(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841347
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】イオンガイド装置およびそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
H01J 49/06 20060101AFI20210301BHJP
H01J 49/42 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
H01J49/06 300
H01J49/06 100
H01J49/42
【請求項の数】25
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-561194(P2019-561194)
(86)(22)【出願日】2017年7月24日
(65)【公表番号】特表2020-518994(P2020-518994A)
(43)【公表日】2020年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2017026695
(87)【国際公開番号】WO2019003456
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2019年11月6日
(31)【優先権主張番号】201710512171.6
(32)【優先日】2017年6月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユーポン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シャオチィアン
(72)【発明者】
【氏名】スン ウェンジャン
【審査官】
中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表平11−510946(JP,A)
【文献】
特表2005−536021(JP,A)
【文献】
特表2014−506720(JP,A)
【文献】
特表2014−532965(JP,A)
【文献】
特表2014−534562(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0159796(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0323500(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0125231(US,A1)
【文献】
米国特許第06891157(US,B1)
【文献】
国際公開第2012/124041(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/189539(WO,A1)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンガイド装置であって、
空間軸に沿って配置される2つの平行電極ユニットを含む第1の電極アセンブリと、
前記空間軸に沿って前記平行電極ユニット間の平面に配置される少なくとも2つの非平行電極ユニットを含む第2の電極アセンブリと、を備え、
前記第1の電極アセンブリと前記第2の電極アセンブリとによって囲まれる空間は、前記空間軸に沿ってイオン搬送チャネルを形成し、
前記第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに極性の異なるRF電圧を印加して前記空間軸に垂直な方向にRF電場を発生させてイオンを閉じ込め、前記第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリにDC電圧を別個に印加して、前記第1の電極アセンブリと前記第2の電極アセンブリとの間に所定のDC電圧差を発生させることにより、前記空間軸に沿ってDC電場を発生させてイオンの移動を制御するように構成された電源装置を備える、イオンガイド装置。
【請求項2】
前記イオン搬送チャネルが、イオン出口よりも大きいイオン入口を有することを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項3】
前記イオン搬送チャネルの断面積が、前記空間軸に沿って徐々に変化することを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項4】
前記電源装置によって前記第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに印加される前記RF電圧は、位相、振幅および周波数のうちの少なくとも1つが異なることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項5】
前記RF電圧の波形が、正弦波、方形波、鋸歯波および三角波のうちの1つであることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項6】
前記イオンガイド装置の作動圧力範囲が、[2×105、2×103]Pa、[2×103、20]Pa、[20、2]Pa、[2、2×10‐1]Pa、[2×10‐1、2×10‐3]Paおよび2×10‐3Pa未満のうちの1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項7】
