(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
本願において、「吐水中心線」との文言が定義される。吐水中心線は、吐水の水形の中心線である。例えば、ストレート水形の場合、当該水形の中心線が吐水中心線である。例えばシャワー水形の場合、当該水形(円錐形)の中心線が吐水中心線である。各図面には、吐水中心線WCが一点鎖線で示されている。この吐水中心線の方向が、前後方向である。
【0023】
なお、水形によって中心線が変化する場合、最も吐水が散らばらない水形(例えばストレート水形)に基づいて、吐水中心線が決定されうる。また吐水中心線の決定では、重力による吐水方向の変化は無視される。
【0024】
本願において、「基準姿勢」との文言が定義される。基準姿勢とは、前記吐水中心線が水平であり、且つ回転部の回転軸線Z1(後述)が水平である状態を意味する。特に説明しない限り、この基準姿勢に基づいて、上方(上側)及び下方(下側)との文言が用いられる。すなわち、特に説明しない限り、本願にいう上下方向は、前記基準姿勢における鉛直方向である。
【0025】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態である散水ノズル500の斜視図である。
図2は、散水ノズル500を上方から見た平面図である。
図3は、散水ノズル500を下方から見た底面図である。
図4は、散水ノズル500の側面図である。
図5は、
図2のF5−F5線に沿った断面図である。
図6は、
図2のF6−F6線に沿った断面図である。
【0026】
散水ノズル500は、吐出部502と、把持部504と、回転操作が可能な回転部506と、回転部506の回転に基づき吐出孔を切り替えうる水形切替機構とを有している。
【0027】
更に、散水ノズル500は、遠隔操作部RC1を有する。遠隔操作部RC1は、第1ボタンb1及び第2ボタンb2を有する。この遠隔操作部RC1については、後述する。
【0028】
吐出部502は、その側面に円筒外面508を有する。吐出部502は、その前面に吐水スクリーン510を有する。吐水スクリーン510は、多数の吐出孔を有する。吐出孔の選択により複数の水形が可能である。なお、水形の種類として、キリ、ストレート、ジョロ、シャワー等が挙げられる。水形は、少なくともストレート水形とシャワー水形とを含むのが好ましい。
【0029】
散水ノズル500は、小型である。散水ノズル500は、片手で容易に持つことができる。片手での持ちやすさの観点から、散水ノズル500の全長L1(
図2参照)は、200mm以下が好ましく、170mm以下がより好ましく、150mm以下が更に好ましい。片手での持ちやすさの観点から、散水ノズル500の全長L1は、50mm以上が好ましく、70mm以上がより好ましく、90mm以上が更に好ましい。全長L1は、前後方向に沿って測定される。水路の切替等に伴って散水ノズル500が伸縮する場合、全長L1は、散水ノズル500が最も収縮した状態(以下、基準状態ともいう)で測定される。軽量且つコンパクトで、取り回しが容易となる観点からは、全長L1は小さいほうが好ましい。一方、全長L1がある程度の長さを有する場合、例えば手を離してもノズルが手から落ちないようにする保持部材(バンド等)をノズルに装着することも可能となる。
【0030】
把持部504は、片手で持つことができる大きさを有する。散水ノズル500は、この把持部504のみを片手で持って散水することができる。
【0031】
把持部504は、円筒外面520を有する。円筒外面520は、吐出部502の円筒外面508と同軸である。円筒外面520は、一定の外径を有している。円筒外面520は、把持部504の少なくとも一部を構成している。円筒外面520は、把持部504の全部であってもよい。片手での持ちやすさの観点から、この円筒外面520の半径は、50mm以下が好ましく、45mm以下がより好ましく、40mm以下が更に好ましい。この半径が小さすぎても、片手での持ちやすさが低下する。この観点から、この円筒外面520の半径は、20mm以上が好ましく、25mm以上がより好ましく、30mm以上が更に好ましい。
【0032】
片手での持ちやすさの観点から、円筒外面520の長さL2(
図2参照)は、150mm以下が好ましく、140mm以下がより好ましく、130mm以下が更に好ましい。片手での持ちやすさの観点から、長さL2は、50mm以上が好ましく、70mm以上がより好ましく、90mm以上が更に好ましい。長さL2は、前後方向に沿って測定される。
【0033】
なお、円筒外面520の中心軸線は、前後方向に延びている。円筒外面520の中心軸線は、吐水中心線WCに一致している。この円筒外面520は片手で持ちやすく、意図する方向に吐水することが容易である。
【0034】
円筒外面520は、その周方向の一部に、当該円筒外面よりも凹んでいる凹部を有していても良い。当該凹部は、突出していないので、円筒外面520の持ちやすさを阻害しない。本実施形態では、遠隔操作部RC1によってこの凹部が構成されている。なお、円筒外面520は、その周方向の一部に、当該円筒外面よりも突出している凸部を有していても良い。この凸部は滑りの防止に寄与しうる。
【0035】
散水ノズル500は、仮想円筒収容部522を有する。仮想円筒収容部522とは、例えば、35mmの半径を有する仮想円筒内に完全に収容されうる部分を意味する。仮想円筒収容部522は、片手で持つのに適した太さを有する。この仮想円筒収容部522により、片手での持ちやすさが向上しうる。このような仮想円筒を設定したのは、円筒外面520(円周面)を有さない場合であっても、片手で持つのに適した太さを有する場合があることを考慮したためである。なお、仮想円筒収容部522の半径は、前述では35mmに設定したが、上側係合部520の半径と同じ理由で、50mm以下が好ましく、45mm以下がより好ましく、40mm以下が更に好ましい。この半径が小さすぎても、片手での持ちやすさが低下する。この観点から、この仮想円筒収容部522の半径は、20mm以上が好ましく、25mm以上がより好ましく、30mm以上が更に好ましい。
【0036】
仮想円筒収容部522は、回転部506を含んでいても良い。仮想円筒収容部522は、回転部506を含んでいなくても良い。好ましくは、仮想円筒収容部522は、把持部04の少なくとも一部を含む。より好ましくは、仮想円筒収容部522は、把持部504の全部を含む。
【0037】
片手での持ちやすさの観点から、仮想円筒収容部522の前後方向長さは、150mm以下が好ましく、140mm以下がより好ましく、130mm以下が更に好ましい。片手での持ちやすさの観点から、仮想円筒収容部522の前後方向長さは、50mm以上が好ましく、70mm以上がより好ましく、90mm以上が更に好ましい。
【0038】
回転部506は、把持部504と吐出部502(吐水スクリーン510)との間に配置されている。回転部506は、操作部530を有する。操作部530は、円筒状である。操作部530の外面は、凹凸(スプライン)を有する円筒面である。この凹凸は、滑り止めに寄与する。
【0039】
回転部506の一部は、外部に露出している。回転部506は、その一部のみが露出している。この露出した部分が、操作部530である。回転部506は、円筒外面520の前方に配置されている。回転部506は、円筒外面520に近い位置に配置されている。操作部530と円筒外面520との間の最短距離L3(
図2参照)は2.5mmと小さい。また、操作部530と円筒外面520との間の最長距離L4(
図2参照)は20.5mmと小さい。この散水ノズル500では、把持部504を把持する片手で、回転部506の回転操作が可能であるように構成されている。通常の使用形態では、回転部506は、把持部504を把持する片手の親指で操作される。
【0040】
図2が示すように、回転部506は、回転軸線Z1を有する。この回転軸線Z1の配向は、左右方向である。左右方向とは、前後方向に対して直角な方向である。基準姿勢にある散水ノズル500において、この左右方向は、使用者にとっての左右方向に一致する。回転軸線Z1は、前後方向に配向していない。なお、回転軸線Z1は、円筒外面520の中心軸線に交わっていない。回転軸線Z1は、円筒外面520の中心軸線よりも上方に位置する。回転軸線Z1は、吐水中心線WCに交わっていない。回転軸線Z1は、吐水中心線WCよりも上方に位置する。
【0041】
図2が示すように、回転部506の回転軸線Z1は、把持部504の前方に配置されている。回転軸線Z1は、円筒外面520の前方に配置されている。回転軸線Z1は、仮想円筒収容部522の前方に配置されている。
【0042】
回転部506の操作性の観点から、操作部530と円筒外面520との間の最短距離L3(
