特許第6841288号(P6841288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841288
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20210301BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-6719(P2019-6719)
(22)【出願日】2019年1月18日
(65)【公開番号】特開2020-115729(P2020-115729A)
(43)【公開日】2020年7月30日
【審査請求日】2019年2月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100208524
【弁理士】
【氏名又は名称】小曳 満昭
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智史
(72)【発明者】
【氏名】葛島 光則
(72)【発明者】
【氏名】東川 康児
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 善康
(72)【発明者】
【氏名】森本 進也
【審査官】 土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−143244(JP,A)
【文献】 特開2009−050059(JP,A)
【文献】 特開平08−098546(JP,A)
【文献】 特開2010−011636(JP,A)
【文献】 特開2015−142462(JP,A)
【文献】 特開平10−062470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
H02P 21/00−25/03
H02P 25/04
H02P 25/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流母線の電力を複数相の交流電力に変換して負荷に供給する電力変換回路と、
前記直流母線直流電源との間に介在する電源スイッチがオフ状態からオン状態に切り替わった後、前記オン状態に保たれることより前記直流母線の電圧上昇が生じる期間中に、前記複数相の少なくとも1相と、残りの相とを前記直流母線の互いに異なる極にそれぞれ接続したテスト状態を一時的に保つように前記電力変換回路を制御するテスト制御部と、
前記テスト状態において電流が流れない相が存在する状態が所定条件を満たすまで継続した場合に欠相を検出する欠相検出部と、を備え、
前記所定条件は、前記欠相がある場合には記電圧上昇が完了する前に満たされるように設定されている電力変換装置。
【請求項2】
前記欠相検出部は、電流が流れない相が存在する状態で前記直流母線の電圧が所定の電圧閾値に達することを前記所定条件として前記欠相を検出する、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記欠相検出部は、電流が流れない相が存在する状態で所定の判定時間が経過することを前記所定条件として前記欠相を検出する、請求項1又は2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記欠相検出部は、電流が流れない相が存在する状態で他の相の電流が所定の電流閾値に達することを前記所定条件として前記欠相を検出する、請求項1〜3のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記所定条件は、前記欠相がある場合には前記直流母線の電圧が60ボルトに到達する前に満たされるように設定されている、請求項1〜4のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換回路は、前記直流母線の電力を3相の前記交流電力に変換し、
前記欠相検出部は、前記3相のうちいずれか2相の検出対象相の電流検出値に基づいて前記電力変換回路と前記負荷との間の欠相を検出し、
前記テスト制御部は、前記直流母線が前記直流電源に接続されるのに伴う前記直流母線の電圧上昇期間中に、前記3相のうち前記2相の検出対象相と他の1相とを前記直流母線の互いに異なる極にそれぞれ接続した状態を一時的に保つように前記電力変換回路を制御する、請求項1〜5のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記直流母線の電圧上昇に基づいて、前記電源スイッチが前記オフ状態から前記オン状態に切り替わったことを検知する電源オン検知部を更に備え、
前記テスト制御部及び前記欠相検出部は、前記電源スイッチが前記オフ状態から前記オン状態に切り替わったことを前記電源オン検知部が検知するのに応じて前記欠相を検出するための処理を開始する、請求項1〜6のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項8】
