(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回動軸は、フック状を呈するその先端部分が前記開口部に引っ掛けられることにより、前記開口部に固定されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。X軸、Y軸及びZ軸により規定される直交座標系が図面に示されている場合、Z軸正方向を「上」、Z軸負方向を「下」という場合がある。
【0015】
[電気コネクタの構成]
図1〜
図5を参照して、電気コネクタ1の概要について説明する。電気コネクタ1は、本体100と、カバー部材200とを含む。電気コネクタ1は、
図1〜
図3に示されるように、回路基板2に実装されていてもよい。電気コネクタ1は、信号伝送媒体3(接続対象)が挿抜可能に構成されていてもよい。信号伝送媒体3が電気コネクタ1に取り付けられた状態において、電気コネクタ1を介して信号伝送媒体3と回路基板2との間で電気信号が伝送される。
【0016】
回路基板2は、電子回路を搭載可能に構成されている。回路基板2は、例えば、プリント配線基板、フレキシブルプリント基板などであってもよい。回路基板2は、その主面上に電気コネクタ1をハンダ接続などにより実装している。回路基板2は、例えば
図3に示されるように、開口部4aが設けられた筐体4内に配置されていてもよい。
【0017】
信号伝送媒体3は、
図1〜
図3に示されるように、電気信号を伝送可能に構成されており、平板状を呈している。信号伝送媒体3は、例えば、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブルプリント基板(FPC)などであってもよい。信号伝送媒体3は、絶縁基材3aと、複数の信号線3b(信号伝送部材)とを含む。絶縁基材3aの先端寄りの各側縁にはそれぞれ、一対の切欠部3cが設けられている。複数の信号線3bは、絶縁基材3aの幅方向(Y軸方向)において隣り合い且つ絶縁基材3aの長さ方向(X軸方向)に延びるように、絶縁基材3aの上面に配置されている。
【0018】
[本体の構成]
続いて、
図1〜
図7を参照して、本体100の構成についてより詳しく説明する。本体100は、ハウジング110と、複数のコンタクト120と、シェル130とを含む。
【0019】
ハウジング110は、絶縁性を有する部材であり、直方体形状を呈している。ハウジング110は、例えば樹脂成形により構成されていてもよい。ハウジング110内には、特に
図4に示されるように、信号伝送媒体3を受け入れ可能な収容空間111が設けられている。そのため、ハウジング110の前部には、信号伝送媒体3の差込口112が収容空間111と連通するように設けられている。
【0020】
差込口112は、ハウジング110の底壁部113、天壁部114、後壁部115及び一対の側壁部116によって囲まれた、スリット状を呈する開口である。差込口112は、ハウジング110の幅方向(Y軸方向)に沿って延びている。天壁部114は、差込口112と後壁部115との間を延びている。天壁部114には、外部と収容空間111とを連通するように天壁部114を貫通して延びる一対の貫通孔117が設けられている。
【0021】
複数のコンタクト120は、導電性を有しており、信号伝送媒体3と回路基板2との間で電気信号を伝送する信号伝送線路を構成している。複数のコンタクト120は、例えば、折り曲げ加工によって形成された金属部材であってもよい。複数のコンタクト120は、ハウジング110によって保持されている。
【0022】
複数のコンタクト120は、例えば、ハウジング110に圧入されていてもよいし、ハウジング110と一体成形(インサート成形)されていてもよい。複数のコンタクト120は、ハウジング110の幅方向(Y軸方向)において隣り合うように配置されている。そのため、複数のコンタクト120はそれぞれ、信号伝送媒体3の複数の信号線3bに対応するように並んでいる。
【0023】
特に
図4に示されるように、コンタクト120の先端部121は、ハウジング110の収容空間111内に位置している。収容空間111内に信号伝送媒体3が差し込まれたときに、先端部121は、信号線3bと物理的且つ電気的に接続される。コンタクト120の基端部122は、差込口112とは反対側に位置する後壁部115を貫通して後壁部115の外方まで延びている。電気コネクタ1が回路基板2に搭載された状態において、基端部122は、例えばハンダ付けによって、回路基板2の信号電極(図示せず)と電気的且つ物理的に接続されている。