図2参照)は、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、10mm以下が更に好ましい。この最短距離L3は0mmであってもよい。最短距離L3は、前後方向に沿って測定される。またこの距離L3は、前記基準状態で測定される。
【0043】
片手での操作性の観点から、操作部530(又は仮想円筒収容部522)と円筒外面520との間の最長距離L4(
図2参照)は、50mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましく、30mm以下が更に好ましい。操作部530の大きさを考慮すると、この最長距離L4は、10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましく、20mm以上が更に好ましい。最長距離L4は、前後方向に沿って測定される。またこの距離L4は、前記基準状態で測定される。
【0044】
片手での操作性の観点から、操作部530の前後方向長さL5(
図2参照)は、10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましく、20mm以上が更に好ましい。操作性の観点から、長さL5は、50mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましく、30mm以下が更に好ましい。
【0045】
片手での操作性の観点から、回転部506の操作部530と仮想円筒収容部522との間の最短距離(図示省略)は、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、10mm以下が更に好ましい。この距離は0mmであってもよい。操作部530の一部又は全部が、仮想円筒収容部522に含まれていてもよい。この距離は、前後方向に沿って測定される。
【0046】
片手での操作性の観点から、操作部530と吐水中心線WCとの最大距離L6(
図4参照)は、10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましく、20mm以上が更に好ましい。片手での操作性の観点から、距離L6は、50mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましく、35mm以下が更に好ましい。距離L6は、上下方向に沿って測定される。
【0047】
片手での操作性の観点から、操作部530の最大吐出高さL7(
図4参照)は、0mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、8mm以上が更に好ましい。片手での操作性の観点から、高さL7は、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、12mm以下が更に好ましい。距離L7は、上下方向に沿って測定される。高さL7は、後方から見た操作部530の高さである。
【0048】
散水ノズル500は、操作部530の裏側(下側)に、非回転外面524を有する。非回転外面524は、回転部506の回転に伴い回転しない部分である。回転部506を回転操作する際に、非回転外面524を支持することができる。例えば、回転部506を持ち手の親指で操作しながら、非回転外面524を当該持ち手の人差し指で支持することができる。非回転外面524は、回転部506の操作性を高める。
【0049】
なお、操作部530の裏側とは、
図2のような平面視において、操作部530に重なる部分を意味する。この平面視は、基準姿勢にある散水ノズル500を上方から見た平面図である。操作部530が移動する場合、全移動範囲における操作部530の面積により、操作部530の裏側が決定される。
【0050】
図3が示すように、本実施形態では、非回転外面524は、円筒外面520と同軸の円筒面である。また、非回転外面524は、円筒外面520と同じ半径を有する円筒面である。このため、非回転外面524を支持することは容易であり、回転部506の操作性が高まる。
【0051】
図5及び
図6が示すように、散水ノズル500は、その内部に主水路WT1が形成された主管部532と、スリーブSV1と、第1水路P1と第2水路P2とを有する。主水路WT1及び主管部532は、散水ノズル500の中心部を前後方向に延びている。主管部532の中心軸線は、吐水中心線WCに一致している。主水路WT1の中心軸線は、吐水中心線WCに一致している。主水路WT1には、ホース等からの水が供給される。スリーブSV1の外面の一部は、前述した非回転外面524である。スリーブSV1は、回転部506の中心軸を支持している。スリーブSV1は、回転部506を回動可能に支持している。
【0052】
図5及び
図6が示すように、回転部506は、ギアG1を有する。ギアG1は、回転部506と同軸である。ギアG1は、回転部506と共に(一体で)回転する。ギアG1は、ピニオンギアである。一方、固定部側(主管部532側)には、ラックギアG2が設けられている。ピニオンギアG1とラックギアG2とは噛み合っている。
【0053】
図7は、回転部506の回転にともなう変化を示す図である。
図7では、第1状態C1及び第2状態C2が示されている。
図7(a)は、第1状態C1における散水ノズル500の平面図である。
図7(b)は、第1状態C1における散水ノズル500の断面図である。
図7(b)は、
図7(a)のB−B線に沿った断面図である。
図7(c)は、第2状態C2における散水ノズル500の平面図である。
図7(d)は、第2状態C2における散水ノズル500の断面図である。
図7(d)は、
図7(c)のD−D線に沿った断面図である。
【0054】
回転部506が回転されると、ピニオンギアG1が回転する。ピニオンギアG1はラックギアG2の上を転がりながら移動する。ピニオンギアG1と共に、スリーブSV1も移動する。この移動により、この相対移動により、主水路WT1の排出口E1がどの水路に連通するかが選択される。第1状態C1では、第1水路P1が選択されている。第1状態C1では、第1水路P1に繋がる吐出孔から水が吐出される。第2状態C2では、第2水路P2が選択されている。第2状態C2では、第2水路P2に繋がる吐出孔から水が吐出される。
【0055】
散水ノズル500では、回転部506の回転に伴って回転部506の位置が変化する。散水ノズル500では、回転部506の回転に伴って回転部506が前後方向に移動する。
【0056】
図2が示すように、操作部530の幅方向中心位置RZは、散水ノズル500の幅方向中心位置に一致している。
【0057】
回転部506の回転により、第1状態C1と第2状態C2との相互移行が可能である。第1状態C1では、把持部504に対してスリーブSV1が最も後方に位置している。この第1状態C1から回転部506を回転させると、スリーブSV1が把持部504に対して前方に移動する。更に回転部506を回転させると、第2状態C2に至る。第1状態C1と第2状態C2との間の状態も任意に選択されうる。回転部506の回転により、吐出量の調整も可能である。
【0058】
このように、散水ノズル500は、回転部506の回転に基づき吐出孔を切り替えうる水形切替機構を有する。この水形切替機構は、回転部506の回転に伴って水路P1、P2の切替を行うように構成されている。この水形切替機構は、回転部506の回転を前後方向の移動に変換しうる変換機構を有する。散水ノズル500では、この変換機構として、ラックアンドピニオン機構が採用されている。
【0059】
回転部506の可動回転角は、225°である。この可動回転角が実現されるように、ギア比が設定されている。可動回転角が大きい回転部506では、小さな力で操作することができ、微妙な調節も容易である。これらの観点から、回転部506の可動回転角は、90°以上が好ましく、180°以上がより好ましく、240°以上がより好ましい。可動回転角が過大であると、操作に要する作業量が過大となる。この観点から、回転部506の可動回転角は、450°以下が好ましく、360°以下がより好ましく、300°以下がより好ましい。
【0060】
回転部506の回転半径は、9mmである。この小さな回転半径により、操作する指の移動量が抑制され、片手での操作性が向上する。この観点から、回転部506の回転半径は、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、10mm以下がより好ましい。この回転半径が過小であると、回転中心と力の作用点の距離が小さくなり、同じ回転モーメントを付与するのに大きな力が必要となる。回転モーメントを大きくして操作性を高める観点から、回転部506の回転半径は、5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましい。
【0061】
[第二実施形態]
図8は、本発明の第二実施形態である散水ノズル600の斜視図である。
図9は、散水ノズル600を上方から見た平面図である。
図10は、散水ノズル600を下方から見た底面図である。
図11は、散水ノズル600の側面図である。
【0062】
散水ノズル600は、吐出部602と、把持部604と、回転操作が可能な回転部606と、回転部606の回転に基づき吐出孔を切り替えうる水形切替機構とを有している。
【0063】
更に、散水ノズル600は、遠隔操作部RC1を有する。遠隔操作部RC1は、第1ボタンb1及び第2ボタンb2を有する。この遠隔操作部RC1については、後述する。
【0064】
吐出部602は、その側面に円筒外面608を有する。吐出部602は、その前面に吐水スクリーン610を有する。吐水スクリーン610は、多数の吐出孔を有する。吐出孔の選択により複数の水形が可能である。
【0065】
散水ノズル600は、小型である。散水ノズル600は、片手で容易に持つことができる。把持部604は、片手で持つことができる大きさを有する。散水ノズル600は、この把持部604のみを片手で持って散水することができる。散水ノズル600の全長L1は、158mmである。
【0066】
把持部604は、円筒外面620を有する。円筒外面620は、吐出部602の円筒外面と同軸である。円筒外面620は、一定の外径を有している。円筒外面620は、把持部604の少なくとも一部を構成している。円筒外面620は、把持部604の全部であってもよい。この円筒外面620の半径は、36mmである。円筒外面620の長さL2は、65mmである。このサイズの円筒外面620は、片手で持ちやすい。
【0067】
円筒外面620は、その周方向の一部に、当該円筒外面よりも凹んでいる凹部を有している。当該凹部は、突出していないので、円筒外面620の持ちやすさを阻害しない。円筒外面620は、遠隔操作部RC1により構成された第1の凹部r1と、この第1の凹部r1の裏側に形成された第2の凹部r2とを有する(
図11参照)。
【0068】
散水ノズル600は、仮想円筒収容部622を有する。前述の通り、仮想円筒収容部622とは、例えば、35mmの半径を有する仮想円筒内に完全に収容されうる部分を意味する。仮想円筒の半径が35mmである場合、この仮想円筒収容部622の前後方向長さは、65mmである。この仮想円筒収容部622により、片手で持ちやすい散水ノズル600が達成されている。
【0069】
回転部606は、把持部604と吐出部602(吐水スクリーン610)との間に配置されている。回転部606の一部は、外部に露出している。回転部606は、その一部のみが、外部に露出している。回転部606は、操作部630を有する。回転部606のうち露出した部分が、操作部630である。操作部630は、凹凸を有する略円筒面を有する。この凹凸は、滑り止めに寄与する。
【0070】
回転部606は、円筒外面620の前方に配置されている。回転部606は、円筒外面620に近い位置に配置されている。操作部630と円筒外面620との間の最短距離L3(
図9参照)は4mmと小さい。この散水ノズル600では、把持部604を把持する片手で、回転部606の回転操作が可能であるように構成されている。通常の使用形態では、回転部606は、把持部604を把持する片手の親指で操作される。
【0071】
図9が示すように、回転部606は、回転軸線Z1を有する。この回転軸線Z1の配向は、左右方向である。回転軸線Z1は、前後方向に配向していない。なお、回転軸線Z1は、円筒外面620の中心軸線に交わっていない。回転軸線Z1は、円筒外面620の中心軸線よりも上方に位置する。回転軸線Z1は、吐水中心線WCに対して垂直である。回転軸線Z1は、吐水中心線WCに交わっていない。回転軸線Z1は、吐水中心線WCよりも上方に位置する。
【0072】
図9が示すように、回転部606の回転軸線Z1は、把持部604の前方に配置されている。回転軸線Z1は、円筒外面620の前方に配置されている。回転軸線Z1は、仮想円筒収容部622の前方に配置されている。
【0073】
散水ノズル600は、操作部630の裏側に、非回転外面624を有する(
図10参照)。非回転外面624は、回転部606の回転に伴い回転しない部分である。回転部606を回転操作する際に、非回転外面624を支持することができる。例えば、回転部606を持ち手の親指で操作しながら、非回転外面624を当該持ち手の人差し指で支持することができる。非回転外面624は、回転部606の操作性を高める。散水ノズル600では、この非回転外面624に突起t1が形成されている。この突起t1は滑り止めに寄与する。
【0074】
図12は、
図9のF12−F12線に沿った断面図である。
図12が示すように、散水ノズル600は、外スリーブSV1と、中スリーブSV2と、第1水路P1と、第2水路P2とを有する。
【0075】
図13は、
図9のF13−F13線に沿った断面図である。
図14は、ギア同士の噛み合いの状態を示す斜視図である。
【0076】
散水ノズル600の水形切替機構は、ギアG1からG3を有する。
図12及び
図13が示すように、ギアG1は、回転部606と一体である。ギアG1は、回転部606と同軸である。ギアG1は、回転部606と共に回転する。この回転部606の軸部ZK1(
図13、
図14参照)は、外スリーブSV1に回転可能に支持されている。
【0077】
図14が示すように、ギアG1は、ハス歯歯車である。ハス歯歯車G1は、回転部606の左右両側に設けられている。左右のハス歯歯車G1のそれぞれに噛み合う2つの第2ギアG2が配置されている。第2ギアG2のそれぞれは、ハス歯歯車G1と噛み合う斜歯を有する。左側の第2ギアG2は、左側のハス歯歯車G1に噛み合っている。右側の第2ギアG2は、右側のハス歯歯車G1に噛み合っている。第2ギアG2の回転軸線の方向は、ハス歯歯車G1の回転軸線の方向に対して直角である。第2ギアG2の回転軸線の方向は、前後方向である。第2ギアG2は、ウォームである。ハス歯歯車G1と第2ギアG2とでウォームギアが構成されている。第2ギアG2の両端部ZK2(
図14参照)は、外スリーブSV1に回転可能に支持されている。
【0078】
第2ギアG2の内部は空洞となっている。第2ギアG2の内面には雌ネジが形成されている。第3ギアG3は、この第2ギアG2の内部に配置されている。第3ギアG3は、ネジ部材である。このネジ部材G3の外面には雄ネジが形成されている。第2ギアG2の雌ネジとネジ部材G3の雄ネジとが噛み合っている。
【0079】
第2ギアG2とネジ部材G3とは同軸である。第2ギアG2の回転軸線は、ネジ部材G3の回転軸線と同じである。第2ギアG2が回転すると、ネジ部材G3はその軸方向に沿って移動する。第2ギアG2が回転すると、ネジ部材G3は前後方向に移動する。2つのネジ部材G3は、同じように移動する。2つのネジ部材G3の前後方向位置は常に同じである。
【0080】
図15は、回転部606の回転にともなう変化を示す図である。
図15には、第1状態C1及び第2状態C2が示されている。
図15(a)は、第1状態C1における散水ノズル600の平面図である。
図15(b)は、第1状態C1における散水ノズル600の断面図である。
図15(b)は、
図15(a)のB−B線に沿った断面図である。
図15(c)は、第2状態C2における散水ノズル600の平面図である。
図15(d)は、第2状態C2における散水ノズル600の断面図である。
図15(d)は、
図15(c)のD−D線に沿った断面図である。
【0081】
図15(b)及び
図15(d)が示すように、散水ノズル600は、その内部に主水路WT1が形成された主管部632を有する。主管部632及び主水路WT1は、散水ノズル600の中心部を前後方向に延びている。主水路WT1には、ホース等からの水が供給される。更に前述の通り、散水ノズル600は、外スリーブSV1と、中スリーブSV2と、第1水路P1と、第2水路P2とを有する。
【0082】
回転部606が回転されると、ハス歯歯車G1が回転する。前述のとおり、ハス歯歯車G1の回転は、第2ギアG2及びネジ部材G3に伝達され、ネジ部材G3が前後方向に移動する。このネジ部材G3は、中スリーブSV2と連動する。ネジ部材G3と共に、中スリーブSV2が前後方向に移動する。中スリーブSV2は、主水路WT1に対して移動する。この相対移動により、主水路WT1の排出口E1がどの水路に連通するかが選択される。第1状態C1では、第1水路P1が選択されている。第1状態C1では、第1水路P1に繋がる吐出孔から水が吐出される。第2状態C2では、第2水路P2が選択されている。第2状態C2では、第2水路P2に繋がる吐出孔から水が吐出される。
【0083】
散水ノズル600では、回転部606の回転に伴って回転部606が移動しない。散水ノズル600では、回転部606の位置が、当該回転部606の回転に関わらず固定されている。
【0084】
図9が示すように、回転部630の幅方向中心位置RZは、散水ノズル600の幅方向中心位置に一致している。この幅方向とは、前記基準姿勢における左右方向である。
【0085】
