(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態としての包装体について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
包装体とは、物品を包装するものである。本実施形態では、包装される物品を保護する緩衝部がシート状の外装部の内側に配置された包装体を説明する。
緩衝部は、所定の伸張方向に伸張可能であり、伸張方向の端部のそれぞれが外装部に固定されている。この緩衝部は、伸張前の状態(以下「未伸張状態」という)ではシート状をなし、伸張後の状態(以下「伸張状態」という)ではシート状よりも厚みを増した状態(以下「マット状」という)をなす。すなわち、未伸張状態から伸張状態となった緩衝部の形態は、伸張することでシート状からマット状に変化する。なお、基本的には、シート状からマット状に変化した緩衝部が再びシート状となることはなく、復元力で僅かに復元するだけで不可逆的に緩衝部の形態が変化する。
【0014】
シート状よりもマット状のほうが緩衝部の厚み方向の寸法が大きい。このように厚み方向の寸法が確保されたマット状の緩衝部には、緩衝用の変形代が形成される。なお、シート状であってもマット状であっても緩衝部は厚み方向に直交する方向に面状に延在している。
本実施形態では、第一実施形態,第二実施形態および第三実施形態で三つの包装体を例示する。第一実施形態および第二実施形態では、袋状に形成された包装体、即ち、包装袋を例に挙げる。第三実施形態では、折り畳まれるフラップ状の包装体を例に挙げる。
これらの包装体では、その状態(フェーズ)によって、緩衝部の形態が異なる(下記の表1参照)。
【0016】
上記の表1に示すように、包装体の状態は、包装体が未完成の状態(以下「未完成状態」という)と完成した状態(以下「完成状態」という)とで大別され、また、包装体が未使用の状態(以下「未使用状態」という)と使用される状態(以下「使用状態」という)とで大別される。
包装体の完成状態は、包装体の製造が完了した状態を意味する。この完成状態よりも前の状態が未完成状態である。たとえば、包装体の製造途中(半製品)の状態は未完成状態であり、出荷された包装体の状態は完成状態である。
なお、包装体は、完成したのちに使用されることから、完成状態となったのちに使用状態となる。
【0017】
包装体の使用状態(使用時)は、包装体に物品が包装されるときの状態を意味する。ここでいう使用状態は、包装体に物品が包装されている途中の状態だけでなく、物品が既に包装された状態をも含む。この使用状態よりも前の状態が未使用状態(使用前)である。たとえば、包装体が完成状態であっても物品が包装される前であれば未使用状態であり、物品が包装された状態の包装体は使用状態である。
【0018】
第一実施形態の緩衝部は、未使用状態でシート状をなし、包装体に物品を包装するときに伸張されて、使用状態でマット状をなす。
第二実施形態の緩衝部は、包装体の製造時に予め伸張されて、未完成状態でシート状からマット状にされる。
第三実施形態の緩衝部は、包装体が完成された後であって使用される前に伸張され、完成状態であって未使用状態でシート状からマット状にされる。
【0019】
上記したように、第一実施形態および第三実施形態の緩衝部は、包装体が完成したのちにシート状からマット状へされることから、包装体の使用者によって緩衝部が伸張される。一方、第二実施形態の緩衝部は、包装体の完成するまえにマット状にされることから、包装体の使用者による緩衝部の伸張作業が不要である。
これらの包装袋を構成する外装部および緩衝部は、紙あるいは樹脂といった同一の材料から形成されることが好ましい。ただし、外装部および緩衝部のそれぞれを異なる材料から形成してもよい。
【0020】
[I.第一実施形態]
[1.包装袋の構成]
以下に述べる第一実施形態では、開口が上向きに配置された状態の包装袋について述べる。なお、重力の作用方向を下方とし、下方の反対方向を上方とする。
本実施形態では、包装体の外装体として袋状の本体袋が設けられる。
まず、
図1および
