(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
図1〜
図18を用いて、第1実施形態の分析装置、分析用基板及び分析方法を説明する。
[基板の反応領域]
図1〜
図5を用いて、基板の反応領域を説明する。
【0016】
図1(a)は基板60に反応領域65(
図1(c)に図示)を形成するための抗原捕捉ユニット50の模式的な上面図である。
図1(b)は
図1(a)のA−Aにおける模式的な断面図である。
図1(c)はカートリッジ70が基板60に対して着脱可能であることを説明するための模式的な断面図である。
図1(c)は
図1(b)に対応している。
【0017】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、抗原捕捉ユニット50は、基板60とカートリッジ70とを有して構成されている。
【0018】
基板60は、例えば、ブルーレイディスク(BD)、DVD、コンパクトディスク(CD)等の光ディスクと同等の円板形状を有する。基板60の中心部には位置決め孔61が形成されている。
【0019】
基板60は、例えば、一般的に光ディスクに用いられるポリカーボネート樹脂やシクロオレフィンポリマー等の樹脂材料で形成されている。なお、基板60は、上記の光ディスクに限定されるものではなく、他の形態や所定の規格に準拠した光ディスクを用いることもできる。
【0020】
図2は
図1(a)のB−Bで切断した部分拡大斜視図である。
図3はトラック領域64の凹部63において抗原80が微粒子82と抗体81とでサンドイッチ捕獲されている状態を模式的に示す拡大断面図である。
図4はトラック領域64の凹部63に微粒子82が捕獲されている状態を拡大して示す模式図である。
【0021】
図2に示すように、基板60の表面には、凸部62と凹部63とが半径方向に交互に配置されたトラック領域64が形成されている。凸部62及び凹部63は、内周部から外周部に向かってスパイラル状に形成されている。凸部62は光ディスクのランドに相当する。凹部63は光ディスクのグルーブに相当する。
図4に示す、凹部63(凸部62)の半径方向のピッチであるトラックピッチW64は例えば320nmである。
【0022】
図1(a)に示すように、カートリッジ70はリング形状を有する。カートリッジ70には、周方向に複数の円筒状の貫通孔71が形成されている。
【0023】
複数の貫通孔71は、基板60の中心Caから所定の距離Lxだけ離れた位置を中心Cbとする同一円周72上に貫通孔71の中心がそれぞれ位置するように等間隔に形成されている。
【0024】
図1(b)及び
図2に示すように、抗原捕捉ユニット50は、カートリッジ70の貫通孔71と基板60のトラック領域64とによって形成される複数のウェル51を有している。即ち、貫通孔71の内周面はウェル51の内周面を構成し、基板60のトラック領域64はウェル51の底面を構成している。ウェル51は試料液や緩衝溶液等を溜めるための容器である。
【0025】
なお、
図1(a)では、一例として8つのウェル51を示しているが、ウェル51の数はこれに限定されるものではない。
【0026】
図3に示すように、特定のたんぱく質である抗原80と特異的に結合する抗体81を含む緩衝溶液がウェル51に注入されると、抗体81はトラック領域64に固相抗体として固定される。以下、抗体81を固相抗体81と称す。
【0027】
抗原80を含む試料液がウェル51に注入されると、抗原80は固相抗体81と特異的に結合してトラック領域64、詳しくは凹部63に捕捉される。
【0028】
抗原80と特異的に結合する抗体が固定されている微粒子82を含む緩衝溶液がウェル51に注入されると、分析対象である微粒子82は、トラック領域64の凹部63に捕捉されている抗原80と特異的に結合して凹部63に標識抗体として捕捉される。従って、抗原80は、固相抗体81と標識抗体である微粒子82とによってトラック領域64の凹部63にサンドイッチ捕獲される。
【0029】
抗原80が固相抗体81と微粒子82とによってトラック領域64の凹部63にサンドイッチ捕獲されている状態を
図4に示す。球状の粒子が微粒子82である。微粒子82は凹部63に捕獲されている。
【0030】
図1(c)に示すように、カートリッジ70は基板60に対して着脱可能である。微粒子82の検出は、カートリッジ70を基板60から取り外し、基板60単体で行われる。
【0031】
図5は、抗原捕捉ユニット50を用いて形成された反応領域65を有する基板60の模式図である。
【0032】
基板60における、ウェル51の底面に対応するトラック領域64は、抗原抗体反応によって抗原80及び微粒子82が捕獲されている反応領域65である。即ち、基板60には、複数のウェル51にそれぞれ対応して、分析対象である微粒子を捕捉するための複数の反応領域65が形成されている。
【0033】
複数の反応領域65は、ウェル51と同様に、基板60の中心Caから所定の距離Lxだけ離れた位置を中心Cbとする同一円周72上に各反応領域65の中心がそれぞれ位置するように等間隔に形成されている。
【0034】
なお、
図5では8つのウェル51に対応して形成された8つの反応領域65を示しているが、ウェル51と同様に反応領域65の数はこれに限定されるものではない。
[分析装置]
図6は実施形態の分析装置1を示す構成図である。
図7は反応領域65と光ピックアップ20の検出位置PPUとの位置関係、及び、FG(Frequency Generator)素子11とターンテーブル回転検出センサ5の検出位置PFGとの位置関係を説明するための模式的な上面図である。
【0035】
図6に示すように、分析装置1は、ターンテーブル10、クランパ2、ターンテーブル駆動部3、ターンテーブル駆動回路4、ターンテーブル回転検出センサ5、分周回路6、ガイド軸7、光ピックアップ20、光ピックアップ駆動回路8、及び、制御部9を備えている。
【0036】
ターンテーブル10上には、基板60が、反応領域65が下向きになるように載置される。
【0037】
ターンテーブル10は、基板60が載置される側とは反対側(
図6における下側)に固定されている複数のFG素子11を有している。
【0038】
図7に示すように、複数のFG素子11は、ターンテーブル10の回転軸C10上に中心Cgを有する円周11g上に、等間隔に配置されている。
【0039】
なお、
図7では、一例として6つのFG素子11を示しているが、FG素子11の数はこれに限定されるものではない。
【0040】
クランパ2は、ターンテーブル10に対して離隔する方向及び接近する方向、即ち、
図6の上方向及び下方向に駆動される。基板60は、クランパ2が下方向に駆動されると、クランパ2とターンテーブル10とによって、ターンテーブル10上に保持される。
【0041】
具体的には、基板60は、その中心Caがターンテーブル10の回転軸C10上に位置するように保持される。また、基板60は、反応領域65が、ターンテーブル10の回転軸C10から所定の距離Lxだけ離れた位置を中心Cbとする円周72上に各反応領域65の中心がそれぞれ等間隔に位置するように保持される。
【0042】
ターンテーブル駆動部3は、ターンテーブル10を基板60及びクランパ2と共に、回転軸C10にて回転駆動させる。ターンテーブル駆動部3として、例えばスピンドルモータを用いることができる。
【0043】
ターンテーブル駆動回路4はターンテーブル駆動部3を制御する。例えば、ターンテーブル駆動回路4は、ターンテーブル10が基板60及びクランパ2と共に一定の線速度Lvで回転するようにターンテーブル駆動部3を制御する。
【0044】
ターンテーブル回転検出センサ5は、FG素子11と対向するようにターンテーブル10の近傍に配置されている。
【0045】
図7に示すように、ターンテーブル回転検出センサ5(
図6参照)は、複数のFG素子11が等間隔に配置されている円周11g上の検出位置PFGに配置されている。ターンテーブル回転検出センサ5は、FG素子11が発生する磁界を検出する磁気センサである。従って、FG素子11は検出位置PFGで検出される。
【0046】
ターンテーブル10を回転させると、FG素子11はターンテーブル回転検出センサ5の近傍を通過する。ターンテーブル回転検出センサ5は近傍を通過するFG素子11の磁界を検出してFGパルス信号FSを生成し、分周回路6及び制御部9へ出力する。
【0047】
FGパルス信号FSはターンテーブル10の回転速度(線速度)に比例した周波数で出力される。即ち、FGパルス信号FSはターンテーブル10の回転を検出するためのターンテーブル回転検出信号である。
【0048】