回転部606の回転により、第1状態C1と第2状態C2との相互移行が可能である。第1状態C1では、把持部604に対して中スリーブSV2が最も後方に位置している。この第1状態C1から回転部606を回転させると、中スリーブSV2が把持部604に対して前方に移動する。更に回転部606を回転させると、第2状態C2に至る。第1状態C1と第2状態C2との間の状態も任意に(無段階に)選択されうる。回転部606の回転により、吐出量の調整も可能である。
【0086】
このように、散水ノズル600は、回転部606の回転に基づき吐出孔を切り替えうる水形切替機構を有する。この水形切替機構は、回転部606の回転に伴って水路P1、P2の切替を行うように構成されている。この水形切替機構は、回転部606の回転を前後方向の移動に変換しうる変換機構を有する。この変換機構は、複数の歯車によって左右方向軸回りの回転を前後方向軸回りの回転に変換する第1変換機構と、この変換された前後方向軸回りの回転を前後方向の移動に変換する第2変換機構とを有する。第1変換機構として、ハス歯歯車が用いられている。
【0087】
回転部606の可動回転角は、972°である。この可動回転角が実現されるように、ギア比が設定されている。可動回転角が大きい回転部606では、小さな力で操作することができ、微妙な調節も容易である。回転部606の回転半径は、17mmである。この小さな回転半径により、操作する指の移動量が抑制され、片手での操作性に優れる。
【0088】
[第三実施形態]
図16は、本発明の第三実施形態である散水ノズル700の斜視図である。
図17は、散水ノズル700を上方から見た平面図である。
図18は、散水ノズル700を下方から見た底面図である。
図19は、散水ノズル700の側面図である。
【0089】
散水ノズル700は、吐出部702と、把持部704と、回転操作が可能な回転部706と、回転部706の回転に基づき吐出孔を切り替えうる水形切替機構とを有している。
【0090】
更に、散水ノズル700は、遠隔操作部RC1を有する。遠隔操作部RC1は、第1ボタンb1及び第2ボタンb2を有する。この遠隔操作部RC1については、後述する。
【0091】
吐出部702は、その側面に円筒外面708を有する。吐出部702は、その前面に吐水スクリーン710を有する。吐水スクリーン710は、多数の吐出孔を有する。吐出孔の選択により複数の水形が可能である。
【0092】
散水ノズル700は、小型である。散水ノズル700は、片手で容易に持つことができる。把持部704は、片手で持つことができる大きさを有する。散水ノズル700は、この把持部704のみを片手で持って散水することができる。散水ノズル700の全長L1は、158mmである。
【0093】
把持部704は、円筒外面720を有する。円筒外面720は、吐出部702の円筒外面708と同軸である。円筒外面720は、一定の外径を有している。円筒外面720は、把持部704の少なくとも一部を構成している。円筒外面720は、把持部704の全部であってもよい。この円筒外面720の半径は、37mmである。円筒外面720の長さL2は、65mmである。このサイズの円筒外面720は、片手で持ちやすい。
【0094】
円筒外面720は、その周方向の一部に、当該円筒外面よりも凹んでいる凹部r1を有している(
図19参照)。当該凹部は、突出していないので、円筒外面720の持ちやすさを阻害しない。凹部r1は、遠隔操作部RC1に対応した位置に設けられている。
【0095】
散水ノズル700は、仮想円筒収容部722を有する。前述のとおり、仮想円筒収容部722とは、例えば、35mmの半径を有する仮想円筒内に完全に収容されうる部分を意味する。仮想円筒の半径が35mmである場合、この仮想円筒収容部722の前後方向長さは、65mmである。この仮想円筒収容部722により、片手で持ちやすい散水ノズル700が達成されている。
【0096】
回転部706は、把持部704と吐出部702(吐水スクリーン710)との間に配置されている。回転部706の一部は、外部に露出している。回転部706は、その一部のみが、外部に露出している。回転部706は、操作部730を有する。回転部706のうち露出した部分が、操作部730である。操作部730は、凹凸を有する略円筒面を有する。この凹凸は、滑り止めに寄与する。
【0097】
回転部706は、円筒外面720の前方に配置されている。回転部706は、円筒外面720に近い位置に配置されている。操作部730と円筒外面720との間の最短距離L3(
図17参照)は3.6mmと小さい。この散水ノズル700では、把持部704を把持する片手で、回転部706の回転操作が可能であるように構成されている。通常の使用形態では、回転部706は、把持部704を把持する片手の親指で操作される。
【0098】
図17が示すように、回転部706は、回転軸線Z1を有する。この回転軸線Z1の配向は、左右方向である。回転軸線Z1は、前後方向に配向していない。なお、回転軸線Z1は、円筒外面720の中心軸線に交わっていない。回転軸線Z1は、円筒外面720の中心軸線よりも上方に位置する。
【0099】
図17が示すように、回転部706の回転軸線Z1は、把持部704の前方に配置されている。回転軸線Z1は、円筒外面720の前方に配置されている。回転軸線Z1は、仮想円筒収容部722の前方に配置されている。
【0100】
回転部706と円筒外面720との間の最短距離L3は、3.6mmである。この回転部706は、把持部704を把持する片手で容易に操作することができる。
【0101】
散水ノズル700は、操作部730の裏側に、非回転外面724を有する(
図18参照)。非回転外面724は、回転部706の回転に伴い回転しない部分である。回転部706を回転操作する際に、非回転外面724を支持することができる。例えば、回転部706を持ち手の親指で操作しながら、非回転外面724を当該持ち手の人差し指で支持することができる。非回転外面724は、回転部706の操作性を高める。散水ノズル700では、この非回転外面724に突起t1が形成されている。この突起t1は滑り止めに寄与する。
【0102】
図20は、
図17のF20−F20線に沿った断面図である。
図20が示すように、散水ノズル700は、外スリーブSV1と、中スリーブSV2と、第1水路P1と、第2水路P2とを有する。
【0103】
図21は、
図17のF21−F21線に沿った断面図である。
図22は、ギア同士の噛み合いの状態を示す斜視図である。
【0104】
散水ノズル700の水形切替機構は、ギアG1からG4を有する。ギアG1は、回転部706と一体である。ギアG1は、回転部706と同軸である。ギアG1は、回転部706と共に回転する。この回転部706の軸部ZK1(
図22参照)は、外スリーブSV1に回転可能に支持されている。
【0105】
図22が示すように、ギアG1は、冠歯車である。冠歯車G1は、第2ギアG2に噛み合っている。冠歯車G1の回転軸線の方向は、左右方向である。冠歯車G1が回転すると、この冠歯車G1に噛み合う第2ギアG2が回転する。第2ギアG2の回転軸線の方向は、前後方向である。第2ギアG2の軸部ZK2(
図22)は、外スリーブSV1に回転可能に支持されている。第2ギアG2はアイドルギアとして機能する。
【0106】
第2ギアG2は、第3ギアG3に噛み合っている。第3ギアG3の回転軸線の方向は、前後方向である。第2ギアG2の回転は、第3ギアG3に伝達される。第3ギアG3の両端部ZK3(
図22参照)は、外スリーブSV1に回転可能に支持されている。
【0107】
第3ギアG3の内部は空洞となっている。第3ギアG3の内面には雌ネジが形成されている。第4ギアG4は、この第3ギアG3の内部に配置されている。第4ギアG4は、ネジ部材である。このネジ部材G4の外面には雄ネジが形成されている。第3ギアG3の雌ネジとネジ部材G4の雄ネジとが噛み合っている。
【0108】
第3ギアG3とネジ部材G4とは同軸である。第3ギアG3の回転軸線は、ネジ部材G4の回転軸線と同じである。第3ギアG3が回転すると、ネジ部材G4はその軸方向に沿って移動する。第3ギアG3の回転に起因して、ネジ部材G4は前後方向に移動する。
【0109】
図23は、回転部706の回転にともなう変化を示す図である。
図23には、第1状態C1及び第2状態C2が示されている。
図23(a)は、第1状態C1における散水ノズル700の平面図である。
図23(b)は、第1状態C1における散水ノズル700の断面図である。
図23(b)は、
図23(a)のB−B線に沿った断面図である。
図23(c)は、第2状態C2における散水ノズル700の平面図である。
図23(d)は、第2状態C2における散水ノズル700の断面図である。
図23(d)は、
図23(c)のD−D線に沿った断面図である。
【0110】
図23(b)及び