前記第1の電極アセンブリ内の前記電極ユニットが、板状電極、ロッド電極およびPCBもしくはセラミック基板に取り付けられた薄層電極のうちの1つ、またはそれらの組合せであることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項8】
前記空間軸が、直線軸、曲線軸またはそれらの組合せであることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項9】
前記第2の電極アセンブリとして、丸棒電極または板状電極が使用されることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項10】
前記第1の電極アセンブリ内の前記2つの平行電極ユニットが、2つの平行面を含む管状電極に置き換えられることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項11】
前記第2の電極アセンブリ内の少なくとも1つの電極ユニットが少なくとも1つの電極セグメントを含み、前記電源装置が隣接する電極セグメントに異なるDC電圧および同じRF電圧を印加することを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項12】
前記イオンガイド装置が、質量分析装置の前段イオンガイド装置、イオン圧縮器、イオン蓄積器、衝突セルおよびイオン集群器のうちの1つ、またはそれらの組合せとして使用されることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項13】
前記第2の電極アセンブリが、前記空間軸に沿って前記平行電極ユニット間の平面に配置される一対以上の非平行電極ユニットを含むことを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド装置。
【請求項14】
イオンガイド方法であって、
空間軸に沿って配置される2つの平行電極ユニットを含む第1の電極アセンブリを提供する工程と、
前記空間軸に沿って前記平行電極ユニット間の平面に配置される少なくとも2つの非平行電極ユニットを含む第2の電極アセンブリを提供する工程と、を備え、前記第1の電極アセンブリと前記第2の電極アセンブリとによって囲まれる空間は、前記空間軸に沿ってイオン搬送チャネルを形成し、
前記第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに極性の異なるRF電圧を印加して前記空間軸に垂直な方向にRF電場を発生させてイオンを閉じ込め、前記第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリにDC電圧を別個に印加して、前記第1の電極アセンブリと前記第2の電極アセンブリとの間に所定のDC電圧差を発生させることにより、前記空間軸に沿ってDC電場を発生させてイオンの移動を制御する工程を備えるイオンガイド方法。
【請求項15】
前記イオン搬送チャネルのイオン入口がイオン出口よりも大きいことを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項16】
前記イオン搬送チャネルの断面積が、前記空間軸に沿って徐々に変化することを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項17】
前記第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに印加される前記RF電圧は、位相、振幅および周波数のうちの少なくとも1つが異なることを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項18】
前記RF電圧の波形が、正弦波、方形波、鋸歯波および三角波のうちの1つであることを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項19】
前記イオンガイド方法の作動圧力範囲が、[2×105、2×103]Pa、[2×103、20]Pa、[20、2]Pa、[2、2×10‐1]Pa、[2×10‐1、2×10‐3]Paおよび2×10‐3Pa未満のうちの1つ以上であることを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項20】
前記第1の電極アセンブリ内の前記電極ユニットが、板状電極、ロッド電極およびPCBもしくはセラミック基板に取り付けられた薄層電極のうちの1つ、またはそれらの組合せであることを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項21】
前記空間軸が、直線軸、曲線軸またはそれらの組合せであることを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項22】
前記第2の電極アセンブリとして、丸棒電極または板状電極が使用されることを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項23】
前記第1の電極アセンブリ内の前記2つの平行電極ユニットが、2つの平行面を含む管状電極に置き換えられることを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項24】
前記第2の電極アセンブリ内の少なくとも1つの電極ユニットが少なくとも1つの電極セグメントを含み、隣接する電極セグメントに異なるDC電圧および同じRF電圧が印加されることを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【請求項25】
