(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のシステムは、フィードバック制御であるため、処理能力を超える流入負荷がある場合、処理不能となる可能性がある。
また、特許文献2の方法では、水温は年間を通じて変動するため、最低1年間のデータが必要になってしまう。
本開示は、好気性排水処理において、より簡便に最適な目標好気処理時間を設定できる排水処理システム及び排水処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1] 被処理水を好気処理する曝気装置を有する曝気槽、及び該曝気装置を制御する制御装置を少なくとも備える好気性排水処理システムであって、
該制御装置は、該被処理水の水質特性値に基づき、予め準備した該被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式により、該水質特性値が予め設定した適正値以下となる目標好気処理時間を演算する演算部を有し、
該演算部により演算されて得られた該目標好気処理時間以上の時間、該曝気装置により好気処理を行うことを特徴とする好気性排水処理システム。
[2] 前記水質特性値が、有機物濃度である[1]に記載の好気性排水処理システム。[3] 前記好気性排水処理システムが、前記被処理水の前記水質特性値を検出し前記制御装置に出力する検出装置を備え、
前記演算部は、該検出装置で検出された前記水質特性値に基づき、前記目標好気処理時間を演算する[1]又は[2]に記載の好気性排水処理システム。
[4] 前記好気性排水処理システムが、原水槽及び該原水槽から前記曝気槽へ被処理水を送水する送水手段を備え、
該原水槽が、前記検出装置を有する[3]に記載の好気性排水処理システム。
[5] 前記検出装置が、紫外線吸光度計又は有機体炭素(TOC)自動計測器である[3]又は[4]に記載の好気性排水処理システム。
[6] 前記紫外線吸光度計又は前記有機体炭素(TOC)自動計測器が、懸濁質除去装置を備える[5]に記載の好気性排水処理システム。
[7] 前記水質特性値が、BOD、COD及びTOCからなる群から選択される少なくとも一である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の好気性排水処理システム。
[8] 前記関係式が、下記式(1)であり、
前記制御装置において、前記目標好気処理時間を、下記式(1)で演算した好気処理後の処理水の水質特性値が予め設定した適正値以下となる時間T(分)の最小値として設定する[1]〜[7]のいずれか一項に記載の好気性排水処理システム。
(好気処理後の処理水の水質特性値)=
{(被処理水の水質特性値)−α}e
−kT+αe
−mT (1)
(式(1)中、該水質特性値がCOD(mg/L)であり、αは予め通常時の水質特性値を有する被処理水を6時間以上好気処理して得られたCODの0.5倍〜2倍の値であり、k(分
−1)が1以下であり、m(分
−1)が0.0100以下である。)
[9] 前記関係式が、下記式(2)であり、
前記制御装置において、前記目標好気処理時間を、下記式(2)で演算した好気処理後の処理水の水質特性値が予め設定した適正値以下となる時間T(分)の最小値として設定する[1]〜[7]のいずれか一項に記載の好気性排水処理システム。
(好気処理後の処理水の水質特性値)=
{(被処理水の水質特性値)−α}e
−kT+αe
−mT (2)
(式(2)中、該水質特性値がBOD(mg/L)であり、αが該被処理水の該BODの1.00倍未満の値であり、k(分
−1)が1以下であり、m(分
−1)が0.010以下である。)
[10] 前記曝気槽が、連続式活性汚泥処理槽又は生物膜処理槽であり、
前記目標好気処理時間を、曝気時間及び前記被処理水の流入量の制御により達成する[1]〜[9]のいずれか一項に記載の好気性排水処理システム。
[11] 前記曝気槽が、回分式活性汚泥処理槽であり、
前記目標好気処理時間を、曝気時間の制御により達成する[1]〜[9]のいずれか一項に記載の好気性排水処理システム。
[12] 被処理水を好気処理する曝気装置を有する曝気槽を少なくとも備える好気性排水処理システムによる排水処理方法であって、