【0024】
シェル130は、導電性を有しており、コンタクト120から電気コネクタ1の外部への電磁波の漏洩を抑制すると共に、電気コネクタ1の外部からの電磁波によって、コンタクト120が伝送する電気信号にノイズが混入することを抑制するように構成されている。すなわち、シェル130は、ノイズ遮蔽部材として機能する。シェル130は、例えば、折り曲げ加工によって形成された金属部材であってもよい。
【0025】
シェル130は、特に
図4に示されるように、ハウジング110を覆うようにハウジング110に取り付けられている。シェル130は、
図1〜
図7に示されるように、天板131と、底板132と、後板133と、一対の側板134(側壁部)とを含む。
【0026】
天板131は、ハウジング110の天壁部114を覆っている。天板131の前縁部には、
図1、
図2、
図4、
図6及び
図7に示されるように、一対の屈曲部131a(第1の被係止部)と、複数のグランド端子131bと、一対の突出片131c(ストッパ部)と、一対の貫通孔131d(第2の被係止部)が設けられている。
【0027】
一対の屈曲部131aはそれぞれ、特に
図6及び
図7に示されるように、天板131の幅方向(Y軸方向)における両端近傍から屈曲しつつ底板132に向けて延びている。一対の屈曲部131aは、ハウジング110の差込口112と重なり合わない程度に、ハウジング110の前縁部を覆っている。
【0028】
複数のグランド端子131bは、天板131の幅方向(Y軸方向)において隣り合うように、一対の屈曲部131aの間に配置されている。複数のグランド端子131bは、特に
図4に示されるように、差込口112内に至るまでハウジング110の前縁部に沿って屈曲している。収容空間111内に信号伝送媒体3が差し込まれたときに、複数のグランド端子131bは、信号伝送媒体3のグランド伝送路(図示せず)と物理的且つ電気的に接続される。
【0029】
一対の突出片131cは、特に
図1及び
図6に示されるように、例えば天板131の一部が切り曲げ加工された金属片である。一対の突出片131cは、詳しくは後述するが、カバー部材200の回動範囲を制限するストッパとして機能する。例えば、カバー部材200の仰角が所定の大きさとなったときにカバー部材200が一対の突出片131cと当接することにより、一対の突出片131cがカバー部材200の回動を妨げるように構成されていてもよい。
【0030】
一対の突出片131cは、天板131の幅方向(Y軸方向)において並んでいる。一対の突出片131cは、天板131の幅方向(Y軸方向)において天板131の中央部分に位置していてもよい。ここで、「中央部分」とは、天板131の幅をAとしたときに、天板131の幅方向(Y軸方向)において、天板131の一方の側縁(例えば、
図2及び
図7の左端縁)から0.2A〜0.8Aの範囲内であってもよい。
【0031】
一対の突出片131cのうち一方の突出片131cは、天板131の幅方向(Y軸方向)において、天板131の一方の側縁(例えば、
図2及び
図7の左端縁)から0.2A〜0.4Aの範囲内に位置していてもよい。一対の突出片131cのうち他方の突出片131cは、天板131の幅方向(Y軸方向)において、天板131の一方の側縁(例えば、
図2及び
図7の左端縁)から0.6A〜0.8Aの範囲内に位置していてもよい。
【0032】
一対の貫通孔131dは、
図1、
図2、
図6及び
図7に示されるように、天板131の幅方向(Y軸方向)において並んでいる。一対の貫通孔131dはそれぞれ、ハウジング110の天壁部114に設けられている貫通孔117と対応している。そのため、特に
図4に示されるように、一対の貫通孔131dはそれぞれ、対応する貫通孔117と連通している。
【0033】
底板132は、特に
図4に示されるように、本体100の高さ方向(Z軸方向)において、天板131と向かい合うように配置されている。底板132は、一対の連結部135を介して天板131と一体的に接続されている。
【0034】
底板132の主部132aは、特に
図4に示されるように、ハウジング110の底壁部113に沿って延びるように収容空間111内に位置している。収容空間111内に信号伝送媒体3が差し込まれたときに、底板132の主部132aは、信号伝送媒体3のグランド伝送路(図示せず)と物理的且つ電気的に接続される。