図2を参照して、包装袋の本体袋10を説明する。
本体袋10は、フラップ19で開閉される開口9が上部に形成されたマチ無しの封筒型に設けられる。ここでは、本体袋10として角形封筒を例示するが、長形封筒や洋形封筒を本体袋に用いてもよい。
この本体袋10には、互いに対向する第一面部11と第二面部12とが設けられる。
【0021】
これらの面部11,12は、本体袋10において開口9の下方に設けられた底部(第一折畳部)13と、この底部13と開口9とを結ぶように立設された二つの側部14,15とにおいて互いに連設される。また、第一面部11の上端縁部(第一端縁部)110が開口9の一側(
図1では右上側)に配置され、第二面部12の上端縁部(第二端縁部)120が開口9の他側(
図1では左下側)に配置される。
さらに、第一面部11には、上方に突出して設けられたフラップ19が連設される。
なお、底部13は、第一面部11と第二面部12とを対面させて折り畳まれている。
【0022】
つぎに、包装袋の緩衝部20を説明する。
緩衝部20は、クッションペーパやハニーペーパなどとも称され、複数の切れ込み部23aが千鳥状に設けられたシート状の緩衝材である。
また、緩衝部20は、第一面部11の上端縁部110と第二面部12の上端縁部120との間に架け渡されて懸架される。
【0023】
この緩衝部20は、面部11,12の上端縁部110,120に貼り付けられる貼付端部21,22と、これらの貼付端部21,22の間において吊り下げられた状態(懸架状態)で本体袋10の内部に設けられる本体部23との二種の部位に大別される。
ここでは、第一面部11の上端縁部110のうち内面111に対して第一貼付端部21が貼り付けられて固定され、同様に、第二面部12の上端縁部120のうち内面121に対して第二貼付端部22が貼り付けられて固定される。一方、本体部23は、何れの部位にも貼り付けられることはない。
【0024】
また、緩衝部20に沿って第一貼付端部21と第二貼付端部22とを結ぶ懸架方向において中央の折線部230で二つ折りにされた状態の緩衝部20を例示する。
このように二つ折りにされた緩衝部20の本体部23は、
図2に示すように、折線部230を挟んで第一貼付端部21側の第一本体部231と第二貼付端部22側の第二本体部232との二つの部位に大別される。
【0025】
さらに、本体部23は、開口9から包装袋に入れられた物品1(
図4参照)が載せられることで、物品1の重量によって伸張する。
つまり、物品1が包装袋に入れられる前(未使用状態)には緩衝部20が伸張していない未伸張状態であり、物品1が包装袋に入れられた後(使用状態)には緩衝部20が懸架方向に伸張した伸張状態となる。そのため、以下の説明では、懸架方向を伸張方向とも言う。
このように緩衝部20を伸張可能とする構造は、本体部23に設けられる。
以下、未伸張状態の本体部23を説明し、その後に伸張状態の本体部23を説明する。
【0026】
まず、
図3を参照して、未伸張状態(完成状態であって未使用状態)の本体部23を説明する。
本体部23には、多数の切れ込み部23aが切り込まれて形成されている。これらの切れ込み部23aは、緩衝部20のうち少なくとも本体部23に設けられている。
切れ込み部23aは、懸架方向(ここでは上下方向)に対して直交する幅方向(延在方向)に延びている。
【0027】
この切れ込み部23aは、幅方向に沿って断続的に並んで設けられている。すなわち、幅方向に隣接する切れ込み部23aどうしの間には、切り込まれていない非切れ込み部23bが設けられている。
切れ込み部23aの寸法を「L
1」とし、非切れ込み部23bの寸法を「L
2」とすれば、不等式1「L
1>L
2」が満たされる。
【0028】
ここで、切れ込み部23aおよび非切れ込み部23bが幅方向に沿って交互に並んで設けられた一行の配向を第一パターンP
1とする。また、第一パターンP
1の切れ込み部23aおよび非切れ込み部23bとは半ピッチずらされて配置された切れ込み部230aおよび非切れ込み部230bが幅方向に沿って交互に並んで設けられた他行の配向を第二パターンP
2とする。これらの第一パターンP
