(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力を供給する複数の電力供給設備それぞれと接続された複数の電力変換装置と、第一電力系統および第二電力系統と前記複数の電力変換装置との間に設けられ前記複数の電力変換装置それぞれを前記第一電力系統と前記第二電力系統とのいずれか一方に対して個別に且つ選択的に接続するように構築された開閉装置と、に対してそれぞれ通信を行い、前記開閉装置の開閉を制御することで前記第一電力系統および前記第二電力系統に対する前記複数の電力変換装置それぞれの接続状態を可変に設定するとともに、前記第一電力系統に接続された電力変換装置と前記第二電力系統に接続された電力変換装置とを個別に制御するように構築された電力システムの上位制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態にかかる電力システムは、「複数のPCSグループ」を備えている。PCSグループとは、複数個のPCSをグループ化して取り扱うための単位である。実施の形態では、一つのPCSグループが、上記「課題を解決するための手段」における一つの「電力変換装置」に相当している。
【0011】
PCSグループに含まれる個々のPCSは、いわば「単位電力変換装置」に相当している。一つのPCSグループは、少なくとも一つのPCS(パワーコンディショニングシステム)を含んでいる。一つのPCSは、少なくとも、電力変換回路であるインバータ回路と、このインバータ回路を制御するインバータ制御回路と、各種の電気計測器(電流計および電圧計など)と、を含んでいる。PCSの具体的構造は各種公知の技術が存在するので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0012】
複数のPCSが接続されて一つのPCSグループが構築されてもよく、この場合には複数のPCSが統合制御されて一つの電力変換装置として作動してもよい。ただし、「PCSグループ」は複数のPCSを含むものに限定されない。一つのPCSのみを含むPCSグループが提供されてもよい。
【0013】
図1は、実施の形態にかかる電力システム1を示す構成図である。
図1に示す電力システム1は、第一系統連系点S1および第二系統連系点S2に接続することで、第一電力系統20aおよび第二電力系統20bと接続している。
【0014】
第一電力系統20aと第二電力系統20bは、互いに異なる電力需要を持っている。以下に述べるように、実施の形態にかかる電力システム1によれば、個々の電力系統の電力需要に合わせてフレキシブルにシステムを変更することができる。なお、季節、時期、時間その他の状況に応じて、第一電力系統20aと第二電力系統20bの少なくとも一方の電力需要が変化することがあってもよい。実施の形態にかかる電力システム1はそのような電力需要の変化にも対応しうるからである。
【0015】
実施の形態にかかる電力システム1は、中央監視装置2cと第一上位制御装置2aと第二上位制御装置2bとを含む上位制御部2と、複数の電力計測器3a,3bと、複数の第一変圧器4と、複数の開閉装置5a、5b、5cと、複数の第二変圧器8と、複数の電力供給設備9と、複数のPCSグループ10と、を備えている。
【0016】
実施の形態では上位制御部2が中央監視装置2cと第一上位制御装置2aと第二上位制御装置2bとに分割されているが、必ずしもこのような分割がされていなくともよい。単一の装置が、上位制御部2のすべての機能を搭載してもよい。
【0017】
複数の電力供給設備9は、電力を供給する各種の設備である。
【0018】
複数の電力供給設備9の少なくとも一つまたは全部が、「再生可能エネルギー発電設備」であってもよい。「再生可能エネルギー発電設備」は、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった「再生可能エネルギー」で発電する発電設備である。再生可能エネルギー発電設備には、天候によって発電量が左右されるものが含まれてもよい。天候によって発電量が左右される再生可能エネルギー発電設備には、例えば太陽電池パネルと風力発電機とが含まれる。複数の再生可能エネルギー発電設備は、同一種類の再生可能エネルギー発電設備で統一されていてもよいし、異なる再生可能エネルギーで発電する異なる種類の発電設備を含んでもよい。例えば全ての電力供給設備9が太陽電池パネルであってもよいし、あるいは全ての電力供給設備9が風力発電機であってもよい。
【0019】
複数の電力供給設備9は、少なくとも一つの蓄電池設備を含んでも良く、全てが蓄電池設備であってもよい。複数の電力供給設備9が、再生可能エネルギー発電設備と蓄電池設備の両方を含んでも良い。複数の電力供給設備が、再生可能エネルギー発電設備と蓄電池設備の両方を含んでも良い。
【0020】
複数のPCSグループ10は、複数の電力供給設備9それぞれと接続されている。実施の形態にかかる複数のPCSグループ10は、第一PCSグループ10aと、第二PCSグループ10bと、第三PCSグループ10cと、を含んでいる。