分周回路6は、入力されたFGパルス信号FSに対して分周処理を行う。分周比は、ターンテーブル10に配置されているFG素子11の数と同じに設定されている。例えば6個のFG素子11がターンテーブル10に配置されている場合は、分周比は6に設定される。なお、分周回路6を設けずに、制御部9のソフトウェアで分周処理を行うようにしてもよい。
【0049】
ガイド軸7は、基板60と並行に、かつ、基板60の半径方向に沿って配置されている。即ち、ガイド軸7は、ターンテーブル10の回転軸C10に直交する方向に沿って配置されている。
【0050】
光ピックアップ20はガイド軸7に支持されている。光ピックアップ20は、ガイド軸7に沿って基板60の半径方向に、かつ、基板60と並行に駆動される。即ち、光ピックアップ20は、ターンテーブル10の回転軸C10に直交する方向に沿って駆動される。
【0051】
光ピックアップ20は対物レンズ21を備えている。対物レンズ21はサスペンションワイヤ22に支持されている。対物レンズ21は、基板60に対して接近する方向及び離隔する方向、即ち、
図6の上方向及び下方向に駆動される。
【0052】
光ピックアップ20は基板60に向けてレーザ光20aを照射する。レーザ光20aは対物レンズ21によって基板60の反応領域65が形成されている側の面(
図6では基板60の下側の面)に集光される。
【0053】
光ピックアップ20は基板60からの反射光を受光する。光ピックアップ20は反射光の受光レベルを検出して受光レベル信号KSを生成し、制御部9へ出力する。
【0054】
図7に示す検出位置PPUはガイド軸7の軸線に相当する。光ピックアップ20はガイド軸7の軸線上を基板60の内周部から外周部へ移動していく。従って、反応領域65は検出位置PPUで光ピックアップ20によって検出される。
【0055】
光ピックアップ駆動回路8は光ピックアップ20の駆動を制御する。例えば光ピックアップ駆動回路8は、光ピックアップ20をガイド軸7に沿って移動させたり、光ピックアップ20の対物レンズ21を上下方向に移動させたりする。
【0056】
光ピックアップ駆動回路8は基板60の半径方向における光ピックアップ20の位置を検出して位置情報信号PSを生成し、制御部9へ出力する。
【0057】
制御部9は、ターンテーブル駆動回路4、分周回路6、及び、光ピックアップ駆動回路8を制御する。制御部9として、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。
【0058】
制御部9は、ターンテーブル回転検出センサ5から出力されたFGパルス信号FSに基づいて、ターンテーブル駆動回路4を介してターンテーブル10の回転、即ち、基板60の回転を制御する。
【0059】
制御部9は、光ピックアップ駆動回路8から出力された位置情報信号PSに基づいて、光ピックアップ20の駆動を制御する。
【0060】
制御部9は、光ピックアップ20から出力された受光レベル信号KSを解析し、分析対象である微粒子82の検出を行う。
[分析方法]
図8A及び
図8Bは、分析装置1による微粒子82の分析方法を説明するためのフローチャートである。
図9は、光ピックアップ20の受光レベル検出位置に対応する半径位置Pnと反応領域65a〜65hとの位置関係を説明するための模式的な上面図である。
【0061】
なお、
図9では、説明をわかりやすくするために、複数の反応領域65(
図7参照)を、第1の反応領域65a、第2の反応領域65b、第3の反応領域65c、第4の反応領域65d、第5の反応領域65e、第6の反応領域65f、第7の反応領域65g、及び、第8の反応領域65hとする。
【0062】
ここで、基板60の中心Caから、第1の反応領域65aにおける中心Ca側の端部の半径位置Pr(n=r)までの距離をLaとする。同様に、第2の反応領域65bの半径位置Ps(n=s)までの距離をLbとする。第3の反応領域65cの半径位置Pt(n=t)までの距離をLcとする。第4の反応領域65dの半径位置Pu(n=u)までの距離をLdとする。第5の反応領域65eの半径位置Pv(n=v)までの距離をLeとする。第6の反応領域65fの半径位置Pw(n=w)までの距離をLfとする。第7の反応領域65gの半径位置Px(n=x)までの距離をLgとする。第8の反応領域65hの半径位置Py(n=y)までの距離をLhとする。
【0063】
半径位置Pnは、反応領域65a〜65hを検出するための光ピックアップ20の検出位置に対応する。具体的には、半径位置Pnは、光ピックアップ20の検出位置PPU上において、光ピックアップ20からレーザ光20aが基板60に向けて照射され、基板60からの反射光を受光する受光レベル検出位置である。また、半径位置Pnは、ターンテーブル10の回転軸C10に直交する方向において、回転軸C10を基準とする相対位置である。なお、nはトラック領域64におけるトラック番号に相当する。
【0064】
制御部9は、光ピックアップ駆動回路8から出力される位置情報信号PSから、半径位置Pnを検出することができる。
【0065】
各反応領域65a〜65hの距離La〜Lhは、La<Lb、Lb<Lc、Lc<Ld、Ld<Le、Lb=Lh、Lc=Lg、Ld=Lfの各関係式で表すことができる。
【0066】
また、
図9では、説明をわかりやすくするために、複数のFG素子11(
図7参照)を、第1のFG素子11a、第2のFG素子11b、第3のFG素子11c、第4のFG素子11d、第5のFG素子11e、第6のFG素子11fとする。
【0067】
制御部9は、
図8AのステップS1にて、基板60が一定の線速度Lvで回転するようにターンテーブル駆動回路4を制御し、ターンテーブル駆動部3にターンテーブル10を回転駆動させる。
【0068】
制御部9は、ステップS2にて、光ピックアップ20から基板60に向けてレーザ光20aを照射させ、光ピックアップ駆動回路8を制御して、光ピックアップ20を、基板60の中心Caからの距離がL0(La=L0<Lb)である半径位置P0(n=0)へ移動させる。距離L0は例えば24mmである。
【0069】
光ピックアップ20は、ステップS3にて、基板60からの反射光を受光する。光ピックアップ20は反射光の受光レベルを検出して受光レベル信号KSを生成し、制御部9へ出力する。
【0070】
図10(a)は受光レベル信号KSの一例を示す図である。
図10(b)は
図10(a)のA1の部分拡大図である。
図10(a)及び
図10(b)において、縦軸は信号レベルであり、横軸は時間軸である。なお、信号レベルは光ピックアップ20の受光レベルに相当する。
【0071】
ところで、
図3に示すように、基板60が回転している状態で光ピックアップ20を半径位置P0へ移動させると、レーザ光20aは半径位置P0における凹部63に沿って走査される。
【0072】
微粒子82からの反射光の光量は、凹部63からの反射光の光量よりも小さいので、レーザ光20aが微粒子82上を走査されると光ピックアップ20の受光レベルは低下する。
【0073】
従って、
図10(a)のA1の領域は、微粒子82が捕捉されている反応領域65における受光レベル信号KSである。
【0074】
図11は各反応領域65a〜65hと各半径位置Pa〜Pgとの位置関係を説明するための模式的な上面図である。
図11の破線LSa〜LSgは各半径位置Pa〜Pgにおいてレーザ光20aが走査される軌跡を模式的に示している。
図11の半径位置Paは半径位置P0に相当する。
【0075】
基板60が回転している状態で光ピックアップ20を半径位置P0へ移動させると、レーザ光20aは半径位置P0を通る円周上を走査される。反応領域65aは他の反応領域65b〜65hよりも中心Caに近い位置に配置されているため、半径位置P0では、レーザ光20aは反応領域65a上のみを走査される。
【0076】
従って、半径位置P0では、レーザ光20aが反応領域65a上を走査されたときに、
図10(b)に示すような受光レベル信号KSが光ピックアップ20から制御部9へ出力される。
【0077】
図12(a)は微粒子パルス信号群を示す概念図である。
図12(b)は包絡線を示す概念図である。
図12(c)は包絡線と閾値との関係を示す概念図である。
図12(d)は包絡線パルス信号を示す概念図である。
図12(e)は測定ゲート信号を示す概念図である。
【0078】
制御部9は、ステップS4にて、
図12(a)に示すように、受光レベル信号KSに対してフィルタ処理を行い、微粒子パルス信号群MSを抽出する。
【0079】
制御部9は、ステップS5にて、
図12(b)に示すように、微粒子パルス信号群MSに対して包絡線処理を行い、包絡線EVを生成する。
【0080】
制御部9は、ステップS6にて、
図12(c)及び
図12(d)に示すように、包絡線EVと予め設定されている閾値Vthとから、包絡線パルス信号ESを生成する。