【0035】
主部132aの先端縁には、複数の屈曲片132bが設けられている。複数の屈曲片132bは、本体100の奥行き方向(X方向)に沿って外方に向けて突出しつつ、天板131から離れる側に向けて屈曲している。電気コネクタ1が回路基板2に搭載された状態において、複数の屈曲片132bはそれぞれ、例えばハンダ付けによって、回路基板2のグランド電極(図示せず)と電気的且つ物理的に接続されている。
【0036】
後板133は、特に
図4に示されるように、ハウジング110の後壁部115から離れた位置において後壁部115を覆っている。そのため、コンタクト120の基端部122は、後板133と後壁部115との間の空間に位置している。
【0037】
一対の側板134はそれぞれ、
図1〜
図3及び
図5〜
図7に示されるように、ハウジング110の側壁部116を覆っている。一対の側板134は互いに略鏡面対称の関係にあるので、以下では、一方の側板134の構成についてのみ説明し、他方の側板134の説明は省略する。
【0038】
側板134の先端部近傍には、特に
図6に示されるように、内側に向けて窪む凹部134a(状態維持部)が設けられている。凹部134aは、後述する突出部222aを収容可能に構成されている。凹部134aは、例えば、矩形状、円形状、楕円形状などを呈していてもよい。なお、凹部134aに代えて、側板134を貫通する貫通孔が側板134に設けられていてもよい。
【0039】
側板134には、特に
図5及び
図6に示されるように、貫通孔134b(開口部)が設けられている。貫通孔134bは、本体100の高さ方向(Z軸方向)に延びる矩形状を呈していてもよい。貫通孔134bは、本体100の奥行き方向(X軸方向)における側板134の中央部分に位置していてもよいし、本体100の奥行き方向(X軸方向)における側板134の中央よりも差込口112寄りに位置していてもよい。
【0040】
側板134の下端縁には、複数の屈曲片134cが設けられている。複数の屈曲片134cは、本体100の幅方向(Y方向)に沿って外方に向けて突出するように、側板134から屈曲している。
【0041】
側板134の下端縁には、当該下端縁から屈曲して延びる補助板134d(補助壁部)が設けられている。すなわち、補助板134dは、屈曲部134eを介して側板134と一体的に接続されている。補助板134dは、本体100の幅方向(Y軸方向)において側板134と向かい合っている。電気コネクタ1が回路基板2に搭載された状態において、補助板134d及び屈曲部134eは、例えばハンダ付けによって、回路基板2のグランド電極(図示せず)と電気的且つ物理的に接続されていてもよい。そのため、補助板134d及び屈曲部134eは、他の部材である回路基板2に固定される固定部として機能してもよい。
【0042】
補助板134dの側縁には、回動軸134fが設けられている。回動軸134fは、補助板134dの一部が曲げ加工された屈曲片であり、補助板134dから側板134に向けて本体100の幅方向(Y軸方向)に延びている。回動軸134fの先端は、貫通孔134b内に挿通されている。すなわち、回動軸134fの先端は、貫通孔134bと係合している。
【0043】
特に
図5に示されるように、回動軸134fの先端は、ハウジング110に近づくように貫通孔134bを突き抜けていてもよい。そのため、回動軸134fは、貫通孔134bと同様に、本体100の奥行き方向(X軸方向)における側板134の中央部分に位置していてもよいし、本体100の奥行き方向(X軸方向)における側板134の中央部分よりも差込口112寄りに位置していてもよい。
【0044】
回動軸134fは、特に
図5に示されるように、傾斜部134g(側縁部)を含む。傾斜部134gは、回動軸134fの周縁のうち、屈曲部134eとは反対側に向かう部分(天板131側に向かう部分)である。傾斜部134gは、回動軸134fの先端部分に向かうにつれて屈曲部134eに近づくように傾斜している。すなわち、回動軸134fは、先細り形状を呈している。
【0045】
[カバー部材の構成]
続いて、
図1〜
図4、
図8及び
図9を参照して、カバー部材200の構成についてより詳しく説明する。カバー部材200は、主板210と、一対の側板220と、屈曲部230(第1の係止部)と、一対の規制部材240(第2の係止部)と、解除操作部250とを含む。カバー部材200は、例えば、折り曲げ加工によって形成された金属部材であってもよい。