【0021】
実施の形態にかかる開閉装置5a、5b、5cは、第一電力系統20aおよび第二電力系統20bと複数のPCSグループ10との間に設けられている。開閉装置5a、5bは、複数のPCSグループ10それぞれを第一電力系統20aと第二電力系統20bとのいずれか一方に対して個別に且つ選択的に接続するように構築されている。
【0022】
「個別に接続すること」が可能なので、複数のPCSグループ10それぞれが互いに独立して任意の電力系統に接続できる。「選択的に接続すること」が可能なので、複数のPCSグループ10それぞれの接続先を必要に応じて異なる電力系統に切り替えることができる。
【0023】
具体的には、実施の形態にかかる開閉装置5a、5b、5cは、第一開閉装置5aと、第二開閉装置5bと、第三開閉装置5cとを含んでいる。第一開閉装置5aは、並列に設けられた複数の開閉器5a1、5a2、5a3によって構成されている。第二開閉装置5bは、並列に設けられた複数の開閉器5b1,5b2、5b3によって構成されている。
【0024】
なお、第三開閉装置5cを省略することで、第三開閉装置5cの位置が開放(つまり電気的に非接続)の状態とされてもよい。
【0025】
複数の第一変圧器4のうち一つは系統連系点S1に接続されている。複数の第一変圧器4のうち他の一つは系統連系点S2に接続されている。
【0026】
開閉器5a1は、第一PCSグループ10aと接続した第二変圧器8の一端と、第一電力系統20aの側の第一変圧器4の一端との間に介在している。開閉器5b1は、第一PCSグループ10aと接続した第二変圧器8の一端と、第二電力系統20bの側の第一変圧器4の一端との間に介在している。開閉器5a1と開閉器5b1との開閉を排他的に制御することで、第一PCSグループ10aが第一電力系統20aまたは第二電力系統20bのいずれか一方に選択的に接続される。なお、「排他的に制御」とは、複数の開閉器のうち一つの開閉器を開成に制御しているときには他の開閉器を閉成に制御するという意味である。
【0027】
開閉器5a2は、第二PCSグループ10bと接続した第二変圧器8の一端と、第一電力系統20aの側の第一変圧器4の一端との間に介在している。開閉器5b2は、第二PCSグループ10bと接続した第二変圧器8の一端と、第二電力系統20bの側の第一変圧器4の一端との間に介在している。開閉器5a2と開閉器5b2との開閉を排他的に制御することで、第二PCSグループ10bが第一電力系統20aまたは第二電力系統20bのいずれか一方に選択的に接続される。
【0028】
開閉器5a3は、第三PCSグループ10cと接続した第二変圧器8の一端と、第一電力系統20aの側の第一変圧器4の一端との間に介在している。開閉器5b3は、第三PCSグループ10cと接続した第二変圧器8の一端と、第二電力系統20bの側の第一変圧器4の一端との間に介在している。開閉器5a3と開閉器5b3との開閉を排他的に制御することで、第三PCSグループ10cが第一電力系統20aまたは第二電力系統20bのいずれか一方に選択的に接続される。
【0029】
第三開閉装置5cは、第一電力系統20aの側の第一変圧器4と第一開閉装置5aとを結ぶ配電線と、第二電力系統20bの側の第一変圧器4と第二開閉装置5bとを結ぶ配電線と、の間に介在している。第三開閉装置5cを閉成すると、第一電力系統20aの側の回路と第二電力系統20bの側の回路とが第三開閉装置5cを介して電気的に接続される。実施の形態では、第三開閉装置5cは平常時においては開成されているものとする。
【0030】
なお、「開閉装置を構成する個々の開閉器」は、電力システム1内の特定の位置の回路接続を開成と閉成とで切り替え可能なものであれば、特に具体的構造に限定はない。設置される回路位置の電気的仕様などに応じて、負荷開閉器、遮断器、および断路器などの様々な公知の装置を必要に応じて用いることができる。
【0031】
上位制御部2のうち中央監視装置2cが、開閉装置5a、5b、5cを制御する。中央監視装置2cが、第一電力系統20aおよび第二電力系統20bに対する複数のPCSグループ10それぞれの接続状態を可変に設定する。
【0032】
複数の電力計測器3a,3bは、第一電力計測器3aと、第二電力計測器3bとを含んでいる。第一電力計測器3aは、第一電力系統20aとの系統連系点S1と第一開閉装置5aとを結ぶ電力配線に設置されている。第一電力計測器3aは、この電力配線で伝達される第一電力の電力パラメータを計測する。
【0033】
第二電力計測器3bは、第二電力系統20bとの系統連系点S2と第二開閉装置5bとを結ぶ電力配線に設置される。第二電力計測器3bは、この電力配線で伝達される第二電力の電力パラメータを計測する。
【0034】
複数の電力計測器3a、3bそれぞれは、POIメータである。POIメータは、電力(kW)と、無効電力(kvar)と、周波数(Hz)と、力率(PF)と、電圧(V)とを計測する。
【0035】