1および第二パターンP
2は、懸架方向に沿って交互に並んで設けられる。
【0029】
詳細に言えば、第一パターンP
1における切れ込み部23aの幅方向中心C
aと第二パターンP
2における非切れ込み部23bの幅方向中心C
b0とが懸架方向に沿って並んで配置される。同様に、第一パターンP
1における非切れ込み部23bの幅方向中心C
bと第二パターンP
2における切れ込み部230aの幅方向中心C
a0とが懸架方向に沿って並んで配置される。
【0030】
このような切れ込み部23a,230aおよび非切れ込み部23b,230bが設けられた本体部23を有する緩衝部20は、切れ込み部23a,230aに対応した形状の刃部(カッタ)が外周に設けられたロータリダイカッタによって、切れ込まれていないシート材を回転しながら切り込むことで製造される。または、切れ込み部23a,230aに対応した形状の刃部が設けられた平板ダイカッタによって、切り込まれていないシート材をプレスしながら切り込むことで、緩衝部20が製造される。
【0031】
第一パターンP
1の切れ込み部23aに対して懸架方向のうち一方(
図3では上方)のシート片は、第二パターンP
2の切れ込み部230aおよび非切れ込み部230bに対する位置によって第一片部31,第二片部32および第三片部33に大別される。
第一片部31は、第一パターンP
1の切れ込み部23aのうち幅方向一方(
図3では左方)と第二パターンP
2の切れ込み部230aのうち幅方向他方(
図3では右方)とで挟まれる部位である。第二片部32は、第一パターンP
1の切れ込み部23aの幅方向中央と第二パターンP
2の非切れ込み部230bとで挟まれる部位である。第三片部33は、第一パターンP
1の切れ込み部23aのうち幅方向他方と第二パターンP
2の切れ込み部230aのうち幅方向一方とで挟まれる部位である。
【0032】
また、第一パターンP
1の切れ込み部23aに対して懸架方向のうち他方のシート片は、上記の片部31,32,33と同様に、第四片部34,第五片部35および第六片部36に大別される。
第四片部34は、第一パターンP
1の切れ込み部23aのうち幅方向一方と第二パターンP
2の切れ込み部230aの幅方向他方とで挟まれる。第五片部35は、第一パターンP
1の切れ込み部23aの幅方向中央と第二パターンP
2の非切れ込み部230aとで挟まれる。第六片部36は、第一パターンP
1の切れ込み部23aのうち幅方向他方と第二パターンP
2の切れ込み部230aのうち幅方向一方とで挟まれる。
【0033】
つづいて、
図4,
図5および
図6を参照して、伸張状態(使用状態)の本体部23を説明する。
図4に示すように、伸張状態の本体部23は、未伸張状態の本体部23と比較して、懸架方向に伸びている。このときの本体部23では、懸架方向から面部11,12の厚み方向(未伸張状態における本体部23の厚み方向)へ片部31〜36(
図5および
図6参照)が立ち上がり、立ち上がった片部31〜36によって立体状の緩衝セル40が形成される。言い換えれば、一つの切れ込み部23aに対して周囲に配置された片部31〜36が立ち上がることで、一つの緩衝セル40が出現する。
【0034】
詳細に言えば、
図5に示すように、第一片部31に対応する第一壁部41,第二片部32に対応する第二壁部42,第三片部33に対応する第三壁部43,第四片部34に対応する第四壁部44,第五片部35に対応する第五壁部45および第六片部36に対応する第六壁部46が、六角筒の各側壁をなすように緩衝セル40において立設される。
【0035】
なお、本体部23が破損しない範囲で幾何学的に最も伸張した状態(以下「最大伸張状態」という)では、第一壁部41および第四壁部44が同一平面に沿うとともに、第三壁部43および第六壁部46が他の同一平面に沿って第一壁部41および第四壁部44と対向する。そのため、最大伸張状態の緩衝セル40では、四角筒の各側壁をなすように壁部41〜46が立設される。
【0036】
また、
図4に示すように、伸張状態の緩衝部20は、本体袋10の底部13と非接触に設けられる。