直流母線の電力を複数相の交流電力に変換して負荷に供給する電力変換回路の前記直流母線と直流電源との間に介在する電源スイッチがオフ状態からオン状態に切り替わった後、前記オン状態に保たれることより前記直流母線の電圧上昇が生じる期間中に、前記複数相の少なくとも1相と、残りの相とを前記直流母線の互いに異なる極にそれぞれ接続したテスト状態を一時的に保つように前記電力変換回路を制御することと、
前記テスト状態において電流が流れない相が存在する状態が所定条件を満たすまで継続した場合に欠相を検出することと、を含み、
前記所定条件は、前記欠相がある場合には記電圧上昇が完了する前に満たされるように設定されている、電力変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置及び電力変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータのコイルにおける異常を検出する際に用いるd軸電流値及びq軸電流値と、モータの電気角とに基づいてモータの各コイルに通電をする通電部と、通電部がモータに通電した際に各コイルに流れる電流に基づいて、いずれかのコイルに異常が生じているか否かを判定する欠相判定部と、を備えるモータ制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−121144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、欠相の早期検出に有効な電力変換装置及び電力変換方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、直流母線の電力を複数相の交流電力に変換して負荷に供給する電力変換回路と、直流母線が直流電源に接続されるのに伴う直流母線の電圧上昇期間中に、複数相の少なくとも1相と、残りの相とを直流母線の互いに異なる極にそれぞれ接続した状態を一時的に保つように電力変換回路を制御するテスト制御部と、上記状態における負荷への出力電流に基づいて欠相を検出する欠相検出部と、を備える。
【0006】
本開示の他の側面に係る電力変換方法は、直流母線の電力を複数相の交流電力に変換して負荷に供給する電力変換回路の直流母線が直流電源に接続されるのに伴う直流母線の電圧上昇期間中に、複数相の少なくとも1相と、残りの相とを直流母線の互いに異なる極にそれぞれ接続した状態を一時的に保つように電力変換回路を制御することと、上記状態における負荷への出力電流に基づいて欠相を検出することと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、欠相の早期検出に有効な電力変換装置及び電力変換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電力変換装置の概略構成を例示する模式図である。
図2】制御回路のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図3】電力変換手順を例示するフローチャートである。
図4】欠相検査手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
〔電力変換装置〕
図1に示す電力変換装置1は、直流電源PSと負荷LDとの間で電力変換を行う装置である。電力変換とは、電力形態の変換を意味する。電力形態は、ライン数、直流であるか交流であるか、電圧(電圧振幅)、電流(電流振幅)、周波数等を含み得る。
【0011】
負荷LDは、例えば回転型の電動機(例えば車両用のモータ)である。車両用のモータの具体例としては、電気自動車又はプラグインハイブリッド車のモータ等が挙げられる。負荷LDが車両用のモータである場合、電力変換装置1は、負荷LDと共に車両に搭載される。
【0012】
直流電源PSは、所定の電圧の直流電力を電力変換装置1に供給する。所定の電圧は、例えば100〜700ボルトであり、200〜600ボルトであってもよく、300〜500ボルトであってもよい。
【0013】
電力変換装置1は、電力変換回路10と、電力変換回路10を制御する制御回路100とを備える。電力変換回路10は、所謂インバータ回路であり、直流母線の電力を複数相(例えば3相)の交流電力に変換して負荷LDに供給する。例えば電力変換回路10は、直流母線12と、コンデンサ16と、出力線13と、スイッチング回路11と、入力端子14P,14Nと、出力端子15U,15V,15Wと、電流センサ21U,21V,21Wと、電圧センサ22とを有する。
【0014】