該被処理水の水質特性値に基づき、予め準備した該被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式により、該水質特性値が予め設定した適正値以下となる目標好気処理時間を演算する演算工程、及び
該目標好気処理時間以上の時間、該曝気装置により好気処理を行う処理工程、を含む排水処理方法。
[13] 前記演算工程において用いる前記水質特性値が、有機物濃度である[12]に記載の排水処理方法。
[14] 前記好気性排水処理システムが、前記被処理水の前記水質特性値を検出する検
出装置を備え、
前記演算工程において、該検出装置で検出された前記水質特性値に基づき、前記目標好気処理時間を演算する[12]又は[13]に記載の排水処理方法。
[15] 前記好気性排水処理システムが、原水槽及び該原水槽から前記曝気槽へ被処理水を送水する送水手段を備え、
該原水槽が、前記検出装置を有する[14]に記載の排水処理方法。
[16] 前記演算工程において用いる水質特性値が、BOD、COD及びTOCからなる群から選択される少なくとも一である[12]〜[15]のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、好気性排水処理において、より簡便に最適な目標好気処理時間を設定できる好気性排水処理システム及び排水処理方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX〜YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0009】
以下、実施形態の好気性排水処理システム及び排水処理方法を、図面を参照して説明する。
図1は、第一の実施形態における好気性排水処理システムの構成図である。
図1に示す好気性排水処理システム100は、曝気装置2を有する曝気槽5、及び被処理水を曝気槽5に送水する送水手段(不図示)を備える。曝気装置2は、制御装置4により制御されている。制御装置4は、被処理水の水質特性値に基づき、予め準備した被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式により、被処理水の水質特性値が予め設定した適正値以下となる目標好気処理時間を演算する演算部を有する。
【0010】
図中の矢印は、水(被処理水、処理水)の流れを示している。被処理水が、送水手段により曝気槽5に送水される。一方で、制御装置4に曝気槽5中の被処理水の水質特性値が入力される。そうすると、制御装置4における演算部は、該水質特性値から、予め準備した被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式により、被処理水の水質特性値が予め設定した適正値以下となる目標好気処理時間を演算する。
そして、制御装置4は曝気装置2を制御し、演算部により演算されて得られた目標好気処理時間以上の時間、曝気装置2により被処理水を好気処理する。好気処理後の処理水は、曝気槽5から排水される。
【0011】
制御装置4への水質特性値の入力手段は特に制限されない。被処理水が曝気槽5に送水されるまでに測定した水質特性値を、制御装置4へ入力すればよい。例えば、被処理水を曝気槽5に送水する送水手段中、又は曝気槽5内に、被処理水の水質特性値を検出し制御装置4に出力する検出装置を備えていてもよい。水質特性値の測定及び測定値の制御装置4への入力は、自動で行ってもよいし、手動で行ってもよい。
上記排水処理システムを用いた排水処理方法においては、被処理水の水質特性値に基づき、予め準備した被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式により、目標好気処理
時間を演算する演算工程、及び該目標好気処理時間以上の時間、曝気装置2により好気処理を行う処理工程を含む。
【0012】
図2は、第二の実施形態における好気性排水処理システムの構成図である。この排水処理システムでは、被処理水の水質特性値を検出し制御装置4に出力する検出装置3を備える。
具体的には、
図2に示す好気性排水処理システム100は、原水槽1、曝気槽5、及び原水槽1から曝気槽5へ被処理水を送水する送水手段(不図示)を備える。原水槽1は、被処理水の水質特性値を検出する検出装置3を有する。なお、