具体的には、最大伸張状態の緩衝部20において最も下方に位置する折線部230と本体袋10の底部13とが接触しないように設けられる。言い換えれば、緩衝部20のうち貼付端部21,22の上端21a,22aと本体袋10の底部13との間の上下寸法を「M
1」とし、上端21a,22aと最大伸張状態の緩衝部20における折線部230との間の上下寸法を「M
2」とすれば、不等式2「M
1>M
2」が満たされる。
【0037】
さらに、この不等式2を満たしたうえで「M
2」をできるだけ大きく設定して「M
1」に近づけることが好ましい。
逆に言えば、
図2に示すように、最大伸張状態の緩衝部20が本体袋10の底部13と接触しないように、未伸張状態の緩衝部20における折線部230が本体袋10の底部13に対して予め所定寸法「M
3」だけ上方に設けられている。すなわち、緩衝部20は、伸び代を見越して短く形成されている。
【0038】
つづいて、
図4を参照して、上記の非接触構造を実現するための緩衝部20の寸法の設定例を述べる。
緩衝部20におけるパターンP
1,P
2の行数を「N」とし、貼付端部21,22の上下寸法を「M
4」とすれば、近似式3「M
2−M
4≒(L
1−L
2)×(N/4)」が成立する。
この近似式3の左辺は、最大伸張状態における第一本体部231または第二本体部232の上下寸法を表している。
一方、近似式3の右辺のうち(L
1−L
2)は、最大伸張状態における緩衝セル40一つあたりの懸架方向寸法、即ち、第一壁部41および第四壁部44の懸架方向の寸法を表している。
【0039】
また、本体部23において緩衝セル40が懸架方向に並ぶ数がパターンP
1,P
2の行数の半数(N/2)であることから、近似式3の右辺のうち(N/4)は、第一本体部231または第二本体部232において緩衝セル40が懸架方向に並ぶ数を表している。
ここで、幅方向に延びる第二壁部42および第五壁部45の懸架方向寸法を無視すれば、第一本体部231または第二本体部232において緩衝セル40が懸架方向に並ぶ数(N/4)を、最大伸張状態における緩衝セル40一つあたりの懸架方向寸法(L
1−L
2)に乗算した値(近似式3の右辺)は、第一本体部231または第二本体部232の最大伸張状態における上下寸法に近似するものと言える。
【0040】
そのため、切れ込み部23aあるいは非切れ込み部23bの幅方向寸法L
1,L
2やパターンP
1,P
2の行数、貼付端部21,22の上下寸法M
4といった近似式3における各項に対応するパラメータを適宜設定することで、上記の非接触構造を設計することができる。
そのほか、緩衝部20の幅方向寸法は、面部11,12の幅方向寸法よりもやや小さく設けられている。
【0041】
[2.包装袋の使用手順]
つぎに、本実施形態の包装袋の使用方法を説明する。
図1および
図2に示すように、はじめにフラップ19を開いて開口9を開放し、本体袋10を開封する。
【0042】
それから、包装袋に物品1を入れて、緩衝部20の本体部23に物品1を載置または挿入する。このとき、
図4に示すように、緩衝部20の本体部23が懸架方向に伸びることで、面部11,12の厚み方向へ切れ込み部23aの周囲の片部31〜36が立ち上がって壁部41〜46が形成され、
図5および
図6に示すように、本体部23に立体状の緩衝セル40が出現する。
【0043】
このようにして、シート状の緩衝部20は、開かれた切れ込み部23aの周囲の片部31〜36が立ち上がることでネット(網)状をなし、厚み方向の寸法の大きいマット状に変化し、緩衝用の変形代が形成される。
そして、本体袋10における第二面部12の上端縁部120にフラップ19を貼り付けて、包装袋を封緘する。このとき、物品1が緩衝セル40で囲まれる。
【0044】
[3.作用および効果]
本実施形態の包装袋は、上述のように構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