上位制御部2のうち第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bは、複数のPCSグループ10のうち第一電力系統20aに接続されたPCSグループと第二電力系統20bに接続されたPCSグループとを個別に制御する。
【0036】
第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bは、いわゆるパワープラントコントローラ(PPC)であってもよい。
図1に示すように、実施の形態では、第一上位制御装置2aと第二上位制御装置2bと複数のPCSグループ10とが互いに通信網(
図1の破線)を共有している。
【0037】
第一上位制御装置2aは、複数のPCSグループ10それぞれに接続されている。第一上位制御装置2aは、第一電力系統20aとの系統連系を安定化させる第一電力安定化制御を実施するように、第一電力計測器で計測された電力パラメータに基づいて、複数のPCSグループ10のうち第一電力系統20aに接続されたPCSグループを制御するように構築されている。
【0038】
第二上位制御装置2bは、複数のPCSグループ10それぞれに接続されている。第二上位制御装置2bは、第二電力系統20bとの系統連系を安定化させる第二電力安定化制御を実施するように、第二電力計測器で計測された電力パラメータに基づいて、複数のPCSグループ10のうち第二電力系統20bに接続されたPCSグループを制御するように構築されている。
【0039】
これにより、第一電力系統20aの電力安定化制御と第二電力系統20bの電力安定化制御とを個別に精度良く実施することができる。その結果、複数の電力系統20a、20bに対してフレキシブルに電力安定化制御を実施することができる。
【0040】
図2は、実施の形態にかかる電力システムが備える上位制御部を示す構成図である。中央監視装置2cは、現在の接続状態を表す情報を第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bに対して送信している。
【0041】
実施の形態では、第一上位制御装置2aと第二上位制御装置2bと中央監視装置2cとが互いに通信することで、これらの間で現在のシステム接続関係(つまりどのPCSグループがどの電力系統に接続されているか)が共有されている。第一上位制御装置2aは、複数のPCSグループ10のうち第一電力系統20aに接続されたPCSグループを制御対象とする。第二上位制御装置2bは、複数のPCSグループ10のうち第二電力系統20bに接続されたPCSグループを制御対象とする。
【0042】
第一上位制御装置2aと第二上位制御装置2bとが通信することで、第一上位制御装置2aが制御対象とするPCSグループと第二上位制御装置2bが制御対象とするPCSグループとの間の重複を抑制するように構築されていてもよい。このような重複チェックを行うための「インターロック機能」が設けられていても良い。
【0043】
第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bそれぞれは、有効電力上限値制御ブロックと、出力変化率制御ブロックと、周波数制御ブロックと、電圧制御ブロックと、力率制御ブロックと、無効電力制御ブロックと、制御対象PCS選択ブロックと、を備えている。これらのブロックが協働することで第一電力系統20aおよび第二電力系統20bに対する系統安定化制御がそれぞれ実施される。系統安定化制御は既に公知の技術であるため、その詳細は説明を省略する。
【0044】
図2に示すように、中央監視装置2cは、ルート生成機能(開閉器制御機能)を有する機能ブロックを備えている。中央監視装置2cは、系統情報Dspに応じて第一電力系統20aと第二電力系統20bにいずれのPCSグループを接続すべきかを判定するための判定ロジックを備えている。中央監視装置2cは、その判定ロジックの判定結果に従って第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bを制御することで、複数のPCSグループ10の接続関係を制御するように構築されている。
【0045】
以上説明したように、電力システム1によれば、第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bを制御することで複数のPCSグループ10と第一電力系統20aおよび第二電力系統20bとの接続関係を可変に構築することができるので、異なる複数の電力系統20a、20bそれぞれへの送電をフレキシブルに行うことができる。従って、単一の電力システム1で様々な電力需要に応えることができる。
【0046】
より具体的に説明すると、第一系統情報によって、第一電力系統20aに第一電力量の送電が指示され、第二電力系統20bに第二電力量の送電が指示されたとする。この場合、複数のPCSグループ10それぞれが第一電力系統20aと第二電力系統20bとに個別に割り当てられることで、複数のPCSグループ10のうち一部によって第一電力量を発電するとともに複数のPCSグループ10のうち残りによって第二電力量を発電することができる。
【0047】