図2では、検出装置3は、原水槽1に備えられているが、原水槽1から曝気槽5への送水ライン(送水手段)中にあってもよいし、曝気槽5中にあってもよい。
原水槽は、必要に応じて原水槽1内の被処理水を循環させる循環装置を有していてもよい。さらに、排水処理システムは、検出装置3により検出された水質特性値を入力として、予め準備した被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式により、目標好気処理時間を演算する演算部を有する制御装置4を備える。制御装置4は、曝気槽5に設置した曝気装置2を制御する。
【0013】
原水槽1に被処理水が供給され、検出装置3が、原水槽1中の被処理水の水質特性値を検出する。検出された水質特性値が制御装置4の演算部に入力されると、演算部は、検出装置で検出された水質特性値に基づき、予め準備した被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式により、被処理水の水質特性値が予め設定した適正値以下となる目標好気処理時間を演算する。
排水処理方法の場合は、演算工程において、検出装置3で検出された水質特性値に基づき、上記関係式により目標好気処理時間を演算する。
【0014】
一方、原水槽1内の被処理水は、曝気槽5に送水される。曝気槽5において、被処理水は、制御装置4の演算部により算出された目標好気処理時間以上の時間、曝気装置2により好気処理される。好気処理後の処理水は、曝気槽5から排水手段(不図示)により排水される。
このように、検出装置を有することで排水処理をフィードフォワードで制御しやすくなる。
被処理水が汚濁しているような場合、原水槽1は、検出装置3の前段に前処理装置6を有していてもよい。前処理装置6としては、懸濁物除去を目的としたバースクリーンや濃度調整を目的とした希釈装置を単独で又はこれらを組み合わせて使用しうる。バースクリーンは汚染されやすいため、洗浄機能を有することが好ましい。
【0015】
検出装置3としては、例えば、紫外線吸光度計や有機体炭素(TOC)自動計測器などの全有機体炭素計(TOC計)が挙げられる。検出装置は、紫外線吸光度計又はTOC自動計測器であることが好ましく、紫外線吸光度計であることがより好ましい。このような検出装置であれば、所望の水質特性値を連続的にかつ自動的に測定することができる。
紫外線吸光度計又は有機体炭素(TOC)自動計測器が懸濁質除去装置を備えることが好ましい。懸濁質除去装置により安定した水質特性値の測定が可能となる。懸濁質除去装置は、懸濁質を除去できるものであれば特に制限されない。例えば、バースクリーン、ろ過装置などが挙げられる。
【0016】
好気処理時間とは、曝気槽5中の被処理水が好気状態となっている時間である。好気状態とは、被処理水に溶存酸素が存在する条件であり、曝気槽5中の被処理水の溶存酸素濃度(DO濃度)又は酸化還元電位(ORP)が指標となる。
溶存酸素量については、0.1mg/L以上であることが必要であり、好ましくは1.0mg/L以上、より好ましくは2.0mg/L以上である。酸化還元電位については、
プラスの値である(0mVより大きい)ことが必要であり、好ましくは50mV以上、より好ましくは100mV以上である。
被処理水が好気状態となっている合計の時間が目標好気処理時間以上であればよい。すなわち、好気処理を間欠で行ってもよい。好気処理の途中で、曝気装置2を停止させるなどして、被処理水が嫌気状態となることがあってもよい。
【0017】
目標好気処理時間は、被処理水の流入量、処理水の排出量、曝気槽容積、曝気槽中の被処理水の滞留時間、曝気時間及び間欠曝気割合(1時間のうち曝気槽を好気状態としている時間の割合)などを考慮して達成すればよい。
例えば、被処理水の流入量及び曝気槽容積などから、曝気槽中の被処理水の平均滞留時間を算出し、平均滞留時間のうちの好気処理時間が、目標好気処理時間以上になるように好気処理すればよい。回分式の曝気槽であれば曝気時間により目標好気処理時間を達成すればよいし、連続式の曝気槽であれば平均滞留時間のうちの好気処理時間により目標好気処理時間を達成すればよい。
【0018】
好気状態は、曝気装置2で制御する。曝気装置は、特に制限されず、ブロワーを用いるものや表面撹拌式のものなど公知のものを採用すればよい。