(1)懸架された緩衝部20の本体部23に、包装袋に入れられる物品1を載せることで、未伸張状態ではシート状の本体部23が伸びる。伸張状態となった本体部23には、切れ込み部23aのそれぞれに対応する立体状の緩衝セル40が出現し、伸張状態でマット状の本体部23が形成される。本体袋10の内部に出現した緩衝セル40で物品1が囲まれることにより、物品1の保護性を確保することができ、包装袋に緩衝性を持たせることができる。
そのうえ、未伸張状態の本体部23がシート状であることから、エアクッションやフォーミングクッション,片面段ボールといった緩衝用の変形代が設けられた緩衝部が用いられた包装袋と比較して、未使用状態の包装袋の嵩張りを抑えることができる。
【0045】
そのほか、従来の包装袋において本体袋とは別に緩衝部を設ける場合には、本体袋に対して緩衝部を固定するために、緩衝部の全体を本体袋に貼り付ける必要がある。これに対して、本包装袋では緩衝部20が懸架されているため、緩衝部20の一部、即ち、貼付端部21,22を本体袋10に貼り付けるだけよく、接着材や粘着材の使用量を低減させることができる。
【0046】
なお、緩衝部20における伸張方向の端部、即ち、貼付端部21,22が本体袋10に貼り付けられて固定されることから、緩衝部20を伸張させることができる。更に言えば、伸張状態の緩衝部20を保持することができる。
また、緩衝部20は、本体袋10の内部で伸びることによって緩衝機能を発揮することから、伸び代を見越して短く形成されている。そのため、平面状の材料シートを波打たせたり皺を寄せたりする収縮加工を施して製造される緩衝部が用いられる包装袋と比較して、緩衝部の材料の量を低減させてコストを抑えることができ、重量を抑えることもできる。
【0047】
(2)伸張状態の緩衝部20が底部13と非接触に設けられているため、包装袋に入れられる物品1と本体袋10の底部13との接触(底付き)が抑えられ、物品1の保護性を高めることができる。
【0048】
(3)緩衝部20の貼付端部21,22は、本体袋10の上端縁部110,120における内面111,121に貼り付けられる。そのため、貼付端部と本体部との間で緩衝部が山折りされて上端縁部110,120の外面に貼付端部が貼り付けられる包装袋に比較して、緩衝部20の材料の量や重さを抑えることができる。
そのほか、内面111,121に貼付端部21,22が貼り付けられることで、本体袋10のフラップ19と緩衝部20との干渉が防止され、開口9を円滑に開閉することができる。
【0049】
(4)第一面部11,第二面部12およびフラップ19から構成される本体袋10ならびに緩衝部20が同一の材料から形成されるため、使用後の包装袋の処理性を向上させることができる。たとえば、包装袋を再生利用(リサイクル)あるいは廃棄する際に、材料ごとに分別する必要がなく、処理作業性を向上させることができる。本体袋10および緩衝部20が紙製であれば、古紙回収や可燃ごみに使用後の包装袋をそのまま出すことができる。
【0050】
(5)緩衝部20が二つ折りにされた状態で懸架されるため、たとえば緩衝部が三つ以上に折られた状態で懸架される包装袋と比較して、未使用状態の包装袋の厚みを抑えることができる。
具体的には、未使用状態の包装袋において本体部23が設けられる箇所では、第一面部11,第一本体部231,第二本体部232,第二面部12の順に四つのシート片が積層される。これに対して、三つ以上に折られた緩衝部では、三つ以上の本体部が折り畳まれ、五つ以上のシート片が積層される。したがって、折り畳まれた本体部23の厚みが抑えられることで、包装袋の嵩張りを抑えることができる。
(6)本実施形態の包装体は、袋状に形成された包装袋であるため、物品を包装してそのまま発送することができ、利便性を高めることができる。
【0051】
[II.第二実施形態]
つぎに、第二実施形態の包装体を説明する。
この包装体は、上述した第一実施形態と同様に、袋状の包装袋である。ただし、本実施形態の緩衝部は、懸架されておらず、予め伸張状態とされて本体袋(外装部)の内側に配置され、そのうえ、切れ込み部の延在方向が異なる。
なお、ここで説明する点を除いては、第一実施形態と同様の構成となっている。これらの構成については、同様の符号を付し、各部の説明を省略する。