前記第2の電極アセンブリが、前記空間軸に沿って前記平行電極ユニット間の平面に配置される一対以上の非平行電極ユニットを含むことを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンガイドの技術分野に関し、特にイオンガイド装置およびイオンガイド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、様々なガス圧条件下でのイオンの搬送、集束および他の操作を実現するために、様々なイオンガイド装置が開発され、様々な質量分析装置に広く適用されてきた。単純な構造、良好なイオン集束効果などの利点により、四重極イオンガイドがイオンガイド装置として最も一般的に使用される。同様に、質量分析装置の前段イオンガイド装置として、四重極ロッドの代わりに、六重極および八重極などの多重極イオンガイド装置が、高流束のイオン搬送を実現するために通常使用される。
【0003】
しかし、このような装置は、軸方向の駆動電場が欠如しているために、イオンの初期運動エネルギー、または軸方向空気流によってのみイオンの軸方向の搬送が駆動されるという共通の欠点を有する。非常に低いガス圧(一般に1Pa未満)の場合、イオンの平均自由行程は比較的長く、イオンの初期運動エネルギーによって駆動される長距離搬送は、なお短時間のうちに実現することができる。加えて、比較的高いガス圧(少なくとも10Pa超)の場合、明らかな空気流が存在することが多く、イオンは空気流の駆動の下で指向的に搬送され得る。しかし、一般に、1Pa〜10Paのガス圧の下では、イオンがイオンガイド装置を通過するのに長い時間がかかることが多い。加えて、イオンがイオンガイド装置内に非常に長時間滞留すると、機器の分析速度が影響を受けるだけでなく、イオン損失が生じて機器の感度が低下する。さらに、駆動するための軸方向電場が欠如しているために、そのようなイオンガイド装置は一般に線形構造を使用するように制限される。その結果、機器の全長は比較的長くなる。
【0004】
特許文献1において、ブルース・A・トムソンらは、四重極に基づくイオンガイド技術を開示している。この技術では、軸方向のイオンの搬送を促進するために、四重極電極の半径を徐々に変化させること、電極を斜めに配置すること、および電極を複数のセグメントに分割して隣接する電極間に補助電極をさらに設けることなどの様々な方法によってイオンガイド装置の内部に軸方向電場を発生させる。
【0005】
特許文献2において、マイケル・コニセックらは、イオンの迅速な搬送を実現するための軸方向電場を付与することができるイオンガイド装置を開示している。この装置では、典型的な構造は、四重極の2つの隣接する電極間に4組の補助電極が追加的に設けられ、各組の補助電極が複数のフィンガー電極からなる。フィンガー電極にDC電位勾配を印加することによって、装置内で軸方向の駆動電場を発生させることができ、それによってイオンを迅速に搬送することができ、装置内のイオンの移動方向を好都合に制御することができる。
【0006】
さらに、四重極ロッドなどの装置のイオン受容面積およびイオン集束能力は、装置のRF場の半径に関係し、両者は互いに制限される。したがって、一般に、妥協することによってその2つの実際の性能のバランスをとる必要がある。特許文献3において、ハービー・D・ロークスらは、断面積が徐々に収束する六重極装置を開示している。この装置の入口の半径は出口の半径よりも大きいため、イオン受容面積とイオン集束との相互制限の問題は適切に解決される。一方、この装置では、電極上に高抵抗層が被覆されている。電極の2つの端部にDC電圧差を印加することによって、イオンを駆動するために装置内に軸方向電場を確立することができ、それによって湾曲したイオンガイド構造を実現することができる。このような湾曲したイオンガイド装置が中性分子からの干渉を減少させ、機器の信号雑音比を改善し、さらに、機器全体の構造設計をさらに柔軟にすることが可能になり、これが機器の全長を短縮するのに有益であることはよく知られている。
【0007】
しかし、湾曲したイオンガイド装置が衝突セルとして使用される場合、なおいくつかの新たな課題が存在する。衝突セル内の親イオンの解離効率を高めるために、親イオンは、一般に、加速されて比較的高い運動エネルギー(数十から数百エレクトロンボルト)を得、次に衝突セル内に注入されて衝突ガス分子と衝突して、解離プロセスを誘起する。しかし、親イオンの運動エネルギーが高すぎると、親イオンがRF場から逃げる可能性が非常に高く、ひいては、電極に直接衝突してイオン損失をもたらす。真空環境では絶縁破壊電圧の制限により、RF電圧を上昇させることのみによってイオンの閉じ込めを強化することはできない。特許文献4において、ブルース・A・コリングスらは、親イオンの解離効率に影響を与えることなく、湾曲したイオンガイド装置内の高運動エネルギーイオンの搬送効率を向上させるために、直線状のイオンガイド部と湾曲したイオンガイド部とを接続する構造を提案している。まず、高速の親イオンが、衝突および解離のために直線状のイオンガイド部に入る。イオンと衝突ガス分子との頻繁な衝突は、イオンの運動エネルギーを大きく減少させる。イオンが湾曲したイオンガイド部に入れば、RF電場はイオンを閉じ込めるのに十分である。この方法は、イオンの高速注入によって引き起こされる問題を適切に解決することができるが、機器の長さを短縮するという問題に関してある程度妥協せざるを得ない。また、イオンガイド装置自体の長さも長くなる。
【0008】