例えば、電源周波数制御で風量調整が可能なブロワーを用いることができる。また、例えば、間欠曝気割合を曝気槽内の溶存酸素濃度を1.0mg/L以上とできる主ブロワーと曝気槽内の溶存酸素濃度は1.0mg/L未満となるが、曝気槽底部への汚泥沈降及びブロワー目詰まりを防止できる補助ブロワーとの切り替え運転で制御することもできる。
【0019】
水質特性値は、例えば、有機物濃度などの有機物量が挙げられる。水質特性値は、好ましくはBOD、COD、TOC、及びTOD(全酸素要求量)からなる群から選択される少なくとも一であり、より好ましくはBOD、COD及びTOCからなる群から選択される少なくとも一であり、さらに好ましくはBOD及びCODからなる群から選択される少なくとも一である。
BOD(生物化学的酸素消費量)とは、水中の好気性微生物によって消費される溶存酸素の量をいう。
COD(化学的酸素要求量)とは、水中の被酸化性物質によって消費された酸化剤の酸素換算量をいう。
TOC(有機体炭素)とは、水中に存在する有機物中の炭素を言い、燃焼酸化−赤外線式TOC分析法又は燃焼酸化−赤外線式TOC自動計測法により求める。
本発明者らの検討によると、BOD、COD及びTOCなどの有機物濃度の低下は、好気処理時間との関係性が強く、BOD、COD及びTOCなどの有機物濃度に着目することで、少ないデータから、水温の影響をあまり受けず年間を通じて適用可能な目標好気処理時間の算出が行いやすい。
【0020】
紫外線吸光度計などの検出装置による検出値は、処理水質項目に応じて、検量線からBODやCODに換算して制御装置4で演算することも可能である。水質特性値は、紫外線吸光度からの換算値であることが好ましい。紫外線吸光度計は連続測定可能なものが好ましい。
紫外線吸光度計による検出値は、以下の手順でBOD又はCODに換算すればよい。
【0021】
紫外線吸光度計(UV計)としては、例えば、堀場アドバンスドテクノ製有機性汚濁物質測定装置CW−150を用いることができる。
BODは、JIS K0102 21.「生物化学的酸素消費量」に準拠した分析値と紫外線吸光度計の測定値から定めた検量線を用いて、紫外線吸光度から換算する。
CODは、JIS K0102 17.「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量」に準拠した分析値と紫外線吸光度計の測定値から定めた検量線を用いて、
紫外線吸光度から換算する。
また、紫外線吸光度の代わりにJIS K0102 22.「有機体炭素」に準拠したTOC自動計測器により測定したTOCを用いて、TOCとBOD又はCODとの相関関係よりTOCからBOD又はCODに換算することも可能である。
【0022】
制御装置4の演算部は、被処理水の水質特性値に基づき、予め準備した被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式から目標好気処理時間を演算する。上記関係式を取得する手段は特に制限されない。
例えば、あらかじめ、好気処理時間と、有機物濃度などの水質特性値と、の関係(時系列データ)を取得し、これらから得られた関係式を採用することができる。まず、好気処理時間に応じた有機物濃度などの水質特性値の時系列データを複数取得する。これらのデータをプロットしたデータ群から最小二乗法により、好気処理時間と水質特性値との関係式を求める。
【0023】
時系列データの取得は一度でもよいし、季節ごとに複数回行ってもよい。
関係式を求める際は、排水処理に供する被処理水のうち、通常時の水質特性値を有する被処理水から得られた水質特性値を使用すればよい。すなわち、普段、その排水処理に供している被処理水を使用すればよい。その排水処理に供している被処理水のうち、平均的な水質特性値を有する被処理水を使用することが好ましい。
そして、得られた関係式に基づき、制御装置4により、所望の水質特性値となる目標好気処理時間を算出すればよい。
【0024】
BOD及び/又はCODを指標として、下記式(A)により目標好気処理時間を演算することで、年間を通じて好適な目標好気処理時間を演算できるため好ましい。
すなわち、上記関係式が、下記式(A)であることが好ましい。制御装置において、目標好気処理時間を、下記式(A)で演算した好気処理後の処理水の水質特性値が予め設定した適正値以下となる時間T(分)の最小値として設定することが好ましい。