以下、
図7および
図8を参照して、本実施形態の包装袋を述べる。
【0052】
[1.包装袋の構成]
完成状態の包装袋には、シート状の本体袋10′の内側に伸張状態の緩衝部20′が配置されている。
この緩衝部20′は、包装袋の製造過程において、未伸張状態から伸張状態に伸張されることでシート状からマット状に形成される。ここでは、第一面部11′の内側に第一緩衝部20A′が配置され、同様に、第二面部12′の内側に第二緩衝部20B′が配置されている。
【0053】
また、緩衝部20′では、切れ込み部23a′の延在方向が開口9′と底部(第一折畳部)13′とを結ぶ方向(上下方向)、即ち、物品の挿入方向に沿って設定されている。
包装袋の製造方法の一例を挙げれば、第一面部11′となるシート片の内側に伸張された第一緩衝部20A′を積層し、同様に、第二面部12′となるシート片の内側に伸張された第二緩衝部20B′を積層する。そして、面部11′,12′の四つの端辺うち開口9′に沿う端辺を除いた面部11′,12′の端辺(ここでは上下に延びる二つの側辺および底辺)に対応する部位どうしを貼り付ける。
【0054】
このようにして、面部11′,12′において貼り付けられる端辺に緩衝部20A′,20B′が挟み込まれて固定され、緩衝部20A′,20B′における伸張方向の端部が面部11′,12′に固定される。
そのほか、第一緩衝部20A′の開口9′周縁の第一貼付端部21′は、第一面部11′の内側に貼り付けられる。同様に、第二緩衝部20B′の開口9′周縁の第二貼付端部22′は、第二面部12′の内側に貼り付けられる。
【0055】
[2.包装袋の使用方法]
本実施形態の包装袋の使用方法は、第一実施形態の包装袋のような緩衝部20の伸張作業が不要であり、フラップ19′を開いて、物品を開口9′から内部に単に挿入し、封緘するだけである。
【0056】
[3.作用および効果]
本実施形態の包装袋は、上述のように構成されるため、第一実施形態の作用および効果のうち、シート状の緩衝部20が二つ折りで懸架される構造や切れ込み部23aの延在方向による作用および効果を除いて、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。そのうえ、以下のような作用および効果を得ることができる。
【0057】
(1)予め伸張された緩衝部20′が本体袋10′の内側に配置されるため、包装袋の使用者による緩衝部20′の伸張作業を不要とすることができる。よって、包装作業性ひいてはユーザビリティを向上させることができる。
(2)緩衝部20′では、切れ込み部23a′の延在方向が物品の挿入方向に沿って設定されるため、包装袋に挿入される物品の引っ掛かりが抑えられ、物品を円滑に挿入させることができる。この点からも、包装作業性やユーザビリティを向上させることができる。
【0058】
[III.第三実施形態]
つぎに、第三実施形態の包装体を説明する。
この包装体は、上述した第一実施形態および第二実施形態と異なり、袋状ではなく、折り畳まれるフラップ状に構成される。
この包装体は、第一実施形態の包装袋において第一面部11と第二面部12とを底部13でのみ連設させたうえで、フラップ19を取り除き、面部11,12の外面に緩衝部20を貼り付けた構造をなしている。
【0059】
この構造において、第一面部11,第二面部12に対応する部位を合わせて外装体10″と呼び、底部13に対応する部位を第一折畳部131″と呼ぶ。
なお、ここで説明する点を除いては、上述した実施形態と同様の構成となっている。これらの構成については、同様の符号を付し、各部の説明を省略する。
以下、
図9,
図10および
図11を参照して、本実施形態の包装体を述べる。
【0060】
[1.包装体の構成]
ここで述べる包装体には、シート状の外装体10″の内側に緩衝部20″が懸架されている。ここでは、緩衝部20″における伸張方向の各端部、即ち、第一貼付端部21″および第二貼付端部22″のそれぞれが、外装体10″における第一端縁部110″および第二端縁部120″の外面112″,122″に貼り付けられて固定されている。