特許文献5において、フェリシアン・マンティンは、湾曲した四重極を複数のセグメントに分割し、外側の円にあるセグメント化された電極に追加のDC電圧を印加することによって、または湾曲した四重極の外側の円の方に補助電極を配置し、補助電極にDC電圧を印加することによって、湾曲したイオンガイド装置を提案している。これにより、イオンの偏向を補助するための半径方向の電場が発生する。この装置は上記の問題を適切に解決することができるが、装置の構造が非常に複雑で加工が困難であるか、軸方向の駆動電場と半径方向の偏向電場とが互いに結合され制御が困難である。その結果、総合的な性能にある程度影響が及ぼされる。
【0009】
加えて、さらに良好な衝突誘起解離効果を実現するために、特別な衝突ガス、例えば、窒素、アルゴンなどが一般に衝突セル内に供給され、所定のガス圧に維持される。他のイオン光学装置が配置されるチャンバから衝突セルを隔離するために、衝突セルは一般に別の密閉され独立した真空チャンバ内に配置される。一方、中点にただ1つの開口部を有する1つ以上のシート電極が衝突セルの入口および出口に設けられる。それにより、衝突セルの入口および出口でのガス流のコンダクタンスを制限し、チャンバ内の圧力を維持することが好都合である。しかし、ガス流のコンダクタンスが制限されるため、イオンの流束もまた減少する。特許文献6において、ウルス・ステイナーらは、開口部を有するシート電極のない湾曲したイオンガイド装置を開示している。この装置では、四重極の隣接する電極間の間隙には、イオンチャネルが外部から隔離されて比較的密閉された空間を形成するように真空シーラントが充填される。衝突ガスの主入口は四重極のほぼ中央に位置するため、入口および出口から離れた中央部分に安定した圧力領域が形成されて、親イオンの衝突誘起解離を行うことができる。しかし、この装置はなお多くの問題によって制限されている。例えば、ガス圧は高すぎてはならず、半径方向の偏向電場だけでなく軸方向の駆動電場を付与することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5847386号明細書
【特許文献2】米国特許第7675031号明細書
【特許文献3】米国特許第8455814号明細書
【特許文献4】米国特許第7923681号明細書
【特許文献5】米国特許第8084750号明細書
【特許文献6】米国特許第6576897号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術の欠点を考慮して、本発明の目的は、イオンガイド装置およびイオンガイド方法を提供することである。イオンガイド装置は、所定の空間軸に沿って配置される一対の平行電極と、その空間軸に対して所定の角度を成す一対の非平行電極とを含む。それにより湾曲したイオンガイド構造が実現され、イオンの移動を柔軟に制御するために、軸方向および半径方向の両方に電場がさらに付与されてもよい。一方、イオンガイド装置、特に衝突セルとして使用する場合の様々な要件が満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的および他の関連する目的を達成するために、本発明は、空間軸に沿って配置される2つの平行電極ユニットを含む第1の電極アセンブリと、空間軸に沿って平行電極ユニット間の平面に配置される少なくとも2つの非平行電極ユニットを含む第2の電極アセンブリと、を備え、第1の電極アセンブリと第2の電極アセンブリとによって囲まれる空間は、空間軸に沿ってイオン搬送チャネルを形成し、第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに極性の異なるRF電圧を印加して空間軸に垂直な方向にRF電場を発生させてイオンを閉じ込め、第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリにDC電圧を別個に印加して、所定のDC電圧差を発生させて、空間軸に沿ってDC電場を発生させてイオンの移動を制御するように構成された電源装置を備えるイオンガイド装置を提供する。
【0013】
本発明の一実施例では、イオン搬送チャネルは、イオン入口が大きく、イオン出口が小さい。
【0014】
本発明の一実施例では、イオン搬送チャネルの断面積は空間軸に沿って徐々に変化する。
【0015】
本発明の一実施例では、電源装置によって第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに印加されるRF電圧は、位相、振幅および周波数のうちの少なくとも1つが異なる。
【0016】
本発明の一実施例では、RF電圧の波形は、正弦波、方形波、鋸歯波および三角波のうちの1つである。
【0017】
本発明の一実施例では、イオンガイド装置の作動圧力範囲は、[2×10
5、2×10
3]Pa、[2×10
3、20]Pa、[20、2]Pa、[2、2×10
‐1]Pa、[2×10
‐1、2×10
‐3]Paおよび2×10
‐3Pa未満のうちの1つ以上である。
【0018】
本発明の一実施例では、第1の電極アセンブリ内の電極ユニットは、板状電極、ロッド電極およびPCBもしくはセラミック基板に取り付けられた薄層電極のうちの1つ、またはそれらの組合せである。
【0019】
本発明の一実施例では、空間軸は、直線軸、曲線軸またはそれらの組合せである。
【0020】
本発明の一実施例では、第2の電極アセンブリとして、丸棒電極または板状電極が使用される。
【0021】
本発明の一実施例では、第1の電極アセンブリ内の2つの平行電極ユニットは、2つの平行面を含む管状電極に置き換えられる。
【0022】
本発明の一実施例では、第2の電極アセンブリ内の少なくとも1つの電極ユニットは少なくとも1つの電極セグメントを含み、電源装置は隣接する電極セグメントに異なるDC電圧および同じRF電圧を印加する。
【0023】