(好気処理後の処理水の水質特性値)=
{(被処理水の水質特性値)−α}e
−kT+αe
−mT (A)
好気処理後の処理水の水質特性値を、任意の管理値以下(例えば、COD60mg/L以下)とするために最低限必要な目標好気処理時間Tは、被処理水の水質特性値(例えばCOD)から、式(A)により好気処理後の処理水の水質特性値が管理値(60mg/L)となる時間T(分)を求めることで、制御装置4により自動設定できる。
係数であるα、k及びmは、排水処理に供する被処理水の水質特性値に応じて、好気処理時間と水質特性値との時系列データから、最小二乗法により決定することができる。
【0025】
水質特性値がCODである場合は、紫外線吸光度から検量線で換算した被処理水のCOD(mg/L)を下記式(1)に代入し、式(1)の好気処理後の処理水のCOD(mg/L)が目標値以下となる最低の時間T(分)を目標好気処理時間とすることが好ましい。
(好気処理後の処理水のCOD)=
{(被処理水のCOD)−α}e
−kT+αe
−mT ・・・(1)
【0026】
式(1)中、Tは時間(分)である。αは、予め通常時の水質特性値を有する被処理水を、6時間以上好気処理(より好ましくは6時間好気処理)して得られたCOD(mg/L)の0.5倍〜2倍の値とすることが好ましい。より好ましくは、0.7倍〜1.5倍、0.8倍〜1.3倍、0.9倍〜1.2倍である。
また、具体的には、好ましくは、αは、40〜80、50〜70、55〜65、58〜62である。特に好ましくは、αは60である。
k(分
−1)は、好ましくは1以下である。より好ましくは、0.5以下、0.3以下
、0.2以下、0.15以下である。一方、k(分
−1)は、好ましくは0.01以上、0.05以上、0.08以上である。k(分
−1)は、特に好ましくは0.12である。
m(分
−1)は、好ましくは0.0100以下である。m(分
−1)は、より好ましくは0.0015以下である。一方、m(分
−1)は、好ましくは0.00001以上、0.0001以上、0.0005以上、0.0008以上である。m(分
−1)は、特に好ましくは0.001である。
上記、数値範囲の上限及び下限は、任意に組み合わせることができる。
【0027】
水質特性値がBODである場合は、紫外線吸光度から検量線で換算した被処理水のBOD(mg/L)を下記式(2)に代入し、式(2)の好気処理後の処理水のBOD(mg/L)が目標値以下となる最低の時間T(分)を目標好気処理時間とすることが好ましい。
(好気処理後の処理水のBOD)=
{(被処理水のBOD)−α}e
−kT+αe
−mT ・・・(2)
【0028】
式(2)中、Tは時間(分)である。αは被処理水のBODの1.00倍未満の実数値である。すなわち、被処理水のBOD濃度(mg/L)をbとしたとき、αは、1.00b未満である。αは、好ましくは0.49b以下、0.30b以下、0.20b以下、0.10b以下である。一方、αは、好ましくは0.01b以上、0.04b以上、0.05b以上、0.06b以上である。αは、特に好ましくは0.08bである。
k(分
−1)は、好ましくは1以下である。より好ましくは、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.25以下である。一方、k(分
−1)は、好ましくは0.01以上、0.05以上、0.08以上である。k(分
−1)は、特に好ましくは0.1である。
m(分
−1)は、好ましくは0.010以下である。m(分
−1)は、より好ましくは0.007以下、0.005以下である。一方、m(分
−1)は、好ましくは0.0001以上、0.001以上、0.003以上である。m(分
−1)は、特に好ましくは0.004である。
上記、数値範囲の上限及び下限は、任意に組み合わせることができる。
【0029】
制御装置4の演算部が演算した目標好気処理時間に基づき、曝気装置2の運休転時間を制御すればよい。システムが曝気槽5及び曝気装置2を複数備える場合、好気処理時間は曝気装置2の運転台数の調整により制御してもよい。
図3に示す第三の実施形態は、曝気槽5が、隔壁等で直列に複数段に分割された系列が1系列又は複数系列(
図3では2系列)から構成される連続処理方式の態様である。分割された各曝気槽5に曝気装置2が個別に設置され、個別の曝気装置2の運休転を、制御装置4が演算した目標好気処理時間に応じ調整する。