【0046】
主板210は、
図1及び
図2に示されるように、カバー部材200の幅方向(Y軸方向)に延びている。カバー部材200が天板131と重なり合った状態(本体100に対して閉じた状態)において、主板210は、天板131のうち突出片131cよりも差込口112寄りの領域を覆っている。
【0047】
一対の側板220はそれぞれ、
図1、
図3、
図8及び
図9に示されるように、主板210の両側縁から屈曲しつつ本体100に向けて延びている。側板220の後端部(後板133側の端部)には、側板220を貫通する貫通孔である軸孔221が設けられている。特に
図1及び
図3に示されるように、軸孔221には、回動軸134fが挿通されている。そのため、カバー部材200は、本体100(シェル130)に対して回動軸134f周りに回動可能に取り付けられている。
【0048】
側板220の先端部222の近傍には、特に
図8及び
図9に示されるように、側板220の内壁面から内側に向けて突出する突出部222a(状態維持部)が設けられている。特に
図1及び
図3に示されるように、カバー部材200が天板131と重なり合った状態(本体100に対して閉じた状態)において、突出部222aは、凹部134a内に収容されることにより、凹部134aと係合する。突出部222aは、例えば、側板220がエンボス加工されたものであってもよい。突出部222aの突出高さは、側板220の板厚の1/2以下であってもよいし、凹部134aの深さよりも小さくてもよい。
【0049】
一対の屈曲部230は、それぞれ、特に
図8及び
図9に示されるように、カバー部材200の幅方向(Y軸方向)における両端近傍から屈曲しつつ本体100に向けて延びている。カバー部材200が天板131と重なり合った状態(本体100に対して閉じた状態)において、一対の屈曲部230は、ハウジング110の差込口112と重なり合わない程度に、屈曲部131aの表面を覆っている。すなわち、この状態において、一対の屈曲部230はそれぞれ、対応する屈曲部131aに係止される。
【0050】
一対の規制部材240は、特に
図8及び
図9に示されるように、例えば主板210の一部が切り曲げ加工された金属片である。一対の規制部材240は、信号伝送媒体3のハウジング110からの抜去を規制するように、差込口112に差し込まれた状態の信号伝送媒体3を係止可能に構成されている(詳しくは後述する)。
【0051】
一対の規制部材240は、主板210の幅方向(Y軸方向)において並んでいる。特に
図1、
図2及び
図4に示されるように、カバー部材200が天板131と重なり合った状態(本体100に対して閉じた状態)において、一対の規制部材240はそれぞれ、対応する貫通孔117,131dに挿入される。すなわち、この状態において、一対の規制部材240はそれぞれ、対応する貫通孔117,131dに係止されている。このとき、規制部材240の先端部は、収容空間111内に位置する。
【0052】
解除操作部250は、信号伝送媒体3と規制部材240との間の係止(詳しくは後述する)を解除する操作が行えるように構成されている。解除操作部250は、主板210の幅方向(Y軸方向)において延びている。解除操作部250は、作業者等による把持が容易となるように、先端に向かうにつれて本体100から離れるように主板210の先端縁から屈曲されている。すなわち、カバー部材200が天板131と重なり合った状態(本体100に対して閉じた状態)において、解除操作部250は、回動軸134fよりも差込口112寄りに位置している。
【0053】
[カバー部材の本体への取付方法]
続いて、
図10及び
図11を参照して、カバー部材200を本体100に対して取り付ける方法について説明する。
【0054】
まず、
図10に示されるように、補助板134dの先端に向かうにつれて補助板134dが側板134から離れるように補助板134dが屈曲部134eに対して傾斜した状態としておく。そのため、回動軸134fは、貫通孔134bの外側に位置している。このとき、回動軸134fの先端と側板134との直線距離は、側板220の板厚より小さく設定されていてもよい。
【0055】
天板131周辺からカバー部材200を本体100に近づけていくと、