【0081】
制御部9は、ステップS7にて、反応領域65aにおける包絡線パルス信号ESa_nのパルス幅WEa_nを計測する。包絡線パルス信号ESa_n及びパルス幅WEa_nのaは反応領域65aのaに対応する。nはトラック番号(n=0,1,2,…)に相当する。
【0082】
制御部9は、ステップS8にて、パルス幅WEa_nが所定のパルス幅Wth以上か否かを判定する。
【0083】
パルス幅WEa_nが所定のパルス幅Wth以上ではない(NO)と判定された場合、制御部9は、ステップS81にて、基板60が1回転した次のトラック(n=n+1)における反応領域65aの包絡線パルス信号ESa_nのパルス幅WEa_nを計測する。
【0084】
パルス幅WEa_nが所定のパルス幅Wth以上である(YES)と判定された場合、制御部9は、パルス幅WEa_nが所定のパルス幅Wth以上であると判定された半径位置Ps(n=s)を特定する。制御部9は、
図8BのステップS9にて、分周回路6をリセットする。
【0085】
図13は、光ピックアップ20が半径位置P0へ移動したときの反応領域65a〜65hと光ピックアップ20の検出位置PPUとの位置関係、及び、FG素子11a〜11fとターンテーブル回転検出センサ5の検出位置PFGとの位置関係を説明するための模式的な上面図である。
【0086】
図13は、光ピックアップ20が半径位置P0へ移動し、反応領域65aが検出位置PPUに移動した状態を示している。
【0087】
図14は、包絡線パルス信号ESとFGパルス信号FSと同期信号SSと測定ゲート信号GSの関係を示すタイムチャートである。
【0088】
図13に示す状態において、ステップS8にて、
図14に示す包絡線パルス信号ESa_0(n=0)のパルス幅WEa_0(n=0)が所定のパルス幅Wth以上である(YES)と判定された場合、制御部9は、ステップS9にて、判定された包絡線パルス信号ESa_0が、反応領域65aにおける包絡線パルス信号であると判定する。
【0089】
即ち、制御部9は、ステップS9にて、半径位置P0と包絡線パルス信号ESa_0とから、反応領域65aを特定する。他の反応領域65b〜65hについても反応領域65aとの位置関係から特定される。
【0090】
制御部9は、包絡線パルス信号ESa_0の中心位置を測定基準と定め、包絡線パルス信号ESa_0の立ち上がりの時刻tea_0(n=0)で、分周回路6をリセットする。
【0091】
包絡線パルス信号ESa_0のパルス幅WEa_0が所定のパルス幅Wth以上であるか否かの判定は、例えば
図10(a)のB1で示す領域のノイズを検出対象から排除するために行われる。
【0092】
通常、ノイズから生成された包絡線パルス信号のパルス幅は、微粒子パルス信号群MSから生成された包絡線パルス信号のパルス幅よりも狭い。従って、包絡線パルス信号のパルス幅を判定することによってノイズを検出対象から排除し、検出対象の包絡線パルス信号のみを抽出することができる。
【0093】
分周回路6は、ステップS10にて、
図14に示すように、リセットされてから最初に入力されたFGパルス信号FSa0(n=0)の立ち上がり(時刻tf_0)に同期して立ち上がる同期信号SS0(n=0)を生成する。分周回路6は、同期信号SS0を生成した後も、基板60が回転している期間は、同期信号SSn(n=1,2,…)を生成する。
【0094】
同期信号SSnはFGパルス信号FSが分周回路6によって分周された信号である。同期信号SSnの周期は基板60の回転周期と一致している。即ち、
図13に示すようにFG素子11の数が6の場合には、分周回路6は、FGパルス信号FSが6分周処理された同期信号SSnを生成する。
【0095】
制御部9は、ステップS11にて、包絡線パルス信号ESa_0の立ち上がりの時刻tea_0から同期信号SS0の立ち上がりの時刻ts_0a(n=0)までの期間TWa_0(n=0)を計測する。
【0096】
制御部9は、ステップS12にて、反応領域65aにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントするための測定ゲート信号GSa_1(n=1)を生成する。測定ゲート信号GSa_nは、
図10(a)、
図10(b)、及び、
図12(e)に示す測定ゲート信号GSに相当する。
【0097】
上述したように、トラックピッチW64は例えば320nmである。基板60の中心Caから半径位置P0までの距離L0は例えば24mmである。トラックピッチW64は距離L0に対して0.0013%と小さい。従って、半径位置P0で反応領域65aを検出してから基板60が1回転して再び反応領域65aを検出するまでの同期信号SSnの周期を、2×π×L0/Lv(n=0)と見なすことができる。なお、Lvは基板60の回転速度(線速度)である。
【0098】
半径位置P0から基板60が1回転した半径位置P1で反応領域65aにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントするための測定ゲート信号GSa_1を立ち上げるタイミングは、同期信号SS0の立ち下り(時刻ts_0b)を起点として、式(1)から算出される期間TSa_0後の時刻tga_1に設定される。なお、WGa_1(n=1)は、半径位置P1における測定ゲート信号GSa_1のパルス幅である。WGa_nは、半径位置Pnと関係付けられて予め設定されている。
【0099】
【数1】
半径位置P1から基板60が1回転した半径位置P2での測定ゲート信号GSa_2を立ち上げるタイミングは、同期信号SS1(n=1)の立ち下り(時刻ts_1b)を起点として、期間TSa_1後の時刻tga_2に設定される。期間TSa_1は、式(1)と同様の式により、パルス幅WEa_1(n=1)、期間TWa_1、及び、パルス幅WGa_2(n=2)から算出される。
【0100】
パルス幅WEa_1は半径位置P1で測定ゲート信号GSa_1により検出された反応領域65aにおける包絡線パルス信号ESa_1(n=1)のパルス幅である。期間TWa_1は包絡線パルス信号ESa_1の立ち上がりの時刻tea_1から同期信号SS1の立ち上がりの時刻ts_1aまでの期間である。パルス幅WGa_2(n=2)は半径位置P2における測定ゲート信号GSa_2(n=2)のパルス幅である。
【0101】
従って、測定ゲート信号GSa_nを立ち上げるタイミングは、同期信号SSn−1の立ち下り(時刻ts_n−1b)を起点として、式(2)から算出される期間TSa_n−1後の時刻tga_nに設定される。
【0102】
【数2】
なお、Ln−1は基板60の中心Caから半径位置Pn−1までの距離である。WEa_n−1は半径位置Pn−1で測定ゲート信号GSa_n−1により検出された反応領域65aにおける包絡線パルス信号ESa_n−1のパルス幅である。TWa_n−1は包絡線パルス信号ESa_n−1の立ち上がりの時刻tea_n−1から同期信号SSn−1の立ち上がりの時刻ts_n−1aまでの期間である。WGa_nは、半径位置Pnにおける測定ゲート信号GSa_nのパルス幅である。
【0103】
即ち、制御部9は、包絡線パルス信号ESa_nと同期する測定ゲート信号GSa_nを生成する。
【0104】
制御部9は、ステップS13にて、測定ゲート信号GSa_nによって規制された所定期間(パルス幅WGa_n)内で検出された受光レベル信号KSから、反応領域65aにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎(n=0,1,2,…)に加算する。
【0105】
反応領域65aにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎(n=0,1,2,…)に加算することにより、反応領域65aにおける微粒子82の総数を計測することができる。微粒子82の数を計測することで、疾病に関連付けられた特定の抗原80を間接的に計測することができる。
【0106】
図15は、半径位置Pa〜Pgと各反応領域65a〜65hにおける微粒子パルス信号群MSの時間幅との関係を説明するための概念図である。ハッチング領域は微粒子パルス信号群MSを模式的に示すものである。
【0107】
図15に示すように、微粒子パルス信号群MSの幅は、同じ反応領域であっても半径位置によって異なる。微粒子パルス信号群MSの幅は、同じ半径位置であっても反応領域によって異なる。
【0108】
そのため、制御部9は、レーザ光20aが走査される半径位置と各反応領域65a〜65hとを関連付けて、各反応領域65a〜65hの微粒子パルス信号群MS(
図12(a)参照)よりも若干幅広のパルス幅WGa_n〜WGh_n(
図12(e)参照)を有する測定ゲート信号GSa_n〜GSh_nを適宜、生成する。