直流母線12は、直流電源PSからの直流電力を導くバスである。例えば直流母線12は、正極のライン12P及び負極のライン12Nを含む。コンデンサ16は、ライン12P,12Nの間に接続されており、直流母線12の電圧(ライン12P,12Nの間の電圧)を平滑化する。なお、直流電源PSは、複数段階の電圧で直流電力を出力可能なマルチレベル電源であってもよい。この場合、直流母線12は、負極のラインと、複数段階の電圧にそれぞれ対応する複数の正極のラインとを含む3以上のラインを含んでいてもよい。
【0015】
出力線13は、負荷LDへの出力用の交流電力を導くバスである。例えば出力線13は、3相の交流電力のU相、V相及びW相をそれぞれ導くライン13U,13V,13Wを含む。
【0016】
スイッチング回路11は、直流母線12の直流電力と、出力線13の交流電力との電力変換を行う。例えばスイッチング回路11は、複数のスイッチング素子を含み、各スイッチング素子のオン・オフを切り替えることによって、直流母線12と出力線13との接続状態を変更する。スイッチング素子は、例えばパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であり、制御回路100からのパルス信号に応じてオン・オフを切り替える。
【0017】
入力端子14P,14Nは、例えば端子台等に設けられており、直流母線12のライン12P,12Nにそれぞれ導通している。入力端子14P,14Nには、電源スイッチSWを介して直流電源PSのケーブルが接続される。電源スイッチSWは、例えば高圧リレーであり、直流電源PSと直流母線12とが接続されたオン状態と、直流電源PSと直流母線12とが切り離されたオフ状態とを電気信号に従って切り替える。
【0018】
入力端子14P,14Nと直流母線12のライン12P,12Nとの間には不図示の突入電流防止回路(突入電流抑制回路)が設けられていてもよい。突充電流防止回路は、直流電源PSがコンデンサ16を充電する際にライン12P,12Nに流れる充電電流のピーク値を制限し、電源スイッチSW等を保護するために設けられる。突入電流防止回路は、上記充電電流のピーク値が許容レベルに抑えられる場合は省略可能である。例えば、直流電源PSの出力インピーダンスが大きい場合、直流電源PSが出力電流の制御回路を備えている場合等には突入電流防止回路を省略可能である。
【0019】
出力端子15U,15V,15Wは、例えば端子台等に設けられており、ライン13U,13V,13Wにそれぞれ導通している。出力端子15U,15V,15Wには負荷LDのケーブルが接続される。
【0020】
電流センサ21U,21V,21Wは、ライン13U,13V,13Wの電流をそれぞれ検出する。電圧センサ22は、直流母線12の電圧を検出する。直流電源PSがマルチレベルである場合、電圧センサ22は、負極のラインと、複数の正極のラインのいずれか1ラインとの間の電圧を直流母線12の電圧として検出する。
【0021】
制御回路100は、電源スイッチSWがオン状態となる(すなわち直流母線12が直流電源PSに接続される)のに伴う直流母線12の電圧上昇期間中に、出力線13の少なくとも1相と、残りの相とを直流母線12の互いに異なる極にそれぞれ接続した状態(以下、「テスト状態」という。)を一時的に保つように電力変換回路10を制御することと、テスト状態における負荷LDへの出力電流に基づいて欠相を検出することと、を実行するように構成されている。例えば制御回路100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、電圧情報取得部111と、電流情報取得部112と、時間計測部113と、テスト制御部115と、欠相検出部116とを有する。
【0022】
電圧情報取得部111は、直流母線12の電圧の検出値を電圧センサ22から取得する。電流情報取得部112は、出力線13の電流の検出値を電流センサ21U,21V,21Wから取得する。時間計測部113は、所定周期のクロックパルスのカウント等により経過時間を計測する。テスト制御部115は、直流母線12が直流電源PSに接続されるのに伴う直流母線12の電圧上昇期間中に、上記テスト状態を一時的に保つように電力変換回路10を制御する。
【0023】
テスト状態においては、少なくとも出力線13の少なくとも1相(ライン13U,13V,13Wの少なくとも1ライン)と、残りの相(残りのライン)とが直流母線12の互いに異なる極にそれぞれ接続されればよく、その他に制約条件はない。例えば、ライン13Uをライン12Pに接続し、ライン13V,13Wをライン12Nに接続してもよく、ライン13Vをライン12Pに接続し、ライン13U,13Wをライン12Nに接続してもよく、ライン13Wをライン12Pに接続し、ライン13U,13Vをライン12Nに接続してもよい。また、ライン13Uをライン12Nに接続し、ライン13V,13Wをライン12Pに接続してもよく、ライン13Vをライン12Nに接続し、ライン13U,13Wをライン12Pに接続してもよく、ライン13Wをライン12Nに接続し、ライン13U,13Vをライン12Pに接続してもよい。