図23(d)が示すように、散水ノズル700は、その内部に主水路WT1が形成された主管部732を有する。主管部732及び主水路WT1は、散水ノズル700の中心部を前後方向に延びている。主水路WT1には、ホース等からの水が供給される。更に前述の通り、散水ノズル700は、外スリーブSV1と、中スリーブSV2と、第1水路P1と、第2水路P2とを有する。
【0111】
回転部706が回転されると、冠歯車G1が回転する。前述のとおり、冠歯車G1の回転は、第2ギアG2、第3ギアG3及び第4ギアG4に伝達され、第4ギアG4が前後方向に移動する。この第4ギアG4は、中スリーブSV2と連動する。第4ギアG4と共に、中スリーブSV2が前後方向に移動する。中スリーブSV2は、主水路WT1に対して移動する。この相対移動により、主水路WT1の排出口E1がどの水路に連通するかが選択される。第1状態C1では、第1水路P1が選択されている。第1状態C1では、第1水路P1に繋がる吐出孔から水が吐出される。第2状態C2では、第2水路P2が選択されている。第2状態C2では、第2水路P2に繋がる吐出孔から水が吐出される。
【0112】
散水ノズル700では、回転部706の回転に伴って回転部706が移動しない。散水ノズル700では、回転部706の位置が、当該回転部706の回転に関わらず固定されている。
【0113】
図17が示すように、回転部730の幅方向中心位置RZは、散水ノズル700の幅方向中心位置とは相違している。本実施形態では、位置RZは、散水ノズル700の幅方向中心位置の左側に位置している。右手で把持された場合の親指の位置を考慮すると、この左側が好ましい。また、左手で把持された場合の親指の位置を考慮すると、この右側が好ましい。親指の位置を考慮すると、位置RZと散水ノズル700の幅方向中心位置との距離L8は、0mm以上30mm以下の範囲に設定されうる。
【0114】
回転部706の回転により、第1状態C1と第2状態C2との相互移行が可能である。第1状態C1では、把持部704に対して中スリーブSV2が最も後方に位置している。この第1状態C1から回転部706を回転させると、中スリーブSV2が把持部704に対して前方に移動する。更に回転部706を回転させると、第2状態C2に至る。第1状態C1と第2状態C2との間の状態も任意に選択されうる。回転部706の回転により、吐出量の調整も可能である。
【0115】
このように、散水ノズル700は、回転部706の回転に基づき吐出孔を切り替えうる水形切替機構を有する。この水形切替機構は、回転部706の回転に伴って水路P1、P2の切替を行うように構成されている。この水形切替機構は、回転部706の回転を前後方向の移動に変換しうる変換機構を有する。この変換機構は、複数の歯車によって左右方向軸回りの回転を前後方向軸回りの回転に変換する第1変換機構と、この変換された前後方向軸回りの回転を前後方向の移動に変換する第2変換機構とを有する。
【0116】
回転部706の可動回転角は、1080°である。この可動回転角が実現されるように、ギア比が設定されている。可動回転角が大きい回転部706では、小さな力で操作することができ、微妙な調節も容易である。回転部706の回転半径は、9mmである。この小さな回転半径により、操作する指の移動量が抑制され、片手での操作性が向上する。
【0117】
[第四実施形態]
図24は、本発明の第四実施形態である散水ノズル750の斜視図である。
図25は、散水ノズル750を上方から見た平面図である。
図26は、散水ノズル750を下方から見た底面図である。
図27は、散水ノズル750の側面図である。
【0118】
散水ノズル750は、吐出部752と、把持部754と、回転操作が可能な回転部756と、回転部756の回転に基づき吐出孔を切り替えうる水形切替機構とを有している。回転部756は、外部に露出している。回転部756は、レバーの役割を果たす。
【0119】
吐出部752は、その側面に円筒外面758を有する。吐出部752は、その前面に吐水スクリーン760を有する。吐水スクリーン760は、多数の吐出孔を有する。吐出孔の選択により複数の水形が可能である。
【0120】
散水ノズル750は、小型である。散水ノズル750は、片手で容易に持つことができる。把持部754は、片手で持つことができる大きさを有する。散水ノズル750は、この把持部754のみを片手で持って散水することができる。散水ノズル750の全長L1は、158mmである。
【0121】
把持部754は、円筒外面770を有する。この円筒外面770の半径は、16mmである。円筒外面770の長さL2は、87.5mmである。全長L1及び長さL2は非常に短い。散水ノズル750は、片手にほぼ収まるほどコンパクトである。この散水ノズル750では、把持部754を把持する片手で、回転部756の回転操作が可能であるように構成されている。通常の使用形態では、回転部756は、把持部754を把持する片手の親指で操作される。
【0122】
図25が示すように、回転部756は、回転軸線Z1を有する。この回転軸線Z1の配向は、左右方向である。回転軸線Z1は、前後方向に配向していない。なお、回転軸線Z1は、円筒外面770の中心軸線に交わっていない。回転軸線Z1は、円筒外面770の中心軸線よりも上方に位置する。
【0123】
散水ノズル750は、回転部756の裏側に、非回転外面774を有する(
図26参照)。非回転外面774は、回転部756の回転に伴い回転しない部分である。回転部756を回転操作する際に、非回転外面774を支持することができる。例えば、回転部756を持ち手の親指で操作しながら、非回転外面774を当該持ち手の人差し指で支持することができる。非回転外面774は、回転部756の操作性を高める。
【0124】
図28は、
図25のF28−F28線に沿った断面図である。
図28が示すように、散水ノズル750は、回転水路部SRと、第1水路P1と、第2水路P2と、第3水路P3とを有する。回転水路部SRは、供給水路SR1を有する。
【0125】
回転水路部SRは、回転部756(レバー)と一体の部材である。回転部756を回転させると、回転水路部SRも回転する。この回転により、供給水路SR1がどの水路に繋がるかが選択される。第1水路P1、第2水路P2及び第3水路P3のうちのいずれかが択一的に選択される。第1水路P1が選択されると、第1水路P1に繋がる吐出孔から水が吐出される。第2水路P2が選択されると、第2水路P2に繋がる吐出孔から水が吐出される。第3水路P3が選択されると、第3水路P3に繋がる吐出孔から水が吐出される。
【0126】
散水ノズル750では、回転部756の回転に伴って回転部756が移動しない。散水ノズル750では、回転部756の位置が、当該回転部756の回転に関わらず固定されている。
【0127】
図25が示すように、回転部756の幅方向中心位置RZは、散水ノズル750の幅方向中心位置に一致している。
【0128】
このように、散水ノズル750は、回転部756の回転に基づき吐出孔を切り替えうる水形切替機構を有する。この水形切替機構は、回転部756の回転に伴って水路P1、P2、P3の切替を行うように構成されている。
【0129】
回転部756の可動回転角は、54°である。前述の実施形態に比べて、この可動回転角は小さい。可動回転角が小さい回転部756では、微妙な調節が難しい場合がありうるが、迅速な操作が可能である。
【0130】
前述した4つの実施形態のうち、散水ノズル500、散水ノズル600及び散水ノズル700は、回転部の回転によって移動しない固定部材と、回転部の回転によって移動する移動部材とを有する。一方、散水ノズル750は、移動部材を有さない。
【0131】
散水ノズル500において、把持部504及び主管部532は固定部材であり、回転部506及びスリーブSV1は移動部材である(
図7参照)。スリーブSV1は、回転部506の回転に伴って移動して水路の切替を行う水路切替部材である。
【0132】
散水ノズル600において、把持部604、回転部606、外スリーブSV1及び主管部632は固定部材であり、中スリーブSV2は移動部材である(
図15参照)。中スリーブSV2は、回転部606の回転に伴って移動して水路の切替を行う水路切替部材である。
【0133】
散水ノズル700において、把持部704、回転部706、外スリーブSV1及び主管部732は固定部材であり、中スリーブSV2は移動部材である(
図23参照)。中スリーブSV2は、回転部706の回転に伴って移動して水路の切替を行う水路切替部材である。
【0134】
散水ノズル750では、移動部材は存在しない。回転水路部SRは、回転部756の回転に伴って(移動せず)回転して水路の切替を行う水路切替部材である。
【0135】
上述した4つの実施形態では、回転部の回転軸線が左右方向に配向している。よって、回転部を回転させるための操作は、前後方向への移動である。この操作は、把持部を有する手の親指によって容易に実施されうる。回転部の回転軸線を左右方向とすることで、操作性が向上している。
【0136】