すなわち、直列に設置された曝気槽5における、一室あたりの平均滞留時間に応じて好気処理時間を調整すればよい。演算された目標好気処理時間が短い場合は、直列に設置された曝気槽における一部の曝気装置を停止させておくこともできる。
【0030】
曝気槽は、特に制限されず、公知の好気的生物処理に用いられる曝気槽を適用しうる。例えば、活性汚泥処理槽(標準活性汚泥処理槽、オキシデーションディッチ槽、膜分離活性汚泥処理槽、嫌気好気活性汚泥処理槽及び嫌気無酸素好気活性汚泥処理槽などの連続式活性汚泥処理槽並びに回分式活性汚泥処理槽)、生物膜処理槽(接触酸化槽、回転円盤生物膜処理槽、固定床担体生物膜処理槽、流動床担体生物膜処理槽、生物膜ろ過処理槽など)が挙げられる。
曝気槽が、回分式活性汚泥処理槽の場合、回分式で処理する際の曝気時間を、制御装置4の演算部が演算した目標好気処理時間以上となるよう調整すればよい。
【0031】
曝気槽は、活性汚泥処理槽又は生物膜処理槽であることが好ましい。
連続式活性汚泥処理槽又は生物膜処理槽の場合、制御装置の演算部により演算された目標好気処理時間を、曝気時間及び被処理水の流入量の制御により達成することが好ましい。
また、曝気槽が回分式の活性汚泥処理槽の場合、制御装置により演算された目標好気処理時間を、曝気時間の制御により達成することが好ましい。
なお、生物膜処理槽において逆洗浄工程を行う場合、逆洗浄工程では目標好気処理時間を、曝気時間の制御により達成することが好ましい。この場合、被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式を取得するにあたり、好気処理時間に応じた有機物濃度などの水質特性値の時系列データを、逆洗浄工程を実施して取得すればよい。
なお、本開示の排水処理システムにより、適切な好気処理時間を設定できるため、従来と比較して好気処理時間を短縮できる。短縮された時間を有効活用して逆洗浄工程を実施することもできる。
【0032】
被処理水は、好気性処理を適用しうる排水であれば特に制限されない。被処理水は、食品工場、農水産物加工工場又は紙パルプ工場等からの排水や公共下水など、いわゆる有機性排水であることが好ましい。
被処理水のBOD(mg/L)は、好ましくは10000以下、3000以下、1000以下、500以下、300以下、200以下であればよい。一方、下限は、好ましくは50以上、100以上、150以上であればよい。
被処理水のCOD(mg/L)は、好ましくは10000以下、3000以下、1000以下、500以下、300以下、200以下であればよい。一方、下限は、好ましくは50以上、100以上、150以上であればよい。
被処理水のBOD/CODが極端に高い場合は、上記濃度となるように希釈装置などにより水で希釈すればよい。上記のような被処理水であれば、排水処理システムを好適に適用できる。
【0033】
被処理水の水温は、特に制限されないが、10℃〜42℃程度であればよい。好ましくは13℃〜38℃であり、より好ましくは15℃〜36℃である。上記温度であれば、排水処理システムを好適に適用できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0035】
以下の手順により、BOD/CODと、好気処理時間との関係式を設定した。
工場の活性汚泥装置は曝気槽が2系列あり、それぞれ直列で1系は15室、2系は7室で構成される。曝気装置を間引き運転可能なため、曝気装置を停止している槽は処理に寄与していないと仮定した積算曝気時間T(以下、時間T/単位:分)と、COD又はBODとの関係を調査した。
COD/BOD(mg/L)を管理値以下とするのに必要な時間T(目的変数)を、被処理水のCOD/BOD(説明変数)から推定することを考えた。
【0036】
曝気槽の各室の滞留時間と曝気装置の稼働状況から各室の積算曝気時間Tが定まるため、各室から時間Tの異なるサンプルを採取した。採取したサンプルから汚泥をろ過したろ液のCOD/BODを分析し、時間Tに対するCOD/BODの変化の数式化を試みた。
サンプルの採取は、2018年11月27日から2019年9月17日までの期間中に計7回実施した。