【0109】
具体的には、
図11に示すように、半径位置Pa(n=a)では、レーザ光20aは反応領域65aのみを走査される軌跡LSaとなる。そのため、制御部9は、
図15に示す反応領域65aにおける微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGa_a(n=a)を有する測定ゲート信号GSa_a(n=a)を生成する。なお、半径位置Paは半径位置P0に相当する。
【0110】
半径位置Pb(n=b)では、レーザ光20aは3つの反応領域65a,65b,65hを走査される軌跡LSbとなる。そのため、制御部9は、
図15に示す反応領域65a,65b,65hの微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGa_b,WGb_b,WGh_b(n=b)を有する測定ゲート信号GSa_b,GSb_b,GSh_b(n=b)を生成する。
【0111】
半径位置Pc(n=c)では、レーザ光20aは5つの反応領域65a,65b,65c,65g,65hを走査される軌跡LScとなる。そのため、制御部9は、
図15に示す反応領域65a,65b,65c,65g,65hの微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGa_c,WGb_c,WGc_c,WGg_c,WGh_c(n=c)を有する測定ゲート信号GSa_c,GSb_c,GSc_c,GSg_c,GSh_c(n=c)を生成する。
【0112】
半径位置Pd(n=d)では、レーザ光20aは7つの反応領域65a,65b,65c,65d,65f,65g,65hを走査される軌跡LSdとなる。そのため、制御部9は、
図15に示す反応領域65a,65b,65c,65d,65f,65g,65hの微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGa_d,WGb_d,WGc_d,WGd_d,WGf_d,WGg_d,WGh_d(n=d)を有する測定ゲート信号GSa_d,GSb_d,GSc_d,GSd_d,GSf_d,GSg_d,GSh_d(n=d)を生成する。
【0113】
半径位置Pe(n=e)及び半径位置Pf(n=f)では、レーザ光20aは全ての反応領域65a〜65hを走査される軌跡LSe及びLSfとなる。そのため、制御部9は、
図15に示す反応領域65a〜65hの微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広の、パルス幅WGa_e〜WGh_e(n=e)を有する測定ゲート信号GSa_e〜GSh_e(n=e)、及び、パルス幅WGa_f〜WGh_f(n=f)を有する測定ゲート信号GSa_f〜GSh_f(n=f)を生成する。
【0114】
半径位置Pg(n=g)では、レーザ光20aは反応領域65eのみを走査される軌跡LSgとなる。そのため、制御部9は、
図15に示す反応領域65eにおける微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGe_g(n=g)を有する測定ゲート信号GSe_g(n=g)を生成する。
【0115】
よって、制御部9は、ステップS13にて、レーザ光20aが走査される半径位置と各反応領域65a〜65hとを関連付けて、各反応領域65a〜65hの微粒子パルス信号群MSよりも若干幅広のパルス幅WGa_n〜WGh_nを有する測定ゲート信号GSa_n〜GSh_nを適宜生成する。制御部9は、測定ゲート信号GSa_n〜GSh_n毎に各微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎(n=0,1,2,…)に加算する。
【0116】
各測定ゲート信号GSa_n〜GSh_nのパルス幅WGa_n〜WGh_nは反応領域65a〜65h毎に半径位置Pnに関係付けられて制御部9に予め記憶されている。
【0117】
各反応領域65a〜65hにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎(n=0,1,2,…)に加算することにより、反応領域65a〜65h毎に微粒子82の総数を計測することができる。微粒子82の数を計測することで、疾病に関連付けられた特定の抗原80を間接的に計測することができる。
【0118】
ところで、基板60を回転させた状態で、光ピックアップ20を基板60の内周部から外周部に向けて移動させていくと、例えば
図11の半径位置Pfではレーザ光20aが走査される軌跡LSfが反応領域65aから外れてしまう。そのため、反応領域65aにおける包絡線パルス信号ESa_nを基準とした測定を継続させることができない。
【0119】
そこで、制御部9は、ステップS14にて、レーザ光20aが走査される軌跡が反応領域65aから外れる前の半径位置Pm(
図11の半径位置Peに相当する)に光ピックアップ20が移動したときに、基板60の中心Caから最も離れた位置に形成されている反応領域65eに測定基準を切り替える。
【0120】
図16(a)は、光ピックアップ20が半径位置Pmへ移動し、反応領域65aが検出位置PPUに移動した状態を示している。
図16(b)は
図16(a)の状態から基板60が回転し、半径位置Pmにおいて反応領域65eが検出位置PPUに移動した状態を示している。
図16(a)及び
図16(b)は
図11に対応する。
【0121】
図17は、包絡線パルス信号ESとFGパルス信号FSと同期信号SSと測定ゲート信号GSの関係を示すタイムチャートである。
図17は
図14に対応する。
【0122】
制御部9は、ステップS14にて、光ピックアップ駆動回路8から出力される位置情報信号PS(
図6参照)から、光ピックアップ20が半径位置Pm(n=m)へ移動したことを認識し、各反応領域65a,65b,65c,65d,65e,65f,65g,65hに対応する測定ゲート信号GSa_m,GSb_m,GSc_m,GSd_m,GSe_m,GSf_m,GSg_m,GSh_mを生成する。半径位置Pmでは、全ての反応領域65a〜65hが走査されるため、各反応領域65a〜65hに対応する測定ゲート信号GSa_m〜GSh_mが生成される。
【0123】
図17に示すように、測定ゲート信号GSa_m(n=m)〜GSd_m(n=m)は、これまでと同様に、基板60が1回転する前の反応領域65aにおける包絡線パルス信号ESa_m−1(n=m−1)を基準にして生成される。
【0124】
具体的には、測定ゲート信号GSa_m(n=m)を立ち上げるタイミングは、同期信号SSm−1の立ち下り(時刻ts_m−1b)を起点として、式(2)から算出される期間TSa_m−1後の時刻tga_mに設定される。測定ゲート信号GSb_m(n=m)〜GSd_m(n=m)も同様である。
【0125】
それに対して、測定ゲート信号GSe_m(n=m)は、基板60が1回転する前の反応領域65eにおける包絡線パルス信号ESe_m−1(n=m−1)を基準にして生成される。
【0126】
具体的には、測定ゲート信号GSe_mを立ち上げるタイミングは、同期信号SSmの立ち上がり(時刻ts_ma)を起点として、式(3)から算出される期間TSe_m−1後の時刻tge_mに設定される。測定ゲート信号GSe_m以降の測定ゲート信号GS_nも同様である。
【0127】
【数3】
なお、Lm(n=m)は基板60の中心Caから半径位置Pm(
図11の半径位置Peに相当する)までの距離である。WEe_m−1は半径位置Pm−1で測定ゲート信号GSe_m−1により検出された反応領域65eにおける包絡線パルス信号ESe_m−1のパルス幅である。TWe_m−1は包絡線パルス信号ESe_m−1の立ち上がりの時刻tee_m−1から同期信号SSm−1の立ち下がりの時刻ts_m−1bまでの期間である。WGe_mは、半径位置Pmにおける測定ゲート信号GSe_mのパルス幅である。
【0128】
即ち、制御部9は、包絡線パルス信号ESa_m〜ESh_mとそれぞれ同期する測定ゲート信号GSa_m〜GSh_mを生成する。
【0129】
従って、レーザ光20aが走査される半径位置Pmに応じて、基準となる反応領域を切り替えることにより、測定を継続させることができる。
【0130】
制御部9は、基準となる反応領域が反応領域65aから反応領域65eに切り替えられた後も、各反応領域65a〜65hにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎に加算する。
【0131】
制御部9は、ステップS15にて、光ピックアップ駆動回路8から出力される位置情報信号PSから、各反応領域65a〜65hにおける測定が完了したことを確認する。
