特許第6841328号(P6841328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6841328-無線通信装置 図000002
  • 特許6841328-無線通信装置 図000003
  • 特許6841328-無線通信装置 図000004
  • 特許6841328-無線通信装置 図000005
  • 特許6841328-無線通信装置 図000006
  • 特許6841328-無線通信装置 図000007
  • 特許6841328-無線通信装置 図000008
  • 特許6841328-無線通信装置 図000009
  • 特許6841328-無線通信装置 図000010
  • 特許6841328-無線通信装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841328
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/22 20060101AFI20210301BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20210301BHJP
   H01Q 21/30 20060101ALI20210301BHJP
   H04B 1/401 20150101ALI20210301BHJP
【FI】
   H01Q19/22
   H01Q1/24 Z
   H01Q21/30
   H04B1/401
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-524693(P2019-524693)
(86)(22)【出願日】2017年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2017022351
(87)【国際公開番号】WO2018229973
(87)【国際公開日】20181220
【審査請求日】2019年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】新川 智大
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−177561(JP,A)
【文献】 特開平11−274845(JP,A)
【文献】 特開平10−190331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/24
H01Q 3/00− 3/46
H01Q 15/00− 25/04
H04B 1/401
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設置されたアンテナと、
前記筐体に着脱可能に設置され、前記筐体の導電率よりも高い導電率を有し、設置時において前記アンテナに対向する面を有する金属板と、
前記金属板の設置を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果を出力する出力部と、
を含む無線通信装置。
【請求項2】
筐体と、
前記筐体内に設置されたアンテナと、
前記筐体に着脱可能に設置され、設置時において前記アンテナに対向する面を有し、設置時の方が設置しない時よりも前記アンテナがある方向とは反対側の方向への指向性を高くする金属板と、
前記金属板の設置を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果を出力する出力部と、
を含む無線通信装置。
【請求項3】
筐体と、
前記筐体内に設置されたアンテナと、
前記筐体に着脱可能に設置され、前記筐体の導電率よりも高い導電率を有し、設置時において前記アンテナに対向する面を有する金属板と、
前記金属板の設置を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果を受信する制御部と、
を含む無線通信装置。
【請求項4】
筐体と、
前記筐体内に設置されたアンテナと、
前記筐体に着脱可能に設置され、設置時において前記アンテナに対向する面を有し、設置時の方が設置しない時よりも前記アンテナがある方向とは反対側の方向への指向性を高くする金属板と、
前記金属板の設置を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果を受信する制御部と、
を含む無線通信装置。
【請求項5】
前記筐体の内部に設置された基板をさらに備え、
前記アンテナは、前記基板に設置されたアンテナであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記金属板は、導波器であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記金属板の長さは、前記アンテナの使用する周波数に対してλ/2より大きく4λ/5未満であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記金属板の一部が前記筐体内部に挿入されることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記アンテナと前記金属板との距離は、前記アンテナの使用する周波数に対して、λ/20より大きくλ/2未満であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記検知部は、前記挿入される前記金属板の一部に接触せずに、前記金属板の設置を検知することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記出力部が出力する検知結果に基づいて、動作モードを制御する制御部をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記検知結果に基づいて、動作モードを制御することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記アンテナの出力を低下させることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記アンテナは、前記検知部が検知した結果を受信機側に送信することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一に記載の無線通信装置。
【請求項15】
前記アンテナは、第1の周波数で共振する第1アンテナと前記第1の周波数よりも高い第2の周波数で共振する第2アンテナとを含み、
前記金属板は、前記筐体に設置時に前記第1アンテナに対向する第1金属板と、当該第1金属板よりも長さが短く前記筐体に設置時に前記第2アンテナに対向する第2金属板とを含むことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一に記載の無線通信装置。
【請求項16】
前記アンテナを介して、無線端末と情報の送受信をする通信部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一に記載の無線通信装置。
【請求項17】
前記無線通信装置は、無線LANルータ又は無線アクセスポイントであることを特徴とする請求項1から請求項16の何れか一に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LAN用の無線通信装置として、指向性アンテナを有する無線通信装置と無指向性アンテナを有する無線通信装置とを一つの装置で実現する技術として、所定長の導波器と反射器と放射器とを、相互の位置関係を変更可能に構成し、導波器、反射器および放射器が、所定間隔を置いて平行かつ中心を同じくした指向性アンテナとして機能する第1の配置と、導波器、反射器および放射のうちの少なくともいずれか一つの配置を変更して、無指向性アンテナとして機能する第2の配置とに切換可能な構造を備えたアンテナ装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このようなアンテナ装置は、導波器、反射器および放射器の相互の位置関係が変更可能であり、指向性アンテナとして機能する第1の配置と、無指向性アンテナとして機能する第2の配置との変更ができるので、一つのアンテナ装置でありながら、指向性アンテナとしても無指向性アンテナとしても用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−26943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、放射器の位置を動かすことによって無数の放射パターンを実現することが可能ではあるものの、一般ユーザにとっては、どの位置が最適な配置かわからず、導波器、反射器および放射器の相互の位置関係によっては、かえって利得の劣化が生じるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に伴う課題を解決しようとするものであって、その目的とするところは、一般ユーザにとって、指向性を容易に変更することが可能な無線通信装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によると、筐体と、前記筐体内に設置されたアンテナと、前記筐体に着脱可能に設置され、前記筐体の導電率よりも高い導電率を有し、設置時において前記アンテナに対向する面を有する金属板と、前記金属板の設置を検知する検知部と、前記検知部の検知結果を出力する出力部と、を含む無線通信装置が提供される。
【0008】
本発明の他の実施形態によると、筐体と、前記筐体内に設置されたアンテナと、前記筐体に着脱可能に設置され、設置時において前記アンテナに対向する面を有し、設置時の方が取り外し時よりも前記アンテナがある方向とは反対側の方向への指向性を高くする金属板と、前記金属板の設置を検知する検知部と、前記検知部の検知結果を出力する出力部と、を含む無線通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一般ユーザにとって、指向性を容易に変更することが可能な無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信装置の概略構成を示すための説明図(平面図)である。
図2図1の無線通信装置のI−I断面図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る無線通信装置において筐体に金属板が設置されていない場合の無線通信装置の検知部の周辺を拡大した図(断面図)である。