本発明の一実施例では、イオンガイド装置は、質量分析装置の前段イオンガイド装置、イオン圧縮器、イオン蓄積器、衝突セルおよびイオン集群器のうちの1つ、またはそれらの組合せとして使用される。
【0024】
本発明の一実施例では、第2の電極アセンブリは、空間軸に沿って平行電極ユニット間の平面に配置される一対以上の非平行電極ユニットを含む。
【0025】
それに対応して、本発明は、以下の工程を備えるイオンガイド装置をさらに提供する:
【0026】
空間軸に沿って配置される2つの平行電極ユニットを含む第1の電極アセンブリを提供する工程;
【0027】
空間軸に沿って平行電極ユニット間の平面に配置される少なくとも2つの非平行電極ユニットを含む第2の電極アセンブリを提供する工程、を備え、第1の電極アセンブリと第2の電極アセンブリとによって囲まれる空間は、空間軸に沿ってイオン搬送チャネルを形成し;
【0028】
第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに極性の異なるRF電圧を印加して空間軸に垂直な方向にRF電場を発生させてイオンを閉じ込め、第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリにDC電圧を別個に印加して、所定のDC電圧差を発生させて、空間軸に沿ってDC電場を発生させてイオンの移動を制御する工程。
【0029】
本発明の一実施例では、イオン搬送チャネルは、イオン入口が大きく、イオン出口が小さい。
【0030】
本発明の一実施例では、イオン搬送チャネルの断面積は空間軸に沿って徐々に変化する。
【0031】
本発明の一実施例では、第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに印加されるRF電圧は、位相、振幅および周波数のうちの少なくとも1つが異なる。
【0032】
本発明の一実施例では、RF電圧の波形は、正弦波、方形波、鋸歯波および三角波のうちの1つである。
【0033】
本発明の一実施例では、イオンガイド方法での作動圧力範囲は、[2×10
5、2×10
3]Pa、[2×10
3、20]Pa、[20、2]Pa、[2、2×10
‐1]Pa、[2×10
‐1、2×10
‐3]Paおよび2×10
‐3Pa未満のうちの1つ以上である。
【0034】
本発明の一実施例では、第1の電極アセンブリ内の電極ユニットは、板状電極、ロッド電極およびPCBもしくはセラミック基板に取り付けられた薄層電極のうちの1つ、またはそれらの組合せである。
【0035】
本発明の一実施例では、空間軸は、直線軸、曲線軸またはそれらの組合せである。
【0036】
本発明の一実施例では、第2の電極アセンブリとして、丸棒電極または板状電極が使用される。
【0037】
本発明の一実施例では、第1の電極アセンブリ内の2つの平行電極ユニットは、2つの平行面を含む管状電極に置き換えられる。
【0038】
本発明の一実施例では、第2の電極アセンブリ内の少なくとも1つの電極ユニットは少なくとも1つの電極セグメントを含み、隣接する電極セグメントに異なるDC電圧および同じRF電圧が印加される。
【0039】
本発明の一実施例では、第2の電極アセンブリは、空間軸に沿って平行電極ユニット間の平面に配置される一対以上の非平行電極ユニットを含む。
【0040】
上記のように、本発明のイオンガイド装置およびイオンガイド方法は、以下の有利な効果を有する。
【0041】
(1)空間軸に沿って配置される一対の平行電極と、空間軸と所定の角度を成す一対の非平行電極とが含まれ、一対の平行電極と一対の非平行電極とによって囲まれるイオン搬送チャネルの断面積は、空間軸に沿って徐々に変化する。また、一対の平行電極および一対の非平行電極に極性の異なるRF電圧を印加し、一対の平行電極と一対の非平行電極との間にDC電圧差を印加することにより、イオンチャネル内で軸方向に垂直な方向にRF電場を発生させてイオンを閉じ込め得、また、軸方向にDC電場を発生させてイオン搬送を駆動し得る。
【0042】
(2)イオンの搬送速度を効果的に向上させることができ、軸外し型のイオン光学系を好都合に実現することができ、その結果、イオンガイド装置の信号雑音比が大幅に増大し、機器の全長が短縮される。
【0043】
(3)また、構造が単純で、操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明によるイオンガイド装置の実施例1の構造図を示す。
【
図2】本発明によるイオンガイド装置の実施例1における第2の電極アセンブリの構造図を示す。
【
図3】本発明によるイオンガイド装置の実施例2の構造図を示す。
【
図4】本発明によるイオンガイド装置の実施例2における第2の電極アセンブリの構造図を示す。
【
図5】本発明によるイオンガイド装置の実施例3の構造図を示す。
【
図6】本発明によるイオンガイド装置の実施例3における第2の電極アセンブリの構造図を示す。
【
図7】本発明によるイオンガイド装置の実施例4の構造図を示す。
【
図8】本発明によるイオンガイド装置の実施例4における第2の電極アセンブリの構造図を示す。
【
図9】本発明によるイオンガイド装置の実施例5の構造図を示す。
【
図10】本発明によるイオンガイド装置の実施例5における第1の電極アセンブリの構造図を示す。
【
図11】本発明によるイオンガイド装置の実施例6における第2の電極アセンブリの構造図を示す。
【
図12】本発明によるイオンガイド装置の実施例7における第2の電極アセンブリの構造図を示す。
【
図13】本発明によるイオンガイド装置の実施例8の構造図を示す。
【
図14】本発明によるイオンガイド装置の実施例9の構造図を示す。
【
図15】本発明によるイオンガイド装置の実施例10における第2の電極アセンブリの構造図を示す。