一方、上記電力システムに対して上記第一系統情報と異なる第二系統情報が与えられる場合もある。第二系統情報では、第一電力量および第二電力量それぞれの大きさが第一系統情報とは異なっている。このような場合であっても、上記電力システムによれば、中央監視装置2cが第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bを制御することで、第一電力系統20aおよび第二電力系統20bに対して複数のPCSグループ10が様々な組み合わせパターンで割り当てられる。
【0048】
これにより、第一電力系統20aに接続するPCSグループと第二電力系統20bに接続するPCSグループとをフレキシブルに変更できる。その結果、異なる複数の電力系統20a、20bそれぞれへの送電をフレキシブルに行うことができるので、単一の電力システムで様々な電力需要に応えることができる。
【0049】
以下、
図3〜
図6を用いて、
図1に示す電力システム1の動作説明とともに、実施の形態にかかるPCSグループ容量およびシステム接続パターンのバリエーションを説明する。「システム接続パターン」とは、複数のPCSグループ10それぞれと第一電力系統20aおよび第二電力系統20bとの間の接続パターンのことである。以下、「システム接続パターン」とは、それらの接続関係を定めた電子情報のことも指すものとする。
【0050】
複数のPCSグループ10それぞれの容量は電力システム1の設計および設置段階において決定されるものであり、システムごとに様々に設定することができるので、そのバリエーションを以下説明する。システム接続パターンも下記のように様々なバリエーションを用意することができる。
【0051】
実施の形態では、中央監視装置2cが「複数のシステム接続パターン」を自己の不揮発性メモリに記憶していてもよい。中央監視装置2cは、電力会社等から予め送信された系統情報に従って、複数のシステム接続パターンから一つのシステム接続パターンを選択するように構築されていてもよい。
【0052】
すなわち、上位制御部2における例えば中央監視装置2cが、複数のシステム接続パターンを予め記憶していてもよい。上位制御部2における例えば中央監視装置2cが、系統情報に応じて複数のシステム接続パターンのなかの一つのシステム接続パターンを選択し、選択したシステム接続パターンに従って第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bを制御するように構築されていてもよい。これにより、第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bそれぞれの開閉器を個別の信号で逐一制御しなくとも、複数のPCSグループ10の接続関係を所望のシステム構成へと簡単に変化させることができる利点がある。
【0053】
図2に示すように、中央監視装置2cは、ルート生成機能(開閉器制御機能)を有する機能ブロックを備えている。中央監視装置2cが備えるルート生成機能ブロックは、系統情報Dspと複数のシステム接続パターンとを対応付けた対応情報を例えば二次元マップなどの形態で予め記憶している。ルート生成機能ブロックへの系統情報Dspの入力に応じて一つのシステム接続パターンが選択され、その選択されたシステム接続パターンどおりに複数のPCSグループ10を接続させるように、第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bが制御される。
【0054】
図3〜
図6には、システム接続パターンの番号(第一システム接続パターン、第二システム接続パターン・・・)と、PCSグループの個数および番号と、各PCSグループの容量(MW)とが表の形態で図示されている。
【0055】
システム接続パターンごとに、各PCSグループと、各電力系統との接続関係(つまり「接続」または「切離し」)が図示されている。「接続」と記載されている電力系統と接続されるように、第一開閉装置5aと第二開閉装置5bのなかの特定の開閉器が閉成に制御される。「切離し」と記載されている電力系統とは非接続とされるように、第一開閉装置5aと第二開閉装置5bのなかの特定の開閉器が開成に制御される。
【0056】
また、システム接続パターンごとに、各電力系統に接続されたPCSグループの総容量も図示されている。例えば
図3における第一システム接続パターンでは、第一電力系統20aに接続したPCSグループの総容量は「20.4+20.4+10.2=51(MW)」であり、第二電力系統20bに接続したPCSグループの総容量は0(MW)である。この記載ルールは、
図3およびそれ以降の全てのシステム接続パターン表において共通である。
【0057】
図3は、実施の形態にかかる電力システムが備える複数のシステム接続パターンを説明するための図である。
図3では、一例として、第一PCSグループ10aの容量が20.4MWであり、第二PCSグループ10bの容量が20.4MWであり、第三PCSグループ10cの容量が10.2MWであるものとする。
【0058】