図11(a)に示されるように、側板220は、回動軸134fの傾斜部134gと当接して、補助板134dを外方に押しのける。カバー部材200を本体100にさらに近づけていき、回動軸134fの先端が側板220の軸孔221と重なると、
図11(b)に示されるように、補助板134dのバネ性により、補助板134d及び回動軸134fが
図10の姿勢に戻るので、回動軸134fの先端が自然と軸孔221内に挿入される。
【0056】
その後、
図5に示されるように、回動軸134fを貫通孔134b内に押し込むことにより、回動軸134fが軸孔221に挿通され且つ貫通孔134bと係合された状態となる。これにより、カバー部材200は、回動軸134f周りに回動可能となるように、本体100に対して取り付けられる。こうして、電気コネクタ1が完成する。
【0057】
[電気コネクタへの信号伝送媒体の取付方法]
続いて、
図12〜
図15を参照して、信号伝送媒体3を電気コネクタ1に取り付ける方法について説明する。
【0058】
まず、
図12及び
図13に示されるように、作業者が解除操作部250を把持してカバー部材200を本体100に対して持ち上げる。このとき、カバー部材200が所定の仰角まで持ち上げられると、主板210の後端縁が突出片131cに当接し、カバー部材200の回動が妨げられる。すなわち、突出片131cの存在により、カバー部材200の回動範囲が当該所定の仰角の範囲内に制限されている。このとき、規制部材240の先端は、収容空間111から退避して、貫通孔117,131d内に位置する。
【0059】
次に、
図14に示されるように、信号伝送媒体3を差込口112から収容空間111内に差し込む。これにより、複数の信号線3bはそれぞれ、対応するコンタクト120と物理的且つ電気的に接続される。また、信号伝送媒体3のグランド伝送路(図示せず)は、グランド端子131b又は底板132の主部132aと物理的且つ電気的に接続される。このとき、電気コネクタ1の高さ方向(Z軸方向)から見て、信号伝送媒体3の切欠部3cは、貫通孔117,131dと重なり合っている。
【0060】
次に、
図15に示されるように、カバー部材200を本体100に近づけて、カバー部材200をシェル130に重ね合わせる。これにより、規制部材240の先端が信号伝送媒体3の切欠部3c内に位置する。そのため、規制部材240の先端によって、電気コネクタ1からの信号伝送媒体3の抜去が規制される。
【0061】
このとき、側板220の先端部222がわずかに変形しながらカバー部材200が本体100に近づいていき(
図11参照)、突出部222aは、凹部134aと重なり合ったときに凹部134a内に入り込み、凹部134aに係止される。そのため、カバー部材200に多少の外力が作用したとしても、凹部134a及び突出部222aによって、カバー部材200が本体100に対して重なり合うように閉じた状態が維持される。
【0062】
なお、上記と逆の手順を経ることにより、信号伝送媒体3を電気コネクタ1から取り外すことができる。
【0063】
[作用]
ところで、
図3に例示されるように、電気コネクタ1が狭隘な筐体4内に設置されていたとしても、差込口112側には信号伝送媒体3が通過するのに十分なスペースが確保されている。そのため、ハウジング110の後壁部115側に十分なスペースがない場合であっても、上記の例のように、カバー部材200が天板131と重なり合った状態(本体100に対して閉じた状態)において、解除操作部250が、回動軸134fよりも差込口112寄りに位置している場合には、差込口112寄りに位置する解除操作部250を作業者等が摘まんで、カバー部材200を操作することができる。したがって、上記に例示された電気コネクタ1によれば、カバー部材200の操作性を向上させることが可能となる。
【0064】
上記の例では、回動軸134fは、本体100の奥行き方向(X軸方向)において、側板134の中央部分又は側板134の中央部分よりも差込口112寄りに位置しうる。そのため、カバー部材200が開閉される際に、カバー部材200が後壁部115周辺を通過しない。したがって、電気コネクタ1が狭隘な領域に設置されていたとしても、カバー部材200の他の部材(筐体4等)への干渉を抑制することが可能となる。
【0065】