【0024】
欠相検出部116は、テスト状態における負荷LDへの出力電流に基づいて欠相を検出する。欠相とは、電力変換回路10と負荷LDとの間の給電経路の少なくとも一部が途切れた状態を意味する。ここでの給電経路は、電力変換回路10内の経路、及び負荷LD内の経路も含む。欠相の要因の具体例としては、スイッチング回路11の一部分の故障、ケーブルの未接続、ケーブルの断線、及び負荷LD内部の巻線の断線等が挙げられる。
【0025】
例えば欠相検出部116は、テスト状態において電流が流れない相が存在するか否かに基づいて上記欠相を検出する。上記欠相が無い場合、テスト状態においては全相に電流が流れる。これに対し、いずれか1相に欠相が生じると、必ず電流の流れない相が生じる。例えば、テスト状態において、ライン13Uがライン12Pに接続され、ライン13V,13Wがライン12Nに接続される場合、U相に欠相が生じるといずれの相にも電流が流れない。V相に欠相が生じると、U相及びW相には同じ電流(方向は異なる)が流れるが、V相には電流が流れない。W相に欠相が生じると、U相及びV相には同じ電流(方向は異なる)が流れるが、W相には電流が流れない。また、2相以上に欠相が生じると、いずれの相にも電流が流れない。そこで欠相検出部116は、テスト状態において電流が流れない相が存在するか否かを確認し、いずれの相にも電流が流れる場合には上記欠相が無いことを検出し、電流が流れない相が存在する場合には上記欠相を検出する。
【0026】
各相に電流が流れているか否かは、電流情報取得部112が電流センサ21U,21V,21Wから取得する検出値に基づいて判定可能である。例えば、欠相検出部116は、電流センサ21U,21V,21Wによる検出値が所定の下限値未満である場合に、電流が流れていないと判定してもよい。下限値は、電流が流れていないのと同一視し得る程度に小さい値であればよい。例えば下限値は、電流センサ21U,21V,21Wの分解能に所定の倍率を乗じた値等に設定される。
【0027】
欠相検出部116は、テスト状態において電流が流れない相が存在する状態が所定条件を満たすまで継続した場合に上記欠相を検出してもよい。例えば欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態で直流母線12の電圧が所定の電圧閾値に達すること(以下、「第1条件」という。)を上記所定条件として上記欠相を検出してもよい。換言すると、欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態で直流母線12の電圧が上記電圧閾値に達した場合に上記欠相を検出してもよい。
【0028】
欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態で所定の判定時間が経過すること(以下、「第2条件」という。)を上記所定条件として上記欠相を検出してもよい。換言すると、欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態で所定の判定時間が経過した場合に上記欠相を検出してもよい。
【0029】
欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態で他の相の電流が所定の電流閾値に達すること(以下、「第3条件」という。)を上記所定条件として上記欠相を検出してもよい。換言すると、欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態で他の相の電流が所定の電流閾値に達した場合に上記欠相を検出してもよい。電流閾値は、直流母線12の電圧が60ボルトである場合に流れ得る電流値よりも小さく、且つ上記下限値以上の値に設定されていてもよい。
【0030】
欠相検出部116は、上記第1条件、第2条件及び第3条件の二つ以上を上記所定条件とし、当該二つ以上の条件のいずれかが満たされた場合に上記欠相を検出してもよい。例えば欠相検出部116は、上記第1条件、第2条件及び第3条件の全てを上記所定条件とし、電流が流れない相が存在する状態で第1条件、第2条件及び第3条件のいずれか一つが満たされた場合に上記欠相を検出してもよい。
【0031】
上記所定条件は、直流母線12の電圧が60ボルトに到達する前に欠相を検出し得るように設定されていてもよい。例えば、上記電圧閾値は、直流母線12の電圧が60ボルトに到達する前に上記欠相が検出され得るように設定されていてもよい。例えば電圧閾値は、60ボルト未満に設定されていてもよい。また、上記判定時間は、直流母線12の電圧の上昇開始から60ボルトに到達するまでの時間よりも短い値に設定されていてもよい。
【0032】
