特許第6841405号(P6841405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841405
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】脳律動周波数変調装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/377 20210101AFI20210301BHJP
   A61B 5/05 20210101ALI20210301BHJP
   A61B 5/372 20210101ALI20210301BHJP
   A61B 5/25 20210101ALI20210301BHJP
【FI】
   A61B5/04 320M
   A61B5/04 320N
   A61B5/05 A
   A61B5/04 322
   A61B5/04 300J
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-176669(P2016-176669)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-38747(P2018-38747A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 薫
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3115353(JP,U)
【文献】 特開2003−010344(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0328461(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0057232(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0002635(US,A1)
【文献】 特開2005−334163(JP,A)
【文献】 特開昭62−268567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/37 − 5/386
A61B 5/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳律動の周波数を変化させる脳律動周波数変調装置であって、
被験者の前記脳律動の周波数を変化させるべき所定の周波数であって、前記脳律動の対象周波数帯内の所定の周波数を設定する周波数設定部と、
前記対象周波数帯より高い一定の周波数、且つ正弦波のキャリア信号を、前記周波数設定部が設定した前記変化させるべき所定の周波数に基づいて、振幅が前記所定の周波数の正弦波状に変化するように振幅変調した変調信号を生成する振幅変調部と、
前記振幅変調部によって生成された前記変調信号に基づく、キャリア周波数が一定で、且つ、振幅が前記所定の周波数の正弦波状に変化する電気刺激信号を、被験者の前記脳律動の周波数を前記所定の周波数に変化させるように、前記被験者の頭部に接続可能な電極部に出力する電気刺激出力部と
を備えることを特徴とする脳律動周波数変調装置。
【請求項2】
前記電気刺激出力部は、前記変調信号に基づいて、前記変調信号の最大振幅値を所定の電流値に変換した信号を、前記電気刺激信号として生成し、生成した前記電気刺激信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の脳律動周波数変調装置。
【請求項3】
前記被験者において計測された前記脳律動の周波数と、前記変化させるべき所定の周波数とが一致するように、前記電気刺激信号を補正する補正部を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脳律動周波数変調装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記脳律動の周波数と、前記変化させるべき所定の周波数とが一致するように、前記変調信号を振幅変調する変調周波数を補正する
ことを特徴とする請求項3に記載の脳律動周波数変調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳律動周波数変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳律動(例えば、アルファ波などの脳波)を変化させるために、所望の周波数の交流電気刺激を脳に与える方法が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。