各前記ノズルは、当該ノズルの中心軸に沿った当該ノズルの出口の前記入口面への投影面が前記入口面内に納まるように配列している請求項1に記載のロケットエンジン用ターボポンプ。
前記2列のうちの一方の列のノズルの出口と前記2列のうちの他方の列のノズルの出口は、互いに異なる断面積を有する請求項1又は2に記載のロケットエンジン用ターボポンプ。
前記2列のうちの一方の列のノズルを第1ノズルとし、前記2列のうちの他方の列のノズルを第2ノズルとし、前記第1ノズルの出口をその中心軸に沿って前記入口面に投影した楕円を第1の楕円とし、前記第2ノズルの出口をその中心軸に沿って前記入口面に投影した楕円を第2の楕円とした場合、前記第1の楕円の長軸と、前記第2の楕円の長軸は、前記入口面内において互いに反対、あるいは同じ向きに、角度を変えて傾斜している請求項1から3のうちの何れか一項に記載のロケットエンジン用ターボポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出口速度が超音速に達するタービンノズルとしてラバールノズルが採用されることが多い。ラバールノズルは、軸対称な断面形状をもつスロートを有する。このため、ラバールノズルは設計や製造が容易であり、作動流体の流入角度に合わせて動翼の翼列に対して斜めに配置する場合が多い。この場合、ノズル噴流が動翼に当たる領域の形状が、入口面において楕円形となる。従って、放射状に配置された翼(翼型)によって構成されるノズル(翼型ノズル)に比べて、翼列の入口面において作動流体の噴流が当らない部分の割合が大きくなる傾向がある。従って、翼型ノズルに比べて、損失が増加する懸念がある。また、ノズルの1個あたりのスロート面積が大きいことにより、ノズルが長くなる傾向がある。
【0006】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、十分なタービン効率が得られると共に小型化が可能なロケットエンジン用ターボポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様はロケットエンジン用ターボポンプであって、回転可能に支持された主軸と、
前記主軸の一端側に取り付けられたインペラを含むポンプ部と、前記主軸の他端側に取り付けられたディスク、前記ディスクの外周に設けられた複数の動翼、及び、前記動翼が成す翼列の入口面に向けて傾斜して設けられ、軸対称な断面を有する複数のノズルを含むタービン部と、を備え、前記複数のノズルは、前記主軸と直交する平面において前記主軸の周方向に沿った、第1の列および前記第1の列よりも径方向外側の第2の列に配置されることを要旨とする。
【0008】
各前記ノズルは、当該ノズルの中心軸に沿った当該ノズルの出口の前記入口面への投影面が前記入口面内に納まるように配列していてもよい。
【0009】
前記2列のうちの一方の列のノズルの出口と前記2列のうちの他方の列のノズルの出口は、前記主軸の周りで互いに異なる位相に位置していてもよい。
【0010】
前記2列のうちの一方の列のノズルの出口と前記2列のうちの他方の列のノズルの出口は、互いに異なる断面積を有していてもよい。
【0011】
前記2列のうちの一方の列のノズルを第1ノズルとし、前記2列のうちの他方の列のノズルを第2ノズルとし、前記第1ノズルの出口をその中心軸に沿って前記入口面に投影した楕円を第1の楕円とし、前記第2ノズルの出口をその中心軸に沿って前記入口面に投影した楕円を第2の楕円とした定義した場合、前記第1の楕円の長軸と、前記第2の楕円の長軸は、前記入口面内において互いに反対の向きに傾斜していてもよい。
【0012】
前記複数のノズルはそれぞれラバールノズルであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、十分なタービン効率が得られる共に小型化が可能なロケットエンジン用ターボポンプを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
本実施形態に係るターボポンプはロケットエンジンに搭載され、液体水素や液体酸素等の流体を圧送するものである。説明の便宜上、ターボポンプ1の吸入口5aが位置する側を前方、排出口5bが位置する側を後方と規定する。
【0017】
図1に示すように、ターボポンプ1は、ポンプ部2と、タービン部3と、主軸(シャフト、回転軸)4とを備えている。これらは何れもケーシング5に収容されている。
【0018】