上記の例では、回動軸134fは、本体100の奥行き方向(X軸方向)において、側板134の中央部分又は側板134の中央部分よりも差込口112寄りに位置しうる。そのため、回動軸134fが後壁部115寄りに位置している形態と比較して、カバー部材200の仰角が所定の大きさとなるまでカバー部材200の解除操作部250を引き上げる際に、解除操作部250がより高く持ち上がる。したがって、上記に例示された電気コネクタ1によれば、相対的に小さなカバー部材の操作で、規制部材による接続対象の係止を解除することが可能となる。
【0066】
上記の例では、カバー部材200の回動範囲を制限するストッパとして機能する突出片131cが天板131(シェル130)に設けられている。そのため、カバー部材200の回動範囲が突出片131cによって必要十分な範囲に制限される。したがって、電気コネクタ1が狭隘な領域に設置されていたとしても、カバー部材200の可動スペースが確保される。よって、上記に例示された電気コネクタ1によれば、狭隘な領域にも設置することが可能となる。
【0067】
上記の例では、カバー部材200の仰角が所定の大きさとなったときに、カバー部材200が突出片131cと接触する。そのため、極めて簡単な構造によりストッパを構成することが可能となる。
【0068】
上記の例では、突出片131cが、天板131の幅方向(Y軸方向)において天板131の中央部分に位置しうる。この場合、カバー部材200が本体100に対して大きく開くような過剰な操作が行われたとしても、負荷が突出片131cを介して本体100に作用しやすくなる。そのため、カバー部材200の過剰操作時に、回動軸134fに作用しうる負荷を抑制することが可能となる。
【0069】
上記の例では、天板131の幅をAとしたときに、天板131の幅方向(Y軸方向)において、一方の突出片131cが0.2A〜0.4Aの範囲内に位置し、他方の突出片131cが0.6A〜0.8Aの範囲内に位置しうる。この場合、カバー部材200の過剰操作時に、応力がカバー部材200及び本体100により分散しやすくなる。そのため、回動軸134fに作用しうる負荷をより抑制することが可能となる。
【0070】
上記の例では、カバー部材200が天板131と重なり合った状態(本体100に対して閉じた状態)において、突出部222aが凹部134aに係止される。そのため、不意にカバー部材200に外力が作用したとしても、カバー部材200の開放を抑制することが可能となる。
【0071】
上記の例では、シェル130の天板131が天壁部114の全体を覆っている。そのため、差込口112に差し込まれている信号伝送媒体3が上下に変位(「煽り」ともいう。)したとしても、シェル130の存在によって信号伝送媒体3の煽りが阻害される。したがって、カバー部材200が信号伝送媒体3によって持ち上げられてしまうことを抑制することが可能となる。
【0072】
上記の例では、カバー部材200が天板131と重なり合った状態(本体100に対して閉じた状態)において、一対の屈曲部230がそれぞれ、対応する屈曲部131aに係止されており、一対の規制部材240がそれぞれ、対応する貫通孔117,131dに係止されている。そのため、当該閉じた状態で、屈曲部131aから貫通孔117,131dに向かう第1の方向にカバー部材200が本体100に対して移動すると、屈曲部230が屈曲部131aに当接する。したがって、屈曲部131a及び屈曲部230によって、カバー部材200の当該第1の方向への移動が制限される。一方、当該閉じた状態で、貫通孔117,131dから屈曲部131aに向かう第2の方向にカバー部材200が本体100に対して移動すると、規制部材240が貫通孔117,131dに当接する。したがって、貫通孔117,131d及び規制部材240によって、カバー部材200の当該第2の方向への移動が制限される。このように、カバー部材200の前後の動きが規制されるので、軸孔221が回動軸134fに接触し難くなる。よって、カバー部材200の前後でのガタツキを抑制しつつ、回動軸134fに作用する負荷を抑制することが可能となる。
【0073】
上記の例では、本体100(シェル130)の一部である回動軸134fが、本体100(シェル130)に設けられた貫通孔134bに係合されている。すなわち、回動軸134fの先端部分が、自身によって保持されている。そのため、回動軸134fに外力が作用しても、回動軸134fの先端部分が貫通孔134bに引っかかるので、回動軸134fが貫通孔134bから抜け難くなっている。したがって、本体100からのカバー部材200の脱落を抑制することが可能となる。
【0074】