一例として、同じ容量を持つ20個のPCS(第一PCS〜第二十PCS)を、3つのグループに分割したものであってもよい。第一PCSグループ10aは8個のPCS(第一PCS〜第八PCS)を接続したものであってもよい。第二PCSグループ10bは、8個のPCS(第九PCS〜第十六PCS)を接続したものであってもよい。第三PCSグループ10cは、4個のPCS(第十七PCS〜第二十PCS)を接続したものであってもよい。
【0059】
複数のシステム接続パターンは、第一電力系統20aと第二電力系統20bのうち一方に複数のPCSグループ10の全てを接続するとともに第一電力系統20aと第二電力系統20bのうち他方には複数のPCSグループ10を接続しないシステム接続パターンを含んでいてもよい。
図3における第一システム接続パターンと第八システム接続パターンがこれに相当している。
【0060】
複数のシステム接続パターンは、第一電力系統20aに複数のPCSグループ10のうち一部を接続するとともに第二電力系統20bに複数のPCSグループ10の残りを接続するシステム接続パターンを含んでいてもよい。
図3における第二システム接続パターン〜第七システム接続パターンがこれに相当している。
【0061】
図4〜
図6は、実施の形態にかかる電力システムが備える複数のシステム接続パターンを説明するための図である。
図4の例では、
図3の場合とは異なり、複数のPCSグループ10が20.4MWで同じ容量を持っているものとする。
図5の例では、複数のPCSグループ10が互いに異なる容量を持ち、第一PCSグループ10aの容量が30.6MWであり、第二PCSグループ10bの容量が20.4MWであり、第三PCSグループ10cの容量が10.2MWであるものとする。
図6の例では、複数のPCSグループ10が互いに異なる容量を持ち、第一PCSグループ10aの容量が20.4MWであり、第二PCSグループ10bの容量が15.2MWであり、第三PCSグループ10cの容量が10.2MWであるものとする。
【0062】
複数のPCSグループ10は、同一の容量を持つ複数の特定PCSグループを含んでもよい。例えば
図3のように第一PCSグループ10aと第二PCSグループ10bとがともに20.4(MW)の容量を持ってもよい。例えば
図4のように複数のPCSグループ10が互いに同じ容量を持ってもよい。
【0063】
複数のPCSグループ10は、第一容量を持つ複数の特定PCSグループと、第一容量と異なる第二容量を持つ少なくとも一つの他の特定PCSグループと、を含んでもよい。この例に当てはまるのは例えば
図3、
図5および
図6である。
【0064】
複数のPCSグループ10は、第一容量を持つ少なくとも一つの特定PCSグループと、第一容量と異なり且つ第一容量を整数倍した第二容量を持つ少なくとも一つの他の特定PCSグループと、を含んでもよい。
図3では20.4/10.2=2倍という関係があり、
図4では20.4/20.4=1倍という関係があり、
図5では同様に2倍または3倍の関係にある。
図6では15.2(MW)が他の容量に対して整数倍の関係にはないが、20.4/10.2=2倍の関係が成り立つ。従ってこの例には、
図3、
図4、
図5、および
図6の全てが含まれる。
【0065】
なお、複数のPCSグループ10それぞれの容量が整数の関係を含むように定められると、システム接続パターンの記憶個数を節減可能であるという利点がある。例えば、
図3では第二システム接続パターンと第三システム接続パターンとでPCSグループの容量の分配の仕方が同じである。これらのうち一方のシステム接続パターンを構築できれば、他方のシステム接続パターンは使用しなくともよい場合がある。従って、PCSグループの容量の分配の仕方が同じである複数のシステム接続パターンのうち一つの特定システム接続パターンのみを中央監視装置2cに記憶させてもよく、残りのシステム接続パターンを省略しても良い。
図3の第六システム接続パターンと第七システム接続パターンも同様の関係にある。
図4および
図5でも同様に省略可能な接続パターンが含まれている。
【0066】
複数のPCSグループ10は、第一容量を持つ少なくとも一つの特定PCSグループと、第一容量と異なり且つ第一容量の非整数倍の値である第二容量を持つ他の特定PCSグループと、を含んでもよい。
図6では15.2(MW)が他の容量に対して整数倍の関係にはないので、この例に当てはまるのは
図6である。
【0067】
図7は、実施の形態にかかる電力システムで実行される制御シーケンスを示す図である。なお、
図7では、第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bを構成する開閉器としてVCB(真空遮断器)が用いられた例が示されている。
図7に示すシーケンスフローでは、まず、中央監視装置2cが、第nPCSグループの切替開始指令を送信する(ステップS100)。
【0068】
ここで、「n」は、任意のPCSグループ番号である。次に、第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bが、系統安定化制御を含むPCS制御を中断するように制御中断ルーチンを実行する(ステップS101)。