図3B】本発明の一実施形態に係る無線通信装置において筐体に金属板が設置されている場合の無線通信装置の検知部の周辺を拡大した図(断面図)である。
図4】本発明の一実施形態に係る無線通信装置の一部を説明するためのブロック図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る無線通信装置の指向性を示すシミュレーション結果である。
図5B】本発明の一実施形態に係る無線通信装置の指向性を示すシミュレーション結果である。
図6A】本発明の他の実施形態に係る無線通信装置において筐体に金属板が設置されていない場合の無線通信装置の検知部の周辺を拡大した図(断面図)である。
図6B】本発明の他の実施形態に係る無線通信装置において筐体に金属板が設置されている場合の無線通信装置の検知部の周辺を拡大した図(断面図)である。
図7】本発明の他の実施形態に係る無線通信装置と相手方端末との関係を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、Bなどを付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る無線通信装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の概略構成を示すための説明図(平面図)である。図2は、図1の無線通信装置のI―I断面図である。無線通信装置1は、筐体11、基板13、第1アンテナ15、第2アンテナ16(図4参照)、第1金属板17、第2金属板18、第1検知部19、第2検知部20(図4参照)及び開口部22を含む。無線通信装置1は、この例では、無線アクセスポイントである。もっとも、無線通信装置1は、これに限定されるものではなく、無線LANルータなどであってもよい。
【0013】
筐体11は、この例では、直方体形状となっているが、第1アンテナ15と第1金属板17とが所定の距離d、第2アンテナ16と第2金属板18とが所定の距離dとすることが可能であれば、どのような形状であってもよい。筐体11は、この例では、樹脂材料で形成されている。もっとも、筐体11を形成する材料は、金属材料等の反射板や導波器の役割となる材料でなければ、樹脂材料に限定されない。
【0014】
また、この例では、筐体11は、開口部22を有する。図2のように断面でみると、開口部22は、筐体11の中央よりも上に位置する。もっとも、第1金属板17を筐体11に設置したときに、第1金属板17の面が第1アンテナ15が構成される面と対向する位置に金属板17が配置されるのであれば、開口部22の位置は、筐体11の中央よりも上に限定されない。
【0015】
基板13は、筐体11の内部に設置されている。この例では、基板13は、筐体11の内部の側面11aに設置されているが、基板13の一部が、筐体11の内部の側面11aに接していなくてもよい。また、この例では、基板13は、単層であるが、多層であってもよい。多層である場合には、後記のとおり、第1アンテナ15及び第2アンテナ16の設置する位置を内層にすることもできる。
【0016】
第1アンテナ15は、筐体11内に配置される。この例では、第1アンテナ15は、基板13に設置されている。同様に、第2アンテナ16も、筐体11内に配置される。この例では、第2アンテナ16は、基板13に配置される。もっとも、基板13はなくてもよい。すなわち、第1アンテナ15や第2アンテナ16は、基板13に設置されなくてもよい。
【0017】
また、第1アンテナ15及び第2アンテナ15は、この例では、平面アンテナである。そして、第1アンテナ15及び第2アンテナ15は、この例では、基板13上にプリントすることによって形成されている。第1アンテナ15及び第2アンテナ16は、基板13上のプリントによる平面アンテナに限定されるものではなく、板状逆Fアンテナ(PIFA:Planar Inverted−F Antenna)やパッチアンテナ等の平面アンテナを基板13上に搭載してもよい。
【0018】
第1アンテナ15及び第2アンテナ16は、この例では、基板13の表面に構成されているが、裏面に構成されてもよい。基板13が多層基板である場合には、第1アンテナ15及び第2アンテナ16は、内層に構成されてもよい。
【0019】
第1アンテナ15は、2.45GHz(第1の周波数)で共振する。他方、第2アンテナ16は、5GHz(第2の周波数)で共振する。この例では、2.45GHz帯の無線通信用の第1アンテナ15と5GHz帯の無線通信用の第2アンテナ16とが基板13に設置されているが、いずれか一方のアンテナが基板13に設置されるだけであってもよい。また、この例では、第1アンテナ15及び第2アンテナ16の長手方向を、図1におけるX軸とする。ここで、第1アンテナ15の長さlは、X軸に沿った長さである。そして、第1アンテナ15の長さlは、共振するように設計され、この例では、周波数に対して、λ/4である。同様に、第2アンテナ16の長さlは、X軸に沿った長さである。第2アンテナ16の長さlは、この例では、周波数に対して、λ/4である。もっとも、第1アンテナ15の長さlや第2アンテナ16の長さlは、周波数に対してλ/4に限定されるものではなく、周波数に対してλで共振するときには、λになる。この例では、第1アンテナ15及び第2アンテナ16の長手方向が同じである例を説明したが、第1アンテナ15と第2アンテナ16の長手方向が同じでなくてもよい。その場合、それぞれ別のX軸となる。ただし、第1アンテナ15と第1金属板17は同じ軸で、第2アンテナ16と第2金属板18は、同じ軸である必要はある。