この方法を利用し、例えば、脳波の周波数を変化させて、脳の認知機能や知覚機能への影響を確認する試みが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Roberto C, Geraint R, Vincenzo R、“Individual Differences in Alpha Frequency Drive Crossmodal Illusory Perception”,Current Biology 25, 231−235, January 19, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、交流電気刺激によるアーティファクト(ノイズ)が非常に大きいため、交流電気刺激の対象の周波数帯の脳活動を、脳波(EEG:Electroencephalogram)や脳電図(MEG:Magnetoencephalogram)などにより計測することができないという問題があった。すなわち、上述した従来技術では、脳波(EEG)や脳電図(MEG)によって実際に脳律動が対象の周波数に変化したことを確認することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、変化させた脳律動の周波数を確認することができる脳律動周波数変調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、被験者の前記脳律動の周波数を変化させるべき所定の周波数であって、前記脳律動の対象周波数帯内の所定の周波数を設定する周波数設定部と、前記対象周波数帯より高い一定の周波数、且つ正弦波のキャリア信号を、前記周波数設定部が設定した前記変化させるべき所定の周波数に基づいて、振幅が前記所定の周波数の正弦波状に変化するように振幅変調した変調信号を生成する振幅変調部と、前記振幅変調部によって生成された前記変調信号に基づく、キャリア周波数が一定で、且つ、振幅が前記所定の周波数の正弦波状に変化する電気刺激信号を、被験者の前記脳律動の周波数を前記所定の周波数に変化させるように、前記被験者の頭部に接続可能な電極部に出力する電気刺激出力部とを備えることを特徴とする脳律動周波数変調装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記脳律動周波数変調装置において、前記電気刺激出力部は、前記変調信号に基づいて、前記変調信号の最大振幅値を所定の電流値に変換した信号を、前記電気刺激信号として生成し、生成した前記電気刺激信号を出力することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記脳律動周波数変調装置において、前記被験者において計測された前記脳律動の周波数と、前記変化させるべき所定の周波数とが一致するように、前記電気刺激信号を補正する補正部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記脳律動周波数変調装置において、前記補正部は、前記脳律動の周波数と、前記変化させるべき所定の周波数とが一致するように、前記変調信号を振幅変調する変調周波数を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、変化させた脳律動の周波数を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態による脳活動計測システムの一例を示す機能ブロック図である。
図2】第1の実施形態による電流刺激信号の一例を示す図である。
図3】第1の実施形態による脳律動周波数変調装置の効果を示す図である。
図4】第2の実施形態による脳活動計測システムの一例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による脳律動周波数変調装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態による脳活動計測システム100の一例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、脳活動計測システム100は、脳律動周波数変調装置1と、脳律動計測装置40とを備えている。
【0014】
脳律動周波数変調装置1は、被験者頭部HD1に接続された電極部30に、電気刺激信号(例えば、交流の電流刺激信号)を出力して、脳律動(例えば、アルファ波)の周波数を変化させる装置である。脳律動周波数変調装置1は、例えば、入力された変調周波数fα(所定の周波数の一例)の値に基づいて、被験者頭部HD1に電流刺激信号S2を、電極部30を介して出力し、被験者の脳律動の周波数を、入力された変調周波数fαに変化させる。
【0015】
ここで、脳律動とは、周期的な脳の動きのことであり、例えば、アルファ波、ベータ波、等の脳波などのことである。なお、本実施形態では、脳律動の一例として、アルファ波の周波数を変化させる場合について説明する。
アルファ波は、脳が発生する脳波のうちの、例えば、8Hz(ヘルツ)〜13Hzの成分を示す。以下の説明において、本実施形態において、脳律動周波数変調装置1の変化対象の周波数帯である対象周波数帯は、8Hz〜13Hzであるものとして説明する。
【0016】