【0069】
次に、第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bが、第nPCSグループに含まれるPCSの停止指令を送信する(ステップS102)。このとき、第nPCSグループに該当しない他のPCSグループについてはそのまま運転を継続してもよい。
【0070】
次に、複数のPCSグループ10のうち、第nPCSグループのPCSが、停止指令を受けて停止完了したことを第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bに対してアンサーバックする(ステップS103)。
【0071】
次に、第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bは、中央監視装置2cに対して、システム接続パターンの切替が可能であることを示す切替可能信号を送信する(ステップS104)。次に、中央監視装置2cは、第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bに対して、VCB開閉指令を送信する(ステップS105)。
【0072】
VCB開閉指令を受けた第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bは、VCB開閉指令の内容に従って個々の開閉器(VCB)を開成または閉成に制御する。その後、第一開閉装置5aおよび第二開閉装置5bは、個々の開閉器(VCB)の制御が完了した後、中央監視装置2cに対してVCBアンサーバックを送信する(ステップS106)。
【0073】
次に、中央監視装置2cは、第nPCSグループの切替完了を伝達するための切替完了指令信号を、第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bに対して送信する(ステップS107)。切替完了指令信号受信した後に、第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bは、第nPCSグループにPCS運転指令を送信する(ステップS108)。
【0074】
PCS運転指令を受信した第nPCSグループは、運転を再開するとともに、PCSアンサーバックを第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bに送信する(ステップS109)。その後、第一上位制御装置2aおよび第二上位制御装置2bは、それぞれが制御対象とするPCSグループに対して制御指令を発することで、系統安定化制御を再開する。
【0075】
図8は、実施の形態にかかる電力システム1の具体例および所掌区分の例を示す構成図である。
図8には
図1の電力システム1と共通のシステム構成を有しているものの、所掌区分が例示されている点および複数の開閉器31、32、33、34、35、51が追加で図示されている点で
図1と違いがある。第一変圧器4は中圧区分40に含まれる。電力計測器3a、3bは高圧区分30に含まれている。高圧区分30は、系統連系点S1と第一変圧器4との間の電力配線21aに挿入された開閉器31、33と、系統連系点S2と第一変圧器4との間の電力配線21bに挿入された開閉器32、34と、高圧区分30の内部で第一電力系統20aの側の配線と第二電力系統20bの側の配線との間の開成と閉成とを切替可能に構築された開閉器35とを含んでいる。複数の開閉器31、32、33、34、35、51は中央監視装置2cにより制御される。
【0076】
図9は、実施の形態にかかる電力システム101の変形例を示す構成図である。
図9の変形例では、
図1の電力システム1に、第四PCSグループ10dが追加されている。第四PCSグループ10dとともに、これに接続される電力供給設備9、第二変圧器8、が追加されている。また、第一開閉装置5aに第四の開閉器5a4が追加され、第二開閉装置5bに第四の開閉器5b4が追加されている。
【0077】
図10〜
図12は、実施の形態の変形例にかかる電力システム101が備える複数のシステム接続パターンを説明するための図である。
図10〜
図12では、一例として、第一PCSグループ10a〜第四PCSグループ10dがそれぞれ25(MW)を持つものとしている。しかしながら、
図9のシステムにおいても、上記の
図3〜
図6を用いつつ説明したのと同様に、複数のPCSグループ10の容量の定め方を様々に変形することができる。少なくとも、一部又は全部の容量を同一または非同一とする変形が可能であり、異なる容量同士の関係を整数倍とするか非整数倍とする変形も可能である。
【0078】
図13は、実施の形態の変形例にかかる電力システム101の具体例および所掌区分の例を示す構成図である。
図9のシステム構成に対して、所掌区分などを例示したものである。
図13における変形の内容は、
図1に対して施された
図8の変形と同様であるため、その詳細の説明は省略する。