【0020】
第1金属板17は、筐体11に設置時に第1アンテナ15が構成される平面と対向する。同様に、第2金属板18は、筐体11に設置時に第2アンテナ16が構成される平面と対向する。第1金属板17及び第2金属板18は、それぞれ第1金属板17及び第2金属板18の方向に電波を導く機能を有する。言い換えれば、第1金属板17及び第2金属板18のある方向に強く電波が放射される。第1金属板17及び第2金属板18は、この例では、それぞれ第1アンテナ15及び第2アンテナ16から放射された電波を導く導波器である。そのため、第1金属板17を筐体11に設置したときの方が、第1金属板17を筐体11に設置しないときよりも第1アンテナ15がある方向とは反対側の方向(図2におけるZ軸方向)への指向性が高くなる。同様に、第2金属板18を筐体11に設置したときの方が、第2金属板18を筐体11に設置しないときよりも第2アンテナ16がある方向とは反対側の方向への指向性が高くなる。また、第1金属板17及び第2金属板18の導電率は、筐体11の導電率よりも高い。
【0021】
この例では、第1金属17及び第2金属18の長手方向も、図1におけるX軸である。第1金属板17の長さl及び第2金属板18の長さlは、それぞれ第1アンテナ15の長さ及び第2アンテナ16の長さと同様に、X軸に沿った長さである。第1金属板17の長さl及び第2金属板18の長さlは、それぞれ第1アンテナ15及び第2アンテナ16の使用する周波数に対して、λ/2より大きく4λ/5未満である。この例では、前述のとおり、第1アンテナ15の使用する周波数は、2.45GHzで、第2アンテナ16の使用する周波数は、5GHzである。したがって、第2金属板18の長さlは、第1金属板17の長さlよりも短くなる。具体的には、第1金属板17の長さlは、61.2mmより大きく98.0mm未満である。第2金属板18の長さlは、30mmより大きく48mm未満である。
【0022】
第1突起部17aは、この例では、第1金属板17の一部である。すなわち、第1突起部17aと第1金属板17とは同じ材料で形成されている。同じ材料で形成される場合には、第1突起部17aと第1金属板17とは一体に製造することが可能である。もっとも、第1突起部17aと第1金属板17とは、別の材料であってもよい。別の材料である場合には、第1突起部17aと第1金属板17とを接合する必要がある。また、第1突起部17aは、筐体11の内部に挿入される。図2においては図示されていないが、第2金属板18にも第2突起部18aがある。もっとも、第2突起部18aは、第1金属板17における第1突起部17aと同じであるため、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0023】
第1金属板17が筐体11に設置された場合、第1金属板17は、基板13、基板13に設置された第1アンテナ15が構成される面と対向する面を有する。同様に、第2金属板18が筐体11に設置された場合、第2金属板18は、基板13、基板13に設置された第2アンテナ16が構成される面と対向する面を有する。
【0024】
第1金属板17及び第2金属板18を筐体11に設置し、それぞれ第1金属板17及び第2金属板18が筐体11から動きにくいようにするために、筐体11の一部に凹凸の箇所を設け、それぞれ第1金属板17及び第2金属板18を当該箇所と噛み合うような形状としてもよい。
【0025】
第1アンテナ15と第1金属板17とは、一定の距離をおいて配置される。そのため、第1アンテナ15から発射される電波の位相が、一定量ずれることになる。そこで、第1アンテナ15と第1金属板17の距離dと、第1金属板17の長さlを調整することによって、第1金属板17に流れる電流の位相と、第1アンテナ15からの電波の位相のずれが少なくなるか、ずれがなくなるようにすれば、互いに強め合うことになる。第1アンテナ15と第1金属板17との距離dは、好ましくは、使用する無線周波数に対し、λ/20より大きくλ/2未満である。この例では、第1アンテナ15が使用する無線周波数は、2.45GHz帯である。したがって、第1アンテナ15と第1金属板17との距離dは、好ましくは、6.1mmより大きく61.2mm未満である。より好ましくは、第1アンテナ15と金属板17との距離dは、使用する無線周波数に対し、λ/5以上λ/4未満である。
【0026】
同様に、第2アンテナ16と第2金属板18dとは、一定の距離をおいて配置される。第2アンテナ16と第2金属板17dとの距離は、好ましくは、使用する無線周波数に対し、λ/20より大きくλ/2未満である。この例では、第2アンテナ16が使用する無線周波数は、5GHzである。したがって、第2アンテナ16と第2金属板17との距離dは、3mmより大きく30mm未満である。
【0027】
そうすると、第1アンテナ15が使用する無線周波数が2.45GHzで、第2アンテナ16が使用する無線周波数が5GHzであるとき、第1アンテナ15と第1金属板17との距離dの好ましい具体的範囲(6.1mmより大きく61.2mm未満)と第2アンテナ16と第2金属板18との距離dの好ましい具体的範囲(3mmより大きく30mm未満)は異なることになる。もっとも、両者が重なる範囲(6.1mmより大きく30mm未満)はある。そこで、例えば、筐体11の形状を直方体に整えたい場合には、両者が重なる範囲にしてもよい。他方、第1金属板17、第2金属板18の導波器として指向性を高くするという性能をより発揮するために、第1アンテナ15と第1金属板17の距離dと、第2アンテナ16と第2金属板18の距離dとを異なるようにしてもよい。