外装体10″には、二種の折線F
1″,F
2″が形成されている。これらの折線F
1″,F
2″のうち一方は、完成状態であって未使用状態の包装体を折り畳む場合に折り曲げられる第一折線F
1″であり、他方は、使用状態の包装体を折り畳む場合に折り曲げられる第二折線F
2″である。ここでは、包装される物品の厚みに応じて離隔寸法が設定された二本の平行な第二折線F
2″が形成されている。
【0061】
第一折線F
1″は、緩衝部20″の伸張方向に対して交差して、外装体10″の第一折畳部131″に形成される。ここでは、緩衝部20″の伸張方向に対して第一折線F
1″の延在方向が直交して配向される。
第二折線F
2″は、第一折線F
1″の延在方向に交差して、外装体10″の面部11″,12″に跨って形成される。ここでは、第一折線F
1″の延在方向と第二折線F
2″の延在方向とが直交している。
【0062】
以下、第二折線F
2″が形成される外装部10″の部位を第二折畳部132″と呼ぶ。
なお、第二折畳部132″は、第一折線F
1″に対して第二折線F
2″が直交(交差)することから、第一折畳部131″に対して直交(交差)して延在している。また、第二折畳部132″の折り畳み方向も、第一折畳部131″の折り畳み方向に対して直交(交差)している。
【0063】
第二折線F
2″を境界にすれば、外装体10″は、第二折線F
2″よりも一側(
図9では右上側)の第三面部13″と第二折線F
2″よりも他側(
図9では左下側)の第四面部14″との二つに大別される。第三面部13″には、第一面部11″のうち第二折線F
2″よりも一側の領域と第二面部12″のうち第二折線F
2″よりも一側の領域とが含まれる。また、第四面部14″には、第一面部11″のうち第二折線F
2″よりも他側の領域と第二面部12″のうち第二折線F
2″よりも他側の領域とが含まれる。
【0064】
以下、完成状態であって未使用状態の包装体を説明し、その後に使用状態の包装体を述べる。
完成状態であって未使用状態の包装体は、包装体を使用する準備がされていない準備前状態と、包装体を使用する準備がされた準備時状態との各状態をなす。
【0065】
準備前状態の包装体は、
図9に示すように、未伸張状態の緩衝部20″がシート状に延在している。なお、
図9では平面状の張架された緩衝部20″を例示するが、第一折線F
1″で外装体10″が二つ折りにされた状態では、緩衝部20″も二つ折りにされる。
また、包装体を内側(外装体10″に対して緩衝部20″の側)から視たときに、第二折線F
2″の端縁と重複する緩衝部20″の領域には、切れ込み部23a″が切れ込まれていない非切れ込み領域R″が設けられている。言い換えれば、外装部10″における第二折畳部132″の内側で伸張方向における端縁の緩衝部20″には、展開後状態であってもシート状をなす非切れ込み領域R″が設定される。ここでは、伸張方向の端縁のそれぞれに非切れ込み領域R″が設けられている。
【0066】
準備時状態の包装体は、
図10に示すように、外装部10″が折線F
1″,F
2″で折り畳まれておらずに平面状に展開されている。このとき、外装部10″の展開によって緩衝部20″が伸張状態とされる。
この緩衝部20″は、第二折畳部132″の内側で伸張方向における端縁に非切れ込み領域R″が設けられることから、伸張方向中央(たとえば折線F
1″,F
2″の交差箇所の内側)のほうが伸張方向端部よりも強い復元力が作用する。そのため、緩衝部20″では、伸張方向端部よりも中央のほうが切れ込み部23a″の延在方向に収縮する。
【0067】
使用状態の包装体は、
図11に示すように、外装部10″が第一折線F
1″では折り畳まれておらず、第三面部13″と第四面部14″とを対面させて第二折線F
2″で折り畳まれる。なお、このときの緩衝部20″の伸張状態は保持される。
緩衝部20″には、伸張方向のみならず切
れ込み部23a″の延在方向にも復元力が作用することから、この復元力によって第二折線F
2″での折り畳み方向に包装体が付勢される。
【0068】
[2.包装体の使用方法]