【0132】
制御部9は、ステップS16にて、光ピックアップ駆動回路8を制御して、光ピックアップ20を初期位置へ移動させ、レーザ光20aの照射を停止させる。制御部9は、ターンテーブル駆動回路4を制御して、ターンテーブル10の回転を停止させる。
【0133】
図18は、反応領域65aにおける微粒子82(パルス)の総数の補完方法を説明するための概念図である。
【0134】
図18は、レーザ光20aが、
図18の右側から左側へ、トラックTR1〜TR6毎に走査された状態を示している。ステップS8にて、反応領域65aにおける包絡線パルス信号ESa_nのパルス幅WEa_nが所定のパルス幅Wth以上であるか否かを判断される。
図18は、トラックTR1〜TR5では否(NO)と判断され、レーザ光20aがトラックTR6を走査されたときに所定のパルス幅Wth以上である(YES)と判断された場合を示している。
【0135】
この場合、トラックTR6以降では微粒子82(パルス)をカウントすることができるものの、トラックTR1〜TR5についてはカウントされない。
【0136】
そこで、微粒子82(パルス)がカウントされなかったトラックTR1〜TR5の微粒子82の数を補完し、反応領域65aにおける微粒子82の総数を正規化する。
【0137】
具体的には、反応領域65aにおいて、微粒子82(パルス)がカウントされなかったトラックTR1〜TR5の領域と、カウントされたトラックTR6以降の領域との面積比により、トラックTR1〜TR5における微粒子82の数を補完して、反応領域65aにおける微粒子82の総数を正規化する。なお、光ピックアップ駆動回路8から出力された位置情報信号PSから半径位置Ps(n=s)を特定することで、カウントが開始されたトラックを特定することができる。
【0138】
例えば、反応領域65aの半径r64aを3mm、トラックピッチW64を320nmとすると、反応領域65aの中心C64aからトラックTR5までの距離L64aは2.9984mmとなる。微粒子82(パルス)がカウントされた面積は28.274125mm2となり、カウントされた面積に対する反応領域65aの全面積(28.274334)の補完比率は1.0000074となる。
【0139】
従って、トラックTR6以降にカウントされた微粒子82の総数に、上記の補完比率を乗算することにより、反応領域65aにおける微粒子82の総数を正規化することができる。
【0140】
そこで、制御部9は、ステップS17にて、ステップS8で特定された半径位置Ps(n=s)から、反応領域65aにおいて、微粒子82(パルス)がカウントされなかった領域のカウント数を補完し、反応領域65aにおける微粒子82の総数を正規化する。
【0141】
なお、微粒子82の総数を正規化は、他の反応領域65b〜65hに対しても適用可能である。
【0142】
各反応領域65b〜65hにおける微粒子82の数は、分析装置1に記憶されたり、分析装置1から外部に出力されたりする。
【0143】
第1実施形態の分析装置1、分析用基板及び分析方法では、基板60が、複数の反応領域65がターンテーブル10の回転軸C10とは異なる位置(所定の距離Lxだけ離れた位置)を中心Cbとする円周72上に位置するように保持される。従って、複数の反応領域65は時間差で検出されるので、最初に検出される反応領域を特定することで他の反応領域も特定することができる。
【0144】
よって、第1実施形態の分析装置1、分析用基板及び分析方法によれば、反応領域の位置情報が記録されていない基板に対しても、反応領域を特定して、抗体、抗原等の生体物質を分析することが可能になる。
【0145】
また、第1実施形態の分析装置1、分析用基板及び分析方法では、ターンテーブル回転検出センサから出力されるターンテーブル回転検出信号、ターンテーブル回転検出信号が分周された同期信号、及び、光ピックアップから出力される受光レベル信号から生成される包絡線パルス信号に基づいて、光ピックアップの検出位置に応じて反応領域毎に、受光レベル信号から微粒子パルス信号群を抽出するための測定ゲート信号を生成する。
【0146】
これにより、ノイズを排除して検出対象の微粒子パルス信号群を抽出することができるので、分析対象である微粒子の検出精度を向上させることができる。
[第2実施形態]
図19〜
図28を用いて、第2実施形態の分析装置、分析用基板及び分析方法を説明する。なお、説明をわかりやすくするために、第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付す。
[基板の反応領域]
図19及び
図20を用いて、基板の反応領域を説明する。
図19(a)は基板60に反応領域165(
図19(c)に図示)を形成するための抗原捕捉ユニット150の模式的な上面図である。
図19(b)は
図19(a)のC−Cにおける模式的な断面図である。
図19(c)はカートリッジ170が基板60に対して着脱可能であることを説明するための模式的な断面図である。
図19(c)は
図19(b)に対応している。
【0147】
第2実施形態の抗原捕捉ユニット150は、第1実施形態の抗原捕捉ユニット50と比較して、カートリッジの貫通孔の位置が相違する。そのため、抗原捕捉ユニットにより形成される反応領域の位置が相違する。
【0148】
図19(a)及び
図19(b)に示すように、抗原捕捉ユニット150は、基板60とカートリッジ170とを有して構成されている。第2実施形態の基板60は第1実施形態の基板60と共通の基板である。従って、
図2に示すように、基板60の表面には、凸部62と凹部63とが半径方向に交互に配置されたトラック領域64が形成されている。凸部62及び凹部63は、基板60の内周部から外周部に向かってスパイラル状に形成されている。
【0149】
図19(a)に示すように、カートリッジ170はリング形状を有する。カートリッジ170には、複数の円筒状の貫通孔171が、凸部62及び凹部63が形成するスパイラルと同一回転方向となるようにスパイラル状に形成されている。なお、説明をわかりやすくするために、複数の貫通孔171を、基板60の内周部から外周部に向かってスパイラル方向に、第1の貫通孔171a、第2の貫通孔171b、第3の貫通孔171c、第4の貫通孔171d、第5の貫通孔171e、第6の貫通孔171f、第7の貫通孔171g、及び、第8の貫通孔171hと末尾にa〜hの符号を付す。従って、複数の貫通孔171a〜171hは、貫通孔171aを起点にして右回りに、貫通孔171b、貫通孔171c、貫通孔171d、貫通孔171e、貫通孔171f、貫通孔171g、及び、貫通孔171hの順番で徐々に基板60の外周に近づく位置に形成されている。
【0150】
図19(b)及び
図2に示すように、抗原捕捉ユニット150は、カートリッジ170の貫通孔171と基板60のトラック領域64とによって形成される複数のウェル151を有している。即ち、貫通孔171の内周面はウェル151の内周面を構成し、基板60のトラック領域64はウェル151の底面を構成している。ウェル151は試料液や緩衝溶液等を溜めるための容器である。
【0151】
複数のウェル151は複数の貫通孔171にそれぞれ対応している。即ち、複数のウェル151は、凸部62及び凹部63が形成するスパイラルと同一回転方向となるようにスパイラル状に形成されている。なお、説明をわかりやすくするために、複数のウェル151を、複数の貫通孔171a〜171hにそれぞれ対応させて、基板60の内周部から外周部に向かってスパイラル方向に、第1のウェル151a、第2のウェル151b、第3のウェル151c、第4のウェル151d、第5のウェル151e、第6のウェル151f、第7のウェル151g、及び、第8のウェル151hと末尾にa〜hの符号を付す。従って、複数のウェル151a〜151hは、ウェル151aを起点にして右回りに、ウェル151b、ウェル151c、ウェル151d、ウェル151e、ウェル151f、ウェル151g、及び、ウェル151hの順番で徐々に基板60の外周に近づく位置に形成されている。
【0152】
なお、
図19(a)では、一例として8つのウェル151を示しているが、ウェル151の数はこれに限定されるものではない。
【0153】
図3に示すように、特定のたんぱく質である抗原80と特異的に結合する抗体81を含む緩衝溶液がウェル151に注入されると、抗体81はトラック領域64に固相抗体として固定される。以下、抗体81を固相抗体81と称す。
【0154】
抗原80を含む試料液がウェル151に注入されると、抗原80は固相抗体81と特異的に結合してトラック領域64、詳しくは凹部63に捕捉される。
【0155】