【
図16】本発明によるイオンガイド方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施について具体的な実施例を通じて説明する。当業者であれば本明細書に開示された内容から本発明の他の利点および効果を容易に得られるであろう。
【0046】
本明細書の添付図面に示された構造、縮尺、大きさなどは、当業者が本明細書に開示された内容を理解し、読むことを可能にするために単に使用されており、本発明の実施可能な条件を限定することを意図するものではなく、したがって、いかなる技術的に実質的な意味も有しないことに留意されたい。本発明によって達成され得る効果および目的に影響を及ぼすことなく、いかなる構造的変更、縮尺の変更、または大きさの調整も、本発明の技術的内容によって規定される範囲内に含まれるものとする。なお、本明細書中で用いられる「上」、「下」、「左」、「右」、「中」および「1つ」などの用語は、あくまでも明確な説明のために用いられており、本発明の実施可能な範囲を限定することを意図するものではなく、技術的内容を実質的に変更しない場合、相対関係におけるいかなる変更または調整も、本発明の実施可能な範囲内に含まれると見なされるべきである。
【0047】
本発明は、空間軸に沿って配置される2つの平行電極ユニットを含む第1の電極アセンブリと、空間軸に沿って平行電極ユニット間の平面に配置される少なくとも2つの非平行電極ユニットを含む第2の電極アセンブリと、を備え、第1の電極アセンブリと第2の電極アセンブリとによって囲まれる空間は、空間軸に沿ってイオン搬送チャネルを形成し、第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに極性の異なるRF電圧を印加して空間軸に垂直な方向にRF電場を発生させてイオンを閉じ込め、第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリにDC電圧を別個に印加して、所定のDC電圧差を発生させて、空間軸に沿ってDC電場を発生させてイオンの移動を制御するように構成された電源装置を備える、イオンガイド装置を提供する。第2の電極アセンブリが3つ以上の非平行電極ユニットを含む場合、非平行電極ユニットは空間軸の軸方向延長線に沿って配置されることに留意されたい。
【0048】
以下、具体的な実施例を通じて本発明のイオンガイド装置をさらに説明する。
【実施例1】
【0049】
図1に示すように、実施例1では、イオンガイド装置は、第1の電極アセンブリ101、第2の電極アセンブリ102および電源装置(図示せず)を含む線形構造である。第1の電極アセンブリ101は空間軸に沿って配置される一対の平行電極ユニットを含み、第2の電極アセンブリ102は空間軸に沿って平行電極ユニット間の平行平面に配置される少なくとも2つの非平行電極ユニットを含む。したがって、
図2に示すように、第1の電極アセンブリ101および第2の電極アセンブリ102は、イオン入口a1が大きくイオン出口b1が小さいイオン搬送チャネルを空間軸に沿って形成する。本実施例では、第2の電極アセンブリ102として角型ロッド電極または板状電極が使用されており、第2の電極アセンブリ102の断面形状は矩形である。
【0050】
電源装置は、第1の電極アセンブリ101と第2の電極アセンブリ102とに同じ振幅および周波数ならびに逆極性を有するRF電圧を印加し、それによってイオン搬送チャネルの内側に四重極場が形成されて、空間軸に垂直な方向にイオンを閉じ込める。イオン搬送チャネルはイオン入口a1が大きくイオン出口b1が小さいため、大きなイオン受容面積が得られ、イオンの集束効果も優れている。
【0051】
好ましくは、RF電圧は、位相、振幅および周波数のうちの少なくとも1つが異なり得、波形は、正弦波、方形波、鋸歯波および三角波のうちの1つである。
【0052】
一方、電源装置は、第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに、所定のDC電圧差をさらに印加する。イオン搬送チャネルの断面積は空間軸に沿って徐々に変化するため、それに応じてイオン搬送チャネルの中心軸の電位も変化し、それにより、空間軸に沿って電位勾配が形成されてイオンの移動が制御される。具体的には、イオン入口からイオン出口に向かう方向では、イオン搬送チャネルの断面積は空間軸に沿って徐々に減少する。
【0053】
好ましくは、イオンガイド装置は特定の圧力で作動し得る。実際の要件に応じて、圧力値は、以下の範囲のうちの1つの範囲内にある:a)[2×10
5、2×10
3]Pa;b)[2×10
3、20]Pa;c)[20、2]Pa;d)[2、2×10
‐1]Pa;e)[2×10
‐1、2×10
‐3]Pa;およびf)<2×10
‐3Pa。
【0054】
いくつかの実際の要件、例えば加工の困難さ、性能レベルなどを考慮すると、第1の電極アセンブリ101内の電極ユニットは、板状電極、ロッド電極およびPCBもしくはセラミック基板などの基板に取り付けられた薄層電極のうちの1つ、またはそれらの組合せであり得る。
【実施例2】
【0055】
図3および
図4に示すように、実施例2のイオンガイド装置と実施例1のイオンガイド装置との主な相違点は、第2の電極アセンブリ202として丸棒電極が使用される点にある。本実施例でのRF電圧およびDC電圧の実装は、実施例1と基本的に同じである。丸棒電極を使用する利点は四重極場の電場形状が優れていることであり、そのため、空間軸に垂直な方向にイオンを閉じ込めるのに有利である。同様に、イオン搬送チャネルはイオン入口a2が大きくイオン出口b2が小さいため、大きなイオン受容面積が得られ、イオンの集束効果も優れている。