欠相検出部116は、3相のうちいずれか2相の検出対象相の電流検出値に基づいて欠相を検出するように構成されていてもよい。この場合、テスト制御部115は、テスト状態において、上記2相の検出対象相と他の1相とを直流母線12の互いに異なる極にそれぞれ接続する必要がある。このような構成によれば、上記他の相の電流センサを省略可能である。
【0033】
例えば欠相検出部116が、電流センサ21U,21Wの電流検出値に基づいて欠相を検出するように構成されている場合、テスト制御部115は、テスト状態において、ライン13U,13Wをライン12Pに接続してライン13Vをライン12Nに接続するか、ライン13U,13Wをライン12Nに接続してライン13Vをライン12Pに接続する必要がある。一例として、テスト制御部115がライン13U,13Wをライン12Pに接続してライン13Vをライン12Nに接続する場合、欠相が生じていない場合にはライン13U,13Wのいずれにも電流が流れる。U相に欠相が生じると、ライン13Wには電流が流れるがライン13Uには電流が流れない。V相に欠相が生じると、ライン13U,13Wのいずれにも電流が流れない。W相に欠相が生じると、ライン13Uには電流が流れるがライン13Wには電流が流れない。また、2相以上に欠相が生じると、ライン13U,13Wのいずれにも電流が流れない。このように、欠相が生じていない場合にはライン13U,13Wのいずれにも電流が流れるのに対し、少なくとも1相に欠相が生じるとライン13U,13Wの少なくとも一方には電流が流れない。このため、電流センサ21U,21Wの電流検出値に基づいて上記欠相を検出することができる。
【0034】
制御回路100は、電源スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替わったことを検知することを更に実行し、電源スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替わるのに応じて上記欠相を検出するための処理を開始するように構成されていてもよい。例えば制御回路100は、電源オン検知部114を更に有する。電源オン検知部114は、直流母線12の電圧上昇に基づいて、電源スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替わったこと(すなわち直流母線12が直流電源PSに接続されたこと)を検知する。例えば電源オン検知部114は、電圧センサ22による電圧の検出値が上昇し、所定の閾値(以下、「オン検出閾値」という。)を超えるのに応じて、直流母線12が直流電源PSに接続されたことを検知する。
【0035】
電源スイッチSWがオン状態となったことの検知手法は、電圧上昇に基づく手法に限られない。例えば電源オン検知部114は、電源スイッチSWをオフ状態からオン状態に切り替えるための電気信号に基づいて、電源スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替わったことを検知してもよい。テスト制御部115及び欠相検出部116は、電源スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替わったことを電源オン検知部114が検知するのに応じて上記欠相を検出するための処理を開始する。例えばテスト制御部115は、電源スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替わったことを電源オン検知部114が検知したタイミングで上記テスト状態を開始させるように電力変換回路10を制御し、欠相検出部116は、テスト状態の開始に応じて上記欠相を検出するための処理を開始する。
【0036】
なお、制御回路100は、電源スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替わるタイミングの情報に基づいて、当該タイミングに先立って、上記欠相を検出するための処理を開始するように構成されていてもよい。当該タイミングの情報は、例えばより上位のコントローラ等から取得可能である。
【0037】
制御回路100は、欠相を検出しなかった場合に、直流電源PSの電力を交流電力に変換して負荷LDに供給するように電力変換回路10を制御することと、欠相を検出した場合に、電力変換回路10から負荷LDへの電力の供給を禁止することとを更に実行するように構成されていてもよい。更に制御回路100は、電力変換回路10と負荷LDとの欠相を検出した場合に、これをユーザに報知するように構成されていてもよい。例えば制御回路100は、駆動制御部119と、出力禁止部117と、欠相報知部118とを更に有する。
【0038】
駆動制御部119は、欠相検出部116が上記欠相を検出しなかった場合(すなわち上記欠相が無いことを検出した場合)に、より上位のコントローラからの指令に応じた駆動電力を負荷LDに供給するように電力変換回路10を制御する。例えば駆動制御部119は、直流電源PSの電力を駆動電力に変換して負荷LDに供給するように電力変換回路10を制御する。