【0028】
第1検知部19は、第1金属板17の設置を検知する。図3A及び図3Bは、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の検知部の周辺を拡大した図(断面図)である。第1検知部19は、この例では、フォトインタラプタである。フォトインタラプタは、対向する発光部19aと受光部19bを有する。そして、発光部19aからの光を第1突起部17aが遮るのを受光部19bで検出することによって、第1金属板17が筐体11に設置されたことを検知する。そのため、第1検知部19は、第1突起部17aに接触することなく、第1金属板17が筐体11に設置されたことを検知することができる。もっとも、第1検知部19は、フォトインタラプタに限定されるものではなく、他の非接触のセンサであってもよい。同様に、第2金属板18の設置を検知する第2検知部20もあるが、第1検知部19と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0029】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る無線通信装置において筐体に金属板が設置されていない場合の無線通信装置の検知部の周辺を拡大した図(断面図)である。図3Bは、本発明の一実施形態に係る無線通信装置において筐体に金属板が設置されている場合の無線通信装置の検知部の周辺を拡大した図(断面図)である。
【0030】
図3Aに示すように、第1金属板17を図面の矢印の方向に移動させて、図3Bに示すように、発光部19aからの光を第1突起部17aが遮るのを受光部19bで検出すると、第1検知部19は、筐体11に第1金属板17を含むケースが設置されたことを検知する。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の一部を説明するためのブロック図である。基板13は、第1アンテナ15、第2アンテナ16、第1検知部19、第2検知部20、RF部21、ベースバンド部23、出力部24、制御部25を備える。
【0032】
RF部21は、無線通信装置1で利用される周波数帯の信号を処理する。RF部21は、この例では、2.45GHz帯、5GHz帯の信号を処理する。RF部21は、第1アンテナ15及び第2アンテナ16に接続されている。また、RF部21は、ベースバンド部23に接続されている。この例では、周波数帯が2.45GHz、5GHzと高周波数であるため、RF部21にある受信ミキサが当該高周波数を中間周波数(Intermediate Frequency;IF)に変換した上で、ベースバンド信号に変換する。なお、RF部21は、送受信用の各種ミキサ、LNA等のアンプ、バンドパスフィルタなどのフィルタなど公知の構成を備えるが、ここでの説明は省略する。また、RF部21とベースバンド部23とを併せて「通信部26」と呼んでもよい。通信部26は、第1アンテナ15、第2アンテナ16を介して、無線端末と情報の送受信をする。
【0033】
制御部25は、出力部24が出力する検知結果に基づいて、動作モードを制御する。制御部25は、例えば、送信側から送られた信号が受信側で復号した際に誤りが生じた場合の再送制御や、送信タイミングの制御など無線LAN通信に関する各種の制御を行う。また、制御部25は、第1検知部19が、筐体11に第1金属板17が設置されたことを検知したときに、第1アンテナ15の送信出力を低減するように制御してもよい。同様に、制御部25は、第2検知部20が、筐体11に第2金属板18が設置されたことを検知したときに、第2アンテナ16の送信出力を低減するように制御してもよい。
【0034】
出力部24は、第1検知部19が検知した結果を出力する。同様に、出力部24は、第2検知部20が検知した結果を出力する。そして、その出力された結果は、制御部25によって用いられる。
【0035】
<シミュレーション>
図5A及び図5Bを用いて、本発明の一実施形態に係る無線通信装置について、第2金属板18の有無による指向性の変化について説明する。図5A及び図5Bは、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の指向性を示すシミュレーション結果である。
【0036】
本シミュレーションにおいては、図1における第2金属板18のみを用い、第1金属板17は用いない。第2アンテナ16は、5GHz帯用の平面アンテナである。また、筐体11は、樹脂材料で形成されるケースである。第2アンテナ16と第2金属板18との距離dが、λ/4(15mm)となるように樹脂ケースが設計されている。また、第2アンテナ16の長さlは、0.35λ(21mm)である。
【0037】