【0056】
第1の電極アセンブリ202として丸棒電極を使用して、その性能をさらに向上させてもよいことに留意されたい。ただし、加工の困難さは増すであろう。
【実施例3】
【0057】
空間軸は、直線軸、曲線軸またはそれらの組合せであってよい。
図5に示すように、実施例3では、本発明のイオンガイド装置の空間軸は180度の曲線軸である。ここで、第1の電極アセンブリ301として、180度の湾曲した板状電極が使用される。
図6に示すように、第2の電極アセンブリ302は、180度屈曲した2つのアーク電極ユニットを含む。2つのアーク電極ユニットは同軸構造ではなく、2つのアーク電極ユニット間の間隔は、イオン入口a3からイオン出口b3に向かって空間軸方向に徐々に狭くなる。そのため、湾曲したイオンガイド装置内に形成されるイオン搬送チャネルの断面積も空間軸方向に変化する。実施例1と同様にRF電圧およびDC電圧を印加した後、空間軸に垂直なRF電場を形成してイオンを閉じ込めてもよく、軸方向DC電場を形成してイオンを駆動してもよい。
【0058】
曲線軸を有するイオンガイド装置は、ニュートラルノイズを減少させ、機器の長さを短縮することができる。
【実施例4】
【0059】
同様に、丸棒電極を使用することによって、曲線軸を有するイオンガイド装置の性能を向上させることができる。実施例4では、
図7は、180度偏向され、第2の電極アセンブリ402として湾曲した丸棒電極を使用するイオンガイド装置を示す。
図8は、湾曲した丸棒電極を使用する第2の電極アセンブリ401を示す。同様に、2つの丸棒電極は同軸構造ではなく、2つの丸棒電極間の間隔は、イオン入口a4からイオン出口b4に向かって空間軸方向に徐々に狭くなる。そのため、イオン搬送チャネルの空間軸に垂直な方向の断面積は徐々に変化する。
【0060】
第1の電極アセンブリ401として湾曲した丸棒電極を使用して、性能をさらに向上させてもよいことに留意されたい。
【実施例5】
【0061】
図9に示すように、実施例5では、イオンガイド装置は、第1の電極アセンブリ501および第2の電極アセンブリ502を含み、イオン入口a5が大きくイオン出口b5が小さい。第1の電極アセンブリ501として、2つの平行面を含む管状電極が使用され、管状電極は180度の湾曲構造を有する。第1の電極アセンブリ501内の全電極に同じRF電圧およびDC電圧が常に印加されるため、第1の電極アセンブリは実際の製造時に一体型電極として組み合わされてもよい。
【0062】
また、イオンガイド装置を衝突セルとして使用する場合、真空中で周囲のイオン光学装置からイオンガイド装置を隔離する必要がある。
図10に示す管状電極が第1の電極アセンブリとして使用される場合、イオンガイド装置は、内部に比較的密閉された真空部分を形成するための真空チャンバとして使用されてもよい。所定量の衝突ガスが真空チャンバ内に供給され、真空チャンバ内の衝突ガスの圧力が所定範囲内で安定化されてもよい。したがって、本実施例のイオンガイド装置は、衝突セルの従来の設計と比較して単純化され、追加の真空チャンバも必要とされない。一方、内部空間が小さいため、既存のイオンガイド装置よりも衝突ガスの消費量が少ない。
【実施例6】
【0063】
図11に示すように、本実施例では、イオンガイド装置の第2の電極アセンブリ602内の外側電極は、イオン入口付近で前側セグメント6025、中間セグメント6026および後側セグメント6027に分割される。電源装置は、隣接する電極セグメントに異なるDC電圧および同じRF電圧を印加する。衝突セル内の親イオンの解離効率を向上させるために、親イオンは一般に比較的高い運動エネルギーまで加速されてから衝突セルに注入される。真空中での絶縁破壊電圧の制限により、RF電圧を無限に上昇させることによってイオンの閉じ込めを強化することはできない。したがって、運動エネルギーが非常に高いイオンが湾曲した衝突セルに入ると、イオンがRF電場の閉じ込めから逃げ、電極に衝突する可能性が非常に高い。本実施例では、DC電圧DC2が第2の電極アセンブリ602の外側電極の中間セグメント6026に印加され、DC電圧DC1が内側電極だけでなく外側電極の前側セグメント6025および後側セグメント6027にも印加される。したがって、陽イオンの場合、イオン入口a6付近に外側電極から内側電極に向かって偏向電場を発生させて、湾曲したイオンガイド装置内でのイオンの偏向を補助してもよい。陰イオンの場合、偏向電場は反対方向を向いている。運動エネルギーが高いイオンは、イオン搬送チャネル内を所定距離飛行した後、衝突ガスと衝突して連続的に冷却されるため、イオンの運動エネルギーは連続的に減少する。イオンの運動エネルギーがある程度まで減少すると、RF電場はイオンを効果的に閉じ込めるのに十分である。本実施例では、セグメント化構造は比較的単純である。イオン入口a6付近で外側電極を3つのセグメントに分割することによりイオンの偏向を効果的に補助してもよく、運動エネルギーが高いイオンの搬送効率を注入中に向上させてもよい。イオン入口a6が大きくイオン出口b6が小さい。
【0064】
本実施例のイオンガイド装置構造に関しては、イオンチャネル内の局所領域内でのみイオンの偏向が調整されるため、イオンの注入および搬送プロセスはほとんど影響を受けないことに留意されたい。
【実施例7】
【0065】