ポンプ部2は、インデューサ6、静翼7と、インペラ(翼車)8とを備えている。ポンプ部2のインデューサ6及びインペラ8は、主軸4の一端側(前端側)に取り付けられる。
【0019】
インデューサ6は、ケーシング5に形成された吸入口5aの下流側に位置する。インデューサ6は、主軸4に連結するハブと、当該ハブから径方向に突出する翼とを有する。インデューサ6は、自己の回転によって、流体を吸入口5aから吸込み、加圧し、排出する。インデューサ6はこのような動作によって、インペラ8による流体の吸込みを補助する。
【0020】
インデューサ6の下流側には静翼7が位置する。静翼7の先端側は、ケーシング5に固定されている。静翼7は、インデューサ6から流出した流体の流れを整え、インペラ8に導く。なお、上述の通り、静翼7の基端側には軸受9aが設けられている。
【0021】
静翼7の下流側にはインペラ8が位置する。インペラ8は複数の翼を備えており、これらの翼が回転することで、インペラ8に流入する流体を加圧しつつ径方向外側に送出する。即ち、インペラ8は自己の回転によって流体を圧送する。インペラ8から流出した流体は、インペラ8の径方向外側に形成されたスクロール5cを経て、ロケットエンジンの燃焼室(図示せず)等に供給される。
【0022】
主軸4は、静翼7の先端側に設けられた軸受9a、及び、インペラ8とタービン部3のディスク10(後述)との間に設けられた軸受9bによって、ケーシング5に回転可能に支持されている。従って、ポンプ部2のインデューサ6及びインペラ8と、タービン部3のディスク10(動翼11)は、主軸4を回転中心として、一体に回転する。
【0023】
タービン部3は、気化した推進薬の運動エネルギーを利用して、インペラ8の回転力を発生するものである。タービン部3は、ディスク(ロータ、タービンディスク)10と、複数の動翼(タービン翼)11と、複数のタービンノズル(以下、ノズル)12とを備えている。上述の通り、本実施形態に係るターボポンプ1は、ロケットエンジンへの搭載を想定している。従って、ターボポンプ1のサイズは著しく制限されている。このような事情から、本実施形態に係るタービン部3は少ない段数で高い出力が得られる衝動タービンとして動作するように設計されている。
【0024】
ディスク10は、ケーシング5に形成されたタービン室5dに収容されている。ディスク10は円板状の部材である。ディスク10は、主軸4の他端側(後端側)に取り付けられている。つまり、ディスク10は、主軸4を介して、ポンプ部2のインデューサ6及びインペラ8に連結している。
【0025】
動翼11は、ディスク10の外周(外周面)10aに複数設けられている。各動翼11のスパンは主軸4の径方向4rに延び(
図3参照)、各動翼11のコードは主軸4の軸方向に延びている。各動翼11は、主軸4の周方向に等間隔に配列し、一段(ステージ)の翼列を構成する。なお、タービンの段数は二段以上でもよい。
【0026】
動翼11は、ノズル12の出口13に面する前縁11aと、排出口5bに面する後縁11bと、ディスク10の回転方向Rに向けられ、前縁11aと後縁11bを接続する背側11cと、回転方向Rと反対方向に向けられ、前縁11aと後縁11bを接続する腹側11dとを有する。
【0027】
各動翼11の腹側11dにはノズル12から噴出した気体が衝突する。この気体は、ロケットエンジンの燃焼室(図示せず)との熱交換によって気化した推進薬である。以下、説明の便宜上、気化した推進薬を推進ガスと称する。
【0028】
各動翼11の前縁11aは、推進ガスの入口面15を構成する。入口面15はディスク10の中心Pを中心とする環状に分布し、動翼11の翼長と同程度の幅15wを有する。入口面15は、例えば、主軸4と直交している。
【0029】
ノズル12から噴出した推進ガスは、この入口面15を通過した後、腹側11dに衝突する。推進ガスは、動翼11に衝突することで運動エネルギーを失いつつ、動翼11の翼形に沿って偏向し、動翼11の翼列から排出される。
図3は、この推進ガスの流れを白抜きの矢印で示している。翼列を通過した推進ガスは、ケーシング5の排出口5bから流出する。
【0030】
一方、ディスク10は、動翼11を介して、推進ガスが失った運動エネルギーを受け、主軸4と共に主軸4の周方向に回転する。この回転に伴う駆動力(所謂回転力)が、主軸4を介してインデューサ6及びインペラ8に伝達され、インデューサ6及びインペラ8が回転する。
【0031】