なお、回転部の回転軸線の配向方向は限定されない。例えば、回転部の回転軸線が前後方向に配向していてもよい。例えば前述の散水ノズル600及び散水ノズル700において、ギア機構における各ギアの配置を変更することで、回転部の回転軸線を前後方向に配向させることができる。この場合、把持部を持つ手の親指を左右方向に動かす必要があるが、この動きは可能である。
【0137】
上述した4つの実施形態のうち、散水ノズル600、散水ノズル700及び散水ノズル750では、回転部の位置が、当該回転部の回転に関わらず固定されている。よって、固定部分である把持部と回転部との距離が変わらず、操作しやすい。一方、
図7に示されるように、散水ノズル500では、回転部の位置が当該回転部の回転によって移動する。この場合も、移動距離が少なければ、操作性への影響は限定的である。操作性の観点から、回転部の前後方向における移動可能距離は、20mm以下が好ましく、18mm以下がより好ましく、15mm以下がより好ましい。水路の切替を考慮すると、この移動可能距離は、5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上がより好ましい。
【0138】
図7の散水ノズル500では、回転部506の回転に伴い回転部506の位置が移動する。しかし、この移動距離D1は、当該移動に必要な回転部506の回転周長R1に比べて小さい。回転周長とは、回転部506の表面の移動距離である。例えば半径rの回転部506を360°回転させた場合、この回転周長は、半径rの円の円周の長さに等しい。
【0139】
このように、移動距離D1は回転周長R1に比べて小さいので、回転部506の移動が抑制され、片手での操作性は良好である。片手での操作性の観点から、D1/R1は、0.7以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.5以下がより好ましい。水路の切替を考慮すると、ある程度のD1を確保する必要がある。また回転周長R1が過大であると、操作の作業量が増大する。これらの観点から、D1/R1は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がより好ましい。
【0140】
前述した4つの実施形態のうち、散水ノズル500、散水ノズル600及び散水ノズル750では、操作部の幅方向中心位置が、ノズルの幅方向中心位置に一致している(
図2、
図9及び
図25参照)。このため、把持部を持つ手の親指で操作部を操作することが容易である。またこの場合、把持部を右手で持つか左手で持つかに関わらず、親指での操作性た高い。一方、散水ノズル700では、操作部の幅方向中心位置が、ノズルの幅方向中心位置とは相違している(
図17参照)。散水ノズル700では、操作部の幅方向中心位置が、ノズルの幅方向中心位置に対して、使用者から見て左側のズレている。実際の使用状態を考慮して、より操作性を高める観点から、操作部の位置をノズルの幅方向中心位置からずらすこともできる。
【0141】
上述した4つの実施形態では、回転部の一部のみが露出している。本発明はこの構成に限定されない。回転部の全部が露出していてもよい。例えば回転部が円盤状とされ、この回転部の回転軸線がノズル本体の中心軸線に直交していてもよい。この場合例えば、円盤状の回転部がノズルの側面に位置する状態でノズルを使用することができる。
【0142】
上述した4つの実施形態のうち、散水ノズル600及び散水ノズル700は、複数の歯車を有している。これらの歯車間に生じる摩擦力が大きいため、逆転現象が防止されている。即ち、散水ノズル600において、水圧によって第3ギアG3(
図14)が前後方向に押されても、それによって各ギアが回転することがない。ハス歯歯車は、この摩擦力の増大に寄与している。同様に、散水ノズル700において、水圧によって第4ギアG4(
図22)が前後方向に押されても、それによって各ギアが回転することがない。したがって、水圧によって勝手に回転部が回転する現象は防止されている。一方、散水ノズル500では、上述の摩擦力が小さく、前記逆転現象が起こりうる。このため散水ノズル500は、回転部506に係合して回転部506の回転を抑制する防止する回転係合部540を有している(
図5参照)。回転係合部540は、回転部506に設けられた凹凸係合部512と係合して、水圧による回転部506の回転を抑制している。ただし、操作性の観点から、回転部506を回転させるために要する最小限の力(閾値)は低く設定されている。散水ノズル600及び散水ノズル700のように、逆転現象が生じない構成が好ましい。すなわち、回転部の回転を前後方向の移動に変換する変換機構は、水圧によって回転部の回転が生じない程度の摩擦力を有しているのが好ましい。
【0143】
上述の摩擦力を高め、水圧による移動部材の移動を抑制する観点から、回転部の回転を前後方向の移動に変換する変換機構が有するギアの数は、3つ以上が好ましい。過度に複雑な機構は、ノズルの大型化、部品コストの増加、組み立てコストの増加等を招く。この観点から、この変換機構が有するギアの数は、8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下が更に好ましい。上述の摩擦力を高め、水圧による移動部材の移動を抑制する観点から、回転部の回転を前後方向の移動に変換する変換機構は、回転軸線が左右方向である第1のギアと、回転軸線が前後方向である第2のギアとを有するのが好ましい。
【0144】
散水ノズル500、600及び700のそれぞれにおいて、水形切替機構は、吐出量調節機能を有する。片手で吐出量が調整できるため、利便性が高い。一方、散水ノズル500、600及び700のそれぞれにおいて、水形切替機構は、止水機能(吐止水切替機能)を有していない。代わりに、散水ノズル500、600及び700のそれぞれは、吐水及び止水を遠隔操作で指示しうる遠隔操作部RC1を有する。止水と吐水との切替は、遠隔操作部RC1から無線で指示された元水栓装置MT1(後述)によって達成される。ノズル側で止水を行わず、元水栓側で止水を行うため、ホースに作用する圧力を低下させることができる。このため、耐圧性の低いホースを利用できるなど、ホースの選択の自由度が高まる。なお、水形切替機構が止水機能を有していてもよい。水形切替機構が吐止水切替機能を有していても良い。
【0145】
上述した4つの実施形態では、従来のノズルのように、外周スリーブを回す必要がない。また、操作方向が左右方向ではなく、前後方向である。このため、把持部を持つ手の親指で容易に操作できる。散水ノズル500、散水ノズル600及び散水ノズル700では、回転部の軸が両側から支持されている。よって回転部に力を入れても安定した回転動作が可能である。この両側から支持された回転部は、操作性の向上に寄与する。
【0146】
上述した各ノズルの形状は、全体として略円筒形状である。他のノズルの形状として、略直方体形状、略楕円柱形状、略U字形状等が挙げられる。防水の観点から、略円筒形状及び略楕円柱形状が好ましい。シール性を考慮すると、略円筒形状がより好ましい。
【0147】
散水ノズルは、屋外でも使用される。この使用では、砂の噛み込み等、異物の混入が生じうる。この観点から、ギア同士が噛み合っている部分(ギア駆動部分)は外部に露出しないのが好ましい。前述の散水ノズル600は、ギア駆動部分を収容するボックス部650を有する(
図8参照)。
【0148】
上述した各実施形態のそれぞれは、更に、元水栓装置MT1を有していてもよい。前述の散水ノズルと元水栓装置MT1とで、散水装置が構成されてもよい。
【0149】
図29は、前述した散水ノズル500と元水栓装置MT1とを有する散水装置900の一例を示す斜視図である。散水装置900は、散水ノズル500と、元水栓装置MT1と、ホースHS1とを有する。
【0150】
元水栓装置MT1は、ホースHS1の第1端に取り付けられている。散水ノズル500は、ホースHS1の第2端に取り付けられている。ホースHS1は、散水ノズル500と元水栓装置MT1とを繋いでいる。図示しないが、散水装置900は、更にホース収容部を有していてもよい。このホース収容部の一例は、ホースリールである。もちろん、ホース収容部は無くても良い。
【0151】
なお、ホース収容部としては、ホースHS1をリールに巻き取る構成のホースリール、ホースを引っ掛けて保管するホースハンガー、及び、ホースを巻き取ることなく容器に収納するホース収容器などが挙げられる。上述の通り、ホース収容部を設けなくてもよいが、ホース収容部を設ける場合、以下が好ましい。ホースの収納・取り出し性の観点からはホースリールが好ましい。一方、特に折りたたみホースや伸縮式ホースのように、通水時に大きく変形するホースの収納の観点からは、ホースハンガーが好ましい。ホース収納部は箱状であってもよい。
【0152】
散水装置900は、屋外用である。散水装置900は、蛇口に接続して用いられる。散水装置900は、園芸、清掃、洗車、水まき等の用途で用いられる。