抗原80と特異的に結合する抗体が固定されている微粒子82を含む緩衝溶液がウェル151に注入されると、分析対象である微粒子82は、トラック領域64の凹部63に捕捉されている抗原80と特異的に結合して凹部63に標識抗体として捕捉される。従って、抗原80は、固相抗体81と標識抗体である微粒子82とによってトラック領域64の凹部63にサンドイッチ捕獲される。
【0156】
図19(c)に示すように、カートリッジ170は基板60に対して着脱可能である。微粒子82の検出は、カートリッジ170を基板60から取り外し、基板60単体で行われる。
【0157】
図20は、抗原捕捉ユニット150を用いて形成された反応領域165を有する基板60の模式図である。
【0158】
基板60における、ウェル151の底面に対応するトラック領域64は、抗原抗体反応によって抗原80及び微粒子82が捕獲されている反応領域165である。即ち、基板60には、複数のウェル151にそれぞれ対応して、分析対象である微粒子を捕捉するための複数の反応領域165が形成されている。即ち、複数の反応領域165は、凸部62及び凹部63が形成するスパイラルと同一回転方向となるようにスパイラル状に形成されている。
【0159】
なお、説明をわかりやすくするために、複数の反応領域165を、複数のウェル151a〜151hにそれぞれ対応させて、基板60の内周部から外周部に向かってスパイラル方向に、第1の反応領域165a、第2の反応領域165b、第3の反応領域165c、第4の反応領域165d、第5の反応領域165e、第6の反応領域165f、第7の反応領域165g、及び、第8の反応領域165hと末尾にa〜hの符号を付す。
【0160】
従って、複数の反応領域165a〜165hは、反応領域165aを起点にして右回りに、反応領域165b、反応領域165c、反応領域165d、反応領域165e、反応領域165f、反応領域165g、及び、反応領域165hの順番で徐々に基板60の外周に近づく位置に形成されている。
【0161】
なお、
図20では8つのウェル151に対応して形成された8つの反応領域165を示しているが、ウェル151と同様に反応領域165の数はこれに限定されるものではない。
[分析装置]
第2実施形態の分析装置は第1実施形態の分析装置1と共通である。第2実施形態では、基板60は、その中心Caがターンテーブル10の回転軸C10上に位置するように、クランパ2とターンテーブル10とによってターンテーブル10上に保持される。
[分析方法]
第2実施形態の分析方法は、第1実施形態の分析方法と比較して、基本的な手順は共通であり、反応領域の位置が異なることに起因して処理内容が相違する。
【0162】
図21A及び
図21Bは、分析装置1による微粒子82の分析方法を説明するためのフローチャートである。
図22は、光ピックアップ20の受光レベル検出位置に対応する半径位置PPnと反応領域165a〜165hとの位置関係を説明するための模式的な上面図である。
図20では基板60を反応領域165が形成されている面側から見た状態を示しているのに対し、
図22では基板60を反応領域165が形成されている面とは反対の面側から見た状態、即ち、基板60をクランパ2側から見た状態を示している。後述する
図23、
図24、及び、
図27についても同様である。
【0163】
ここで、基板60の中心Caから、第1の反応領域165aにおける中心Ca側の端部の半径位置PPr(n=r)までの距離をLLaとする。同様に、第2の反応領域165bの半径位置PPs(n=s)までの距離をLLbとする。第3の反応領域165cの半径位置PPt(n=t)までの距離をLLcとする。第4の反応領域165dの半径位置PPu(n=u)までの距離をLLdとする。第5の反応領域165eの半径位置PPv(n=v)までの距離をLLeとする。第6の反応領域165fの半径位置PPw(n=w)までの距離をLLfとする。第7の反応領域165gの半径位置PPx(n=x)までの距離をLLgとする。第8の反応領域165hの半径位置PPy(n=y)までの距離をLLhとする。
【0164】
半径位置PPnは、反応領域165a〜165hを検出するための光ピックアップ20の検出位置に対応する。具体的には、半径位置PPnは、光ピックアップ20の検出位置PPU上において、光ピックアップ20からレーザ光20aが基板60に向けて照射され、基板60からの反射光を受光する受光レベル検出位置である。また、半径位置PPnは、ターンテーブル10の回転軸C10に直交する方向において、回転軸C10を基準とする相対位置である。なお、nはトラック領域64におけるトラック番号に相当する。
【0165】
制御部9は、光ピックアップ駆動回路8から出力される位置情報信号PSから、半径位置PPnを検出することができる。
【0166】
各反応領域165a〜165hの距離LLa〜LLhは、LLa<LLb<LLc<LLd<LLe<LLf<LLg<LLhの関係式で表すことができる。
【0167】
制御部9は、
図21AのステップS101にて、基板60が一定の線速度Lvで回転するようにターンテーブル駆動回路4を制御し、ターンテーブル駆動部3にターンテーブル10を回転駆動させる。
【0168】
制御部9は、ステップS102にて、光ピックアップ20から基板60に向けてレーザ光20aを照射させ、光ピックアップ駆動回路8を制御して、光ピックアップ20を、基板60の中心Caからの距離がLL0(LLa=LL0<LLb)である半径位置PP0(n=0)へ移動させる。距離LL0は例えば24mmである。
【0169】
光ピックアップ20は、ステップS103にて、基板60からの反射光を受光する。光ピックアップ20は反射光の受光レベルを検出して受光レベル信号KSを生成し、制御部9へ出力する。
【0170】
図23は各反応領域165a〜165hと各半径位置PPa〜PPfとの位置関係を説明するための模式的な上面図である。
図23の破線LLSa〜LLSfは各半径位置PPa〜PPfにおいてレーザ光20aが走査される軌跡を模式的に示している。
図23の半径位置PPaは半径位置PP0に相当する。
【0171】
基板60が回転している状態で光ピックアップ20を半径位置PP0へ移動させると、レーザ光20aは半径位置PP0を通る円周上を走査される。反応領域165aは他の反応領域165b〜165hよりも中心Caに近い位置に配置されているため、半径位置PP0では、レーザ光20aは反応領域165a上のみを走査される。
【0172】
従って、半径位置PP0では、レーザ光20aが反応領域165a上を走査されたときに、受光レベル信号KSが光ピックアップ20から制御部9へ出力される。
【0173】
制御部9は、ステップS104にて、
図12(a)に示すように、受光レベル信号KSに対してフィルタ処理を行い、微粒子パルス信号群MSを抽出する。
【0174】
制御部9は、ステップS105にて、
図12(b)に示すように、微粒子パルス信号群MSに対して包絡線処理を行い、包絡線EVを生成する。
【0175】
制御部9は、ステップS106にて、
図12(c)及び
図12(d)に示すように、包絡線EVと予め設定されている閾値Vthとから、包絡線パルス信号ESを生成する。
【0176】
制御部9は、ステップS107にて、反応領域165aにおける包絡線パルス信号ESa_nのパルス幅WEa_nを計測する。包絡線パルス信号ESa_n及びパルス幅WEa_nのaは反応領域165aのaに対応する。nはトラック番号(n=0,1,2,…)に相当する。
【0177】
制御部9は、ステップS108にて、パルス幅WEa_nが所定のパルス幅Wth以上か否かを判定する。
【0178】
パルス幅WEa_nが所定のパルス幅Wth以上ではない(NO)と判定された場合、制御部9は、ステップS181にて、基板60が1回転した次のトラック(n=n+1)における反応領域165aの包絡線パルス信号ESa_nのパルス幅WEa_nを計測する。
【0179】
パルス幅WEa_nが所定のパルス幅Wth以上である(YES)と判定された場合、制御部9は、パルス幅WEa_nが所定のパルス幅Wth以上であると判定された半径位置PPs(n=s)を特定する。制御部9は、
図21BのステップS109にて、分周回路6をリセットする。
【0180】
図24は、光ピックアップ20が半径位置PP0へ移動したときの反応領域165a〜165hと光ピックアップ20の検出位置PPUとの位置関係、及び、FG素子11a〜11fとターンテーブル回転検出センサ5の検出位置PFGとの位置関係を説明するための模式的な上面図である。
【0181】
図24は、光ピックアップ20が半径位置PP0へ移動し、反応領域165aが検出位置PPUに移動した状態を示している。
【0182】
図25は、包絡線パルス信号ESとFGパルス信号FSと同期信号SSと測定ゲート信号GSの関係を示すタイムチャートである。
【0183】