インデューサ6及びインペラ8が回転すると、タンク(図示せず)から液体の推進薬が吸入口5aまで導かれる。その後、推進薬は、インデューサ6の回転により加圧され、更にインペラ8の回転によって更に加圧され、スクロール5cを通じて燃焼器(図示せず)等に排出される。即ち、推進薬の圧送が遂行される。
【0032】
本実施形態に係るノズル12について説明する。本実施形態に係るノズル12は、主軸4を中心とするノズルリング16(
図1及び
図4(b)参照)に形成されている。ノズルリング16は主軸4に沿って所定の厚みを有する環状部材である。ノズルリング16は、タービン室5dと導入流路5eを仕切るように、ケーシング5内に固定されている。ノズルリング16は、導入流路5eに面する前面16a(
図1参照)と、翼列の入口面15に面する背側11cとを有する。ノズル12の入口14は、ノズルリング16の前面16aに開口し、ノズル12の出口13は背側11cに開口する。ノズルリング16の背側11cは主軸4と直交しており、後述する「主軸4と直交する平面」の一例である。
【0033】
ノズル12は、導入流路5eから導入された推進ガスを加速させ、動翼11に向けて噴出する筒状の流路であり、軸対称な断面を有する。換言すれば、ノズル12は、中心軸12cに沿って延伸する筒状に形成され、その内周面は中心軸12cに直交する軸対称な断面を形成する。つまり、ノズル12の内周面は不連続な面(線)を持たない。ノズル12が軸対称な断面を有するので、その加工は容易である。例えば、ノズル12の形成に切削等の機械加工を採用することも可能である。また、下記の通り、本実施形態のノズル12は、形状が複雑で設計や製造が難しい翼型ノズルの代替となり得る性能を有しており、コストダウンと信頼性の向上を図ることが可能である。
【0034】
ノズル12は所謂ラバールノズルであり、推進ガスを加速させるために流路を絞った部位、即ちスロート12tを有する。推進ガスは、入口14からスロート12tに向うに連れて圧縮されつつ加速し、スロート12tにおいて音速に達する。その後、推進ガスは、出口13に向けて膨張しつつ更に加速する。ラバールノズルは簡便な構造で超音速のガスが得られるため、衝動タービンのノズルに適している。但し、ノズル12は、出口13において断面積が最小となる先細りの筒状に形成されてもよい。
【0035】
図2及び
図3に示すように、ノズル12は、動翼11が成す翼列の入口面15に向けて傾斜して設けられる。従って、ノズル12の入口14及び出口13は、中心軸12cに対して傾斜している。例えば、ノズル12の出口13は楕円であり、その長軸22は中心軸12cと同一平面上に位置する。ノズル12の出口13は、所定の距離Gだけ入口面15から離れている。従って、入口面15における推進ガスの噴射領域17はノズル12の中心軸の延長線上に位置し、ノズル12の出口13と略同一の形状をもつ。また、ノズル12の出口13と推進ガスの噴射領域17は、動翼11の回転方向Rに沿って互いにずれることになる。
【0036】
ノズル12の入口14の位置及び形状は、出口13における推進ガスの流量と流速が所望の条件を満たす限り任意である。例えば
図2に示すように、ノズル12の入口14側は、断面積が最も小さいスロート12tから入口14に向かうに従って、中心軸12cに対して屈曲する部分を有してもよい。
【0037】
図3及び
図4(b)に示すように、複数のノズル12は、主軸4と直交する平面において主軸4の周方向4cに沿った少なくとも2列に配置される。以下、そのうちの2列(例えば隣接する2列)に着目して説明する。2列のうちの一方の列を第1の列、他方の列を第2の列と称すると、第2の列は第1の列よりも主軸4の径方向外側に位置する。
【0038】
ノズルの全体的な寸法は、流通させる推進ガスの流量に応じて増減する。従って、ノズル12を複数の列に配置することで、一列に配置するノズルと同程度の流量及び流速を確保しつつ、一列に配置するノズルよりもノズル12全体の寸法を小さくすることができる。つまり、必要とされるタービン効率が得られると共に、ノズルリング16の厚さの低減、並びに、ターボポンプ1全体の小型化及び軽量化が可能となる。また、一列に配置するノズルと比べて、動翼11に掛かる応力をスパン方向に分散させることができる。換言すれば、応力が連続的となる。従って、動翼11の励振による破壊を抑制する或いは回避することができる。
【0039】