図1に示すように、基板13と同じ面で、横方向をX軸方向、縦方向をY軸方向、第2金属板18からみて第2アンテナ16がある方向とは反対側の方向(図1における紙面手前側)をZ軸方向とする。図5Aに示すように、D1(実線)は、筐体11に第2金属板18を取り付けた場合のアンテナ利得である。D2(破線)は、筐体11に第2金属板18を取り付けていない場合のアンテナ利得である。筐体11に第2金属板18を取り付けていない場合、Z軸方向のアンテナ利得は、2dBi程度である。他方、筐体11に第2金属板18を取り付けた場合、Z軸方向のアンテナ利得は、5dBi程度である。同様に、図5Bに示すように、D3(実線)は、筐体11に第2金属板18を取り付けた場合のアンテナ利得である。D4(破線)は、筐体11に第2金属板18を取り付けていない場合のアンテナ利得である。筐体11に第2金属板18を取り付けていない場合、Z軸方向のアンテナ利得は、2dBi程度である。他方、筐体11に第2金属板18を取り付けた場合、Z軸方向のアンテナ利得は、5dBi程度である。そうすると、筐体11に第2金属板18を取り付けたことにより、Z軸方向のアンテナ利得が3dB程度大きくなる。したがって、筐体11に第2金属板18を取り付けた場合には、第2アンテナ16は、指向性の高いアンテナとして動作していることがわかる。一方、筐体11に第2金属板18を取り付けていない場合には、第2アンテナ16は、どの方向にも大きなアンテナ利得ではない。したがって、この場合、第2アンテナ16は、指向性の低いアンテナとして動作していることがわかる。そうすると、第2金属板18は、アンテナの指向性を相対的に低い状態(第1状態)から高い状態(第2状態)に切り替える切替部といえる。そして、検知部は、この切替部による切り替えを検知する。
【0038】
本実施形態では、第1金属板17や第2金属板18を筐体11に設置するという容易な方法で、指向性の低いアンテナを有する無線通信装置を指向性の強いアンテナを有する無線通信装置に切り替えることができるという効果を奏する。
【0039】
本実施形態では、第1検知部19は、第1金属板17が筐体11に設置されたかどうかを自動で検知する。同様に、第2検知部20は、第2金属板18が筐体11に設置されたかどうかを自動で検知する。そのため、制御部25は、当該検知によって、無線通信装置1の送信出力を自動で切り替えることができるという効果を奏する。
【0040】
第1突起部17aが第1金属板17と同じ材料である場合には、両者を一体に製造することができるという効果を奏する。また、第1突起部17aによって、基板13と第1金属板17との距離を決めることができるとともに、第1検知部19による検知も行われる。したがって、第1突起部17aは、1つで2つの役割を果たすことができるという効果を奏する。第2金属板18についても同様である。
【0041】
さらに、本実施形態では、第1検知部19は、フォトインタラプタなど第1突起部17aと接触することなく、第1金属板17が筐体11に設置されたことを検知することができる。そのため、第1検知部19も第1突起部17aも機械的に壊れにくいという効果を奏する。第2検知部20についても、同様である。
【0042】
<第2実施形態>
図6A及び図6Bを用いて、本発明の第2実施形態について説明する。図6Aは、本発明の他の実施形態に係る無線通信装置において筐体に金属板が設置されていない場合の無線通信装置の検知部の周辺を拡大した図(断面図)である。図6Bは、本発明の他の実施形態に係る無線通信装置において筐体に金属板が設置されている場合の無線通信装置の検知部の周辺を拡大した図(断面図)である。本実施形態は、検知部が異なるが、第1実施形態と概ね同じである。そこで、同じ箇所についての説明は省略し、異なる点について詳細に説明する。
【0043】
第1検知部19Aは、この例では、プッシュスイッチである。そのため、第1突起部17aでプッシュスイッチが押されると、第1金属板17が筐体11に設置されたことが検知される。したがって、第1検知部19Aは、第1突起部17aに接触することになる。スイッチによる第1金属板17の自動検出は、プッシュスイッチに限定されるものではなく、レバースイッチなどであってもよい。
【0044】
図6Aに示すように、第1金属板17を図面の矢印の方向に移動させて、図6Bに示すように、第1金属板17の第1突起部17aでプッシュスイッチ(第1検知部19A)を押すと、第1検知部19Aは、筐体11に第1金属板17を含むケースが設置されたことを検知する。第2金属板18、第2検知部20Aについても同様である。
【0045】
本実施形態でも、第1検知部19、第1突起部17aが機械的に壊れにくいという効果を除いて、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0046】
また、本実施形態では、第1検知部19Aは、フォトインタラプタなど非接触センサではなく、プッシュスイッチなどである。一般に、プッシュスイッチ方がフォトインタラプタよりも安価である。したがって、本実施形態では、より安価に第1検知部19Aを構成することができるという効果を奏する。
【0047】
<第3実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と概ね同じである。本実施形態では、制御部の機能が、第1実施形態と異なる。そこで、同じ箇所についての説明は省略し、異なる点について詳細に説明する。
【0048】