つぎに、本実施形態の包装体の使用方法を説明する。
はじめに、
図9および
図10に示すように、第一折線F
1″で折り曲げられた準備前状態の包装体を展開する。このように展開された包装体は、平面状に外装部10″が展開されるとともに、未伸張状態から伸張状態となる緩衝部20″がシート状からマット状に変化する。
【0069】
つづいて、
図11に示すように、第三面部13″または第四面部14″の内側に物品を載置してから、第二折線F
2″で外装部10″を折り曲げる。あるいは、第二折線F
2″で外装部10″を折り曲げてから物品を包装体の内部に挿入する。このとき、伸張状態を保持したまま緩衝部20″も折り曲げられる。
【0070】
たとえば、作業者の手のひらを互い向かい合わせ、各親指を非切れ込み領域Rに置き、第三面部13″および第四面部14″を互いに近接させるように親指以外の指で折り畳むことで対面させることができる。
なお、上記したように物品を包装した包装体に対して、ラップあるいはシュリンク包装や他の包装袋への封入などの更なる包装を施してもよい。
【0071】
[3.作用および効果]
本実施形態の包装体は、上述のように構成されるため、第一実施形態の作用および効果のうち、袋状に形成されることや緩衝部20が本体袋10の内面に貼り付けられることによる作用および効果を除いて、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。そのうえ、以下のような作用および効果を得ることができる。
(1)第二折畳部132″が第一折畳部131″に直交して折り畳まれる。このとき、切
れ込み部23a″の延在方向に作用する復元力によって、
図10に示すような平面状に展開された包装体が第二折線F
2″での折り畳み方向に付勢され、この包装体の第二折線F
2″での折り畳みが加勢される。よって、第二折線F
2″での折り畳み作業負荷を低減させることができ、包装作業性やユーザビリティを向上させることができる。
【0072】
(2)伸張状態であってもシート状をなす非切れ込み領域R″が緩衝部20″に設けられるため、たとえば非切れ込み領域R″に作業者の指を置いて第二折畳部132″で包装体を折り曲げる際に、作業者の指に対して緩衝セルが線状あるいは点状に突き当たることがなく、非切れ込み領域R″が面状に接触する。この点からも、包装作業性やユーザビリティを高めることができる。
【0073】
(3)外装体10″における第一端縁部110″および第二端縁部120″の外面112″,122″に第一貼付端部21″および第二貼付端部22″が貼り付けられて固定される。そのため、面部11″,21″に引っ掛かるようにして緩衝部20″が懸架されることで、外装部10″に対して緩衝部20″を確実に取り付けることができる。
なお、本実施形態の包装体には、フラップが設けられていないため、フラップに貼付端部21″,22″が干渉することも無い。
【0074】
[IV.その他]
最後に、本実施形態のその他の変形例について述べる。
たとえば、第一実施形態および第三実施形態の包装体について、切れ込み部および非切れ込み部は、懸架方向に直交して延びる配向に限らず、少なくとも懸架方向に対して交差する方向に延びていればよい。このような配向により、緩衝部を懸架方向に伸張させることができる。
また、第一実施形態および第二実施形態の包装袋について、本体袋には、フラップ19が設けられたマチ無しの封筒型に限らず、たとえば角底袋,ガセット袋,スタンディングパウチといったさまざまな型式の袋を用いることができ、マチ付きの袋やフラップ無しの袋を用いてもよい。
【0075】
フラップ無しの袋が本体袋に用いられる場合には、貼付端部と本体部との間で緩衝部が山折りされて、上端縁部の外面に貼付端部が貼り付けられてもよい。このときには、面部に引っ掛かるようにして緩衝部が懸架されることで、本体袋に対して確実に緩衝部を取り付けることができ、緩衝部の耐荷重を高めることができる。
そのほか、上述した全実施形態の包装体について、外装部に対する緩衝部の固定部位は、伸張方向の端部に限らず、少なくとも伸張方向に離隔した二箇所であればよい。