(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
便器本体と、前記便器本体の上に載置される使用位置と、前記便器本体の後端から起立する非使用位置との間で揺動可能に設けられた便座と、前記使用位置に位置した便座の上に載置され便座を覆う遮蔽位置と、前記便器本体の後端から起立し前記便座を開放する開放位置との間で揺動可能に設けられた蓋とを有する便器を化粧室内に備える乗り物用化粧室ユニットであって、
前記蓋の内面に収納された状態で前記蓋と共に前記遮蔽位置と前記開放位置との間で揺動可能で、かつ、前記蓋の開放位置で前記蓋と切り離されて前記使用位置に位置した前記便座の上に載置される載置位置となる水切り板と、
前記化粧室内に移動可能に設けられた水栓と、
前記水栓からの水の吐出と吐出停止を行なう水制御部と、
前記水栓を保持し前記蓋の開放位置で前記水栓から吐出される水を前記便器本体の内側に向ける水栓保持部とを備え、
前記水切り板は、前記使用位置に位置した前記便座の上に載置され前記便座を覆う載置部と、足を載せることが可能で前記水栓から吐出される水を前記便器本体の内側に導く排水部とを有し、
前記蓋は、前記遮蔽位置で前記便器本体に対向する内面を有し、
前記水栓保持部は、前記蓋と、前記蓋の内面に設けられ前記水栓を係脱可能に保持する水栓用係止具とを含んで構成されている、
ことを特徴とする乗り物用化粧室ユニット。
前記腰掛け板は、細長を呈しその長手方向の一端が前記化粧室の壁部に結合され前記一端を支点として前記使用位置と前記収納位置との間で揺動可能で、前記使用位置で上方を向いた表面とその反対に位置する裏面とを有する腰掛け板本体と、前記腰掛け板本体の裏面で前記腰掛け板本体の長手方向の他端に揺動可能に設けられ、前記収納位置で前記腰掛け板本体の裏面に収納されると共に前記腰掛け板本体の使用位置で前記長手方向の他端から下方に延在して前記化粧室の床に当接し前記腰掛け板本体の前記使用位置を保持する脚部とを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項7記載の乗り物用化粧室ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施形態について、乗り物用化粧室ユニットが航空機用化粧室ユニットである場合について図面を参照して説明する。
図1に示すように、化粧室ユニット10は、航空機のフロア上に設置された躯体フレーム12を有し、躯体フレーム12の内部に化粧室1002が形成されている。
躯体フレーム12は、正面壁1202と、正面壁1202に対向する背面壁1204と、左右の側壁1206、1208と、天井(天井壁)1210と、床(底壁)1212とを有している。
正面壁1202には出入口1214が設けられ、各出入口1214は扉14により開閉される。
本実施の形態では、化粧室ユニット10は、機体の前後方向に延在する縦通路の側方に配置され、正面壁1202は縦通路に面している関係上、背面壁1204は機体の胴部に近づけて配置され、背面壁1204は、機体の胴体形状に合わせ上部に至るにつれて正面壁1202方向に変位する湾曲面で形成されている。
化粧室1002には、洗面台16、カウンター18が一方の側壁1206に付けて配置されている。
洗面台16は、側壁1206の内側で化粧室1002の底壁1212に設置された基台20の上面に設けられている。
洗面台16は、手洗い器1602、手洗い用水栓1604、鏡1606を含んで構成されている。
基台20の内部には不図示のごみ箱装置が設けられ、図中符号2002は、ごみ投入口を示している。
【0009】
便器22は背面壁1204の前方(背面壁1204が正面壁1202に対向する方向)で背面壁1204に寄せて設けられている。
図1、
図2に示すように、便器22は、便器本体24と、便座26と、蓋28とを含んで構成されている。
便器本体24は、床1212(底壁)に設置されている。
便座26は、
図3に示すように、便器本体24の上に、便器本体24の上部に載置される使用位置と、
図4に示すように、便器本体24の後端(背面壁1204側の端部)から起立する非使用位置との間で揺動可能に設けられている。
なお、使用位置となった便座26の上に座ると、座った人は正面壁1202に対面し、便器22の前方とは正面壁1202方向であり、便器22の後方とは背面壁1204方向である。
【0010】
蓋28は、
図2に示すように、使用位置となった便座26を覆う遮蔽位置と、
図3に示すように、便器本体24の後端から起立し便座26を開放する開放位置との間で揺動可能である。
蓋28は、
図10に示すように、遮蔽位置で便器本体24に対向する内面2802と、後縁を除いた内面2802の周囲から起立する側壁2804とを有している。