また、脳律動周波数変調装置1は、コントロール信号発生器10と、電流刺激発生器20とを備えている。
【0017】
コントロール信号発生器10(振幅変調部の一例)は、脳律動の対象周波数帯より高い周波数(例えば、200Hz)のキャリア信号SCを、対象周波数帯内の所定の周波数に基づいて振幅変調(AM:Amplitude Modulation)したコントロール信号S1(変調信号)を生成する。なお、ここでの脳律動の対象周波数帯は、上述したように、アルファ波の周波数帯(8Hz〜13Hz)である。また、所定の周波数(変調周波数fα)は、例えば、8Hz〜13Hzの間の周波数である。
また、コントロール信号発生器10は、周波数設定部11と、変調波生成部12と、キャリア信号生成部13と、振幅変調処理部14とを備えている。
【0018】
周波数設定部11は、入力された変調周波数fαの値を示す周波数情報を取得し、取得した周波数情報を設定(保持)するとともに、当該周波数情報を変調波生成部12に出力する。なお、変調周波数fαの値は、電流刺激を与えていない状態における被験者のアルファ波の周波数に基づいて設定されてもよいし、当該被験者のアルファ波の周波数と関係なしに設定されてもよい。例えば、変調周波数fαの値は、電流刺激を与えていない状態における被験者のアルファ波の周波数に、±1Hz、±2Hzなどして設定されてもよい。
【0019】
変調波生成部12は、周波数設定部11に設定された周波数情報(fα)を取得し、取得した周波数情報に基づいて、例えば、周波数fαの変調波信号SMを生成する。ここで、変調周波数fαは、アルファ波の周波数帯(8Hz〜13Hz)内の周波数であり、変調波信号SMは、例えば、8Hz〜13Hzの間の周波数の正弦波信号である。変調波生成部12は、生成した変調波信号SMを振幅変調処理部14に出力する。
【0020】
キャリア信号生成部13は、例えば、発振回路であり、キャリア信号SCを生成する。ここで、キャリア信号SCは、アルファ波の計測に影響しないように、アルファ波の周波数帯(8Hz〜13Hz)より高い周波数の信号あり、例えば、200Hzの正弦波信号(サイン波信号)である。キャリア信号生成部13は、生成したキャリア信号SCを振幅変調処理部14に出力する。
【0021】
振幅変調処理部14は、コントロール信号発生器10によって生成されたキャリア信号SCを、変調波生成部12によって生成された変調波信号SMに基づいて、振幅変調したコントロール信号S1(変調信号)を生成する。ここで、コントロール信号S1は、例えば、200Hzのキャリア信号SCの振幅が、変調波信号SMの周波数fα(所定の周波数)の正弦波により変調された変調信号である。振幅変調処理部14は、例えば、最大振幅が所定の電圧の振幅変調信号を、コントロール信号S1として生成する。また、振幅変調処理部14は、生成したコントロール信号S1を、電流刺激発生器20に出力する。
【0022】
電流刺激発生器20(電気刺激出力部の一例)は、例えば、経頭蓋交流刺激装置であり、コントロール信号発生器10によって生成されたコントロール信号S1に基づく電流刺激信号S2(電気刺激信号の一例)を電極部30に出力する。電流刺激発生器20は、例えば、所定の電圧が最大振幅になるように、変調周波数fαにより振幅変調されたコントロール信号S1を、所定の電流値(例えば、1mA(ミリアンペア))が最大振幅になるように、変調周波数fαにより電流の振幅変調された電流刺激信号S2に変換する。すなわち、電流刺激発生器20は、コントロール信号S1に基づいて、例えば、図2に示す波形W1のような電流刺激信号S2を生成する。
【0023】
図2は、本実施形態による電流刺激信号の一例を示す図である。
図2において、横軸は、時間を示し、縦軸は、電流を示している。また、波形W1は、上述した電流刺激信号S2の一例を示している。
また、電流刺激信号S2のキャリア周波数fc(伝送波周波数)は、キャリア信号SCの周波数であり、例えば、200Hzである。また、電流刺激信号S2の変調周波数fαは、変調波生成部12に入力された周波数であって、変調波信号SMの周波数である。また、電流刺激信号S2の最大振幅値A1は、例えば、1mAである。最大振幅値A1は、当該電流刺激信号S2を被験者頭部HD1に印加した際に、例えば、被験者が健康を害さないように定められている。
【0024】
なお、コントロール信号発生器10が生成するコントロール信号S1の波形は、振幅が電圧である点を除いて、図2に示す波形W1と同様である。
電流刺激発生器20は、電圧の振幅変調されたコントロール信号S1に基づいて、電流の振幅変調された電流刺激信号S2を生成し、生成した電流刺激信号S2を電気刺激として電極部30に出力する。このように、電流刺激発生器20は、コントロール信号S1に基づいて、コントロール信号S1の最大振幅値を所定の電流値(例えば、1mA)に変換した信号を、電流刺激信号S2として生成し、生成した電流刺激信号S2を電極部30に出力する。
【0025】