以下、説明の便宜上、複数のノズル12のうち、第1の列を成すノズルを第1ノズル12A、第2の列を成すノズルを第2ノズル12Bと称する。また、第1ノズル12Aの出口、入口及び中心軸を、それぞれ13A、14A、12Acで表し、第2ノズル12Bの出口、入口及び中心軸を、それぞれ13B、14B、12Bcで表すものとする。更に、入口面15において出口13Aに対応する噴射領域17を噴射領域17A、同様に、出口13Bに対応する噴射領域17Bで表すものとする。
【0040】
図4(b)に示すように、第1ノズル12Aは、例えば主軸4に直交する平面において、主軸4を中心とする第1の円20に沿って並ぶ。従って、第1ノズル12Aの出口13Aの中心は、第1の円20上に位置する。同様に、第2ノズル12Bは、第1の円20と同心であり、且つ、第1の円20よりも大きい半径を有する第2の円21に沿って並ぶ。従って、第2ノズル12Bの出口13Bの中心は、第2の円21上に位置する。
【0041】
図2に示すように、翼列の入口面15におけるノズル12の噴射領域17は、当該ノズル12の中心軸12cに沿った当該ノズル12の出口13の入口面15への投影(投影面)として表すことができる。そして、
図4(a)に示すように、各ノズル12の噴射領域17は、入口面15内に納まるように配列している。一方、
図4(b)に示す出口13の配列は、
図4(a)に示した噴射領域17の配列を満たすように形成されている。
【0042】
図4(b)に示すように、2列のうちの一方の列のノズル12の出口13と2列のうちの他方の列のノズル12の出口13は、主軸4の周りで互いに異なる位相に位置していてもよい。換言すれば、第1ノズル12Aの出口13Aと、第2ノズル12Bの出口13Bは、主軸4の周方向に交互に位置していてもよい。この場合、一列に配置するノズルと比べて、入口面15における噴射領域17の占有面積を増加させることができる。また、翼(翼型)で構成されるノズルと同程度の占有面積が得られる一方で、入口面15における流体的損失を減らすことが出来る。
【0043】
なお、第1ノズル12Aの出口13Aと第2ノズル12Bの出口13Bの間の位相ずれは、例えば、入口面15におけるそれぞれの噴射領域17の位相ずれが、主軸4の中心に対して噴射領域17が成す円周角の1/4から3/4までの角度θの範囲内に納まるように設定される。
【0044】
2列のうちの一方の列のノズル12の出口13と2列のうちの他方の列のノズル12の出口13は、互いに異なる断面積を有してもよい。換言すれば、第1ノズル12Aの出口13Aと、第2ノズル12Bの出口13Bは、互いに異なる断面積を有してもよい。例えば、第2ノズル12Bの出口13Bは、第1ノズル12Aの出口13Aよりも大きな断面積を有してもよく、その逆もまた然りである。
図4(a)から理解されるように、第2の円21の周長は、第1の円20の周長よりも長い。そこで、第1ノズル12Aと第2ノズル12Bの各サイズや各数を変えることによって、同一のサイズのノズルを2列に配置した場合よりも、入口面15において噴射領域17以外の領域を削減することができる。つまり、入口面15における噴射領域17の占有面積を更に増加させることができる。
【0045】
上述の通り、入口面15における各ノズル12の噴射領域17は楕円である。
図5に示すように、第1ノズル12Aの噴射領域(第1の楕円)17Aは長軸22Aを有する。同様に、第2ノズル12Bの噴射領域(第2の楕円)17Bは長軸22Bを有する。長軸22Aと長軸22Bは、入口面15内においてそれぞれの噴射領域17A、17Bの中心を通る円20、21の接線から互いに反対の向きに傾斜していてもよい。
【0046】
換言すれば、ノズルリング16の背面16bに投影された、第1ノズル12Aの中心軸12Ac及び第2ノズル12Bの中心軸12Bcは、互いに平行或いは回転方向Rに向けて互いに近づくように延伸している。
【0047】
各ノズル12の断面の大きさ、及び、入口面15と各ノズル12の出口13と距離が十分に小さい場合、噴射領域(第1の楕円)17Aの長軸22Aと、噴射領域(第2の楕円)17Bの長軸22Bは平行でもよい。しかしながら、各ノズル12のサイズが大きくなるに連れて、隣接するノズル12同士が干渉しやすくなる。そこで、噴射領域17Aの長軸22Aと噴射領域17Bの長軸22Bが、それぞれの接線23、24に対して互いに反対,あるいは同じ向きに、角度を変えて傾斜するように、各ノズルの中心軸12Ac、12Bcを傾斜させることで、噴射領域を入口面15内に納めつつ、隣接するノズル12の干渉を回避させることができる。従って、ノズル12間の干渉が回避できるので、動翼11やノズル12の形状等に関する設計の自由度を向上させることできる。