図24に示す状態において、ステップS108にて、
図25に示す包絡線パルス信号EESa_0(n=0)のパルス幅WEa_0(n=0)が所定のパルス幅Wth以上である(YES)と判定された場合、制御部9は、ステップS109にて、判定された包絡線パルス信号ESa_0が、反応領域165aにおける包絡線パルス信号であると判定する。
【0184】
即ち、制御部9は、ステップS109にて、半径位置PP0と包絡線パルス信号ESa_0とから、反応領域165aを特定する。他の反応領域165b〜165hについても反応領域165aとの位置関係から特定される。
【0185】
制御部9は、包絡線パルス信号ESa_0の中心位置を測定基準と定め、包絡線パルス信号ESa_0の立ち上がりの時刻tea_0(n=0)で、分周回路6をリセットする。
【0186】
包絡線パルス信号ESa_0のパルス幅WEa_0が所定のパルス幅Wth以上であるか否かの判定は、例えば
図10(a)のB1で示す領域のノイズを検出対象から排除するために行われる。
【0187】
通常、ノイズから生成された包絡線パルス信号のパルス幅は、微粒子パルス信号群MSから生成された包絡線パルス信号のパルス幅よりも狭い。従って、包絡線パルス信号のパルス幅を判定することによってノイズを検出対象から排除し、検出対象の包絡線パルス信号のみを抽出することができる。
【0188】
分周回路6は、ステップS110にて、
図25に示すように、リセットされてから最初に入力されたFGパルス信号FSa0(n=0)の立ち上がり(時刻tf_0)に同期して立ち上がる同期信号SS0(n=0)を生成する。分周回路6は、同期信号SS0を生成した後も、基板60が回転している期間は、同期信号SSn(n=1,2,…)を生成する。
【0189】
同期信号SSnはFGパルス信号FSが分周回路6によって分周された信号である。同期信号SSnの周期は基板60の回転周期と一致している。即ち、
図24に示すようにFG素子11の数が6の場合には、分周回路6は、FGパルス信号FSが6分周処理された同期信号SSnを生成する。
【0190】
制御部9は、ステップS111にて、包絡線パルス信号ESa_0の立ち上がりの時刻tea_0から同期信号SS0の立ち上がりの時刻ts_0a(n=0)までの期間TWa_0(n=0)を計測する。
【0191】
制御部9は、ステップS112にて、反応領域165aにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントするための測定ゲート信号GSa_1(n=1)を生成する。測定ゲート信号GSa_nは、
図10(a)、
図10(b)、及び、
図12(e)に示す測定ゲート信号GSに相当する。
【0192】
トラックピッチW64は例えば320nmである。基板60の中心Caから半径位置PP0までの距離LL0は例えば24mmである。トラックピッチW64は距離LL0に対して0.0013%と小さい。従って、半径位置PP0で反応領域165aを検出してから基板60が1回転して再び反応領域165aを検出するまでの同期信号SSnの周期を、2×π×LL0/Lv(n=0)と見なすことができる。なお、Lvは基板60の回転速度(線速度)である。
【0193】
半径位置PP0から基板60が1回転した半径位置PP1で反応領域165aにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントするための測定ゲート信号GSa_1を立ち上げるタイミングは、同期信号SS0の立ち下り(時刻ts_0b)を起点として、式(1)から算出される期間TSa_0後の時刻tga_1に設定される。なお、WGa_1(n=1)は、半径位置PP1における測定ゲート信号GSa_1のパルス幅である。WGa_nは、半径位置PPnと関係付けられて予め設定されている。
【0194】
半径位置PP1から基板60が1回転した半径位置PP2での測定ゲート信号GSa_2を立ち上げるタイミングは、同期信号SS1(n=1)の立ち下り(時刻ts_1b)を起点として、期間TSa_1後の時刻tga_2に設定される。期間TSa_1は、式(1)と同様の式により、パルス幅WEa_1(n=1)、期間TWa_1、及び、パルス幅WGa_2(n=2)から算出される。
【0195】
パルス幅WEa_1は半径位置PP1で測定ゲート信号GSa_1により検出された反応領域165aにおける包絡線パルス信号ESa_1(n=1)のパルス幅である。期間TWa_1は包絡線パルス信号ESa_1の立ち上がりの時刻tea_1から同期信号SS1の立ち上がりの時刻ts_1aまでの期間である。パルス幅WGa_2(n=2)は半径位置PP2における測定ゲート信号GSa_2(n=2)のパルス幅である。
【0196】
従って、測定ゲート信号GSa_nを立ち上げるタイミングは、同期信号SSn−1の立ち下り(時刻ts_n−1b)を起点として、式(2)から算出される期間TSa_n−1後の時刻tga_nに設定される。
【0197】
即ち、制御部9は、包絡線パルス信号ESa_nと同期する測定ゲート信号GSa_nを生成する。
【0198】
制御部9は、ステップS113にて、測定ゲート信号GSa_nによって規制された所定期間(パルス幅WGa_n)内で検出された受光レベル信号KSから、反応領域165aにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎(n=0,1,2,…)に加算する。
【0199】
反応領域165aにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎(n=0,1,2,…)に加算することにより、反応領域165aにおける微粒子82の総数を計測することができる。微粒子82の数を計測することで、疾病に関連付けられた特定の抗原80を間接的に計測することができる。
【0200】
図26は、半径位置PPa〜PPfと各反応領域165a〜165hにおける微粒子パルス信号群MSの時間幅との関係を説明するための概念図である。ハッチング領域は微粒子パルス信号群MSを模式的に示すものである。
【0201】
図26に示すように、微粒子パルス信号群MSの幅は、同じ反応領域であっても半径位置によって異なる。微粒子パルス信号群MSの幅は、同じ半径位置であっても反応領域によって異なる。
【0202】
そのため、制御部9は、レーザ光20aが走査される半径位置と各反応領域165a〜165hとを関連付けて、各反応領域165a〜165hの微粒子パルス信号群MS(
図12(a)参照)よりも若干幅広のパルス幅WGa_n〜WGh_n(
図12(e)参照)を有する測定ゲート信号GSa_n〜GSh_nを適宜、生成する。
【0203】
具体的には、
図23に示すように、半径位置PPa(n=a)では、レーザ光20aは反応領域165aのみを走査される軌跡LLSaとなる。そのため、制御部9は、
図26に示す反応領域165aにおける微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGa_a(n=a)を有する測定ゲート信号GSa_a(n=a)を生成する。なお、半径位置PPaは半径位置PP0に相当する。
【0204】
半径位置PPb(n=b)では、レーザ光20aは2つの反応領域165a,165bを走査される軌跡LLSbとなる。そのため、制御部9は、
図26に示す反応領域165a,165bの微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGa_b,WGb_b(n=b)を有する測定ゲート信号GSa_b,GSb_b(n=b)を生成する。
【0205】
半径位置PPc(n=c)では、レーザ光20aは5つの反応領域165a,165b,165c,165d,165eを走査される軌跡LLScとなる。そのため、制御部9は、
図26に示す反応領域165a,165b,165c,165d,165eの微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGa_c,WGb_c,WGc_c,WGd_c,WGe_c(n=c)を有する測定ゲート信号GSa_c,GSb_c,GSc_c,GSd_c,GSe_c(n=c)を生成する。
【0206】
半径位置PPd(n=d)では、レーザ光20aは全ての反応領域165a〜165hを走査される軌跡LLSdとなる。そのため、制御部9は、
図26に示す反応領域165a〜165hの微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広の、パルス幅WGa_d〜WGh_d(n=d)を有する測定ゲート信号GSa_d〜GSh_d(n=d)を生成する。
【0207】