本実施の形態では、便座26の揺動中心となる支軸30と、蓋28の揺動中心となる支軸30は共通である。
【0011】
さらに、化粧室1002を汚さずに化粧室1002内で足を含む身体の箇所を楽に洗うことができるように、
図2〜
図7に示すように、化粧室1002に水切り板32、水栓34、水栓保持部36、係脱機構38(
図9)、水栓用収納具40、水栓用係止具42、水制御部44(
図17)が設けられている。
水切り板32は合成樹脂製で、
図2、
図3、
図10に示すように、側壁2804の内側で蓋28の内面2802に収納された状態で、支軸30を中心に蓋28と共に遮蔽位置と開放位置との間で揺動可能で、かつ、
図5〜
図7に示すように、蓋28の開放位置で蓋28と切り離されて使用位置に位置した便座26の上に載置される載置位置となる。
【0012】
図9に示すように、係脱機構38は、蓋28と水切り板32とを係脱可能に結合し、蓋28と水切り板32とを結合した状態で水切り板32が蓋28の内面2802に収納された状態を保持し、蓋28と水切り板32との結合を解除した状態で蓋28と切り離して水切り板32の揺動を可能とするものである。
本実施の形態では、係脱機構38は、
図8、
図9に示すように、水切り板32の前部に常時突出された方向に付勢された剛球3802と、蓋28の側壁2804に設けられ剛球3802に係脱可能に結合する凹部3804とで構成されている。
剛球3802が蓋28の側壁2804の凹部3804に係合することで、水切り板32の蓋28の内面2802への収納状態が形成され、水切り板32の収納状態では、水切り板32は、蓋28と共に揺動する。
また、蓋28から水切り板32を引き出すことで、剛球3802が凹部3804から外れ、水切り板32は蓋28と切り離されて単独で揺動可能となり、
図5に示すように、使用位置となった便座26の上に載置される載置位置と、
図3に示すように、開放位置となった蓋28の内面2802に収納される開放位置との間で揺動可能である。
なお、載置位置から水切り板32を起立させると、剛球3802が蓋28の側壁2804の内面により押し付けられて沈み込み、凹部3804が剛球3802上に位置すると、剛球3802は突出して凹部3804に係合し、水切り板32の蓋28の内面2802への収納状態が形成される。
このような係脱機構38の構成は、実施の形態の構造に限定されず、従来公知の様々な構造が採用可能である。
【0013】
図8、
図10、
図11に示すように、水切り板32は、使用位置に位置した便座26の上に載置され便座26を覆う載置部46と、載置部46が便座26の上に載置された状態で、足を載せることが可能で水栓34から吐出される水を便器本体24の内側に導く排水部48を有している。
載置部46と排水部48とは一体成形され、排水部48の外周部は載置部46で保持されている。
載置部46は、便座26の上に載置され便座26を覆う載置部本体4602と、載置部本体4602の周囲全周から起立する起立壁4604とを含んで構成されている。
排水部48は、載置部46が便座26の上に載置された状態で載置部46の内側に離れるにつれて低くなる傾斜面4802と、載置部46の内側中央に対応する傾斜面4802の箇所に形成された排水口4804とを有している。
なお、
図14〜
図16に示すように、排水部48を、載置部46の内側に張られ載置部46が便座26の上に載置された状態で足を載せることが可能で、水栓34から吐出される水を便器本体24の内側に導く網状の部材49で構成するようにしてもよく、水切り板32の構成は実施の形態の構造に限定されず、様々な構造が採用可能であるが、
図8、
図14に示すような構成とすると水切り板32の構造の簡単化を図る上で有利となる。
【0014】
水栓34は、化粧室1002内で移動可能に設けられている。
本実施の形態では、
図7に示すように、水栓34は、水が供給される可撓可能なホース50の端部に設けられ、開閉弁52(
図17)が内蔵されている。
図1、
図7に示すように、水栓用収納具40は、便器22の側方で背面壁1204の下部に設けられ、繰り出し可能にホース50を収納し、ホース50が収納された状態で水栓34を係脱可能に保持する。
なお、水栓34として手洗い用水栓1604を使用することも可能である。この場合には、手洗い用水栓1604にホース50を連結しておき、手洗い用水栓1604で足を含む身体の箇所を洗う場合に、手洗い用水栓1604を洗面台16から引き出せるようにしておけばよい。
【0015】
図7に示すように、水栓保持部36は、水栓34を係脱可能に保持し蓋28の開放位置で水栓34から吐出される水を便器本体24の内側に向けるものである。