7回それぞれの調査ごとに、1系、2系それぞれの時間T(目的変数)とCOD又はBOD(説明変数)を系列に関係なくプロットし、両者に以下の関係式が成立すると仮定し、プロットしたデータ群から最小二乗法で関係式の4つの係数を決定した。
COD又はBOD = Ae
−k・T+Be
−m・T
(A,B,k,mは係数)
【0037】
7回の調査で得られた関係式を比較し、係数の関係性から、年間を通じて適用可能な以下の統一式でCOD及びBODを表現できた。具体的には、7回の調査それぞれで、データから最小二乗法で得た回帰式の定数係数と原水濃度の関係を、COD及びBODそれぞれについてまとめ、回帰式の形式より各係数を決定した。
COD=(C
0−60)e
−0.12T+60e
−0.001T
BOD=C
0{(1−0.08)e
−0.1T+0.08e
−0.004T}
(ただし、C
0は、被処理水(原水)のCOD又はBOD(mg/L)である。)
得られた各回帰式における主要項の係数と、原水のCOD/BODとの関係から、BOD及びCODの処理速度の衰える濃度が原水濃度に比例し、水温の影響はあまり受けていないと推測された。
【0038】
(実施例1)
板紙工場の曝気槽が直列に8室(曝気装置No.1〜No.8)に分割された標準活性汚泥施設において、処理水のBODが15mg/L以下となるように曝気条件を調整した。曝気槽は、各室の容積が225m
3であり、8槽合計1800m
3である。調査時の処理排水量は10,000m
3/日であったことから、1室あたりの平均滞留時間は32分である。
曝気槽流入原水のUV吸光度をBODに換算したところ300mg/Lであったことから、下記処理時間Tと処理水BODとの関係式に基づき、処理水BODが15mg/L以下となる目標好気処理時間Tを求めたところ73分であった。
(処理水BOD)=
300×{(1−0.08)e
−0.1T+0.08e
−0.004T}
上記試算された目標好気処理時間73分に基づき、曝気装置の運用を表1の通りとしたところ、処理後の処理水のBODは14mg/Lとなった。
なお、第二槽(曝気装置No.2)出口(滞留時間64分)での処理水のBODは、16mg/Lで目標とした15mg/L以下に未達であった。
また、すべての曝気装置の運用を10分間運転、25分間停止の間欠運転としたところ、いずれの室においても曝気装置稼働後90秒で好気状態となり、曝気槽停止後120秒間好気状態を維持し、処理水のBODは15mg/Lとなった。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例2)
板紙工場の曝気槽が直列に8室(曝気装置No.1〜No.8)に分割された標準活性汚泥施設において、処理水のCODが60mg/L以下となるように曝気条件を調整した。曝気槽は、各室の容積が225m
3であり、8槽合計1800m
3である。調査時の処理排水量は10,000m
3/日であったことから、1室あたりの平均滞留時間は32分である。
曝気槽流入原水のUV吸光度をCODに換算したところ180mg/Lであったことから、下記処理時間Tと処理水CODとの関係式に基づき、処理水CODが60mg/L以下となる目標好気処理時間Tを求めたところ41分であった。
(処理水COD)=
{180−60}e
−0.12T+60e
−0.001T
上記試算された滞留時間41分に基づき、曝気装置の運用を表2の通りとしたところ、処理水のCODは57mg/Lとなった。
なお、第一槽出口(滞留時間32分)での処理水のCODは、63mg/Lで目標とした60mg/L以下に未達であった。
また、すべての曝気装置の運用を60分間に15分間運転の間欠運転としたところ、いずれの室においても曝気装置稼働後90秒で好気状態となり、曝気槽停止後120秒間好気状態を維持し、処理水のCODは57mg/Lとなった。
【0041】
【表2】
【解決手段】被処理水を好気処理する曝気装置を有する曝気槽、及び該曝気装置を制御する制御装置を少なくとも備える好気性排水処理システムであって、該制御装置は、該被処理水の水質特性値に基づき、予め準備した該被処理水の水質特性値と好気処理時間との関係式により、該水質特性値が予め設定した適正値以下となる目標好気処理時間を演算する演算部を有し、該演算部により演算されて得られた該目標好気処理時間以上の時間、該曝気装置により好気処理を行うことを特徴とする好気性排水処理システム。