【0079】
図14は、実施の形態にかかる電力システム102の変形例を示す構成図である。
図14の変形例は、電力システムに接続される電力系統の数を一つ増やしたものである。
図14の変形例では、
図1の電力システム1に、第三電力系統20cが追加で接続されており、第三上位制御装置2dと、第三電力計測器3cと、第四開閉装置5dと、が追加されている。
【0080】
第四開閉装置5dは、複数の開閉器5d1〜5d3を含んでいる。開閉器5d1〜5d3それぞれは、複数のPCSグループ10それぞれと接続した第二変圧器8の一端と、第一電力系統20a、第三電力系統20cの側の第一変圧器4の一端との間に介在している。第四開閉装置5dにより、複数のPCSグループ10それぞれの接続先として、第三電力系統20cを選ぶこともできる。
【0081】
図15〜
図17は、実施の形態の変形例にかかる電力システム102が備える複数のシステム接続パターンを説明するための図である。
図15〜
図17では、
図1と同様に複数のPCSグループ10の容量を定めているが、これに限定されるものではない。
図14の電力システム102においても、上記の
図3〜
図6、
図10〜
図12を用いつつ説明したのと同様に、複数のPCSグループ10の容量の定め方を様々に変形することができる。少なくとも、一部又は全部の容量を同一または非同一とする変形が可能であり、異なる容量同士の関係を整数倍とするか非整数倍とする変形も可能である。また、
図14の電力システム102において、
図9の電力システム101と同様にPCSグループ10の数を4個にしてもよい。
【0082】
なお、実施の形態では、一例として、複数の電力供給設備9それぞれの定格電力供給量と、個々の電力供給設備9に接続される複数のPCSグループ10の定格容量とは、互いに対応していてもよい。例えば、第一PCSグループ10aと第二PCSグループ10bとが共通に第一容量(例えば20.4MW)を持つのであれば、第一PCSグループ10aと第二PCSグループ10bに接続される複数の電力供給設備9も共通の電力供給容量を画一的に持っていてもよい。
【0083】
ただし、このように電力供給設備9の電力供給容量が画一的である場合のみに実施の形態が限定されるものではない。例えば下記のような変形例が構築されても良い。
【0084】
例えば、何らかの理由により、同じ容量を持つ複数のPCSグループ10に対して、異なる容量を持つ電力供給設備9が接続されることも想定される。具体的には、第一PCSグループ10aに接続される電力供給設備9が第一発電容量を持つ太陽電池アレイであるとする。さらに、第二PCSグループ10bに接続される電力供給設備9が第一発電容量と完全には一致しない第二発電容量を持つ太陽電池アレイであるものとする。この場合、第一PCSグループ10aおよび第二PCSグループ10bが同じ容量を持っていても、電力供給設備9に違いがある。
【0085】
また、何らかの理由により、同じ容量を持つ複数のPCSグループ10に対して、種別の異なる電力供給設備9が接続されることも想定される。例えば同じ容量を持つ複数のPCSグループ10のなかで、一つのPCSグループには太陽電池アレイが接続され、他の一つのPCSグループには蓄電池設備あるいは風力発電機が接続される等の場合である。
【0086】
具体的には、第一PCSグループ10aに接続される電力供給設備9が太陽電池アレイであるとする。さらに、第二PCSグループ10bに接続される電力供給設備9が蓄電池設備あるいは風力発電機であるものとする。この場合、第一PCSグループ10aおよび第二PCSグループ10bが同じ容量を持っていても、電力供給設備9に違いがある。
【0087】
上記の変形例においては、容量の分配が同じである複数のシステム接続パターンがもれなく上位制御部2に記憶されてもよい。容量の分配が同じである複数のシステム接続パターンとは、
図3の例であれば、例えば第二システム接続パターンと第三システム接続パターンである。電力供給設備9それぞれが互いに違う構造性質を有する場合には、仮に容量の分配が同じ複数のシステム接続パターンであっても、状況に応じた使い分けができるからである。
【0088】
また、電力供給設備9として自然エネルギーを用いて発電する再生可能エネルギー発電設備が用いられている場合には、次のような事情がある。再生可能エネルギー発電設備は、例えば太陽電池アレイあるいは風力発電機などを含む。これらは発電量が天候に左右される。例えば太陽電池アレイであれば個々のアレイの設置場所に応じて日射量に差が出ることがある。風力発電機についても設置場所が異なれば、風力発電機が受ける風量に違いが出る場合もある。
【0089】
従って、このような各電力供給設備9の個性を考慮に入れて、前述のようなシステム接続パターンの省略を行わずに、容量の分配が同じである複数のシステム接続パターンがもれなく上位制御部2に記憶されてもよい。この場合、一例として、複数のPCSグループ10に接続される太陽電池アレイおよび風力発電機に関する識別情報が、
図3〜
図6、
図10〜
図12、
図15〜