本実施の形態では、水栓保持部36は、蓋28と、蓋28の内面2802に設けられ水栓34を係脱可能に保持する水栓用係止具42とを含んで構成されている。
水栓用係止具42は、蓋28の内面2802で支軸30と反対の箇所である蓋28の先部に設けられている。
水栓用係止具42は、
図5、
図13(A)に示すように蓋28の内面2802に重ねられた収納位置と、
図6、
図7、
図13(B)に示すように蓋28の内面2802から起立した使用位置との間で揺動可能に設けられている。
詳細に説明すると、
図12(A)、(B)に示すように、水栓用係止具42は二股状の係止部4202を有する係止具本体4204を有し、
図13(A)、(B)に示すように、係止具本体4204の基部の軸受孔4205は、蓋28の内面2802でヒンジ43の支軸4302を介して揺動可能に結合され、ヒンジ43に組み込まれた不図示のスプリングにより突出する方向に付勢された不図示の剛球が、基部の凹部4206(
図12(B))に係合することで、水栓用係止具42の収納位置と使用位置とが位置決めされ、水栓用係止具42は、収納位置と使用位置との間で揺動可能に設けられている。
図7に示すように、水栓用係止具42は、使用位置で水栓34を係脱可能に保持し、水栓34からの水を、便器本体24の内側に向けて吐出させる。
なお、水栓用係止具42は、蓋28の内面2802に水切り板32が収納された状態で、水切り板32の載置部46の内側で排水部48に対向する箇所に位置している。
【0016】
水制御部44は、水栓34からの水の吐出と吐出停止を行なうものである。
水制御部44は、例えば、
図17に示すように、水栓34に設けられ水切り板32の上に足の有無を検出する赤外線センサ54と、水栓34内蔵の開閉弁52を開閉させるアクチュエータ56と、赤外線センサ54の検出信号に基づいてアクチュエータ56を制御して開閉弁52を所定時間開とする制御部58とを含んで構成してもよい。
あるいは、化粧室1002の壁面に設けられたスイッチと、スイッチの操作信号に基づいてアクチュエータ56を制御して開閉弁52を所定時間開とする制御部58を含んで構成してもよい。
あるいは、水栓34に設けられた押ボタンスイッチと、押ボタンスイッチの操作信号に基づいてアクチュエータ56を制御して開閉弁52を所定時間開とする制御部58を含んで構成してもよく、従来公知の様々な構成が採用可能である。
なお、手洗い用水栓1604を、足を含む身体を洗う水栓として使用する場合には、手洗い用水栓1604に設けられたつまみの操作で水の吐出と吐出停止を行ない、水制御部44はこのつまみを含んで構成されることになる。
【0017】
次に、乗り物用化粧室ユニット10で足を洗う場合を例にとって説明する。
図5、
図11に示すように、便座26を使用位置とし、蓋28を開放位置とし、係脱機構38による蓋28と水切り板32との結合状態を解除し、蓋28を開放位置に留めて水切り板32を載置位置に揺動させる。
次いで、水栓用係止具42を、
図5、
図13(A)に示す収納位置から、
図6、
図13(B)に示すように使用位置に揺動させる。
次いで、
図7に示すように、水栓34を水栓用係止具42に保持させる。
ここで足を水切り板32の上に乗せると、水制御部44により水栓34から水が所定の時間吐出され、水切り板32上で足を洗うことができ、水は排水口4804から便器本体24の内側に排出される。
足を洗ったならば、載置部本体4602および水切り板32の上面の水を拭き取り、
図3に示すように水切り板32を載置位置から蓋28の開放位置に揺動し、あるいは、
図2に示すように蓋28を閉塞位置に揺動させる。
それらの揺動により係脱機構38を介して水切り板32と蓋28とが結合する。
したがって、以後、足を洗わない便器利用者は、蓋28の開閉により水切り板32は蓋28と共に揺動するので、水切り板32が便座26上に出現して邪魔になることがなく、通常の化粧室ユニット10と同様な使用が可能となる。
【0018】
したがって、本実施の形態によれば、足を洗う場合、便座26は載置部本体4602で覆われ、載置部本体4602の周囲全周から起立壁4604が起立しており、また、洗うべき足は膝の高さに位置し、しかも水切り板32の排水部48の上に載せることができるので、便座26や便器本体24を濡らさずに、また、化粧室ユニット10の床1212を濡らさずに足を簡単に洗うことができる。
なお、手、口、鼻、顔、腕、髪の毛、耳は手洗い器1602で洗ってもよいが、同様に、手、口、鼻、顔、腕、髪の毛、耳も水切り板32の上で、便座26や便器本体24を濡らさずに、また、化粧室ユニット10の床1212を濡らさずに簡単に洗うことができる。