上記の例では、回動軸134fの先端部分が、ハウジング110に近づくように貫通孔134bを突き抜けうる。この場合、回動軸134fに対して交差する方向(X軸方向)において回動軸134fに負荷が作用した場合でも、回動軸134fの先端部分が貫通孔134bに確実に引っかかるので、回動軸134fが貫通孔134bからより抜け難くなっている。したがって、本体100からのカバー部材200の脱落をより抑制することが可能となる。
【0075】
上記の例では、補助板134d及び屈曲部134eが、他の部材である回路基板2に固定される固定部として機能しうる。この場合、補助板134d及び屈曲部134eは、他の部材に固定されることにより、側板134から離れる方向に倒れ難くなっている。そのため、回動軸134fに外力が作用しても、回動軸134fの先端部分が貫通孔134bに位置した状態が保たれる。したがって、本体100からのカバー部材200の脱落をさらに抑制することが可能となる。
【0076】
上記の例では、補助板134d及び屈曲部134eが、他の部材である回路基板2に固定される固定部として機能しうる。この場合、シェル130と回路基板2との間に生ずる隙間が小さくなる。そのため、電気コネクタ1の外部への電磁波の漏洩と、コンタクト120が伝送する電気信号へのノイズの混入とをより抑制することが可能となる。
【0077】
上記の例では、回動軸134fが、その先端部分に向かうにつれて屈曲部134eに近づくように傾斜する傾斜部134gを含んでいる。この場合、カバー部材200を本体100に取り付ける際に、カバー部材200の軸孔221が形成された部分が傾斜部134gに当接した状態で、屈曲部134eに向けてカバー部材200を押し込むことにより、当該軸孔221が形成された部分によって補助板134dが自然に押し広げられる。そして、軸孔221に回動軸134fが重なると、補助板134dのバネ性により、回動軸134fが自然に軸孔221に入り込む。そのため、カバー部材200を本体100に対して極めて容易に取り付けることが可能となる。
【0078】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0079】
(1)天板131には、ストッパとして少なくとも一つの突出片131cが設けられていてもよい。ストッパとして機能する部材は、カバー部材200又は本体100の少なくとも一方に設けられていてもよい。突出片131c以外の他の形態の部材がストッパとして機能してもよい。例えば、カバー部材200の主板210の後端縁が、ストッパとして機能してもよい。
【0080】
(2)カバー部材200が本体100に対して重なり合うように閉じた状態を維持するための状態維持部の形態は、上記の例に限られない。例えば、先端部222に設けられた突出部と、当該突出部に対応するように側板134に設けられた凹部とによって、カバー部材200が本体100に対して重なり合うように閉じた状態が維持されてもよい。
【0081】
(3)回動軸134fは、側板134に設けられた貫通孔134b以外の開口部(例えば、凹部、溝部など)と係合してもよい。
【0082】
(4)回動軸134fが側板134に設けられており、回動軸134fと係合する開口部が補助板134dに設けられていてもよい。
【0083】
(5)補助板134d及び屈曲部134eは、他の部材に固定される固定部として機能していなくてもよい。
【0084】
(6)シェル130の天板131は、天壁部114のうち少なくとも差込口112を形成する部分を覆っていてもよい。
【0085】
(7)電気コネクタ1は、シェル130を備えていなくてもよい。このとき、シェル130の部材(例えば、突出片131c、貫通孔134b、回動軸134f等)に対応する部材がハウジング110によって構成されていてもよい。
【0086】
(8)回動軸134fは、本体100の奥行き方向(X軸方向)における側板134の中央よりも後板133寄りに位置していてもよい。
【0087】
(9)
図16に示されるように、回動軸134fの先端部分がフック状を呈していてもよい。この場合、カバー部材200を本体100に取り付ける際に、回動軸134fを貫通孔134b内に押し込むと、回動軸134fの先端部分が貫通孔134bに引っ掛かる。そのため、電気コネクタ1の完成後に、回動軸134fに外力が作用しても、回動軸134fが貫通孔134bに固定された状態が確実に保たれる。したがって、本体100からのカバー部材200の脱落をいっそう抑制することが可能となる。