電極部30は、例えば、被験者の頭部(被験者頭部HD1)に接続可能な頭皮上電極である。電極部30は、被験者頭部HD1に電気的に接続されて、電流刺激発生器20が生成した電流刺激信号S2による電気的な刺激(例えば、電流刺激)を被験者頭部HD1に与える。
【0026】
脳律動計測装置40は、脳律動(例えば、アルファ波)を計測する装置であり、例えば、脳の電気的活動を計測する脳波計(EEG:Electroencephalograph)や、脳の電気的活動によって生じる微弱な磁場を計測する脳磁計(MEG:Magnetoencephalography)などである。脳律動計測装置40は、脳律動周波数変調装置1から電極部30に電流刺激信号S2が出力された状態における、脳律動(例えば、アルファ波)の周波数を計測する。脳律動計測装置40が、被験者のアルファ波の周波数を計測することにより、脳律動周波数変調装置1によりアルファ波の周波数が変化(変調)させられたことを確認する。
【0027】
次に、本実施形態による脳律動周波数変調装置1の動作について説明する。
脳律動周波数変調装置1は、例えば、変調周波数(fα=10Hz)を示す情報が入力されると、コントロール信号発生器10の周波数設定部11が、周波数情報として内部に設定するとともに、当該周波数情報を変調波生成部12に供給する。変調波生成部12は、周波数設定部11に設定された周波数情報(fα)を取得し、取得した周波数情報に基づいて、変調周波数(fα=10Hz)の変調波信号SMを生成する。変調波生成部12は、生成した10Hzの変調波信号SMを振幅変調処理部14に出力する。
【0028】
また、キャリア信号生成部13は、200Hzのキャリア信号SCを生成する。キャリア信号生成部13は、生成したキャリア信号SCを振幅変調処理部14に出力する。
次に、振幅変調処理部14は、200Hzのキャリア信号SCに、10Hzの変調波信号SMにより振幅変調したコントロール信号S1を生成する。キャリア信号生成部13は、生成したコントロール信号S1を、電流刺激発生器20に出力する。
【0029】
電流刺激発生器20は、コントロール信号発生器10が生成したコントロール信号S1を、最大振幅を、例えば、1mAに変換した電流刺激信号S2を生成する。すなわち、電流刺激発生器20は、例えば、図2の波形W1のような波形であって、変調周波数fαが10Hz、且つ、電流の最大振幅値A1が1mAの電流刺激信号S2を生成する。電流刺激発生器20は、生成した電流刺激信号S2を、電極部30を介して被験者頭部HD1に出力する。これにより、被験者のアルファ波が、変調周波数である10Hzに変化させられる。
【0030】
次に、図3を参照して、本実施形態による脳律動周波数変調装置1の効果について説明する。
図3は、本実施形態による脳律動周波数変調装置1の効果を示す図である。
図3に示すグラフは、脳律動周波数変調装置1により被験者頭部HD1に電流刺激を与えた場合の脳電図(MEG)の変化を示している。なお、このグラフにおいて、縦軸が、MEG振幅を示し、横軸が周波数を示している。
【0031】
グラフにおいて、波形W2は、脳律動周波数変調装置1による電流刺激を与える前の脳電図の計測結果を示している。波形W2において、ピーク値を示す周波数f1は、被験者のアルファ波の周波数(PAF:Peak alpha Frequency)を示している。
【0032】
また、波形W3は、周波数f1+1Hzの変調周波数で、脳律動周波数変調装置1により電流刺激を与えた場合の脳電図の計測結果を示している。波形W3において、ピーク値を示す周波数f2は、電流刺激を与えた被験者のアルファ波の周波数を示し、当該周波数f2は、脳律動周波数変調装置1による電流刺激により、周波数f1に対して約1Hz上昇したことを示している。
【0033】
また、波形W4は、周波数f1−1Hzの変調周波数で、脳律動周波数変調装置1により電流刺激を与えた場合の脳電図の計測結果を示している。波形W4において、ピーク値を示す周波数f3は、電流刺激を与えた被験者のアルファ波の周波数を示し、当該周波数f3は、脳律動周波数変調装置1による電流刺激により、周波数f1に対して約1Hz低下したことを示している。
このように、脳律動周波数変調装置1は、変調周波数fαを変更することで、被験者のアルファ波の周波数を変化(変調)させることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態による脳律動周波数変調装置1は、脳律動(例えば、アルファ波)の周波数を変化させる脳律動周波数変調装置であって、コントロール信号発生器10(振幅変調部)と、電流刺激発生器20(電気刺激出力部)とを備えている。コントロール信号発生器10は、脳律動の対象周波数帯(例えば、アルファ波の周波数である8Hz〜13Hz)より高い周波数(例えば、200Hz)のキャリア信号SCを、対象周波数帯内の所定の周波数(変調周波数fα)に基づいて振幅変調したコントロール信号S1(変調信号)を生成する。電流刺激発生器20(電気刺激出力部)は、コントロール信号発生器10によって生成されたコントロール信号S1(変調信号)に基づく電流刺激信号S2(電気刺激信号、図2の波形W1を参照))を、被験者の頭部(被験者頭部HD1)に接続可能な電極部30に出力する。