【0039】
出力禁止部117は、欠相検出部116が上記欠相を検出した場合に、電力変換回路10から負荷LDへの電力の供給を禁止する。例えば出力禁止部117は、ライン13U,13V,13Wのいずれもライン12P,12Nに接続されない状態を保つように電力変換回路10を制御する。欠相報知部118は、欠相検出部116が上記欠相を検出した場合に、これを液晶モニタ又は警告ランプ等の表示デバイスによってユーザに報知する。
【0040】
図2は、制御回路100のハードウェア構成を例示するブロック図である。図2に示すように、制御回路100は、回路120を含む。回路120は、一つ又は複数のプロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、表示デバイス124と、入出力ポート125と、タイマ126とを含む。ストレージ123は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ123は、電源スイッチSWがオン状態となる(すなわち直流母線12が直流電源PSに接続される)のに伴う直流母線12の電圧上昇期間中に、出力線13の少なくとも1相と、残りの相とを直流母線12の互いに異なる極にそれぞれ接続した状態(以下、「テスト状態」という。)を一時的に保つように電力変換回路10を制御することと、テスト状態における負荷LDへの出力電流に基づいて欠相を検出することと、を制御回路100に実行させるプログラムを記憶している。例えばストレージ123は、制御回路100により上述の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。メモリ122は、ストレージ123の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ121による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ121は、メモリ122と協働して上記プログラムを実行することで、制御回路100の各機能モジュールを構成する。表示デバイス124は、例えば液晶モニタ及び警告ランプ等を含み、ユーザに対する情報表示に用いられる。入出力ポート125は、プロセッサ121からの指令に従って、電力変換回路10、電流センサ21U,21V,21W及び電圧センサ22との間で電気信号の入出力を行う。タイマ126は、プロセッサ121からの指令により所定周期のクロックパルスをカウントして経過時間を計測する。
【0041】
制御回路100は、必ずしもプログラムにより各機能を構成するものに限られない。例えば制御回路100は、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により少なくとも一部の機能を構成してもよい。
【0042】
〔電力変換方法〕
続いて、電力変換方法の一例として、電力変換装置1が実行する電力変換手順のうち、上位コントローラからの指令等に応じた制御が開始されるまでの手順(以下、これを「起動手順」という。)を例示する。起動手順は、直流母線12が直流電源に接続されるのに伴う直流母線12の電圧上昇期間中に、上記テスト状態を一時的に保つように電力変換回路10を制御することと、テスト状態における負荷LDへの出力電流に基づいて欠相を検出することと、を含む。
【0043】
例えば図3に示すように、制御回路100は、ステップS01,S02を実行する。ステップS01では、電圧情報取得部111が、直流母線12の電圧の検出値を電圧センサ22から取得する。ステップS02では、電源オン検知部114が、電圧センサ22による電圧の検出値が上記オン検出閾値を超えたか否かを確認する。ステップS02において電圧の検出値がオン検出閾値を超えていないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS01に戻す。以後、制御回路100は直流母線12の電圧の検出値の取得と確認を繰り返す。
【0044】
ステップS02において電圧の検出値がオン検出閾値を超えていると判定した場合、制御回路100はステップS03,S04を実行する。ステップS03は、欠相の有無を検査することを含む。ステップS03の具体的内容については別途詳述する。ステップS04では、駆動制御部119が、ステップS03において、欠相はないと判定されたかを確認する。
【0045】
ステップS04において欠相はないと判定した場合、制御回路100はステップS05を実行する。ステップS05では、駆動制御部119が、上位のコントローラからの指令に応じた駆動電力を負荷LDに供給するための制御(以下、「駆動制御」という。)を開始する。駆動制御は、上位のコントローラからの指令に応じた駆動電力を負荷LDに供給するように電力変換回路10を制御することと、上記指令がない場合には駆動電力を負荷LDに供給しないように電力変換回路10を制御することとを含む。