本実施形態では、無線通信装置1と通信する相手方端末について制限を設ける場合、例えば、相手方端末から受信する受信感度に閾値を設ける場合、制御部は、第1検知部19が、筐体11に第1金属板17が設置されたことを検知したときに、通信する相手方端末の受信感度の閾値を変更する。例えば、無線通信装置1の筐体11に第1金属板17が設置されておらず、受信感度が−80dB以上で受信している相手方端末と通信を行う場合、図7に示すように、相手方端末30a及び30bは、無線通信装置1と通信をしている。他方、破線で示す住居の外にある相手方端末30cは、無線通信装置1と通信をしていない。このときに、制御部は、無線通信装置1の筐体11に第1金属板17が設置されていない場合は、受信感度が−80dBm以上で受信している相手方端末30a及び30bとは通信を行う。他方、筐体11に第1金属板17が設置された場合には、受信感度が−77dBm以上で受信している相手方端末30a及び30bとしか通信しないように、閾値を制御してもよい。筐体11に第1金属板17が設置されている場合には、第1金属板17によって無線通信装置の受信レベルが改善されうるからである。なお、受信感度は、RSSI(Received Signal Strength Indication、Received Signal Strength Indicatorまたは、受信信号強度)で測定する。RSSIとは、無線通信機器が受信する信号の強度を測定するための回路または信号のことである。第2金属板18についても、同様である。
【0049】
本実施形態では、筐体11に第1金属板17が設置されることによって、無線通信装置が通信を行う相手方端末の閾値を変更することができるという効果を奏する。その結果、不必要に距離の離れた相手方端末までカバーすることなく、通信を行う相手方端末の範囲の適正化を維持することができるという効果を奏する。
【0050】
<第4実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と概ね同じである。本実施形態では、制御部の機能が、第1実施形態と異なる。そこで、同じ箇所についての説明は省略し、異なる点について詳細に説明する。
【0051】
本実施形態では、制御部は、第1検知部19が、筐体11に第1金属板17が設置されたことを検知したときに、変調方式や無線LANの規格を規定してもよい。ここで、筐体11に第1金属板17が設置されている方が、無線通信装置の送受信環境が良い。例えば、筐体11に第1金属板17が設置されていないときに、64QAMの変調方式を用いている場合に、第1検知部19が筐体11に金属板17が設置されていることを検知したとき、変調方式を256QAMに変えてもよい。同様に、例えば、第1検知部19が筐体11に第1金属板17が設置されていることを検知したときは、IEEE 802.11acの通信は行わずに、IEEE 802.11gなど他の通信を行うようにしてもよい。第2金属板18についても同様である。
【0052】
本実施形態では、第1金属板17の筐体11に対する設置の有無によって、変調方式を変更することができるといった効果を奏する。
【0053】
<第5実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と概ね同じである。本実施形態では、制御部の機能が、第1実施形態と異なる。そこで、同じ箇所についての説明は省略し、異なる点について詳細に説明する。
【0054】
筐体11に第1金属板17が設置されている方が、無線通信装置の送受信環境は良い。そこで、第1検知部19が、筐体11に第1金属板17が設置されたことを検知したときに、出力部24は、検知結果を出力する。そして、制御部25が、筐体11に第1金属板17が設置されたことを検知したことを表わす信号を送信するように制御する。さらに、第1アンテナ15から当該信号が相手方端末に送信される。当該信号を受信した相手方端末は、中間周波増幅器の増幅率を抑えるなどして低消費電力化を図ることができる。
【0055】
本実施形態では、筐体11に第1金属板17が設置されているかどうか応じて、無線通信装置が相手方端末に筐体11に第1金属板17が設置されているかどうかを表わす信号を送信する。その結果、相手方端末が適応的に低消費電力化を図ることができるという効果を奏する。
【0056】
以上の実施形態では、無線通信装置1、1Aが、相手方端末30a及び30bと通信する際、無線で通信することを前提に説明した。もっとも、無線通信装置1、1Aと相手方端末30a及び30bは、有線で通信してもよい。つまり、無線通信装置1、1Aは、無線で通信する機能に加え、有線で通信する機能も併用していてもよい。また、無線通信装置1、1Aは、端末30a及び30bと通信するだけでなく、無線通信装置同士で通信してもよい。例えば、WDS(Wireless Distribution System)機能を用いて、無線アクセスポイント同士で通信してもよい。
【0057】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1、1A:無線通信装置 11:筐体 13:基板
15:第1アンテナ 16:第2アンテナ 17:第1金属板
17a:第1突起部 18:第2金属板 19、19A:第1検知部
20:第2検知部 21:RF部 22:開口部 23:ベースバンド部
24:出力部 25:制御部
D1、D3:筐体に金属板を取り付けた場合のアンテナ利得
D2、D4:筐体に金属板を取り付けていない場合のアンテナ利得
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7