半径位置PPe(n=e)では、レーザ光20aは4つの反応領域165e,165f,165g,165hを走査される軌跡LLSeとなる。そのため、制御部9は、
図26に示す反応領域165e,165f,165g,165hの微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGe_e,WGf_e,WGg_e,WGh_e(n=e)を有する測定ゲート信号GSe_e,GSf_e,GSg_e,GSh_e(n=e)を生成する。
【0208】
半径位置PPf(n=f)では、レーザ光20aは反応領域165hのみを走査される軌跡LLSfとなる。そのため、制御部9は、
図26に示す反応領域165hにおける微粒子パルス信号群の時間幅よりも若干幅広のパルス幅WGh_f(n=f)を有する測定ゲート信号GSh_f(n=f)を生成する。
【0209】
よって、制御部9は、ステップS113にて、レーザ光20aが走査される半径位置と各反応領域165a〜165hとを関連付けて、各反応領域165a〜165hの微粒子パルス信号群MSよりも若干幅広のパルス幅WGa_n〜WGh_nを有する測定ゲート信号GSa_n〜GSh_nを適宜生成する。制御部9は、測定ゲート信号GSa_n〜GSh_n毎に各微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎(n=0,1,2,…)に加算する。
【0210】
各測定ゲート信号GSa_n〜GSh_nのパルス幅WGa_n〜WGh_nは反応領域165a〜165h毎に半径位置PPnに関係付けられて制御部9に予め記憶されている。
【0211】
各反応領域165a〜165hにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎(n=0,1,2,…)に加算することにより、反応領域165a〜165h毎に微粒子82の総数を計測することができる。微粒子82の数を計測することで、疾病に関連付けられた特定の抗原80を間接的に計測することができる。
【0212】
ところで、基板60を回転させた状態で、光ピックアップ20を基板60の内周部から外周部に向けて移動させていくと、例えば
図23の半径位置PPeではレーザ光20aが走査される軌跡LLSeが反応領域165aから外れてしまう。そのため、反応領域165aにおける包絡線パルス信号ESa_nを基準とした測定を継続させることができない。
【0213】
そこで、制御部9は、ステップS114にて、レーザ光20aが走査される軌跡が反応領域65aから外れる前の半径位置PPm(
図23の半径位置PPdに相当する)に光ピックアップ20が移動したときに、基板60の中心Caから最も離れた位置に形成されている反応領域165hに測定基準を切り替える。
【0214】
図27(a)は、光ピックアップ20が半径位置PPmへ移動し、反応領域165aが検出位置PPUに移動した状態を示している。
図27(b)は
図27(a)の状態から基板60が回転し、半径位置PPmにおいて反応領域165hが検出位置PPUに移動した状態を示している。
図27(a)及び
図27(b)は
図23に対応する。
【0215】
図28は、包絡線パルス信号ESとFGパルス信号FSと同期信号SSと測定ゲート信号GSの関係を示すタイムチャートである。
図28は
図25に対応する。
【0216】
制御部9は、ステップS114にて、光ピックアップ駆動回路8から出力される位置情報信号PS(
図6参照)から、光ピックアップ20が半径位置PPm(n=m)へ移動したことを認識し、各反応領域165a,165b,165c,165d,165e,165f,165g,165hに対応する測定ゲート信号GSa_m,GSb_m,GSc_m,GSd_m,GSe_m,GSf_m,GSg_m,GSh_mを生成する。半径位置PPmでは、全ての反応領域165a〜165hが走査されるため、各反応領域165a〜165hに対応する測定ゲート信号GSa_m〜GSh_mが生成される。
【0217】
図28に示すように、測定ゲート信号GSa_m(n=m)〜GSg_m(n=m)は、これまでと同様に、基板60が1回転する前の反応領域165aにおける包絡線パルス信号ESa_m−1(n=m−1)を基準にして生成される。
【0218】
具体的には、測定ゲート信号GSa_m(n=m)を立ち上げるタイミングは、同期信号SSm−1の立ち下り(時刻ts_m−1b)を起点として、式(2)から算出される期間TSa_m−1後の時刻tga_mに設定される。測定ゲート信号GSb_m(n=m)〜GSg_m(n=m)も同様である。
【0219】
それに対して、測定ゲート信号GSh_m(n=m)は、基板60が1回転する前の反応領域165hにおける包絡線パルス信号ESh_m−1(n=m−1)を基準にして生成される。
【0220】
具体的には、測定ゲート信号GSh_mを立ち上げるタイミングは、同期信号SSmの立ち下がり(時刻ts_mb)を起点として、式(4)から算出される期間TSh_m−1後の時刻tgh_mに設定される。測定ゲート信号GSh_m以降の測定ゲート信号GS_nも同様である。
【0221】
【数4】
なお、Lm(n=m)は基板60の中心Caから半径位置PPm(
図23の半径位置PPdに相当する)までの距離である。WEh_m−1は半径位置PPm−1で測定ゲート信号GSh_m−1により検出された反応領域165hにおける包絡線パルス信号ESh_m−1のパルス幅である。TWh_m−1は包絡線パルス信号ESh_m−1の立ち上がりの時刻teh_m−1から同期信号SSmの立ち上がりの時刻ts_maまでの期間である。WGh_mは、半径位置PPmにおける測定ゲート信号GSh_mのパルス幅である。
【0222】
即ち、制御部9は、包絡線パルス信号ESa_m〜ESh_mとそれぞれ同期する測定ゲート信号GSa_m〜GSh_mを生成する。
【0223】
従って、レーザ光20aが走査される半径位置PPmに応じて、基準となる反応領域を切り替えることにより、測定を継続させることができる。
【0224】
制御部9は、基準となる反応領域が反応領域165aから反応領域165hに切り替えられた後も、各反応領域165a〜165hにおける微粒子パルス信号群MSのパルス数をカウントし、トラック毎に加算する。
【0225】
制御部9は、ステップS115にて、光ピックアップ駆動回路8から出力される位置情報信号PSから、各反応領域165a〜165hにおける測定が完了したことを確認する。
【0226】
制御部9は、ステップS116にて、光ピックアップ駆動回路8を制御して、光ピックアップ20を初期位置へ移動させ、レーザ光20aの照射を停止させる。制御部9は、ターンテーブル駆動回路4を制御して、ターンテーブル10の回転を停止させる。
【0227】
制御部9は、ステップS117にて、第1実施形態と同様の微粒子82(パルス)の総数の補完方法により、各反応領域165a〜165hにおける微粒子82の総数を正規化することが可能である。
【0228】
第2実施形態の分析装置1及び分析方法では、複数の反応領域165が凸部62及び凹部63が形成するスパイラルと同一回転方向となるスパイラル状に形成されている。従って、複数の反応領域165は時間差で検出されるので、最初に検出される反応領域を特定することで他の反応領域も特定することができる。
【0229】
よって、第2実施形態の分析装置1及び分析方法によれば、反応領域の位置情報が記録されていない基板に対しても、反応領域を特定して、抗体、抗原等の生体物質を分析することが可能になる。
【0230】
また、第2実施形態の分析装置1及び分析方法では、ターンテーブル回転検出センサから出力されるターンテーブル回転検出信号、ターンテーブル回転検出信号が分周された同期信号、及び、光ピックアップから出力される受光レベル信号から生成される包絡線パルス信号に基づいて、光ピックアップの検出位置に応じて反応領域毎に、受光レベル信号から微粒子パルス信号群を抽出するための測定ゲート信号を生成する。
【0231】
これにより、ノイズを排除して検出対象の微粒子パルス信号群を抽出することができるので、分析対象である微粒子の検出精度を向上させることができる。
【0232】
なお、本発明に係る実施形態は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0233】
例えば、第1及び第2実施形態の分析装置1では、基板60の回転を、FG素子11を用いて磁気的に検出したが、光センサ等を用いて光学的に検出するようにしてもよい。
【0234】
また、第1及び第2実施形態の分析装置1では、反応領域65及び反応領域165が下向きになるように基板60をターンテーブル10上に載置する構成としたが、これに限定されるものではなく、反応領域65及び反応領域165が上向きになるように構成してもよい。