図12に示すように、本実施例は実施例6の変形例である。この変形例では、180度湾曲したイオンガイド装置の第2の電極アセンブリ702に使用される内側電極は、前側セグメント7025、中間セグメント7026および後側セグメント7027に分割される。同様に、DC電圧DC2が内側電極の中間セグメント7026に印加され、DC電圧DC1が外側電極だけでなく内側電極の後側セグメント7025および後側セグメント7027にも印加される。したがって、陽イオンの場合、イオン入口a7付近に外側電極から内側電極に向かって偏向電極電場を発生させて、湾曲したイオンガイド装置内でのイオンの偏向を補助する。陰イオンの場合、発生する偏向電場は反対方向を向いている。イオン入口a7が大きくイオン出口b7が小さい。
【0066】
好ましくは、中間電極セグメントに対する高すぎるDC電圧の印加がイオンチャネル内のイオンの安定性に影響を及ぼすのを防ぐために、本発明のイオンガイド装置では、上述のセグメント化構造が、第2の電極アセンブリの外側電極および内側電極のうちの一方に実装されることに限定されず、代わりに、外側電極および内側電極の両方が異なる位置でセグメント化されてもよい。
【実施例8】
【0067】
図13に示すように、本実施例は実施例3の変形例である。イオンガイド装置の空間軸は90度屈曲した曲線軸であり、イオンガイド装置は、第1の電極アセンブリ801および第2の電極アセンブリ802を含み、イオン入口a8が大きくイオン出口b8が小さい。本実施例での様々な電圧の印加方法は、実施例3と同様であり、同様の目的を実現するために用いられる。
【0068】
本実施例のイオンガイド装置は、実施例3のイオンガイド装置よりも小型であり、複数のイオンガイド装置を任意に組み合わせて、さらに柔軟かつ複雑な構造を実現してもよい。
【実施例9】
【0069】
図14に示すように、本実施例は実施例8の変形例である。イオンガイド装置の空間軸は、90度屈曲した曲線軸であり、イオンガイド装置は、第1の電極アセンブリ901および第2の電極アセンブリ902を含み、イオン入口a9が大きくイオン出口b9が小さい。本実施例と実施例8との相違点は、第2の電極アセンブリとして湾曲した丸棒電極が使用される点にある。本実施例での様々な電圧の印加方法は、実施例8と同様であり、同様の目的を実現するために用いられる。丸棒電極を使用すると、さらに優れた電場形状のRF場を得ることができ、したがってさらに優れたイオン閉じ込め効果が達成される。
【実施例10】
【0070】
図15に示すように、本実施例の第2の電極アセンブリは、空間軸の延長線に沿って第1の電極アセンブリの平行電極ユニット間の平面に配置される一対の非平行電極ユニット10021および10022を含む。同様に、第2の電極アセンブリは、様々な機能要件を満たし、様々な機能の柔軟な組合せと拡張とを実現するために、空間軸の延長線に沿って第1の電極アセンブリの平行電極ユニット間の平面に配置される少なくとも一対の非平行電極ユニットを含んでもよい。
【0071】
本発明のイオンガイド装置は、質量分析装置の前段イオンガイド装置、イオン圧縮器、イオン蓄積器、衝突セルおよびイオン集群器のうちの1つ、またはそれらの組合せとして使用される。言い換えれば、質量分析装置は、対応する目的を達成するために、1つ以上の上述のイオンガイド装置を含んでもよい。
【0072】
図16に示すように、本発明のイオンガイド装置は以下の工程を備える:
【0073】
工程S1:空間軸に沿って配置される2つの平行電極ユニットを含む第1の電極アセンブリを提供する工程;
【0074】
工程S2:空間軸に沿って平行電極ユニット間の平面に配置される少なくとも2つの非平行電極ユニットを含む第2の電極アセンブリを提供する工程、を備え、第1の電極アセンブリと第2の電極アセンブリとによって囲まれる空間は、空間軸に沿ってイオン搬送チャネルを形成し;
【0075】
工程S3:第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリに極性の異なるRF電圧を印加して空間軸に垂直な方向にRF電場を発生させてイオンを閉じ込め、第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリにDC電圧を別個に印加して、所定のDC電圧差を発生させて、空間軸に沿ってDC電場を発生させてイオンの移動を制御する工程。
【0076】
本発明のイオンガイド方法の具体的な実施は、イオンガイド装置の具体的な実施および実施例と同じであり、ここでは繰り返さない。
【0077】
結論として、本発明のイオンガイド装置およびイオンガイド方法では、空間軸に沿って配置される一対の平行電極と、空間軸と所定の角度を成す一対の非平行電極とが含まれ、一対の平行電極と一対の非平行電極とによって囲まれるイオン搬送チャネルの断面積は、空間軸に沿って徐々に変化する。また、一対の平行電極および一対の非平行電極に極性の異なるRF電圧を印加し、一対の平行電極と一対の非平行電極との間にDC電圧差を印加することにより、イオンチャネル内で軸方向に垂直な方向にRF電場を発生させてイオンを閉じ込め得、また、軸方向にDC電場を発生させてイオン搬送を駆動し得る。したがって、イオンの搬送速度が効果的に高められ得、軸外しイオン光学構造が好都合に実現され得る。そのため、イオンガイド装置の信号雑音比が大幅に改善され、機器の全長が短縮される。さらに、構造が単純で、操作が便利である。したがって、本発明は、従来技術の様々な欠点を効果的に克服し、ひいては、高い産業上の利用価値を有する。
【0078】
本実施例は、本発明の原理および効果を例証的に説明するためのものに過ぎず、本発明を限定することを意図したものではない。当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本実施例に修正または変更を加えることができる。したがって、本発明の精神および技術的思想から逸脱することなく、当業者によって加えられるあらゆる等価の修正または変更は、本発明の特許請求の範囲に包含される。