【0046】
ステップS04において欠相があると判定した場合、すなわち欠相検出部116が上記欠相を検出した場合、制御回路100はステップS11,S12を実行する。ステップS11では、出力禁止部117が、電力変換回路10から負荷LDへの電力の供給を禁止する。ステップS12では、欠相検出部116が検出した欠相を欠相報知部118がユーザに報知する。以上で起動手順が完了する。
【0047】
図4は、ステップS03の欠相検査手順を詳細に例示するフローチャートである。図4に示すように、制御回路100は、ステップS21,S22,S23,S24,S25を実行する。ステップS21では、時間計測部113が、クロックパルスのカウント等による経過時間の計測を開始する。ステップS22では、テスト制御部115が、上記テスト状態を開始させるように電力変換回路10を制御する。ステップS23では、電流情報取得部112が、ライン13U,13V,13Wの電流の検出値を電流センサ21U,21V,21Wからそれぞれ取得する。ステップS24では、電圧情報取得部111が、直流母線12の電圧の検出値を電圧センサ22から取得する。ステップS25では、欠相検出部116が、ライン13U,13V,13Wの全ての電流の検出値が上記下限値を上回っているか否かを確認する。
【0048】
ステップS25においてライン13U,13V,13Wの全ての電流の検出値が下限値を上回っていると判定した場合、制御回路100はステップS26を実行する。ステップS26では、欠相検出部116が、電力変換回路10と負荷LDとの間に欠相はないと判定する。
【0049】
ステップS25においてライン13U,13V,13Wのいずれかの電流の検出値が下限値を上回っていないと判定した場合、制御回路100はステップS27を実行する。ステップS27では、欠相検出部116が、ライン13U,13V,13Wのいずれかの電流が上記電流閾値以下であるか(すなわち上記第3条件が満たされていないか)を確認する。
【0050】
ステップS27においてライン13U,13V,13Wのいずれかの電流が上記電流閾値以下であると判定した場合、制御回路100はステップS28を実行する。ステップS28では、欠相検出部116が、直流母線12の電圧が上記電圧閾値以下であるか(すなわち上記第1条件が満たされていないか)を確認する。
【0051】
ステップS28において直流母線12の電圧が電圧閾値以下であると判定した場合、制御回路100はステップS29を実行する。ステップS29では、時間計測部113により計測された経過時間が上記判定時間に達したか(すなわち上記第2条件が満たされたか)を欠相検出部116が確認する。
【0052】
ステップS29において経過時間が判定時間に達したと判定した場合、制御回路100はステップS31を実行する。ステップS27においてライン13U,13V,13Wの全ての電流の検出値が電流閾値を上回っていると判定した場合、及びステップS28において直流母線12の電圧が電圧閾値を上回っていると判定した場合、制御回路100はステップS29を省略してステップS31を実行する。ステップS31では、欠相検出部116が、電力変換回路10と負荷LDとの間に欠相があると判定する。
【0053】
ステップS29において経過時間が判定時間に達していないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS23に戻す。以後、ライン13U,13V,13Wの全てに電流が流れるか、上記第1条件、第2条件及び第3条件のいずれかが満たされるまでは、ライン13U,13V,13Wの電流の検出値、直流母線12の電圧の検出値及び経過時間に基づく欠相有無の確認が繰り返される。
【0054】
ステップS26,S31の後、制御回路100はステップS32を実行する。ステップS32では、テスト制御部115が、上記テスト状態を終了させるように電力変換回路10を制御する。以上で欠相検査手順が完了する。なお、図4においては、ライン13U,13V,13Wの電流の検出値、直流母線12の電圧の検出値及び経過時間の全てに基づく欠相検査手順を例示したが、これら全てに基づくことは必須ではない。例えば、経過時間の確認を省略し、ライン13U,13V,13Wの電流の検出値及び直流母線12の電圧の検出値に基づいて欠相有無を確認してもよい。また、直流母線12の電圧の確認を省略し、ライン13U,13V,13Wの電流の検出値及び経過時間に基づいて欠相有無を確認してもよい。