したがって、便器22を利用して足を含む身体の箇所を簡単に洗うことができ、また、化粧室ユニット10で足を含む身体の箇所を洗った場合であっても、床1212が濡れないため、清掃作業を要せずに他の便器利用者は何ら支障なく化粧室1002を使用することができる。
また、ウドゥ専用の洗い場を設ける必要がなくなるため、大型化することなく、足を含む身体の箇所を洗うことができる化粧室ユニット10が得られる。
【0019】
また、水切り板32は蓋28の内面2802に収納されるため、水切り板32の使用時の操作を簡単に行なう上で有利となり、また、座席を増やす観点から狭くなりがちな化粧室ユニット10の空間を狭めることなく水切り板32を配置する上で有利となる。
また、水栓34の使用時、蓋28の内面2802に水栓用係止具42を設け、蓋28を利用して水栓34を保持するようにしたので、何ら場所を取ることなく水栓34を保持できる。例えば、化粧室1002の壁面に重ね合わされる収納状態と、便器22の上方に位置する使用位置との間で水平面内で旋回可能なあるいは鉛直面内で揺動可能なハンガーを設け、このハンガーの先部で水栓34を保持するようにしてもよい。しかしながら、実施の形態のように、便器22の蓋28を利用して水栓34を保持すると、水栓34を保持するための部材を何ら設けることなく水栓34を保持でき、したがって、化粧室1002内のスペースを狭めることなく水栓34を使用位置で保持する上で有利となる。
また、水栓34は背面壁1204の下部から引き出し可能に設けられ、水栓34の不使用時、水栓34は背面壁1204の下部に位置しているため邪魔にならず、便器利用者が、化粧室1002を何ら支障なく使用する上で有利となる。
また、本実施の形態では、係脱機構38を設けたので、足を含む身体の箇所を洗わない他の便器利用者は、蓋28の開閉操作により通常の便器22と同様な使い勝手となり、水切り板32が便座26上に出現することがないので、化粧室1002を何ら支障なく使用する上で有利となる。
【0020】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について
図18〜
図20を参照して説明する。
第2の実施の形態は、特に足洗いがより簡単になされるようにしたものであり、第1の実施の形態に、腰掛け板60を加えたものである。
すなわち、腰掛け板60は、
図19、
図20に示すように、便器22の前方で水平方向に延在し便器22に向かって腰掛けることが可能な使用位置と、
図18に示すように、化粧室1002の壁部に重ね合わされる収納位置との間で揺動可能に設けられている。
より詳細に説明すると、腰掛け板60は、腰掛け板本体62と脚部64とを含んで構成されている。
腰掛け板本体62は、細長を呈しその長手方向の一端が手洗い器1602と反対側の壁部である側壁1208にヒンジ63を介して揺動可能に結合され、水平方向に延在した状態で上方を向いた表面6202とその反対に位置する裏面6204とを有している。
脚部64は、腰掛け板本体62の裏面6204で長手方向の他端に支軸6206を介して揺動可能に設けられている。
図18に示すように、腰掛け板60の不使用時、脚部64は腰掛け板本体62の裏面6204の凹部6210に収納され、
図19、
図20に示すように、腰掛け板60の使用時、腰掛け板本体62が水平方向に延在した状態で長手方向の他端から下方に延在して化粧室1002の床1212に当接し、腰掛け板本体62の水平状態を保持する。
第2の実施の形態によれば、腰掛け板60に腰掛けた状態で足を洗うことができるので、第1の実施の形態の効果に加え、楽な姿勢で足をより簡単に洗う上で有利となる。
なお、折り畳み式の椅子などを化粧室1002内に用意しておいてもよいが、実施の形態のような腰掛け板60を設けておくと、化粧室1002内に折り畳み式の椅子を容易しておく必要がなく、化粧室1002内のスペースを広く確保する上で有利となる。
【0021】
なお、上記の実施の形態では、水栓34は、水栓用収納具40を介して便器22の側方で背面壁1204の下部に設けられている場合について説明したが、非使用時の水栓34の位置は、左右の側壁1206、1208の箇所や床(底壁)1212の箇所など種々考えられ、器22の側方で背面壁1204の下部に限定されない。
また、水栓34には従来公知のさまざまなタイプの構造が採用可能であり、さらに、水制御部44による水栓34からの水の吐出と吐出停止の制御にも従来公知の様々な制御が採用可能である。
また、本実施の形態では乗り物用化粧室ユニットが航空機用化粧室ユニットである場合について説明したが、本発明の乗り物用化粧室ユニットは、船舶、バスやキャンピングカーなどの自動車、新幹線などの列車など航空機以外の様々な乗り物の化粧室ユニットに広く適用される。