【0035】
この場合、電流刺激信号S2に含まれる周波数成分は、理論的には、キャリア信号SCの周波数fc(キャリア周波数)と、キャリア信号SCの周波数fcから所定の周波数(変調周波数fα)を減算した周波数(fc−fα)と、キャリア信号SCの周波数fcに所定の周波数(変調周波数fα)を加算した周波数(fc+fα)と、になる。例えば、キャリア信号SCの周波数fcを200Hzとし、所定の周波数fαを10Hzとすると、電流刺激信号S2に含まれる周波数成分は、200Hz、190Hz、及び200Hzとなる。
【0036】
このように、電流刺激信号S2に含まれる周波数成分が、脳律動(例えば、アルファ波)の周波数から離れた周波数となるため、本実施形態による脳律動周波数変調装置1は、アーティファクト(ノイズ)を低減することができる。よって、本実施形態による脳律動周波数変調装置1は、変化させた脳律動(例えば、アルファ波)の周波数を確認することができる。
【0037】
また、脳律動周波数変調装置1によって変化させた脳律動(例えば、アルファ波)の周波数を確認することができるため、脳律動(例えば、アルファ波)の周波数と、脳活動との関係を解析する際に正確に解析することができる。例えば、アルファ波の周波数は、視覚等の情報処理に関する認知機能や知覚機能などに影響があると考えられている。例えば、アルファ波の周波数と、視覚等の情報処理に関する認知機能や知覚機能との関係を解析する際に、本実施形態による脳律動周波数変調装置1及び脳活動計測システム100は、アルファ波の周波数を確認することができるため、担保されたアルファ波の周波数により正確に解析することができる。
【0038】
また、本実施形態では、電流刺激発生器20は、コントロール信号S1に基づいて、コントロール信号S1の最大振幅値を所定の電流値(例えば、1mA)に変換した信号を、電流刺激信号S2として生成し、生成した電流刺激信号S2を出力する。所定の電流値(例えば、1mA)は、当該電流刺激信号S2を被験者頭部HD1に印加した際に、例えば、被験者が健康を害さないように定められている。
これにより、本実施形態による脳律動周波数変調装置1は、健康を損なうことなしに、脳律動(例えば、アルファ波)の周波数を変化させることができる。
【0039】
[第2の実施形態]
次に、図4を参照して、第2の実施形態による脳律動周波数変調装置1aについて説明する。
図4は、第2の実施形態による脳活動計測システム100aの一例を示す機能ブロック図である。
【0040】
図4に示すように、脳活動計測システム100aは、脳律動周波数変調装置1aと、脳律動計測装置40とを備えている。
脳律動周波数変調装置1aは、コントロール信号発生器10aと、電流刺激発生器20とを備えている。
また、コントロール信号発生器10aは、周波数設定部11と、変調波生成部12と、キャリア信号生成部13と、振幅変調処理部14と、周波数補正部15とを備えている。
【0041】
本実施形態では、コントロール信号発生器10aが周波数補正部15を備える点が、第1の実施形態と異なる。
なお、図4において、図1と同一の構成は、同一の符号を付与して、その説明を省略する。
【0042】
周波数補正部15(補正部の一例)は、被験者において計測された脳律動の周波数(例えば、アルファ波の周波数)と、所定の周波数(変調周波数fα)とが一致するように、電流刺激信号S2を補正する。周波数補正部15は、例えば、脳律動計測装置40によって計測されたアルファ波の周波数と、周波数設定部11に設定された変調周波数fαとが一致するように、変調波信号SMを振幅変調する変調周波数を補正する。周波数補正部15は、補正した変調周波数を、周波数情報として、変調波生成部12に出力する。
【0043】
周波数補正部15は、例えば、脳律動計測装置40によって計測されたアルファ波の周波数が、周波数設定部11に設定された変調周波数fαより大きい場合に、周波数情報を減少させる補正を行い、減少させた周波数情報を、変調波生成部12に出力する。また、周波数補正部15は、例えば、脳律動計測装置40によって計測されたアルファ波の周波数が、周波数設定部11に設定された変調周波数fαより小さい場合に、周波数情報を増加させる補正を行い、増加させた周波数情報を、変調波生成部12に出力する。周波数補正部15は、補正した周波数情報を保持するとともに、補正した周波数情報を保持し、定期的に補正を行う。
【0044】
変調波生成部12は、補正された周波数情報を周波数補正部15から取得し、取得した周波数情報に基づいて、変調波信号SMを生成する。すなわち、変調波生成部12は、周波数情報が示す周波数の変調波信号SMを生成する。変調波生成部12は、生成した変調波信号SMを振幅変調処理部14に出力する。
【0045】
なお、本実施形態におけるキャリア信号生成部13、振幅変調処理部14、及び電流刺激発生器20の処理は、第1の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態による脳律動周波数変調装置1aは、コントロール信号発生器10a(振幅変調部)と、電流刺激発生器20(電気刺激出力部)とを備えている。