【0055】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、電力変換装置1は、直流母線12の電力を複数相の交流電力に変換して負荷に供給する電力変換回路10と、直流母線12が直流電源PSに接続されるのに伴う直流母線12の電圧上昇期間中に、複数相の少なくとも1相と、残りの相とを直流母線12の互いに異なる極にそれぞれ接続した状態を一時的に保つように電力変換回路10を制御するテスト制御部115と、上記状態における負荷LDへの出力電流に基づいて欠相を検出する欠相検出部116と、を備える。
【0056】
この電力変換装置1によれば、直流母線12が直流電源PSに接続された後の電圧上昇期間中に欠相検出が行われる。直流母線12間の電圧が最大となった状態に比較して、電圧上昇期間中においては負荷LDを大きく動かすことなく相間に電圧を印加することが可能である。このため、電気角によらず全相に電流が流れるようにテスト状態を一時的に保ち、これに応じた出力電流に基づいて迅速に欠相を検出することができる。従って、欠相の早期検出に有効である。
【0057】
欠相検出部116は、電流が流れない相が存在するか否かに基づいて欠相を検出してもよい。この場合、単純な論理でより迅速に欠相を検出することができる。
【0058】
欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態が所定条件を満たすまで継続した場合に欠相を検出してもよい。この場合、電流が流れない相が存在する状態が所定条件を満たすまで継続することを欠相の検出基準とすることで、欠相検出の迅速性と、欠相検出の信頼性との両立を図ることができる。
【0059】
欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態で直流母線12の電圧が所定の電圧閾値に達することを所定条件として欠相を検出してもよい。この場合、電流が流れない相が存在する状態で直流母線12間の電圧が所定の電圧閾値に達することを欠相の検出基準とすることで、欠相検出の迅速性と、欠相検出の信頼性との両立を図ることができる。また、複数条件を組み合わせる場合には、欠相検出の迅速性と、欠相検出の信頼性との両立をより確実に図ることができる。
【0060】
欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態で所定の判定時間が経過することを所定条件として欠相を検出してもよい。この場合、電流が流れない相が存在する状態で所定の判定時間が経過することを欠相の検出基準とすることで、欠相検出の迅速性と、欠相検出の信頼性との両立を図ることができる。
【0061】
欠相検出部116は、電流が流れない相が存在する状態で他の相の電流が所定の電流閾値に達することを所定条件として欠相を検出してもよい。この場合、電流が流れない相が存在する状態で他の相の電流が所定の電流閾値に達することを欠相の検出基準とすることで、欠相検出の迅速性と、欠相検出の信頼性との両立を図ることができる。複数条件を組み合わせる場合には、欠相検出の迅速性と、欠相検出の信頼性との両立をより確実に図ることができる。
【0062】
上記所定条件は、直流母線12の電圧が60ボルトに到達する前に欠相を検出し得るように設定されていてもよい。この場合、直流母線12間の電圧がIEC60364−4及びIEC60950等で定められたSELV(Safety Extra Low Voltage)に達する前に欠相を検出することができる。
【0063】
電力変換回路10は、直流母線12の電力を3相の交流電力に変換し、欠相検出部116は、3相のうちいずれか2相の検出対象相の電流検出値に基づいて欠相を検出し、テスト制御部115は、直流母線12が直流電源PSに接続されるのに伴う直流母線12の電圧上昇期間中に、3相のうち2相の検出対象相と他の1相とを直流母線12の互いに異なる極にそれぞれ接続した状態を一時的に保つように電力変換回路10を制御してもよい。この場合、電流検出用のセンサを削減しつつ、上述した欠相検出を実行することができる。
【0064】
電力変換装置1は、直流母線12の電圧上昇に基づいて、直流母線12が直流電源PSに接続されたことを検知する電源オン検知部114を更に備え、テスト制御部115及び欠相検出部116は、直流母線12が直流電源PSに接続されたことを電源オン検知部114が検知するのに応じて欠相を検出するための処理を開始してもよい。この場合、電源オン(直流母線と直流電源との接続)の検出に専用のセンサを設けること、又は電源スイッチSWをオフ状態からオン状態に切り替えるタイミングの情報を上位コントローラ等から取得すること等によらずに上述した欠相検出を実行することができる。
【0065】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…電力変換装置、10…電力変換回路、12…直流母線、114…電源オン検知部、115…テスト制御部、116…欠相検出部、LD…負荷、PS…直流電源。
図1
図2
図3
図4