【0090】
実施例27
実施例26において、さらに、シートの幅方向の両端の各々から5cmの位置に内側へ幅5mmの領域をシートの移動方向に沿って、シートの上下に配置した超音波ミシン・ロータリーユニット(精電舎電子工業株式会社製)により溶着した以外は実施例26と同様にして実施例27の身体清拭シートを得た(図23)。
図23において、符号1は身体清拭シート、符号2は表面層、符号4は吸水性ポリマー層、符号22は加熱ローラによる溶着部、符号26は超音波ミシン・ロータリーユニットによる溶着部を示す。
【0091】
実施例28
超音波溶着部を48mmとした以外は実施例27と同様にして実施例28の身体清拭シートを得た。
【0092】
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0093】
上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。例えば以下の通りである。
第1〜4実施形態において、吸水性ポリマー層4が2つの表面層2,3により囲繞されていなくてもよく、吸水性ポリマー層4中の吸水性ポリマーが身体清拭シート1の外に漏出するのを防止する程度に、吸水性ポリマー層4の周端部が表面層2、表面層3と一体化されていればよい。一体化は、表面層2,3及び吸水性ポリマー層4の3層の超音波融着並びに熱融着等の溶着、接着剤による接着、糸による縫い合わせ、エンボス加工による接合、溶断機による溶断、溶接機による溶接等により行うことができる。
第12実施形態において、ガイド線7a,7bを省略し、ガイド線7c,7dのみとしてもよい。
【0094】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、本発明は以下の構成を採用することもできる。
[1]不織布から構成された2つの表面層と、2つの表面層の間に配置され、吸水性ポリマーを含有する吸水性ポリマー層とが積層された身体清拭シート。
[2]水を含ませて使用される乾式シートである[1]に記載の身体清拭シート。
[3]上記吸水性ポリマー層は繊維材料中に吸水性ポリマーを含有させたシート、繊維材料の上に吸水性ポリマーを分散して固めたシート、又は繊維状に加工された吸水性ポリマーを含むシートである[1]又は[2]に記載の身体清拭シート。
[4]上記吸水性ポリマー層中の吸水性ポリマーの量が、ポリマーが十分膨潤する時間水に浸した身体清拭シートを60℃に加熱した後、20〜25℃、湿度40〜80%の環境下で10分保存した後の身体清拭シートの温度を30℃以上に保持し得る量である[1]〜[3]のいずれかに記載の身体清拭シート。
[5]水性洗浄剤を含有しない[1]〜[4]のいずれかに記載の身体清拭シート。
[6]上記表面層と吸水性ポリマー層が、少なくとも1点で固定されている[1]〜[5]のいずれかに記載の身体清拭シート。
[7]上記固定部が略直線状である[6]に記載の身体清拭シート。
[8]上記略直線状の固定部が上記身体清拭シートの端から端に跨る[7]に記載の身体清拭シート。
[9]上記身体清拭シートが略矩形であり、上記略直線状の固定部が、少なくとも一方向に2本設けられている[6]又は[7]に記載の身体清拭シート。
【0095】
[10]上記固定部が、身体清拭シートの両端に設けられており、上記2つの表面層を接合する際に同時に設けられた略直線状の2本の固定部である[6]〜[9]のいずれかに記載の身体清拭シート。
[11]上記固定部が熱溶着による接合部である請求項[6]〜[10]のいずれかに記載の身体清拭シート。
[12]上記吸水性ポリマー層が、身体清拭シートの幅方向の中心位置を長手方向に沿って略直線状に延びる凹部により2つの部分に分離されている[1]〜[11]のいずれかに記載の身体清拭シート。
[13]上記身体清拭シートは略矩形であり、上記身体清拭シートの幅方向の中心を通って上記身体清拭シートの長手方向に延びる線における上記身体清拭シートの長手方向の中心位置から等距離の位置から、上記身体清拭シートの長辺までの間を、上記身体清拭シートの長手方向に沿って互いに離れるように延びる仮想線に沿って延びる2つのガイド線をさらに備える[1]〜[12]のいずれかに記載の身体清拭シート。
[14]上記2つの表面層のうちの一方の角部に取り付けられ、該2つの表面層のうちの一つとの間に上記身体清拭シートを収容するためのポケットを画成する小片をさらに備える請求項[1]〜[13]のいずれかに記載の身体清拭シート。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の身体清拭シートは、家庭、病院等の医療施設、老人福祉施設、介護施設、総合商業施設、スポーツ施設等の様々な場所で、清拭を必要とする人に他者が清拭をしたり、清拭を必要とする人が自ら清拭をするために使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図21
図22
図23