【0153】
なお、蛇口とは、水道水などの用水を供給する管の出口部分を意味する。蛇口と元水栓装置の連結は、蛇口側と元水栓装置側とがコネクターを用いて連結されたコネクター連結とするのが好ましい。このコネクター連結では、蛇口に第1のコネクターを設けるとともに元水栓装置に第2のコネクターを設けて、これら第1のコネクターと第2のコネクターとが連結された構成が好ましい。また、両コネクターの連結は、両コネクターのうちの一方を他方に押し込むことにより両コネクターが互いに連結された連結状態が実現するのが好ましい。また、これら両コネクターの連結構造は、上記連結状態を保持できる保持機構を有するのが好ましい。上記第1のコネクターは、蛇口と一体で設けられていてもよいし、蛇口とは別体であって当該蛇口に取り外し可能又は取り外し不能に取付られていていてもよい。上記各第2のコネクターは、元水栓装置に一体で設けられていてもよいし、元水栓装置とは別体であって当該元水栓装置に取り外し可能又は取り外し不能に取付られていていてもよい。なお、上記コネクター連結の他に、雄ねじと雌ねじとのネジ結合による連結、ボルト・ナット等での固定による連結、固定バンドで締め付けての連結、なども使用できるが、上述のコネクター連結とするのが最も好ましい構成である。
【0154】
散水装置900において、散水ノズル500は1つであり、元水栓装置MT1も1つであり、ホースHS1も1つである。散水装置900では、散水ノズル500と元水栓装置MT1とが1体1で対応している。1つの元水栓装置MT1に対して、散水ノズル500が複数であってもよい。この場合、ホースHS1が複数であるのが好ましい。
【0155】
元水栓装置MT1は、蛇口に接続される。蛇口から供給された水は、元水栓装置MT1及びホースHS1を経由して、散水ノズル500に至る。水は、散水ノズル500から吐出される。
【0156】
散水ノズル500(及び前述の散水ノズル600,700)は、遠隔操作部RC1を有する。遠隔操作部RC1は、元水栓装置MT1における吐水と止水との切替を操作しうる。
図1等が示すように、遠隔操作部RC1は、吐水を指示するための第1ボタンb1と、止水を指示するための第2ボタンb2とを有している。ボタン式の遠隔操作部RC1は、吐水と止水との切り換えが容易であるため好ましい。
【0157】
元水栓装置MT1は、吐止水切替部を有する。後述の通り、この吐止水切替部水は、電磁弁を有している。この吐止水切替部は、遠隔操作によって止水と吐水との切替を行う。散水装置900では、散水ノズル500において吐水と止水との切替が可能であるが、元水栓装置MT1でも吐水と止水との切替が可能である。
【0158】
好ましくは、元水栓装置MT1は、電源を有する。この電源からの電力は、前記吐止水切替部に供給される。好ましくは、遠隔操作部RC1は、電源を有する。好ましくは、散水ノズル500は、遠隔操作部RC1のための電源を有する。電源の一例は、電池である。電池として、化学電池及び物理電池が例示される。化学電池として、一次電池及び二次電池が例示される。一次電池として、乾電池、リチウム電池及びボタン電池が例示される。二次電池として、ニカド電池、ニッケル水素電池及びリチウムイオン電池が例示される。物理電池として、太陽電池が例示される。散水装置は屋外で利用されるため、太陽光発電に適している。一方、屋外では、汚れや水ぬれが問題となる。この点において、太陽電池では、電池交換のための開閉部が不要であるから、継ぎ目の無い仕様(完全防水仕様)とすることが容易である点で好ましい。
【0159】
遠隔操作部RC1は、遠隔操作によって前記吐止水切替部を操作する。本実施形態では、遠隔操作部RC1は散水ノズル500に内蔵(固定)されている。この場合、遠隔操作部RC1の固定が確実となり、遠隔操作部の操作性が高まる。また、遠隔操作部RC1への防水性を高めることが容易となる。
【0160】
遠隔操作部RC1による遠隔操作は、有線式であってもよいし、無線式であってもよい。有線式の遠隔操作では、例えば、電線が用いられる。この場合、電線は、遠隔操作部と吐止水切替部と繋ぐように設けられる。他の実施形態として、例えばワイヤを用いた機械的な遠隔操作が挙げられる。
【0161】
無線操作のための信号として、超音波及び電磁波が例示される。電磁波として、電波及び赤外線が例示される。
【0162】
好ましくは、遠隔操作部RC1は、無線式で元水栓装置MT1の吐止水切替部を操作する。好ましくは、吐止水切替部は遠隔操作部RC1によって無線式で操作される。
【0163】
図30は、無線式が採用される場合の構成の一例を示すブロック図である。散水ノズル500でも、この
図30の構成が採用されている。
【0164】
遠隔操作部RC1は、送信部1002と、指示部1004とを有する。一方、元水栓装置MT1に設けられている吐止水切替部1006は、受信部1008と、制御部1010と、開閉弁1012とを有する。
【0165】
遠隔操作部RC1の第1ボタンb1が押されると、送信部1002が、元水栓装置MT1を吐水状態とするための信号(吐水指示信号)を送信する。この吐水指示信号を受信した元水栓装置MT1は吐水状態に切り替わる。この吐水指示信号は、無線通信によって伝達される。第2ボタンb2が押されると、送信部1002が、元水栓装置MT1を止水状態とするための信号(止水指示信号)を送信する。この止水指示信号を受信した元水栓装置MT1は、止水状態に切り替わる。この止水指示信号は、無線通信によって伝達される。遠隔操作部RC1の構成は、公知の無線式のリモコン(リモートコントローラー)と同様である。
【0166】
元水栓装置MT1の吐止水切替部1006は、送信部1002からの信号を受信する受信部1008と、開閉弁1012と、この開閉弁1012を制御しうる制御部1010とを有している。この受信部1008は、遠隔操作部RC1の送信部1002から、上述の吐水指示信号及び止水指示信号を受信する。受信部1008が吐水指示信号を受信すると、制御部1010が開閉弁1012を開ける。受信部1008が止水指示信号を受信すると、制御部1010が開閉弁1012を閉じる。このように、開閉弁1012は、遠隔操作部RC1からの指示によって開閉する。
【0167】
本実施形態では、開閉弁1012が電磁弁である。電磁弁は、電気的駆動弁の一種であり、電磁石(ソレノイド)の磁力を用いてプランジャーと呼ばれる鉄片を動かし、弁を開閉する。この電磁弁が閉じることで、止水が達成される。この電磁弁が開くことで、吐水が達成される。公知の電磁弁が用いられる。
【0168】
ホースHS1の種類として、単層ホース、二層ホース等の複数層ホース、糸入りホース、コイル入りホース、フレキシブルホース、折りたたみホース、偏平ホース等、あらゆる種類のホースが用いられ得る。また、蛇腹管等の弾性管も、ホースHS1として用いられうる。伸縮式ホースが用いられても良い。
【0169】
単層ホースの材質は、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ゴム等である。構造が単純で製造コストは低い。しかし、耐圧性は低く、高水圧時の変形は大きい。
【0170】
糸入りホースは、繊維によって補強されたホースである。この糸入りホースは、高水圧時の変形が小さく、耐圧性に優れる。コイルホースは、コイルによって補強されたホースである。コイルの材質は、樹脂、金属等である。このコイルホースは、高圧時の変形が小さく、耐圧性に優れる。
【0171】
折りたたみホースは、折りたたみが可能なホースである。この折りたたみホースは、水を通さない時には平らに潰れる。典型的な折りたたみホースは布製であり、布の内側が非通水層でコーティングされている。なお、折りたたみホースは、消防用ホースとしても知られている。
【0172】
図31(a)から(d)は、折りたたみホース1100を示す断面図である。この折りたたみホース1100の材質は布であり、この布の内面に非通水層が形成されている。非通水層の材質として、ゴム及び樹脂が例示される。水圧が低い場合、折りたたみホース1100は、
図31(a)のようにほぼ平らになる。水圧が高い場合、折りたたみホース1100の断面構造は
図31(c)のように円形となる。水圧によって、折りたたみホース1100の断面形状は、
図31(a)から(d)ような形態をとる。
【0173】
この折りたたみホース1100は、ホース断面の半分を構成する第1部分1102と、ホース断面の残りの半分を構成する第2部分1104とを有する。折りたたみホース1100の幅方向における両端部には、第1部分1102と第2部分1104とを重ねた重なり部1106が設けられている。これらの重なり部1106により、折りたたみホース1100は、非通水時に平らになりやすい。
【0174】