図17に例示した対応マップデータに加えられていても良い。
【0090】
そのような「電力供給設備の識別情報」を追加した変形例を、
図20および
図21に示す。
図20〜
図21は、実施の形態の変形例にかかる電力システムが備える複数のシステム接続パターンを説明するための図である。識別情報は、電力供給設備の種類が含まれていてもよく、単に「第一太陽電池アレイ」および「第二太陽電池アレイ」などの識別情報とされていてもよく、例えば個々の発電設備の設置場所あるいは稼働年数等の運転履歴が含まれていてもよく、これら以外の識別情報が含まれていても良い。
【0091】
図22は、実施の形態にかかる電力システム103の変形例を示す構成図である。
図22の電力システム103は、第三PCSグループ10cおよびこれと接続する各種回路構成が省略されている。つまり、
図22の電力システム103は、
図1の電力システム1に比べて、複数のPCSグループ10の個数を一つ減らしたものである。
図23は、実施の形態の変形例にかかる電力システム103が備える複数のシステム接続パターンを説明するための図である。
【0092】
図23では、複数のPCSグループ10の容量を20.4(MW)と10.2(MW)に定めているが、これに限定されるものではない。
図22の電力システム103においても、
図3〜
図6、
図10〜
図12、
図15〜
図17を用いつつ説明したのと同様に、複数のPCSグループ10の容量の定め方を様々に変形することができる。少なくとも、一部又は全部の容量を同一または非同一とする変形が可能であり、異なる容量同士の関係を整数倍とするか非整数倍とする変形も可能である。
【0093】
実施の形態では、
図1、
図9、
図14、および
図22において、接続する電力系統の個数と複数のPCSグループの個数とのバリエーションを例示した。接続する電力系統の個数は2つ以上の任意の個数としても良い。複数のPCSグループも2つ以上の任意の個数としてもよい。接続する電力系統の個数よりも複数のPCSグループの個数のほうが少なくともよく、これとは逆に、接続する電力系統の個数よりも複数のPCSグループの個数のほうが多くともよい。
【0094】
なお、前述の
図3〜
図6、
図10〜
図12、
図15〜
図17に示したシステム接続パターンでは、複数のPCSグループがいずれかの電力系統に接続されている。しかしながら、一部のPCSグループをいずれの電力系統にも接続させずに休止させるシステム接続パターンが含まれていても良い。この場合には、休止させたいPCSグループが全ての電力系統から切り離されるように第一開閉装置5a、第二開閉装置5b、および第四開閉装置5dを制御すれば良い。
【0095】
実施の形態にかかる上位制御部2は、「電力システムの上位制御装置」として単体で提供されてもよい。「電力システムの上位制御装置」が単体で提供される場合には、上位制御部2のすべての機能を搭載した単一の装置が提供されてもよい。或いは、実施の形態のように中央監視装置2cと第一上位制御装置2aと第二上位制御装置2bとを含む複数の装置群からなる形態で、「電力システムの上位制御装置」が提供されてもよい。
【0096】
(比較例)
図18は、実施の形態の効果を説明するための比較例(関連技術:Related Art)にかかる電力システムを示す構成図である。
図18の比較例にかかる電力システムでは、系統連系点S1と系統連系点S2とが合流点Xで合流している。合流点Xが複数のPCSグループ10と接続されている。複数のPCSグループ10は、図示を省略した電力供給設備9からの電力を変換して、変換後の電力を合流点Xに送電する。電力計測器103および上位制御装置102によって電力安定化制御が実施される。
【0097】
図18の電力システムでは、実施の形態にかかる電力システム1とは異なり開閉装置5a、5bが設けられていないので、複数のPCSグループのシステム接続パターンを切り替える制御が不可能である。従って、比較例では、実施の形態のようなフレキシブルな送電を行うことができない欠点がある。
【0098】
図19は、実施の形態の効果を説明するための比較例にかかる電力システムを示す構成図である。
図19は、単一の電力系統に接続する従来の電力システムを例示したものである。この比較例も、複数のPCSグループ10を用いて単一の電力系統に対して系統安定化制御を実施することはできるものの、実施の形態のようなフレキシブルな送電はできない欠点がある。
電力システムは、電力を供給する複数の電力供給設備と、複数の電力供給設備それぞれと接続された複数の電力変換装置と、第一電力系統および第二電力系統と複数の電力変換装置との間に設けられ、複数の電力変換装置それぞれを第一電力系統と第二電力系統とのいずれか一方に対して個別に且つ選択的に接続するように構築された開閉装置と、開閉装置の開閉を制御することで第一電力系統および第二電力系統に対する複数の電力変換装置それぞれの接続状態を可変に設定するとともに、第一電力系統に接続された電力変換装置と第二電力系統に接続された電力変換装置とを個別に制御する上位制御部と、を含む。