これにより、本実施形態による脳律動周波数変調装置1aは、第1の実施形態と同様の効果を奏し、変化させた脳律動(例えば、アルファ波)の周波数を確認することができる。
【0047】
また、本実施形態による脳律動周波数変調装置1aは、周波数補正部15(補正部)を備えている。周波数補正部15は、被験者において計測された脳律動(例えば、アルファ波)の周波数と、所定の周波数(変調周波数fα)とが一致するように、電流刺激信号S2(電気刺激信号)を補正する。
これにより、本実施形態による脳律動周波数変調装置1aは、計測された脳律動(例えば、アルファ波)の周波数に基づいて、電流刺激信号S2が補正されるため、脳律動(例えば、アルファ波)の周波数を精度良く変化させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、周波数補正部15は、計測されたアルファ波の周波数と、所定の周波数(変調周波数fα)とが一致するように、コントロール信号S1(変調信号)を振幅変調する変調周波数(周波数情報)を補正する。
これにより、本実施形態による脳律動周波数変調装置1aは、変調周波数を変更(補正)するという簡易な手段により、適切なコントロール信号S1(変調信号)を生成することができる。よって、本実施形態による脳律動周波数変調装置1aは、簡易な手段により、脳律動(例えば、アルファ波)の周波数を精度良く変化させることができる。
【0049】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の各実施形態において、脳律動周波数変調装置1(1a)は、脳律動の一例として、アルファ波の周波数を変化させる例を説明したが、ベータ波、ガンマ波、等の他の脳波の周波数を変化させるものであってもよい。
【0050】
また、上記の各実施形態において、脳律動周波数変調装置1(1a)は、電気刺激信号の一例として、電流刺激信号S2を生成する例を説明したが、これに限定されるものではなく、変調周波数fαにより振幅変調された電気刺激信号であれば、例えば、電圧刺激信号などの他の電流刺激信号であってもよい。
【0051】
また、コントロール信号発生器10(10a)の構成は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、アナログ信号処理によってコントロール信号S1を生成するようにしてもよいし、デジタル信号処理によってコントロール信号S1を生成するようにしてもよい。すなわち、コントロール信号発生器10(10a)は、例えば、演算処理によって生成されたコントロール信号S1の波形データを、DAC(Digital to Analog Converter)によりコントロール信号S1に変換して生成してもよい。
【0052】
また、上記の各実施形態において、コントロール信号発生器10(10a)は、200Hzのキャリア信号SCに10Hzの振幅変調と、300Hzのキャリア信号SCに20Hzの振幅変調との線形和により、アルファ波と、ベータ波とを同時に変調するなど、複数の脳律動周波数を変調するようにしてもよい。
また、コントロール信号発生器10(10a)は、アルファ波の発生する位置(例えば、後頭部、側頭部、前頭部など)に応じて、電極部30を装着する位置を変更してもよい。また、複数の位置のアルファ波の周波数を同時に変調するため、コントロール信号発生器10(10a)は、複数の電極部30を備えてもよい。
【0053】
また、上記の各実施形態において、脳律動周波数変調装置1(1a)は、コントロール信号発生器10(10a)と、電流刺激発生器20との2つの装置により構成される例を説明したが、コントロール信号発生器10(10a)に電流刺激発生器20を含めて構成してもよいし、電流刺激発生器20にコントロール信号発生器10(10a)の一部又は全部を含めて構成してもよい。また、脳律動周波数変調装置1(1a)は、コントロール信号発生器10(10a)と電流刺激発生器20とを別体の装置として構成にしてもよい。
【0054】
上述の脳活動計測システム100(100a)及び脳律動周波数変調装置1(1a)は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した電気刺激信号を生成する処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0055】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,1a 脳律動周波数変調装置
10、10a コントロール信号発生器
11 周波数設定部
12 変調波生成部
13 キャリア信号生成部
14 振幅変調処理部
15 周波数補正部
20 電流刺激発生器
30 電極部
40 脳律動計測装置
100、100a 脳活動計測システム
HD1 被験者頭部
図1
図2
図3
図4