このように、折りたたみホース1100は、その幅方向両端部に、非通水時における断面形状が、通水時(例えば水圧が0.3MPaである時)よりも平らになるように構成されている。本実施形態の折りたたみホース1100では、重なり部1106が採用されているが、これに代えて例えば、折り目が採用されてもよい。公知の消防用ホースの構造が、本願の折りたたみホースにも採用されうる。
【0175】
以上に記載の通り、好ましい折りたたみホースは、次のような特徴を有する。なおA1は、非通水時における内部断面積である。
(1)非通水時には、ホースの内部断面積A1がゼロである状態で平らにすることができる。
(2)幅方向両端部に、平らになることを促進する偏平促進部を有する。上述した重なり部1106や折り目は、この偏平促進部の例である。
【0176】
[偏平ホース]
折りたたみホースではない保形ホースにおいても、偏平な断面形状が採用されうる。水圧下でも偏平な形状が維持されるホースが、本願において偏平ホースと称される。偏平な断面形状は、収納性の向上に寄与する。
図32(a)から(d)は、保形ホースの断面形状の例示である。
図32(a)のホース1110は通常の円形断面のホースである。
図32(b)から(d)は偏平ホースの断面である。偏平ホースでは、水圧が0.3MPaの状態の断面形状において、幅よりも高さが小さい。
図32(b)のホース1112では、3つの水路が設けられている。
図32(c)のホース1114では、2つの水路が設けられている。複数の水路を設けることで、偏平な断面形状において水路の断面積を拡大することができる。
図32(d)のホース1116では、水路の断面形状も偏平とされている。これも、偏平な断面形状において水路の断面積を拡大する構成の一例である。
【0177】
[伸縮式ホース]
本願において伸縮式ホースとは、0.3MPaの水圧が作用すると長手方向の長さが1.5倍以上に伸びるホースを意味する。即ち、非通水時における長手方向長さがHL1とされ、0.3MPaの水圧が作用した状態での長手方向長さがHL2とされるとき、HL2/HL1が1.5以上のホースが、伸縮式ホースと定義される。HL2/HL1は、好ましくは2以上、より好ましくは、2.5以上、更に好ましくは3以上である。HL2/HL1は、通常、8以下、更には6以下である。
【0178】
この伸縮性ホースは、2重チューブ構造を有している。より詳細には、この伸縮性ホースは、弾性材料で形成されている内側チューブと、この内側チューブよりも伸縮性が低い外側チューブとを有する。内側チューブと外側チューブとは、両端部でのみ互いに固定されている。両端部以外では、内側チューブと外側チューブとは互いに固定されていない。換言すれば、両端部以外において、内側チューブと外側チューブとは互いに自由である。チューブ構造は、3重またはそれ以上であってもよい。
【0179】
この伸縮性ホースにおいて、外側チューブの好ましい材質は、布である。この布の材質は、例えば、ナイロン、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群から選択される1以上である。好ましくは、この布は織物である。内側チューブの材質は、例えば、天然ラテックスゴムである。この伸縮性ホースは、水圧が加わると自動的に長手方向に伸び、水圧が無くなると自動的に長手方向に縮む。
【0180】
外側チューブは、しなやかである。また、外側チューブは、伸張状態にあるときの内側チューブの膨張及び伸びを許容するサイズを有している。よって、水圧がゼロの収縮状態において、外側チューブは弛んだ状態にある。収縮状態において、外側チューブは、多数の皺を有した状態となる。一方、内側チューブは、高い弾性を有している。内側チューブは、水圧ゼロの状態では太さ方向に収縮し、且つ長手方向に延びる。内側チューブは、水圧が作用すると、太さ方向に膨張し且つ長手方向に伸びる。特に、長手方向の伸び率は顕著である。水圧が上がるにつれて、当該膨張及び伸びが大きくなるが、これらの膨張及び伸びは、外側チューブのサイズによって制約される。よって、HL2/HL1の上限は、外側チューブの最大長さによって規制することができる。このような伸縮性ホースの例は、特許第5541825号及び特許第5399595号に記載されている。
【0181】
元水栓装置において止水が可能な散水装置900では、ホースを非耐圧仕様とすることができる。例えば、ホースが破損しうる最小水圧を0.7MPa以下とすることができる。耐圧性が低いホースが許容されることで、ホースを軽量とすることができ、ホースの柔軟性を高めることができる。
【0182】
ホースの内部には中空部が形成され、この中空部を水が通る。ホースの内部断面積とは、この中空部の断面積である。水圧が高くなると、ホースが膨らみ、この内部断面積が大きくなる。
【0183】
非通水時における内部断面積がA1とされ、水圧が0.3MPaであるときの内部断面積がA2とされる。比(A2/A1)が大きい場合、接続部におけるホースの外れが生じやすい。なぜなら、ホースの膨張変形により、ホースと他部材との接続が外れやすくなるためである。よって、A2/A1が大きく膨張しやすい場合、ホースへの水圧を抑制しうる本散水装置が、ホース外れ抑制の観点から有効である。これらの観点から、A2/A1は、1以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。ホースの耐久性を考慮すると、A2/A1は、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。このホースの内部断面積の変化率の測定において、ホースの温度は20度に設定される。
【0184】
散水時の圧力損失を抑制し、散水量を確保する観点から、ホースの内部断面積A1は、19.6mm
2以上が好ましく、38.5mm
2以上がより好ましく、63.6mm
2以上がより好ましい。ホースの取り回し性を向上させ、散水装置を小型化する観点から、ホースの内部断面積A1は、707mm
2以下が好ましく、491mm
2以下がより好ましく、254mm
2以下がより好ましく、177mm
2以下がより好ましい。
【0185】
非通水時におけるホースHS1の長手方向長さがHL1とされ、0.3MPaの水圧が作用した状態での当該長手方向長さがHL2とされるとき、ホースの長さ変化率は、上述のHL2/HL1である。HL2/HL1が大きい場合、上述した接続部の外れのうち、特にホースの外れが生じやすい。なぜなら、ホースの伸び変形により、ホースと他部材との接続が外れやすくなるためである。よって、HL2/HL1が大きく伸びやすい場合、ホースへの水圧を抑制しうる本散水装置が、ホース外れ抑制の観点から有効である。この観点から、HL2/HL1は、1.0以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。ホースの耐久性を考慮すると、HL2/HL1は、5.0以下、更には4.0以下が好ましい。ただし、この上限値に関して、上述の伸縮性ホースは例外である。長さHL1及び長さHL2の測定において、ホースの温度は20度に設定される。
【0186】
元水栓装置で止水する本散水装置では、ホースの選択の自由度が高い。よって、A2/A1、HL2/HL1、曲げ剛性等の選択の自由度も高い。上述の理由に基づき、A2/A1、HL2/HL1、曲げ剛性等を適切に設定することができる。
【0187】
屋外での散水における利便性の観点から、非通水時におけるホースの長手方向長さHL1は、5m以上が好ましく、7m以上がより好ましく、10m以上が更に好ましい。元水栓装置で止水することで、ホースへの負荷が低減される。よって、ホースの選択の自由度が高まる。例えば非耐圧性のホースを採用することができ、軽いホースを採用することができる。ホースが長いほど、ホースの全体重量は大きくなり、ホース軽量化の効果が高まる。この観点からも、ホースの長手方向長さHL1は、5m以上が好ましい。散水装置の小型化及び取り扱い性の観点から、ホースの長手方向長さHL1は、100m以下が好ましく、80m以下がより好ましく、50m以下が更に好ましい。
【0188】
上述の通り、元水栓装置で止水することで、ホースへの負荷が低減される。よって、非耐圧性のホースを採用することができ、軽いホースを採用することができる。この観点から、長さ1m当たりのホースの重量は、0.2kg/m以下が好ましく、0.1kg/m以下がより好ましく、0.05kg/m以下が更に好ましい。強度を考慮すると、このホース重量は、0.01kg/m以上が好ましく、0.02kg/m以上がより好ましい。この重量の測定において、ホースの温度は20度とされる。この重量は、ホース内に水が無い状態で測定される。小型化された散水ノズルと軽いホースとの組み合わせにより、操作性が向上する。
【0189】
本願には、独立形式請求項に係る発明とは異なる他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
【0190】
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。